結論
アイナボホールディングスは、住宅の外壁タイルやサッシ、給湯器・バスなどの設備を仕入れて売り、工事まで請け負う建材・設備の商社だ。売上は約 920 億円。筆者の結論は「やや割高」。一番の理由は、時価総額の 7 割に相当する純現金が、将来の統合で目減りするかもしれないことだ。
事業は薄利で、営業利益率は 2〜3% 台。過去 12 年の山は 3.2% で、今は 2.7%。ROE は 5〜7% で、資本コストの 8% 台に届かない。新築の戸建住宅が人口減で減るなか、補修や給湯器の取り替え、大型物件の工事で利益を保っている。
財務は固い。無借金で、現金と預金が約 130 億円ある。ただ、会社はこれを使わず、配当性向も 35% 前後にとどまる。社長の阿部一成氏の一族とみられる資産管理会社が株を持ち、変化は遅い。
2026 年 3 月、会社は橋本総業ホールディングスと共同の持株会社を作る経営統合の検討を始めた。単純に足すと売上は約 2,500 億円。統合比率はまだ決まっていない。現金の厚い側の株主が、薄い側と分け合う形になるかどうかが最大の焦点だ。
10 年後の中立は、売上 1,200 億円、営業利益 31 億円、純利益 24 億円。物価並みに単価は上がるが、戸建の数量が減るので利益率は今と同じ 2% 台にとどまる。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を 1 割強下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この会社の本質は「堅いが薄い」だ。無借金で現金が厚く、潰れる心配は小さい。しかし、営業利益率は 2% 台、ROE は資本コストに届かない。利益は、新築の減る国内市場の中で、補修と給湯器で守っているにすぎない。
堀は普通だ。得意先 7 千社と職人の育成体制は、簡単にはまねできない。ただ、商品は他社と同じものを売り、値段を自分では決められない。利益率が 3% を超えて定着した年は無い。
稼いだ利益のうち、毎年 6 割以上が会社に残る。10 年で純現金は倍近くになり得る。使われない現金は、額面を下回る値打ちにしかならない。筆者は、現金の半分だけを足して評価する。
統合の検討は、買い手の目で見ると不透明だ。現金が薄く、規模が大きい相手と、対等の精神で組む。比率が決まれば、現金の分け前の議論が避けられない。
今の値段は、事業の利益に 7〜8 倍、現金に 6 割ほどを付けた水準で、安全域は薄い。売りの理由は無いが、強く買う理由もない。
何で稼ぐ会社か
グループの中身は 2 つの事業に分かれる。売上の約 85% が戸建住宅事業、約 15% が大型物件事業だ。分け方は受注先の規模で、仕事の中身は近い。
戸建住宅事業は、住宅会社や工務店向けに、外壁タイル、サイディング、サッシ、給湯器・システムバスなどを仕入れて販売し、取り付けまで請け負う。売上の大半は住宅設備の販売と工事だ。補助金を使った高効率給湯器への取り替えが、直近は伸びている。2025 年 9 月期の営業利益率は 4.0%。
大型物件事業は、ビルやマンション向けのタイル工事、ユニットバスの設備工事、石材工事、空調・衛生設備工事。売上は小さいが利益率は 8.0% と高く、グループの利益の 4 分の 1 を稼ぐ。
持株会社が経営指導と不動産の賃貸を担い、連結子会社 8 社が実務を回す。競争力の源は、総合技術研修センターで育てる職人と、自家保険(自前で工事の事故に備える仕組み)、そして約 7 千社の得意先だ。
M&A は積極的だ。2024 年 10 月に仙台のガラス加工会社を買収して東北に入り、上埜タイルを子会社にして 2026 年から連結に入れた。買取再販(中古住宅を買って直して売る事業)も育てている。海外は非連結のベトナム子会社だけで、売上はほぼ国内だ。
優良さと弱いところ
優良さは「普通」。強みは 3 つある。1 つ目は、約 7 千社の得意先と、商材と工事を一貫して出せる点。住宅会社は、仕入れと施工を一社に任せると手間が減る。2 つ目は、技術研修センターで職人を自前で育てていること。職人不足の時代に、これは数字に出にくい強みだ。3 つ目は財務の固さで、無借金・純現金 127 億円、自己資本比率 55%。
弱みは利益の薄さだ。営業利益率は 2〜3% で、仕入れた商品の値上がりを客に転嫁しきれないと、利益はすぐ減る。2026 年 9 月期の会社予想は営業利益が 17% 減と出ていたように、販管費の増加が重い。人件費と物流費の上昇は避けられない。
資本の使い方も課題だ。ROE は過去 10 年の中央値で 6.4%、資本コストの 8% 台を下回る。純現金が時価総額の 7 割もあるのに、買収は小さく、還元は 35% 前後だ。事業で稼いだ利益が、現金として積み上がっている。
利益率の山は 3.2%(2014 年 9 月期)。会社は第 5 次中期経営計画で 2.8% を掲げるが、新築の減少を考えると、山を超えるとは見ない。筆者は、利益率は 2% 台の半ばに置く。
経営は安定している。社長の阿部一成氏は 1991 年から在任し、株は一族の資産管理会社が分け合う。変化は遅いが、大きな失敗もしていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建材・住宅設備の流通は、需要が先細る成熟市場だ。新設住宅の着工は人口減とともに減り、戸建はとくに弱い。地方の職人の高齢化も進む。
一方で、補修や取り替えの需要は堅い。給湯器やサッシの断熱改修には補助金が付き、住宅は古くなるほど修繕が増える。ビルやマンションの大規模修繕、公共施設の空調更新も、大型物件の下支えになる。業界全体の数量は、中立で 10 年に 1 割弱減るとみる。
価格は、資材高と人件費の上昇で名目では上がる。ただ、卸は仕入れ値の上昇を完全には転嫁できず、粗利は 1 割前後にとどまる。メーカーの直販や通販も、中抜きの圧力になる。
競争は地域ごとに分かれる。住宅設備は橋本総業ホールディングスのような管材・設備の卸、タイルは地場の専門商社、工事は職人を抱える施工会社が相手になる。アイナボホールディングスは、販売と施工を両方持つ点で、その真ん中にいる。
再編の波は強い。会社は 2026 年 3 月、橋本総業ホールディングスとの経営統合の検討を始めた。単純に足して売上 2,500 億円規模の住宅設備・建材流通企業になる計画で、職人不足と新築の減少への対応策になる。ただ、統合比率が決まるまで、既存株主にとっての価値は読めない。
資本政策と M&A
還元は穏やかだ。配当性向は 2025 年 9 月期で約 36%。2026 年 9 月期の年間配当は、期末を引き上げて前の期より増やした。第 5 次中期経営計画は配当性向 40%、純資産配当率 2.6%、ROE 8% を掲げる。自社株買いの実績は見当たらない。
現金の使い方が最大の論点だ。現金と預金は約 130 億円、有利子負債は 3 億円だけ。営業で稼いだ現金は社内に残り、10 年前の純現金 67 億円から 127 億円に増えた。
M&A は小さな案件が中心で、上埜タイルや仙台のガラス加工会社のように、地場の専門会社を足している。大型の買収はまだない。
そのうえで 2026 年 3 月の統合の検討がある。橋本総業ホールディングスと共同株式移転で持株会社を作る案で、公開買付けは想定していない。統合比率は未定。比率次第で、純現金の厚いアイナボホールディングスの株主の取り分は、現金を相手と分け合う形で薄まる可能性がある。逆に、比率が有利なら、規模の利益で利益率が上がる。
株主は、アベタなどの一族の会社、従業員持株会が上位。自己株式は 0.3% と小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方はこうだ。事業は強くなっている。2026 年 9 月期の中間期は、営業利益が 9.5% 増え、販売費の増加を粗利率の 1.1 ポイント改善で吸収した。通期予想の営業利益 21 億円は低く出ており、実際は 25 億円前後に届く。会社は配当も引き上げた。
第 5 次中期経営計画の営業利益 31 億円、ROE 8% は、補修需要と大型物件の増加で達成できる範囲だ。大型物件は利益率 8% で、増える公共施設の空調更新と、マンションの大規模修繕を取り込める。
橋本総業ホールディングスとの統合は、販路の相互補完で効果が大きい。アイナボホールディングスの販売・施工と、橋本総業の管材・設備の流通網がつながれば、仕入れ条件が良くなり、物流費も下がる。売上 2,500 億円規模で、利益率が山の 3% 台に乗れば、営業利益は 45 億円を超える。
純現金 127 億円の使い道が決まれば、価値は表に出る。統合会社で配当性向を引き上げる、あるいは自社株買いを始めるだけで、現金の戻りは大きく変わる。物価の上昇は商品の単価を押し上げ、名目の利益は積み上がる。
慎重な見方
慎重な見方はこうだ。まず、新築の戸建は構造的に減る。人口減と住宅価格の上昇で、10 年後の新設着工は今より 2〜3 割減ってもおかしくない。戸建住宅事業は売上の 85% で、ここが細れば会社全体が細る。補修や給湯器の需要は、補助金が終われば息切れする。
次に、利益率の天井が低い。営業利益率は過去 12 年の山が 3.2%。会社は 2.8% を目標にするが、2026 年 9 月期の会社予想は 17% の減益で出発した。販管費の増加は人件費と物流費で、価格に転嫁しにくい。
統合は、既存株主に不利に働く恐れがある。純現金が時価総額の 7 割に達する会社が、対等の精神で組む。現金は共同の持株会社の中で相手と分け合う形になり、現金の厚い側の株主は取り分が薄まる。統合比率が決まるまで、何も判断できない。
さらに、現金は使われてこなかった。10 年で純現金は 2 倍近くになり、ROE は 6% 前後で足踏みしている。社長は 1991 年から在任し、株は一族の会社が持つ。外から圧力がかかりにくい。
職人不足も深刻だ。研修センターで育てても、現場の高齢化に追いつかず、工事の受注を断る場面が増える。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、足元の増益と統合の可能性に根拠がある。しかし、新築の構造的な減少と、利益率の天井の低さ、現金が使われない実績、統合比率が決まらない不透明さを合わせると、慎重な見方のほうがやや強い。
確率は、楽観を 6%、やや楽観を 18%、中立を 38%、やや悲観を 26%、悲観を 12% とした。純現金が悲観の床を支えるので、悲観は同じ領域の他社と同じ 1 割強にとどめた。統合の影響は、確率を動かさず、現金の戻り方 0.5 に織り込んだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 1,303 円303 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 313 円73 億円)。 今の値に割り戻すと 833 円194 億円、今との差 +9.4%、 期待の年率 +7.8%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,219 円516 億円 | 504 円117 億円 | +257.3% | +13.6% | 163 円38 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,006 円466 億円 | 418 円97 億円 | +218.0% | +12.3% | 436 円101 億円 |
| 中立 | 38% | 1,625 円377 億円 | 344 円80 億円 | +158.4% | +10.0% | 748 円174 億円 |
| やや悲観 | 26% | 648 円151 億円 | 245 円57 億円 | +17.3% | +1.6% | 232 円54 億円 |
| 悲観 | 12% | 194 円45 億円 | 108 円25 億円 | −60.5% | −8.9% | 36 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,303 円303 億円 | 313 円73 億円 | +112.1% | +7.8% | 1,616 円375 億円 |
今の株価時価総額 762 円177 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 統合の効果が出て、利益率が山を超える 利益 32 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 2,219 円516 億円
統合で規模の利益が出て、仕入れ条件と物流費が改善する。戸建住宅は新築の減少を補修と給湯器で止め、数量は横ばい。大型物件は公共施設の空調更新とマンションの大規模修繕で 2 割増える。
営業利益率は 3% 台半ばに乗る。過去の山(3.2%)を超えるには、統合の効果が具体的に出ることが条件になる。本社費は統合で削られ、物価で増えるはずの 23 億円が 22 億円ほどにとどまる。純利益は 34 億円。
会社は統合会社として配当性向を 50% に引き上げ、現金の一部は買収と自社株買いに使われる。余った現金は約 80 億円まで減る。倍率は、ROE が資本コストを超えるので式の PER に近い 14.75 倍。
- 戸建住宅事業:数量 11.2(取り扱い住戸数換算(万戸、推定))× 価格 97(万円/戸(商材と工事の混合単価))→ 売上 1,089 億円・営業利益 46 億円。数量 1.02 倍・価格 1.37 倍(名目)・営業利益率 4.2%
- 大型物件事業:数量 1,800(工事・販売の物件数(件、推定))× 価格 1,317(万円/件(1 物件あたりの請負単価))→ 売上 237 億円・営業利益 20 億円。数量 1.20 倍・価格 1.38 倍(名目)・営業利益率 8.3%
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 14.75 倍、時価総額 516 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:統合の効果が規模の利益として表に出て、利益率が山を超える必要がある。利益率は過去に 3.2% を超えたことがなく、6% にとどめた。
やや楽観 18% 中計の目標に近い形で進む 利益 29 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 2,006 円466 億円
第 5 次中期経営計画の目標をおおむね達成する。戸建住宅は新築の減少を補修と給湯器で補い、数量は 2% 減。大型物件は 12% 増える。営業利益率は 3% 台前半。
統合は成立するが、効果は穏やかで、規模の利益は限定的。本社費は物価並みに増える。純利益は 29 億円。会社は配当性向を 45% に引き上げ、現金は約 95 億円まで積み上がる。
倍率は、ROE が資本コストを少し超えるので 14.37 倍。
この筋書きが成り立つには、補助金に頼らない補修需要の定着と、職人の確保が条件になる。研修センターで育てた職人が増えれば、大型物件の受注を断らずに済む。
- 戸建住宅事業:数量 10.8(取り扱い住戸数換算(万戸、推定))× 価格 96(万円/戸(商材と工事の混合単価))→ 売上 1,039 億円・営業利益 44 億円。数量 0.98 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 4.2%
- 大型物件事業:数量 1,680(工事・販売の物件数(件、推定))× 価格 1,307(万円/件(1 物件あたりの請負単価))→ 売上 220 億円・営業利益 18 億円。数量 1.12 倍・価格 1.37 倍(名目)・営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)71 億円。全体の PER 14.37 倍、時価総額 466 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:第 5 次中期経営計画の目標におおむね沿う筋書き。足元は増益だが、新築の減少が足を引っ張るので 18% に置いた。
中立 38% 補修で守るが、新築の減少が利益率を抑える 利益 24 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,625 円377 億円
新築戸建は減り続けるが、補修と大型物件で補う。戸建の数量は 5% 減、大型物件は 5% 増える。商品の単価は物価並みに上がり、売上は 1,200 億円。営業利益率は 2% 台後半(2.6%)で、過去の山を超えない。
人件費と物流費の上昇は価格に転嫁できるが、本社費は物価で 1.34 倍に増え、23 億円になる。設備を持たない卸と工事の会社で、減価償却は小さく、物価の影響は限られる。純利益は 24 億円。
還元は配当性向 40% で約 80 億円。純現金は積み上がり、余った現金は約 110 億円。ROE は 8% 前後で資本コストとほぼ並ぶため、倍率は上限 11.8 倍の約 9 割、13.25 倍に置いた。
- 戸建住宅事業:数量 10.5(取り扱い住戸数換算(万戸、推定))× 価格 95(万円/戸(商材と工事の混合単価))→ 売上 992 億円・営業利益 39 億円。数量 0.95 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.9%
- 大型物件事業:数量 1,575(工事・販売の物件数(件、推定))× 価格 1,297(万円/件(1 物件あたりの請負単価))→ 売上 204 億円・営業利益 16 億円。数量 1.05 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 7.6%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)82 億円。全体の PER 13.25 倍、時価総額 377 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:補修と大型物件で新築の減少を補い、利益率が 2% 台後半にとどまる筋書き。最も重く 38% とした。
やや悲観 26% 新築の減少が速まり、利益率が下がる 利益 15 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 648 円151 億円
新築戸建の減少が速まり、補修でも補いきれない。戸建の数量は 12% 減、大型物件も 5% 減る。商品価格の転嫁が遅れ、単価の上昇は物価に届かない。
営業利益率は 1% 台後半(1.7%)に下がる。本社費は売上が減っても減らせず、24 億円のまま。統合は成立するが、現金を分け合う形になり、既存株主の取り分は薄くなる。純利益は 15 億円。
会社は配当を守るが、現金の増え方は止まる。倍率は ROE が 5% を割るので 7.5 倍。
この筋書きでは、新築の減少が補修の増加を上回り、職人不足も重なって、受注を断る場面が増える。純現金は残るが、使われないまま積み上がり、資本効率は下がる。
- 戸建住宅事業:数量 9.7(取り扱い住戸数換算(万戸、推定))× 価格 93(万円/戸(商材と工事の混合単価))→ 売上 899 億円・営業利益 31 億円。数量 0.88 倍・価格 1.31 倍(名目)・営業利益率 3.4%
- 大型物件事業:数量 1,425(工事・販売の物件数(件、推定))× 価格 1,250(万円/件(1 物件あたりの請負単価))→ 売上 178 億円・営業利益 12 億円。数量 0.95 倍・価格 1.31 倍(名目)・営業利益率 6.5%
倍率:事業の ROE は約 5% で資本コストを大きく下回る。PER の上限は 11.8 倍。利益が細る局面で、上限の約 6.4 割の 7.5 倍に置いた。
確率:新築の減少が速まり、販管費の増加を転嫁しきれない筋書き。構造的な減少と 2026 年 9 月期の減益予想から、強気側より厚く 26% に置いた。
悲観 12% 新築が構造的に崩れ、営業利益が消える 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 194 円45 億円
新築戸建が構造的に 3 割近く減り、補修需要も補助金の終了で息切れする。戸建の数量は 28% 減、大型物件も 2 割減る。単価の上昇は物価の 3 分の 2 にとどまる。
営業利益率は 0% 台に落ちる。統合は進まず、あるいは成立しても統合効果は出ない。販売管理費は削れず、営業利益はほぼ消える。受取利息で純利益 2 億円を確保する程度になる。
会社は存続し、純現金も残る。ただし配当は絞られ、還元は 25 億円にとどまる。値打ちは、稼ぐ力ではなく、使われていない現金の半分を中心にした水準になる。
職人の高齢化で工事の受注が絞られ、卸の粗利もメーカーの直販で削られる。それでも無借金の財務が床になり、会社が行き詰まる形は考えにくい。
- 戸建住宅事業:数量 7.9(取り扱い住戸数換算(万戸、推定))× 価格 89(万円/戸(商材と工事の混合単価))→ 売上 702 億円・営業利益 17 億円。数量 0.72 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 2.4%
- 大型物件事業:数量 1,200(工事・販売の物件数(件、推定))× 価格 1,193(万円/件(1 物件あたりの請負単価))→ 売上 143 億円・営業利益 6 億円。数量 0.80 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 4.5%
倍率:この筋書きは営業利益がほぼ消え、稼ぐ力を k 7.75% で割ると約 27 億円にしかならない。純現金を使われないまま戻り方 0.5 で足した約 45 億円のほうが大きいので、床は売れる資産で置き、今の自己資本 263 億円に約 0.17 倍を掛けた。
確率:新築の構造的な崩壊と、統合の不調が重なる複合の筋書き。無借金で純現金が厚く、事業が崩れても会社が行き詰まる形は考えにくいので、1 割強の 12% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
戸建住宅事業
住宅会社・工務店向けに、タイル、サイディング、サッシ、給湯器・バスなどの住宅設備を販売し、取り付け工事まで請け負う。
| 数量取り扱い住戸数換算(万戸、推定) | 価格万円/戸(商材と工事の混合単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 11.0 | 71 | 780 | 31 |
| 10 年後 中立 | 10.5 | 95 | 992 | 39 |
取り方:戸建住宅事業の売上 779.6 億円を、取り扱い住戸数換算 11 万戸(推定。新築とリフォームを戸数に直した値で、開示は無い)で割った混合単価。利益は決算の 31.2 億円。数量は新築の減少で減り、補修と給湯器の取り替えで一部補う。単価は商材と人件費に連れて物価並みに上がる。
大型物件事業
ビル・マンション・公共施設向けのタイル工事、ユニットバスなどの設備工事、石材工事、空調・衛生設備工事。
| 数量工事・販売の物件数(件、推定) | 価格万円/件(1 物件あたりの請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1,500 | 954 | 143 | 11 |
| 10 年後 中立 | 1,575 | 1,297 | 204 | 16 |
取り方:大型物件事業の売上 143.1 億円を、物件数 1,500 件(推定。開示は無い)で割った単価。利益は決算の 11.4 億円(利益率 8.0%)。数量は公共施設の空調更新とマンションの大規模修繕で増え、単価は資材と人件費に連れて物価を少し上回って上がる。
リスクと懸念
新築戸建の構造的な減少
売上の 85% が戸建住宅事業。人口減と住宅価格の上昇で、新設着工は 10 年で 2〜3 割減る可能性がある。補修と給湯器の取り替えで補っても、数量の減少は止めにくい。
経営統合の条件次第で株主の取り分が薄まる
2026 年 3 月に橋本総業ホールディングスとの共同持株会社設立の検討を始めた。統合比率は未定。純現金が厚い会社の株主が、現金を分け合う形で不利になる可能性がある。
利益率の薄さと販管費の増加
営業利益率は 2〜3% 台で、山でも 3.2%。人件費と物流費の上昇を価格に転嫁しきれなければ、利益は一気に落ちる。2026 年 9 月期の会社予想は 17% 減益だった。
職人不足と高齢化
工事は職人の数で受注が決まる。研修センターで育てても、現場の高齢化に追いつかなければ、工事を断ることになり、売上が伸びない。
現金が使われない
純現金は時価総額の 7 割。毎年 6 割以上の利益が社内に残る。買収が小さく、還元も 35% 前後で、資本効率は上がらないまま現金だけが増える。
メーカー直販・通販による中抜き
メーカーが住宅会社に直接売る、あるいは通販が広がると、卸の粗利は削られる。粗利は 1 割前後と元々薄い。
オーナー一族による支配
阿部一族の資産管理会社が上位株主に並ぶ。経営は安定するが、少数株主の意見は通りにくい。統合の条件や現金の使い方も、一族の意向で決まる。
今後の分かれ目
- 橋本総業ホールディングスとの統合比率が発表され、アイナボホールディングス側の取り分が現金込みで見合っている
- 現金の戻り方を 0.5 から上げる材料になる。規模の利益で利益率が山を超えれば、確率を楽観側に寄せる。
- 統合比率が現金の価値を反映せず、橋本総業側に有利になる
- 既存株主の取り分が薄まる。現金の戻り方を 0.5 から下げ、本質価値を見直す。
- 2027 年 9 月期に営業利益が 25 億円を超えて定着する
- 補修と大型物件で利益を守れている証拠。中立の営業利益率の置き方を見直す。
- 自社株買いを始める、または配当性向を 50% 以上に引き上げる
- 純現金の戻りが見えるので、余った現金の戻り方を 1.0 に近づける。
- 新築戸建の着工が年 40 万戸を割り込む
- 戸建住宅事業の数量が悲観の筋書きに近づく。大型物件と補修で補えるかが焦点になる。
- 補助金の終了で給湯器の取り替え需要が息切れする
- 戸建住宅事業の増収が止まる。利益率が 3% 台から下がる。
見ておくもの
- 橋本総業ホールディングスとの統合比率と日程
- 第 5 次中期経営計画の最終年度(2028 年 9 月期)の達成度:売上 1,120 億円・営業利益 31 億円
- 営業利益率(戸建・大型物件別)
- 新設住宅着工戸数と給湯器の補助金
- 純現金の増減と配当性向・自社株買い
- 販管費(人件費・物流費)の伸び
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から筋書きを作らず、戸建と大型物件の数量と名目の単価から利益を積み、倍率は利益ベースで置いた。事業の ROE が資本コスト 7.75% に届かない中立は、PER の上限 1÷k(11.8 倍)の約 8 割。純現金 127 億円のうち、仕入先への支払いと運転資金で必要な約 40 億円を除いた約 85 億円を余った現金として分けた。戻り方は 0.5(戻している実績が無く、一族が株を持つため)。10 年の筋書きでは、現金が積み上がる分を base で 110 億円とした。全社費用(本社費)は物価で増やし、10 年で約 1.34 倍とした。設備を持たない卸と工事の会社で、減価償却は小さく、物価で増やさない扱いの影響は限られる。橋本総業ホールディングスとの統合は比率が未定のため、数字には織り込まず、現金の戻り方 0.5 と確率に反映した。新リース会計基準(2028 年 9 月期ごろ)で営業利益とリース負債の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ家賃を費用に入れた形にそろえた。物流拠点の賃借の残高は確かめられていない。結論はやや割高。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。事業は傾いていないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。