結論
扶桑電通は、富士通との取引関係を軸に、全国で通信設備の構築、医療・自治体向けのシステム導入、事務機器販売、運用保守を担うICT商社である。筆者の結論は「やや割高」だ。防災設備を現地で据え付ける仕事は10年後にも必要だが、受託開発と運用業務ではAIエージェントに工数を奪われる危険がある。現状の利益率が会社の長い歴史でも最高水準にあることを忘れてはいけない。
2025年9月期は売上547億円、営業利益34億円を稼いだ。2026年9月期の第3四半期も大型の医療、自治体案件が好調だが、毎年同じ規模の案件が取れるわけではない。中期計画の目標を早々に上回りそうだからといって、2035年も同じ利益率を保証するものではない。全国約54拠点、顧客約2万社という営業網には価値がある一方、製品の知的財産や規制で守られた独占的な利用料は乏しい。
財務の厚さは無視できない。2025年9月末には現金同等物約94億円のほか、投資有価証券約96億円があり、上場政策保有株だけで約44億円ある。ただし前受金、買掛金、給与や施工の運転資金が必要で、その全額を自由な現金とみなすことはできない。既存株主への10年後の取り分には株式給付信託からの交付も織り込んだ。
事業の稼ぎ、将来の余剰資金、配当を別々に評価すると、想定の加重現在価値は約210億円で、基準時価総額234億円に対し約11%低い。これは大幅な割高とは違うが、AI代替の速度、政策保有株の扱い、案件の入札競争が読みにくいことを考えると、現在の価格では十分な安全域を見いだしにくい。
バリュー投資の観点から
長く株主でいるなら、まず手元に残るお金がどこから生まれ、誰がそれを使えるかを見る。扶桑電通は、防災無線の据え付けや病院システムの保守という社会に必要な仕事を持つ。全国にある顧客接点は、富士通などメーカーだけでは必ずしも細かく拾えない案件を見つける力になる。しかし一度構築した仕組みを次回も必ず同社へ頼む契約ではなく、入札や製品更新のたびに価格と技術を競い直さなければならない。
オーナー利益は会計上の純利益をそのまま分けられるものではない。大型案件の受注が伸びれば、完成前の仕掛品、売掛金、技術者の採用・育成、現場費用に現金が吸い込まれる。逆に2025年のように一時的なPC更新や案件集中で利益が上がっても、2035年の通常の稼ぐ力を同じ水準にできる保証はない。現金と政策保有株が厚いのは良いが、買掛金や契約負債を踏まえて事業に必要な資金を確保する必要がある。
最も難しいのは再投資の利回りだ。既存設備を守る仕事は継続しても、AIが一般的なプログラミング、操作、監視を引き受ければ、受託開発や運用保守に何人の技術者を配置できるかで収益が増える時代ではなくなる。システムメイクの買収と人材投資が、減る工数の補填ではなく成果物に応じて高く売れる事業へつながった証拠を見たい。
会社の資本配分を評価する材料として、40%配当とDOEの下限は前向きだ。反面、政策保有株の売却と、利益の高いときに適切な額の自社株買いを行う姿勢はまだ十分に示されていない。2026年の株式給付信託による将来の株数増加も考慮すると、現在の時価総額に対し厚い安全域があるとは言い切れない。10年後も残る良い事業ではあるが、資産と本業の稼ぐ力を足しすぎない慎重さが必要だ。
何で稼ぐ会社か
売り物は箱だけでなく、箱を現場に据え付けて動かし、業務に組み込み、その後も面倒を見る一連の仕事である。会計上は情報通信機器の施工や機器販売、ソフト開発、保守の単一事業だが、営業管理では四つの部門に分かれる。2025年9月期はネットワーク約139億円、ソリューション約167億円、オフィス約121億円、サービス約119億円で、ハードと人手を使う仕事が混在する。
ネットワークは消防・防災無線、官公庁の通信設備、金融機関のネットワーク、店舗のWi-Fiなどを設計・施工する。機材の仕入れと現地工事、試験、保守が必要で、顧客側の安全基準や設備更改に合わせて受注する。物理的な施工はAIだけでは完結しないが、案件は入札や更新時期に左右され、受注金額が大きく振れる。
ソリューションは病院の電子カルテ・医事会計、自治体システムの標準化、企業の基幹システム刷新などを受託する。富士通製品を含むソフト・機器の提供と、技術者が人月を費やす開発・移行が同じ部門に入る。2025年末に取得したシステムメイクは富士通の開発パートナーで、扶桑電通の入札・営業力と結ぶ狙いがあるが、労働集約的な開発能力の買収でもある。
オフィスはパソコン、周辺機器、業務ソフトを仕入れて企業へ販売する。2025年度の国内PCはWindows更新などの特需で出荷が跳ねた。端末の販売台数と納入単価は別に動き、メーカーや直販との競争が強い。サービスは導入したネットワークとシステムの運用保守、クラウド、運行記録のデジタル化などの契約収入である。継続性は相対的に高いが、監視や定型作業の工数、座席課金ソフトの再販にはAIエージェント代替が及ぶ。
富士通との連携は営業を助ける一方、特定の元請けや製品体系の影響も受ける。病院、自治体、金融、製造など顧客が分散していることと、単価・粗利を最終顧客へどこまで転嫁できるかは別問題である。会社は契約件数や案件当たり単価を四部門別には開示していないため、後の数量と単価は市場統計と顧客・技術者規模から作った推計であり、実際の販売数量ではない。
優良さと弱いところ
同社の強みは、顧客に近い場所で提案、調達、施工、保守をまとめて引き受ける体制にある。全国の拠点網、技術者約630人、顧客約2万社は、個々の小規模業者にはまねしにくい。消防・防災無線や病院システムでは稼働を止められず、現場知識と更新実績が次の案件につながる。2025年の会社説明では、富士通との協業強化が新規商談の増加につながったと説明している。
ただし、顧客を長くつかまえる力と、毎年値上げしても逃げられない力は同じではない。公共調達は入札が多く、オフィス機器もメーカー直販と競う。2024年の営業利益率4.0%が2025年に6.3%へ改善したのは確かだが、部門別の販売単価の改定率、解約率、顧客単位の継続粗利は未開示である。値決め力が構造的に強くなった証拠とまでは言えない。
2025年の決算説明資料はROIC19.7%、WACC7.1%としている。しかしこれはその期の投下資本利益率であって、次に一億円を投じたときの増分利回りを測定した数字ではない。過去には営業赤字の年もあり、最近の高収益だけを永続化しないほうがよい。利益を生む専有ソフトや独自データの蓄積、解約率5%未満、法令対応による継続的値上げといった証拠は確認できないため、ソリューションとサービスを「記録の正本」という特別に強い堀には分類しない。
財務は純現金で借り換え危機が小さいものの、退職給付、契約負債、買掛金を抱える卸・施工会社でもある。政策保有株の含み益は損失吸収力になるが、顧客との関係維持のため売却しにくいなら少数株主にとっての換金価値は帳簿額より下がる。堀は普通の強さで、時間とともに一部はAIと直販に削られると判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ICT支出の総額は伸びても、同社の売上に結びつく数量が同じ率で増えるわけではない。IDCは2026年の国内IT市場を約28.4兆円と予測する。ITサービスだけでもIDCの2024年推計は約7.0兆円で、病院システム刷新、クラウド移行、自治体の基盤更新には需要がある。しかし大型案件の仕事量は景気、行政予算、納期、既存システムの更新周期で跳ねる。
ネットワークでは、CIAJの2025年度見通しによるルーター国内需要は約1,289億円、LANスイッチは約1,681億円である。これらは機器の市場であり、施工費を含む扶桑電通のネットワーク部門とそのまま割って正確なシェアにはできない。施工・保守を含めると競合はNECネッツエスアイ、NTTデータ系、富士通Japan、通信キャリア系SIなどまで広がる。自治体防災、通信の老朽化対策という物理的な需要は残るが、大手への元請け集約も進み得る。
オフィスではMM総研による2025年度PC出荷は約1,806万台、金額は約2.09兆円である。更新特需が終わる2026年度は台数減を見込んでおり、端末販売数量の10年先を2025年の延長で考えるべきではない。会社のオフィス売上をPCとソフトのセット販売に換算すると年間約6.8万台、国内市場の約0.4%に相当するが、実台数が開示されないためこれは比較用の概算にすぎない。端末市場にはNECレノボなど大手メーカーと、大塚商会やキヤノンマーケティングジャパンなど販売・導入業者が並ぶ。
ソリューションとサービスの市場には富士通、日立、NEC、NTTデータ、TIS、大塚商会など大手がいる。2025年のソリューションとサービスの合計売上約287億円は、IDCが集計したITサービス市場の約0.4%に相当する。ただし機器やクラウド再販を含むため厳密なサービスシェアではない。AIエージェントはプログラム生成、画面操作、問い合わせ対応、監視の一次対応を直接引き受け、顧客の業務量が増えても売れる人月・ID数は減り得る。市場全体の名目成長を、同社の人月数量の成長に転記してはならない。
資本政策と M&A
第3期中期経営計画「FuSodentsu Vision 2027」は、2027年9月期に売上550億円、営業利益22億円、営業利益率4.0%、ROE10%を掲げる。2025年11月に目標を見直したのは富士通との連携案件の増加が背景だが、2025年の実績利益はすでに計画水準を上回る。これは計画の達成能力を示す一方、良い案件が一時期に集中し得ることも示す。
株主還元の数字の約束は配当性向40%を目安、DOE2.0%を下限とする方針である。自社株買いの金額や総還元性向の数値目標はない。配当性向は過去10年のおおむね35~40%で、直近は40%に引き上げた。積極的な自社株買いで株数を縮小させた実績は見当たらず、上位10株主の保有比率も2025年9月末で約43%なので、蓄積する余剰現金の株主への戻り方は満額ではなく75%とみる。
2025年には北海道システムエンジニアリング、システムメイクを子会社化した。後者は2025年12月から連結され、開発人材と官公庁・金融案件の入札力を組み合わせる狙いがある。買収後の増分ROICはまだ検証できず、対価やのれんの回収を当然視しない。2025年9月末の投資有価証券は約96億円、うち開示された上場政策保有株は約44億円であり、関係維持の効果を定期的に売却代金と比較してほしい。配当を強めても買収と持ち合いが増えれば、少数株主が実際に受け取る現金は少なくなる。
株主優待は保有数に応じたQUOカードである。対象株主数と額面から年約0.05億円の費用を仮置きし、10年の還元には計0.5億円程度を含めた。2026年にはJ-ESOP信託へ自己株54万株を処分しており、将来従業員に交付されれば今の計算上の株数から既存株主の取り分が薄まるため、株式報酬の希薄化も別に評価した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
防災・減災、消防無線、医療情報システム、自治体の標準化は、景気が悪いからといって長期間止められない社会基盤である。扶桑電通には全国の拠点、顧客約2万社、富士通との長い協業関係がある。メーカーが最新機器を直接販売しても、現場の工事、既存設備との接続、障害が起きた際の対応まですべて自前では引き受けにくい。ネットワークの設備数や施工の案件数が伸びれば、仕事は地方自治体、銀行、病院に広く分散する。
2025年の高収益は、単に端末を多く売っただけではない。会社はオフィスとソリューションで粗利率の改善が進んだと説明する。防災ネットワークや医療システムで提案内容を工夫し、仕入れと施工を一体で受注できれば、単純な機器販売よりも顧客に値段を認めてもらえる。受注残高は2025年9月末に296億円となり、新しい大型案件が増えている。
買収したシステムメイクの開発能力は、単独では難しかった官公庁・金融案件への参加を後押しする。業務上の資格や現地施工はAIエージェントだけで代替できない。ソリューションの受託工数がある程度減っても、ネットワーク工事や顧客への一括提案で収益力を補える。さらに、厚い現金と上場株式を適切に還元へ回せば、株主が10年間受け取る価値は本業の成長以上に高まる。
慎重な見方
最大の問題は「どこまでが不可欠な現地仕事か」である。売上の半分ほどを占めるソリューションとサービスには、人が設計し、プログラムを書き、動作を監視し、画面を操作するための対価が含まれる。AIエージェントが業務を直接実行するようになれば、顧客は同じ仕事をより少ない人月や契約IDで済ませられる。富士通との取引網が強くても、元請けがAIで開発を内製化すれば下請けの工数単価は守れない。
独自データの正本や法定記録を独占していないため、既存顧客の囲い込みにも限界がある。運用保守の解約率や値上げ率が開示されない以上、保守契約が増えるほど強い堀が広がるとは断定できない。クラウド直販、パソコンメーカーの直接契約、公共調達での大手SIer優位は、数量と粗利率の両面を圧迫し得る。2025年の最高益には更新特需と大型案件の集中が重なり、これを10年の標準利益とみるのは危険だ。
財務資産にも落とし穴がある。現金同等物約94億円の裏には買掛金、契約負債、退職給付などの支払いがあり、投資有価証券約96億円は株主へ自動的に配られない。政策保有株は取引維持のために売りにくく、買収対価も公開された規律を十分に確認できない。2026年の信託向け自己株式処分は、現時点で分母から除かれた株式が将来従業員へ渡るという持分低下要因になる。構造的な競争力低下と還元不足が重なれば、帳簿の自己資本が大きくても株主価値は縮む。
どちらに重みを置いたか
現場工事と全国の顧客基盤は10年後にも残るので、事業全体がAIに消されるという見方は採らない。しかし利益を伸ばした2025年が歴史上の高水準であり、開発・保守の工数とID課金を守る証拠が十分ではない点は慎重に見る。確率は楽観・やや楽観を計34%、やや悲観・悲観を計38%と、わずかに下側へ寄せた。AIによる数量縮小は中立の事業数量にも既に含めており、同じ要因で資本コストや確率を何重にも罰してはいない。現在の時価総額は事業と資産の概算価値をやや上回り、安全域は限定的と判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,810 円328 億円(+ 還元の換算額還元の合計 777 円91 億円)。 今の値に割り戻すと 1,795 円210 億円、今との差 +3.4%、 期待の年率 +8.7%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 14% | 5,392 円630 億円 | 1,191 円139 億円 | +279.2% | +16.4% | 922 円108 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,206 円491 億円 | 1,009 円118 億円 | +200.4% | +13.4% | 1,043 円122 億円 |
| 中立 | 28% | 2,949 円344 億円 | 816 円95 億円 | +116.8% | +9.3% | 1,054 円123 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,107 円129 億円 | 573 円67 億円 | −3.2% | −0.4% | 420 円49 億円 |
| 悲観 | 13% | 860 円100 億円 | 287 円33 億円 | −34.0% | −4.6% | 149 円17 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,810 円328 億円 | 777 円91 億円 | +106.7% | +8.7% | 3,588 円419 億円 |
今の株価時価総額 1,736 円203 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 14% 防災施工と提案力が伸び、成果案件を取り切る 利益 46 億円 · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,392 円630 億円
自治体の防災・消防無線の更新と災害対応の投資が継続し、全国拠点で通信設備を構築する案件が増える。元請けと自治体からの一括受注が増え、現場施工と接続試験を含むネットワーク部門の価格も守られる。病院の電子カルテ刷新、金融のシステム更改が続き、システムメイクの技術者は単独では入札できなかった案件で力を発揮する。
ただし、AIエージェントによって一般的な開発工数は減り、ソリューションとサービスの実質件数は2025年度より多くは売れない。契約を大きくまとめ、案件管理と仕入れを改善することで利益率を守る。PCは2025年度の更新特需を完全に超えるわけではないが、AI対応端末とセキュリティ設定の商材構成が良くなる。政策保有株の一部売却を含めて余剰資金を厚く積み上げ、配当を継続できる。
- ネットワーク(通信設備・防災施工):数量 549(大中小の設計・施工案件換算件数/年(件、推定))× 価格 0.45(一案件換算の契約単価(億円/件、名目))→ 売上 245 億円・営業利益 22 億円。現地施工主体でAIは事務部分に限定。現場施工の技術者配置と大型一括提案の成功でネットワーク9%、ソリューション9%へ改善。ただし受託のAI工数減を数量には反映済み。
- ソリューション(医療・自治体・企業SI):数量 684(システム導入・開発の案件換算件数/年(件、推定))× 価格 0.31(一案件換算の受注単価(億円/件、名目))→ 売上 211 億円・営業利益 19 億円。人月・工数のAIエージェント代替を数量に反映。現場施工の技術者配置と大型一括提案の成功でネットワーク9%、ソリューション9%へ改善。ただし受託のAI工数減を数量には反映済み。
- オフィス(PC・業務機器・ソフト再販):数量 70,040(PC・ソフトのセット販売換算台数/年(台、推定))× 価格 0.00(端末・ソフト等込みのセット単価(億円/台、名目))→ 売上 181 億円・営業利益 8 億円。メーカー直販と端末更改循環で台数変動。現場施工の技術者配置と大型一括提案の成功でネットワーク9%、ソリューション9%へ改善。ただし受託のAI工数減を数量には反映済み。
- サービス(保守・運用・クラウド):数量 5,130(保守・クラウドの年額契約換算件数(件、推定))× 価格 0.03(一契約換算の年間料金(億円/件、名目))→ 売上 147 億円・営業利益 20 億円。運用工数・ID課金のAIエージェント代替を反映。現場施工の技術者配置と大型一括提案の成功でネットワーク9%、ソリューション9%へ改善。ただし受託のAI工数減を数量には反映済み。
倍率:会社全体の10年後ROEは12.6%。将来余剰現金130億円とその税後利息1.4%を切り出した事業ROEは18.8%で、k8.25%を上回る。堀は通常(残存割合1/2)で増分RONICは13.5%、2035年以降のg_long1.0%から正当化PER=(1−g÷RONIC)/(k−g)=12.77倍とする。事業純利益43.93億円にそのPERを用い、余剰現金の回収率75%を加える。現在の株価や市場PERは使わない。
確率:全国施工の需要拡大と富士通協業の受注単価上昇を同時に実現する筋書き。AIによる人月減少を受けても現場設置と大型一括契約が上回る確率を14%と判断した。
やや楽観 20% 防災と医療で更新需要を取り込む 利益 35 億円 · PER 12.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,206 円491 億円
防災ネットワーク、公共設備の老朽化対策、医療のシステム更新が引き続き発注される。富士通Japanとの協業は維持され、顧客に近い営業網と現地の工事技術を生かして受注を増やす。提案段階での利益管理が定着し、2025年度の高収益を一部引き継ぐ。
受託開発や保守にはAIの影響が出て、技術者の工数で売るソリューションの数量は減る。クラウド再販も直接契約が増えるが、現地支援や既存システムと接続する仕事は残る。PC販売は2025年の特需に届かないものの、セキュリティ設定を含む高付加価値の更新で利益率を保つ。持ち合い株を急に換金する計画は期待せず、現金蓄積と配当で株主に報いる。
- ネットワーク(通信設備・防災施工):数量 504(大中小の設計・施工案件換算件数/年(件、推定))× 価格 0.43(一案件換算の契約単価(億円/件、名目))→ 売上 218 億円・営業利益 17 億円。現地施工主体でAIは事務部分に限定。施工8%、SI8%、保守12%は大型案件の採算と継続契約を改善できた場合。単価には物価と競争を含める。
- ソリューション(医療・自治体・企業SI):数量 612(システム導入・開発の案件換算件数/年(件、推定))× 価格 0.30(一案件換算の受注単価(億円/件、名目))→ 売上 185 億円・営業利益 15 億円。人月・工数のAIエージェント代替を数量に反映。施工8%、SI8%、保守12%は大型案件の採算と継続契約を改善できた場合。単価には物価と競争を含める。
- オフィス(PC・業務機器・ソフト再販):数量 61,200(PC・ソフトのセット販売換算台数/年(台、推定))× 価格 0.00(端末・ソフト等込みのセット単価(億円/台、名目))→ 売上 146 億円・営業利益 5 億円。メーカー直販と端末更改循環で台数変動。施工8%、SI8%、保守12%は大型案件の採算と継続契約を改善できた場合。単価には物価と競争を含める。
- サービス(保守・運用・クラウド):数量 4,590(保守・クラウドの年額契約換算件数(件、推定))× 価格 0.03(一契約換算の年間料金(億円/件、名目))→ 売上 130 億円・営業利益 16 億円。運用工数・ID課金のAIエージェント代替を反映。施工8%、SI8%、保守12%は大型案件の採算と継続契約を改善できた場合。単価には物価と競争を含める。
倍率:会社全体の10年後ROEは10.5%。将来余剰現金125億円とその税後利息1.4%を切り出した事業ROEは16.1%で、k8.25%を上回る。堀は通常(残存割合1/2)で増分RONICは12.2%、2035年以降のg_long1.0%から正当化PER=(1−g÷RONIC)/(k−g)=12.66倍とする。事業純利益33.17億円にそのPERを用い、余剰現金の回収率75%を加える。現在の株価や市場PERは使わない。
確率:富士通協業の既存案件が一部継続し、現場設置という代替困難な強みが効く一方、開発工数は減る見方。楽観ほど連続的な受注増を求めない。
中立 28% 現場の需要は残るが、工数販売が目減りする 利益 23 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,949 円344 億円
防災・消防無線、病院、金融の通信設備は10年後も必要で、ネットワーク案件の件数は現状付近を維持する。物価が上がるにつれて施工を含む案件単価は上がるが、公共調達の競争で実質単価は大きく改善しない。富士通との協業と全国拠点の顧客接点は存続するものの、他の大手SIerからシェアを大きく奪う前提は持たない。
ソリューションの人月・工数型数量は2025年度比0.65倍、サービスの工数と席の混合数量は0.75倍になる。AIエージェントが画面操作、定型開発、運用監視を代行するためである。端末は更新特需の反動で販売数量が減り、メーカー直販で値上げは物価に少し遅れる。利益率は直近最高期より低下するが、現場施工と既存保守が赤字化を防ぐ。配当方針は守られ、運転資金を残して一部の余剰資金が貯まる。
- ネットワーク(通信設備・防災施工):数量 459(大中小の設計・施工案件換算件数/年(件、推定))× 価格 0.41(一案件換算の契約単価(億円/件、名目))→ 売上 190 億円・営業利益 13 億円。現地施工主体でAIは事務部分に限定。案件の粗利改善は一定残るが工数型の数量減少と固定費のインフレを織り込み、全社営業利益率5.7%程度。
- ソリューション(医療・自治体・企業SI):数量 468(システム導入・開発の案件換算件数/年(件、推定))× 価格 0.29(一案件換算の受注単価(億円/件、名目))→ 売上 136 億円・営業利益 10 億円。人月・工数のAIエージェント代替を数量に反映。案件の粗利改善は一定残るが工数型の数量減少と固定費のインフレを織り込み、全社営業利益率5.7%程度。
- オフィス(PC・業務機器・ソフト再販):数量 51,000(PC・ソフトのセット販売換算台数/年(台、推定))× 価格 0.00(端末・ソフト等込みのセット単価(億円/台、名目))→ 売上 118 億円・営業利益 4 億円。メーカー直販と端末更改循環で台数変動。案件の粗利改善は一定残るが工数型の数量減少と固定費のインフレを織り込み、全社営業利益率5.7%程度。
- サービス(保守・運用・クラウド):数量 4,050(保守・クラウドの年額契約換算件数(件、推定))× 価格 0.03(一契約換算の年間料金(億円/件、名目))→ 売上 112 億円・営業利益 12 億円。運用工数・ID課金のAIエージェント代替を反映。案件の粗利改善は一定残るが工数型の数量減少と固定費のインフレを織り込み、全社営業利益率5.7%程度。
倍率:会社全体の10年後ROEは7.9%。将来余剰現金120億円とその税後利息1.4%を切り出した事業ROEは12.2%で、k8.25%を上回る。堀は通常(残存割合1/2)で増分RONICは10.2%、2035年以降のg_long1.0%から正当化PER=(1−g÷RONIC)/(k−g)=12.45倍とする。事業純利益21.70億円にそのPERを用い、余剰現金の回収率75%を加える。現在の株価や市場PERは使わない。
確率:病院と自治体の更新需要は持続する一方、受託工数と運用監視の一部はAIに代替される。2025年度のPC特需と最高利益率を標準としない中心想定。
やや悲観 25% AIと競争で受託の採算が悪化する 利益 8 億円 · PER 11.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,107 円129 億円
自治体や病院は情報設備を更新し続けるが、入札先は従来の取引業者に固定されない。富士通グループが開発を内製化し、公共部門の元請けも人月単価を引き下げる。ソリューションの案件換算数量は半分近くになり、長期保守の監視・問い合わせ対応にもAIエージェントによる縮小が及ぶ。
防災ネットワークには物理施工が残るが、端末設定の自動化と低価格の機材調達で工事の利益率が落ちる。PCの台数は更新特需期の半分強に縮み、再販の値段にも上限がかかる。買収した開発会社を抱えたまま固定費が残るため全社利益率は大きく低下する。純現金と売却可能資産が急な資金繰り危機を防ぐが、配当はDOEを意識しても伸びず、資本効率は株主資本コストを下回る。
- ネットワーク(通信設備・防災施工):数量 387(大中小の設計・施工案件換算件数/年(件、推定))× 価格 0.38(一案件換算の契約単価(億円/件、名目))→ 売上 146 億円・営業利益 7 億円。現地施工主体でAIは事務部分に限定。入札競争とAIによる受託工数単価下落によりSI3.5%、保守6.5%へ悪化。
- ソリューション(医療・自治体・企業SI):数量 374(システム導入・開発の案件換算件数/年(件、推定))× 価格 0.26(一案件換算の受注単価(億円/件、名目))→ 売上 99 億円・営業利益 3 億円。人月・工数のAIエージェント代替を数量に反映。入札競争とAIによる受託工数単価下落によりSI3.5%、保守6.5%へ悪化。
- オフィス(PC・業務機器・ソフト再販):数量 38,080(PC・ソフトのセット販売換算台数/年(台、推定))× 価格 0.00(端末・ソフト等込みのセット単価(億円/台、名目))→ 売上 78 億円・営業利益 1 億円。メーカー直販と端末更改循環で台数変動。入札競争とAIによる受託工数単価下落によりSI3.5%、保守6.5%へ悪化。
- サービス(保守・運用・クラウド):数量 3,348(保守・クラウドの年額契約換算件数(件、推定))× 価格 0.03(一契約換算の年間料金(億円/件、名目))→ 売上 85 億円・営業利益 6 億円。運用工数・ID課金のAIエージェント代替を反映。入札競争とAIによる受託工数単価下落によりSI3.5%、保守6.5%へ悪化。
倍率:全社ROEは3.2%、余剰現金を外した事業ROE3.9%とk8.25%を下回る。稼ぐ力の上限PERは1÷k=12.12倍であり、需要収縮が続くため11.50倍とする。将来余剰現金75億円について想定税後利息1.4%を純利益から除き、戻り方75%を一度だけ加算する。床95億円と稼ぐ力の上限約139億円の間の時価総額である。
確率:下側へ寄せる理由:2025年度の記録的な粗利改善が入札競争で剥落し、ソリューションと保守の定型工数がAIで減る危険がある。ただし現場工事と保守設備は残る。
悲観 13% 受託仕事が半減し、資産も毀損する 利益 −4 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 860 円100 億円
システムの開発・移行、クラウド操作、運用監視の多くを顧客と元請けのAIエージェントが実行し、扶桑電通が従来の工数で売れる仕事は大きく減る。富士通側の開発内製化と競争の激化で、買収した開発会社の人材を維持する費用が利益を上回る。官公庁の防災設備には現地施工が残るが、案件数と実質単価の双方が下がる。
PCはメーカー直販とクラウド端末への変化で出荷数量が2025年度の4割程度に縮む。保守契約もAI化で数量が約半分となり、全社売上は2025年度のおよそ半分になる。2035年には営業赤字が定着し、配当は過去の早い時期に受け取ったものが中心となる。期間中の利益の一部を、政策保有株の価格下落、回収不能債権、買収関連の整理など約73億円の追加損失が相殺すると仮定し、期末自己資本は起点付近に戻る。構造上の独占力を失った会社でも、事業縮小に伴い運転資金の拘束が一部ほどけ、処分可能な金融資産の一部は残る。
- ネットワーク(通信設備・防災施工):数量 293(大中小の設計・施工案件換算件数/年(件、推定))× 価格 0.34(一案件換算の契約単価(億円/件、名目))→ 売上 99 億円・営業利益 1 億円。現地施工主体でAIは事務部分に限定。ソリューションで固定的な開発費が残り営業赤字、ネットワーク施工も低採算化して全社約5億円の営業損失。
- ソリューション(医療・自治体・企業SI):数量 288(システム導入・開発の案件換算件数/年(件、推定))× 価格 0.24(一案件換算の受注単価(億円/件、名目))→ 売上 70 億円・営業利益 −2 億円。人月・工数のAIエージェント代替を数量に反映。ソリューションで固定的な開発費が残り営業赤字、ネットワーク施工も低採算化して全社約5億円の営業損失。
- オフィス(PC・業務機器・ソフト再販):数量 27,200(PC・ソフトのセット販売換算台数/年(台、推定))× 価格 0.00(端末・ソフト等込みのセット単価(億円/台、名目))→ 売上 51 億円・営業利益 −1 億円。メーカー直販と端末更改循環で台数変動。ソリューションで固定的な開発費が残り営業赤字、ネットワーク施工も低採算化して全社約5億円の営業損失。
- サービス(保守・運用・クラウド):数量 2,430(保守・クラウドの年額契約換算件数(件、推定))× 価格 0.02(一契約換算の年間料金(億円/件、名目))→ 売上 56 億円・営業利益 2 億円。運用工数・ID課金のAIエージェント代替を反映。ソリューションで固定的な開発費が残り営業赤字、ネットワーク施工も低採算化して全社約5億円の営業損失。
倍率:2035年には営業・純利益が赤字で正のPER評価ができない。2025年9月末の自己資本154.1億円を分母とし、売上がおよそ半減するため必要運転資金の拘束が現行より縮むと見込む。現金同等物、上場政策保有株の税後売却額、その他証券・固定資産の回収額から約105億円を保守的な床とし、PBR0.6814を適用する。期間累計の経常的利益約108億円と還元約35億円は約73億円の評価損・債権損失・撤退費用で相殺する悪化シナリオであり、床の倍率を10年後に積み上がった自己資本に掛けない。既存株主の持分係数0.956を掛けた終価も約100.4億円で、現在の純現金約94億円を上回る。
確率:ソリューション・保守のAI代替、メーカー直販、富士通協業の変質、公共案件の失注が重なる複合的な構造負け。純現金があり倒産リスクは低いので13%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ネットワーク(通信設備・防災施工)
自治体の防災・消防無線、金融の通信網、店舗Wi-Fiなど機器販売と現場施工。現場作業が中心で、定型設計の一部だけAI代替を受ける。
| 数量大中小の設計・施工案件換算件数/年(件、推定) | 価格一案件換算の契約単価(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 450 | 0.31 | 139 | 9 |
| 10 年後 中立 | 459 | 0.41 | 190 | 13 |
取り方:会社開示の2025年度ネットワーク売上138.74億円が出発点。案件件数や単価は非開示なので、全国約54拠点と防災無線等の大型契約を考え、支店当たり年8件強の中規模案件に換算した450件を推計し平均3,083万円とした。機器市場はCIAJ公表の国内ルーター1,289億円・LANスイッチ1,681億円を参考にするが、施工費を含まないため厳密なシェアは算出できない。型は「現場の体」であり、設計の定型部分だけ縮小する。
ソリューション(医療・自治体・企業SI)
電子カルテ、自治体システム標準化、製造・金融の基幹系刷新などの導入・受託開発。機器再販も混じるが契約工数依存が大きい。
| 数量システム導入・開発の案件換算件数/年(件、推定) | 価格一案件換算の受注単価(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 720 | 0.23 | 167 | 14 |
| 10 年後 中立 | 468 | 0.29 | 136 | 10 |
取り方:2025年度会社開示のソリューション売上167.30億円を用いた。案件件数は未開示。技術人財約630人の一部が年間50~100人日規模の開発・設定案件を担う供給力、医療大型案件と小口改修の混在を踏まえ、720案件、平均約2,324万円とする換算であり実測件数ではない。IDCの国内ITサービス市場2024年7.02兆円に対する同部門の見掛けの比率は約0.24%だが機器販売を含むのでシェアの厳密値ではない。AIエージェント代替の型は「人月・工数」で、中立数量0.65倍。独占DB・低解約率等の証拠は未確認。
オフィス(PC・業務機器・ソフト再販)
パソコン、周辺機器、ソフトウェアを企業・自治体へ販売し、一部で導入設定を請け負う。メーカー直販にさらされる商流。
| 数量PC・ソフトのセット販売換算台数/年(台、推定) | 価格端末・ソフト等込みのセット単価(億円/台、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 68,000 | 0.00 | 121 | 4 |
| 10 年後 中立 | 51,000 | 0.00 | 118 | 4 |
取り方:会社の2025年度オフィス売上121.39億円と、MM総研の2025年度国内PC出荷約1,806万台・メーカー平均出荷単価約11.6万円を突き合わせる。ソフト・導入付きのセット仮単価約17.85万円で6.8万台相当と推計。メーカー出荷平均との差は再販ソフト等の仮定で実販売台数は非開示。国内出荷に対する0.38%は台数換算の参考値であり販売チャネルの公式シェアではない。価格上昇は物価とバンドル内容に含める。
サービス(保守・運用・クラウド)
既設ネットワーク・システムの保守、運用監視、クラウドや業務サービスの継続契約。工数、席・画面課金の両方が含まれる。
| 数量保守・クラウドの年額契約換算件数(件、推定) | 価格一契約換算の年間料金(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 5,400 | 0.02 | 119 | 13 |
| 10 年後 中立 | 4,050 | 0.03 | 112 | 12 |
取り方:2025年度会社開示のサービス売上119.38億円。会社顧客約2万社のうち3割弱が年額の保守・運用・クラウド契約を持つと仮定し5,400契約、平均約221万円/年とした。契約数・解約率・契約単価の実績は非開示。AIエージェント代替の型は「人月・運用工数」、座席課金型クラウド再販は「席」であり、中立数量は保守工数0.70倍・席0.85倍などの混合を0.75倍で代理する。現地故障対応のみ例外。記録正本型を認める二つの証拠はない。
リスクと懸念
AIエージェント代替
ソリューションとサービスに含まれるシステム開発、定型移行、監視、問い合わせ処理や席課金の業務ソフトは、AIエージェントが直接代行するほど発注工数とID数が減る。独自データの正本や規制対応の低解約率を示す二つの根拠はなく、2035年の中立でも対象部門の実質数量を縮め、2035年以降の名目成長も低く抑える。
大型案件・年度末集中
病院情報システムや自治体防災の案件は、受注した年と納品した年の利益が大きく変わる。3月決算顧客の集中で第2四半期に売上が偏り、営業利益率が2025年度の最高圏から落ちる可能性がある。部門別の施工遅延や工数超過は利益だけでなく運転資金を悪化させる。
富士通・大手元請けへの依存
富士通との協業は営業力の源泉だが、富士通側の内製化、製品変更、元請け集約が起きれば扶桑電通の契約条件は弱くなる。防災・金融・病院の案件も、NTTデータ系やNEC系、大塚商会と競い、顧客数が多いだけで単価を守れるわけではない。
端末更新特需の反動と直販
2025年度のPC販売はWindows更新と教育向け需要で市場全体が大きく増えた。MM総研は2026年度の国内出荷の反動減を予測する。2035年の更新循環を誤ると台数見通しが崩れ、メーカー直販やクラウド契約の直接化は再販手数料を圧迫する。
有価証券・現金の回収可能性
2025年度には投資有価証券が約96億円、うち上場政策保有株が約44億円あるが、取引維持に使う資産はすぐに換金できるとは限らない。評価損、売却時課税、契約負債約18億円や買掛金の支払い、退職給付義務を考えると、帳簿純資産全額を悲観の床とするのは危険だ。
M&Aと株式給付
2025年取得のシステムメイクは富士通の開発パートナーであり、技術者を増やす投資にはAIで工数が減る危険が付随する。買収の増分利益率と現金回収が不明なうえ、J-ESOP信託に置かれた株式が今後従業員に交付されれば、現在の株数を基準にした既存株主の持分が薄まる。
今後の分かれ目
- 防災・消防無線の更新案件と全国の施工件数が連続して増えたら
- 現地設備部門の数量と営業利益率を上げる。SIの人月低下を相殺できる部分に限って中立・やや楽観を強める。
- ソリューションの案件平均単価が下がり、技術者の稼働が連続して低下したら
- AIエージェント代替が現実化したと考え、同部門の案件換算数量と利益率を下げ、やや悲観の重みを増す。
- サービスの解約率が年5%未満かつ法対応値上げの実績が二つ以上の開示で確認できたら
- 裏付けられた部分だけ「記録の正本」へ分類し、長期成長率を見直す。証拠のない残余を一緒に引き上げない。
- 政策保有株の売却代金を増配・自社株買いで継続的に還元したら
- 余剰現金の戻り方を0.75から1.0へ近づけ、帳簿の外の含み益と受取配当を二重に足さずに価値を見直す。
- 子会社のシステムメイクで買収額を超える増分利益と営業キャッシュフローが確認できたら
- 買収の再投資利回りの不確実性を縮め、顧客増と成果報酬への転換が実際に進んだ範囲で楽観側を増す。
- J-ESOP信託株の交付数、自己株買い、消却実績が明らかになったら
- 旧株主の取り分を現在の発行済・自己株数と突き合わせて見直し、既に基準株数に反映された交付を二重に希薄化しない。
見ておくもの
- 4部門別の受注高・売上総利益率・受注残高と工事損失の推移
- 富士通との連携案件および官公庁・自治体向け受注の増減
- AIエージェント導入後の受託工数、保守解約率、年額契約数と値上げ率
- PC市場の更新特需の反動とオフィス部門の販売換算台数
- 営業キャッシュフロー、現金同等物、仕掛品、契約負債と買掛金の季節変動
- 上場政策保有株約44億円の保有・売却方針、配当性向とDOE、J-ESOP交付実績
倍率と資本コストの決め方
2026年10月16日の株価と時価総額は最後の差額判定にだけ使用した。最初に2025年度の四部門実績を案件・台数・契約数の推計に分解し、中立の人月型数量0.65倍、運用・席の混合0.75倍、物理施工1.02倍、端末更新0.75倍を仮定した。値段には物価と競争の影響を別に入れ、市場全体の名目成長を受託工数の成長に読み替えなかった。
倍率は基本資本コスト7.5%に品質0.75%を加えた8.25%、通常の堀の残存割合2分の1、2035年以降の名目成長1%から正当化PERで計算した。余剰現金の税後利息相当1.4%を事業利益から控除して現金の戻り方75%を別に足した。2035年現金残高は計測値でなく留保利益と運転資金を考えたシナリオ仮定であり、四半期のキャッシュフロー、M&A投資、リース・契約債務との厳密な突合は未実施である。悲観は2025年の自己資本に過去のPBRを掛けず、売上半減に伴う運転資金拘束の減少も含めて売れる資産の保守的な床約105億円を評価した。旧株主持分0.956を掛けた終価約100.4億円は直近の純現金約94億円を上回り、現金と政策保有株を二重計上していない。J-ESOP最大54万株の将来交付に備えた既存株主比率も最後に一度だけ掛けた。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%、株式リスクプレミアム4.5%、企業品質の上乗せ0.75%。βと時価総額規模は使わない。