結論
コーア商事HDは、ジェネリック(後発品)医薬品の原料である原薬を海外から輸入して国内のメーカーに売る専門商社だ。子会社のコーアイセイが、注射剤と錠剤の製造も手がける。2026 年 6 月期の売上は 247 億円、営業利益は 55 億円で、営業利益率は 22% と卸売業としては飛び抜けて高い。
筆者の結論は、10 年で測ればやや割安というものだ。需要が景気に左右されにくく、純現金が厚く、しかも会社が利益の 2 割しか株主に返していないためである。
稼ぎの源は二つ。原薬販売が売上の約 65% を占め、利益率は約 20%。90 社を超える海外の製造元から仕入れ、国内 100 社を超える製薬会社に納める。医薬品製造販売は、蔵王工場のプレフィルドシリンジ(あらかじめ薬を詰めた注射器)が中心で、2026 年 6 月に第二工場が完成した。
10 年後の中立の姿は、売上が両事業で約 410 億円、営業利益が約 87 億円、純利益が約 61 億円である。会社は 2030 年に営業利益 80 億円を目標とするが、筆者は数年遅れでの到達と見た。
心配な点は三つ。錠剤が競合と薬価で縮んでいること。原薬の国内回帰とマルチソース化による競争。後発品の品質問題で規制が強まること。
今の時価総額は約 350 億円で、実績の PER は 9 倍台。純現金が 111 億円あることを考えると、事業そのものの値段はさらに低い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべきは三点だ。この商売は 10 年後も続くか、利益のどれだけが株主のものか、経営は資本を賢く使うか。
続くかどうかについて、後発品は医療費を抑える国の政策に支えられ、数量が減りにくい。原薬の商売は、承認書の仕入れ先という登録が壁になる。確信度は高めに置ける。
株主のものになる利益について、原薬の商社は設備投資がほとんど要らず、利益の多くが現金になる。注射剤の工場は設備が重いが、償却後でも利益が出ている。営業利益の約 7 割が純利益になる。
資本の使い方では、評価が分かれる。会社は慎重で、借金もほとんどない。ただ、純現金が時価総額の 3 割を占めるのに、配当性向は 20% にとどまる。これは株主から見れば物足りない。大型のM&A に使えば価値を壊すおそれもある。
以上から、事業の質に比べて今の値段は低い。ただし、純現金の使い方を少数株主が決められない点と、薬価の毎年の下げを考え、安全域は数字ほど厚くないと筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
事業は二つ。売上は連結で 247 億円で、二つの事業の合計はそれより大きい(内部売上の消去がある)。
原薬販売(売上 170 億円、利益 33 億円)は、コーア商事が営む。10 か国、90 社を超える海外の製造元から原薬と中間体を輸入し、国内 100 社を超える製薬会社に納める。1991 年の設立以来、ジェネリックの原料を専門にしてきた。品質試験や医薬分析も自前の分析センターで行う。
もう一つの強みは、仕入れ先の登録だ。後発品の承認書には、原薬の製造元が書かれている。製造元を変えるには変更の申請が要り、手間がかかる。このため、一度採用された原薬は簡単には切り替えられない。会社は「2nd 品」、つまり既存品の 2 社目の仕入れ先としての採用を増やしている。
医薬品製造販売(売上 90 億円、利益 21 億円)は、コーアイセイとコーアバイオテックベイが営む。注射剤は、蔵王第一工場がプレフィルドシリンジとバイアル(小瓶)を作り、2026 年 6 月竣工の第二工場はプレフィルドシリンジ専門で、2 直体制で年 1,200 万本を作れる。錠剤は横浜の本社工場が作るが、競合の参入で減っている。
設立は 1991 年、2015 年に東証二部に上場した。2011 年にイセイ(注射剤)、2012 年に興亜製薬(OTC 薬)を子会社にした。
優良さと弱いところ
堀は、承認書に書かれた原薬の仕入れ先としての地位と、90 社を超える海外の製造元との関係にある。原薬の変更には国への申請が要り、品質を証明する分析力も要る。これが、新規参入の壁と、既存顧客の切り替えのしにくさを生む。
収益力は高い。営業利益率は 2020 年 6 月期の 14% から、2026 年 6 月期の 22% へ上がった。ROE は 12% で、自己資本比率は 79%。借金はほとんどなく、純現金が 111 億円ある。需要は後発品の処方量に連動し、景気にほぼ左右されない。
弱いところは三つある。第一に、値決めの力が弱い。顧客の後発品メーカーは、薬価が毎年下がる中で、原薬の購入価格を下げさせようとする。第二に、注射剤の工場に頼る比重が高まる。蔵王第二工場に 65 億円を投じ、償却が重くなる。第三に、本社工場の錠剤は競合と薬価で縮んでいる。
経営は慎重だ。設備投資で成長し、回収してから株主に返す考え方を掲げる。ただ、配当性向は 20% 台で、純現金は積み上がり続けている。資本の使い方には、まだ改善の余地がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
後発品は、日本の医療費抑制の柱だ。数量シェアは 2025 年度に 89.7% まで上がり、政府は 2029 年度末に金額シェア 65% 以上という新目標を掲げる。数量はほぼ天井だが、金額のシェアはなお伸びる余地がある。2024 年 10 月に始まった選定療養(先発品を選ぶと患者の負担が増える仕組み)も、後発品への切り替えを後押しする。
価格の面では、薬価が毎年のように下がる。後発品メーカーの収益は厳しく、原薬の購入価格にも下げ圧力がかかる。これは原薬商社にとって、売上の単価を押し下げる力になる。
2020 年以降、複数の後発品メーカーが製造の不備で業務停止になり、供給不安が続いた。国は品質規制を強め、メーカーは原薬の仕入れ先を複数持つ「マルチソース化」を進める。これは、2nd 品を狙う原薬商社には追い風だが、同じ商売をする競合も増える。国内の原薬メーカーとの取引へ戻る動きも一部にある。
競合は、化学品や医薬品原料を扱う他の商社、専業の原薬商社、そして国内外の原薬メーカーによる直接販売だ。コーア商事は専業の中堅で、後発品に特化した分析力と、90 社超の仕入れ先網を武器にする。
注射剤は、透析用などでプレフィルドシリンジの使用がガイドラインで推奨されており、需要が堅い。AI は、規制の厳しい原薬の取引にはほとんど影響しない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、配当性向は 20% を目安とし、原則として毎年増配する方針だ。2026 年 6 月期の配当性向は 20.2%。自社株買いの開示は見当たらない。2026〜2028 年 6 月期の 3 年間の資金計画は約 170 億円で、うち株主還元は約 25 億円、研究開発約 6 億円、借入返済約 10 億円。残りは設備投資、M&A、還元の強化に充てるとしており、具体的な額は決めていない。
10 年の還元は、会社の方針どおり配当性向 20% 以上を目安に置き、毎年の増配を織り込んで利益の 25% ほどとした。自社株買いの実績はなく、総還元性向の過去 5 年も配当性向と同じ 20% 前後なので、これ以上は置かない。そのぶん現金と自己資本が積み上がり、ROE は 12% の目標を下回る。
純現金 111 億円のうち、事業に要らない余った現金は 50 億円と見る。残りは原薬の在庫・売掛金と、本社工場の再構築(2026 年 12 月開始)に必要な運転資金と設備資金。戻り方は 0.5 とした。純現金は毎年積み上がっており、これまで戻してこなかったためだ。
株主優待は、200 株以上に QUO カードを贈る制度で、費用は年 1 億円未満と小さく、別建てにしない。M&A の実績は注射剤や OTC 薬の工場の買収に限られ、今後の方針は明示されていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026 年 6 月期は、売上・各段階の利益がそろって過去最高を更新した。原薬は新規上市品の拡販で利益が伸び、2025 年以降に上市した品目は利益率が高い。営業利益率は 6 年で 14% から 22% へ上がっている。
後発品の使用拡大は国の方針で、金額シェアの新目標(65% 以上)も追い風になる。供給不安を背景に、2nd 品の需要は増えている。会社の取扱いは 90 社超の仕入れ先網があり、他社が簡単にまねできない。
蔵王第二工場は 65 億円を投じて完成し、稼働を 4 か月前倒しして 2027 年 3 月に始める。2 直で年 1,200 万本のプレフィルドシリンジを作れ、透析向けなど需要は堅い。バイアルラインの稼働はまだ 2 割ほどで、上積みの余地が大きい。
会社の長期計画は 2030 年に営業利益 80 億円。今の 55 億円からの伸びは 5 割弱で、物価上昇だけで達成できる水準だ。これに、純現金 111 億円と、配当性向 20% という還元余力が加わる。
慎重な見方
2027 年 6 月期は、売上が増えるのに営業利益は 3.8% 減る予想で、8 期ぶりの減益になる。本社工場の錠剤は競合の参入と薬価で縮み、償却費、賃上げ、研究開発費が重くなる。原薬の利益率も 18.3% に下がる見込みだ。
原薬は、構造的に値決めの力が弱い。顧客の後発品メーカーは、薬価が毎年下がる中で購入価格を下げさせる。国内の原薬メーカーとの取引へ戻る動きもある。顧客が再編で数社に集約されれば、商社を外して原薬メーカーと直接取引するおそれがある。
注射剤は、工場に 65 億円を投じて償却が重くなった。需要は堅いが、稼働率が計画どおり上がらなければ、利益はむしろ減る。2020 年以降、後発品業界では製造不備による業務停止が相次いだ。品質事故が一度起きれば、受託先は離れる。
最後に、資本の使い方だ。純現金は時価総額の 3 割に膨らんだのに、配当性向は 20% のまま。大型の M&A で資本を溶かすおそれもある。10 年後の ROE は、現金が溜まって 10% 前後に下がりうる。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は、実績の積み上げと、需要が安定している点で、事実に基づく。慎重な見方の根拠は、値決めの弱さと、錠剤・工場の不安で、これも否定できない。ただし、事業の稼ぐ力は借金も少なく、悲観でも大きくは崩れにくいと見る。
確率は、中立に 4 割弱を置き、やや悲観を 23% と厚めにした。悲観は 12%。顧客の再編による商社外しや、品質事故のような、過去に業界で実際に起きたことを織り込んだ。そのうえでなお、今の値段は、純現金と事業の稼ぐ力に比べて低いと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 2,362 円995 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 260 円110 億円)。 今の値に割り戻すと 1,357 円571 億円、今との差 +63.4%、 期待の年率 +12.2%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,007 円1,688 億円 | 385 円162 億円 | +429.1% | +18.1% | 307 円129 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,425 円1,443 億円 | 332 円140 億円 | +352.7% | +16.3% | 752 円317 億円 |
| 中立 | 38% | 2,964 円1,248 億円 | 292 円123 億円 | +292.3% | +14.6% | 1,237 円521 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,063 円448 億円 | 185 円78 億円 | +50.4% | +4.2% | 287 円121 億円 |
| 悲観 | 12% | 215 円90 億円 | 112 円47 億円 | −60.7% | −8.9% | 39 円16 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,362 円995 億円 | 260 円110 億円 | +216.0% | +12.2% | 2,623 円1,105 億円 |
今の株価時価総額 830 円350 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 原薬の 2nd 品が広がり、蔵王の増産も当たって、利益が 2 倍を超える 10 年 利益 83 億円 · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 4,007 円1,688 億円
後発品の使用が高水準で定着し、供給不安を避ける動きで原薬の「2 社目の仕入れ先」が国内で当たり前になる。コーア商事は 90 社を超える海外の仕入れ先網を武器に、取扱品目を大きく増やす。原薬の数量は 3 割増え、利益率は 20% に乗る。
注射剤では蔵王第二工場が計画より早く稼働し、プレフィルドシリンジ(あらかじめ薬を充填した注射器)の受託が満杯になる。高薬理活性の注射剤の受託開発(CDMO)にも手を広げ、1 本あたりの売上が大きく上がる。バイアル(小瓶)ラインの稼働も 6 割を超える。
売上は両事業合計で約 500 億円、営業利益は約 118 億円(2030 年計画の 80 億円を 1.5 倍に上回る)、純利益は約 82 億円。余った現金は設備投資や買収に使われ、還元は会社の方針どおり、利益の 3 割弱にとどまる。
- 原薬販売:数量 22,100(国内後発品の原薬需要(百万円・実質)× 当社のシェア)× 価格 1.34(原薬の価格指数(今 = 1.00))→ 売上 295 億円・営業利益 59 億円。原薬の取扱量 1.30 倍・単価 1.34 倍
- 医薬品製造販売:数量 251(年間の出荷単位数(百万単位・本と錠の換算・推定))× 価格 86(1 単位あたり売上(円・推定))→ 売上 216 億円・営業利益 58 億円。出荷 1.12 倍・1 単位あたり売上 2.15 倍(注射剤の比重)
倍率:事業の純利益 82 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 19.09 倍、時価総額 1,599 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:原薬の 2nd 品化と注射剤の受託の両方が計画を大きく超える形で、条件が多い。足元の利益は 7 期連続で伸びたが、2027 年 6 月期は減益予想で、勢いは一服している。確率は 7% にとどめる。
やや楽観 20% 会社の長期計画に近い形で、原薬と注射剤がともに伸びる 10 年 利益 70 億円 · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 3,425 円1,443 億円
会社の 2030 年の計画(営業利益 80 億円)が、数年の遅れで実現する。原薬は新規上市品の拡販が続き、数量が 2 割強増える。単価は後発品の薬価の下げに押され、物価ほどは上がらない。利益率は 19.5% で踏みとどまる。
注射剤は蔵王第二工場の稼働率が 8 割に上がり、プレフィルドシリンジの受託が伸びる。本社工場の錠剤は競合の参入で縮むが、注射剤の伸びで埋まる。医薬品の利益率は 25% 台に戻る。
売上は両事業合計で約 450 億円、営業利益は約 100 億円、純利益は約 70 億円。M&A は小粒なものが 1〜2 件入り、還元は利益の 26% ほど。
- 原薬販売:数量 20,740(国内後発品の原薬需要(百万円・実質)× 当社のシェア)× 価格 1.28(原薬の価格指数(今 = 1.00))→ 売上 265 億円・営業利益 52 億円。原薬の取扱量 1.22 倍・単価 1.28 倍
- 医薬品製造販売:数量 237(年間の出荷単位数(百万単位・本と錠の換算・推定))× 価格 80(1 単位あたり売上(円・推定))→ 売上 190 億円・営業利益 48 億円。出荷 1.06 倍・1 単位あたり売上 2.00 倍(注射剤の比重)
倍率:事業の純利益 70 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 18.75 倍、時価総額 1,344 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:長期計画(営業利益 80 億円)に近い形が数年遅れで実現する筋書き。蔵王第二工場の稼働前倒しと新規上市品の拡販という裏づけがあるが、錠剤の失速も同時に起きており、中立より低い 20% を置く。
中立 38% 長期計画に数年遅れで届き、利益は物価と数量でじわじわ積み上がる 10 年 利益 61 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 2,964 円1,248 億円
原薬は、後発品の数量が横ばいから微増にとどまる中で、新規上市品の取り込みと 2nd 品の積み上げでシェアを少しずつ上げる。数量は 17% 増。単価は薬価の毎年の下げと原薬メーカーの値下げ圧力で、物価までは上がらず 1.22 倍とした。利益率は 18.5%(2027 年 6 月期の会社予想は 18.3%)。
医薬品は、蔵王第二工場のプレフィルドシリンジが稼働率を段階的に上げる一方、本社工場の錠剤は競合と薬価で縮む。数量はほぼ横ばいだが、注射剤の比重が高まって 1 単位あたりの売上が大きく上がる。利益率は 24.5%。2030 年に営業利益 40 億円という会社目標には届かず、6 年遅れて到達するイメージだ。
売上は両事業合計で約 410 億円、営業利益は約 87 億円(利益率 22%)、純利益は約 61 億円。還元は配当性向 20% の方針から少しずつ上げて、利益の 25% ほど。残りは本社工場の再構築や新製品の開発、積み上がる現金になる。
- 原薬販売:数量 19,890(国内後発品の原薬需要(百万円・実質)× 当社のシェア)× 価格 1.22(原薬の価格指数(今 = 1.00))→ 売上 242 億円・営業利益 45 億円。原薬の取扱量 1.17 倍・単価 1.22 倍
- 医薬品製造販売:数量 224(年間の出荷単位数(百万単位・本と錠の換算・推定))× 価格 76(1 単位あたり売上(円・推定))→ 売上 170 億円・営業利益 42 億円。出荷 1.00 倍・1 単位あたり売上 1.90 倍(注射剤の比重)
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 18.36 倍、時価総額 1,143 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:原薬は堅調、医薬品は注射剤の立ち上がりを錠剤の失速が相殺する形。10 年の平均では最も起こりやすい。
やや悲観 23% 錠剤の失速と原薬の値下がりで、利益が足踏みする 10 年 利益 34 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,063 円448 億円
本社工場の主力錠剤は、競合の参入と薬価の下げで縮み続ける。原薬では、ジェネリックメーカーが国内の原薬メーカーとの取引へ回帰したり、仕入れ先を絞って直接取引に切り替えたりし、数量が増えず、単価も 1 割ほどしか上がらない。利益率は 15.5% に落ちる。
蔵王第二工場は立ち上がりが遅れ、稼働率が低いまま償却だけが重くのしかかる。注射剤の受託価格も下がり、医薬品の利益率は 17% に落ちる。
売上は両事業合計で約 310 億円、営業利益は約 49 億円、純利益は約 34 億円。これは今の水準より 2 割ほど少ない。人件費は物価で増え、利益を削る。還元は利益の 22% に下がる。
- 原薬販売:数量 17,000(国内後発品の原薬需要(百万円・実質)× 当社のシェア)× 価格 1.10(原薬の価格指数(今 = 1.00))→ 売上 187 億円・営業利益 29 億円。原薬の取扱量 1.00 倍・単価 1.10 倍
- 医薬品製造販売:数量 206(年間の出荷単位数(百万単位・本と錠の換算・推定))× 価格 58(1 単位あたり売上(円・推定))→ 売上 120 億円・営業利益 20 億円。出荷 0.92 倍・1 単位あたり売上 1.45 倍(注射剤の比重)
倍率:ROE 6.0% は k 7.25% を下回り、PER の上限は 1÷k ≒ 13.3 倍。錠剤の失速と原薬の競争で成長が止まる構造的な負けなので、上限の 7 割を下回る 9.5 倍に置く。余った現金は 0.75 倍の 38 億円で、戻り方 0.5 を掛ける。
確率:錠剤の失速、薬価の毎年改定、原薬の国内回帰とマルチソース化の競争など、悲観側の材料が足元に出そろっている。業界全体の収益環境も厳しく、中立に近い 23% を置く。
悲観 12% 調達の変化と品質事故が重なり、両事業の価値が落ちる 10 年 利益 9 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 215 円90 億円
構造的な負けの筋書きだ。後発品メーカーの再編が進み、取引先が数社に集約される。強くなった顧客は原薬を海外の製造元と直接取引し、商社を通さなくなる。原薬の数量は 25% 減り、単価も下がって、利益率は 11% に落ちる。
さらに、蔵王工場で品質上の問題が起き、行政処分や出荷停止につながる。受託先が離れ、第二工場は稼働しない設備だけが残る。本社工場の錠剤も競合に奪われる。医薬品は赤字寸前の利益率 5% になる。
売上は両事業合計で約 190 億円、営業利益は約 17 億円、純利益は約 9 億円。ただし、自己資本比率が 79% と高く純現金も厚いので、会社の存続は揺らがない。還元は利益の 20% にとどまる。
- 原薬販売:数量 12,750(国内後発品の原薬需要(百万円・実質)× 当社のシェア)× 価格 0.95(原薬の価格指数(今 = 1.00))→ 売上 121 億円・営業利益 13 億円。原薬の取扱量 0.75 倍・単価 0.95 倍
- 医薬品製造販売:数量 157(年間の出荷単位数(百万単位・本と錠の換算・推定))× 価格 46(1 単位あたり売上(円・推定))→ 売上 72 億円・営業利益 4 億円。出荷 0.70 倍・1 単位あたり売上 1.15 倍(注射剤の比重)
倍率:ROE 1.9% は k 7.25% を大きく下回り、PER の上限は 1÷k ≒ 13.3 倍。商社外しと品質事故で収益が細る筋書きなので、上限の 6 割にあたる 8.0 倍に置く。余った現金は 0.5 倍の 25 億円で、戻り方 0.5 を掛ける。
確率:顧客の集約による商社外し、品質事故による行政処分、薬価の大幅な下げが同時に起きる必要があり、起きれば損失が大きい。後発品業界では 2020 年以降に製造不備による業務停止が相次いだ実例があるため 12% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
原薬販売
海外の製造元から後発品の原薬・中間体を輸入し、国内の製薬会社に売る。品質試験・分析も担う。
| 数量国内後発品の原薬需要(百万円・実質)× 当社のシェア | 価格原薬の価格指数(今 = 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 17,000 | 1.00 | 170 | 33 |
| 10 年後 中立 | 19,890 | 1.22 | 242 | 45 |
取り方:国内の後発品向け原薬の需要を約 1,700 億円(実質、推定)、当社のシェアを約 10% とみて、数量を 17,000 百万円とした。市場規模は開示がなく、後発品の薬価ベース市場に原薬の原価率を掛けた推定。価格は原薬の値段の指数で、物価の分を入れる。セグメント売上にはコーアイセイ向けの内部売上を含む(連結では消去)。
医薬品製造販売
注射剤(プレフィルドシリンジ・バイアル)と錠剤などの受託製造・自社販売。蔵王工場と本社工場。
| 数量年間の出荷単位数(百万単位・本と錠の換算・推定) | 価格1 単位あたり売上(円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 224 | 40 | 90 | 21 |
| 10 年後 中立 | 224 | 76 | 170 | 42 |
取り方:売上 89.6 億円 ÷ 1 単位あたり平均売上 約 40(単位:円。錠剤は 1 錠が小さく、注射器は 1 本が大きいため混合の推定値)= 224 百万単位。出荷数量は開示がなく推定。蔵王第二工場(プレフィルドシリンジ専門・年 1,200 万本)の稼働で、1 単位あたり売上の高い注射剤の比重が上がる。
リスクと懸念
原薬の値下がりと顧客の商社外し
顧客の後発品メーカーは薬価の毎年の下げの中で購入価格を下げさせる。メーカーの再編が進み、取引先が数社に集約されれば、商社を通さず原薬メーカーと直接取引するおそれがある。
錠剤の失速と本社工場の老朽化
本社工場の主力錠剤は、競合の参入と薬価の下げで縮んでいる。2026 年 12 月から再構築投資が始まり、償却と費用が重くなる。2027 年 6 月期の医薬品の減益予想の主因でもある。
蔵王第二工場の稼働率
65 億円を投じた第二工場の償却が始まる。プレフィルドシリンジの受託が計画どおり埋まらなければ、固定費が重く、医薬品の利益率が下がる。バイアルラインは稼働が 2 割ほどに低い。
品質問題と規制の強化
2020 年以降、後発品業界では製造不備による業務停止が相次いだ。注射剤の製造や原薬の品質で事故が起きれば、行政処分と受託先の離反につながる。
原薬の国内回帰と調達の混乱
国は原薬の国産化を促し、一部の顧客は国内メーカーとの取引へ戻っている。海外の製造元に頼る当社には逆風になる。物流費と国際情勢のリスクもある。
純現金の使い方
純現金は時価総額の 3 割に当たる 111 億円。配当性向は 20% 台にとどまり、大型の M&A で資本を溶かすおそれがある。少数株主は使い方を決められない。
一時要因の剥落
2026 年 6 月期の経常利益には、医薬品の安定供給の助成金と、外貨建て債券の受取利息が加わった。これらは今後も続くとは限らない。
今後の分かれ目
- 蔵王第二工場の稼働率が 2028 年 6 月期までに 7 割を超える
- 医薬品の利益率が回復し、会社の 2030 年計画(営業利益 80 億円)が現実になる。やや楽観〜楽観に寄る。
- 原薬の利益率が 17% を割る状態が続く
- 顧客の購入価格の引き下げが本格化した合図。中立の 18.5% を下げて見直す。
- 大手の後発品メーカーが再編され、原薬を直接取引に切り替える
- 商社外しが現実になった合図で、やや悲観〜悲観の筋書きに近づく。
- 蔵王工場で品質上の問題が起き、行政処分や出荷停止が出る
- 受託先が離れ、第二工場の投資が回収できなくなる。悲観の筋書きに寄る。
- 自社株買いの開示や、配当性向 30% 超への引き上げ
- 純現金の戻り方が上がり、10 年の還元が上振れる。余った現金の戻り方を 0.5 から引き上げて見直す。
- 数十億円規模の M&A を発表する
- 買収の相手と対価によって、価値を足すか壊すかが分かれる。のれんと ROE の見方を改める。
見ておくもの
- 蔵王第二工場の稼働率と受注(四半期の決算説明)
- 原薬セグメントの営業利益率
- 後発品の薬価改定と使用促進策(数量・金額シェア)
- 純現金の使い方(還元・M&A)
- 後発品メーカーの再編と、原薬の国内回帰の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE から出した RONIC と g 4% の式の上限の 9 割(中立)で置いた。今の株価や PER、同業の倍率は使っていない。今の時価総額(約 350 億円)が倍でも半分でも、10 年の数字は動かない。純現金 111 億円のうち 50 億円は余った現金として別に足し、戻り方 0.5 を掛けた。数量(原薬の取扱量・出荷単位数)は後発品の数量シェアが天井に近いことを踏まえ、横ばいから微増に置いた。原薬の市場規模と注射剤の出荷単位数は開示がなく、推定である。10 年の数字は、家賃を営業費用に入れる今の形でそろえてある。賃借は小さく、新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.8→19.09 倍・やや楽観 PER 14.6→18.75 倍・中立 PER 13.6→18.36 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。