結論
進和は、溶接やろう付けの材料と機器、産業機械、工場の自動化システムを自動車メーカーなどに売る、名古屋の技術商社だ。自社で溶接の加工や装置の開発もする。売上の約 7 割が自動車向けで、設備投資の波を受ける。
筆者の結論は、10 年で見ると今の値段はやや割安というものだ。最大の理由は財務にある。手元の現金は 236 億円と、時価総額の 6 割に当たる。自己資本比率は 68%、実質的に借金はない。
事業の稼ぐ力は並みだ。直近の自己資本利益率は 8% 台で、会社が目標に掲げる 10% に届かない。前の中期計画は、EV の鈍化と中国の不振で大きく下方修正された。
それでも、現金の厚さが下値を支える。新しい 5 か年計画は、2029 年に営業利益 60 億円、ROE 10% 以上を掲げ、現金の圧縮と追加還元も明記した。
ただし、現金の一部は買掛金や客先の前払いに見合う運転資金だ。そのため、事業に要る分を除いた約 55 億円だけを余った現金とした。
中立の筋書きでは、営業利益は 10 年後に 80 億円。倍率は 11〜12 倍にとどまるが、現金の分で本質価値は今を 1 割ほど上回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、進和は「事業は並みだが、財務が分厚く、値段に安全域がある会社」だ。事業そのものは、自動車の設備投資の波を受ける。数字を並べると、営業利益は 10 年で 23 億円から 45 億円まで伸びたが、2024 年 8 月期には 36 億円に落ちた。
見るべきは資本の使い方だ。自己資本 436 億円に対して、稼ぐ力は営業利益で 45 億円前後。ROE は 8% 弱で、資本コストに届かない。現金が増えるほど、この数字は下がる。
一方、現金は事実として積み上がっている。借金はなく、自己資本比率は 68%。時価総額の 6 割が現金という状態で、悲観の筋書きでも、会社は倒れない。
問題は、この現金を株主が取り出せるかだ。会社は還元を強めるとしたが、自社株買いは「検討」にとどまる。筆者は、事業の稼ぎに倍率をかけ、余った現金には半分の価値を認める。
長く持つなら、5 か年計画で ROE 10% が達成され、現金が使われるかを見る。
何で稼ぐ会社か
進和は 1951 年に大阪で創業し、いまは名古屋に本社を置く。事業の核は金属を「つなぐ」技術だ。ろう付けや溶接の材料と機器を売り、肉盛溶接や溶射、つまり部品の表面を強くする加工も自社の工場でこなす。
もう一つの柱が、工場の自動化だ。産業機械、検査装置、自律走行搬送ロボット(AMR)を組み合わせ、製造ライン全体の設計から納入まで引き受ける。自社開発の超精密塗布装置「Quspa」は、半導体の後工程で使う接着剤を細かく塗る装置だ。
売上の約 7 割は自動車向けで、2025 年 8 月期は 619 億円。電機が 80 億円、機械が 46 億円と続く。地域では日本が 78%、米州が 10%、アジア・パシフィックが 6%、中国が 5%。
EV の電池やモーターの生産設備、検査装置、搬送ロボットなど、自動車の電動化に伴う設備が最近の成長を支えた。
新しい中期計画は、自動車の比率を 6 割に下げる方針だ。半導体、空調、航空宇宙へ広げ、インドとベトナムで現地の顧客を増やす。国内では、製造と開発の拠点を春日井に集める。
優良さと弱いところ
筆者がこの会社で評価するのは、現場に入り込む提案力だ。材料を売るだけでなく、加工と装置の設計までできる。顧客の工場で問題を一緒に解く商売だから、取引は長く続く。2025 年 8 月期は、価格転嫁と製造の原価低減で営業利益が 27% 増えた。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みは深くない。溶接や接合の材料は大手メーカーのものを扱い、自動化の案件では顧客の設備投資の都合に左右される。自動車への偏りは、強みであり弱みでもある。
資本の効率は低い。ROE は直近で 7〜8% と、10 年前の 11〜13% から下がった。現金が積み上がって自己資本を分厚くしたことが大きい。前の中期計画は、利益率が伸びず ROE の目標を 10% 以上から 7% に引き下げた。
経営は誠実だ。配当は性向 50% 以上と年間の下限額を明示し、新計画では DOE 4% も加えた。ただ、現金の使い道は、まだ「検討」の段階だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
進和の業績を決めるのは、自動車メーカーの設備投資だ。2025 年は EV と車載電池の生産設備、工場内の搬送自動化が好調で、自動車向けが 12% 伸びた。
しかし風向きは変わった。EV の需要は鈍り、設備投資の延期が出ている。中国では日系の自動車メーカーのシェアが落ち、現地の投資が抑えられた。会社の海外売上目標も 400 億円から 290 億円に下がった。
長い目で見ると、人手不足で省人化・自動化の需要は構造的に続く。会社は国内のスマートファクトリー市場が 2034 年に 2 兆円規模になる前提を置く。ただし、車体の作り方が変わると、溶接点が減る可能性がある。接合の材料と機器の需要は、そこで縮む恐れがある。
競合は、溶接機メーカーの直販や、FA 機器・産業機械を扱う商社など多様だ。進和は、材料・機器・加工・装置を一社で束ねる点で独特だが、各分野の専門商社と取り分を争う。
成長の新しい柱は、半導体の後工程とインドだ。Quspa の目標シェアは 10%。ただし前の計画では、半導体の案件が遅れた。
資本政策と M&A
還元の方針は明確だ。配当は連結性向 50% と DOE 4% の高い方を下限にする。2025 年 8 月期は年 17 億円ほどを払い、2026 年も同水準だ。自社株買いは「検討」にとどまり、実績は少ない。株主優待は、おこめギフト券などで額が小さく、還元の差は 1 億円に満たない。
投資は春日井の新事業所が中心だ。2026〜28 年で総投資約 55 億円、製造と開発を集約する。新計画では3 年間の営業キャッシュフロー 130〜140 億円を、成長投資 70 億円、人材と基盤 20 億円、株主還元 50〜60 億円に振り分ける。残りは M&A、追加還元、手元資金の圧縮に回す。
ここが評価の焦点だ。手元の現金 236 億円は、使い道が決まってはじめて価値になる。筆者は、事業に要る分を超える約 55 億円を余った現金とし、戻る確率を半分に見た。
大株主は信託銀行の口座が約 1 割で、支配株主はいない。TOB の確率は、外部推計で 10 年以内に 2 割強だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方はこう読む。営業利益は前期に 27% 増えた。第 3 四半期までの累計も 5% 増で、通期予想の 43 億円は堅い。自動車の設備投資は底堅く、AMR や検査装置の案件が積み上がっている。
新しい 5 か年計画は、営業利益 60 億円、ROE 10% 以上を掲げ、自動車比率を 6 割へ下げる。半導体の後工程、空調、航空宇宙へ広げ、インドは最重要市場だ。春日井の新事業所で製造と開発を集約し、一人あたりの営業利益を 480 万円から 600 万円に上げる。
何より、現金が 236 億円ある。手元資金の圧縮と追加還元を、計画に書き込んだ。配当は性向 50% と DOE 4% の高い方が下限で、自社株買いも視野にある。時価総額 390 億円に対して、事業を除いた現金だけで 6 割に迫る。この状態の会社が、前の計画の反省を踏まえて資本効率の改善を打ち出した。見直しの余地は大きいと強気は見る。さらに、自動車の電動化が一巡すれば、設備投資は再び動く。進和は電池の生産設備を手がけた実績があり、その波に乗れる位置にある。
慎重な見方
慎重な見方は、まず計画の信頼性を疑う。前の中期計画は最終年度に、営業利益 58 億円が 43 億円へ、ROE 10% が 7% へと、大きく下方修正された。EV の鈍化、中国の不振、半導体の遅れという、同じ種類の遅れが今回の計画にも残る。
今期は減益予想で、人材投資と賃上げが利益を押し下げる。米州は前年の高採算案件の反動で、第 3 四半期累計の利益が半分以下になった。中国は赤字だ。
売上の 7 割が自動車という偏りも重い。EV への移行や車体の一体成形で、溶接と接合の需要は構造的に縮む恐れがある。
現金は、数字ほど自由に使えない。2025 年 8 月期の営業キャッシュフローが 113 億円と、純利益の 3 倍を超えたのは、買掛金や前払いの動きで膨らんだ面がある。その後、現金は 61 億円減った。
しかも、会社は 10 年で現金を 89 億円から 288 億円まで積み上げてきた。使い道を決めない会社の言う「検討」を、そのまま信じるのは危うい。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は現金と、資本効率の見直しだ。慎重な言い分は、計画の外れ方と自動車への偏りだ。事業の稼ぎには慎重な指摘が重いが、現金の厚さは事実で、悲観でも下値は固い。
そこで確率は、中立を最も厚くしたうえで、やや悲観と悲観を楽観側より厚く置いた。10 年の悲観は、自動車の設備需要を構造的に失う筋書きで、1 割強を置く。ただし悲観でも、現金の分で今の時価総額の 3 割ほどは残る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/08 期)
確率で加重した株価時価総額 5,748 円771 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,892 円254 億円)。 今の値に割り戻すと 4,028 円540 億円、今との差 +41.7%、 期待の年率 +10.4%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 10,632 円1,426 億円 | 2,639 円354 億円 | +366.9% | +16.7% | 929 円125 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,436 円1,132 億円 | 2,326 円312 億円 | +278.7% | +14.2% | 2,152 円289 億円 |
| 中立 | 38% | 6,904 円926 億円 | 2,102 円282 億円 | +216.9% | +12.2% | 3,422 円459 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,494 円335 億円 | 1,439 円193 億円 | +38.4% | +3.3% | 944 円127 億円 |
| 悲観 | 11% | 864 円116 億円 | 895 円120 億円 | −38.1% | −4.7% | 193 円26 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,748 円771 億円 | 1,892 円254 億円 | +168.9% | +10.4% | 7,641 円1,025 億円 |
今の株価時価総額 2,842 円381 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:自動車の外に広がり、インドと半導体が当たる 利益 84 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 10,632 円1,426 億円
自動車の枠を超え、半導体の後工程、空調、航空宇宙で新しい取り分を得る。自社装置の売上比率が上がり、自動車向けは 6 割を割る。インドの現地法人はプネーの設備メーカーに食い込み、アジア・パシフィックの件数は倍以上になる。
国内は省人化の追い風が強く、自律走行搬送ロボットなどのスマートファクトリー案件が積み上がる。営業利益率は 6% 台後半に上がり、過去の山の水準を超えない範囲で、自社製品の粗利が効く。
手元資金は成長投資と自社株買いに回り、現金の積み上がりは止まる。配当は性向 50% 以上を守る。
- 日本:数量 9.1(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 134(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 1,214 億円・営業利益 73 億円。国内の件数が 35% 増
- 米州:数量 1.3(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 134(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 173 億円・営業利益 14 億円。米州が 5 割増
- アジア・パシフィック:数量 1.3(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 134(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 180 億円・営業利益 21 億円。アジアが 2.4 倍
- 中国:数量 0.5(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 134(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。中国が 2 割増
倍率:事業の純利益 83 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)41 億円。全体の PER 16.64 倍、時価総額 1,426 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自動車に頼らない成長と、現金の活用が重なる筋書きで、起こりにくいと見て小さく置いた。
やや楽観 20% やや楽観:5 か年計画に近い形で育つ 利益 70 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 8,436 円1,132 億円
5 か年計画の道筋に近い形で育つ。国内は省人化の案件が 25% 増、インドを含むアジアは倍に近づく。春日井の新しい事業所が動き、設計・製造の拠点が集まって、一人あたりの利益が上がる。
自動車向けの比率は 65% 近くに下がる。EV の波は一巡して、設備投資は戻る。中国は黒字を保ち、赤字を出さない。
営業利益率は 6% を少し超える程度で、売上は 1,500 億円ほど。現金は戦略投資に使われるが、大型の買収は限られる。還元は利益の 6 割ほどを続け、自社株買いも少しずつ入る。春日井で集約した製造と開発の効果が出て、自社製品の比率も上がる。
- 日本:数量 8.4(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 134(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 1,124 億円・営業利益 62 億円。国内が 25% 増
- 米州:数量 1.2(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 134(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 161 億円・営業利益 12 億円。米州が 4 割増
- アジア・パシフィック:数量 1.2(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 134(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 158 億円・営業利益 17 億円。アジアが倍以上
- 中国:数量 0.4(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 134(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 55 億円・営業利益 2 億円。中国は横ばい
倍率:事業の純利益 69 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)41 億円。全体の PER 15.75 倍、時価総額 1,132 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新しい中期計画に近い筋書き。前の計画は大きく下方修正されたため、中立より小さくした。
中立 38% 中立:国内の自動車は緩やかに伸び、インドが補う 利益 60 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 6,904 円926 億円
国内の売上は、10 年で数量が 15% 増える。自動車の設備投資は EV の調整を挟みつつ続き、省人化・自動化の案件が下支えする。インドは数量が倍近くに伸びるが、全体に占める割合は 1 割強にとどまる。中国は日系自動車のシェア低下で縮む。
営業利益率は 5.8% で、直近 10 年の山の 7% 台には届かない。人件費と賃上げが重く、会社の自社製品の比率が上がるまで利益率は押される。10 年のあいだに自動車の設備投資が一度は落ち込み、利益が 2 年ほど減る。
現金は事業に要る分を超えて積み上がり、一部は成長投資に回る。還元は利益の 6 割ほどで、筆者はこの形が 10 年の落としどころと見る。
- 日本:数量 7.7(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 134(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 1,034 億円・営業利益 52 億円。国内が 15% 増
- 米州:数量 1.1(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 134(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 150 億円・営業利益 11 億円。米州が 3 割増
- アジア・パシフィック:数量 1.1(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 134(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 143 億円・営業利益 15 億円。アジアが 9 割増
- 中国:数量 0.4(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 134(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 49 億円・営業利益 2 億円。中国は 1 割減
倍率:事業の純利益 59 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)41 億円。全体の PER 14.94 倍、時価総額 926 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自動車の設備投資が緩やかに続き、インドと半導体が補う穏やかな筋書き。最も厚くした。
やや悲観 24% やや悲観:EV の調整が長引き、利益率が戻らない 利益 36 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 2,494 円335 億円
EV の調整が長引き、日系の自動車メーカーの設備投資が絞られる。国内の数量は横ばいで、値上げが人件費の上昇に追いつかず、営業利益率は 4% 台に下がる。
中国の件数は 3 割減り、赤字が続く。インドは伸びるが、規模が小さく全体を支えられない。米州も、米国の政策の影響で伸びが鈍る。
新しい事業所の稼働が遅れ、減価償却の負担が先に出る。純利益は 40 億円を割り、配当は性向 50% の下限に近づく。現金は積み上がる一方で、使い道が定まらない。ROE は 6% 台にとどまる。自社製品の比率を上げる計画も、半導体の遅れで思うように進まない。会社は賃上げと採用を続けるため、費用だけが先に増える形になる。
- 日本:数量 6.7(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 130(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 872 億円・営業利益 33 億円。国内は横ばい
- 米州:数量 0.9(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 130(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 117 億円・営業利益 6 億円。米州は 5% 増
- アジア・パシフィック:数量 0.8(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 130(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 109 億円・営業利益 9 億円。アジアは 5 割増
- 中国:数量 0.3(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 130(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 37 億円・営業利益 0 億円。中国は 3 割減
倍率:事業の純利益 35 億円・ROE 6.4% は k 7.75% 以下なので、上限は 1÷k=11.8 倍。資本の稼ぎが資本コストに届かないため、上限の約 7 割の 8.2 倍に置いた。
確率:前の計画は EV と中国で外れた。同じ型の遅れがまた起きる可能性を重く見て、厚めに置いた。
悲観 11% 悲観:自動車の設備需要を構造的に失う 利益 14 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 864 円116 億円
EV への移行と車体の一体成形が進み、溶接と接合の部品・設備の需要が構造的に縮む。売上の 7 割を占める自動車向けの案件が減り、国内の件数は 2 割減る。中国は大半を失い、赤字になる。
半導体と海外の新規事業は立ち上がらず、新しい事業所の投資が重しになる。固定費の人件費は賃上げで増え、営業利益率は 2% 台に落ちる。のれんと設備の減損も出る。純利益は 15 億円を割り、配当は大きく絞られる。
手元資金は厚く、財務に傷はつかない。ただし事業の稼ぎが資本コストを大きく下回り、現金は運転資金でもあるため、株主が自由に取り出せるわけではない。
- 日本:数量 5.4(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 120(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 644 億円・営業利益 14 億円。国内が 2 割減
- 米州:数量 0.7(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 120(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 83 億円・営業利益 3 億円。米州が 2 割減
- アジア・パシフィック:数量 0.6(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 120(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 67 億円・営業利益 3 億円。アジアは横ばい
- 中国:数量 0.2(取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計))× 価格 120(1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。中国は 6 割減
倍率:事業の純利益 14 億円・ROE 2.6% は k 以下で、上限は 1÷k=11.8 倍。構造的に負けて稼ぐ力が資本コストを大きく下回る筋書きのため、上限の約 6 割の 7.0 倍に置いた。余った現金の戻り方は 0.5。
確率:EV への移行と車体構造の変化で、溶接・接合の需要が構造的に縮む筋書き。売上の 7 割が自動車という偏りを考え、1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本
愛知県を中心とする国内。溶接・ろう付けの材料と機器、産業機械、FA システムの販売と、肉盛溶接・溶射などの加工。自動車向けが中心。
| 数量取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計) | 価格1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 6.7 | 100 | 671 | 31 |
| 10 年後 中立 | 7.7 | 134 | 1,034 | 52 |
取り方:日本の売上 671 億円(2025/08 期、会社所在地別)を、案件・材料の取扱件数 6.71 万件×1 件あたり平均売上 100 万円に分けた仮置き。開示は金額だけで、件数は材料の少額取引と設備案件の合算の目安。営業利益 31 億円は開示のセグメント利益(約 30 億円)を丸めた推定。自動車向けは設備投資の波に左右される。
米州
米国・メキシコ。日系自動車メーカー向けの検査装置、空調機メーカー向け案件など。
| 数量取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計) | 価格1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 0.9 | 100 | 86 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 134 | 150 | 11 |
取り方:米州の売上 86 億円を、0.86 万件×1 件あたり 100 万円に分けた仮置き。営業利益 6 億円は開示値の丸め。前期の高採算案件の反動で今期は減益。
アジア・パシフィック
タイ・インドなど。日系自動車メーカーと部品メーカー向けの設備と材料。インド子会社が連結に入った。
| 数量取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計) | 価格1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 0.6 | 100 | 56 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 134 | 143 | 15 |
取り方:アジア・パシフィックの売上 56 億円を、0.56 万件×1 件あたり 100 万円に分けた仮置き。営業利益 6 億円は開示値の丸め。インドを最重要市場に置く。
中国
中国の日系自動車メーカー向け。現地競争の激化で赤字すれすれ。
| 数量取扱件数(万件換算。設備案件・材料取引の合計) | 価格1 件あたり平均売上(万円。物価で上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 0.4 | 100 | 41 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 134 | 49 | 2 |
取り方:中国の売上 41 億円を、0.41 万件×1 件あたり 100 万円に分けた仮置き。営業利益 1 億円は開示値の丸めで、今期は赤字。日系自動車メーカーの投資が抑えられている。
リスクと懸念
自動車の設備投資への依存
売上の約 7 割が自動車向けで、EV と車載電池の設備に偏る。EV の鈍化や完成車メーカーの投資延期が、案件の遅れに直結する。前の計画はその理由で営業利益の目標を 58 億円から 43 億円へ下げた。新計画は比率を 6 割へ下げると言うが、10 年かかる話だ。
車体構造の変化と接合需要
車体を一体成形する流れが広がれば、溶接点は減る。溶接・ろう付けの材料と機器、肉盛溶接の需要が縮む恐れがある。これは筆者の見立てで、会社の開示にはない。ただ、売上の核が接合だけに、影響は大きい。
中国の不振
日系自動車メーカーのシェア低下で、中国の設備投資が抑えられた。第 3 四半期累計は赤字で、前年に続く。売上は全体の 5% に満たないが、撤退や減損の費用が出る可能性がある。
現金が使われない恐れ
手元の現金は時価総額の 6 割に当たる。営業 CF は 2025 年 8 月期に純利益の 3 倍超だったが、現金はその後 61 億円減った。会社は追加還元と手元資金の圧縮を書いたが、自社株買いは「検討」だ。使われなければ、ROE は下がり続ける。
新事業所と半導体の投資負担
春日井の新事業所に総額 55 億円を投じる。稼働の遅れや、半導体後工程の案件の遅れが重なれば、減価償却と人件費が先に重くなる。Quspa の目標シェア 10% は、前計画で半導体案件が遅れた経緯を考えると、割り引いて見る。
人件費の上昇
新計画は技術人材を3 年で 50 名採用し、賃金を年 6.5% 上げる。価格に転嫁できなければ、営業利益率は下がる。今期の減益予想も、人材投資と賃上げが理由だ。
今後の分かれ目
- 自動車メーカーの設備投資が 2 年続けて縮む
- 国内の数量を下げ、やや悲観と悲観の確率を上げる。EV の調整が構造的かどうかを、案件の受注残で確かめる。
- 自社株買いの上限を明示し、現金の圧縮に動く
- 余った現金の戻り方を 0.5 から上げてよい。ROE が 10% に近づくかを見る。
- 車体の一体成形で、溶接の材料・機器の売上が減り始める
- 接合の需要が構造的に縮む兆し。国内の数量と利益率を下方に直し、悲観の確率を上げる。
- Quspa など半導体向けの売上が計画どおり立ち上がる
- 自動車の外に取り分ができる。楽観側の確率を上げ、国内の利益率を上げて見てよい。
- 大型の買収を発表する
- 現金の使い道として前向きでも、価格を払いすぎればのれんの減損になる。買う事業の利益率と価格を確かめる。
- 中国が撤退や構造改革に踏み切る
- 損失が出るが、不採算の切り離しは利益率の改善に働く。中国の数量を下げ、国内とインドの確率を見直す。
見ておくもの
- 自動車向けの受注残と、AMR・検査装置の案件数
- 営業利益率と、人件費の伸び
- 現金及び預金の推移と、自社株買いの実行
- Quspa などの半導体向け売上の立ち上がり
- インドの売上と、春日井新事業所の稼働
倍率と資本コストの決め方
先に日本・米州・アジア・パシフィック・中国の 4 地域ごとに、取扱件数(実質)×1 件あたり売上(物価 1.34 倍)と営業利益率を積み、純利益と自己資本の流れから ROE を出して、その ROE で正当化 PER の上限を計算し、楽観〜中立を上限の約 9 割に置いた。件数と単価の分解は開示でなく仮置き。資本コストは 7.75%(基本 7.5%、quality +1.0%)。現金の一部は運転資金として残し、余った約 55 億円だけを戻り方 0.5 で足した。純利益には金利の上昇による受取利息の増加を少し入れた。今の株価や PER からは逆算していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.7→16.64 倍・やや楽観 PER 12.1→15.75 倍・中立 PER 11.5→14.94 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。