結論
アゼアスは、デュポンのタイベックという化学防護服を国内でほぼ一手に売る専門商社だ。筆者の結論は「割高」だ。防護服の事業は利益率1割を超えて稼ぐが、衣料の資材とマスクが足を引っ張り、本社の費用も重い。全社の営業利益は売上の2%余りにとどまる。
防護服の需要は底堅い。古い建物の解体でアスベストの除去は続き、化学物質の規制も厳しくなっている。感染症の流行のたびに病院と官公庁が備蓄を積み増す。デュポンの素材は国内で信頼が厚く、この事業の堀は本物だ。
弱点は二つある。一つは仕入れをデュポンの系列一社に頼ることだ。契約の形が変われば、事業の柱が揺らぐ。もう一つは資本の効率だ。自己資本68億円のうち3分の1は現金で、ROEは2%台に沈む。
時価総額は40億円で、純現金23億円を引くと事業には17億円しか値段が付いていない。それでも、10年の中立で積んだ価値は今の値段を3割ほど下回る。現金が株主に戻る道が太くなれば、見方は変わる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、防護服の事業は持ちたい事業だ。信頼で選ばれる品を、規制が支える需要に売る。設備も要らず、稼いだ利益の多くを株主に回せる。
だが会社全体の形は、その良さを薄めている。衣料の資材とマスクは資本に見合わず、本社の費用は防護服の利益の8割を食う。手元の現金は利息しか生まない。オーナーとして見れば、良い事業の上に重い荷物が乗っている。
もう一つの気がかりは、堀を持っているのが自分ではなくデュポンだという点だ。売る権利の上に立つ事業は、相手の都合ひとつで価値が変わる。
筆者が見方を変えるのは、本社の費用を削って防護服の稼ぎが全社の利益に残る時か、現金を自社株買いで戻す方針が示される時だ。今の値段は現金を差し引けば安く見えるが、その現金は株主の手に届きにくい。安く見えることと、安全域があることは違う。
何で稼ぐ会社か
事業は三つの柱と小さな事業でできている。2026年4月期の売上83億円のうち、防護服・環境資機材が48億円、ライフマテリアルが29億円、ヘルスケア製品が4億円だった。
防護服・環境資機材は、デュポンのタイベックとタイケムで作った使い捨ての防護服が中心だ。仕入れ先は旭化成とデュポンの合弁、旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツで、アゼアスは国内でほぼ独占的にこれを扱う。客は官公庁や自治体、病院、電力会社、アスベストの除去の業者、化学や半導体の工場だ。自社ブランドの「アゼアス」の防護服や、粉じん対策の資機材も売る。この事業だけで5.6億円の利益を生み、全社の稼ぎのほとんどを担う。
ライフマテリアルは、作業服や制服の裏地・芯地といった衣料の資材と、畳表などの建材だ。利益率は6%弱で、国内の衣料の生産が細るのに合わせて売上は長く減ってきた。
ヘルスケア製品は、秋田の自社工場で作る不織布マスクだ。コロナの後の需要の落ち込みで赤字が続く。
このほかの小さな事業も赤字で、本社の費用は約4.5億円かかる。2025年5月に動かした新しい基幹システムの償却が、今は利益を押し下げている。
優良さと弱いところ
優良さは防護服に集まっている。デュポンのタイベックは、使い捨ての防護服の素材として世界で最も知られた名前だ。国内の官公庁や大手の工場は、規格と実績を理由にこれを指定することが多い。アゼアスはその国内の窓口を長く務め、客との関係と在庫の網を持つ。この事業の利益率が1割を超えるのは、その立場の表れだ。
ただ、堀の根はデュポンの側にある。アゼアスは素材を作らず、売る権利を持つだけだ。デュポンが販売の形を変えれば、堀ごと動く。この依存は、どれほど業績が良くても消えない弱さだ。
資本の効率は低い。過去10年のROEの中央値は3.5%で、資本コストに届いたのは2021年4月期の1度だけだ。純資産の3分の1が現金で眠り、衣料の資材とマスクは資本に見合う稼ぎを出していない。財務は堅く、借金はほぼ無い。
経営は堅実だが、事業の入れ替えには慎重すぎる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
防護服の国内の需要は、景気よりも規制と災害で動く。柱は三つある。一つ目はアスベストの除去だ。1970〜2000年代に建った建物の解体は2030年前後に山を迎え、除去の作業には防護服とマスクが欠かせない。二つ目は化学物質の管理だ。2024年から企業が自ら危険を評価して保護具を選ぶ仕組みに変わり、工場の保護具の需要は増えた。三つ目は感染症と災害への備えで、波は大きいが官公庁と病院の備蓄は定期的に入れ替わる。
競合は外国の大手だ。米国のレイクランドやアンセル、3M、そして安い中国製の防護服がある。値段だけなら中国製が勝つが、規格と信頼で選ばれる場では、デュポンの素材が強い。数量は10年で1割ほど伸び、値段は物価並みに上がると置くのが筋だ。
衣料の資材は逆風だ。国内の衣料の生産は海外に移り、裏地や芯地の数量は年に数%ずつ減る。作業服や制服は比較的残るが、それでも10年で1割半ほど減ると見る。マスクはコロナの後の在庫の山が片付いたが、中国製との値段の競争で利は薄い。
商社全体の流れとしては、メーカーが直接売る中抜きが進む。アゼアスの場合、その相手はデュポンだ。
資本政策と M&A
配当は年1回で、2026年4月期の配当総額は1.3億円、配当性向は95%だった。会社は継続的で安定した配当を基本とし、純資産に対する配当の割合は約2%だ。利益が減っても配当を据え置く姿勢で、2027年4月期も同額を見込む。自社株買いはしていない。
純現金は10年で14億円から23億円に積み上がった。配当は出しても、現金を減らすほどは戻していない。上場株6銘柄、2.3億円の持ち合いもある。
2025年9月から株式会社Asahichoが株を買い増し、2026年10月には10.22%を持つ。保有の目的は純投資とされる。親会社は無く、大株主が還元の強化を求めれば、眠っている現金が動く可能性はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
防護服の需要は10年先まで底堅い。アスベストの除去は建物の解体とともに2030年前後に山を迎え、化学物質の自律的な管理で工場の保護具は増える。感染症への備えも定期的な入れ替えを生む。タイベックの名は官公庁と大手の工場で指定され、この事業は利益率1割超を保つ。
2027年4月期の第1四半期は売上が2割増え、営業利益は赤字から0.7億円の黒字に戻った。新しい基幹システムの償却を吸収して、利益は回復の途上にある。
時価総額40億円から純現金23億円を引くと、事業の値段は17億円だ。防護服だけで年5億円以上の利益を生む会社としては安い。大株主のAsahichoが10%まで買い増しており、還元の強化や再編を促す力も働く。配当は利益が減っても据え置かれ、下値の支えになる。
マスクの赤字は工場の稼働を絞れば縮む。衣料の資材も作業服や制服の向けは残り、利益は小さくても安定している。弱い事業の重さが軽くなるだけで、全社の利益率は目に見えて上がる。
慎重な見方
利益の柱は一社の仕入れ先に立っている。デュポンが国内の販売を直販に切り替えたり、窓口を増やしたりすれば、アゼアスの防護服は一気に普通の商品になる。商社の中抜きは、この業界でも起きうる。
残りの事業は弱い。衣料の資材は国内の生産の縮小で毎年細り、マスクは中国製との値段の競争で赤字が続く。本社の費用は物価で増え、新しい基幹システムの償却も重い。全社の営業利益率は2%台で、12年の中央値も3%台にとどまる。
現金23億円は配当では減らず、利息しか生まない。ROEは2%台で、資本コストの4分の1だ。配当性向95%は利益が細った結果で、還元の意志の強さではない。Asahichoの買い増しも、会社が応じなければ株主の得にはならない。
防護服の需要の山も永遠ではない。アスベストの除去は2030年前後を過ぎれば細り、感染症の備蓄は流行の後に在庫の調整を生む。10年の後半には、伸びの柱が一つずつ外れていく。
どちらに重みを置いたか
両者の言い分はかなり拮抗するが、慎重な見方がやや強い。防護服の稼ぐ力は認めるが、それを本社の費用と弱い事業が食い、資本の効率は上がらない。デュポンへの依存という外せないリスクもある。確率は中立を中心に、楽観側に4分の1、悲観側に3分の1強を置いた。財務が堅く防護服の需要も消えないので、深い悲観は厚くしない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 708 円41 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 259 円15 億円)。 今の値に割り戻すと 514 円30 億円、今との差 −22.2%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,704 円99 億円 | 447 円26 億円 | +225.3% | +12.5% | 151 円9 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,144 円67 億円 | 344 円20 億円 | +125.0% | +8.4% | 268 円16 億円 |
| 中立 | 40% | 768 円45 億円 | 258 円15 億円 | +55.1% | +4.5% | 410 円24 億円 |
| やや悲観 | 22% | 242 円14 億円 | 206 円12 億円 | −32.2% | −3.8% | 99 円6 億円 |
| 悲観 | 13% | 175 円10 億円 | 137 円8 億円 | −52.7% | −7.2% | 41 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 708 円41 億円 | 259 円15 億円 | +46.4% | +3.9% | 968 円56 億円 |
今の株価時価総額 661 円38 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 防護服が伸び、本社の費用を吸収する 利益 6 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 1,704 円99 億円
アスベストの除去の山と化学物質の規制の強化が重なり、防護服の出荷は10年で3割増える。タイベックへの指定は官公庁と大手の工場で広がり、値段は物価をやや上回る。自社ブランドの防護服も海外の工場向けに伸びる。防護服の利益率は13%台に上がる。
衣料の資材は作業服の高機能化に乗って数量の減りが小さく、マスクは医療向けに絞って黒字に戻る。本社の費用は物価で増えるが、売上の伸びがそれを吸収する。全社の営業利益は9億円近くになり、ROEは資本コストをわずかに超える。会社は配当に加えて自社株買いを始め、大株主の求めにも応える。
- 防護服・環境資機材:数量 8.0(防護服の出荷(百万着・年、推定。資機材は着数に換算))× 価格 11(百万着あたりの売上(億円))→ 売上 88 億円・営業利益 12 億円。800万着×単価1.38倍、利益率13.5%
- ライフマテリアル:数量 11.0(資材の取扱量(百万メートル・年、推定))× 価格 3.35(百万メートルあたりの売上(億円))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。1,100万メートル×単価1.35倍
- ヘルスケア製品・その他:数量 80.0(マスク換算の出荷(百万枚・年、推定))× 価格 0.13(百万枚あたりの売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。医療向けで黒字
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 14.21 倍、時価総額 99 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防護服の数量の伸び、マスクの黒字化、本社の費用の抑制が全部そろう必要がある。12年でROEが資本コストを超えたのは1度だけなので1割未満。
やや楽観 18% 防護服の伸びで利益が倍になる 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,144 円67 億円
防護服の出荷は10年で2割増え、値段は物価並みに上がる。アスベストの除去の作業が増え、工場の保護具の需要も規制で底上げされる。防護服の利益率は12.5%に上がる。
衣料の資材は数量が1割弱減るが、値上げで売上はほぼ保つ。マスクは赤字を脱し、小さな黒字になる。本社の費用は物価で増え、基幹システムの更新の償却も続くが、利益の伸びがそれを上回る。全社の営業利益は6億円余りで、今の3倍になる。配当は利益とともに増えるが、自社株買いは控えめで、現金は積み上がる。ROEは5%台で、資本コストにはなお届かない。
- 防護服・環境資機材:数量 7.2(防護服の出荷(百万着・年、推定。資機材は着数に換算))× 価格 11(百万着あたりの売上(億円))→ 売上 77 億円・営業利益 10 億円。720万着×単価1.34倍、利益率12.5%
- ライフマテリアル:数量 10.5(資材の取扱量(百万メートル・年、推定))× 価格 3.30(百万メートルあたりの売上(億円))→ 売上 35 億円・営業利益 2 億円。1,050万メートル×単価1.33倍
- ヘルスケア製品・その他:数量 70.0(マスク換算の出荷(百万枚・年、推定))× 価格 0.13(百万枚あたりの売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。小さな黒字
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 67 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防護服の需要の柱(アスベスト・規制・備蓄)はどれも確かで、2027年4月期の第1四半期も2割の増収だった。中立の次に厚く置いた。
中立 40% 防護服が支え、全社は薄利のまま 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 768 円45 億円
防護服の出荷は10年で1割増え、値段は物価よりわずかに低く上がる。中国製の安い防護服との競争で、規格の緩い用途では値上げが通りにくい。防護服の利益率は11.5%で、今とほぼ同じだ。
衣料の資材は数量が1割半減り、値上げで売上をやや伸ばすにとどまる。マスクは赤字幅を縮めるが、黒字には届かない。本社の費用は人件費が物価で増え、基幹システムの償却は取得した時の値段のまま残る。全社の営業利益は3.6億円で、売上の3%余りだ。
配当は純資産の2%ほどを続け、現金はゆっくり積み上がる。ROEは4%前後で、資本コストの半分にとどまる。
- 防護服・環境資機材:数量 6.6(防護服の出荷(百万着・年、推定。資機材は着数に換算))× 価格 10(百万着あたりの売上(億円))→ 売上 69 億円・営業利益 8 億円。660万着×単価1.3倍(中国製との競争で物価をやや下回る)、利益率11.5%
- ライフマテリアル:数量 9.8(資材の取扱量(百万メートル・年、推定))× 価格 3.24(百万メートルあたりの売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。980万メートル×単価1.3倍、利益率5.5%
- ヘルスケア製品・その他:数量 62.0(マスク換算の出荷(百万枚・年、推定))× 価格 0.12(百万枚あたりの売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。赤字幅を縮める
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 45 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の2027年4月期の計画と、防護服の需要の柱を素直に延ばし、本社の費用と弱い事業が利益を削る姿を中心に置いた。
やや悲観 22% 防護服の値段が崩れ、全社が細る 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 242 円14 億円
中国製の防護服が規格の認証を取り、官公庁の入札でも値段で選ばれるようになる。アゼアスの防護服の出荷は1割減り、値段も物価に追いつかない。利益率は9%に下がる。
衣料の資材は国内の生産の縮小で数量が4分の1減り、利益はほとんど残らない。マスクの赤字も続く。会社は本社の人員を絞って費用を抑えるが、全社の営業利益は0.5億円を割り込む。
配当は純資産の2%の方針で続けるが、利益を上回る配当で現金は減っていく。ROEは1%に満たず、資本はほとんど何も生まない。少数株主に残る価値は、手元の現金のうち戻る分と、小さくなった稼ぐ力だけになる。
- 防護服・環境資機材:数量 5.4(防護服の出荷(百万着・年、推定。資機材は着数に換算))× 価格 9.40(百万着あたりの売上(億円))→ 売上 51 億円・営業利益 5 億円。540万着×単価1.18倍、利益率9%
- ライフマテリアル:数量 8.5(資材の取扱量(百万メートル・年、推定))× 価格 3.00(百万メートルあたりの売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。850万メートル×単価1.2倍
- ヘルスケア製品・その他:数量 55.0(マスク換算の出荷(百万枚・年、推定))× 価格 0.11(百万枚あたりの売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。赤字が続く
倍率:ROEは1%に満たず資本コストに遠い。帳簿は床にならないので、今の自己資本68.3億円に0.207倍を掛け、床の資産と稼ぐ力に合わせた。
確率:中国製の防護服の品質が上がり、規格で守られる用途が狭まる恐れは現実的だ。過去12年の利益率の中央値が3%台だったことも踏まえ2割強。
悲観 13% デュポンの窓口を失う 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 175 円10 億円
デュポンが国内の販売の窓口を増やすか、大手の客に直接売り始める。アゼアスの防護服は他の商社と同じ品を売る立場になり、出荷は4割減り、値段も下がる。防護服の利益率は5%まで落ちる。
衣料の資材とマスクは細り続け、マスクの工場は減損を出して閉じる。本社の費用を削っても、全社は営業赤字に沈む。配当は減らされ、現金は赤字と配当で減っていく。自己資本は減損と赤字で50億円台に縮む。
それでも借金は無く、会社がつぶれることは無い。少数株主に残るのは、細った現金のうち戻る分だけだ。デュポンとの取引の長さは、契約が続く保証にはならない。
- 防護服・環境資機材:数量 3.5(防護服の出荷(百万着・年、推定。資機材は着数に換算))× 価格 9.00(百万着あたりの売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。350万着×単価1.13倍、利益率5%
- ライフマテリアル:数量 7.0(資材の取扱量(百万メートル・年、推定))× 価格 2.90(百万メートルあたりの売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。700万メートル×単価1.16倍
- ヘルスケア製品・その他:数量 40.0(マスク換算の出荷(百万枚・年、推定))× 価格 0.10(百万枚あたりの売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。赤字、工場を閉じる
倍率:赤字なのでPBRで置く。稼ぐ力は無く、床は残る純現金と持ち合い株の税後に戻り方を掛けた額。今の自己資本68.3億円に0.15倍を掛けた。
確率:防護服の利益の大半が一社の仕入れに立つので、その形が変わる筋書きは外せない。ただデュポンとの取引は長く、急な変更の兆しは無いので1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
防護服・環境資機材
デュポンのタイベック・タイケムの化学防護服と自社ブランドの防護服、アスベスト対策などの資機材。
| 数量防護服の出荷(百万着・年、推定。資機材は着数に換算) | 価格百万着あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 6.0 | 8.00 | 48 | 6 |
| 10 年後 中立 | 6.6 | 10 | 69 | 8 |
取り方:着数の開示は無い。売上48億円を、使い捨ての化学防護服の卸の平均単価を1着0.08万円と置き、資機材も同じ単価で着数に換算して約600万着と推定。
ライフマテリアル
作業服・制服の裏地や芯地などの衣料の資材と、畳表などの建材。
| 数量資材の取扱量(百万メートル・年、推定) | 価格百万メートルあたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 11.5 | 2.49 | 29 | 2 |
| 10 年後 中立 | 9.8 | 3.24 | 32 | 2 |
取り方:数量の開示は無い。売上28.7億円を、裏地・芯地と建材の平均単価を1メートルあたり0.025万円前後と置いて約1,150万メートルと推定。
ヘルスケア製品・その他
秋田の自社工場の不織布マスクと、名称を確かめられなかった小さな事業。
| 数量マスク換算の出荷(百万枚・年、推定) | 価格百万枚あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 62.0 | 0.10 | 6 | −1 |
| 10 年後 中立 | 62.0 | 0.12 | 7 | 0 |
取り方:ヘルスケア製品3.89億円(損失0.55億円)と小さな事業2.34億円(損失0.31億円)の合計。業務用マスクの平均単価を百万枚あたり0.1億円と置いてマスク換算の枚数にした。
リスクと懸念
デュポンへの依存
防護服の利益の大半は、旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツから仕入れるタイベックとタイケムが生む。デュポンが国内の販売を直販に移したり、別の窓口を増やしたりすれば、事業の柱が揺らぐ。契約の条件は開示されていない。
本社の費用の重さ
本社の費用は約4.5億円で、防護服の利益の8割に当たる。人件費は物価で上がり、新しい基幹システムの償却も続く。売上が伸びなければ、全社の利益率は2%台から上がらない。
衣料の資材の縮小
裏地や芯地の需要は国内の衣料の生産とともに減る。作業服や制服は残るが、数量は年に数%ずつ細る。利益率も値段の競争で削られやすい。
マスクの赤字
秋田のマスク工場はコロナの後の需要の落ち込みで赤字が続く。中国製との値段の競争で黒字に戻すのは容易でなく、工場の減損の恐れもある。
需要の波
感染症や災害の時は防護服とマスクの需要が膨らむが、その後は在庫の調整で落ち込む。アスベストの除去の山を過ぎた後の需要の細りも、10年の後半には見えてくる。
現金の滞留
純現金23億円は利息しか生まない。配当は続くが自社株買いは無く、現金は積み上がってきた。株主に戻らなければ、その値打ちは帳簿より小さい。
今後の分かれ目
- 防護服の売上が年5%以上伸び、利益率1割超を保つ
- やや楽観の筋書きに近づく。全社の営業利益は6億円を超える。
- 自社株買いや増配で純現金を減らす方針を示す
- 余った現金が株主に戻る道が太くなり、価値は上がる。
- デュポンが国内の販売の形を変える
- 防護服の利益が細り、悲観の筋書きに寄る。
- マスクの工場を閉じるか売る
- 赤字が消えて全社の利益率は上がるが、閉鎖の費用が一度出る。
- Asahichoが株主提案や経営への関与を求める
- 還元の強化や事業の整理が進む可能性があり、値段の見直しにつながる。
見ておくもの
- 防護服・環境資機材のセグメント利益率
- 本社の費用(調整額)の推移
- デュポンとの取引の形
- 純現金と還元の方針
- Asahichoの持株と提案
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去のPERから置いていない。中立の事業のROEは4%台で資本コスト7.75%に届かないので、PERの上限は1÷kの12.5倍で、デュポンへの依存を見てその84%に置いた。楽観だけ事業のROEがkを上回り、下限の1÷kにした。余った現金15億円は戻り方0.75で足した。悲観側は今の自己資本に掛けたPBRで、純現金の残りと持ち合い株の税後に戻り方を掛けた床と、稼ぐ力に合わせた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→14.21 倍・やや楽観 PER 11→12.9 倍・中立 PER 10.5→12.9 倍・やや悲観 PBR 0.22→0.207 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に質の上乗せ0.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。