結論
オートバックスセブンは、国内最大のカー用品チェーン「オートバックス」の本部である。店の多くは加盟店(FC)で、同社は商品を卸し、ブランドと販促を握る。近年は車のディーラーや整備工場の買収にも踏み出している。
筆者の結論は「やや割高」だ。確率をかけた本質価値は、今の時価総額を2割弱下回る。事業が悪いのではない。10年先の稼ぐ力に対して、値段のほうが先に走っている。
強みは本部の力にある。店の数、自社ブランドの商品、アプリで集めた会員がそろう。タイヤと整備は景気に左右されにくく、車が古くなるほど手がかかる。
弱みは利益の薄さだ。売上2,800億円に対し、営業利益は138億円。利益率は5%に届かない。しかも国内の車の数は、10年で1割ほど減る見込みだ。
いちばん気になるのは、成長を買収と軽EVに頼る点だ。当たれば稼ぎ頭が増える。外れれば、投じたお金が戻らない。この賭けの大きさを、筆者は値段に織り込んで見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家が見るのは、10年後も続く事業かどうかと、株主に回る利益の大きさだ。
事業は続く。車が走る限り、タイヤと整備は要る。FCの形は、資金を抱えずに店を広げられる強みもある。ただ、利益が薄い。売上に対する営業利益は5%に届かず、少しの値崩れや費用増で、利益は大きく動く。
株主が自由に使える利益は、純利益の7割ほどと見る。店の維持は加盟店が担うが、買収と整備の投資に、本部のお金が出ていくからだ。
資本の使い方は、評価が割れる。還元の方針は手厚い。一方で、ディーラーや軽EVへの投資は、本業と違う力が要る。買った会社の利益が育たなければ、お金は戻らない。
堀は中ぐらいだ。値決めの力が弱く、通販やディーラーに削られる部分がある。安全域を考えると、中立の本質価値は、今の値段より1割強低い。上振れは2割ほどあるが、悲観では大きく割る。もっと安く買える機会を、待つ価値のある銘柄だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、車まわりの出費のうち「買う・付ける・直す」の取り分である。主力はオートバックス事業で、売上の約7割を占める。
店の中心は加盟店だ。本部がメーカーから商品を仕入れて卸し、販促と情報システムを提供する。国内に523店(2026年6月末)、大型のスーパーオートバックスが71店ある。直営店は少なく、店の家賃や人件費は加盟店が負う。
ほかに3つの事業がある。コンシューマ事業は、買収した車販売店・整備工場・ディーラーを束ねる。アウディ、ボルボ、BYDの正規店も傘下に入った。2026年3月期は売上が8割増え、赤字から黒字に変わった。ホールセール事業は、海外への輸出や中国でのタイヤ卸を担う。拡張事業は、eスポーツなどの周辺領域だ。
稼ぎ方に偏りがある。4事業の利益を足すと約250億円になるが、本部の共通費などを引くと連結では138億円に縮む。稼ぎ頭はオートバックス事業の1つで、ほかは育てている途中だ。
中期経営計画(2026年度まで)は、売上3,000億円・営業利益150億円を掲げる。柱は、拠点を100増やすこと、卸の販路を広げること、EV関連の新事業だ。長期ビジョンは、2032年度に売上5,000億円を目指す。
優良さと弱いところ
堀は、全国の店舗網とブランド、それに会員基盤である。ただし他社がまねできないほど深くはない。
同じ形の競合はイエローハットだ。売上は1,713億円で、オートバックスより小さい。2社で用品店市場を分け合う寡占だが、タイヤは通販でも買える。客が取り付けだけ店に頼む動きは、店の粗利を削り続ける。
値決めの力は強くない。タイヤは大手メーカーが値段を決める。本部が決められるのは、自社ブランドの商品と、整備の工賃くらいだ。
FCという形は、資金の面では軽い。店舗の固定費は加盟店が背負うからだ。その裏返しとして、加盟店の採算が崩れれば本部の卸売りも細る。本部の利益は、加盟店が元気であることに縛られる。
資本効率は並みだ。ROEは過去10年の中央値が5%台、直近でも6%ほどである。自己資本比率は57%と厚いが、買収が続いて、純現金から純負債に変わった。
経営は還元に前向きだが、買収にも積極的である。ここが評価の分かれ目だ。買った会社の利益が育つかどうかを、筆者は確かめたい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場は成熟しており、数量はゆるやかに縮む。国内の自動車保有台数は、人口とともに減る。若者の車離れとカーシェアも重なる。
一方で、車の使用年数は伸びている。古い車ほど、タイヤ・バッテリー・オイルの交換と車検に手がかかる。この需要は景気では動きにくい。整備の市場は約5.9兆円、カー用品の市場は約1.7兆円とされる。
競合は広い。同業のイエローハット、ディーラー、ホームセンター、通販、ガソリンスタンドがある。タイヤは通販でも買えるので、店は「付ける力」で差をつけるしかない。整備士の確保が成長の天井になる。
構造の変化はEVだ。エンジンオイルや排気系の部品は需要が減る。バッテリーや電装の整備は増える。オートバックスは中国・奇瑞(チェリー)などと組み、軽EVを2027年に日本に投入する計画だ。店を整備と販売の拠点に使う狙いである。ただし、車の中身が変わる時代に、整備の技能を更新し続けられる店は限られる。
10年で見ると、市場の数量は1割ほど縮むと筆者は見る。物価の上昇は、価格に乗る。業界の再編も起こりうる。店舗網を保つ負担が重くなれば、中小の加盟店から先に脱落する。
資本政策と M&A
還元の方針は手厚い。5年ローリングで、累計の総還元性向100%を基本とする。配当は年間で50億円弱を保ち、自社株買いも使う。自己株は発行済みの4%強を持つ。
買収は活発だ。近藤自動車工業(車検・整備)、PCTホールディングス、ジェー・シー・エー(ショッピングセンターの用品店)、eスポーツのNGMと続く。2026年7月には、アウディ・ボルボ・BYDの正規店を持つ羽中田自動車工業を子会社にした。FC加盟店を買い取る動きもある。
中計は、投資を累計350億円と見込む。純負債が膨らんでいるので、還元と買収を両立できるかが問われる。
大株主は、日本マスタートラスト信託銀行(信託口)が1割強、スミノホールディングスが5%強、在宅医療助成勇美記念財団が5%強だ。経営に強く口を出す大株主は見当たらない。TOBや再編について、具体的な動きは確認できなかった。
10年の還元は、5年累計で総還元性向100%を基本とする方針より薄い87%で置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
車が減っても、車まわりの出費は減らない。むしろ古い車ほど整備に手がかかる。オートバックスは国内最大の店舗網と、アプリで集めた会員を持つ。調査では、アプリの利用者数がイエローハットを大きく上回った。客との接点の厚みは、通販が簡単にはまねできない。
買収は、売上の伸びを一気に変えた。コンシューマ事業の売上は、2026年3月期に8割増え、赤字から黒字に変わった。計画では、この事業の利益が来期に倍以上になる。ディーラーと整備工場を持てば、新車から車検、中古までの出費を、自社で受けられる。
軽EVも、国内に拠点を持つ強みが生きる。2027年に日中5社の合弁が軽EVを投入し、初年度に数百拠点を整える計画だ。オートバックスの店が整備と販売の窓口になれば、EV時代の入口を押さえられる。
還元も厚い。総還元性向100%の方針で、財務は自己資本比率57%と堅い。長期ビジョンは2032年度に売上5,000億円だ。うまくいけば、買収の利益が育ち、利益率は6%に近づく。
FCの形は、不況に強い。固定費は加盟店が負うので、本部の利益は崩れにくい。
慎重な見方
国内の車の数は、10年で確実に減る。市場が縮む中で、店の数だけを守っても、1店あたりの稼ぎは下がる。本部の卸売りは、加盟店の売上に連動する。
利益の薄さが、最大の弱みだ。営業利益率は5%に届かず、2024年3月期には3.5%まで落ちた。2027年3月期の第1四半期は、売上が増えても経常利益が12%減った。費用が先に増えている。
買収は、利益を育てる前に費用を先に出す。ディーラーは薄利だ。コンシューマ事業の利益率は1%で、本業の12%とは違う世界である。景気や新車の売れ行きに左右される事業を抱えると、これまでの「景気に強い」という看板が揺らぐ。買収で純現金が純負債に変わった点も、見逃せない。
軽EVは、本業と違う力が要る。中国の車を輸入して売り、整備の体制を作る。失敗すれば、出資と店の転換費用が重荷になる。
通販とイエローハットは、顧客を取り合い続ける。整備士の賃上げも利益を削る。10年先の稼ぐ力を、今の値段が先取りしている。
どちらに重みを置いたか
国内最大の店舗網と会員基盤は、強気の言い分が正しい。しかし、利益の薄さと、買収・EVの賭けが利益を生むかどうかは、慎重な言い分が強い。10年で車の数が縮む逆風の中では、薄利の会社は費用増で大きく崩れる。
確率は中立に厚く置き、悲観を1割、やや悲観を2割強とした。楽観は、買収が稼ぎ頭に育つ姿を1割弱にとどめた。
結果として、中立の時価総額に10年の還元を足しても、今の値段に届かない。割安の根拠はなく、やや割高と見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,711 円1,344 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 960 円754 億円)。 今の値に割り戻すと 1,499 円1,177 億円、今との差 −1.9%、 期待の年率 +5.7%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,626 円2,849 億円 | 1,273 円1,000 億円 | +220.8% | +12.4% | 392 円308 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,543 円1,997 億円 | 1,146 円900 億円 | +141.5% | +9.2% | 738 円579 億円 |
| 中立 | 38% | 1,945 円1,528 億円 | 1,082 円850 億円 | +98.2% | +7.1% | 1,150 円904 億円 |
| やや悲観 | 23% | 607 円477 億円 | 764 円600 億円 | −10.2% | −1.1% | 315 円248 億円 |
| 悲観 | 11% | 303 円238 億円 | 382 円300 億円 | −55.1% | −7.7% | 75 円59 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,711 円1,344 億円 | 960 円754 億円 | +74.9% | +5.7% | 2,670 円2,098 億円 |
今の株価時価総額 1,527 円1,200 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 買収が稼ぎ頭に育ち、整備とEVの入口を押さえる 利益 177 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 3,626 円2,849 億円
買収した車販売店と整備工場の利益が育つ。ディーラーと用品店を一緒に運び、新車から車検、中古までの出費を受ける形ができる。コンシューマ事業の売上は倍近くになり、利益率も3〜4%に上がる。
軽EVは2027年に出て、数百拠点が整備と販売の窓口になる。国内の市場は縮むが、オートバックスはシェアを8%まで上げる。タイヤの値上げは吸収され、PBの商品が粗利を支える。
卸売りでは、中国のタイヤ卸と海外のFCが伸びる。10年で利益率は5.8%に上がり、純利益は今の2倍を超える。還元も厚く保たれる。
利益の質も変わる。オートバックス事業への依存が下がり、稼ぎの柱が3つになる。景気や天候で1つが崩れても、全体では耐えられる会社になる。
- オートバックス事業(カー用品の卸・FC本部):数量 23,750(国内のカー用品・取付整備の対象市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 10.7%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍)=実質の市場に対する売上の割合(名目))→ 売上 2,546 億円・営業利益 331 億円。市場2.38兆円(実質、今の0.95倍)× シェア8.00%、営業利益率13.0%
- コンシューマ事業(車販売・整備・ディーラー・EV):数量 77,600(車販売・車検整備のうちグループが取り込める対象市場(億円・実質))× 価格 1.9%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 1,456 億円・営業利益 58 億円。市場7.76兆円(実質、今の0.97倍)× シェア1.40%、営業利益率4.0%
- 卸売・海外・周辺(ホールセール+拡張):数量 58,000(海外のカー用品・タイヤ卸と周辺サービスの対象市場(億円・実質))× 価格 1.6%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 933 億円・営業利益 47 億円。市場5.80兆円(実質、今の1.16倍)× シェア1.20%、営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 177 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍。全体の PER 15.96 倍、時価総額 2,828 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収が稼ぎ頭に育ち、軽EVも当たる姿は描けるが、人口減の逆風の中で10年続けるのは難しい。2つの賭けが同時に当たる必要があり、確率は1割弱に置いた。
やや楽観 20% 買収が着実に利益を出し、シェアをじわり伸ばす 利益 136 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 2,543 円1,997 億円
中計の路線が大きく外れずに進む。出店と買収は続き、不採算店は閉める。コンシューマ事業は利益率を3%台まで上げ、本業の利益を補う。
オートバックス事業は、整備の予約と会員の囲い込みで、来店頻度が上がる。市場は8%ほど縮むが、シェアは7.6%へ少し上がる。タイヤの値上げは物価並みに通り、利益率は12.5%を保つ。
軽EVは小さく始まり、赤字を出さずに拠点を増やす。10年で純利益は今の1.6倍に伸びるが、買収の費用と整備士の賃上げで、伸びは物価をわずかに上回る程度にとどまる。
還元は総還元性向100%の方針に近い形で続く。配当を守りつつ、自社株買いで株数を減らす。純負債は膨らまず、買収は利益の範囲で進む。
- オートバックス事業(カー用品の卸・FC本部):数量 23,000(国内のカー用品・取付整備の対象市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 10.2%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍)=実質の市場に対する売上の割合(名目))→ 売上 2,342 億円・営業利益 293 億円。市場2.30兆円(実質、今の0.92倍)× シェア7.60%、営業利益率12.5%
- コンシューマ事業(車販売・整備・ディーラー・EV):数量 76,000(車販売・車検整備のうちグループが取り込める対象市場(億円・実質))× 価格 1.5%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 1,120 億円・営業利益 39 億円。市場7.60兆円(実質、今の0.95倍)× シェア1.10%、営業利益率3.5%
- 卸売・海外・周辺(ホールセール+拡張):数量 56,000(海外のカー用品・タイヤ卸と周辺サービスの対象市場(億円・実質))× 価格 1.3%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 750 億円・営業利益 33 億円。市場5.60兆円(実質、今の1.12倍)× シェア1.00%、営業利益率4.4%
倍率:事業の純利益 136 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.48 倍、時価総額 1,975 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の路線(出店・買収・整備の強化)が大きく外れず進む姿。買収の成果は出始めているので、中立の次に厚く置いた。
中立 38% 車は減るが、物価と買収の分だけ伸びる 利益 113 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 1,945 円1,528 億円
国内の車の数は減るが、車が古くなって、整備と交換の需要は底堅い。市場の数量は10年で1割ほど縮み、オートバックスはシェアを7.4%へわずかに上げる。
タイヤの値上げは物価並みに通る。コンシューマ事業はシェアを0.9%まで広げ、利益率は3%に育つ。海外と周辺事業も、物価とともに伸びる。
利益は伸びるが、物価の分をわずかに上回る程度だ。本部の共通費は物価で膨らみ、整備士の賃上げも続く。営業利益率は4.9%と、今とほぼ変わらない。純利益は今の1.35倍ほどで、還元は利益の8割ほどを保つ。
M&Aは続くが、大型の買収はない。軽EVは小さく始まり、本業の足を引っ張るほどではない。大きな成功も失敗もなく、物価と同じ速さで少しずつ大きくなる会社だ。
- オートバックス事業(カー用品の卸・FC本部):数量 22,500(国内のカー用品・取付整備の対象市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 9.9%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍)=実質の市場に対する売上の割合(名目))→ 売上 2,231 億円・営業利益 272 億円。市場2.25兆円(実質、今の0.90倍)× シェア7.40%、営業利益率12.2%
- コンシューマ事業(車販売・整備・ディーラー・EV):数量 76,000(車販売・車検整備のうちグループが取り込める対象市場(億円・実質))× 価格 1.2%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 917 億円・営業利益 28 億円。市場7.60兆円(実質、今の0.95倍)× シェア0.90%、営業利益率3.0%
- 卸売・海外・周辺(ホールセール+拡張):数量 55,000(海外のカー用品・タイヤ卸と周辺サービスの対象市場(億円・実質))× 価格 1.3%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 700 億円・営業利益 28 億円。市場5.50兆円(実質、今の1.10倍)× シェア0.95%、営業利益率4.0%
倍率:事業の純利益 113 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.36 倍、時価総額 1,504 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の成熟市場で数量が縮み、物価と買収で売上が伸びる姿が最も起こりやすい。本部の利益が薄いことは織り込み済みで、確率は最も厚く置いた。
やや悲観 23% 通販と人手の板挟みで、利益率が痩せる 利益 53 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 607 円477 億円
車の保有減と通販の広がりで、市場の数量は18%ほど縮む。タイヤは通販で買い、取り付けだけを店に頼む客が増える。店の粗利が薄くなり、加盟店の採算が落ちる。
整備士の確保に賃上げが要り、本部の共通費は物価で膨らむ。買収した会社の利益は思うように育たず、コンシューマ事業の利益率は1.8%にとどまる。
営業利益は今の3分の2ほどに落ちる。利益が薄い会社は、売上が1割縮むだけで、利益がほぼ半分になる。還元は縮小するが、配当は守る。
買収の統合がつまずき、のれんの一部を減損する。新規の買収は止まり、本部は費用の削減に動く。店の数は減らないが、1店あたりの稼ぎは細る。
- オートバックス事業(カー用品の卸・FC本部):数量 20,500(国内のカー用品・取付整備の対象市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 9.4%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍)=実質の市場に対する売上の割合(名目))→ 売上 1,923 億円・営業利益 202 億円。市場2.05兆円(実質、今の0.82倍)× シェア7.00%、営業利益率10.5%
- コンシューマ事業(車販売・整備・ディーラー・EV):数量 70,000(車販売・車検整備のうちグループが取り込める対象市場(億円・実質))× 価格 1.0%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 704 億円・営業利益 13 億円。市場7.00兆円(実質、今の0.88倍)× シェア0.75%、営業利益率1.8%
- 卸売・海外・周辺(ホールセール+拡張):数量 50,000(海外のカー用品・タイヤ卸と周辺サービスの対象市場(億円・実質))× 価格 1.1%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 570 億円・営業利益 17 億円。市場5.00兆円(実質、今の1.00倍)× シェア0.85%、営業利益率3.0%
倍率:ROE 3.7%はk 7.5%に届かず、正当化PERの上限は1÷k=12.1倍。構造的な負けの筋書きなので稼ぐ力から出し、上限の7割以内の8.4倍に置いた。減損は自己資本に入れていない。
確率:整備士不足・費用増・通販とディーラーの囲い込みが重なり、利益率が痩せる姿。利益が薄い会社の実態を考えると十分ありうるので、悲観より厚く置いた。
悲観 11% 買収とEVの賭けが外れ、薄利の本部が重荷になる 利益 25 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 303 円238 億円
車を持たない暮らしが広がり、国内の市場は3割以上縮む。通販とディーラー系の整備に客を奪われ、加盟店の閉店が相次ぐ。本部の卸売りは細り、シェアは6%台に落ちる。
買収したディーラーと整備工場は、新車の不振と費用増で赤字になる。軽EVは売れず、出資と拠点の転換費用が重荷になる。のれんを減損し、自己資本も傷む。
本部の共通費は物価で膨らんでいるが、すぐには減らせない。営業利益は今の3分の1にまで落ち、純利益は25億円ほどになる。還元は大きく絞られる。
再建には時間がかかる。本部の費用を削り、不採算のディーラーを売る。FCの形は残るので倒産には遠いが、株主に回る利益は細い。
- オートバックス事業(カー用品の卸・FC本部):数量 17,000(国内のカー用品・取付整備の対象市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 8.3%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍)=実質の市場に対する売上の割合(名目))→ 売上 1,412 億円・営業利益 134 億円。市場1.70兆円(実質、今の0.68倍)× シェア6.20%、営業利益率9.5%
- コンシューマ事業(車販売・整備・ディーラー・EV):数量 65,000(車販売・車検整備のうちグループが取り込める対象市場(億円・実質))× 価格 0.8%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 523 億円・営業利益 −3 億円。市場6.50兆円(実質、今の0.81倍)× シェア0.60%、営業利益率-0.5%
- 卸売・海外・周辺(ホールセール+拡張):数量 45,000(海外のカー用品・タイヤ卸と周辺サービスの対象市場(億円・実質))× 価格 0.9%(シェア × 物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 422 億円・営業利益 8 億円。市場4.50兆円(実質、今の0.90倍)× シェア0.70%、営業利益率2.0%
倍率:ROE 1.5%はk 7.5%に届かず、正当化PERの上限は1÷k=12.1倍。構造的な負けの筋書きなので稼ぐ力から出し、上限の7割以内の8.4倍に置いた。減損は自己資本に入れていない。
確率:市場の縮小が速まり、買収とEVの賭けが同時に外れる構造的な負け。FCの形は崩れにくく、卸売りの需要の底もあるので1割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オートバックス事業(カー用品の卸・FC本部)
全国の加盟店(FC)にカー用品を卸し、ブランドと販促・システムを提供する。直営店・スーパーオートバックスも含む。
| 数量国内のカー用品・取付整備の対象市場(億円・今の値段で測った実質) | 価格シェア × 物価の倍率(10年1.34倍)=実質の市場に対する売上の割合(名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25,000 | 7.3% | 1,830 | 224 |
| 10 年後 中立 | 22,500 | 9.9% | 2,231 | 272 |
取り方:業種ノートのカー用品市場約1.7兆円に整備・取付を足し、対象市場を約2.5兆円と置いた(イエローハットと同じ物差し・推定)。セグメント売上2,064億円からセグメント間取引の約234億円を引き1,830億円とし、シェア約7.3%。利益は本部の共通費を引く前のセグメント利益224億円(開示)。
コンシューマ事業(車販売・整備・ディーラー・EV)
買収した車販売店・整備工場・ディーラー(アウディ、ボルボ、BYD)、ショッピングセンターの用品店、EV販売。
| 数量車販売・車検整備のうちグループが取り込める対象市場(億円・実質) | 価格シェア × 物価の倍率(10年1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 80,000 | 0.7% | 528 | 5 |
| 10 年後 中立 | 76,000 | 1.2% | 917 | 28 |
取り方:整備市場約5.9兆円に、車販売のうちグループの扱う分を加え対象市場を約8兆円と置いた(開示なし・推定)。売上528.4億円(開示)でシェア約0.66%。買収で前期比8割増、利益は5.2億円と黒字転換したばかり。
卸売・海外・周辺(ホールセール+拡張)
海外への輸出、中国のタイヤ卸、海外のFC、eスポーツなどの周辺事業。
| 数量海外のカー用品・タイヤ卸と周辺サービスの対象市場(億円・実質) | 価格シェア × 物価の倍率(10年1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50,000 | 0.9% | 442 | 17 |
| 10 年後 中立 | 55,000 | 1.3% | 700 | 28 |
取り方:ホールセール335.1億円+拡張107.2億円(開示)。海外と周辺の対象市場を約5兆円と置き(開示なし・推定)シェア約0.88%。利益はホールセール9.4億円+拡張7.6億円。
リスクと懸念
国内の車の保有台数の減少
人口減と若者の車離れ、カーシェアの広がりで、車の数は長期で減る。中立でも市場の数量は10年で1割ほど縮むと見る。店の維持費は加盟店が負うが、売上が落ちれば本部の卸売りも細る。
利益の薄さと費用増
営業利益率は5%に届かず、2024年3月期には3.5%まで落ちた。2027年3月期の第1四半期は、売上が7%増えても経常利益が12%減った。整備士の賃上げと販管費の増加が重なると、利益は大きく動く。
買収の成否と純負債の増加
ディーラーや整備工場の買収が続き、純現金から純負債(2026年3月期は約190億円)に変わった。買った会社の利益が育たなければ、のれんの減損と還元の縮小につながる。羽中田自動車工業などの統合の費用も出る。
軽EVなど新事業の失敗
中国・奇瑞などと組む軽EVは、2027年に日本へ投入する計画だ。輸入、販売、整備の体制を新しく作る。販売が伸びなければ、出資と拠点の転換の費用が重荷になる。
通販・同業・ディーラーとの競争
タイヤや用品は通販で買え、取り付けだけを店に頼む客が増える。イエローハットとの寡占も安泰ではない。ディーラーが整備の囲い込みを強めれば、新車の客が店に来なくなる。
加盟店の採算と整備士不足
店の多くは加盟店で、本部の利益は加盟店の採算に縛られる。整備士の確保が成長の天井になり、人手の足りない店は予約を断るしかない。加盟店の閉店が増えれば、本部の卸売りが細る。
リース(新会計基準)と家賃の固定費
買収した店やディーラーの賃借は、売上が落ちても家賃が減らない固定の約束である。2028年3月期から新リース会計基準でBSにも載る。リースの約束の額は、有報で確かめられていない。
今後の分かれ目
- コンシューマ事業の利益が計画(約12.5億円)を超えて伸び、利益率が3%台に乗ったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。買収が稼ぎ頭に育つ道が開く。
- 営業利益が計画の150億円に届き、利益率が5%台に定着したら
- 中立の利益率の前提(4.9%)を上方修正し、価値を見直す。
- 既存の加盟店の売上が減り続け、本部の卸売りが細ったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。薄利の本部は費用増に弱い。
- 軽EVの発売が遅れる、または初年度の販売が計画を大きく下回ったら
- 新事業の失敗を織り込み、悲観の確率を上げる。出資の減損も見込む。
- 買収が続き、純負債が自己資本の3割を超えたら
- 還元の縮小と減損のリスクが増える。やや悲観に寄せる。
- イエローハットとの競争で価格の引き下げが始まったら
- 利益率の前提を下げる。やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- オートバックス事業のセグメント利益(計画は約231億円)と既存加盟店の売上
- コンシューマ事業の利益(計画は約12.5億円)と、のれんの減損の有無
- 純有利子負債の推移と、自社株買いの実施額
- 軽EVの発売時期・初年度の販売台数・拠点数
- 国内の自動車保有台数と整備士の採用数・賃上げ
倍率と資本コストの決め方
今の株価・PERは見ずに、3事業(オートバックス事業・コンシューマ事業・卸売と周辺)を数量(市場)×シェア×物価で積み、営業利益から純利益を出した。倍率は式(k 7.5%、g 4.0%)から決めた。中立はROE 7.5%がkに届かず、PERの上限は1÷kの12.1倍なので、利益の質(利益が薄く買収の成否が未確定)を見て上限の8.5割にした。やや悲観・悲観は稼ぐ力(純利益÷k)で置き、帳簿の自己資本は床にしていない。純有利子負債がプラスで余った現金は立てていない。新リース会計基準(2028/03期から)で営業利益は少し増え負債も増えるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)でそろえた。悲観の時価総額は純利益25億円×PERで出しており、自己資本に対するPBRは0.13倍と低いが、ROEが2%でkに遠く届かず、帳簿の自己資本は床にならないと考えた。売れる資産は、投資有価証券92億円の税引き後で約64億円と土地294億円の7割で約206億円、合わせて約270億円だが、純有利子負債187億円を引くと約80億円で、悲観の稼ぐ力(約210億円)より小さい。床は効かないので立てていない(悲観は1割)。同じ領域のイエローハット(k 8.0%・中立PER 12.7倍)との違いは、kの循環の+0.25%と、ROEがk未満であることから出た。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.75%(循環+0.25・値決め+0.25・寿命+0.25)を足して8.25%。個別のリスク(買収・EV)は筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。