結論
三愛オブリは、石油製品とLPガスを売る会社だ。ただし利益の中身は別にある。売上の8割超は薄利の石油だが、利益の3分の1は国内7空港の給油施設の収入から出ている。筆者の結論は、今の値段は先に向けてやや割高、というものだ。計算上の本質価値は、今の時価総額を3割ほど下回る。
最大の理由は、利益の土台が細っていくことだ。ガソリンや灯油の数量は、人口減と電動化で毎年2%台で減る。航空の利益が伸びても、石油の目減りを埋めきれない年が続く。その間、自己資本に対する稼ぎは資本コストと同じ8%弱で、株主に余分な価値を生んでいない。
強みは2つある。1つは空港施設だ。給油設備は一度つくると他社が割り込みにくく、収入は長い契約で入る。もう1つは財務で、純現金が時価総額の3割ある。借金で揺らぐ心配はほぼない。
中期計画は3年で600億円を投じ、2030年度に経常利益200億円を狙う。投資の半分近くは航空の設備に向かう。成長の柱は航空だが、航空の利益率は高すぎて、10年先も34%を保つ前提は置けない。筆者はここを割り引いて見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社の本質は2つの顔を持つ。薄利で縮む石油と、高収益で堅い航空だ。持ち続けたいかを決めるのは、後者がどこまで続くかである。
まず、10年後もこの事業は残るかを考える。石油は残るが、量は2割ほど細る。航空は残り、量はむしろ増える。全体としては名目で緩やかに伸びる。ただ、実質では横ばいに近い会社だ。
次に、堀は広がるか。航空の施設は他社が割り込めないが、収入は航空会社との契約に左右される。石油の堀はない。
株主のものになる利益、つまり配当や自社株買いに回せる利益は、純利益のほぼ全部だ。設備投資が重いので、減価償却を引いた実力は純利益より小さい。
経営は資本を荒らさない。借金もなく、大型の買収もしない。その代わり、資本を増やす力も強くない。
最後に安全域だ。純現金が時価総額の3割あり、悲観の筋書きでも傷は浅い。だが、中立の筋書きで資本コストを大きく超える稼ぎが出ない以上、今の値段に安全域はない。わかりやすい事業だが、割安とは言えない。
何で稼ぐ会社か
三愛オブリは、羽田空港の給油を創業の地とする石油の会社だ。事業は5つに分かれる。
売上の84%を占めるのは石油関連だ。ガソリン、軽油、灯油、重油、潤滑油を元売りから仕入れ、給油所や法人に売る。売上は5,100億円を超えるが、セグメント利益は57億円で、利益率は1%程度しかない。数量が減ると固定費の重さがそのまま利益に響く。
利益で見ると、主役は航空関連だ。売上は167億円しかないが、セグメント利益は57億円と石油と並ぶ。国内7空港の給油施設を持ち、航空会社に貸したり、燃料の保管や給油を請け負ったりして稼ぐ。利益率は34%にのぼる。
ガス関連は売上585億円、利益23億円。LPガスを卸し、特約店や子会社を通じて家庭にも売る。小売の軒数は約12万軒で、中期計画は17万軒を狙う。ボンベと配管が家に残るので、契約は粘りがある。
化学品関連は、半導体向けの洗浄剤などをつくる。売上128億円、利益11億円。ほかに、半導体工場の排水や薬液を処理するクリーンテックの事業と、建設や不動産が小さく加わる。
稼ぎの構造は単純だ。石油は量を売って薄く稼ぎ、航空と化学品は少ない売上で厚く稼ぐ。会社の将来は、後者がどれだけ前者の減りを埋めるかにかかる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、航空関連にある。空港の給油施設は、土地・許認可・安全の実績がそろわないと持てない。一度つくると、航空会社は簡単に乗り換えられない。収入が長い契約で入るのは、石油にはない強みだ。
LPガスにも小さな堀がある。ボンベと配管を家に置き、配送と保安点検を続ける仕組みは、横から奪いにくい。ただし規模は小さく、地域ごとに中小の販売店が多い市場だ。大手の岩谷産業や伊藤忠エネクスと比べると、全国の配送網では劣る。
弱みは、本業の大半を占める石油が値決めできないことだ。仕入れ値は元売りが決め、売値は近隣の競争で決まる。利益は1リットルあたりの小さな粗利と、給油所の固定費の差で出る。数量が減れば、その分だけ利益が削られる。
資本の使い方は、控えめで悪くない。純現金を厚く持ちながら、自己資本に対する稼ぎは8%弱にとどまる。過去10年の純利益は60億〜110億円の幅にあり、傷は浅いが伸びも鈍い。航空の利益が一時は88億円まで膨らんだあと、57億円まで戻ったことは、収入の変動が思ったより大きいことを示している。
経営は、配当の下限と総還元性向100%を掲げている。数字で約束する姿勢は評価できる。ただし、実際に自社株買いまで踏み込めるかは、これからの実績で確かめる段階だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
石油の需要は、構造的に縮んでいる。国内のガソリン需要は、省エネ車と電動車の普及で毎年2%台で減る。給油所の数もピーク時の半分以下になり、閉める店が出ている。灯油と重油も、暖房の電化や設備の更新で減る。物価が上がっても、実際に売れる量は戻らない。
LPガスも同じ向きだ。人口減とオール電化で、国内の需要は年1.5〜2%ほど減る。業界は地方の小さな販売店が多く、後継者のいない店を大手が買い集めて統合が進む。三愛オブリも、営業権の買収で軒数を5万軒増やす計画だ。買収の単価が高ければ、利益は伸びない。
一方で伸びる分野もある。航空燃料は、訪日客の増加で需要が戻っている。羽田など主要空港は便数を増やす方向にあり、給油施設の能力を増やす投資が要る。三愛オブリが第2貯油基地を建てるのは、この需要を見込んでのことだ。
半導体向けの化学品は、世界の半導体需要が数量を押し上げる。国内の工場投資が続けば、洗浄剤や薬液の処理の仕事は増える。ただし競合は大手の化学会社で、価格競争に巻き込まれやすい。
周りの会社は、似た課題を抱える。岩谷産業は水素に賭け、伊藤忠エネクスは親会社の伊藤忠商事の支えで電力や家庭向けに広げる。三愛オブリの特色は、空港という、競合の少ない稼ぎ場を持つことだ。この強みは他にない。ただ、業界が縮む力のほうが、10年のあいだは強いと見る。
資本政策と M&A
還元は、中期計画で数字を約束している。年間の配当に下限を設け、総還元性向100%を目指す。配当だけで純利益の7割近くになり、残りを自社株買いで補う形だ。
投資は3年で600億円を計画する。内訳は航空280億円、石油55億円、化学品35億円、ガス30億円、その他50億円で、残りは事業への投資だ。航空の第2貯油基地は大きな賭けだが、収入が長い契約で入る分、他の投資よりは読みやすい。
買収は、LPガスの営業権や小さな会社の買い足しが中心になる。大型の買収は想定しにくい。買収防衛策は2023年に廃止した。株が買われうる状態に戻したことを意味する。純現金が厚く資産も多いので、買われる側の候補ではある。ただ、買収の具体的な報道は確認できない。
2027年3月期は、会社予想で純利益が82億円と、今期より1割ほど減る見込みだ。配当の下限を守るために、自己資本を取り崩す年も出うる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
航空の利益は、まだ伸びる。訪日客の増加で、羽田をはじめ主要空港の便数は増える見込みだ。給油の量が増えれば、固定費の重い施設の稼働が上がり、利益率はさらに上がる。第2貯油基地ができれば、取扱量の上限も広がる。
LPガスも、買収で軒数を5万軒増やす計画が進めば、数量の減りを埋められる。後継者のいない販売店は、これから増える。三愛オブリは財務に余裕があり、買い手として有利だ。
化学品は、半導体の需要を追い風に、洗浄剤と薬液の処理の両方が伸びる。工場の新設は、既に動き出している。
石油は縮むが、量が減る間は固定費の削減で利益を守れる。給油所は閉めれば、固定費も消える。
純現金は時価総額の3割あり、配当と自社株買いの余力は大きい。総還元性向100%を掲げる以上、現金はいずれ株主に戻る。今の値段は、この現金と航空の利益を過小に見ている。2030年度に経常利益200億円という目標が実現すれば、純利益は今の1.5倍になり、PERがそのままでも時価総額は大きく上がる。
慎重な見方
利益の3分の1を支える航空は、思われているほど安定していない。利益は3年前の88億円から57億円まで減った。航空会社が便数を増やしても、施設の収入は契約で決まり、伸びにくい。第2貯油基地は280億円級の投資で、減価償却が利益を削る。
石油は、数量が毎年2%台で減るのに、固定費は物価で上がる。給油所を閉めても、人員と物流の費用は簡単には減らない。利益率が1%の事業は、数量が1割減るだけで利益が半分近くになりうる。
LPガスは、営業権の買収価格が高くなっている。軒数を増やしても、1軒あたりの利益が薄ければ、資本コストに届かない。
化学品は、利益率が8%台で、投資の大きさに対して稼ぎが見合わない。半導体の需要は循環が深く、景気の谷では工場の稼働が落ちる。
最後に、資本の使い方だ。中期計画の600億円は、会社が稼ぐ利益の数年分に当たる。投資の稼ぎが資本コストの7.75%に届かなければ、純現金は価値を生まないまま溶ける。自己資本に対する稼ぎは8%弱で、資本コストと並ぶだけだ。この会社を持つ理由は、値段が安いときに限られる。今の値段は、そうではない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。理由は、石油の縮みの確実さが、航空と化学品の伸びの確実さを上回るからだ。航空は強いが、利益の3分の1に過ぎない。石油の減りは、10年のあいだ毎年続く。
確率は、中立を38%に置き、悲観側の合計を35%、楽観側の合計を27%とした。航空の質と純現金の厚さを考え、悲観を深くはしなかった。強気の主張は、航空の利益率が34%のまま伸びる前提に頼っている。ここを割り引いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,441 円1,506 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,183 円730 億円)。 今の値に割り戻すと 2,009 円1,239 億円、今との差 −20.5%、 期待の年率 +3.7%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,387 円2,707 億円 | 1,459 円900 億円 | +131.5% | +8.8% | 409 円252 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,396 円2,095 億円 | 1,362 円840 億円 | +88.4% | +6.5% | 952 円587 億円 |
| 中立 | 38% | 2,793 円1,723 億円 | 1,232 円760 億円 | +59.4% | +4.8% | 1,530 円944 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,319 円813 億円 | 1,102 円680 億円 | −4.1% | −0.4% | 605 円373 億円 |
| 悲観 | 10% | 639 円394 億円 | 648 円400 億円 | −49.0% | −6.5% | 129 円79 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,441 円1,506 億円 | 1,183 円730 億円 | +43.5% | +3.7% | 3,624 円2,236 億円 |
今の株価時価総額 2,525 円1,558 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 航空と化学品が牽引し、石油の縮みを補う 利益 163 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 4,387 円2,707 億円
航空の取扱量が3割増え、給油の単価も上がる。訪日客の増加と、羽田・成田・関西の便数の拡大が後押しする。第2貯油基地は予定どおり動き、利益率は34%を保つ。
LPガスは買収が進んで軒数が17万軒に届き、卸も含めた数量は3割増える。化学品は半導体向けが倍になり、新工場が稼働する。石油は給油所の整理で固定費を削り、数量が15%減るだけで利益率を1%台に保つ。
純現金は設備投資と買収に使われつつ、還元も進む。総還元性向100%が守られ、10年の還元は900億円に達する。自己資本に対する稼ぎは10%台に乗り、PERは高い水準に置かれる。ただし、石油の縮みの穏やかさと航空の高収益の両方が続く、条件のそろった筋書きだ。
- 石油関連:数量 510(販売量(万kL・推定))× 価格 12(1kLあたり売値(万円))→ 売上 5,877 億円・営業利益 62 億円
- ガス関連:数量 39.0(販売量(万t・推定))× 価格 26(1tあたり売値(万円))→ 売上 1,019 億円・営業利益 43 億円
- 航空関連:数量 1,300(取扱量(万kL・推定))× 価格 0.23(1kLあたり収入(万円))→ 売上 304 億円・営業利益 103 億円
- 化学品関連:数量 8.0(出荷量(万t・推定))× 価格 43(1tあたり売値(万円))→ 売上 343 億円・営業利益 34 億円
- その他(建設・不動産ほか):数量 7,920(工事・契約の件数(推定))× 価格 0.01(1件あたり売上(億円))→ 売上 106 億円・営業利益 17 億円
倍率:事業の純利益 163 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.33 倍、時価総額 2,662 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:楽観は7%。航空の高収益とLPガスの買収の両方が、10年のあいだ想定どおりに運ぶ必要があるので、厚くしない。
やや楽観 20% LPガスの買収が実り、航空も堅調 利益 132 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 3,396 円2,095 億円
LPガスの買収が実り、数量は1割強増える。航空は訪日客の増加で取扱量が2割増え、利益率は3割強を保つ。化学品は半導体向けが7割伸びる。
石油は数量が2割減るが、給油所の再編で固定費を抑え、利益率はほぼ今の水準を守る。会社が目標とする2030年度の経常利益200億円には届かないが、130〜150億円の水準は超える。
還元は総還元性向100%に近づき、自己資本はあまり積み上がらない。ROEは9%強で、資本コストを少し上回る。堀は航空の施設に絞られ、利益の質は中立よりやや高い。
石油の縮みは止まらないが、足りない分を航空とガスが埋め、全社の利益は物価を少し上回って伸びる。会社が掲げる10%のROEには届かないものの、中期計画の方向が半ば実を結ぶ姿だ。
- 石油関連:数量 480(販売量(万kL・推定))× 価格 12(1kLあたり売値(万円))→ 売上 5,532 億円・営業利益 55 億円
- ガス関連:数量 33.6(販売量(万t・推定))× 価格 26(1tあたり売値(万円))→ 売上 878 億円・営業利益 35 億円
- 航空関連:数量 1,200(取扱量(万kL・推定))× 価格 0.22(1kLあたり収入(万円))→ 売上 269 億円・営業利益 87 億円
- 化学品関連:数量 7.0(出荷量(万t・推定))× 価格 43(1tあたり売値(万円))→ 売上 300 億円・営業利益 28 億円
- その他(建設・不動産ほか):数量 7,560(工事・契約の件数(推定))× 価格 0.01(1件あたり売上(億円))→ 売上 101 億円・営業利益 16 億円
倍率:事業の純利益 132 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.3 倍、時価総額 2,020 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:やや楽観は20%。航空の取扱量の増加は見込みやすく、LPガスの買収も実績がある。ただし石油の縮みを補いきる確証はない。
中立 38% 石油は細り、航空とLPガスが穴を埋める 利益 112 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 2,793 円1,723 億円
石油の数量は10年で2割強減り、物価の上昇でも利益率は1%を割る水準に下がる。航空は取扱量が1割増え、施設の収入は物価並みに上がる。ただし、減価償却が増えて利益率は3割程度に下がる。
LPガスは買収で軒数を増やすが、数量は5%減る。化学品は半導体向けが5割伸びる。
全社の営業利益は、物価の上昇とほぼ同じ速さで伸び、10年で150億円ほどになる。会社目標の2030年度の経常利益200億円には届かない。
還元は純利益の7割強を保つ。配当は下限を守り、自社株買いは小さい。自己資本は1,400億円台まで増え、ROEは8%近くにとどまる。資本コストをわずかに上回るだけで、倍率は上限の9割に置く。
- 石油関連:数量 468(販売量(万kL・推定))× 価格 12(1kLあたり売値(万円))→ 売上 5,393 億円・営業利益 51 億円
- ガス関連:数量 28.5(販売量(万t・推定))× 価格 26(1tあたり売値(万円))→ 売上 745 億円・営業利益 28 億円
- 航空関連:数量 1,100(取扱量(万kL・推定))× 価格 0.22(1kLあたり収入(万円))→ 売上 246 億円・営業利益 76 億円
- 化学品関連:数量 6.0(出荷量(万t・推定))× 価格 43(1tあたり売値(万円))→ 売上 257 億円・営業利益 23 億円
- その他(建設・不動産ほか):数量 7,200(工事・契約の件数(推定))× 価格 0.01(1件あたり売上(億円))→ 売上 96 億円・営業利益 14 億円
倍率:事業の純利益 112 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.38 倍、時価総額 1,611 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中立は38%。石油の2割減と航空の1割増が相殺して、名目で物価並みに伸びる筋書きを、最も起こりやすいと見る。
やや悲観 25% 電動化と燃料税制の変更で石油が想定以上に縮む 利益 78 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,319 円813 億円
電動車の普及が想定より早く進み、ガソリンの数量が10年で3割減る。燃料の税制が見直されて、給油所の経営が苦しくなる。固定費の重さが効いて、石油の利益率は0.8%まで下がる。
航空は取扱量が伸びない。便数の増加が止まり、第2貯油基地の減価償却が利益を削る。利益率は3割を割る。
LPガスは買収の価格が高く、軒数を増やしても1軒あたりの利益が薄くなる。化学品は半導体の循環の谷が長引く。
純利益は80億円を割り、ROEは6%を下回る。配当は下限を守るため、純現金が削られる。倍率は資本コストに届かないROEの会社の上限で、その7割に置く。
- 石油関連:数量 420(販売量(万kL・推定))× 価格 12(1kLあたり売値(万円))→ 売上 4,840 億円・営業利益 39 億円
- ガス関連:数量 25.5(販売量(万t・推定))× 価格 26(1tあたり売値(万円))→ 売上 666 億円・営業利益 23 億円
- 航空関連:数量 1,000(取扱量(万kL・推定))× 価格 0.22(1kLあたり収入(万円))→ 売上 224 億円・営業利益 65 億円
- 化学品関連:数量 4.8(出荷量(万t・推定))× 価格 43(1tあたり売値(万円))→ 売上 206 億円・営業利益 15 億円
- その他(建設・不動産ほか):数量 6,480(工事・契約の件数(推定))× 価格 0.01(1件あたり売上(億円))→ 売上 87 億円・営業利益 10 億円
倍率:純利益78億円・ROE 5.8%が資本コスト7.5%以下。上限は1÷k=12.9倍。上限の約7割の9.0倍に置いた。利益が細る局面で、新規投資の稼ぎは資本コストに届かない。
確率:やや悲観は25%。電動化の速さと税制の見直しは、石油の縮みを速める。固定費の重さで、数量の減りが利益に効く。
悲観 10% 石油が構造的に縮み、航空の収入条件も悪化する 利益 30 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 639 円394 億円
石油が構造的に縮む。電動車と省エネで需要が4割以上減り、元売りが直営の給油所を増やして、三愛オブリは卸の取り分を失う。数量の減りに、物価での固定費の上昇が重なり、石油は事実上の赤字に近づく。
航空は、航空会社との契約の更新で収入の条件が悪化する。羽田の施設の使い方も、国が見直す。単価は物価に追いつかず、利益率は2割強に落ちる。
投資した化学品とLPガスの買収が、思ったように稼げない。第2貯油基地も稼働が遅れる。
配当の下限は守れず、純現金は半分近く減る。この会社の価値は、事業の稼ぐ力と、残った純現金の合計にまで下がる。ただし、財務の厚さのおかげで、破綻の心配はない。
- 石油関連:数量 330(販売量(万kL・推定))× 価格 12(1kLあたり売値(万円))→ 売上 3,803 億円・営業利益 19 億円
- ガス関連:数量 21.0(販売量(万t・推定))× 価格 26(1tあたり売値(万円))→ 売上 549 億円・営業利益 14 億円
- 航空関連:数量 900(取扱量(万kL・推定))× 価格 0.20(1kLあたり収入(万円))→ 売上 180 億円・営業利益 40 億円
- 化学品関連:数量 3.6(出荷量(万t・推定))× 価格 38(1tあたり売値(万円))→ 売上 138 億円・営業利益 6 億円
- その他(建設・不動産ほか):数量 5,760(工事・契約の件数(推定))× 価格 0.01(1件あたり売上(億円))→ 売上 77 億円・営業利益 5 億円
倍率:稼ぐ力(純利益30億円÷k 7.5%)は約390億円。床は純現金と売れる資産の税後で約380億円。大きい方の約390億円を今の自己資本1,159億円で割ると0.34倍に置いた。
確率:悲観は10%。純現金の厚さと航空の施設の堀があり、構造的な負けは深くなりにくい。ただし、石油が大半を占める会社なので、5%未満にはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
石油関連
ガソリン・軽油・灯油・重油・潤滑油の卸と給油所での販売
| 数量販売量(万kL・推定) | 価格1kLあたり売値(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 8.60 | 5,160 | 57 |
| 10 年後 中立 | 468 | 12 | 5,393 | 51 |
取り方:開示は売上のみ。国内の油種別需要から推定した販売量に、売上から逆算した単価を置く。
ガス関連
LPガスの卸と、特約店・小売への販売、配送・充填
| 数量販売量(万t・推定) | 価格1tあたり売値(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 20 | 585 | 23 |
| 10 年後 中立 | 28.5 | 26 | 745 | 28 |
取り方:売上585億円を、推定30万tと単価19.5万円で割った。小売軒数は約12万軒。
航空関連
空港の給油施設の所有・賃貸と、航空燃料の保管・給油
| 数量取扱量(万kL・推定) | 価格1kLあたり収入(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 0.17 | 167 | 57 |
| 10 年後 中立 | 1,100 | 0.22 | 246 | 76 |
取り方:国内の航空燃料需要が年1,000万kL前後なので、取扱量はそれに近い規模と推定する。施設の賃貸料と給油の手数料が収入。
化学品関連
半導体・電子部品向けの洗浄剤・薬剤の製造販売と、排水・薬液の処理
| 数量出荷量(万t・推定) | 価格1tあたり売値(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 32 | 128 | 11 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 43 | 257 | 23 |
取り方:売上128億円を、推定4万tと単価32万円で割った。 数量は出荷量(t、半導体向けの増加という事業の事実)。
その他(建設・不動産ほか)
建設工事・不動産・リースなど
| 数量工事・契約の件数(推定) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7,200 | 0.01 | 72 | 12 |
| 10 年後 中立 | 7,200 | 0.01 | 96 | 14 |
取り方:売上72億円を、推定7,200件と1件0.01億円で割った。
リスクと懸念
石油の数量が想定より速く縮む
電動車の普及や給油所の閉鎖が速まると、石油の数量は10年で3割以上減りうる。利益率が1%程度の事業は、固定費の重さで利益が大きく削られる。売上の8割超が石油なので、会社全体への打撃は大きい。
航空の利益の変動と契約条件
航空関連の利益は、88億円から57億円へ動いた。航空会社との契約の更新や、空港の運営の見直しで、収入の条件が悪くなるおそれがある。利益の3分の1が一つの事業に偏っている点が弱みだ。
第2貯油基地などの設備投資の稼ぎ
航空には3年で280億円を投じる。稼働が遅れたり、取扱量が伸びなかったりすれば、減価償却だけが先に利益を削る。投資の見返りが資本コストの7.75%に届くかは、まだ確かめられていない。
LPガスの買収価格
小売軒数を5万軒増やす計画は、営業権の買収に頼る。売り手が減れば、価格が上がる。軒数が増えても、1軒あたりの利益が薄ければ、投資の見返りが資本コストに届かない。
半導体向け化学品の循環
化学品の需要は半導体の設備投資に左右され、谷が長引くと工場の稼働が落ちる。新工場の償却が先に重くなる点も、利益の読みにくさにつながる。
純現金の使い道
純現金は時価総額の3割あるが、実際には運転資金や設備投資の計画に使われる。使い道が資本コストに届かない投資なら、現金は価値を生まないまま溶ける。総還元性向100%の約束が、実際に守られるかも確かめる必要がある。
今後の分かれ目
- 航空の取扱量が羽田・成田で伸び続け、第2貯油基地が予定どおり稼働する
- 航空の利益は物価を超えて伸び、全社の稼ぎは石油の減りを補う。楽観側の筋書きに寄る。
- 国内のガソリン需要が年3%を超えて減り始める
- 石油の利益が急に細り、悲観側の確率が上がる。固定費の削減が追いつかない。
- LPガスの営業権の買収が、1軒あたり安い価格で進む
- 軒数が17万軒に近づき、ガスの数量が下げ止まる。やや楽観の筋書きが効く。
- 航空会社との契約の更新で、施設の収入の条件が引き下げられる
- 航空の利益率が3割を割り、利益の土台が崩れる。やや悲観から悲観の筋書きに寄る。
- 自社株買いが総還元性向100%を実際に満たす形で始まる
- 純現金が株主に戻り、自己資本に対する稼ぎが上がる。中立の倍率が少し上がる余地が出る。
- 大手の同業や元売りが、三愛オブリの買収に動く
- 純現金と航空の施設を評価した価格で売られる可能性がある。ただし10年以内の確率は低い。
見ておくもの
- 航空関連のセグメント利益と取扱量の推移
- 国内のガソリン・灯油の販売量(資源エネルギー庁の統計)
- LPガスの小売軒数と、営業権の買収の件数・価格
- 第2貯油基地の稼働時期と投資額
- 総還元性向と自社株買いの実施
- 2027年3月期の経常利益(会社予想は130億円)
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROEと資本コスト7.5%、g 4%から式で出した正当化PERの9割を中立に置いた。今の株価と同業のPERは使っていない。10年後のROEは約8%で、資本コストをわずかに上回る程度なので、堀の残る割合は普通の1/2とした。純現金は事業に必要な運転資金と設備投資で拘束されるとみて、余った現金としては分けていない。リース会計の新基準は2028年3月期から効くが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に含む形)でそろえた。給油所を借りて営む分の家賃は、悲観で固定費として残る前提を利益率に入れた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.7→16.33 倍・やや楽観 PER 12.7→15.3 倍・中立 PER 11.7→14.38 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.50%。