結論
サンリンは長野県の松本を本拠に、LP ガスと灯油・ガソリンを家庭と事業所に売る地域のエネルギー会社だ。えのき茸などの青果の卸と製氷も営む。筆者の結論は「割高」で、理由は稼ぐ力の弱さにある。自己資本は 219 億円と時価総額の倍以上あるのに、ROE は 3% 前後にとどまる。
この会社の強みは地域の顧客の網だ。LP ガスは家ごとにボンベを置いて配送と保安点検を続ける商売で、一度つかんだ顧客は簡単には離れない。2026 年 4 月には軽井沢ガスを完全子会社にし、別荘地の顧客を取り込んだ。
弱みは市場が細ることだ。長野の人口は減り、オール電化と高効率の給湯器で LP ガスと灯油の使用量は年々減る。エネルギーの営業利益率は 1% 前後と薄く、全社の利益の 3 割ほどは持ち合いの株の配当などの営業外の収入が支えている。
10 年の中立では、販売量は 15% 減り、値上げと周辺の事業で利益を物価並みに保つ。それでも ROE は資本コストの半分に届かない。帳簿と保有株の厚さは悲観の床にはなるが、株主に戻る道筋は細い。筆者は今の値段を、稼ぎに比べて高いと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、サンリンは「帳簿は厚いが、稼ぎは細る事業」だ。
オーナーとして見た稼ぎは小さい。エネルギーで年 3 億円前後、青果で 2 億円強を稼ぎ、持ち合いの株の配当がそれに加わる。配送の車や設備の更新に再投資が要り、株主のものになる利益は年に 5 億円前後にとどまる。
堀は地域の顧客の網にあるが、その網が覆う市場が縮んでいる。人口減とオール電化は止められず、10 年後に今より強い事業になっている姿は描きにくい。買収で販売量を保つことはできても、利益率を上げる力は見えない。
帳簿の自己資本と持ち合いの株を安全域と見る人もいるだろう。筆者は、それを悲観の床としては数えるが、価値の中心には置かない。資本コストの半分も稼がない資本は、帳簿どおりの値打ちを持たないからだ。持ち合いを解いて株主に返す日が来れば話は変わるが、今はその兆しが無い。
何で稼ぐ会社か
事業はエネルギー関連が中心で、売上 305 億円(2026 年 3 月期)のうち 260 億円を占める。LP ガス・灯油・ガソリン・軽油を長野県内の家庭や事業所、ガソリンスタンドの客に売る。住宅設備の販売と工事、太陽光の PPA(屋根を借りて発電し電気を売る仕組み)、損害保険の取次も、この顧客の網の上で営む。
ただ、エネルギーの利益は薄い。260 億円を売ってセグメントの利益は 2.7 億円、利益率は 1% にとどまる。仕入れ値は元売りと海外の LPG の相場で決まり、売値は地域の競争で決まる。その差の中から、配送の車と人、保安点検の費用を払う。
青果の卸は売上 34 億円で、えのき茸など長野の農産物を扱い、利益は 2.5 億円とエネルギーとほぼ同じだ。製氷・不動産の賃貸・その他の事業も合わせて 1 億円強を稼ぐ。
営業外の収入も大きい。上場株 15 銘柄、約 60 億円を持ち、筆頭株主のミツウロコグループの株が 29 億円、地元のアルピコホールディングスが 15 億円、八十二長野銀行が 7 億円だ。これらの配当と持分法の利益が、経常利益を営業利益より 3 億円以上押し上げている。
優良さと弱いところ
優良さは低い。地域の LP ガスの販売には小さな堀がある。ボンベと配管を家に据え、保安点検の責任を負うので、顧客が販売店を替えるには手間がかかる。2024 年の法令の見直しで、無理な顧客の奪い合いも抑えられた。
しかし、その堀を利益に変える力は弱い。エネルギーの営業利益率は 1% 前後で、同業のミツウロコや伊藤忠エネクスの 2〜3% より低い。県内の配送網は人口の少ない山間部まで広がり、1 件あたりの費用がかさむ。
資本の効率は業界でも最も低い部類だ。ROE は過去 10 年の中央値で 3.8%、直近は 2.4% にとどまる。会社自身も中計で ROE 5% 以上を目標にするが、それでも資本コストには届かない。
資本の使い方にも課題がある。自己資本の 3 割近くを持ち合いの株が占め、筆頭株主のミツウロコとは互いに株を持ち合う。この株は配当を生むが、事業の稼ぐ力を上げる投資ではない。経営は保守的で、配当は守るが、資本の配分を大きく変える動きは無い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
LP ガスの国内需要は、実質で年 1.6% ほどのペースで縮んでいる。家庭用が特に弱く、工業用だけが少し伸びる。長野のような地方は LP ガスの利用率が高い分、人口減の影響を強く受ける。灯油も、暖房の電化で需要が細る。
値段の側では、仕入れ値は海外の LPG 価格と原油に連動し、物価並みに上がる。販売店はその上にマージンを乗せるが、地域の競争で大きくは広げられない。2024 年の液石法の省令改正で営業の過当競争が抑えられ、各社の利益率は少し改善した。ただ、この追い風が永く続くとは限らない。
業界は再編の途中にある。後継者のいない中小の販売店が多く、地域の有力な会社や大手が顧客ごと買い取る流れが続く。サンリンが軽井沢ガスを買ったのも、この流れの一つだ。買う側にいられる会社は、縮む市場の中で販売量を保てる。
長い目で見た脅威は脱炭素だ。新築住宅のオール電化と、ガソリン車から電気自動車への移行が進めば、LP ガスと石油の販売店の数量は一段と縮む。水素や合成燃料への転換は大手の話で、サンリンの規模では関われる範囲が限られる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2026 年 3 月期の配当総額は 2.9 億円で、配当性向は 58% だった。中計は配当性向 35% 以上を掲げ、2027 年 3 月期も同じ額を予定する。自社株買いは 2026 年 3 月期に少しあった程度だ。株主優待は見当たらない。
資本の使い道は、地域の販売店の買収と設備の更新だ。2026 年 4 月には、14.5% を持っていた軽井沢ガスの残りの 85.5% を買い、完全子会社にした。こうした小さな買収は、縮む市場で販売量を保つ数少ない手段だ。
持ち合いの株は約 60 億円あり、筆頭株主のミツウロコグループとは互いに株を持つ。持ち合いを解いて資本を還元すれば ROE は上がるが、そうした方針は示されていない。純現金は約 14 億円あるが、LP ガスと灯油の仕入れや冬の需要期の在庫と売掛金に要る運転資金とみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
帳簿の自己資本は 219 億円あり、時価総額の倍を超える。上場株だけで 60 億円を持ち、純現金も 14 億円ある。持ち合いの株と現金だけで、今の値段の 7 割近くを説明できる。下値は堅い。
事業も底堅い。LP ガスは家ごとにボンベと配管を据える商売で、顧客は簡単に離れない。2024 年の法令の見直しで、営業の過当競争も抑えられた。軽井沢ガスの取得のように、後継者のいない販売店を顧客ごと買える立場にもある。
会社は 2027 年 3 月期に純利益 9.6 億円を見込み、前の期の倍近い。中計は経常利益 16 億円以上・ROE 5% 以上を掲げる。筆頭株主のミツウロコとの関係が資本の再編に向かえば、厚い資本が株主に戻る道も開ける。
青果の卸も地味に効いている。えのき茸など長野の農産物の物流を担い、エネルギーとほぼ同じ利益を稼ぐ。エネルギーの需要が縮んでも、食の事業が会社の稼ぎを下支えする。会社の掲げる「地域密着型の生活関連総合商社」は、言葉だけの看板ではない。
慎重な見方
LP ガスと灯油の需要は、人口減とオール電化で毎年確実に減る。長野の山間部まで広がる配送網は、顧客が減っても費用が残る。エネルギーの営業利益率は 1% 前後で、同業の大手の半分にも満たない。
全社の利益の 3 割ほどは、持ち合いの株の配当などの営業外の収入だ。本業の稼ぐ力はそれだけ弱い。ROE は過去 10 年の中央値で 3.8% と、資本コストの半分に届かない。会社の目標の ROE 5% が達成されても、資本は価値を生まない。
持ち合いの株と現金が下値を支えるというのも、売らなければ株主のものにならない。筆頭株主のミツウロコとの持ち合いは、むしろ資本の再配分を遠ざける。帳簿の厚さに安心して値段を付けるのは、稼がない資本に払うのと同じだ。
買収の効果も限られる。軽井沢ガスのような小さな販売店を買っても、縮む市場の中で販売量を保つのがせいぜいだ。買うたびに配送網は広がるが、1 件あたりの稼ぎは上がらない。規模の小さい会社が縮む市場で買い続けても、資本コストを超える利益は生まれにくい。
どちらに重みを置いたか
持ち合いの株と現金が下値を支えるという強気の見方の論点は事実で、悲観の床としては数えた。ただ、それを株主が受け取る道筋は見えず、稼ぐ力の弱さを突く慎重な見方の方が強い。中立は ROE 3% 台に置き、確率はやや悲観に厚く寄せた。本質価値は今の時価総額を 4 割以上下回る。持ち合いの解消や資本の再編が起きれば楽観に近づくが、それを前提にした値段としても今は高い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 846 円102 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 225 円27 億円)。 今の値に割り戻すと 545 円66 億円、今との差 −34.7%、 期待の年率 +2.5%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,295 円156 億円 | 290 円35 億円 | +89.8% | +6.6% | 127 円15 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,078 円130 億円 | 257 円31 億円 | +59.8% | +4.8% | 267 円32 億円 |
| 中立 | 38% | 933 円113 億円 | 232 円28 億円 | +39.5% | +3.4% | 443 円53 億円 |
| やや悲観 | 22% | 578 円70 億円 | 216 円26 億円 | −5.0% | −0.5% | 175 円21 億円 |
| 悲観 | 12% | 374 円45 億円 | 124 円15 億円 | −40.3% | −5.0% | 60 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 846 円102 億円 | 225 円27 億円 | +28.2% | +2.5% | 1,071 円129 億円 |
今の株価時価総額 835 円101 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 長野の小さな販売店を束ね、生活の総合商社に育つ 利益 13 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,295 円156 億円
長野県内の後継者のいない LPG 販売店を年に 1〜2 社ずつ買い、軽井沢ガスに続いて顧客をまとめて取り込む。県全体の需要は縮むが、サンリンの販売量は今の 0.95 倍で踏みとどまる。配送と保安を 1 つの網にまとめ、1 件あたりの費用が下がる。
太陽光の PPA、住宅設備、保険の取次が顧客 1 件あたりの稼ぎを増やす。えのき茸と青果の卸も、長野の農産物の物流を担って利益を伸ばす。営業利益率は 2.8% と、2000 年前後の最良期に近づく。
中計の ROE 5% に届き、配当性向も 35% を超えて保たれる。筆頭株主のミツウロコとの関係が深まり、資本の再編で株主に値打ちが戻る話が出ることもある 10 年だ。
- エネルギー関連(LP ガス・石油製品・住宅設備・PPA):数量 223(販売量(千 kL 換算・年、推定))× 価格 1.55(1 千 kL あたり売上(億円・名目))→ 売上 346 億円・営業利益 6 億円。223 千 kL 換算 × 1.551 億円、営業利益率 1.8%
- 青果:数量 12.5(取扱量(千トン・年、推定))× 価格 4.20(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 53 億円・営業利益 4 億円。青果 12.5 千トン × 4.20 億円、営業利益率 7.0%
- 製氷・不動産・その他:数量 60.0(取引先・契約(千件・年、推定))× 価格 0.30(1 千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。60 千件 × 0.300 億円、営業利益率 12.0%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 156 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:LPG の需要が縮む中で販売量を保つには、軽井沢ガスのような買収を何件も重ねる必要がある。中計の ROE 5% にも届く筋なので、1 割未満にとどめた。
やや楽観 20% 買収で販売量の減りを補い、中計に近づく 利益 10 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,078 円130 億円
LPG の販売量は 10 年で 1 割減るが、軽井沢ガスのような買収で減りの一部を補う。単価は物価を少し上回って上がる。配送の効率化で、エネルギーの利益率は 1.5% に上がる。
青果の卸は量を保ち、値上げで利益を少し伸ばす。製氷や不動産、その他の事業も物価並みに稼ぐ。持ち合いの株の配当は営業外の収入として利益を下支えする。
配当性向は 35% 以上を守り、1 株の配当は少しずつ増える。ROE は 4% 前後で、まだ資本コストには届かない。厚い自己資本と持ち合いの株が、稼ぎの割に重いまま残る 10 年になる。
- エネルギー関連(LP ガス・石油製品・住宅設備・PPA):数量 212(販売量(千 kL 換算・年、推定))× 価格 1.52(1 千 kL あたり売上(億円・名目))→ 売上 321 億円・営業利益 5 億円。212 千 kL 換算 × 1.518 億円、営業利益率 1.5%
- 青果:数量 12.0(取扱量(千トン・年、推定))× 価格 4.11(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 49 億円・営業利益 3 億円。青果 12.0 千トン × 4.11 億円、営業利益率 6.8%
- 製氷・不動産・その他:数量 57.0(取引先・契約(千件・年、推定))× 価格 0.29(1 千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。57 千件 × 0.293 億円、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 130 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027 年 3 月期の会社予想(純利益 9.6 億円)と、軽井沢ガスの取得はこの形に沿う。中計の経常利益 16 億円には届かないが近づく筋として、2 割を置いた。
中立 38% LPG は細り、値上げと周辺事業で利益を保つ 利益 9 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 933 円113 億円
長野の人口は減り、オール電化と高効率の給湯器が広がる。サンリンの LPG と石油の販売量は 10 年で 15% 減る。単価は物価並みに上がり、エネルギーの売上は名目でほぼ横ばいだ。
配送と保安の費用は人手不足で上がるが、営業利益率は 1.2% と今より少し良い水準に落ち着く。PPA や住宅設備の上乗せが、販売量の減りを埋める程度に効く。青果の卸は量を保ち、利益は物価並みに増える。
配当は配当性向 35% 以上を守る。持ち合いの株の配当は経常利益を支え続ける。ROE は 3% 台で、資本コストの半分にも届かない。帳簿は厚いが、稼ぎはそれに見合わない 10 年になる。
- エネルギー関連(LP ガス・石油製品・住宅設備・PPA):数量 200(販売量(千 kL 換算・年、推定))× 価格 1.48(1 千 kL あたり売上(億円・名目))→ 売上 297 億円・営業利益 4 億円。200 千 kL 換算 × 1.485 億円、営業利益率 1.2%
- 青果:数量 11.4(取扱量(千トン・年、推定))× 価格 4.02(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 3 億円。青果 11.4 千トン × 4.02 億円、営業利益率 6.5%
- 製氷・不動産・その他:数量 55.0(取引先・契約(千件・年、推定))× 価格 0.29(1 千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。55 千件 × 0.287 億円、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 110 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:LPG の需要は業界全体で実質年 1.6% ほど減っている。値上げと周辺の事業で利益を物価並みに保つのが、過去 10 年の姿に近い。中立に 4 割弱を置いた。
やや悲観 22% 需要の縮みが速まり、利益は配当の分だけ 利益 5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 578 円70 億円
オール電化と都市ガスへの切り替えが想定より速く進み、LPG と石油の販売量は今の 0.75 倍に落ちる。灯油の需要も暖房の電化で細る。単価は物価並みに上がるが、配送の網は細った顧客を抱えたまま費用だけが残る。
エネルギーの利益率は 0.6% に下がり、青果の卸も競争で利益率を下げる。全社の営業利益は 5 億円台にとどまる。持ち合いの株の配当が無ければ、利益の多くは消える。
配当は今の額を守るが、配当性向は 5 割を超える。株主に残る値打ちは、稼ぐ力よりも、持ち合いの株と現金を売った時の値打ちで決まるようになる 10 年だ。
- エネルギー関連(LP ガス・石油製品・住宅設備・PPA):数量 176(販売量(千 kL 換算・年、推定))× 価格 1.46(1 千 kL あたり売上(億円・名目))→ 売上 257 億円・営業利益 2 億円。176 千 kL 換算 × 1.463 億円、営業利益率 0.6%
- 青果:数量 10.5(取扱量(千トン・年、推定))× 価格 3.96(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 2 億円。青果 10.5 千トン × 3.96 億円、営業利益率 5.0%
- 製氷・不動産・その他:数量 48.0(取引先・契約(千件・年、推定))× 価格 0.28(1 千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。48 千件 × 0.282 億円、営業利益率 7.0%
倍率:稼ぐ力(純利益÷k=65 億円)が床に近いので、今の自己資本 218.9 億円に PBR 0.251 倍を掛けた床の資産(純現金と持ち合い・保有株の税後、約 55 億円)で置いた。市場の値付けは使っていない。
確率:直近の 4 期で営業利益率は 1.6〜2.4% と低く、2026 年 3 月期には減損も出た。人口減とオール電化が想定より速く進む形として 2 割強を置いた。
悲観 12% 脱炭素で LPG と灯油が急に縮み、事業が細る 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 374 円45 億円
脱炭素の政策で、新築住宅の LPG と灯油の暖房がほぼ無くなる。サンリンの販売量は 10 年で 4 割減り、配送の網は採算が取れなくなる。県内の大手との値下げ競争も起き、ガソリンスタンドも電気自動車の普及で客を失う。
営業利益はほぼゼロになり、持ち合いの株の配当だけが利益を支える。不採算の配送拠点を閉じ、減損が出る。青果の卸も産地の高齢化で量が減る。配当は大きく減らす。
筆頭株主のミツウロコとの持ち合いが解かれ、保有株を売った現金で事業を立て直す話になる。株主に残る値打ちは、売れる株と現金と土地の税後の値打ちだけになる 10 年だ。
- エネルギー関連(LP ガス・石油製品・住宅設備・PPA):数量 141(販売量(千 kL 換算・年、推定))× 価格 1.42(1 千 kL あたり売上(億円・名目))→ 売上 200 億円・営業利益 −1 億円。141 千 kL 換算 × 1.418 億円、営業利益率 -0.4%
- 青果:数量 9.0(取扱量(千トン・年、推定))× 価格 3.84(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。青果 9.0 千トン × 3.84 億円、営業利益率 3.5%
- 製氷・不動産・その他:数量 40.0(取引先・契約(千件・年、推定))× 価格 0.27(1 千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。40 千件 × 0.274 億円、営業利益率 4.0%
倍率:利益がほぼゼロで稼ぐ力(25 億円)より床の資産が大きいので、今の自己資本 218.9 億円に PBR 0.206 倍を掛けた床(純現金と保有株・土地の税後、約 45 億円)で置いた。市場の値付けは使っていない。
確率:LPG の需要が 3〜5 割消えた例は過去に少ないが、脱炭素の政策が強まれば地方の灯油と LPG は一気に細りうる。単一地域の会社として 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エネルギー関連(LP ガス・石油製品・住宅設備・PPA)
長野県内の家庭・事業所・スタンドへの LP ガスと灯油・ガソリン・軽油の販売、住宅設備、太陽光 PPA、保険の取次。
| 数量販売量(千 kL 換算・年、推定) | 価格1 千 kL あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 235 | 1.11 | 260 | 3 |
| 10 年後 中立 | 200 | 1.48 | 297 | 4 |
取り方:販売量の開示は無いので、売上 260.4 億円を LP ガスと石油製品を合わせた約 23.5 万 kL 換算・1 kL あたり約 11 万円(住宅設備・PPA も換算)と推定した。数量は実質、物価は単価に入れる。
青果
えのき茸など長野の農産物の卸。
| 数量取扱量(千トン・年、推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.4 | 3.00 | 34 | 2 |
| 10 年後 中立 | 11.4 | 4.02 | 46 | 3 |
取り方:取扱量の開示は無いので、売上 34.2 億円を約 1.14 万トン・1 トン約 30 万円と推定した。
製氷・不動産・その他
製氷、賃貸不動産、その他のサービス。
| 数量取引先・契約(千件・年、推定) | 価格1 千件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.0 | 0.21 | 11 | 1 |
| 10 年後 中立 | 55.0 | 0.29 | 16 | 2 |
取り方:製氷 3.8・不動産 1.6・その他 5.3 億円の合計 10.7 億円を、取引先・契約約 5 万件・1 件約 2 万円と推定した。
リスクと懸念
LP ガスと灯油の需要の縮み
長野の人口は減り、新築住宅はオール電化が増え、灯油の暖房も電化が進む。LP ガスと石油の販売量は毎年確実に減り、配送網の費用だけが残る。業界の需要は実質で年 1.6% ほど減っており、地方ほど速い。
薄い利益率
エネルギーの営業利益率は 1% 前後と同業の大手より低い。配送の人手や燃料の費用が上がり、値上げが通らなければ利益はすぐに消える。2026 年 3 月期には減損も出た。
持ち合いの株への依存
全社の利益の 3 割ほどは保有株の配当などの営業外の収入だ。保有株は約 60 億円で、ミツウロコやアルピコ、八十二長野銀行の業績と配当方針に左右される。持ち合いが解かれれば利益の支えが減る一方、資本が戻る可能性もある。
脱炭素の政策
政策で新築住宅のガス・灯油の暖房が抑えられたり、電気自動車への移行が速まったりすれば、需要の縮みは一段と速まる。水素や合成燃料への転換は大手が中心で、サンリンの規模では関われる範囲が狭い。
法令の追い風の後退
2024 年の液石法の省令改正で営業の過当競争が抑えられ、利益率は改善した。運用が緩めば顧客の奪い合いが戻り、営業費が再び増える。
今後の分かれ目
- 軽井沢ガスに続く販売店の買収が続き、販売量の減りが止まったら
- 買う側の強みが出たとみて、やや楽観に重みを移す。
- 中計の ROE 5% と経常利益 16 億円に届いたら
- ためた利益の目減りが小さくなるとみて、中立の倍率を上げる。
- ミツウロコとの持ち合いを解き、売った代金を還元に回したら
- 眠った資本が株主に戻り始めたとみて、確率を楽観側に寄せる。
- エネルギーの利益率が 1% を割る年が続いたら
- 需要の縮みに費用が追いつかないとみて、やや悲観に重みを移す。
- 新築住宅の LP ガスを抑える政策が出たら
- 悲観の筋書きが近づいたとみて、重みを移す。
見ておくもの
- LP ガスと石油製品の販売量
- エネルギー関連のセグメント利益率
- 販売店の買収の件数
- 保有株の残高と持ち合いの方針
- ROE と配当性向(中計の ROE 5%・配当性向 35%)
倍率と資本コストの決め方
ROE が過去も先も k 8.0% を大きく下回るので、倍率は 1÷k の 12.5 倍を上限に、ROE÷k に合わせて下げた。今の PBR 0.45 倍は使っていない。持ち合いの株の配当を利益に残したので、株の値打ちは中立・楽観に足さず、悲観側の床にだけ税後で数えた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.5 倍・やや楽観 PER 9→12.5 倍・中立 PER 8.5→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.5%。