結論
ゼットは、野球用品の自社ブランド「ZETT」を持ち、全国のスポーツ店に約 300 社の商品を卸す会社だ。筆者の結論は「割安」である。稼ぐ力は薄いが、手元の純現金と持ち合いの株式だけで、今の時価総額に近い。
売上は 2026 年 3 月期に 587 億円と過去最高だった。それでも営業利益は 12.5 億円、売上の 2%しか残らない。卸の宿命で、利益率はこの 30 年、3%を超えたことがない。
一方で、貸借対照表は堅い。現金と預金は 91 億円、借入は 3 億円弱。仕入先のゴールドウインやヨネックスなどの株も 39 億円持つ。時価総額は 83 億円で、純現金とほぼ同じだ。
弱みは、現金が株主に戻ってこないことだ。配当は利益の 4 割前後で、自社株買いはしない。創業家の資産管理会社が 2 割強を持ち、現金を積む経営が続いてきた。筆者はこの点を割り引いても、事業の稼ぎと現金を合わせた値打ちは、今の値段を上回ると見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い事業」ではないが「安い資産」だ。事業は薄利の問屋で、10 年後に今より強くなっている姿は描きにくい。それでも、なくなる事業でもない。野球の道具は誰かが作り、誰かが店に届ける。
大事なのは値段だ。時価総額 83 億円に対し、純現金は 88 億円、株式は 39 億円ある。事業の利益は年 10 億円前後だ。つまり今の値段は、事業をほぼただで付けている。
ただし、その現金が株主の手に戻る保証はない。創業家が 2 割強を持ち、配当は控えめで、自社株買いもない。現金が積み上がるだけなら、少数株主にとっては絵に描いた餅になる。筆者が現金を満額で数えないのはこのためだ。
それでも安全域は厚い。悪い筋書きでも、現金と株式の半分は残る。経営が還元を厚くすれば、値打ちは一気に表に出る。辛抱強い株主には、待つ価値のある会社だと筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
ゼットは大阪の会社で、スポーツ用品の問屋が本業だ。メーカー約 300 社から仕入れ、全国のスポーツ用品店や量販店へ卸す。売上の 97%が卸売で、残りは小売、物流の受託、野球用品の製造である。
柱は二つある。一つは自社の野球ブランド「ZETT」だ。グラブ、バット、スパイク、捕手の防具までそろい、プロ野球選手の注文グラブも作る。子会社のゼットクリエイトが企画し、中国、ベトナム、台湾の協力工場で作る。もう一つは他社ブランドの卸で、テニス、バドミントン、サッカー、陸上、アウトドアまで幅広い。バスケットボールでは「コンバース」の商標を借りてウェアを売る。
卸の役割は、在庫を持ち、小さなスポーツ店に少しずつ届け、代金の回収を引き受けることだ。売掛金と電子記録債権は 127 億円、商品は 42 億円ある。これを買掛金 143 億円で賄う形で、運転資金はほとんど要らない。
倉庫と支店の一部は借りており、賃借料は年 5.6 億円だ。従業員は 578 人。販売先別の売上は開示がないが、特定の 1 社に頼る形ではない。
優良さと弱いところ
強みは、野球という狭い市場で積み上げた信用だ。「ZETT」は少年野球から高校、プロまで名前が通る。新基準の金属バットや白いスパイクは、規則の変更に素早く応えて売れた。小さな専門店が多い野球の流通では、品ぞろえと配送の細かさが効く。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるほど深くはない。卸の値段は、仕入先のメーカーと、売り先の量販店に挟まれて決まる。ナイキやアディダス、アシックスは自前で直販を広げている。コンバースの商標は 2028 年末までの契約で、更新の保証はない。
資本効率は低い。ROE は 6%前後で、資本コストに届かない。会社の目標も営業利益率 2.5%、ROE 7%と控えめだ。財務の堅さは本物だが、それは現金を積み上げてきた結果でもある。筆者は、事業の質は並みより下、財務の質は上と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のスポーツ用品市場は、矢野経済研究所の推計で 2025 年に 1 兆 7,313 億円だ。前年より 3%増えたが、中身は値上げである。実際の数量は少子化で伸びにくい。
分野で明暗が分かれる。野球は競技人口が長く減ってきた。中学の軟式野球部員は、この 15 年で半分以下になった。一方で、ランニング、アウトドア、テニス、バドミントンは底堅い。スポーツ用品を普段着として使う需要も広がった。訪日客が日本でシューズや卓球用品を買う動きも出ている。
流通の形も変わる。大手ブランドは自社のネット通販と直営店を広げ、問屋を通さない比率を上げてきた。売り先の側でも、ゼビオやアルペンのような大型店が仕入れを集め、メーカーと直接取引する。小さな町のスポーツ店は後継ぎ不足で減っている。
それでも問屋が消えるわけではない。300 社の商品を 1 回で届け、代金の回収を肩代わりする機能は、小さな店とメーカーの双方に要る。人手不足で物流費が上がるほど、まとめて運ぶ問屋の価値は増す面もある。筆者は、数量は 10 年で横ばい、利益率は今の水準のまま、というのが自然な見通しだと考える。
資本政策と M&A
資本の使い方は保守的だ。配当は普通配当だけで、総額は年 3.5 億円。配当性向は 36%、今期予想では 42%になる。自社株買いの実績はない。純現金は 10 年前の 30 億円から 88 億円へ、ほぼ利益の分だけ積み上がった。
持ち合いの株式は 39 億円ある。仕入先のゴールドウイン、ヨネックス、モリトなどだ。2025 年 3 月期には一部を売り、純利益が 30 億円に膨らんだ。セブン&アイの株も全部売った。ただし取引先の持株会を通じて買い増してもいる。売る方針は数字で示されていない。
大株主は創業家の資産管理会社の有限会社眞徳で、2026 年 5 月の報告で 21.66%を持つ。株主優待はネット通販の 2 割引きだけで、費用は小さい。買収の計画も発表されていない。現金の使い道が示されない限り、株主の取り分として満額は数えにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
値段が安すぎる。時価総額 83 億円は、純現金 88 億円を下回る。仕入先の株 39 億円も上乗せされる。事業の利益は年 10 億円あり、これに値段がほとんど付いていない。
事業も細っていない。売上は 4 年続けて過去最高を更新し、2026 年 3 月期は 587 億円だった。野球では新基準の金属バットが売れ、テニスやランニング、アウトドアも伸びた。卸の価値は、物流費が上がるほど高まる。小さな店はメーカーと直接取引できないからだ。
還元が変わる余地もある。東証は資本の使い方の改善を求め、PBR が 1 倍を下回る会社への目が厳しくなった。持ち合い株の売却はすでに始まっている。配当性向を上げるか、自社株買いを始めれば、現金は株主に戻る。創業家が非公開化を選ぶなら、純資産に近い値段が出る可能性もある。
利益率が会社の目標 2.5%に届けば、営業利益は 15 億円を超える。そうなれば、今の値段は利益の 6 倍台でしかない。
慎重な見方
現金は株主のものになっていない。純現金は 10 年で 30 億円から 88 億円に増えたが、自社株買いは一度もない。配当は利益の 4 割前後で、残りは積まれるだけだ。創業家が 2 割強を持つ以上、この方針はすぐには変わらない。現金を満額で数えるのは甘い。
事業の先行きも暗い。野球の競技人口は少子化で減り続ける。大手ブランドは直販を広げ、量販店はメーカーと直接つながる。問屋を通す取引は細るばかりだ。コンバースの商標は 2028 年末で契約が切れ、更新されなければ売上の柱が一つ欠ける。
利益の薄さはもろさでもある。営業利益率は 2%しかなく、売上が 1 割落ちれば利益はほぼ消える。2010 年代前半には 4 期続けて赤字になった。物流費と人件費は毎年上がり、値上げを転嫁できなければ利益は削られる。
今期の会社予想も減益だ。持ち合い株の売却益がなくなれば、純利益は 8 億円台に戻る。安いのには理由がある。
どちらに重みを置いたか
数字の上では強気の側が勝つ。事業の稼ぎを控えめに見ても、現金と株式を合わせた値打ちは今の値段を上回る。ただ、現金が戻らない懸念はもっともで、現金の戻り方を 4 分の 3 に割り引いた。確率は中立に 4 割を置き、問屋の地盤沈下を映して、やや悲観と悲観に合わせて 3 割強を残した。楽観は還元の改善と利益率の上昇が両方そろう形で、1 割弱にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,114 円218 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 227 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 671 円131 億円、今との差 +60.4%、 期待の年率 +12.4%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,113 円414 億円 | 358 円70 億円 | +491.1% | +19.4% | 198 円39 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,566 円307 億円 | 307 円60 億円 | +348.0% | +16.2% | 375 円73 億円 |
| 中立 | 40% | 1,203 円235 億円 | 245 円48 億円 | +246.5% | +13.2% | 579 円113 億円 |
| やや悲観 | 22% | 551 円108 億円 | 153 円30 億円 | +68.4% | +5.3% | 155 円30 億円 |
| 悲観 | 10% | 298 円58 億円 | 51 円10 億円 | −16.5% | −1.8% | 35 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,114 円218 億円 | 227 円44 億円 | +220.9% | +12.4% | 1,341 円263 億円 |
今の株価時価総額 418 円82 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 還元が厚くなり、問屋の集約で利益率が 2.8%へ 利益 24 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 2,113 円414 億円
町のスポーツ店とメーカーをつなぐ問屋は数が減り、残った会社に取引が集まる。ゼットはその受け皿になり、シェアは 1 割強増える。ランニングやアウトドア、訪日客の買い物も追い風で、市場の量は 1 割伸びる。
値上げは物価をわずかに上回って通り、物流の自動化が効いて、営業利益率は 2.8%まで上がる。会社の目標 2.5%を超える形だ。
還元も変わる。東証の要請と持ち合いの解消が進み、配当性向は 4 割を超え、積み上がった現金の一部が株主に戻る。コンバースの商標も更新される。営業利益は 28 億円台に届き、問屋としては上出来の会社になる。
- スポーツ用品の卸売(自社の ZETT を含む):数量 21,901(国内スポーツ用品の出荷市場(実質・2025 年の値段で億円)× ゼットのシェアの変化(2026/03 = 1))× 価格 1.38(卸値の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 1,024 億円・営業利益 29 億円。市場×シェア変化 21901、卸値 1.38 倍、営業利益率 2.8%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 15.43 倍、時価総額 402 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率の上昇と量の増加が同時に起きる形。過去 30 年で利益率が 3%を超えたことはなく、まれな筋書きなので 1 割を切る。
やや楽観 20% 専門の品ぞろえが効き、利益率は目標の 2.4%前後 利益 18 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 1,566 円307 億円
野球の数量は減るが、テニス、バドミントン、ランニング、アウトドアが補う。市場の量はわずかに増え、ゼットのシェアも 1 割弱上がる。卸値は物価並みよりやや強く、10 年で 1.36 倍になる。
物流の省人化への投資が実り、営業利益率は 2.4%に上がる。会社の目標に近い水準だ。営業利益は 21 億円になる。
配当は性向 4 割を保ち、持ち合い株は少しずつ減る。現金は事業に使われず積み上がるが、急に株主へ戻ることもない。問屋として堅実に稼ぎ続ける形で、今の延長線の上側にあたる。コンバースの商標も更新され、バスケットボールの売上は保たれる。
- スポーツ用品の卸売(自社の ZETT を含む):数量 19,081(国内スポーツ用品の出荷市場(実質・2025 年の値段で億円)× ゼットのシェアの変化(2026/03 = 1))× 価格 1.36(卸値の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 879 億円・営業利益 21 億円。市場×シェア変化 19081、卸値 1.36 倍、営業利益率 2.4%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 14.5 倍、時価総額 291 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上が 4 年続けて過去最高で、会社の目標の利益率 2.5%は手の届く範囲にある。勢いの実績があるので 2 割を置く。
中立 40% 量は横ばい、利益率 2%のまま現金が積み上がる 利益 14 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 1,203 円235 億円
国内のスポーツ用品の量は、少子化と健康志向が打ち消し合って横ばいだ。野球は細り、ランニングやアウトドアが埋める。ゼットのシェアも変わらない。卸値は物価並みで、10 年で 1.34 倍になる。
営業利益率は 2.0%のまま。物流費と人件費の上昇を値上げで吸収するのが精一杯だ。営業利益は 16 億円弱、純利益は現金の利息を含めて 14 億円になる。
配当は性向 4 割前後で、自社株買いはしない。現金はさらに積み上がる。コンバースの商標は条件を変えて続く。持ち合い株は少しずつ売られるが、売った分は現金になるだけだ。地味だが、つぶれる心配のない問屋であり続ける。
- スポーツ用品の卸売(自社の ZETT を含む):数量 17,313(国内スポーツ用品の出荷市場(実質・2025 年の値段で億円)× ゼットのシェアの変化(2026/03 = 1))× 価格 1.34(卸値の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 786 億円・営業利益 16 億円。市場×シェア変化 17313、卸値 1.34 倍、営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 13.37 倍、時価総額 215 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上の伸びは値上げが中心で、利益率は 10 年以上 2%前後に張り付いている。会社の予想も減益で、今の延長が最も起きやすい。
やや悲観 22% 大手の直販が進み、問屋の取り分が削られる 利益 7 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 551 円108 億円
ナイキやアシックスなど大手の直販が広がり、量販店もメーカーと直接取引する。問屋を通る量は細り、ゼットの卸す量は 2 割減る。野球の競技人口の減少も重い。
値上げは通りにくくなり、卸値は 10 年で 1.28 倍にとどまる。倉庫の家賃と人件費は下がらず、営業利益率は 1.2%に落ちる。営業利益は 7 億円台だ。
コンバースの商標は更新されず、バスケットボールの売上が欠ける。配当は細り、現金の一部は不振の穴埋めに使われる。事業は残るが、資本コストを稼げない問屋になる。持ち合いの株を売っても、現金が積み上がるだけで株主には戻らない。
- スポーツ用品の卸売(自社の ZETT を含む):数量 13,980(国内スポーツ用品の出荷市場(実質・2025 年の値段で億円)× ゼットのシェアの変化(2026/03 = 1))× 価格 1.28(卸値の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 606 億円・営業利益 7 億円。市場×シェア変化 13980、卸値 1.28 倍、営業利益率 1.2%
倍率:事業の純利益 6.3 億円、自己資本 208 億円で ROE 約 3%。稼ぐ力(純利益 ÷ k)の倍率 12.1 倍の 75%(9.0 倍)に置く。余った現金は谷で一部を食う前提で今の額の 0.75 倍(37.5 億円)に戻り方 0.75 を掛けて足す。PBR は中立より低い。
確率:大手ブランドの直販と量販店の直接取引は実際に進んでいる。コンバースの商標の期限も近く、2 割強を置く。
悲観 10% 取引先を失い赤字に。現金と株式だけが残る 利益 −2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 298 円58 億円
有力な仕入先が相次いで直販に切り替え、量販店の取引も細る。ゼットの卸す量は 3 分の 2 に減る。値上げは通らず、卸値は 10 年で 1.22 倍だ。
売上が落ちても倉庫の家賃と人件費は残り、営業利益はわずかな赤字に沈む。配当は止まり、現金は赤字の穴埋めと人員の整理に使われる。
値打ちは、もはや事業の稼ぎでは測れない。残るのは手元の現金と、持ち合いの株式だ。ただし、創業家が経営を握る限り、清算されて株主に配られるとは限らない。現金と株式は帳簿の額の半分ほどでしか数えられない。それでも、借金のない会社が一気に倒れることはない。
- スポーツ用品の卸売(自社の ZETT を含む):数量 11,254(国内スポーツ用品の出荷市場(実質・2025 年の値段で億円)× ゼットのシェアの変化(2026/03 = 1))× 価格 1.22(卸値の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 465 億円・営業利益 −3 億円。市場×シェア変化 11254、卸値 1.22 倍、営業利益率 -0.6%
倍率:赤字で稼ぐ力はないので、床は純現金と売れる株式の税後に戻り方を掛けた額。今の自己資本 153 億円への PBR 0.38 倍(約 58 億円)で見る。内訳は floor_assets_why。
確率:2010 年代前半に 4 期続けて赤字になった前例がある。主要な仕入先の直販への切り替えが重なれば起きうるので、1 割を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
スポーツ用品の卸売(自社の ZETT を含む)
約 300 社のスポーツ用品を全国の専門店・量販店に卸す。自社ブランドの野球用品も含む。単一セグメント。
| 数量国内スポーツ用品の出荷市場(実質・2025 年の値段で億円)× ゼットのシェアの変化(2026/03 = 1) | 価格卸値の指数(2026/03 = 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 17,313 | 1.00 | 587 | 13 |
| 10 年後 中立 | 17,313 | 1.34 | 786 | 16 |
取り方:数量の開示はなく、売上からの推定。矢野経済研究所の国内出荷市場 1 兆 7,313 億円(2025 年)を数量とし、決算短信の連結売上 586.55 億円との比 3.39% を今のシェア(rev_factor)とした。筋書きの数量は市場の実質の伸びとシェアの変化を掛けたもの。卸値は指数。小売・物流・製造の 15 億円も含む。
リスクと懸念
問屋を通さない流れ
ナイキ、アディダス、アシックスなど大手ブランドは自社の通販と直営店を広げている。ゼビオやアルペンのような大型店もメーカーと直接取引する。問屋を通る量が細れば、売上も利益も同時に削られる。
野球人口の減少
自社ブランドの柱は野球だ。少子化で中学の野球部員は大きく減り、少年野球のチームも減っている。単価の高い道具で補っても、競技人口が減り続ければ量の減少は避けられない。
コンバースの商標の期限
バスケットボールのウェアは「コンバース」の商標を借りて売っている。契約は 2028 年 12 月 31 日までだ。更新されないか、条件が悪くなれば、売上の一角が欠ける。
薄い利益率
営業利益率は 2%しかない。売上が 1 割落ちれば利益はほぼ消える。2010〜2013 年 3 月期には 4 期続けて赤字だった。物流費と人件費の上昇を値上げで転嫁できるかが、毎年の分かれ目になる。
現金が戻らない
純現金は 88 億円と時価総額を上回るが、自社株買いはしていない。創業家の資産管理会社が 2 割強を持つ。現金が積み上がるだけなら、少数株主にとっての値打ちは帳簿の額を大きく下回る。
持ち合い株の値下がり
仕入先などの株を 39 億円持つ。株式相場が崩れれば、自己資本と悲観の床が同時に減る。逆に売却が進めば、現金に変わって株主還元の原資になる。
今後の分かれ目
- 自社株買いを発表するか、配当性向を 5 割以上に上げたら
- 現金が株主に戻る証拠で、現金の戻り方を満額に近づけ、やや楽観の確率を上げる。
- コンバースの商標契約が 2028 年末に更新されなかったら
- 売上の一角が欠け、やや悲観の確率を上げる。
- 営業利益率が 2.5%を 2 期続けて超えたら
- 会社の目標が定着した形で、やや楽観の利益率に近づく。
- 創業家が非公開化や MBO を発表したら
- 純資産に近い値段が付く可能性があり、分析の対象から外れる。
- 持ち合い株の売却額と期限を数字で示したら
- 売った分を余った現金に加え、値打ちを引き上げる。
見ておくもの
- 卸売部門の売上と営業利益率
- 配当性向と自社株買いの有無
- 純現金と投資有価証券の残高
- コンバースの商標契約の更新
- 眞徳など創業家の持株比率
倍率と資本コストの決め方
今の株価からは置かず、国内出荷市場 × シェアの量と卸値で売上を積んだ。数量の開示がないため売上から推定した。倍率は ROE が k を下回る筋書きで 1÷k を上限に、利益の質の低さで 8〜9 割に置いた。純現金のうち運転資金と季節の余裕を除いた 50 億円を余った現金に分け、創業家支配と還元の弱さで戻り方を 0.75 にした。持ち合い株は配当が利益に入るので余った現金に足さず、悲観の床だけに数えた。2028/03 期から倉庫の賃借がリース負債として載るが、10 年後も家賃を費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.3→15.43 倍・やや楽観 PER 10.5→14.5 倍・中立 PER 9.7→13.37 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。