結論
コスモ・バイオは、海外の小さな試薬メーカーが作る抗体やたんぱく質を輸入し、日本の大学や製薬会社の研究者に売る専門商社だ。筆者の結論は「資産は厚いが、本業の稼ぐ力が細く、今の値段はやや高い」である。
手元には現金と有価証券がたっぷりある。純現金と流動の有価証券で約 47 億円、投資有価証券も 38 億円ある。合わせると時価総額の 71 億円を上回る。数字だけ見れば、事業がただで付いてくる勘定だ。
しかし本業は薄利だ。売上は 108 億円まで伸びたが、営業利益は 3 億円台にとどまる。円安で仕入れ値が上がり、値上げが追いつかない。海外の大手メーカーは日本でも直販を広げており、仲介の取り分は細る方向にある。
現金は株主に一部しか戻っておらず、利回りの低い資産として眠る。10 年後の価値を今に引き直すと、確率で重みづけた値は今の時価総額を 2 割ほど下回る。資産の厚さは下値の支えだが、上値の理由にはならない。値段が報われるには、経営が現金を株主に戻すか、外から買い手が現れる必要がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、コスモ・バイオは「安く見えるが、持ち続けて報われるかは別」の会社だ。
資産の面は魅力がある。時価総額 71 億円に対し、現金と有価証券は 85 億円ほどある。帳簿の自己資本は 94 億円だ。清算すれば今の値段より多く戻る計算になる。
ただ、清算は少数株主には決められない。現金は年 2% ほどしか生まず、事業は資本コストを下回る利回りでしか回らない。10 年持てば、現金の多くは同じ場所で眠り、事業の利益は物価に少し勝つ程度だろう。
筆者が気にするのは、経営がこの現金をどう使うかだ。配当は厚いが、自己株買いは小さい。新規事業への投資が実を結ばなければ、現金は少しずつ目減りする。
安全域は資産の厚さが作る。上値を作るのは、経営が資本の使い方を変えるか、外から買い手が来るかのどちらかで、事業の成長ではない。オーナーとして長く持ちたい事業かと問われれば、筆者は首をかしげる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。世界の約 500 社から試薬や機器を仕入れ、日本の研究者に売る。扱う品目は 1,000 万点を超える。売上の 8 割が研究用試薬、残りが機器である。
試薬の中心は抗体、たんぱく質、細胞培養の材料などだ。大手が手を出さない小さなメーカーの品を多くそろえ、カタログと自社サイトで探せるようにしている。注文は代理店を通して届くことが多く、1 件ごとの金額は小さい。研究室が予算を使う年度末に売上が寄る。
機器は子会社のビーエム機器(持株 67.8%)が担う。実験用の装置や消耗品を扱い、売上は 21 億円ほどだ。米国の子会社 COSMO BIO USA は、日本で作った試薬を海外へ売り、北米の品を仕入れる窓口になっている。ただ赤字が続く。
利益の構造は商社そのものだ。売上総利益率は 34% あるが、物流と人件費、カタログの費用でほとんどが消える。営業利益率は 3% 前後で、為替が円安に振れると仕入れ値が先に上がり、値上げが後から追う。
新しい柱として、鶏卵の中でたんぱく質を作る技術や、研究の受託先を探せる仕組み「Scientist³」を育てている。まだ利益を出す段階ではない。
優良さと弱いところ
堀は浅いと見る。品ぞろえの広さと、研究者に名前が知られている点は強みだ。ただ、売っている品は他社の製品で、値段の多くは仕入れ先と競合が決める。
いちばんの弱みは、仕入れ先が直販に動けば取り分が消えることだ。海外の大手は日本法人を持ち、ネットで研究者に直接売る。コスモ・バイオが強いのは、日本に拠点を持たない小さなメーカーの品だが、そうしたメーカーが大手に買われると販路ごと移る恐れがある。
資本の効率も低い。過去 10 年の ROE の中央値は 4% で、資本コストに届かない。自己資本の半分近くが現金と有価証券で、利益を生む事業に回っていない。
経営の資本の使い方にも物足りなさが残る。配当は厚いが、現金を自己株買いに回す決断はしてこなかった。新規事業への投資は長く続くが、まだ利益に結びついていない。
それでも財務は堅い。借金はほぼなく、自己資本比率は 74% だ。赤字の年もない。会社がつぶれる心配はまず要らないが、価値を増やす力も弱い会社だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
研究用試薬の需要は、大学と公的機関、製薬会社の研究予算で決まる。国の科学研究費は 2 千億円台で横ばいが続き、大学の運営費は細る。製薬会社の研究費は増えているが、海外に研究拠点を移す動きもある。国内の需要は、量で見れば横ばいが精いっぱいだ。
伸びている分野はある。再生医療、抗体医薬、細胞やゲノムの解析だ。新しい手法が出るたびに、必要な試薬は入れ替わる。品ぞろえを早く替えられる商社には追い風になる。
競争は二重にある。1 つは同じ輸入商社どうしの競争だ。フナコシなど非上場の老舗が多く、値引きで客を取り合う。もう 1 つは、メーカーの直販である。サーモフィッシャーやメルクのような大手は、日本法人とネット通販で研究者に直接届ける。代理店の取り分は、時間とともに削られてきた。
為替も効く。仕入れの多くはドルとユーロで、円安は原価を押し上げる。業界全体で値上げは進んだが、研究室の予算は年度で決まっているため、値上げの分だけ買う量が減ることもある。
10 年で見ると、量は横ばい、値段は物価並みかやや下という業界だ。勝ち残るのは、独自の製品を持つか、物流と情報の仕組みで大手と組める会社だろう。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2025 年の配当総額は約 2.8 億円で、配当性向は 84% に達した。配当性向と株主資本配当率(DOE)を重視するとしており、利益が減っても配当は保つ姿勢だ。自己株買いは年 1 億円に満たない。
一方で、現金は使われずに残る。純現金は 10 年で 14 億円から 27 億円へ増え、投資有価証券も 38 億円ある。新日本空調の株を 22 億円分持ち、取引関係の維持を理由に挙げる。
大株主は東京中小企業投資育成が 20% 強で、親会社はない。新しい中期経営計画は ROE 8% 以上と PBR 1 倍以上を目標に掲げるが、売上や利益の数値目標はない。
資産が時価総額を上回る形は、買収の標的になりやすい。投資ファンドや同業が現金ごと取りに来る筋は、10 年の間に十分ありうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現金と有価証券だけで時価総額を超える。事業がただで手に入る値段だ。売上は 5 年で 2 割伸び、2026 年も中間期で 1 割近く増えた。研究の手法が変わるたびに新しい試薬が要り、品ぞろえの広さが効く。
利益の薄さは為替の一時的な重荷による。2021 年には営業利益率が 11% あった。円安が落ち着き、値上げが通れば、利益率は 5% 以上に戻る。新規事業の鶏卵バイオリアクターは、たんぱく質を安く作れる独自の技術だ。原料として製薬会社に売れれば、商社にない利益率が取れる。
資本政策も動き出した。新しい計画は PBR 1 倍以上を掲げる。現金を自己株買いに回すだけで、ROE は大きく上がる。東京中小企業投資育成が大株主で、外部の目もある。資産が時価総額を上回る会社は、ファンドや同業の買収の対象になりやすい。
下値も固い。借金はなく、赤字の年もない。最悪でも資産が残る会社に、大きく賭ける必要はない。上に振れる道が複数あり、下には床がある形だ。
慎重な見方
現金が厚いのは昔からで、株主に戻ってこなかった。純現金は 10 年で倍になったが、自己株買いは年 1 億円に届かない。この先も同じなら、現金は年 2% の利回りで眠り続ける。
本業は構造的に細る。海外の大手は日本でも直販とネット通販を広げ、代理店を通す理由は減っている。コスモ・バイオの強みは小さなメーカーの品だが、そうしたメーカーは大手に買われ、販路ごと移っていく。仲介の取り分は時間とともに薄くなる。
2021 年の利益率 11% はコロナ下の特需と円高の重なりで、再現は難しい。国の研究予算は横ばいで、量は伸びない。新規事業は何年も赤字のままで、成果は見えない。
営業利益 3 億円台では、新規事業の失敗 1 つで利益が飛ぶ。資産があっても、経営がそれを事業に使えば価値は減る。
買収の期待も当てにならない。大株主の投資育成会社は長く持つ株主で、売り急ぐ理由はない。資産が厚いのに買い手が来なかった年月が、すでに長く続いている。
どちらに重みを置いたか
資産の厚さは本物で、下値は固い。しかし、現金が株主に戻る道筋は弱く、本業の取り分は細る方向にある。慎重な見方がやや強いと判断し、中立の重みを大きく取りつつ、やや悲観側を楽観側より厚くした。
資本政策が変わり、自己株買いや増配で現金が戻り始めれば、楽観側の確率を上げる。仕入れ先の直販が目に見えて広がれば、悲観側を厚くする。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,293 円74 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 589 円34 億円)。 今の値に割り戻すと 946 円54 億円、今との差 −23.1%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,906 円109 億円 | 755 円43 億円 | +116.3% | +8.0% | 266 円15 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,622 円92 億円 | 684 円39 億円 | +87.5% | +6.5% | 461 円26 億円 |
| 中立 | 38% | 1,409 円80 億円 | 614 円35 億円 | +64.5% | +5.1% | 769 円44 億円 |
| やや悲観 | 22% | 788 円45 億円 | 491 円28 億円 | +4.0% | +0.4% | 281 円16 億円 |
| 悲観 | 10% | 693 円40 億円 | 351 円20 億円 | −15.1% | −1.6% | 104 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,293 円74 億円 | 589 円34 億円 | +53.0% | +4.3% | 1,882 円107 億円 |
今の株価時価総額 1,230 円70 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:新規事業が利益を生み、海外販売と品ぞろえの入れ替えで利益率 5% 台へ 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,906 円109 億円
新しい技術が実を結ぶ。鶏卵でたんぱく質を作る技術が、製薬会社や診断薬の原料として採用される。商社にない利益率の事業が、本業の上に乗る。
本業でも品ぞろえの入れ替えが進む。再生医療や細胞解析の試薬に重心を移し、取引する研究者は 1 割増える。米国子会社は日本発の試薬を海外へ売り、黒字に転じる。
値上げも物価並みに通る。営業利益は 8 億円台、利益率は 5% を超える。2021 年の 11% には届かないが、過去 10 年の平均を上回る。
現金は配当で戻し続け、自己資本はほぼ横ばいだ。事業の ROE は資本コストを上回り、市場はこの会社を成長する専門商社として見直す。
- 研究用試薬:数量 66.0(買ってくれる研究者の数(千人・推定))× 価格 19(研究者 1 人あたりの年間の購入額(万円))→ 売上 126 億円・営業利益 8 億円。研究者 1.10 倍・単価 1.34 倍
- 機器:数量 12.0(販売台数・点数(千台・推定))× 価格 27(1 台あたりの平均単価(万円))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。台数 1.09 倍・単価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 12.13 倍、時価総額 109 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:鶏卵バイオリアクターの原料供給が製薬会社に採用され、米国子会社が黒字化する筋。新規事業は何年も赤字で、両方がそろう見込みは低く、1 割とした。
やや楽観 20% やや楽観:品ぞろえの入れ替えが効き、利益率は 4% 台に戻る 利益 6 億円 · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 1,622 円92 億円
研究の手法の変化に合わせた品ぞろえが効き、取引する研究者は 5% 増える。値上げはほぼ物価並みに通り、仕入れ値の上昇を吸収する。
新規事業は大きな利益を生まないが、赤字は小さくなる。米国子会社は収支とんとんに近づく。営業利益は 6〜7 億円、利益率は 4% 台に戻る。
現金の使い方は大きく変わらない。配当は厚いまま続き、自己株買いは小さい。それでも利益が増える分だけ、配当も増える。
事業の ROE は資本コストをわずかに上回る。現金と有価証券の厚さはそのまま下値を支え、事業の価値が少し上乗せされる姿だ。商社としては上出来だが、資本の使い方が変わらない限り、上値は限られる。
- 研究用試薬:数量 63.0(買ってくれる研究者の数(千人・推定))× 価格 19(研究者 1 人あたりの年間の購入額(万円))→ 売上 119 億円・営業利益 7 億円。研究者 1.05 倍・単価 1.32 倍
- 機器:数量 11.5(販売台数・点数(千台・推定))× 価格 27(1 台あたりの平均単価(万円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。台数 1.05 倍・単価 1.32 倍
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 11.57 倍、時価総額 92 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上は 5 年で 2 割伸び、2026 年の中間期も 1 割近い増収と、量の伸びには実績がある。値上げの浸透と新規事業の赤字縮小が重なる筋として 2 割とした。
中立 38% 中立:量は横ばい、値段は物価並みに少し届かず、営業利益は 5 億円台 利益 5 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,409 円80 億円
取引する研究者の数は、ほぼ横ばいだ。国の研究予算は増えず、大学の研究者は細るが、製薬や新しい分野の研究がその分を埋める。
値段は物価に少し届かない。仕入れ先の値上げは通すが、競合の値引きと直販の圧力で、上げ幅の一部を自社でかぶる。営業利益は 5 億円台、利益率は 4% 弱だ。新規事業は赤字を縮めるが、全社を押し上げるほどではない。
現金と有価証券は厚いまま残る。配当性向 8 割台の配当は続くが、自己株買いは小さい。自己資本はほぼ横ばいで、ROE は 5% に届かない。
資産は時価総額を支えるが、10 年で価値が大きく増える筋ではない。
- 研究用試薬:数量 61.2(買ってくれる研究者の数(千人・推定))× 価格 19(研究者 1 人あたりの年間の購入額(万円))→ 売上 114 億円・営業利益 6 億円。研究者 1.02 倍・単価 1.30 倍
- 機器:数量 11.0(販売台数・点数(千台・推定))× 価格 26(1 台あたりの平均単価(万円))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。台数 1.00 倍・単価 1.30 倍
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 80 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:研究予算は横ばい、値上げは物価に少し遅れ、直販の圧力はゆっくり効く。過去 10 年の利益率の中央値 5% 前後に近い姿で、いちばん起きやすい筋として 4 割近くを置いた。
やや悲観 22% やや悲観:直販の圧力と値引きで量が減り、利益率は 3% を割る 利益 3 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 788 円45 億円
海外のメーカーが日本での直販を広げ、取引する研究者は 5% 減る。値引きの競争も続き、値段は物価に 1 割近く届かない。
営業利益は 3 億円を割り、利益率は 3% を下回る。新規事業は赤字が続き、米国子会社も立て直せない。それでも借金がないので、配当は株主資本配当率を目安に保つ。
現金の一部は、新規事業への投資と小さな買収に使われる。思ったほどの成果は出ず、手元の余裕は 4 分の 3 ほどに減る。
事業の ROE は 4% 前後に落ちる。資産は残るが、その使い方への信頼が下がり、価値は帳簿を大きく割り込む。今の利益率の低さが、一時の為替ではなく構造だったと分かる筋だ。
- 研究用試薬:数量 57.0(買ってくれる研究者の数(千人・推定))× 価格 18(研究者 1 人あたりの年間の購入額(万円))→ 売上 102 億円・営業利益 4 億円。研究者 0.95 倍・単価 1.26 倍
- 機器:数量 10.5(販売台数・点数(千台・推定))× 価格 25(1 台あたりの平均単価(万円))→ 売上 27 億円・営業利益 0 億円。台数 0.95 倍・単価 1.26 倍
倍率:PER 8.42 倍は事業の純利益 2.3 億円に掛け、余った現金 34 億円(今の 45 億円の 0.75 倍)× 0.75 を足した。事業の ROE は約 4% で k の半分。上限 1÷k の 7 割強とした。
確率:海外大手の直販は実際に広がっており、営業利益率は 2024 年から 3% 台に沈んでいる。今の延長に近い筋なので、楽観側より厚い 2 割強を置いた。
悲観 10% 悲観:仕入れ先の直販と買収で品が抜け、本業はほぼ利益が出なくなる 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 693 円40 億円
取引の多い海外メーカーが大手に買われ、日本では大手の直販に切り替わる。品ぞろえの柱が抜け、取引する研究者は 4 分の 3 に減る。
値段も物価に届かず、営業利益は赤字すれすれになる。機器の子会社も利益が出ない。立て直しの費用がかさみ、本社の費用は削り切れない。
配当は減らし、現金の一部は赤字の穴埋めと事業の作り直しに消える。少数株主には現金の使い方を決められない。
残る価値は、手元の現金と政策保有株の売却額だけになる。それでも清算はされず、市場は資産を割り引いて値を付ける。資産が厚い会社でも、使い道を誤れば少数株主の取り分は細る、という筋だ。
- 研究用試薬:数量 45.0(買ってくれる研究者の数(千人・推定))× 価格 17(研究者 1 人あたりの年間の購入額(万円))→ 売上 77 億円・営業利益 1 億円。研究者 0.75 倍・単価 1.20 倍
- 機器:数量 9.0(販売台数・点数(千台・推定))× 価格 24(1 台あたりの平均単価(万円))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。台数 0.82 倍・単価 1.20 倍
倍率:PBR 0.42 倍を今の自己資本 94 億円に掛けた。稼ぐ力はほぼ無く、価値は余った現金と政策保有株の税後で決まる(floor_assets_oku)。市場の値付けからは置いていない。
確率:主要な仕入れ先が大手に買われて販路が移る例は業界でよくある。借金がなく赤字の期もないので、存続の危うさは低い。構造的に負ける筋として 1 割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
研究用試薬
海外メーカーの抗体・たんぱく質・細胞培養の材料などを輸入し、大学・公的機関・製薬の研究者に売る。自社製品も一部ある。
| 数量買ってくれる研究者の数(千人・推定) | 価格研究者 1 人あたりの年間の購入額(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 60.0 | 14 | 86 | 4 |
| 10 年後 中立 | 61.2 | 19 | 114 | 6 |
取り方:売上 85.6 億円は有報の品目別。研究者の数は開示が無く、国内の生命科学系の研究者のうち取引のある人を約 6 万人と推定し、1 人あたりの購入額を売上から逆算した。利益は単一セグメントのため、全社の営業利益を売上総利益の厚さで試薬と機器に分けた推定。
機器
子会社ビーエム機器を中心に、実験用の装置・器具・消耗品を売る。
| 数量販売台数・点数(千台・推定) | 価格1 台あたりの平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 11.0 | 20 | 22 | 0 |
| 10 年後 中立 | 11.0 | 26 | 29 | 1 |
取り方:売上 22.1 億円は有報の品目別。台数と単価は開示が無く、平均 20 万円の機器が年 1.1 万台と推定。利益率は 2% と推定(ビーエム機器の経常利益 0.7 億円が目安)。
リスクと懸念
仕入れ先の直販と買収
海外の試薬メーカーが日本で直販を始めたり、大手に買われて販路が移ったりすると、品ぞろえの柱が抜ける。小さなメーカーの品に強いことが、裏返せば買収の波に弱い理由になる。
円安と値上げの遅れ
仕入れの多くはドルとユーロ建てだ。円安は原価を先に押し上げ、研究室の予算は年度で決まるため、値上げは後から追う。2024 年以降の利益率の低さは、この遅れによる部分が大きい。
研究予算の伸び悩み
大学と公的機関の研究費は横ばいで、運営費は細る。製薬会社が研究を海外に移せば、国内の需要はさらに減る。量の伸びに頼る筋は描きにくい。
現金が株主に戻らない
現金と有価証券は時価総額に迫るが、自己株買いは小さい。新規事業や買収に使われ、成果が出なければ価値は目減りする。少数株主には使い方を決められない。
新規事業の失敗
鶏卵バイオリアクターや Scientist³ は、まだ利益を生んでいない。営業利益が 3 億円台の会社では、投資の失敗 1 つで年の利益が飛ぶ。
政策保有株の値動き
新日本空調の株を 22 億円分持つ。時価総額の 3 割に当たり、株価が下がれば自己資本と下値の支えが減る。売る方針は数字で示されていない。
今後の分かれ目
- 自己株買いを年 5 億円以上に増やす、または政策保有株を売って還元に回すと発表する
- 現金の戻り方を 0.75 から 1.0 に上げ、やや楽観の確率を 2 割から 3 割に上げる。
- 鶏卵バイオリアクターの原料供給で製薬会社と量産の契約を結ぶ
- 楽観の確率を 1 割から 2 割へ上げ、新規事業を別の柱として数え直す。
- 取引の多い海外メーカーが日本で直販に切り替える
- 試薬の研究者数を中立で 0.95 倍に下げ、悲観の確率を上げる。
- 営業利益率が 2 年続けて 2% を割る
- 中立の利益率を下げ、やや悲観を中立に近い重みで扱う。
- 投資ファンドや同業が株式の取得や買収を提案する
- 資産の厚さが値段に乗る。価値の数字は変えず、買付けの値段と比べて見直す。
見ておくもの
- 営業利益率と売上総利益率(為替の影響)
- 自己株買いの額と配当性向
- 新規事業(鶏卵バイオリアクター・Scientist³)の売上
- 米国子会社の損益
- 政策保有株の売却の有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の ROE と k から式で置いた。事業の ROE は中立で約 7.5% と k 8.75% に届かず、PER は 1÷k の約 12 倍が上限になる。余った現金は戻り方 0.75 を掛けて足し、政策保有株は配当を利益に残すので足していない。今の PBR 0.76 倍や過去の株価の倍率は使っていない。現金が厚いことで割安と言わず、戻る道筋の弱さを戻り方で差し引いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→12.13 倍・やや楽観 PER 11.5→11.57 倍・中立 PER 11→11.43 倍・やや悲観 PER 9→8.42 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75% を足して 8.25%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 8.75%。