結論
BuySell Technologies(バイセル)は、家庭に眠る着物・切手・貴金属・ブランド品・骨董を、自宅訪問や店舗で買い取って売り直す会社だ。筆者の結論は、10 年で測った本質価値は今の時価総額をかなり下回る、つまり割高というものだ。いちばんの理由は、いまの利益が事業の平常の姿より高いところにあることだ。
稼ぎの源は単純だ。1 件の査定から取れる粗利に、年 44 万件という査定の数と、500 店を超えた店の数がかかる。団塊世代の遺品整理や生前整理で、物が市場に出る件数は当面増える。だが買取の入口は広告で客を取り合う世界で、他社がまねできない堀とまでは言えない。出口は貴金属や骨董の相場に左右される。
2025 年 12 月期の営業利益は 90 億円。会社は 2027 年に 200 億円を掲げる。この急な伸びには、前期末から持ち越した在庫の販売など、毎年は続かない押し上げが混じる。筆者は 10 年の中立を、売上が年 8% 弱で伸び、営業利益率が 10% 前後に落ち着く姿と見る。還元は薄く、現金は拡大と M&A に回る。
楽観でも、10 年後の時価総額は今の 1.7 倍ほどにとどまる。一方、悲観は深い。訪問買取への規制強化、相場の反落、競合の広告合戦が重なれば、利益はほぼ消える。強気の材料は多いが、払う値段に安全域がない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家の目でまず見るのは、10 年後もこの商売が残り、しかも楽に稼げているかだ。
買取は残る。物が出る限り、買う者がいる。だが楽には稼げない。入口は広告で奪い合い、出口は相場に左右される。稼ぎの元は工場でなく、人の目利きと情報だ。これは堀というより腕前の商売で、腕前は他社に移りうる。
次に、利益のうち株主が自由に使える分を見る。拡大の時期は、在庫と店に現金が出ていく。棚卸資産は 2026 年 3 月末で 140 億円を超え、前期末から約 24 億円増えた。利益が出ても、現金は残りにくい。
最後に、払う値段の安全域だ。今の時価総額は 2026 年の会社予想利益の 17 倍ほどになる。急成長が続く前提でも、10 年の平常の利益で測れば、割高の幅は大きい。筆者が気になるのは、楽観の筋書きでも今の値段を 2 倍強にしか押し上げられない点だ。
見直す条件はある。再訪率が上がって広告費を使わず件数が増え、1 件の粗利が相場に頼らず保たれるなら、利益の質は変わる。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく 2 つに分かれる。自宅を訪ねて買い取る出張訪問買取と、店舗での買取だ。
出張訪問買取は「バイセル」「福ちゃん」「日晃堂」の看板で動く。年間の査定は約 44 万件に達する。客層は高齢者が中心で、売る物は着物、切手、貴金属、ブランド品、骨董と幅広い。家の中で眠っている物を、査定員が見て値をつけ、その場で引き取る。引き取った物は国内の卸や店、EC に流し、最近は中国・米国向けの販売にも広げている。
店舗買取は「バイセル」の店、「総合買取サロンタイムレス」、九州の「買取専門店 諭吉」などで構成する。店は 2025 年末の 490 店から、2026 年 6 月には 547 店へ増えた。2026 年上期のセグメント利益率は、店舗が 19.9%、出張が 17.1%だった。どちらも本社費を引く前の数字だ。
稼ぎ方は単純だが、利益の出方には癖がある。買った値段と売った値段の差が粗利で、その差は品物の相場と、在庫をいつ売るかで大きく動く。2025 年末には在庫を意図して翌期へ持ち越し、2026 年の利益を押し上げた。会社は出張 1 件あたりの変動利益を重要な指標に置く。広告で客を呼び、1 件ごとの採算を見ながら件数を積み上げる経営だ。
優良さと弱いところ
優良さの評価は割れる。強みは確かにあるが、堀というほど深くない。
強みの 1 つは仕入れの入口だ。年 44 万件の査定と、約 20% まで上がった再訪率がある。一度売った客がまた呼ぶ。会社はこれを 2027 年に 25% へ上げる目標を掲げる。もう 1 つは出口の広さだ。国内の卸・店・EC に加え、中国の提携先を通じた海外販売を始めた。試験販売の段階だが、国内向けの 1.5〜3 倍の粗利が出ていると会社は説明する。
弱みは、客が値段で比べやすいことだ。貴金属は地金の相場がそのまま値段になる。ブランド品や骨董は査定員の目利きが差になるが、育つまで時間がかかり、辞めれば抜ける。広告で客を呼ぶ競争は、資金力のある相手ほど有利だ。
資本効率は高い。主な投資は店と人で、工場は要らない。過去 7 年のうち 4 年は ROE が 20% を超えた。ただ、これは軽い資産の結果であり、競争の優位が長く続く証拠ではない。
経営は拡大を優先してきた。福ちゃんを持つレクストホールディングスの買収は、株式取得だけで約 82 億円だった。買収した会社をうまく束ねられるかが、これからの試金石になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
リユース市場は長く拡大が続いている。2025 年は前年比 6.2% 増の約 3.5 兆円で、16 年連続の増加だった。ブランド品は 4,943 億円と約 17% 伸びた。2030 年には 4 兆円規模へ届くとの予測がある。物価の上昇、訪日客の購入、中古を選ぶ人の増加が背景だ。
ただし、買取業者が取れる量は市場の伸びと同じではない。買取の主役は店頭で、全体の約 7 割とされる。出張は残りを取り合う小さな領域だ。出張も店舗も、広告で客を集める商売で、競争の中身は広告費になる。競合は、ブランド品に強いコメ兵(2026 年 3 月期の売上は 2,217 億円で前期比 39% 増)、「なんぼや」を持つバリュエンス(2024 年 8 月期の売上は約 814 億円)、貴金属に強い買取チェーンなどだ。バイセルの 2025 年の売上は 1,006 億円で、国内市場の約 3% にあたる。
需要の源は高齢化だ。団塊世代が後期高齢者に入り、遺品や生前の整理で物が出てくる。着物や切手は需要が細り続けるが、貴金属・ブランド品・骨董は残る。買取の件数は人口とともに細る側にあるが、物が出る件数は当面増える。これが筆者の見立てだ。
規制も業界の形を決める。訪問買取は特定商取引法の「訪問購入」に当たり、契約書面を受け取って 8 日以内はクーリングオフができる。高齢者の判断力につけ込む行為は行政処分の対象だ。規制が強まれば、出張の運営費は上がり、件数は絞られる。
資本政策と M&A
還元は薄く、成長への投資が優先だ。2026 年 12 月期の配当は引き上げたが、利益に対する割合は 2 割に届かない。自社株買いには触れていない。
M&A は成長の中心にある。2024 年に出張買取「福ちゃん」を持つレクストホールディングスを買収した。株式取得は約 82 億円、報道では株式交換を含めて約 93 億円だった。2026 年は九州の「買取専門店 諭吉」を運営する DelightZ を完全子会社にした。のれんは約 24 億円で、12 年で償却する。「買取専門東京市場」の運営会社も 5 億円で取り込んだ。会社は M&A を続け、グループで「リユースインフラ」をつくる方針だ。
筆頭株主は吉村英毅氏の名を冠した投資事業有限責任組合で、保有は 35.5%(2025 年末)。1 社で 3 分の 1 を超える。この株が将来売られれば、需給は重くなる。支配株主の動き次第で、TOB や再編の話が出る余地もある。
経営陣の有償ストックオプションは、2027 年に営業利益 200 億円超、さらに 2028〜29 年のどちらかで 270 億円超が行使条件だ。経営と株主の向きは揃っているが、条件はかなり高い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
出張買取の市場は、供給が増える側にある。団塊世代が後期高齢者に入り、遺品や生前の整理で物が出てくる。バイセルは年 44 万件を査定する国内最大級の窓口で、再訪率は 20% まで上がった。目標の 25% に届けば、広告をかけずに呼べる客が増え、1 件あたりの利益が上がる。
出口が広がっている。国内の卸、店、EC に加え、中国・米国向けのライブ販売が始まった。試験販売では国内向けの 1.5〜3 倍の粗利が出ている。C・D ランクのブランド品を中国で直して売る体制も整い、売れ残りの価値を引き上げる。
店舗は 2026 年に入って 547 店へ増え、利益率は 2 割近い。買取専門店は、M&A で買えば早く立ち上がる。実績も強い。2025 年は営業利益が 90 億円。2026 年は 156 億円の計画で、上方修正を重ねた。会社は 2027 年に 200 億円を掲げ、経営陣の新株予約権はそれ以上を条件にしている。ブランド、データ、人材、M&A で規模の経済が働けば、10 年で売上は 3 倍を超えうる。
慎重な見方
今の利益は、続く姿とは限らない。2026 年 1〜3 月期の粗利率の改善は、前期末に持ち越した在庫を売った効果が大きいと、会社自身が説明している。持ち越しの押し上げは毎年は使えない。有価証券報告書も、高額品を中心に売上が大きく振れるリスクと、地金相場の変動を挙げている。
堀が浅い。買取は広告費で客を呼ぶ商売で、客は何社かの査定を比べる。コメ兵は買取を強めて売上を伸ばし、バリュエンスや貴金属のチェーンも広告を増やせる。出張 1 件あたりの広告費は、すでに 2025 年に上がっている。
規制の矢もある。訪問購入は高齢者を相手にする。トラブルが増えれば、勧誘の規制強化や行政処分が出る。出張は会社の看板事業で、ここが細れば全体が揺れる。
資本の面でも、拡大のための M&A と店舗に現金が出ていき、棚卸は 140 億円を超えた。のれんも積み上がる。筆頭株主は 35.5% を持ち、売却が出れば需給が崩れる。いまの時価総額は 2026 年の会社予想利益の 17 倍ほどで、平常の利益で測れば安全域がない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方の核は事業の拡大力で、これは本物だ。ただ、慎重な見方が突く 3 点、つまり今の利益が平常より高いこと、堀が浅いこと、10 年先の利益は物価並みの伸びに落ち着くことは、答えにくい。拡大力は利益の水準そのものを守る力ではない。確率は慎重側へ少し寄せた。楽観とやや楽観で 3 割強、やや悲観と悲観で 3 割強を置き、残りを中立にした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,467 円2,143 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 350 円217 億円)。 今の値に割り戻すと 1,805 円1,116 億円、今との差 −26.4%、 期待の年率 +4.5%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,973 円4,311 億円 | 543 円336 億円 | +206.7% | +11.9% | 752 円465 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,955 円3,063 億円 | 414 円256 億円 | +119.0% | +8.2% | 1,181 円730 億円 |
| 中立 | 36% | 3,945 円2,439 億円 | 356 円220 億円 | +75.5% | +5.8% | 1,548 円957 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,120 円692 億円 | 281 円174 億円 | −42.8% | −5.4% | 308 円191 億円 |
| 悲観 | 10% | 128 円79 億円 | 149 円92 億円 | −88.7% | −19.6% | 28 円17 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,467 円2,143 億円 | 350 円217 億円 | +55.7% | +4.5% | 3,817 円2,360 億円 |
今の株価時価総額 2,451 円1,515 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 国内の 1 番手が固まり、海外販売も定着 利益 226 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 6,973 円4,311 億円
買取の窓口としての地位が固まり、国内で圧倒的な 1 番手になる。出張の査定は 90 万件を超え、店は 950 店前後まで広がる。再訪率が 25% を超えて広告に頼らない客が増え、1 件あたりの利益が相場に左右されにくくなる。
中国・米国向けの販売が軌道に乗り、国内より高く売れる経路が常用の出口になる。リペアして売る仕組みも育ち、売れ残りが減る。M&A も、買った会社が看板と仕組みを共有して早く立ち上がる。
10 年後の売上は 2,937 億円、営業利益は 359 億円となる。それでも競合の広告と規制は消えない。利益率は 13% ほどで頭打ちになり、会社の目標の水準を保つ形だ。
- 出張訪問買取:数量 92.0(年間の出張査定件数(万件))× 価格 16(1 件あたりの売上(万円)。物価の分を含む名目)→ 売上 1,486 億円・営業利益 252 億円。出張 92 万件 × 1 件 16 万円台(物価 1.34 倍に再訪・海外の高単価で 1.45 倍)
- 店舗買取:数量 950(期末の店舗数(店))× 価格 1.53(1 店あたりの年間売上(億円)。物価の分を含む名目)→ 売上 1,451 億円・営業利益 232 億円。950 店 × 1 店 1.5 億円(1.45 倍)
倍率:事業の純利益 226 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 32.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 16.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.75 倍、時価総額 4,012 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内 1 番手の地位が固まり、海外販売も高採算で定着する必要がある。広告競争と規制を同時に越える姿で、起きにくい。
やや楽観 22% 再訪と店舗網が計画どおり伸びる 利益 163 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 4,955 円3,063 億円
出張も店舗も順調に伸びるが、競合との差は今の勢いほど開かない。出張の査定は 80 万件、店は 860 店になる。再訪率は 25% 近くまで上がり、広告費の効率は少し良くなる。
海外販売は一部の高額品に限られるが、粗利の底上げには効く。M&A は年に数件、堅実に進み、買った会社の統合も大きくは躓かない。自社のデータと査定の仕組みを店舗にも広げ、1 件あたりの利益が少しずつ上がる。
10 年後の売上は 2,408 億円、営業利益は 263 億円。2027 年の目標をほぼ守った利益率が、後半の物価上昇を価格に移すことで維持される。
- 出張訪問買取:数量 80.0(年間の出張査定件数(万件))× 価格 15(1 件あたりの売上(万円)。物価の分を含む名目)→ 売上 1,194 億円・営業利益 191 億円。出張 80 万件 × 1 件 14.9 万円(物価並み)
- 店舗買取:数量 860(期末の店舗数(店))× 価格 1.41(1 店あたりの年間売上(億円)。物価の分を含む名目)→ 売上 1,214 億円・営業利益 182 億円。860 店 × 1 店 1.4 億円(物価並み)
倍率:事業の純利益 163 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 28.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 15.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍。全体の PER 17.27 倍、時価総額 2,815 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再訪率の上昇と店舗網の拡大が会社の計画どおり進む筋書き。2025〜26 年の実績が裏づける分、中立に近い厚みを置いた。
中立 36% 拡大は続くが、利益は平常へ戻る 利益 131 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 3,945 円2,439 億円
拡大は続くが、利益の伸びは物価並みに近づく。出張の査定は 70 万件、店は 760 店になる。高齢者の遺品・生前整理で物は出続け、再訪率も上がるが、入口の広告競争は今と変わらず続く。
2026〜27 年の高い利益率は、在庫の持ち越しや相場の追い風が薄れて、少し下がる。営業利益率は 10% を少し超える水準に落ち着く。海外販売は粗利を押し上げるが、全体の主役にはならない。
10 年後の売上は 2,118 億円、営業利益は 212 億円。純利益は 131 億円で、2027 年の会社目標の延長線に近い。還元は薄いままで、自己資本は積み上がる。
- 出張訪問買取:数量 70.0(年間の出張査定件数(万件))× 価格 15(1 件あたりの売上(万円)。物価の分を含む名目)→ 売上 1,045 億円・営業利益 157 億円。出張 70 万件 × 1 件 14.9 万円(物価並み 1.34 倍)
- 店舗買取:数量 760(期末の店舗数(店))× 価格 1.41(1 店あたりの年間売上(億円)。物価の分を含む名目)→ 売上 1,073 億円・営業利益 150 億円。760 店 × 1 店 1.4 億円(物価並み)
倍率:事業の純利益 131 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 14.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.92 倍、時価総額 2,216 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:拡大は続くが、持ち越し在庫や相場の追い風は平常へ戻るという落としどころ。いちばん厚く置いた。
やや悲観 22% 広告競争と相場反落で利益率が削られる 利益 66 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,120 円692 億円
競合の広告が増えて 1 件あたりの獲得費用が上がり、利益率が削られる。コメ兵やバリュエンスが買取を強め、貴金属の専門店とも客を取り合う。出張の査定は 52 万件、店は 620 店にとどまる。
地金と骨董の相場は落ち着き、2026〜27 年のような粗利は戻らない。店の増設は採算の悪い立地にまで広がり、のれんの一部を減損する。再訪率は 20% 台前半で止まる。
10 年後の売上は 1,602 億円、営業利益は 108 億円。会社は残るが、もはや高い ROE の優良株ではなく、拡大しても増える利益が小さい普通の小売りに近い。
- 出張訪問買取:数量 52.0(年間の出張査定件数(万件))× 価格 14(1 件あたりの売上(万円)。物価の分を含む名目)→ 売上 753 億円・営業利益 90 億円。出張 52 万件 × 1 件 14.5 万円(物価に届かず 1.30 倍)
- 店舗買取:数量 620(期末の店舗数(店))× 価格 1.37(1 店あたりの年間売上(億円)。物価の分を含む名目)→ 売上 849 億円・営業利益 93 億円。620 店 × 1 店 1.4 億円(1.30 倍)
倍率:ROE 10.4% は k 8.25% を上回るが、堀が弱く残る割合を 1/3 とすると正当化 PER の上限は 12.0 倍。広告競争で利益の質が落ちる筋書きなので、上限の 7 割に届かない 8.5 倍に置いた。
確率:広告競争と相場の反落は、買取業の歴史で何度も起きた。堀が浅いので、実際に起きる確率は楽観側と同じ程度に厚く置いた。
悲観 10% 規制強化と相場急落で利益が消える 利益 8 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 128 円79 億円
構造的に負ける筋書きだ。訪問購入の規制が強まり、不招請勧誘の運用が厳しくなる。高齢者トラブルの報道が広がって看板のイメージが傷み、出張の査定は 34 万件へ減る。
同時に地金相場が大きく反落し、在庫に評価損が出る。競合は広告で攻め、1 件あたりの売上も実質で縮む。店は 470 店まで絞るが、家賃などの固定費は残る。人員と広告の削減も追いつかず、本社費の負担が重く残る。買収で積んだのれんの減損も出て、拡大の時期に作った仕組みが重荷に変わる。
10 年後の売上は 990 億円で、営業利益はほぼゼロになる。稼ぐ力で測る価値は小さく、在庫と店の売れる資産が価値の下限になる。
- 出張訪問買取:数量 34.0(年間の出張査定件数(万件))× 価格 13(1 件あたりの売上(万円)。物価の分を含む名目)→ 売上 446 億円・営業利益 31 億円。出張 34 万件、1 件の売上も実質で縮む
- 店舗買取:数量 470(期末の店舗数(店))× 価格 1.16(1 店あたりの年間売上(億円)。物価の分を含む名目)→ 売上 544 億円・営業利益 33 億円。470 店、1 店の売上も実質で縮む
倍率:純利益 8 億円の稼ぐ力は ÷k 8.25% で約 91 億円だが、構造的に負けて ROE が約 2% と k を大きく下回る筋書きで、ためた利益は額面では数えない(やや悲観の倍率より低い 6〜7 倍で約 55 億円)。売れる資産の税後 約 80 億円(floor_assets_oku)のほうが大きいので、これを床にして今の自己資本 209 億円の 0.38 倍とした。
確率:規制の強化・相場の急落・競合の攻勢が重なる筋書き。事業は残るが利益は消える。深いが、重なる確率は低いので 1 割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
出張訪問買取
自宅を訪ねて着物・貴金属・ブランド品・骨董などを買い取り、国内外の販路で売る。
| 数量年間の出張査定件数(万件) | 価格1 件あたりの売上(万円)。物価の分を含む名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 44.0 | 11 | 490 | 64 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 15 | 1,045 | 157 |
取り方:年間の出張査定は約 44 万件(会社の説明)。2025/12 期は事業別の開示が無いため、2026 年上期の売上比(出張 336 億・店舗 353 億)で全体の 1,006 億円を分け、出張を約 490 億円と推定した。セグメント利益は本社費を引く前で、上期の利益率 17.1% より低い 13% と置いた(推定)。 数量は査定の件数(実物)。
店舗買取
「バイセル」「タイムレス」「諭吉」などの店で買い取り、売る。
| 数量期末の店舗数(店) | 価格1 店あたりの年間売上(億円)。物価の分を含む名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 490 | 1.05 | 516 | 71 |
| 10 年後 中立 | 760 | 1.41 | 1,073 | 150 |
取り方:店舗数は 2025 年末で 490 店(2026 年 6 月は 547 店)。売上は上期の売上比で全体を分けて約 516 億円と推定し、1 店あたり約 1.05 億円とした。1 店あたり売上には来店数と買取単価の両方が入る。利益は本社費を引く前の推定 13.7%。
リスクと懸念
訪問購入の規制強化・行政処分
出張買取は特定商取引法の訪問購入に当たり、高齢者の判断力につけ込む行為は行政処分の対象になる。トラブルの報道や規制の強化が起きれば、勧誘の運用が重くなり、件数と看板の信頼が同時に傷む。会社の稼ぎ頭が出張なので、影響は全社に及ぶ。
相場と在庫の評価
貴金属は地金相場、骨董やブランド品は中古の相場で値が決まる。有価証券報告書も高額品を中心に売上が大きく振れるリスクを挙げる。棚卸は 140 億円を超え、相場が落ちると評価損が出る。在庫の持ち越しで利益を動かせる反面、先送りした分は後で返ってくる。
広告競争と獲得費用の上昇
買取は広告で客を呼ぶ商売で、客は複数社の査定を比べる。コメ兵やバリュエンス、貴金属の買取チェーンが広告を増やせば、1 件の獲得費用が上がる。出張 1 件あたりの広告費は 2025 年にすでに上がっている。
筆頭株主の売却と需給
筆頭株主の投資事業有限責任組合が 35.5% を持つ。投資ファンド型の保有は、いつか売りが出る前提で見るのが無難だ。大口の売りは需給を崩し、TOB や再編の話が出る場面もありうる。
M&A の統合とのれん
福ちゃんの買収は株式取得だけで約 82 億円、DelightZ ののれんは約 24 億円。看板や仕組みを束ねて利益を出せなければ、のれんの減損や、拡大の鈍化につながる。M&A を続ける方針なので、統合の失敗は繰り返し起こりうる。
店舗の固定費と新リース会計基準
店は 547 店あり、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。2028 年 12 月期ごろから新しいリース会計基準が入ると、使用権資産とリース負債が貸借対照表に載り、自己資本比率や純負債の見え方が変わる。見かけの財務の強さを割り引いて読む必要がある。
査定員の育成と不祥事
出張の品質は査定員の目利きと接客で決まる。件数を急いで増やせば、採用と教育が追いつかず、顧客トラブルが起きやすい。個人の不祥事が看板全体の評価を落とすのは、この商売の宿命だ。
今後の分かれ目
- 再訪率が 25% に届き、広告費を増やさずに査定件数が伸びる
- 出張の 1 件あたりの採算が構造的に上がる。楽観寄りの筋書きに確率が移り、利益率は 13% を超えて保たれうる。
- 地金や骨董の相場が大きく反落する
- 在庫に評価損が出て、粗利が落ちる。持ち越し在庫を売れず、2027 年の目標は遠のく。やや悲観の筋書きに寄る。
- 訪問購入の規制が強まる、または大きな行政処分が出る
- 出張の件数が絞られ、勧誘の運用費が増える。悲観の筋書きに移る。店舗買取で埋め切れるかが焦点になる。
- 中国・米国向けの販売が量産段階に入り、国内比の粗利が保たれる
- 売れ残りの価値が上がり、1 件あたりの粗利が相場に頼らず上がる。やや楽観〜楽観の根拠になる。
- 筆頭株主が大量に売り出す、または TOB を受ける
- 売り出しなら短期の需給が崩れる。TOB なら価格は買い手が決める。事業の価値は変わらないが、株主の出口の形が変わる。
- 新しい買収で、のれんが大きく増える
- 利益の伸びは買う価格しだいで、割高なら資本効率が下がる。資本の使い方の評価が下がり、倍率の上限を引き下げる。
見ておくもの
- 出張査定件数と 1 件あたりの変動利益(四半期の説明資料)
- 再訪率(バイセル・福ちゃんの合計、目標 25%)
- 棚卸資産の水準と、期末の在庫の持ち越し
- 店舗数の増え方と、1 店あたりの利益
- 広告宣伝費の対売上比と、1 件あたりの広告費
- 訪問購入に関する消費者庁・国民生活センターの動き
- 筆頭株主の保有割合の変化
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から筋書きを逆算していない。数量は、出張の査定件数と店舗数、価格は 1 件・1 店あたりの売上(中立とやや楽観は物価並みの 1.34 倍、楽観は再訪・海外販売の高単価で 1.45 倍、やや悲観は物価に届かず 1.30 倍)で積んだ。10 年の倍率は、k 8.25%・g 4%・堀が弱く残る割合 1/3 から出した上限に、利益の質(相場と在庫持ち越しの混入)で 8 割前後を掛けた。市場の PER は使っていない。今の株価が倍でも半分でも、この値は動かない。結果として大きな割高になったが、会社の拡大力そのものでなく、10 年の利益水準と割引で決まった。店舗の家賃は固定費として悲観の利益率に入れ、数字は新リース会計基準の前と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→17.75 倍・やや楽観 PER 11.4→17.27 倍・中立 PER 10.5→16.92 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.25% を足して 8.75%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.25%。