結論
尾家産業は、外食店、ホテル、中食、給食、病院や介護施設に食材を届ける業務用の卸である。1947 年の創業で、全国に拠点網を持つ。
筆者の結論は割安だ。最大の理由は、稼ぐ力に対して時価総額が軽いこと。2026 年 3 月期の純利益は 28 億円で、時価総額は 208 億円。その上、現金が 79 億円ある。
利益は本物だ。同期は売上も営業利益も過去最高で、営業利益は 38 億円だった。ただし、3% という利益率は新しい水準である。2015〜19 年は 1% 前後で、コロナ期には 30 億円の赤字も出した。慎重な見方を軽く扱えないのは、この履歴のためだ。
10 年後の中立は、売上 1,880 億円、営業利益 53 億円。強気なら 78 億円、慎重なら 33 億円、最悪は 13 億円まで落ちる。伸びる芽はヘルスケアフードで、病院と介護施設向けの食材だ。今期は 245 億円を目指す。
値決めの力は弱い。大手の外食参入と、物流費・人件費の上昇が、利益率を削る最大の敵になる。
それでも、事業の稼ぐ力に比べた値段の軽さは、慎重な前提に寄せてもなくならない。現金の使い道が改まれば、評価はさらに上がる余地がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、わかりやすい事業だ。人は外で食べ、病院でも食べる。10 年後も食材の卸は残る。その機能が不要になる世界は想像しにくい。
一方で、堀は深くない。利益率が 3% のうちは、少しの値下げで利益が半分に消える。2015〜19 年の 1% の時代に戻れば、今の評価は大きく崩れる。安全域は、このリスクを十分に織り込んだ値段で買えるかどうかにある。
良い点は、少ない資本で回ることだ。使う資本が小さく、現金に余裕があり、借金もない。仕入先が資金を立て替えてくれる構造は、売上が伸びる間は強みになるが、縮むと逆に回る。
資本の使い方は、これからの評価を決める。現金を溜め込むだけなら、株主にとっては価値が半分に減る。買収で価値を壊さず、配当や自社株買いに回すなら、評価は大きく上がる。
わからない事業ではない。利益の質は高く、現金も実在する。値段が事業の稼ぐ力を大きく下回る点に、安全域がある。
ただし、安全域は利益率の水準に守られている。3% が 2% に戻る程度なら耐えられるが、1% の世界では、安全域は消える。持ち続けたいかと問われれば、利益率の推移を確かめながら、という条件がつく。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの本体は、業務用食材の卸である。顧客は外食チェーンや居酒屋、ホテル、弁当・総菜などの中食、給食会社、病院や高齢者施設だ。メーカーから仕入れ、全国の拠点から配送する。
売上の 2 割弱はヘルスケアフードだ。2026 年 3 月期は 230 億円で、前の期より 9% 増えた。専任の管理栄養士が、やわらかさや栄養に配慮したメニューを施設に提案し、食材を納める。会社は 2035 年 3 月期に 500 億円を目指している。
もう一つの柱がプライベートブランド(PB、自社企画の商品)だ。1966 年に「サンホーム」の名で開発を始めた。PB は卸の取り分が厚くなるので、利益率を左右する。会社はこの比率の高さを強みに挙げ、2026 年 3 月期の PB 売上も伸びている。
ほかに、会員向けの現金卸売店(C&C)、ネット受発注(EC)、海外向けの商品供給がある。EC は 2027 年 3 月期の第 1 四半期に前年比で約 7 割伸びたが、まだ小さい。
利益の出方は薄利多売で、営業利益率は 3% ほど。商品を右から左へ流すだけではなく、提案、配送、代金の回収という機能で稼ぐ。開示は単一の事業で、ヘルスケアとそれ以外の利益の内訳は公表されていない。
この会社の今の経営計画は、2026 年 3 月期から始まった第 6 次中計だ。柱は三つある。ヘルスケアと PB に営業の人員を集める収益力の強化、C&C の立て直しと EC・海外による事業領域の拡大、そして人材と拠点の見直しだ。M&A も基盤を広げる手段に挙げている。
優良さと弱いところ
強みは、全国の拠点網と提案力、そして PB の比率の高さだ。会社四季報の特色欄は同社を「業務用食品卸大手」と紹介する。ヘルスケアは専任の管理栄養士を置き、担当部署を推進部に格上げした。顧客の現場に入り込む度合いが、単なる配送業とは違う。
財務は軽くて堅い。有利子負債はほぼゼロで、自己資本比率は 41%。現金は 79 億円ある。売掛金や在庫より、仕入先への支払いが大きい構造のため、事業に使う資本が小さい。ROE が 16% 台と高いのは、この構造による。
ただし、堀は浅い。取引先が値段で乗り換える余地は残り、利益率は 2015〜19 年に 1% 前後だった。2020 年のコロナ禍では売上が 3 割減り、営業赤字と無配に陥った。本当に強い会社なら、あそこまで崩れない。
経営は同族色が濃い。4 代目の尾家健太郎社長は元サントリーの社員で、2023 年に就任した。社訓は「現状維持即落伍」。2025 年 2 月に配当性向 30% 以上の方針を打ち出し、資本の使い方も変わり始めている。
もう一つ、事業の質を測る目安がある。使う資本が少ないぶん、売上が増えても借金はいらず、現金が自然にたまる。これは強みだが、配当や自社株買いを抑えれば、たまった現金が株主のものになりにくいという弱みにもなる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食の市場は戻ってきた。日本フードサービス協会の推計では、2023 年の外食産業は 24 兆円、中食を含めると 32 兆円だ。2025 年は客単価の上昇が売上を押し上げた。ただ、客数は人口減で伸びにくい。食べる量は 10 年で 1 割ほど細ると見るのが自然だ。
業務用食品の卸の市場は、同業のトーホーの資料では約 4 兆円とされる。尾家の外食向けは、その 2.7% ほどだ。トーホーは売上 2,600 億円、営業利益率 3.0% で、規模は尾家の 2 倍。同じ薄利の世界にいる。
競合は二つの層に分かれる。一つは日本アクセス、三菱食品、国分のような大手の総合卸で、外食向けにも営業を広げている。もう一つは、トーホーのような業務用に特化した卸だ。尾家は後者に近い中堅である。
成長の分野はヘルスケアだ。病院と高齢者施設、在宅配食を合わせた給食の市場は、2024 年度で約 2.4 兆円。2029 年度に 2.5 兆円へ伸びると予測される。病院給食は縮むが、高齢者施設の給食の外部委託が伸びを支える。
費用面では、人手不足と物流の 2024 年問題が重い。この上昇分を価格に載せられる会社と、載せられない会社の差が、これから利益率に出る。
もう一つの流れが、外食店の人手不足だ。仕込みの人手を減らしたい店は、加工済みや調理済みの食材を求める。提案できる卸には追い風になるが、価格では勝負しにくくなる。
資本政策と M&A
配当は連結配当性向 30% 以上が方針だ(2025 年 2 月に明文化)。2026 年 3 月期の配当性向は 30% で、配当は 2 期連続で据え置かれた。2024 年 3 月期には 14 億円の自社株買いもあり、直近 3 期の総還元性向は 45% ほどである。
自己株は発行済み株式の 1 割を超える。現金は 79 億円あり、今の方針のままなら現金は積み上がりやすい。筆者がいちばん気にするのは、この現金の使い道だ。
M&A は地域の卸を買って営業力を補う型で、2025 年 3 月には茨城県のウェルユー・フードを子会社にした。第 6 次中計(2026 年 3 月期から)でも、M&A を基盤拡大の手段に挙げている。
株主は、筆頭がサンホーム共栄会で 11〜12%、次が信託銀行の信託口で約 9%、自己株が約 10%。創業家が過半を握る構図ではなく、買収される側になる可能性も排除できない。当サイトの別の試算では、10 年以内の買収は 2 割台とされる。
ただし、少数株主の立場では、買収を当てにはできない。評価は、事業の稼ぐ力と、現金がどれだけ戻るかで測るべきだと考える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
売上と利益は、4 年連続で伸びてきた。外食の回復だけではない。ヘルスケアが年 9% 伸び、PB の比率も上がり、同じ売上でも利益率が厚くなっている。2026 年 3 月期の計画を超え、5 期連続の最高益を見込む勢いは本物だ。
ヘルスケアの市場は縮まない。高齢者施設の給食は外部委託が進み、需要は安定している。専任の管理栄養士が現場で提案する形は、他社がすぐにまねできない。2035 年 3 月期に 500 億円という目標は、年 9% の伸びで届く。
財務は盤石だ。借金はほぼなく、現金は 79 億円。この現金で、地域の卸を買い、拠点網の穴を埋められる。買収のたびに営業力が増し、規模の経済が働く。
株価は、純利益の 7 倍台で、配当利回りは 4% を超える。事業の ROE は 16% を超え、少ない資本で回る。この収益力が 10 年続けば、倍率が上がるだけで株価は大きく動く。
自社株も 1 割ほど持っている。会社が資本政策を前向きに変えれば、一気に評価は変わる。
慎重な見方
3% の利益率は、5 年前には誰も想像しなかった数字だ。2015〜19 年は 1% 前後だった。上がったのは、コロナ明けの外食回復と、物価高で値上げが通りやすかった時期が重なったからで、構造が変わったとは言い切れない。
卸は中抜きの対象だ。メーカーの直販、ネットで食材を買える大手の仕組み、大手総合卸の外食参入。いずれも尾家の顧客を狙っている。値決めの力が弱く、顧客の乗り換えは簡単だ。
コロナ禍の実績が示すとおり、外食の崩れには耐えられない。2021 年 3 月期は売上が 3 割減り、30 億円の赤字を出した。ヘルスケアが増えても、売上の約 8 割は外食・中食・宿泊・給食などヘルスケア以外のままだ。
現金も自由には使えない。配当性向は 30% で、残りは積み上がる。2024 年 3 月期の自社株買いは 1 回限りで、買収に使い道があるかも定かではない。現金を高く評価するのは危うい。
最後に、株主構成も重い。筆頭株主はサンホーム共栄会で、買収や大きな資本政策の起点になりにくい。株価が割安のまま放置される時間が、長引くおそれがある。
どちらに重みを置いたか
事業の現状は強気の言い分が重い。実績が伴い、財務も堅い。しかし利益率の水準については、慎重な指摘のほうが強い。3% は 2023 年以降の数字にすぎないからだ。
確率は、慎重側に寄せた。やや悲観を 27%、悲観を 13% と、同領域の食品卸より厚くした。それでも、中立の筋書きの現在価値でも、今の時価総額を大きく上回る。値段が事業の稼ぐ力を下回るという結論は、慎重な前提でも変わらない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 9,499 円790 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,676 円139 億円)。 今の値に割り戻すと 5,898 円490 億円、今との差 +131.1%、 期待の年率 +15.9%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 16,796 円1,396 億円 | 2,382 円198 億円 | +651.5% | +22.3% | 959 円80 億円 |
| やや楽観 | 17% | 14,542 円1,209 億円 | 2,165 円180 億円 | +554.7% | +20.7% | 2,840 円236 億円 |
| 中立 | 38% | 12,058 円1,002 億円 | 1,925 円160 億円 | +447.9% | +18.5% | 5,313 円442 億円 |
| やや悲観 | 27% | 5,103 円424 億円 | 1,335 円111 億円 | +152.3% | +9.7% | 1,738 円145 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,746 円145 億円 | 746 円62 億円 | −2.4% | −0.2% | 324 円27 億円 |
| 加重平均 | 100% | 9,499 円790 億円 | 1,676 円139 億円 | +337.9% | +15.9% | 11,175 円929 億円 |
今の株価時価総額 2,552 円212 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 5% 買収と PB で伸び、ヘルスケアは 500 億円を超える 利益 60 億円 · PER 20.9 倍 · 株価時価総額 16,796 円1,396 億円
外食の客数は訪日客が支え、数量は今と同じ水準を保つ。ヘルスケアは病院・介護施設の外部委託が進み、会社の目標を超える 540 億円まで伸びる。
PB の比率が上がり、利益率は 3.3% に改善する。ウェルユー・フードのような地域の中堅卸を数件買い、拠点網の穴を埋める。
営業利益は 78 億円、純利益は 60 億円になる。現金は買収に使われて山にならず、自己資本の伸びも抑えられる。
それでも堀が深くなるわけではない。値決め力が弱い卸であることは変わらず、倍率は上限の 8 割に届かない。
10 年後の尾家は、ヘルスケアに強い全国卸という位置づけを得て、同業の中でも評価の高い一社になる。
- 外食・中食・宿泊・給食向けの食材卸(ヘルスケア以外):数量 40,800(国内の業務用食品の卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 4.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 1,804 億円・営業利益 56 億円。市場 1.02 倍 × シェア 3.3%、利益率 3.1%
- ヘルスケアフード:数量 10,800(病院・高齢者施設向け食材の卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 5.0%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 543 億円・営業利益 22 億円。市場 1.08 倍 × シェア 3.75%、利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 57 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 27.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 14.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)204 億円。全体の PER 20.9 倍、時価総額 1,396 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:5%。ヘルスケアで 500 億円を超え、買収も当たり、利益率が 3.3% まで上がる。薄利の卸でこの全部がそろうのはまれで、下限の 5% に置いた。
やや楽観 17% ヘルスケアが目標に迫り、利益率も 3% を守る 利益 51 億円 · PER 20.8 倍 · 株価時価総額 14,542 円1,209 億円
外食の数量は横ばいで、ヘルスケアが 470 億円まで育つ。会社の長期目標(2035 年 3 月期に 500 億円)には少し届かない。
「やさしいメニュー」の PB と管理栄養士の提案が、施設の調理現場に根づく。利益率は 3.1% で、今の水準を守る。
営業利益は 65 億円、純利益は 51 億円。配当性向は 45% 前後で、余った現金は積み上がるが、買収にも一部が回る。
外食向けは価格競争が続くが、拠点の統合と配送の効率化で吸収できる。
強気の筋書きほどの買収は進まず、成長は堅実な範囲にとどまる。それでも、使う資本の小さい事業としては十分に高い ROE が続く。
- 外食・中食・宿泊・給食向けの食材卸(ヘルスケア以外):数量 40,000(国内の業務用食品の卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 4.1%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 1,635 億円・営業利益 47 億円。市場 1.00 倍 × シェア 3.05%、利益率 2.9%
- ヘルスケアフード:数量 10,600(病院・高齢者施設向け食材の卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 4.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 469 億円・営業利益 18 億円。市場 1.06 倍 × シェア 3.3%、利益率 3.8%
倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 13.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)211 億円。全体の PER 20.81 倍、時価総額 1,209 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:17%。ヘルスケアが目標に近づき、PB と提案で 3% の利益率が定着する筋書き。直近の実績からは自然だが、3% は新しい水準で、確率は抑えた。
中立 38% 外食は横ばい、ヘルスケアが伸びて、利益率はやや下がる 利益 42 億円 · PER 20.4 倍 · 株価時価総額 12,058 円1,002 億円
外食向けの数量は人口減で 3% ほど細る。それをシェアの小さな上積みと値上げの転嫁で補い、外食向けの売上は 1,480 億円になる。
ヘルスケアは 400 億円まで育つ。会社の目標の 500 億円には届かないが、年 5〜6% の伸びは続く。
利益率は 2.8% で、今より少し低い。人件費と物流費の上昇を、すべては価格に載せ切れない前提だ。
営業利益は 53 億円、純利益は 42 億円になる。現金は配当性向 45% で還元しても積み上がり、約 210 億円に達する。10 年たっても、薄利で堅実な中堅卸という評価に収まる。
- 外食・中食・宿泊・給食向けの食材卸(ヘルスケア以外):数量 38,800(国内の業務用食品の卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 3.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 1,482 億円・営業利益 39 億円。市場 0.97 倍 × シェア 2.85%、利益率 2.6%
- ヘルスケアフード:数量 10,500(病院・高齢者施設向け食材の卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 3.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 401 億円・営業利益 14 億円。市場 1.05 倍 × シェア 2.85%、利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 13.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)210 億円。全体の PER 20.44 倍、時価総額 1,002 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:38%。最も起きやすい形。外食の数量は人口減で横ばいから微減、ヘルスケアが伸び、利益率は今よりやや下がる。同じ領域の食品卸と同じく、中心は 4 割弱に置いた。
やや悲観 27% 大手との値引き競争で、利益率が 2% に戻る 利益 27 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 5,103 円424 億円
大手の総合卸が外食向けに営業を強め、尾家は値引きでシェアを守る。外食向けの数量は 7% 減り、シェアも小さくなる。
ヘルスケアは 330 億円にとどまる。施設の給食会社が仕入れを集約し、卸の取り分が薄くなる。
利益率は 2.0% に戻る。2015〜19 年の 1% 前後よりは高いが、今の 3% からは大きく下がる。営業利益は 33 億円、純利益は 27 億円。
配当性向は 40% に落ち着く。現金は積み上がるが、成長の使い道は乏しく、倍率は低めになる。
ただし事業は黒字を保ち、配当も続く。尾家は小さくなるが、消えはしない。多くの中堅卸が置かれる、ごく普通の姿だ。
- 外食・中食・宿泊・給食向けの食材卸(ヘルスケア以外):数量 37,200(国内の業務用食品の卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 3.5%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 1,296 億円・営業利益 25 億円。市場 0.93 倍 × シェア 2.6%、利益率 1.9%
- ヘルスケアフード:数量 10,200(病院・高齢者施設向け食材の卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 3.2%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 328 億円・営業利益 9 億円。市場 1.02 倍 × シェア 2.4%、利益率 2.6%
倍率:事業の純利益 24.7 億円。事業の ROE は約 15%。RONIC=8.0%+1/3×(15%−8.0%)=10.7%、g 4% から正当化 PER は 15.5 倍。構造的な負けが始まる筋書きなので、上限の約 65% の 10.0 倍に置き、7 割へ引き上げていない。余った現金は戻り方 0.5。
確率:27%。2015〜19 年の利益率は 1% 前後で、3% は 2023 年以降の新しい水準。価格競争が戻る筋書きを、同領域の食品卸(23〜25%)より厚く 27% にした。
悲観 13% 中抜きと値引きで売上は実質 4 分の 1 減り、利益率は 1% に沈む 利益 11 億円 · PER 5.3 倍 · 株価時価総額 1,746 円145 億円
メーカーの直販と、ネットで食材を買える大手の仕組みが外食店を取り込む。大手卸も外食向けに攻め、尾家は大口客を失う。
外食の数量は 12% 減る。ヘルスケアも施設の仕入れの集約で縮み、売上は名目で今と同じ 1,290 億円前後に沈む。物価が 3% ずつ上がる中で、実質では 4 分の 1 の縮小だ。
利益率は 1.0%。固定費の拠点網と人件費が重く、営業利益は 13 億円、純利益は 11 億円まで落ちる。
貸倒れや失敗した買収で、積み上げた現金の半分が消える。配当性向は 35% に下がる。もう優良な会社とは言えない。
- 外食・中食・宿泊・給食向けの食材卸(ヘルスケア以外):数量 35,200(国内の業務用食品の卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 2.9%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 1,038 億円・営業利益 9 億円。市場 0.88 倍 × シェア 2.2%、利益率 0.9%
- ヘルスケアフード:数量 9,800(病院・高齢者施設向け食材の卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 2.5%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 250 億円・営業利益 4 億円。市場 0.98 倍 × シェア 1.9%、利益率 1.4%
倍率:事業の純利益 10.1 億円。事業の ROE は約 7.5% で k 7.25% 以下。上限は 1÷k=12.5 倍で、その 6 割の 5.3 倍に置いた。薄利の固定費で赤字が近く、稼ぐ力の床として置いた。余った現金は戻り方 0.5 で、半分は貸倒れと失敗した買収で失われた後の額。
確率:13%。コロナで売上が 3 割減って赤字になった実績があり、大手の外食参入や直販の中抜きも現実的な脅威。同領域の食品卸の 10% 前後より厚くした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
外食・中食・宿泊・給食向けの食材卸(ヘルスケア以外)
外食チェーン、居酒屋、ホテル、中食、事業所の給食などに、食材を届ける。売上の約 8 割。
| 数量国内の業務用食品の卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40,000 | 2.7% | 1,063 | 30 |
| 10 年後 中立 | 38,800 | 3.8% | 1,482 | 39 |
取り方:全社の売上 1,293 億円からヘルスケアフード 230 億円を除いた 1,063 億円を外食等とした。市場は、同業のトーホーが示す業務用食品卸の約 4 兆円(会社の見方)を借りた粗い推定で、シェアは約 2.7%。数量は実質の市場、物価 3% は価格の側に入れた。営業利益 30.4 億円は、全社 38.15 億円をヘルスケア 7.8 億円(利益率 3.4% と推定)と分けた残りで、開示ではない。
ヘルスケアフード
病院・高齢者施設・在宅配食向けの食材。専任の管理栄養士が「やさしいメニュー」を提案する。
| 数量病院・高齢者施設向け食材の卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,000 | 2.3% | 230 | 8 |
| 10 年後 中立 | 10,500 | 3.8% | 401 | 14 |
取り方:2026 年 3 月期の売上は社長の発言で 230 億円。市場は、メディカル給食・在宅配食(2024 年度 約 2.4 兆円)のうち食材の部分を、人件費と調理費を除いて約 1 兆円と置いた粗い推定で、シェアは約 2.3%。利益 7.8 億円(3.4%)は開示がなく、PB と提案の分だけ外食向けより少し厚いと推定した。
リスクと懸念
3% の利益率が定着しない
営業利益率は 2015〜19 年に 1% 前後だった。3% は 2023 年以降の新しい水準で、外食の回復と値上げの追い風が含まれる。この風が止まると、利益は半分以下になりうる。慎重な筋書きの重みを厚くした最大の理由だ。
外食の崩れ
売上の約 8 割は外食・中食・宿泊・給食などで、景気や疫病で需要が崩れる。2021 年 3 月期は売上が 31% 減り、30 億円の赤字と無配になった。ヘルスケアが増えても、全体の波は消えない。
大手の参入と中抜き
日本アクセス、三菱食品、国分のような大手の総合卸が外食向けにも営業を広げる。メーカーの直販や、ネットで食材を買える仕組みも育つ。値決めの力が弱い中堅卸は、取引先を一つ失うだけで利益が動く。
人件費と物流費の上昇
人手不足と物流の 2024 年問題で、配送と営業の費用が上がり続ける。外食の顧客が値上げを受け入れなくなれば、利益率が先に削られる。薄利の卸はその影響を直接受ける。
現金の使い道
配当性向は 30% 以上の方針で、現金は積み上がりやすい。買収で価値を壊すか、使い道がなく眠ったままなら、現金の価値は目減りする。評価では戻り方を 0.5 とした。
信用リスク
外食店は倒産が多く、売掛金の貸倒れが起きる。コロナ禍のような崩れでは、売上の減少と貸倒れが同時に来る。賃借した拠点の家賃も固定の約束で、売上が落ちても減らない。新リース会計基準で、賃借が貸借対照表に載る(2028 年 3 月期以降)。
今後の分かれ目
- ヘルスケアフードの売上が 245 億円を超え、500 億円の目標に近い軌道に乗る
- 利益の質が上がる。強気側の確率を引き上げ、利益率 3% の定着を認めてよい。
- 営業利益率が 2.5% を下回る期が出る
- 3% が一時的だった可能性が高まる。慎重な筋書きの重みを増す。
- 大手の総合卸が外食向けに大きな値引き攻勢を始める
- 中抜きの前触れ。やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 配当性向の引き上げや、大きな自社株買いが発表される
- 現金の戻り方が 1.0 に近づく。評価の中で現金の価値が増える。
- 大型の買収が発表される
- 買収額と事業の稼ぐ力を確かめる。利益に見合わない価格なら、現金が価値を壊す。
- 外食の需要が急に落ちる(疫病・景気後退)
- 売上は急減し、貸倒れも出る。慎重な筋書きがそのまま現実になる。
見ておくもの
- 営業利益率(3% を保てるか)
- ヘルスケアフードの売上(目標 245 億円)と、PB の売上の伸び
- 現金と純現金の増え方、配当性向、自社株買い
- 大手卸の外食向けの動きと、同業のトーホーの利益率
- 外食産業の客数と客単価(日本フードサービス協会の月次)
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の純利益と資本コスト 7.25%(基本 7.5%+quality 0.5%)、長期成長 4% から、正当化 PER の上限を出し、中立〜楽観は上限の 7〜8 割に置いた。今の PER(約 7 倍)や株価には寄せていない。やや悲観は 6.5 割、悲観は 6 割で、構造的な負けの筋書きとして置いた。現金は事業に要らない分の 35 億円を分け、戻り方 0.5 で足した。10 年後に積み上がる現金も同じ戻り方で評価している。数字は、家賃を営業費用に入れた今の形でそろえてある。新リース会計基準(2028 年 3 月期以降)で営業利益が少し増え、負債が増える形になるが、評価は変わらない。賃借の約束額は、確認できた資料の範囲では不明。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→20.9 倍・やや楽観 PER 13.5→20.81 倍・中立 PER 12.5→20.44 倍・悲観 PER 7.5→5.3 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足した。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。