結論
蔵王産業は、欧米や中国のメーカーに仕様を伝えて作らせた清掃機・洗浄機を輸入し、国内で売る専門商社だ。売上は 88 億円、営業利益は 10 億円、利益率は 12% と、商社としては高い。筆者の結論は、10 年では「ほぼ適正」である。
強みは二つある。一つは売った機械の修理・部品・消耗品が繰り返し売れること、もう一つは時価総額の半分にあたる 69 億円の純現金である。弱みは、仕入先が数社に集中し、仕入先が日本で直接売り始めれば代理店の役割が消える点だ。
本業だけを見ると、資本効率は悪くない。余った現金を除いた自己資本で見れば ROE は 10% を超える。ただし現金の戻り方は中途半端だ。稼いだ利益はほぼ全部配っているが、積み上がった現金そのものは10年ほど動いていない。この現金の使い方が、評価を分ける最大の点だ。
経営の誠実さは数字に出ている。赤字の期が無く、借金も無い。株主にとっての問いは、この堅さを生かして資本をどう使うかに尽きる。事業の入れ替えや大型の買収に走らず、静かに稼ぐ会社だと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「小さいが堅い会社」で、問題は現金の使い方だ。
本業は、機械の台数に応じて部品と消耗品が売れる、予測しやすい事業である。営業利益率 12%、赤字なし、自己資本比率 86%。借金が無く、潰れにくい。
惜しいのは、稼いだ利益の半分近くが現金のまま眠っていることだ。現金に利息 2% しか付かない一方、本業の ROE は 10% を超える。現金が事業に使われず、株主にも戻らなければ、その分の価値は割り引かれる。
筆者は、この現金の半分程度は株主に戻ると見る。戻り方 0.75 を置く理由はそこにある。現金そのものを使う、あるいは配当や自社株買いを大きく増やす、といった意思表示があれば、評価は上がる。逆に仕入先の直接販売という構造的な脅威は、現金だけでは防げない。
言い換えれば、この株は「安い」のではなく、「適正に近く、現金の使い方次第で上にも下にも振れる」株である。
何で稼ぐ会社か
蔵王産業は自社で製造せず、輸入と販売に特化している。取扱商品の 7 割超が欧米・中国からの輸入で、仕入れの 6 割がドル、3 割弱がユーロだ。主な仕入先は、中国のイーリー、米国のミニッツマン、イタリアの IP クリーニングで、海外仕入の 4 割強を占める。
売上は三つに分かれる。洗浄機器が 38 億円で、自動床洗浄機、高圧洗浄機、カーペット洗浄機など。清掃機器が 18 億円で、動力清掃機や真空掃除機。その他が 31 億円で、修理の工賃、交換部品、消耗品、水質浄化剤だ。
2026/03 期は、清掃機器が 21% 伸び、洗浄機器が 4.5% 減った。コロナ後に伸びた家庭用の洗浄機が一巡した形だ。販売先は製造業、ビルメンテナンス会社、代理店、ホームセンターなど。従業員は 238 人で、東京・大阪・横浜・静岡に営業所を置く。
利益の源泉は、機械そのものより、現場に残った機械が生む部品・消耗品・修理の継続収入だ。機械の販売は景気や補助金で振れるが、その他の部門は機械の台数に比例して積み上がる。仕様を仕入先に伝えて作らせる点も、他の商社との差別化になっている。
優良さと弱いところ
優良さは中の上だ。堀は薄いが、利益率と財務が強い。
強みは、機械を売った後も続く部品・消耗品の売上だ。現場に置かれた機械の台数が増えるほど、安定して稼げる。営業利益率は過去 12 年の全期で 10% を超え、赤字の期は無い。自己資本比率は 86% と極めて高い。
弱みは、仕入先への依存だ。3 社で海外仕入の 4 割強を占める。仕入先が自ら日本に進出すれば、代理店の価値は薄れる。ブランド力も、ケルヒャーやアマノなどの大手に比べて弱い。
経営は堅実で、売上を急いで伸ばさない。ROE 10% 以上を目標に掲げるが、実績は 5.5% にとどまる。余った現金が自己資本の半分を占めることが、その理由だ。
価格を決める力は限られるが、仕様を指定した特注品は他社の製品と比べられにくい。リースの約束は営業所の土地と営業車両で年 1 億円ほどと小さく、固定費の重さは無い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
清掃・洗浄機器は、人手不足を追い風にした穏やかな成長市場だ。ビルメンテナンスや工場の清掃は人手に頼る仕事だったが、働き手が減り、機械に置き換える動きが続いている。人が操作する自動床洗浄機に加え、無人で動く洗浄ロボットも出始めた。
日本の市場では、ケルヒャー、アマノ、ニルフィスクなどの大手が先行する。蔵王産業は欧米メーカーの代理店の立場で、中堅の位置にいる。市場の細かいシェアは確認できていない。
変化は三つある。第一に、ロボット型の機種は新しい競合(国内外のロボットメーカー)が入ってくる。第二に、中国メーカーが日本で直接販売を始めると、中価格帯の値段が下がる。第三に、家庭用の洗浄機は需要が波のように動く。
人口減で清掃の需要そのものは伸びにくいが、人手不足のぶんだけ機械の比率が上がる。台数は横ばいから緩やかな増加を見込める。
海外メーカーの製品を日本向けに仕様変更し、納品後の保守まで一貫して提供する体制は、新規参入が簡単ではない。代理店の価値は、機械を売る力より、売った後の保守網にあると筆者は見る。
資本政策と M&A
資本政策は穏やかで、還元は配当が中心だ。2026/03 期の配当は 70 周年の記念分を含めて通常より多く、総還元性向は 8 割近い。外部の集計では、3 期前には総還元性向が 100% を超えた年もあり、利益は配る会社だ。75 周年までは年間の配当を一定の水準で守る方針を示している。
現金と同等物は 69 億円で、自己資本の半分を占める。M&A の実績は見当たらない。投資有価証券は、上場株が 1 銘柄(ユシロ、約 4 億円)と非上場株で、取引関係の維持を目的にしている。
大株主の構成は確認できなかったため、現金の戻り方は中間の 0.75 で数えた。株式の流動性は低く、買収の対象になる可能性はあるが、公開買付けの発表は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額 136 億円のうち、69 億円は現金だ。残りの 67 億円で、営業利益 10 億円、利益率 12%、赤字ゼロの事業を買えることになる。事業の価値だけで見れば、PER は 10 倍を切る。
清掃機器は 2026/03 期に 21% 伸びた。人手不足で機械が足りない現場は多く、無人洗浄機のような新しい商品が加われば、さらに伸びる。売った機械の修理・部品・消耗品は、機械の台数が増えるほど安定して積み上がる。
配当は 75 周年まで水準を守る方針で、ROE 10% の目標も掲げた。目標を達成するには、現金を使うか戻すしかない。数字で意思が示された日に、株価の評価は大きく変わりうる。
小さな会社で、買収の対象にもなりうる。現金の多さが買い手の資金負担を軽くする。株主構成を含めて、動きがあれば再評価の機会になる。さらに、機械の台数が増えるほど部品・消耗品が積み上がる構造は、時間とともに利益の質を高める。
慎重な見方
安く見えるのは、現金が戻ってこないからだ。利益はほぼ全部配っているが、69 億円の現金そのものは 10 年以上動いていない。ROE は 5.5% にとどまる。この状態を続けてきた会社が、急に現金を使う保証は無い。現金の戻り方を 1.0 にするのは楽観が過ぎる。
本業にも弱みがある。仕入先 3 社が海外仕入の 4 割強を占め、うち 1 社でも日本で直販を始めれば、代理店の価値は消える。ケルヒャーやアマノのような大手と、ブランドで勝負するのは難しい。
洗浄機器は 2026/03 期に 4.5% 減った。家庭用洗浄機の特需が剥がれた後の水準が、まだ見えていない。清掃機器の 21% 増も、反動で一時的に高い可能性がある。
営業利益率は 2018/03 期の 16% から 12% 前後まで下がった。仕入れ値の上昇を転嫁しきれていない証拠であり、物価の中でも利益率は守れない。人手不足は清掃機の需要を押し上げる一方、同じ人手不足が蔵王産業の営業・保守の人件費も押し上げる。
どちらに重みを置いたか
現金は半分程度しか戻らず、仕入先への依存は構造的な弱みという慎重な見方に分がある。ただし本業の利益率と財務の強さは本物で、強気の見方も一定の重みがある。中立を 4 割、やや悲観と悲観を合わせて 3 割強とし、全体を適正の近くに置いた。本業の質を評価しつつ、現金の価値を戻り方で割り引く、という筆者の判断がそのまま差の大きさに表れている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,638 円198 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,271 円69 億円)。 今の値に割り戻すと 2,702 円147 億円、今との差 +8.7%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,342 円345 億円 | 1,745 円95 億円 | +225.3% | +12.5% | 566 円31 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,879 円266 億円 | 1,470 円80 億円 | +155.4% | +9.8% | 1,270 円69 億円 |
| 中立 | 40% | 3,990 円217 億円 | 1,286 円70 億円 | +112.2% | +7.8% | 2,110 円115 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,210 円120 億円 | 1,047 円57 億円 | +31.0% | +2.7% | 749 円41 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,139 円62 億円 | 992 円54 億円 | −14.3% | −1.5% | 213 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,638 円198 億円 | 1,271 円69 億円 | +97.4% | +7.0% | 4,909 円267 億円 |
今の株価時価総額 2,486 円135 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 人手不足でビルの清掃が機械に移り、ロボット型の床洗浄機が柱になる 利益 17 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 6,342 円345 億円
ビルメンテナンスの人手不足が深刻になり、床の清掃を人から機械に移す動きが一気に進む。清掃機器の台数は 10 年で 9 割増え、無人で動く洗浄機を新しい仕入先から入れて売上の柱に育てる。洗浄機器も業務用の入れ替えが続き、台数は 15% 増える。
機械が増えれば、修理・部品・消耗品の需要も付いてくる。その他の売上は 3 割以上伸び、利益率が高いこの部門が全体の利益を押し上げる。価格は物価並みに上がり、仕入れ値の上昇も転嫁できる。
余った現金は、新しい仕入先との提携や取扱商品の拡大に一部使われ、配当は方針どおりに続く。
ただし筋書きの条件は厳しい。新しい仕入先の商品が日本の現場に合うか、保守の体制を作れるかは試してみなければ分からず、全部がうまくいく確率は低い。
- 清掃機器:数量 4,750(販売台数(台))× 価格 97(万円/台)→ 売上 46 億円・営業利益 5 億円。数量 1.90 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 11.0%
- 洗浄機器:数量 14,720(販売台数(台))× 価格 41(万円/台)→ 売上 60 億円・営業利益 8 億円。数量 1.15 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 13.5%
- その他(工賃・部品・消耗品・水質浄化剤):数量 83.7(取引件数(千件))× 価格 6.88(万円/件)→ 売上 58 億円・営業利益 9 億円。数量 1.35 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 15.5%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 19.23 倍、時価総額 345 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手不足による清掃の機械化が想定の上限まで進み、新しい仕入先の製品も当たる筋書き。蔵王産業は仕入先と製品を選ぶ力が成長の源だが、当たり外れがあるため 7% に置いた。
やや楽観 20% 清掃の機械化が着実に進み、部品・保守が積み上がる 利益 13 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 4,879 円266 億円
清掃機器は人手不足を追い風に台数が 5 割増える。洗浄機器は業務用の入れ替え需要で小幅に増える。売った機械の修理・部品・消耗品は、現場に置かれた機械の台数に比例して 2 割増える。
仕入れ値は物価並みに上がるが、顧客も清掃費用の上昇を受け入れる。営業利益率は 12% 前後で、過去 10 年の山(16%)には届かない。
配当は 安定配当を守り、利益が増える分だけ現金の積み上がりが早まる。
この筋書きでは仕入先との関係が安定し、部品・消耗品の継続収入が全体の利益を下支えする。大きく当たるわけではないが、崩れにくい形である。
- 清掃機器:数量 3,750(販売台数(台))× 価格 96(万円/台)→ 売上 36 億円・営業利益 4 億円。数量 1.50 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 10.0%
- 洗浄機器:数量 13,440(販売台数(台))× 価格 41(万円/台)→ 売上 54 億円・営業利益 7 億円。数量 1.05 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 12.5%
- その他(工賃・部品・消耗品・水質浄化剤):数量 74.4(取引件数(千件))× 価格 6.83(万円/件)→ 売上 51 億円・営業利益 7 億円。数量 1.20 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 14.5%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 17.8 倍、時価総額 266 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:清掃機器の機械化が計画に近い形で進み、洗浄機器は横ばい以上を保つ筋書き。直近の清掃機器の 21% 増が一時的な反動ではなく続くかどうかは読みにくく、強気の確率は 2 割にとどめた。
中立 40% 清掃機器は伸び、洗浄機器は縮み、全体では物価並みに稼ぎが増える 利益 11 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 3,990 円217 億円
清掃機器は人手不足で台数が 25% 増える。洗浄機器は、コロナ後に伸びた家庭用のカーペット洗浄機が一巡し、台数が 3% 減る。修理・部品・消耗品は、売った機械の累計が増えるため 1 割増える。
仕入れ値と人件費は物価並みに上がり、販売価格にほぼ転嫁できる。営業利益率は今と同じ 12% 前後で動かない。本社の費用も物価で増やしている。
現金は利息収入が 2% に上がって増えるが、配当は利益の 8 割近くを出す方針で、大きくは積み上がらない。
仕入先との関係は今のまま続き、新規の大きな商品も、大きな失敗も無い。静かに物価並みに稼ぎが増えていく、10 年である。
- 清掃機器:数量 3,125(販売台数(台))× 価格 95(万円/台)→ 売上 30 億円・営業利益 3 億円。数量 1.25 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 9.0%
- 洗浄機器:数量 12,416(販売台数(台))× 価格 40(万円/台)→ 売上 50 億円・営業利益 6 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 12.0%
- その他(工賃・部品・消耗品・水質浄化剤):数量 68.2(取引件数(千件))× 価格 6.78(万円/件)→ 売上 46 億円・営業利益 7 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 16.6 倍、時価総額 217 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:清掃機器の機械化と、家庭用洗浄機の反動減が相殺し、利益率が過去 12 年の帯(10.8〜16.3%)の下の方で動く筋書き。仕入先が三つに集中する弱みはあるが、輸入販売の継続力を評価し最も重く置いた。
やや悲観 23% 中国の部品メーカーが日本に直接売り込み、洗浄機器の値段が下がる 利益 8 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,210 円120 億円
中国の洗浄機メーカーが日本に直接売り込みを始め、蔵王産業が扱う中価格帯の機械の値段が下がる。洗浄機器は台数が 15% 減り、価格の上昇も物価に届かない。清掃機器は伸びるが、競争のために値引きが増える。
修理・部品は台数が横ばいで、利益率は少し下がる。営業利益率は 9% 前後まで下がる。
現金の一部は、新しい仕入先の探索や在庫の積み増しで減るものの、配当は守られる。
中国メーカーとの値引き競争は、一度始まると収まりにくい。利益率の低下は一度起きると戻りにくい。値引きで失った顧客は、価格を戻しても戻ってこないためである。
- 清掃機器:数量 2,500(販売台数(台))× 価格 93(万円/台)→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 7.0%
- 洗浄機器:数量 10,880(販売台数(台))× 価格 39(万円/台)→ 売上 42 億円・営業利益 4 億円。数量 0.85 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 10.0%
- その他(工賃・部品・消耗品・水質浄化剤):数量 62.0(取引件数(千件))× 価格 6.58(万円/件)→ 売上 41 億円・営業利益 5 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 12.5%
倍率:事業の ROE は 8% 台まで下がり、k をわずかに上回る程度。正当化 PER は 13 倍前後だが、利益の質が低いため上限の約 8.5 割の 11.78 倍に置いた。余った現金は谷で食う分を引いて 0.75 倍で数えた。
確率:中国メーカーの直接販売が広がり、仕入先が絞られて利益率が下がる筋書き。仕入先が 3 社に集中している現状を考えると、強気側より厚く置く必要がある。
悲観 10% 主要仕入先が日本に直販を始め、輸入代理店の役割が薄れる 利益 4 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,139 円62 億円
主要な仕入先(ミニッツマン、イーリー、IP クリーニング)のうち、1〜2 社が日本に子会社を作り、直接販売に切り替える。蔵王産業は代理店契約を失い、洗浄機器の台数は 4 割減る。清掃機器も一部の機種を失う。
部品・消耗品は、新しい仕入先の商品に切り替えるまで売上が落ち、顧客の流出も起きる。営業利益率は 3% まで下がり、利益はほぼ消える。
事業としての値打ちは薄れ、持っている現金と投資有価証券が値段を決める。配当は据え置きで現金が減っていく。
仕入先を失った後に新しい商品を探すには数年かかり、その間に顧客が競合へ移る。立て直しには、事業の縮小と現金の取り崩しが避けられない。
- 清掃機器:数量 2,125(販売台数(台))× 価格 89(万円/台)→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。数量 0.85 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 3.0%
- 洗浄機器:数量 7,680(販売台数(台))× 価格 38(万円/台)→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。数量 0.60 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 5.0%
- その他(工賃・部品・消耗品・水質浄化剤):数量 46.5(取引件数(千件))× 価格 6.33(万円/件)→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。数量 0.75 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 8.0%
倍率:稼ぐ力(純利益 ÷ k)は 10 億円に満たず、売れる資産の約 62 億円のほうが大きい。床は売れる資産で置き、今の自己資本 131 億円に約 0.47 倍を掛けた。
確率:主要な仕入先が日本法人を作って直接販売を始め、輸入代理店の価値が失われる複合の筋書き。独占契約の更新が数年ごとに来るため、起こりうる出来事として 1 割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
清掃機器
動力清掃機、真空掃除機、カーペット清掃機など、ごみを集める機械。ビルメンテナンス会社や工場が主な顧客。
| 数量販売台数(台) | 価格万円/台 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,500 | 71 | 18 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3,125 | 95 | 30 | 3 |
取り方:有報の製品別売上 17.8 億円(2026/03、前期比 21% 増)を、販売台数 2,500 台(推定。台数は未開示)で割った平均単価。営業利益 1.4 億円は製品別の利益が開示されないため、清掃機器は洗浄機器より薄利とみた推定。
洗浄機器
自動床洗浄機、カーペット洗浄機、高圧洗浄機、スチーム洗浄機。家庭用のカーペット洗浄機(リンサー)も扱う。
| 数量販売台数(台) | 価格万円/台 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12,800 | 30 | 38 | 5 |
| 10 年後 中立 | 12,416 | 40 | 50 | 6 |
取り方:有報の製品別売上 38.4 億円(2026/03、前期比 4.5% 減)を、販売台数 12,800 台(推定)で割った平均単価。家庭用の安い機種を含むため単価は低い。営業利益 4.6 億円は全社の営業利益から按分した推定。
その他(工賃・部品・消耗品・水質浄化剤)
売った機械の修理、交換部品、洗剤などの消耗品、水質浄化剤。機械が現場にある限り繰り返し売れる。
| 数量取引件数(千件) | 価格万円/件 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 62.0 | 5.06 | 31 | 4 |
| 10 年後 中立 | 68.2 | 6.78 | 46 | 7 |
取り方:有報の製品別売上 31.4 億円(2026/03、前期比 5.9% 増)を、年間の取引 6.2 万件(推定)で割った単価。営業利益 4.4 億円は全社の営業利益から按分した推定で、継続的に売れる分、利益率は高いとみた。
リスクと懸念
仕入先の直接販売
海外仕入の 4 割強を占める仕入先 3 社のうち、1〜2 社が日本法人を設立して直接売り始めれば、代理店の役割がなくなる。独占契約の更新は数年ごとに来るため、起こりうる出来事として最も重く見ている。
洗浄機器の需要の反動
家庭用のカーペット洗浄機の特需が一巡し、2026/03 期は洗浄機器が 4.5% 減った。業務用の入れ替えで補えるかは分からず、最も売上の大きい部門の縮みが全体の利益を削る。
為替と仕入れ値の上昇
仕入れの 6 割がドル、3 割弱がユーロ。為替予約や新商品へのシフトで抑えるとされているが、円安が進めば仕入れ値の上昇を価格に移しきれず、利益率が下がる。
中国メーカーの直接参入
中国の洗浄機・清掃機メーカーが日本で直接販売や安価な代理店網を広げれば、中価格帯の値段が下がる。最大の仕入先のイーリー社も中国のメーカーで、取引の位置が変わる可能性がある。
現金が使われない
69 億円の現金は自己資本の半分を占める。ROE 10% の目標に対し実績は 5.5%。現金が戻らないまま積み上がれば、時間とともに資本の効率は下がり続ける。
今後の分かれ目
- 自社株買いや特別配当が発表され、余った現金の半分以上を戻す方針が数字で示された
- 現金の戻り方を 1.0 に近づけ、中立の時価総額が上がる。強気の確率を上げる。
- 主要仕入先の 1 社が日本での直接販売を発表した
- 悲観の筋書きに近づく。代理店契約の更新と代替の仕入先の確保を確かめる。
- 清掃機器の売上が 2 期続けて 2 割以上伸び、ロボット型の機種が加わった
- 強気の筋書きに近づく。数量の伸びを 10 年で 1.5 倍以上に引き上げる。
- 洗浄機器の売上が 2 期続けて 1 割以上減った
- 反動が想定より大きい。中立の洗浄機器の数量を引き下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 営業利益率が 10% を割った
- 転嫁の力が落ちている兆候。値段の上昇を物価より低く置き直す。
見ておくもの
- 自社株買い・特別配当・配当方針の変更(75 周年までの水準維持の先)
- 仕入先 3 社(イーリー、ミニッツマン、IP クリーニング)との契約と直接販売の動き
- 清掃機器・洗浄機器・その他の売上の推移
- 営業利益率(12% の維持)と為替の影響
- ロボット型の清掃機の取扱開始
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の ROE(余った現金を除く)10% 前後と資本コスト 7.25% から式で置き、上限の 9 割に収めた。今の株価や PER は使っていない。現金は 54 億円を切り分け、戻り方を 0.75 で数えた。この数字が 1.0 なら中立の時価総額は 10 億円ほど上がり、0.5 なら 14 億円ほど下がる。仕入先の集中は k ではなく筋書きと確率で表した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.5→19.23 倍・やや楽観 PER 14.5→17.8 倍・中立 PER 13.5→16.6 倍・やや悲観 PER 11→11.78 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.25% を足して 7.75%。事業は傾いていないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.25%。