結論
日本ライフラインは、心臓の不整脈やペースメーカーなど、心臓まわりの医療機器を扱う専門の会社だ。外資の機器を輸入して売るところから始まり、今は自社で作る製品が売上の過半を占める。営業利益率は21%と、卸売業の中では際立って高い。筆者の結論は、今の値段は本質価値とほぼ並ぶ「適正」というものだ。
稼ぎの半分は、不整脈のカテーテル治療に使う品々から来る。心腔内カテーテルのBeeATは国内シェアが95%ある。ただ、治療の主流が新方式のPFAに移り、周辺品の数が減り始めた。会社は2027年3月期の営業利益を15%減と見込む。
この会社を読む鍵は、小さな専門市場で高いシェアを持つ強さと、外資が治療の流れごと押さえにくる怖さの、綱引きにある。症例数は増えるが、公定価格は下がり、物価は費用を押し上げる。
借金はなく、純現金が約100億円ある。資本コストは7.5%を置く。10年後の本質価値は、今の時価総額とほぼ並ぶ。強みは本物だが、それが10年後も同じ形で残るかは、まだ見えていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社はよい事業と気がかりな点が同居している。小さな専門市場で高いシェアを持ち、利益率が高く、借金はない。医師が使い慣れた道具を選ぶので、採用されれば長く使われる。この点は魅力だ。
一方で、事業の中身は心臓の周辺に偏っている。治療の主流が一つ変わるだけで、売上の半分が影響を受ける。実際に、PFAの広がりで、食道温モニタリングの数は減り始めた。10年後も同じ強さが残るかは、見通せない。
稼いだお金の使い道は、おおむね堅実だ。還元の目安を置き、自己株の買付けも行った。ただ、新製品の遅れや、研究開発費の膨らみは、資本を新事業に回す力が確かでないことを示す。
本質価値は、資本コスト7.5%を使い、10年の利益と配当から出した。中立の姿では、利益は今より少し増えるが、倍率は今の市場の水準を下回る。強みを評価しつつ、売上の半分が揺れる点で、確信度を下げて見る。安全域は、今の値段にはあまりない。
何で稼ぐ会社か
日本ライフラインは、1981年にペースメーカーの輸入販売で始まり、1999年から自社製品の開発・製造に広げた。売上は約590億円で、自社製品の比率は56%だ。
最大の柱はEP/アブレーションで、売上の約半分を占める。不整脈を起こす心臓の部分をカテーテルで焼く治療に使う品々を売る。心腔内の電気を測るBeeAT、食道の温度を測るカテーテル、止血デバイスなどだ。
二つ目はリズムデバイスで、売上の2割強。外資製のペースメーカーを輸入して売るほか、皮下に入れる除細動器のS-ICDを扱う。三つ目は心血管関連で、大動脈の手術に使うFET(ステント付き人工血管)や人工血管を売る。FETは国内シェアが約9割ある。
近年伸びているのが新領域だ。脳梗塞の血栓を吸引するカテーテル、塞栓用コイル、胆管のステントなどで、売上はまだ1割に満たない。カテーテルでの人工弁治療(TAVI)は、薬事の戦略見直しで上市が大きく遅れている。海外売上は小さい。顧客は病院で、実際の購入先を決めるのは医師だ。値段は国が決める公定価格(保険の償還価格)に縛られる。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、小さな専門市場で高いシェアを取り、利益率が高い点だ。営業利益率は10年のあいだ、おおむね20%前後を保った。BeeATは95%、FETは約90%のシェアがある。医師が使い慣れた道具を変えにくいので、いったん採用されると長く使われる。
弱みは三つある。一つ目は、市場が小さいことだ。外資が同じ市場に入ってくると、シェアが崩れやすい。除細動カテーテルには、ここ2年で競合が2社入った。
二つ目は、輸入品の比重だ。自社製品の比率は56%に下がり、中計が掲げる65〜70%から遠のいた。三つ目は、外資の大手が装置と消耗品を一体で売る流れだ。PFAが普及すると、周辺品の数は減る。
経営は、資本効率を意識して自己株の公開買付けも行った。ただ、TAVIの遅れが示すように、新製品を計画どおりに出す力には課題が残る。研究開発費は来期に10億円増え、粗利率も1.5ポイント下がる計画だ。筆者は、この利益率が10年後に同じ水準で残ると決めつけない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
心房細動の治療は、いま大きな切り替えの最中にある。従来は、熱や冷却で組織を焼くカテーテルが主流だった。ここ2年で、電気パルスで元を焼くPFAが急速に広がり、国内の心房細動の症例の約65%がPFAになった。
症例そのものは増えている。心房細動は高齢者に多く、治療の普及で件数は年に1割近く伸びた。数量は追い風だ。ところが、PFAは手技が早く、食道を傷めにくい。このため、食道の温度を測るカテーテルのような品は、使われる数が減る。
競争相手は外資の大手だ。ジョンソン・エンド・ジョンソン、アボット、ボストン・サイエンティフィック、メドトロニックが、PFAのカテーテルと3次元マッピングの装置を一体で売る。日本ライフラインはその周辺に入り込む形で、自社のPFAは共同開発の途中にある。
価格面では、医療機器の公定価格が毎回下がる。前回の改定の影響は売上で10億円、今回は4億円だった。円安と物価は、輸入品の仕入と人件費を押し上げる。リズムデバイスでは、リード(電線)のないペースメーカーが広がり、従来品が減っている。脳血管や消化器は新しい市場で、伸びる余地がある。
資本政策と M&A
資本政策は、株主を意識した形に動いている。2024年に、約57億円の自己株式の公開買付けを行い、資本効率と還元に取り組む姿勢を示した。中計の5年間で、配当と自社株買いを合わせて270〜300億円を還元する目安を置く。
来期の配当性向は49%の計画だ。その先も小幅な増配を見込み、業績が良ければ追加の還元も検討するという。
手元の純現金は約100億円で、時価総額の1割に満たない。本社の移転で設備投資は60億円から90億円に増え、成長投資は120億円まで膨らむ見込みだ。大型案件があれば借入も使う。
筆頭株主はKS商事で、持株比率は1割台半ばだ。創業に近い関係先とみられるが、人物や続柄は確かめられなかったので書かない。買う側のM&Aは、今のところ大型の例はない。会社の規模が小さく、外資の大手との組み合わせで、買われる側になる可能性もある。ただ、確かな材料は見つかっていない。
還元の点検(P3 2026-10-19):方針は中計5年で配当と自社株買いを合わせて270〜300億円(年約55〜60億円=利益の約6割)、来期の配当性向49%。中立の還元を純利益の合計の63%から60%に下げ、留保は自己資本に残した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
症例数は年に1割近く伸びている。PFAが主流になっても、治療の入り口で使う心腔内カテーテルや止血デバイスは必要で、BeeATは95%のシェアを持つ。止血デバイスは前期に6割増えた。
研究開発費は来期がピークで、その先は自社売上の8〜10%に落ち着く。自社PFAと心房中隔穿刺用ワイヤが加われば、症例の増加に直接乗れる。脳血管や消化器は新しい市場で、前期に2桁成長した。TAVIが立ち上がれば、もう一つ柱が増える。
営業利益率は21%と、同業の薬や医療機器の卸とは桁が違う。借金はなく、配当と自社株買いで株主に返す。10年を見れば、来期の減益は一時的な谷で、数量の伸びがそれを越える。外資が強い市場でも、国内の医師に合った品を作れる日本の会社には席がある。
日本ライフラインは、国内の医師の声を聞いて、小さく改良した品を素早く出すのが得意だ。大手の外資は世界で一つの品を売る。国内の細かな要望に応える余地は、小さな会社の側にある。
慎重な見方
来期の営業利益は15%減る。原因は一過性ではない。PFAの普及で食道温モニタリングが減り、公定価格は毎回下がり、人件費と研究開発費は増える。粗利率は2年続けて下がっている。
自社製品の比率は56%に落ち、中計の65〜70%から遠のいた。TAVIの上市は数年遅れ、中計の売上目標700億円は届かない。除細動カテーテルには競合が2年で2社入った。外資の大手は、PFAと装置を一体で売る。病院が一社でそろえる形が広がれば、周辺品の席は狭くなる。
ペースメーカーはリードレスに置き換わり、輸入品の売上は2桁で減っている。売上の半分が一つの治療の流れに乗っているので、置き換えが一度起きれば、利益率の高さは長くもたない。円安と物価は、医療機器では値上げで返せない。今の営業利益率21%が10年後も残ると見るのは楽観だ。
筆者から見ても、研究開発費の増加は、守りを固めるための支出という面が強い。それで売上が伸びるとは限らない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が少し強い。数量の追い風と高い利益率は本物だが、売上の半分が外資の主導する治療の流れに乗っており、置き換えの力が強い。来期の減益は、その圧力がすでに利益に出ている証拠だ。そこで中立に4割弱を置き、やや悲観に2割台半ば、悲観に12%を置いて、悲観側に確率を寄せた。強気の見方は、自社PFAとTAVIが立ち上がる点を押し上げ要因として、楽観とやや楽観に3割弱を残した。10年の本質価値は、今の時価総額とほぼ並ぶ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,561 円1,797 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 846 円593 億円)。 今の値に割り戻すと 1,832 円1,285 億円、今との差 +17.3%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,415 円3,098 億円 | 1,106 円776 億円 | +253.7% | +13.5% | 442 円310 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,715 円2,606 億円 | 989 円694 億円 | +201.4% | +11.7% | 941 円660 億円 |
| 中立 | 36% | 3,048 円2,139 億円 | 884 円620 億円 | +151.9% | +9.7% | 1,416 円993 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,338 円938 億円 | 733 円514 億円 | +32.6% | +2.9% | 497 円349 億円 |
| 悲観 | 12% | 388 円272 億円 | 544 円382 億円 | −40.3% | −5.0% | 112 円78 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,561 円1,797 億円 | 846 円593 億円 | +118.2% | +8.1% | 3,407 円2,390 億円 |
今の株価時価総額 1,561 円1,095 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 自社の不整脈治療品が育ち、海外と TAVI も立ち上がる 利益 165 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 4,415 円3,098 億円
心房細動の治療は、10年後も症例が増え続ける。自社開発のPFA(電気パルスで不整脈の元を焼く新方式)が国内で一定の席を取り、既存の心腔内カテーテルや止血デバイスと組み合わせて売れる。
構造的心疾患のTAVI(カテーテルで人工弁を入れる治療)も数年遅れで立ち上がり、脳血管・消化器と並ぶ第三の柱になる。海外もアジアや中東で売上が積み上がる。
研究開発費は自社売上の1割以下に落ち着き、営業利益率は22%台へ戻る。ここまで全部が揃うのは、うまくいった時の姿だ。確率は1割に届かない。
国内の医師に合った品を作れるという、日本の会社の強みが海外でも通じる。
- EP/アブレーション:数量 19.5(国内のカテーテルアブレーション症例数(万件)× 当社品の採用点数の指数(今を 1))× 価格 1.00(1 症例あたりの当社売上の水準を今を 1 とした指数(公定価格の改定と品揃えの入れ替えで動く。物価では動かない))→ 売上 468 億円・営業利益 140 億円。EP/アブレーション:数量 1.62 倍・価格 1.00 倍、営業利益率 30%
- リズムデバイス:数量 4.4(国内の植込み件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 1.00(1 件あたり売上を今を 1 とした指数(公定価格の引き下げと輸入品の仕入条件で動く))→ 売上 132 億円・営業利益 16 億円。リズムデバイス:数量 1.00 倍・価格 1.00 倍、営業利益率 12%
- 心血管関連:数量 6.8(国内の大血管手術・血管内治療の件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 1.15(1 件あたり売上を今を 1 とした指数)→ 売上 194 億円・営業利益 47 億円。心血管関連:数量 1.35 倍・価格 1.15 倍、営業利益率 24%
- 新領域(脳血管・消化器ほか):数量 8.9(国内の対象治療件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 1.00(1 件あたり売上を今を 1 とした指数(血栓吸引カテーテルは公定価格が下がる))→ 売上 178 億円・営業利益 28 億円。新領域(脳血管・消化器ほか):数量 3.79 倍・価格 1.00 倍、営業利益率 16%
倍率:事業の純利益 165 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍。全体の PER 18.4 倍、時価総額 3,036 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自社PFA・TAVI・海外のすべてが成功する姿。事業が3つ同時に当たる必要があり、確率は1割に届かない。
やや楽観 20% 症例増に乗り、周辺品の強みを守る 利益 138 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 3,715 円2,606 億円
症例増の追い風は続き、PFAが主流になっても、心腔内カテーテルの周辺品は一定の席を守る。BeeATのように、シェアが9割を超える品が土台を支える。
脳血管と消化器は伸びるが、TAVIの立ち上がりは遅れ気味だ。公定価格の引き下げは続く。その分を、自社品の新モデルと止血デバイスの伸びで埋める。
研究開発費は山を越え、営業利益率は21%台に戻る。会社の中計が掲げる20〜25%の範囲には収まり、守りの強さが保たれる。
海外やTAVIは大きな柱にならない。それでも利益は着実に積み上がる。
新製品の遅れは残るが、既存の強い品で稼ぐ力は落ちない。会社は還元の目安を守り、配当を少しずつ増やす。
- EP/アブレーション:数量 18.0(国内のカテーテルアブレーション症例数(万件)× 当社品の採用点数の指数(今を 1))× 価格 0.97(1 症例あたりの当社売上の水準を今を 1 とした指数(公定価格の改定と品揃えの入れ替えで動く。物価では動かない))→ 売上 419 億円・営業利益 122 億円。EP/アブレーション:数量 1.50 倍・価格 0.97 倍、営業利益率 29%
- リズムデバイス:数量 4.3(国内の植込み件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 0.98(1 件あたり売上を今を 1 とした指数(公定価格の引き下げと輸入品の仕入条件で動く))→ 売上 126 億円・営業利益 14 億円。リズムデバイス:数量 0.97 倍・価格 0.98 倍、営業利益率 11%
- 心血管関連:数量 6.3(国内の大血管手術・血管内治療の件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 1.10(1 件あたり売上を今を 1 とした指数)→ 売上 172 億円・営業利益 40 億円。心血管関連:数量 1.25 倍・価格 1.10 倍、営業利益率 23%
- 新領域(脳血管・消化器ほか):数量 7.1(国内の対象治療件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 0.98(1 件あたり売上を今を 1 とした指数(血栓吸引カテーテルは公定価格が下がる))→ 売上 138 億円・営業利益 19 億円。新領域(脳血管・消化器ほか):数量 3.00 倍・価格 0.98 倍、営業利益率 14%
倍率:事業の純利益 138 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍。全体の PER 18 倍、時価総額 2,484 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:症例増と周辺品の強みが続き、研究開発費の山も越える姿。守りの強さを評価して2割を置いた。
中立 36% 症例は増えるが、公定価格と競争で利幅は少し細る 利益 113 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 3,048 円2,139 億円
症例は人口の高齢化と治療の普及で増え、数量は10年で4割強伸びる。ただ、PFAが主流になり、食道温モニタリングなど従来の周辺品は数が減る。1症例あたりの売上は、公定価格の引き下げと品揃えの入れ替えで少し目減りする。
リズムデバイスはリードレスペースメーカーに押されて縮み、心血管は海外展開で小幅に伸びる。新領域は脳血管と消化器が伸び、TAVIは遅れて立ち上がる。
人件費と研究開発費の先行投資は、10年の途中で一巡する。営業利益率は20%近くで落ち着く。直近の21%よりは薄いが、事業の収益力は残る。
- EP/アブレーション:数量 16.5(国内のカテーテルアブレーション症例数(万件)× 当社品の採用点数の指数(今を 1))× 価格 0.95(1 症例あたりの当社売上の水準を今を 1 とした指数(公定価格の改定と品揃えの入れ替えで動く。物価では動かない))→ 売上 376 億円・営業利益 102 億円。EP/アブレーション:数量 1.38 倍・価格 0.95 倍、営業利益率 27%
- リズムデバイス:数量 4.2(国内の植込み件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 0.95(1 件あたり売上を今を 1 とした指数(公定価格の引き下げと輸入品の仕入条件で動く))→ 売上 119 億円・営業利益 12 億円。リズムデバイス:数量 0.95 倍・価格 0.95 倍、営業利益率 10%
- 心血管関連:数量 5.8(国内の大血管手術・血管内治療の件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 1.05(1 件あたり売上を今を 1 とした指数)→ 売上 151 億円・営業利益 33 億円。心血管関連:数量 1.15 倍・価格 1.05 倍、営業利益率 22%
- 新領域(脳血管・消化器ほか):数量 5.6(国内の対象治療件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 0.97(1 件あたり売上を今を 1 とした指数(血栓吸引カテーテルは公定価格が下がる))→ 売上 109 億円・営業利益 13 億円。新領域(脳血管・消化器ほか):数量 2.40 倍・価格 0.97 倍、営業利益率 12%
倍率:事業の純利益 113 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍。全体の PER 17.41 倍、時価総額 1,967 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:症例増という数量の追い風と、公定価格・競争・費用増という逆風が、おおむね打ち消し合う姿。最も確からしい姿として約4割弱を置いた。
やや悲観 24% 外資の一体型 PFA に押され、周辺品の採用が減る 利益 78 億円 · PER 9.6 倍 · 株価時価総額 1,338 円938 億円
PFAで外資が機器一式を売る形が広がり、国内の周辺品の採用が減る。自社PFAの開発は間に合うが、食い込めるシェアは小さい。
公定価格は毎回下がり、円安と物価で仕入や人件費は上がる。医療機器は値段を転嫁しにくいので、利益率が先に削られる。リードレスペースメーカーの攻勢で、リズムデバイスはさらに縮む。
新領域は伸びるものの利益は薄く、TAVIは立ち上がらない。営業利益率は16%台まで下がる。会社は黒字を保つが、成長株とは呼べなくなる。
配当は維持できるが、増やす余地は小さい。
研究開発の成果は小さく、新領域の黒字化も遅れる。借金をしてまで投資を増やす余裕はなく、還元は目安の下限にとどまる。
- EP/アブレーション:数量 15.0(国内のカテーテルアブレーション症例数(万件)× 当社品の採用点数の指数(今を 1))× 価格 0.90(1 症例あたりの当社売上の水準を今を 1 とした指数(公定価格の改定と品揃えの入れ替えで動く。物価では動かない))→ 売上 324 億円・営業利益 75 億円。EP/アブレーション:数量 1.25 倍・価格 0.90 倍、営業利益率 23%
- リズムデバイス:数量 3.5(国内の植込み件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 0.92(1 件あたり売上を今を 1 とした指数(公定価格の引き下げと輸入品の仕入条件で動く))→ 売上 97 億円・営業利益 7 億円。リズムデバイス:数量 0.80 倍・価格 0.92 倍、営業利益率 7%
- 心血管関連:数量 5.3(国内の大血管手術・血管内治療の件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 1.00(1 件あたり売上を今を 1 とした指数)→ 売上 131 億円・営業利益 25 億円。心血管関連:数量 1.05 倍・価格 1.00 倍、営業利益率 19%
- 新領域(脳血管・消化器ほか):数量 4.2(国内の対象治療件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 0.95(1 件あたり売上を今を 1 とした指数(血栓吸引カテーテルは公定価格が下がる))→ 売上 80 億円・営業利益 6 億円。新領域(脳血管・消化器ほか):数量 1.80 倍・価格 0.95 倍、営業利益率 8%
倍率:事業の純利益78億円・事業 ROE 8.1%。RONIC=k 7.5%+1/2×(ROE−k)=7.8%、g 4.0% から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.0倍。成長が鈍り投じた資本の稼ぎも落ちる姿なので、やや悲観は上限の7割までに下げた。上限の約7割の9.8倍に置いた。(還元を方針に合わせて再計算:還元 560→514 億円、自己資本 958→1004 億円、事業の ROE 8.1%→7.8%、正当化 PER の上限 14.0→13.6 倍。上限に対する置き方の割合は変えず 9.55 倍)
確率:PFAの浸透で周辺品が減る動きは、すでに決算に出ている。会社自身が来期の減益を見込むほど足元は重く、慎重な見方がやや強いとみて2割台半ばを置いた。
悲観 12% 外資が治療の流れごと囲い込み、国内の足場が痩せる 利益 34 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 388 円272 億円
外資の大手が、PFAのカテーテルと3次元マッピングの装置を一体で売る形を固める。病院は一社でそろえる方が楽なので、国内の周辺品にも手が届かなくなる。BeeATなど、シェアが高かった品でも新規参入が重なる。
自社PFAは製品化に失敗するか、投資を回収できない。研究開発費と本社移転後の固定費が重く、売上が減っても費用は減らない。ペースメーカーはリードレスに置き換わり、リズムデバイスはほぼ失う。
営業利益率は1割を切る。10年の悲観は、今の優良さが残らない、構造的な負けの姿として置く。
配当は減らさざるをえない局面もありうる。
- EP/アブレーション:数量 11.0(国内のカテーテルアブレーション症例数(万件)× 当社品の採用点数の指数(今を 1))× 価格 0.85(1 症例あたりの当社売上の水準を今を 1 とした指数(公定価格の改定と品揃えの入れ替えで動く。物価では動かない))→ 売上 224 億円・営業利益 34 億円。EP/アブレーション:数量 0.92 倍・価格 0.85 倍、営業利益率 15%
- リズムデバイス:数量 2.6(国内の植込み件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 0.90(1 件あたり売上を今を 1 とした指数(公定価格の引き下げと輸入品の仕入条件で動く))→ 売上 71 億円・営業利益 2 億円。リズムデバイス:数量 0.60 倍・価格 0.90 倍、営業利益率 3%
- 心血管関連:数量 4.8(国内の大血管手術・血管内治療の件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 0.95(1 件あたり売上を今を 1 とした指数)→ 売上 113 億円・営業利益 17 億円。心血管関連:数量 0.95 倍・価格 0.95 倍、営業利益率 15%
- 新領域(脳血管・消化器ほか):数量 2.8(国内の対象治療件数(万件)換算 × 当社の取扱い)× 価格 0.90(1 件あたり売上を今を 1 とした指数(血栓吸引カテーテルは公定価格が下がる))→ 売上 51 億円・営業利益 0 億円。新領域(脳血管・消化器ほか):数量 1.20 倍・価格 0.90 倍、営業利益率 0%
倍率:事業の純利益34億円・事業 ROE 3.8% は k 7.5% 以下なので、上限は 1÷k=13.3倍。構造的に負けた筋書きで利益も薄いので、1÷kの6割に置いた。純現金は別に足さず、床は稼ぐ力から出した。上限の約6割の8.0倍に置いた。(還元を方針に合わせて再計算:還元 400→382 億円、自己資本 898→916 億円、事業の ROE 3.8%→3.7%、正当化 PER の上限 13.3→13.3 倍。上限に対する置き方の割合は変えず 8.00 倍)
確率:外資の一体型の囲い込みと自社開発の失敗が重なる姿。心臓の周辺品に事業が偏り、10年は何が起きても不思議ではないので12%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
EP/アブレーション
不整脈(心房細動など)のカテーテル治療に使う心腔内カテーテル、食道温モニタリング、止血デバイスなど。売上の約半分を占める中核事業。
| 数量国内のカテーテルアブレーション症例数(万件)× 当社品の採用点数の指数(今を 1) | 価格1 症例あたりの当社売上の水準を今を 1 とした指数(公定価格の改定と品揃えの入れ替えで動く。物価では動かない) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 1.00 | 288 | 86 |
| 10 年後 中立 | 16.5 | 0.95 | 376 | 102 |
取り方:国内の症例数は約 12 万件(学会統計と会社説明の「AF 症例が 1 割弱増」から推定)。当社の EP/アブレーション売上は、増減率の逆算で約 288 億円。1 症例あたり約 24 万円。会社は事業別の利益を開示しないため、営業利益は粗利の高い自社品が多いとみて利益率 30% で配賦した(推定)。
リズムデバイス
ペースメーカー、S-ICD(皮下植込み型除細動器)、リード(電線)の抜去用品など。ペースメーカーは外資メーカーの輸入品が中心。
| 数量国内の植込み件数(万件)換算 × 当社の取扱い | 価格1 件あたり売上を今を 1 とした指数(公定価格の引き下げと輸入品の仕入条件で動く) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.4 | 1.00 | 132 | 13 |
| 10 年後 中立 | 4.2 | 0.95 | 119 | 12 |
取り方:国内の植込み新規と交換は合わせて 9〜10 万件、当社の取扱いは 4 割台半ばの換算で約 4.4 万件と推定。売上 132 億円は増減率の逆算。輸入品は粗利が薄く、利益率は 10% で配賦した(推定)。
心血管関連
大動脈の血管の内側から補強する FET(ステント付き人工血管)、人工血管、腹部ステントグラフトなど。FET は国内シェア約 9 割。
| 数量国内の大血管手術・血管内治療の件数(万件)換算 × 当社の取扱い | 価格1 件あたり売上を今を 1 とした指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 1.00 | 125 | 27 |
| 10 年後 中立 | 5.8 | 1.05 | 151 | 33 |
取り方:国内の対象手術・治療は年に数万件で、当社の取扱いを約 5 万件換算と推定。売上 125 億円は増減率の逆算。自社製品が多いので利益率は 22% で配賦した(推定)。
新領域(脳血管・消化器ほか)
脳梗塞の血栓を取る吸引カテーテルやコイル、胆管ステントなど。この 2 年で急に伸びている。TAVI は上市が遅れている。
| 数量国内の対象治療件数(万件)換算 × 当社の取扱い | 価格1 件あたり売上を今を 1 とした指数(血栓吸引カテーテルは公定価格が下がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.4 | 1.00 | 47 | 5 |
| 10 年後 中立 | 5.6 | 0.97 | 109 | 13 |
取り方:脳血管は約 28 億円、消化器は約 17 億円、ほか約 2 億円と、増減率から推定。売上 47 億円。立ち上げ中の事業で費用が先行するため、利益率は 10% 強で配賦した(推定)。本社費などの調整は営業利益 126 億円に合わせて −5 億円。
リスクと懸念
PFAへの切り替えで周辺品が減る
治療の主流がPFAに移り、食道温モニタリングなど従来の周辺品は数が減っている。前期は営業利益で約9億円の押し下げになった。PFAが定着するほど、当社の品が使われる場面は狭まる。売上の半分が同じ治療に乗っているため、影響が大きい。
外資の一体型の囲い込み
外資の大手はPFAのカテーテルと3次元マッピングの装置を一体で売る。病院が一社でそろえる形が広がれば、国内の周辺品にも手が届かなくなる。BeeATのように高いシェアの品でも、新規参入が続けば崩れうる。
公定価格の引き下げと費用の上昇
医療機器は公定価格が下がるうえ、円安と物価で仕入と人件費は上がる。値上げで転嫁するのは難しい。来期は単価の影響だけで約10億円の減益要因になる。粗利率は2年続けて下がる計画だ。
新製品の遅れと研究開発費の膨らみ
TAVIは薬事戦略の見直しで上市が大きく遅れた。中計の売上目標700億円は届かない見通しだ。自社PFAも共同開発の途中で、成功するかは未定。研究開発費は来期に10億円増える。
輸入品の比重
ペースメーカーは外資製の輸入品が中心で、リードレスの普及で2桁の減収が続く。自社製品の比率は56%に下がり、中計の65〜70%から遠のいた。仕入先の方針や条件の変化に弱い。
本社移転と投資の負担
設備投資は60億円から90億円に増える。本社移転の費用に加え、成長投資は120億円に膨らむ見込みだ。大型の案件があれば借入も使う。純現金が約100億円と薄いので、投資が当たらなければ財務の余裕は減る。
今後の分かれ目
- 自社のPFAが国内で一定のシェアを取った
- 症例の増加に直接乗れるようになり、周辺品の減少を補える。楽観とやや楽観の確率を上げ、営業利益率は21%台に戻る見通しになる。
- 外資が一体型のPFAで国内の病院の大半を押さえた
- 周辺品の採用が大きく減り、営業利益率は1割台前半まで下がる。やや悲観と悲観の確率を上げる。
- TAVIが想定より早く上市し、シェアを取った
- 新領域が第三の柱になり、売上と利益の伸びが加わる。本質価値は上振れする。
- 公定価格の改定が、前回より緩やかな引き下げにとどまった
- 単価の押し下げが小さくなり、粗利率の低下に歯止めがかかる。中立の利益率を保ちやすくなる。
- 外資の大手が当社を買収する動きが出た
- 買われる側として、プレミアムが乗る可能性がある。ただ、確かな材料はなく、確率は低いと見る。
見ておくもの
- 2027年3月期の営業利益(会社計画は107億円)と、粗利率57.9%が守られるか
- 食道温モニタリングカテーテルの売上(計画は10%減)と、EP/アブレーション全体の伸び(計画は9.5%増)
- 自社PFAの薬事承認と上市の時期、XEROstarのシェア
- TAVIの上市の時期と、中計最終年度の売上(680億円の計画)
- 研究開発費が自社売上の8〜10%に収まるか
- 公定価格の次回改定の下げ幅と、円相場・物価の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10年後の利益の質と資本効率から決め、今の株価では測っていない。資本コストは7.5%(基本7.5%、quality 合計 0.0%)。中立は事業 ROE 約11%、g 4.0% から出した正当化 PER の約85%に置いた。やや悲観は上限の7割、悲観は 1÷k の6割で、谷の PBR は使っていない。数量は症例数や件数、価格は公定価格と品揃えの指数で置き、物価の3%は吸収できないものとして価格を 0.95 倍とした。リースは本社移転が主で、新リース会計基準で営業利益や純負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.17→18.4 倍・やや楽観 PER 14.77→18 倍・中立 PER 13.52→17.41 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 合計 0.0% を足した(決まり v2)。個別のリスクは筋書きと確率で表す。