結論
タキヒヨーは、1751年創業の名古屋の繊維専門商社だ。衣料品を企画して小売店に卸し、売上の約9割をアパレルと生地が占める。筆者の結論は「割高」である。立て直しは本物だが、利益率は3%と薄く、資本効率が資本コストを大きく下回るからだ。
最大の事情は、しまむらへの依存だ。2026年2月期の売上の39%、251億円がこの一社向けで、比率は年々上がっている。大口の取引先が値段と数量を決める構図は、卸の弱みそのものだ。取引が続く限り会社は安定するが、条件が変われば利益は一気に動く。
業績は底を脱した。2022年2月期の営業赤字22億円から、不採算事業の撤退と費用の抑制で、2026年2月期は営業利益19億円まで戻った。会社は2028年2月期に20億円、ROE6%を掲げる。目標はこれまでの実績の延長で、手の届く範囲だ。
それでも評価は厳しくなる。純資産325億円に対して利益は16億円で、ROEは5%にすぎない。10年の中立では、営業利益は名目で2割台半ば伸びるが、物価を引けば実質で減る。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を半分近く下回る。土地と持ち合い株が下値の支えになる点は、悲観の床に反映した。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、タキヒヨーは「安い資産を持つが、稼ぎは弱い会社」だ。まず資産を見る。名古屋の中心の土地と持ち合い株は、帳簿で合わせて160億円ほどあり、時価はおそらくもっと大きい。ただしこの資産は利息と賃料を生むだけで、利益に残っている。売るか、事業に使うか決めない限り、株主の手には届かない。
次に、稼ぐ力を見る。営業利益率は3%、ROEは5%で、資本コストを下回る。株主のものになる利益は、立て直しで一息ついた水準で、増えるのは物価の分が中心だ。減価償却は小さく、設備投資も軽い事業なので、見かけの利益と現金の差は小さい。
顧客の集中は気になる。売上の4割を一社に頼り、その比率は上がり続けている。堀は企画力にあるが、値決めの主導権は弱い。経営が過去に赤字を繰り返した事実は、下振れの深さを示す。
そのうえで値段を見ると、ROEが資本コストを下回る会社には、帳簿より低い値しか付けられない。今の値段は帳簿の7割強だが、これは安さの証拠にはならない。筆者は、安全域は足りないと見る。
何で稼ぐ会社か
売上640億円の約9割はアパレル・テキスタイルで、衣料品の卸売が中心だ。商品売上の8割がアパレル製品、2割弱が生地で、レディスが5割、ベビー・キッズが3割。ベビー・キッズの卸売は売上で日本一を誇る。年間5,000万枚の衣料品が、専門店や量販店、百貨店に並ぶ。
卸といっても、ただ流すだけではない。自社のデザイナーが企画し、一宮の自社工場の紡績・織機で作る独自の生地も使う。ゴルフウエアのZOYやWAACなど、自社の小売ブランドも持つ。
ほかに、化成品・合成樹脂を卸すマテリアル事業が売上の8%(53億円)。名古屋の中心に持つ土地を貸す賃貸事業が9億円、コメダ珈琲店のフランチャイズなど飲食を含むその他が10億円。賃貸は小さいが利益率が高く、全体の利益の下支えになる。
販売先は偏る。しまむらが39%、そのほか専門店・通販、量販チェーン、百貨店・モールが続く。従業員は連結で約730人。工場や店を多くは持たない身軽な事業で、設備投資は年3億円ほどにとどまる。売上の大半は国内で、海外は上海の子会社とニューヨークの拠点が窓口になる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、企画力と生産背景の組み合わせにある。ベビー・キッズのキャラクターライセンスと、安全性が求められる新生児向けの品質管理は、簡単にはまねできない。自前の工場が独自の生地を生む点も、ただの卸との違いだ。
だが、これは利益を増やす堀ではない。守れるのは取引先との関係で、値段の主導権は握れない。売上総利益率は21%、営業利益率は3%で、過去の最良でも3.7%にすぎない。顧客のしまむらは仕入れ先を選べる立場にある。
経営は改善した。過去には本社ビルを売却し、構造改革を断行した。直近は不採算事業から撤退し、費用を抑えて、営業利益を1年で48%増やした。ここは評価できる。ただし赤字を繰り返した過去は消えない。2022年2月期の営業赤字は22億円だった。
資本効率は低い。ROEは過去10年の中央値で1%、直近で5%だ。持ち合い株は上場で20銘柄・約45億円、名古屋の賃貸用の土地は帳簿で118億円と、利益を生みにくい資産が自己資本の半分を占める。ここを動かせるかが、資本効率を上げる鍵になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の衣料品市場は、人口が減り、長く縮んできた。ファストファッションの台頭と通販の拡大で、百貨店や専門店は弱り、安さを軸にした量販型が強い。しまむらのような大手の専門チェーンは、自前の企画と海外生産を広げ、卸への依存を下げようとしている。
卸の機能は薄れつつある。メーカーが直接売る、小売が自社で企画する、といった中抜きが進み、残るのは物流、在庫のリスクの肩代わり、素材の開発、生産背景の管理といった付加価値を出せる卸だ。タキヒヨーは素材開発と生産背景を武器に、「選ばれるサプライヤー」を掲げる。
コストの面でも逆風がある。円安と原材料の上昇、人件費と物流費の上昇が重なり、取引先との値決めで吸収しきれない場面が出ている。サステナビリティの要求も強まり、国際認証と追跡可能な供給網が参入の条件になりつつある。
10年の中立では、国内の衣料の数量は実質で緩やかに減り、卸の取り分は薄いままだ。価格は物価ほどには上がらず、利益率は3%前後で横ばいにとどまるとみる。ベビー・キッズのような強い領域でシェアを守れるかが、分かれ目になる。
資本政策と M&A
還元は拡大の途上にある。中期計画(2026年2月期〜2028年2月期)は、配当と自社株買いを合わせて毎年5億円以上を続けると約束した。配当は今期も増やす予想だ。取締役以外の役員・管理職への株式報酬も導入する。
資本効率の改善は、会社自身の課題でもある。ROE6.0%、PBR0.8倍を目標に掲げ、事業ごとの資本の配分を見直すとする。ただし、その具体策に、土地や持ち合い株の売却は含まれていない。
持ち合い株は上場で20銘柄、約45億円。三菱UFJ、イオン、しまむらなどで、取引先の株が多い。土地は帳簿で118億円と、規模が大きい。いずれも利益(配当と賃料)に残しているので、本質価値には別に足さず、悲観の床だけに使った。
株主優待は、2月末に200株以上の株主へ贈るオリジナルのギフトと、旅行券の抽選だ。費用は開示で確認できず、筆者は年0.9億円と推定し、10年分を還元に加えた。M&Aの実績は目立たず、買収される可能性を示す開示もない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
立て直しは終わりではなく、始まりだ。不採算事業の撤退で費用の増加を抑え、営業利益は1年で48%増えた。中期計画の20億円は今期でほぼ達成済みで、PBR0.8倍とROE6%の目標も、利益が増えれば現実になる。ベビー・キッズで日本一の卸売、一宮の工場の独自生地、サステナブル素材の開発は、ほかの卸にはない強みだ。
しまむらとの関係は、弱みではなく安定の源でもある。取引は年々拡大し、売上は251億円まで伸びた。大口の取引先が自社のPBにこの会社の企画力を求めるなら、関係は簡単には崩れない。実際、ベビー・キッズの安全品質のように、すぐ代わりが見つからない領域がある。
さらに、資産が動く余地がある。名古屋の中心の土地は帳簿で118億円と、時価はもっと大きい。過去に本社ビルを売却した前例があり、資本効率を上げるために土地や持ち合い株を売って自社株買いに回す可能性がある。強気の筋書きでは、営業利益は35億円規模まで届き、ROEは7%近くになる。
慎重な見方
2022年2月期まで赤字を繰り返したことを忘れてはいけない。立て直しは費用の削減による面が大きく、売上を伸ばす力の裏付けは弱い。国内の衣料市場は長く縮み続け、卸の取り分は薄い。営業利益率はピークでも3.7%で、今の3%はすでに天井に近い。
しまむらへの依存は、年々深まっている。売上の39%を一社に頼れば、その会社が仕入れを絞る、値下げを迫る、自社で企画を内製化する、いずれの場合も打撃は大きい。大口の顧客は卸を使う理由を常に見直す立場にある。
資産も、見た目ほど頼りにならない。土地や持ち合い株は利益に残る収益を生むだけで、売らなければ株主の手に入らない。ROEは5%と資本コストを下回り、ためた自己資本は帳簿どおりの値打ちにならない。会社の目標のROE6%も、資本コストには届かない。10年後の姿は、売上は物価で膨らんでも利益は今の水準にとどまる、というものだ。
卸の立場は構造的に弱い。小売は仕入れ先を選び、メーカーは直接売ることもできる。値段を決める力のない中間業者は、環境が悪化すると真っ先に削られる。
どちらに重みを置いたか
立て直しの実績と土地・持ち合い株の下支えは確かだ。だが、売上の4割を握られた取引先の構図と、資本コストに届かないROEを覆すだけの材料は、強気の見方にはない。このため確率は中立に4割弱を置き、上は2割台前半、下は4割近くと、大きく下に寄せた。悲観は、取引先の条件変更が起きる筋書きを1割強とした。土地と持ち合い株という売れる資産があるため、悲観でも価値がゼロに近づくことはなく、下値の深さは限られる。この点は、事業だけの会社との違いだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,429 円205 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,112 円94 億円)。 今の値に割り戻すと 1,781 円150 億円、今との差 −37.5%、 期待の年率 +2.2%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,742 円316 億円 | 1,666 円141 億円 | +89.9% | +6.6% | 324 円27 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,226 円272 億円 | 1,410 円119 億円 | +62.8% | +5.0% | 834 円70 億円 |
| 中立 | 38% | 2,771 円234 億円 | 1,192 円101 億円 | +39.1% | +3.4% | 1,506 円127 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,733 円146 億円 | 885 円75 億円 | −8.1% | −0.8% | 680 円57 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,002 円85 億円 | 624 円53 億円 | −42.9% | −5.5% | 195 円16 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,429 円205 億円 | 1,112 円94 億円 | +24.3% | +2.2% | 3,540 円299 億円 |
今の株価時価総額 2,848 円240 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:立て直しが定着し、資産が動いて資本効率が上がる 利益 28 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,742 円316 億円
中期計画の20億円を超え、卸の機能が評価される。ベビー・キッズの強みと自社工場の素材で、取引先の自社企画を支える役に回り、衣料の数量は横ばいを保つ。価格は物価並みに上がり、アパレルの営業利益率は3%を超える。
マテリアル事業は化成品の取扱いが2割増え、利益率が4.5%に上がる。賃貸事業は、名古屋の中心の土地の再開発や賃料の上昇で、利益が増える。
会社全体の営業利益は35億円規模、利益率は3.9%で、過去の山(3.7%)をわずかに超える。ROEは7%近くまで上がる。
還元は利益の6割で、配当と自社株買いを並べる。土地や持ち合い株の売却が資本効率の改善に使われる余地もこの筋書きにはある。
- アパレル・テキスタイル:数量 6,400(取扱い点数(万点換算・推定))× 価格 1,188(1 点あたり売上(円・名目))→ 売上 760 億円・営業利益 24 億円。取扱い点数横ばい(1.00倍)、単価1.34倍、利益率3.2%
- マテリアル(化成品・合成樹脂):数量 3.0(取扱い量(千トン・推定))× 価格 282(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 85 億円・営業利益 4 億円。取扱い1.2倍×単価1.34倍、利益率4.5%
- 賃貸(名古屋の土地):数量 20.0(賃貸面積(千㎡・推定))× 価格 66(1 千㎡あたり賃料(百万円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 6 億円。面積横ばい×賃料1.45倍、利益率45%
- その他(飲食など):数量 12.0(店舗数(店・推定))× 価格 1.74(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。店舗1.5倍×単価1.34倍、利益率2%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 316 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:取引先の依存が続くなかで、利益率が過去の最良を超え、資産の活用も進む筋書きは、赤字を繰り返した過去と、しまむらへの集中から条件が重なる。1割に届かない。
やや楽観 18% やや楽観:目標どおりROE6%に届くが、資本コストは超えない 利益 24 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,226 円272 億円
ベビー・キッズが堅調で、衣料の数量は4%減にとどまる。価格は物価に少し届かない1.30倍で、アパレルの営業利益率は3%を保つ。しまむら向けは安定し、比率は4割前後で落ち着く。
マテリアル事業は1割伸び、賃貸は賃料の上昇で増える。飲食は赤字を脱して損益が均衡する。
会社全体の営業利益は30億円ほどで、利益率は3.7%と過去の山に並ぶ。ROEは5.7%で、会社の目標(6%)に近いが、資本コストには届かない。
還元は利益の5割強で、毎年5億円以上の約束を超える。
ただし、しまむらへの依存は続き、比率は4割前後で動かない。会社が分散を進められるかは、この筋書きでも課題として残る。
- アパレル・テキスタイル:数量 6,144(取扱い点数(万点換算・推定))× 価格 1,153(1 点あたり売上(円・名目))→ 売上 708 億円・営業利益 21 億円。取扱い0.96倍、単価1.30倍、利益率3.0%
- マテリアル(化成品・合成樹脂):数量 2.8(取扱い量(千トン・推定))× 価格 282(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 78 億円・営業利益 3 億円。取扱い1.1倍×単価1.34倍、利益率4.2%
- 賃貸(名古屋の土地):数量 20.0(賃貸面積(千㎡・推定))× 価格 63(1 千㎡あたり賃料(百万円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 6 億円。面積横ばい×賃料1.38倍、利益率44%
- その他(飲食など):数量 9.6(店舗数(店・推定))× 価格 1.74(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。店舗1.2倍×単価1.34倍、利益率0%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 272 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の目標(2028年2月期に営業利益20億円)は、直近の実績の延長で手が届く。その後も物価並みに利益を伸ばせる筋書きとして、2割近くを置いた。
中立 38% 中立:衣料の数量は緩やかに減り、利益率は3%台前半で横ばい 利益 19 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,771 円234 億円
衣料の数量は10年で8%減る。ベビー・キッズは堅調だが、レディスや百貨店向けは縮む。しまむら向けは続くが、取引先のPBが増え、仕入れは緩やかに絞られる。価格は物価に届かない1.25倍で、卸の取り分は薄いままだ。
マテリアル事業は数量が横ばいで、価格は物価並みに上がる。賃貸は賃料が物価に連れて上がるが、更新の費用も重い。飲食は小さな赤字が続く。
会社全体の営業利益は24億円ほど、利益率は3.3%と今とほぼ同じだ。本社費や人件費は物価で膨らむが、衣料の価格が物価に届かないため、利益は名目でわずかに増える程度になる。減価償却は小さく、設備投資も軽い事業なので、償却と更新の差は大きくない。
還元は利益の5割強で、ROEは4.6%と資本コストを下回る。
- アパレル・テキスタイル:数量 5,888(取扱い点数(万点換算・推定))× 価格 1,108(1 点あたり売上(円・名目))→ 売上 653 億円・営業利益 17 億円。取扱い0.92倍、単価1.25倍(物価に届かない:卸の取り分が薄く、取引先が価格を握るため)、利益率2.6%
- マテリアル(化成品・合成樹脂):数量 2.5(取扱い量(千トン・推定))× 価格 282(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 3 億円。取扱い横ばい×単価1.34倍、利益率3.8%
- 賃貸(名古屋の土地):数量 20.0(賃貸面積(千㎡・推定))× 価格 60(1 千㎡あたり賃料(百万円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 5 億円。面積横ばい×賃料1.30倍、利益率43%
- その他(飲食など):数量 8.0(店舗数(店・推定))× 価格 1.74(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。店舗横ばい×単価1.34倍、利益率−3%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 217 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の衣料需要は人口とともに緩やかに縮み、卸の取り分は薄いまま。会社の今期予想(営業利益19.5億円)の延長に近い、最も現実的な筋書きとして4割弱を置いた。
やや悲観 26% やや悲観:取引先の仕入れが絞られ、利益率が2%台に下がる 利益 11 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,733 円146 億円
しまむらが企画を自社に取り込み、仕入れを絞る。ほかの取引先も縮み、衣料の数量は18%減る。価格は物価に届かない1.18倍にとどまり、アパレルの営業利益率は1.8%に下がる。
マテリアル事業は景気の影響で縮み、賃貸は賃料の上昇が鈍る。飲食は赤字が拡大する。会社全体の営業利益は15億円ほどに細り、今の8割に届かない。
ROEは3%まで下がる。ただし土地と持ち合い株は残り、事業が弱くても、価値は売れる資産が支える。還元は毎年5億円を保てず、自社株買いは止まる。
立て直しの成果は剥げ落ち、赤字を繰り返した過去の姿に戻る。経営は事業の再構築に追われ、土地の活用は後回しになる。
- アパレル・テキスタイル:数量 5,248(取扱い点数(万点換算・推定))× 価格 1,046(1 点あたり売上(円・名目))→ 売上 549 億円・営業利益 10 億円。取扱い0.82倍、単価1.18倍、利益率1.8%
- マテリアル(化成品・合成樹脂):数量 2.3(取扱い量(千トン・推定))× 価格 264(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 59 億円・営業利益 2 億円。取扱い0.9倍×単価1.25倍、利益率3%
- 賃貸(名古屋の土地):数量 19.0(賃貸面積(千㎡・推定))× 価格 55(1 千㎡あたり賃料(百万円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 4 億円。面積0.95倍×賃料1.20倍、利益率40%
- その他(飲食など):数量 7.2(店舗数(店・推定))× 価格 1.56(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 −1 億円。店舗0.9倍×単価1.20倍、利益率−6%
倍率:今の自己資本325億円にPBR0.31倍を掛けた。稼ぐ力(純利益11億円÷k8.75%=約130億円。ただし倍率は上限の5割強)より、売れる資産の税後(floor_assets_oku)の水準が支えになるので、後者を床にした。ためた利益は床に掛けない。
確率:しまむら向けの比率は年々上がり、条件の変更を迫られる立場にある。仕入れの絞り込みと値下げが重なる筋書きは、実績のある下振れとして、中立に次ぐ重みを置いた。
悲観 12% 悲観:しまむらの内製化で主力が縮み、資産だけが残る 利益 3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,002 円85 億円
しまむらが企画と調達を自前に切り替え、タキヒヨーへの発注が大きく減る。ほかの取引先の売上も縮み、衣料の数量は4割近く減る。価格は1.10倍にしか上がらず、アパレルの営業利益率は0.5%まで下がる。
賃貸だけが利益を稼ぎ、全社の営業利益は5億円ほどに細る。飲食と小売は赤字が拡大し、整理の対象になる。
このとき価値を支えるのは稼ぐ力ではなく、土地と持ち合い株だ。事業が赤字に近いままでは、売却しても少数株主に戻る保証はなく、戻り方を0.55に落とした。配当は大きく減る。
それでも土地を貸し続ける限り、最低限の利益は残る。会社は小さくなって残り、少数株主に戻る価値は帳簿を大きく下回る。
- アパレル・テキスタイル:数量 3,968(取扱い点数(万点換算・推定))× 価格 975(1 点あたり売上(円・名目))→ 売上 387 億円・営業利益 2 億円。取扱い0.62倍、単価1.10倍、利益率0.5%
- マテリアル(化成品・合成樹脂):数量 2.0(取扱い量(千トン・推定))× 価格 232(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 1 億円。取扱い0.8倍×単価1.10倍、利益率2%
- 賃貸(名古屋の土地):数量 17.0(賃貸面積(千㎡・推定))× 価格 50(1 千㎡あたり賃料(百万円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 3 億円。面積0.85倍×賃料1.10倍、利益率35%
- その他(飲食など):数量 5.6(店舗数(店・推定))× 価格 1.43(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 −1 億円。店舗0.7倍×単価1.10倍、利益率−10%
倍率:今の自己資本325億円にPBR0.26倍を掛けた。稼ぐ力(純利益3億円÷k8.75%=約35億円)より、売れる資産の税後(floor_assets_oku)のほうが大きいので、後者を床にした。ためた利益は床に掛けない。
確率:売上の4割を握る取引先が卸を使わなくなる筋書きは、依存が年々深まっている以上、無視できない。ただし土地と持ち合い株が残るので、全社が崩れる確率は1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アパレル・テキスタイル
衣料品(レディス・ベビーキッズ・メンズ)の企画・卸売、生地の卸売、自社小売ブランド。
| 数量取扱い点数(万点換算・推定) | 価格1 点あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,400 | 887 | 567 | 14 |
| 10 年後 中立 | 5,888 | 1,108 | 653 | 17 |
取り方:アパレル・テキスタイル関連事業の売上 567.4 億円。衣料は年間 5,000 万枚との会社説明があり、生地・小売分を点数に換算して 6,400 万点と置いた推定。営業利益はセグメント別の開示がなく、全体 19.4 億円から賃貸(約 4 億円)・マテリアル(約 2 億円)・その他を差し引いた 14.0 億円と推定(利益率 2.5%)。
マテリアル(化成品・合成樹脂)
化成品・合成樹脂の卸売。
| 数量取扱い量(千トン・推定) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.5 | 211 | 53 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2.5 | 282 | 71 | 3 |
取り方:マテリアル事業の売上 52.7 億円。取扱い量は開示がなく、2,500 トンと置いた推定。営業利益は推定で利益率 3.8%。
賃貸(名古屋の土地)
名古屋市中区の賃貸用土地・ZERO GATE などの賃貸。
| 数量賃貸面積(千㎡・推定) | 価格1 千㎡あたり賃料(百万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 46 | 9 | 4 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 60 | 12 | 5 |
取り方:賃貸事業の売上 9.2 億円。面積は開示がなく、2 万㎡と置いた推定。営業利益は推定で利益率 44%(土地は償却がなく、固定資産税などの費用のみ)。賃貸用土地の簿価は 118 億円。
その他(飲食など)
コメダ珈琲店のフランチャイズなど。
| 数量店舗数(店・推定) | 価格1 店あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 1.30 | 10 | −1 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 1.74 | 14 | 0 |
取り方:その他の売上 10.4 億円。店舗数は開示がなく、8 店と置いた推定。損益は小さな赤字と推定。
リスクと懸念
しまむらへの依存
しまむら向けは2026年2月期に251億円で、売上の39.2%を占める。比率は2019年の27%から年々上がってきた。この顧客が企画を自前に切り替える、値下げを求める、仕入れを他社へ分散する、いずれの場合も売上と利益への打撃は大きい。
国内の衣料市場の縮小と中抜き
人口減で国内の衣料は長く縮み、メーカーの直販や小売の自社企画が増えている。卸が提供する機能が薄れれば、取り分はさらに削られる。ベビー・キッズのような強みのある領域を守れるかが問われる。
コストの上昇と値決めの難しさ
円安、原材料、人件費、物流費の上昇が重なる。取引先との交渉で吸収しきれなければ、売上総利益率の21%が崩れる。営業利益率が3%と薄いため、わずかなコスト増が利益を大きく動かす。
赤字に戻る可能性
2018年2月期から2023年2月期までは、営業赤字や純損失の期が何度もあった。立て直しは不採算事業の撤退と費用の抑制が中心で、売上を伸ばす力の裏付けは弱い。外部環境が悪化すれば、利益は一気に落ちる。
利益を生みにくい資産
名古屋の賃貸用土地は帳簿で118億円、上場の持ち合い株は約45億円で、合わせて自己資本の半分に近い。利回りが低く、ROEを押し下げている。売却や活用の方針が示されない限り、株主の手には届かない。
小売・飲食など周辺事業
自社の小売ブランドとコメダ珈琲店のフランチャイズは、利益への貢献が小さく、赤字が続く期もある。拡大すれば、経営資源が本業から分散する。整理の判断が遅れるリスクがある。
今後の分かれ目
- しまむら向けの売上比率が45%を超え、さらに上がり続けたら
- 依存の深まりとみて、やや悲観・悲観に重みを移す。売上の絶対額が伸びているかも合わせて見る。
- 営業利益率が3.5%を超えて定着したら
- 立て直しが構造的に定着したとみて、やや楽観以上に重みを移す。ただしROEが資本コストを超えない限り、倍率は大きく上げない。
- 土地や持ち合い株の売却と自社株買いが発表されたら
- 資本効率の改善策とみて、楽観寄りに確率を上げる。売却益が本質価値にどれだけ上乗せされるかを別に確かめる。
- 中期計画の目標(営業利益20億円)が未達に終わったら
- 立て直しの持続力に疑いが出たとみて、中立の利益前提を下げ、やや悲観に重みを移す。
- ベビー・キッズの売上が前年を下回り続けたら
- 強みのある領域でシェアを失い始めたとみて、悲観側に重みを移す。
- 他社が買い付けを提案したら
- 筋書きの外にある上振れ要因。価格が土地と持ち合い株を含む本質価値を超えるかを別に確かめる。
見ておくもの
- しまむら向け売上の金額と構成比
- 売上総利益率(21%)と営業利益率(3%)の推移
- ベビー・キッズとマテリアルの売上の増減
- 株主還元の金額(毎年5億円以上の約束)と、土地・持ち合い株の売却
- 中期計画の達成度(2028年2月期に営業利益20億円・ROE6%)
- 賃貸事業の利益と、名古屋の土地の活用方針
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER(15倍前後)は倍率の根拠にしていない。アパレル・マテリアル・賃貸・その他に分け、数量×価格で10年を積み、中立の ROE(4.6%)と資本コスト8.75%から、利益ベースの正当化 PER を出して、その上限の約8割に置いた。悲観側の床は、土地(簿価)と持ち合い株の税後に戻り方を掛けた額で置き、過去の PBR の底からは置いていない。土地の賃料と持ち合い株の配当は利益に残しているので、中立以上では価値に足さない(二重を避ける)。数量は実質、価格は名目(物価10年1.34倍)で、衣料の価格は卸の取り分の薄さから物価に届かないと置いた。セグメント別の営業利益は開示がなく、利益率は推定である。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.5→11.43 倍・やや楽観 PER 7.7→11.43 倍・中立 PER 7→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。