結論
橋本総業ホールディングスは、水道管、トイレや水栓、ユニットバス、業務用エアコンといった住まいの水まわりと空調の資材を、メーカーから仕入れて全国へ流す卸だ。売上は 1,725 億円ある。結論から言えば、筆者は今の値段をやや割高と見る。事業の質は悪くないが、薄い利益率のまま利益が伸びても、資本コストに届く稼ぎにはなりにくいからだ。
稼ぎの特徴は、営業利益より営業外の収益が厚いことだ。営業利益が 25 億円なのに、経常利益は 35 億円ある。仕入先から受け取るリベートなどが 10 億円ほど上乗せされているとみる。この性質は卸としては普通で、売上が増えれば比例して増える。
2027 年 3 月期は営業利益 36 億円を予想する。今期より 4 割多い。ただ会社は過去 10 年、売上は増えても営業利益率が 1.5〜2.2% の枠を出たことがない。筆者は、その枠の上寄りまで届く姿を中立とする。
2026 年 3 月にはアイナボホールディングスとの経営統合の検討を始めた。条件は未発表で、この分析は単独の姿で測っている。統合は住宅設備の施工まで事業を広げるが、買収後の資本の使い方が見えない間は、価値を足さない。
中立の筋書きでは、10 年後の純利益は 36 億円、時価総額は 330 億円ほど。今の 260 億円より高いが、10 年待つ価値としては足りない。上は 570 億円、下は 125 億円まで振れる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くない事業だが、割安でなければ買わない」類いだ。10 年後も水まわりと空調の資材は必要で、橋本総業は残る。ただ、稼ぐ力が薄いため、株主の取り分が育つ速度は遅い。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、営業外のリベートを含めて 28 億円ほどだ。物流センターの投資と運転資金に再投資が要り、売上が伸びるほど在庫と売掛金が膨らむ。利益の全部を配れる事業ではない。
安全域を見る。自己資本は 364 億円あるのに、時価総額は 260 億円で、帳簿の価値を下回る。しかし ROE が資本コストを下回る会社では、帳簿の価値は床にならない。ためた利益は額面より低くしか評価されないからだ。筆者が割安と呼べない理由はここにある。
経営の資本配分は堅実だが、積極性に欠ける。統合を機に、利益率の改善や資本の使い方が変わるなら、評価は上がる。統合が、薄利の卸どうしの足し算に終わるのか、仕入れと物流を束ねて利益率を押し上げるのかで、10 年後の姿は変わる。条件が見えない今は、前者の可能性も織り込んだ。それが見えるまでは、中立の筋書きの価値は今の値段の 8 割ほどに見える。
何で稼ぐ会社か
橋本総業は、管工機材と住宅設備の「1 次卸」だ。メーカーから大量に仕入れ、全国の 2 次卸や工事店へ売る。2026 年 3 月期の売上の内訳は、管材類が 28%、衛生陶器・金具類が 27%、空調機器・ポンプが 26%、住宅設備機器類が 18%だ。
管材類は水道や給湯の配管、継手、バルブだ。工事の現場で欠かせず、点数は多いが単価は小さい。衛生陶器・金具類は便器や洗面台、水栓などで、新築とリフォームの両方で使われる。住宅設備機器類はユニットバスやシステムキッチンなど、1 件あたりの金額が大きい品目だ。空調機器・ポンプは、業務用エアコンや給排水ポンプで、ビルや工場、病院が主な需要先になる。
儲けの仕組みは、仕入値と売値の差と、仕入先からのリベートだ。粗利益は薄く、営業利益率は 1.5% 前後にとどまる。そのかわり売上が大きく、在庫と配送で品ぞろえを担う機能が、メーカーにも工事店にも欠かせない。
売上の大半は 2 次卸と工事店向けで、県ごとの営業所が受注を受ける。メーカーの商品を在庫し、必要な量を必要な日に届ける。ここで稼ぐのは、物を右から左に流す手数料ではなく、欠品を出さない在庫と配送の機能への対価だ。
経営は「3 つのフル」を掲げる。県別に営業所を置くフルカバー、品目をそろえるフルライン、受発注から配送までをこなすフル機能だ。メーカーとの連携の会「みらい会」で、物流や商流の共同化も進める。
大株主は有限会社ハット企画で、21.5% を持つ。株主は 6,300 人ほどで、発行済株式は 2,129 万株になる。
優良さと弱いところ
優良さの核は、品ぞろえと全国をカバーする配送の仕組みだ。管工機材は、1 件の工事でも数十の品目が要り、足りない 1 点で工事が止まる。工事店は、すぐに全部そろえてくれる卸を使い続ける。この「欠品させない力」が橋本総業の価値で、新規の参入者がまねするのは難しい。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みは、利益を守るところまでは届いていない。仕入先のメーカーは強く、卸の取り分は粗利の中の数 % にすぎない。ネット通販やメーカーの直販が広がれば、中間の取り分は削られる。値段を自分で決める力は弱い。
資本効率は並みだ。ROE は過去 10 年の中央値が 9.0% で、足元の 7.7% は下がり気味になっている。自己資本が 364 億円と積み上がるのに、純利益が追いつかないためだ。売上は伸びても、利益率が薄いため、利益の伸びは売上より遅い。
財務は堅めだ。自己資本比率は 43%、純負債は 28 億円で、営業利益は支払利息の 9 倍ある。借金への依存は小さい。
経営は、配当性向 30% を基準に 11 期連続で増配を続ける。安定した株主還元の姿勢は評価できる。一方で、利益率を上げる具体策は、物流の共同化など地味な取り組みにとどまっている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
管工機材の卸は、住宅と建物の工事量に連動する安定産業だ。需要の中身は 3 つある。新築の住宅、既存住宅のリフォームと設備の更新、ビルや工場の空調と給排水だ。景気で大きく振れず、橋本総業の営業利益も過去 10 年で 14 億円から 30 億円の枠に収まっている。
構造の変化は逆向きの力がぶつかる。新築の住宅は人口減で細る。トイレや浴室などの出荷が減り、住宅設備の数量は先細りが続く。一方、更新の需要が増える。築年数の古い住宅の改修、老朽化した上下水道の入れ替え、空調の買い替えと熱中症対策による設置が数量を支える。国土強靱化で、水道管の更新に大きな予算がつく。
人手不足が業界全体を変える。職人が足りず、現場は納期と施工の手間を減らせる製品を求める。卸の側は、配送の共同化や発注のデジタル化で効率を上げる必要がある。物流費と人件費の上昇を価格へ転嫁できるかで、卸どうしの差が開く。
競争は 1 次卸、2 次卸、専門商社が重層に並ぶ。全国の 1 次卸は数が限られ、橋本総業はその一角だ。他方、メーカーの直販やネット通販は中間を省く力を持つ。再編の動きは、橋本総業とアイナボの統合に表れている。
10 年で見ると、実質の数量は水まわりが微減、空調が増える。物価の分は価格に乗る。
価格面では、銅や鋼材、樹脂の相場が配管やバルブ、エアコンの仕入値に響く。仕入値が上がる局面では売値も上がって売上は膨らむが、利益率はむしろ薄くなりやすい。物価 3% の世界では売上が自然に増えるが、それは利益の増加とは別の話だ。
資本政策と M&A
配当は連続増配が基本で、配当性向 30% を基準にする。2027 年 3 月期も 11 期連続の増配を予定する。自社株買いは目立たず、自己株式は役員への株式報酬の形で処分している。還元の水準は低めで、自己資本が積み上がりやすい。
大型の買収はこれまで確認できない。物流センターの整備や拠点網の強化、メーカーとの共同化が中心だった。2019 年には空調の自動制御を手がけるオーテックと、業務提携の検討に入った。
注目は 2026 年 3 月 27 日に発表された、アイナボホールディングスとの経営統合の検討開始だ。共同の持株会社をつくる株式移転の方式で、対等な精神と説明され、公開買付けは想定していない。両社は上場廃止となり、新しい持株会社が上場する予定だ。アイナボは、タイルやサッシ、外壁材、住設機器の販売と施工が主力で、2025 年 9 月期の売上は 923 億円、営業利益は 25 億円だった。
商材と販路の補完が狙いで、統合の比率や効果額は発表されていない。大株主のハット企画が 21.5% を持つため、経営の方向は安定している。ただし統合後の資本の使い方は見えない。この分析は単独の姿で値付けし、統合は筋書きの上振れと下振れで表した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
管工機材の卸は、社会の基盤に根を張る。老朽化した水道管の入れ替え、住宅のリフォーム、空調の更新は、景気に関係なく続く。人手不足で職人が減るほど、品ぞろえと配送を一手に引き受ける卸の価値が高まる。橋本総業は全国の営業体制を持ち、メーカーとの連携の会で物流と商流をそろえてきた。
利益率には上がる余地がある。2027 年 3 月期の予想は営業利益率 2.0% で、過去の最高 2.2% に近づく。リベートを含む営業外の収益は売上に比例して増えるので、売上が伸びれば経常利益が上積みされる。第 1 四半期の経常利益は前年から 3 割増えた。
アイナボとの統合は、商材と販路の補完になる。タイルやサッシ、外壁材と施工が加われば、住宅の現場全体を一括で扱える。重複する物流を束ねれば、コストが下がる。大株主が安定しているので、統合は混乱なく進みやすい。
配当は連続増配で、配当性向を 30% から引き上げる余地がある。自己資本は厚く、借金は少ない。時価総額は帳簿の価値を割っており、利益率が少し上がるだけで十分な上振れになる。新築が細っても、既存の住宅ストックは巨大で、設備は順に寿命を迎える。更新の需要は、人口が減っても消えない。
慎重な見方
利益率が薄い卸は、少しの変化で崩れる。営業利益率は 1.5% 前後で、過去 12 年の最高でも 2.2% だ。売上が 1,700 億円もあるのに、営業利益は 25 億円しか出ていない。2026 年 3 月期の中間期は、営業利益が 12% 減った。2027 年 3 月期の 4 割増益は、会社が出した予想にすぎない。
数量が減る側の力は強い。新築の住宅は人口減で細り、トイレや浴室、キッチンの出荷は先細りになる。リフォームが補うとしても、1 件あたりの量は新築より少ない。メーカーの直販やネット通販が進めば、卸の取り分は削られる。
ROE は 7.7% で、資本コストに届かない。自己資本が積み上がるほど、ROE は下がる。経常利益の 3 割を営業外の収益が占めるのも不安だ。リベートは仕入先の方針で変わりうる。
アイナボとの統合は、条件が見えない。対等の統合で買収ほど値段を払わないとしても、旧い経営陣の調整にコストがかかる。住宅の施工まで広がる事業は、利益率がさらに低い可能性もある。現状は、資本コストに届かない会社の「配当の積み上げ」を待つ形だ。自己資本が積み上がり続ければ、ROE は 6% 台まで下がる。株主の取り分は、配当を除いて増えにくい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。強気の根拠は更新需要と利益率の改善という見込みだが、数字に出ている事実は、薄い利益率、足踏みする営業利益、資本コストを下回る ROE だ。ただし事業の安定は本物で、悲観の深さは浅い。そこで中立を 4 割に置き、やや悲観と悲観の合計を 3 割強、楽観とやや楽観の合計を 3 割弱にした。統合は、条件が未発表のため、上と下の両方に少しずつ織り込んだ。中立の価値が今の値段より低く出るのは、ROE が資本コストを下回る会社の倍率を、式の上限に抑えたためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,192 円427 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 575 円112 億円)。 今の値に割り戻すと 1,435 円280 億円、今との差 +10.3%、 期待の年率 +7.8%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,717 円724 億円 | 780 円152 億円 | +245.7% | +13.2% | 360 円70 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,948 円574 億円 | 693 円135 億円 | +179.9% | +10.8% | 728 円142 億円 |
| 中立 | 40% | 2,513 円490 億円 | 585 円114 億円 | +138.1% | +9.1% | 1,239 円241 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,073 円209 億円 | 488 円95 億円 | +19.9% | +1.8% | 343 円67 億円 |
| 悲観 | 10% | 642 円125 億円 | 323 円63 億円 | −25.8% | −2.9% | 97 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,192 円427 億円 | 575 円112 億円 | +112.7% | +7.8% | 2,767 円539 億円 |
今の株価時価総額 1,301 円253 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 更新需要が厚く、統合も効いて利益率 2.5% へ 利益 54 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 3,717 円724 億円
水道管の更新、リフォーム、空調の買い替えが想定より厚く積み上がる。空調は数量が今の 1.25 倍に増え、水まわりの数量の落ち込みは小さい。値段は物価より少し上がる。
アイナボとの統合で、住宅の現場に施工まで一括で届ける体制ができる。統合を機に拠点と在庫を整理し、重複する物流を束ねる。配送のコストが下がり、仕入先との取引が大型化して条件も改善する。仕入先との交渉力も高まり、リベートが増える。
会社全体の売上は 2,500 億円、営業利益率は 2.5% になる。過去の最高を超える水準で、卸としては例外的な高採算だ。
配当性向は引き上げられ、自社株買いも始まる。自己資本は緩やかに増えるが、ROE は 8% 台に戻る。
- 管材類(その他を含む):数量 2,519(出荷点数(万点・推定))× 価格 0.28(1 点あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 705 億円・営業利益 16 億円。出荷量 0.98 倍、値段 1.40 倍、営業利益率 2.2%
- 衛生陶器・金具類:数量 305(出荷点数(万点・推定))× 価格 2.10(1 点あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 641 億円・営業利益 15 億円。出荷量 0.98 倍、値段 1.40 倍、営業利益率 2.4%
- 住宅設備機器類:数量 36.2(出荷セット数(万セット・推定))× 価格 11(1 セットあたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 405 億円・営業利益 8 億円。出荷量 0.95 倍、値段 1.40 倍、営業利益率 1.9%
- 空調機器・ポンプ:数量 36.6(出荷台数(万台・推定))× 価格 21(1 台あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 769 億円・営業利益 25 億円。出荷量 1.25 倍、値段 1.40 倍、営業利益率 3.2%
倍率:事業の純利益 54 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.41 倍、時価総額 724 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新需要の拡大、リベートの増加、統合の効果が重なる姿は、薄い利益率の卸としては例外的。1 割弱とした。
やや楽観 20% 利益率は 2.1%、更新需要が数量を支える 利益 44 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,948 円574 億円
新築の落ち込みを、リフォームと更新が大きく補う。空調は今の 1.18 倍に増え、水まわりも 1 割弱の減少にとどまる。
物流の共同化と仕入先との連携で、営業利益率は 2.1% に上がる。過去の最高 2.2% に近い水準だ。営業外のリベートは売上に比例して増える。
アイナボとの統合は、大きな追加費用を出さずに商材の補完が進む。会社は計画どおりに動くが、市場の驚きにはならない。
配当性向は 30% 台前半を保ち、自己資本は着実に積み上がる。
それでも ROE は 7% 台にとどまる。利益率が少し上がっても、自己資本の積み上がりが速いため、資本効率が資本コストを超えるところまでは届かない。堅実だが派手さのない 10 年だ。
- 管材類(その他を含む):数量 2,442(出荷点数(万点・推定))× 価格 0.27(1 点あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 669 億円・営業利益 13 億円。出荷量 0.95 倍、値段 1.37 倍、営業利益率 1.9%
- 衛生陶器・金具類:数量 290(出荷点数(万点・推定))× 価格 2.06(1 点あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 595 億円・営業利益 12 億円。出荷量 0.93 倍、値段 1.37 倍、営業利益率 2.0%
- 住宅設備機器類:数量 35.1(出荷セット数(万セット・推定))× 価格 11(1 セットあたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 385 億円・営業利益 6 億円。出荷量 0.92 倍、値段 1.37 倍、営業利益率 1.6%
- 空調機器・ポンプ:数量 34.6(出荷台数(万台・推定))× 価格 21(1 台あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 711 億円・営業利益 19 億円。出荷量 1.18 倍、値段 1.37 倍、営業利益率 2.7%
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 570 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027 年 3 月期の会社予想(2.0%)に近い利益率が定着する姿。直近の実績に比べやや強気だが、2 割を置いた。
中立 40% 水まわりは細り空調が伸び、売上は物価の分だけ増える 利益 36 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,513 円490 億円
新築の住宅は人口減で細り、水まわりの数量は今の 9 割弱に減る。リフォームと更新が補うが、全部は埋まらない。空調は更新と暑さ対策で今の 1.1 倍に伸びる。
値段は物価並みに上がり、売上は 2,200 億円になる。営業利益率は 1.8% で、過去の最高 2.2% より低い。物流センターの更新などの投資は続くが、減価償却は新設分だけ加わる程度に収まる。
営業外のリベートは売上に比例して増え、純利益は 36 億円。アイナボとの統合は、条件が合えば緩やかに進み、大きな成功も失敗も起こらない。
配当は性向 30% 台で続き、自己資本はゆっくり積み上がる。ROE は 6% 台に下がるが、安定は保たれる。
- 管材類(その他を含む):数量 2,364(出荷点数(万点・推定))× 価格 0.27(1 点あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 634 億円・営業利益 10 億円。出荷量 0.92 倍、値段 1.34 倍、営業利益率 1.6%
- 衛生陶器・金具類:数量 280(出荷点数(万点・推定))× 価格 2.01(1 点あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 563 億円・営業利益 9 億円。出荷量 0.90 倍、値段 1.34 倍、営業利益率 1.6%
- 住宅設備機器類:数量 33.5(出荷セット数(万セット・推定))× 価格 11(1 セットあたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 359 億円・営業利益 5 億円。出荷量 0.88 倍、値段 1.34 倍、営業利益率 1.4%
- 空調機器・ポンプ:数量 32.2(出荷台数(万台・推定))× 価格 20(1 台あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 647 億円・営業利益 16 億円。出荷量 1.10 倍、値段 1.34 倍、営業利益率 2.4%
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 466 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:住宅設備の縮小と空調の伸びが相殺し、実質の数量は微減、名目で物価の分だけ伸びる姿に収まりやすい。過去 10 年の営業利益の枠(14〜30 億円)とも整合し、4 割を置いた。
やや悲観 22% 中抜きと値下げで利益率は 1.3% に 利益 24 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 1,073 円209 億円
新築の住宅が想定より早く細り、水まわりの数量は今の 8 割に減る。空調は横ばいにとどまる。メーカーの直販と通販が一部で広がり、卸の取り分が削られる。
値段は物価ほど上がらず、人件費と物流費の上昇を転嫁できない。営業利益率は 1.3% に下がり、営業利益は 25 億円と今と同じ水準にとどまる。物価の分を除けば、実質では 4 分の 3 に縮んだ計算だ。
リベートは売上に比例して減り、純利益は 24 億円になる。アイナボとの統合は、期待した相乗効果が出ないまま調整のコストがかさむ。拠点と在庫の見直しで固定費を削るが、売上の減少に追いつかない。
配当は維持されるが、増配は止まり、自己資本ばかりが積み上がる。市場は成長のない薄利の卸として、低い倍率で評価する。
- 管材類(その他を含む):数量 2,185(出荷点数(万点・推定))× 価格 0.26(1 点あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 559 億円・営業利益 6 億円。出荷量 0.85 倍、値段 1.28 倍、営業利益率 1.1%
- 衛生陶器・金具類:数量 255(出荷点数(万点・推定))× 価格 1.92(1 点あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 490 億円・営業利益 5 億円。出荷量 0.82 倍、値段 1.28 倍、営業利益率 1.1%
- 住宅設備機器類:数量 29.7(出荷セット数(万セット・推定))× 価格 10(1 セットあたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 304 億円・営業利益 3 億円。出荷量 0.78 倍、値段 1.28 倍、営業利益率 0.9%
- 空調機器・ポンプ:数量 29.3(出荷台数(万台・推定))× 価格 19(1 台あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 563 億円・営業利益 11 億円。出荷量 1.00 倍、値段 1.28 倍、営業利益率 1.9%
倍率:事業の純利益 24.4 億円(うち営業外 10.3 億円を含む)・自己資本 556 億円・ROE 4.4%。ROE が k を大きく下回り、ためた利益は額面より低く評価される。正当化 PER の上限 11.8 倍に対し、構造的に先細りする利益なので上限の 5.5 割の 6.5 倍に置いた(7 割へは引き上げない)。余った現金は無く、時価総額 = 純利益 × 6.5 倍。
確率:新築の縮小が速く、メーカーの直販や通販が進み、卸の取り分が削られる姿。過去の営業利益の枠の下限(14 億円)も考え、2 割強を置いた。
悲観 10% 構造的な負け。中抜きと新築の消失で、卸の機能が要らなくなる 利益 9 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 642 円125 億円
メーカーの直販と通販が主流になり、1 次卸の機能が削られる。新築の住宅は大幅に減り、水まわりの数量は今の 6 割台に落ちる。値段は物価に追いつかず、利益率はほぼゼロになる。
空調だけは持ちこたえるが、他社との価格競争に巻き込まれる。固定の物流費と人件費は売上ほど減らず、営業利益は 8 億円まで縮む。
アイナボとの統合は、業績の悪い会社どうしの寄せ集めに終わり、統合費用と拠点の統廃合に伴う一時費用だけが残る。リベートも仕入先の方針で細る。
純利益は 9 億円で、稼ぐ力は資本コストに全く届かない。自己資本は減損で一部を失うが、売掛金と在庫を回収して負債を払えば、一定の価値は残る。清算価値に近い扱いになる。
- 管材類(その他を含む):数量 1,850(出荷点数(万点・推定))× 価格 0.23(1 点あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 426 億円・営業利益 2 億円。出荷量 0.72 倍、値段 1.15 倍、営業利益率 0.4%
- 衛生陶器・金具類:数量 202(出荷点数(万点・推定))× 価格 1.73(1 点あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 349 億円・営業利益 1 億円。出荷量 0.65 倍、値段 1.15 倍、営業利益率 0.3%
- 住宅設備機器類:数量 22.9(出荷セット数(万セット・推定))× 価格 9.20(1 セットあたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 211 億円・営業利益 0 億円。出荷量 0.60 倍、値段 1.15 倍、営業利益率 0.1%
- 空調機器・ポンプ:数量 24.9(出荷台数(万台・推定))× 価格 17(1 台あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 430 億円・営業利益 5 億円。出荷量 0.85 倍、値段 1.15 倍、営業利益率 1.1%
倍率:稼ぐ力は純利益 9.3 億円(k で割って 110 億円)に過ぎず、売れる資産(総資産の回収から負債を引いて 125 億円)のほうが大きい。床の 125 億円を今の自己資本 364 億円で割った PBR 0.34 倍に置く。減損後の自己資本 512 億円(ROE 1.8%)でなく今の自己資本に掛けた。
確率:メーカーの直販・通販が主流となり、新築も大きく縮み、統合も失敗する複数が重なる姿。多角化と堅い財務があるので 1 割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
管材類(その他を含む)
水道・給湯の配管、継手、バルブなど工事の基本資材。
| 数量出荷点数(万点・推定) | 価格1 点あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,570 | 0.20 | 514 | 6 |
| 10 年後 中立 | 2,364 | 0.27 | 634 | 10 |
取り方:点数は開示されない。管材は小物が多く、1 点の平均売上を 0.2 万円と仮定し、売上 514 億円(管材 488 億円とその他 26 億円)から約 2,570 万点と推定した(目安)。営業利益はセグメント開示がなく、全社 25 億円を取扱高と利益率の見立てで按分した。
衛生陶器・金具類
便器・洗面台・水栓・金具。新築とリフォームの両方で使う。
| 数量出荷点数(万点・推定) | 価格1 点あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 311 | 1.50 | 467 | 6 |
| 10 年後 中立 | 280 | 2.01 | 563 | 9 |
取り方:点数は開示されない。1 点の平均売上を 1.5 万円と仮定し、売上 467 億円から約 311 万点と推定した。営業利益は全社 25 億円の按分。
住宅設備機器類
ユニットバス、システムキッチンなど 1 件あたりの金額が大きい設備。
| 数量出荷セット数(万セット・推定) | 価格1 セットあたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 38.1 | 8.00 | 305 | 4 |
| 10 年後 中立 | 33.5 | 11 | 359 | 5 |
取り方:セット数は開示されない。1 セットの平均売上を 8 万円と仮定し、売上 305 億円から約 38 万セットと推定した(機器の部材単位を含む目安)。営業利益は全社 25 億円の按分。
空調機器・ポンプ
業務用エアコン、給排水ポンプなど。ビル・工場・病院向けが中心。
| 数量出荷台数(万台・推定) | 価格1 台あたりの売上(万円・名目。物価 10 年 1.34 倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 29.3 | 15 | 440 | 9 |
| 10 年後 中立 | 32.2 | 20 | 647 | 16 |
取り方:台数は開示されない。1 台の平均売上を 15 万円と仮定し、売上 440 億円から約 29 万台と推定した(ポンプ・部材を含む目安)。営業利益は全社 25 億円の按分で、空調の利益率を他より高いと見立てた。
リスクと懸念
薄い利益率
営業利益率は 1.5% 前後で、過去の最高も 2.2% にとどまる。売上が 1% 動くと利益が数 % 動く構造で、仕入値の上昇や物流費を価格に転嫁できないと、すぐに利益が減る。2026 年 3 月期の中間期に営業利益が 12% 減ったのが例だ。
新築住宅の縮小
新築の住宅は人口減で細り、トイレ・浴室・キッチンの数量が減る。リフォームと更新が補うが、1 件あたりの量は少ない。住宅設備機器類と衛生陶器・金具類は売上の 45% を占め、この影響を最も受ける。10 年で 1〜2 割減っても不思議ではない。
中抜きと仕入先の力
メーカーの直販やネット通販が広がれば、1 次卸の取り分は削られる。仕入先が方針を変えれば、リベートの水準も変わる。営業外収益が経常利益の 3 割を占めるため、この影響は利益に直接響く。
統合の不確実性
アイナボとの統合は、条件も時期も未発表だ。住宅の施工まで事業が広がれば、利益率がさらに低くなる可能性がある。統合の準備に費用と人手がかかり、期間中の経営判断が鈍るおそれもある。
営業利益の4割増予想
2027 年 3 月期の営業利益 36 億円は、前期の 25 億円より 4 割多い。過去 12 年で営業利益が 3 割以上増えた年はない。下期の偏りも大きく、達成できなければ失望を呼ぶ。
物流・人件費の上昇
配送と倉庫の人手不足が続き、物流費と人件費は物価以上に上がる可能性がある。卸にとっては固定費に近い負担で、転嫁できない分は利益を削る。物流センターの更新投資も、建築費の上昇で膨らむ。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2.0% を超えて 2 期続いたら
- 利益率の改善が定着したとみて、中立の利益率と確率を楽観側へ寄せる。
- アイナボとの統合の条件が、双方の企業価値を保つ比率で決まり、物流の共同化の効果額が出たら
- 統合のプラスを中立に織り込む。効果額が小さければ、織り込まない。
- 新設住宅の着工が大きく落ち、住宅設備機器類の出荷が 2 割以上減ったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 仕入先からのリベート(営業外収益)が前年から 2 割以上減ったら
- 経常利益の質が下がったと見る。純利益の前提を下げる。
- 配当性向を 30% から明確に引き上げ、自社株買いを始めたら
- 自己資本の積み上がりが止まり、ROE が改善する。中立の ROE と倍率を上げる。
- メーカーが主力製品を直販に切り替える動きが出たら
- 中抜きが始まったと判断し、悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 営業利益率と、営業外収益(リベート等)の水準
- 新設住宅着工とリフォーム需要の動き
- アイナボとの統合条件・時期・効果額
- 物流費・人件費の転嫁(粗利率の動き)
- 配当性向と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
数量は品目ごとの出荷点数・セット数・台数の推定(平均売上を仮定)、価格は 1 点あたり売上の名目値(物価 10 年 1.34 倍が基本)で、今の株価から逆算していない。営業利益はセグメント開示がなく全社 25 億円を按分した。倍率は利益ベース。事業の ROE は中立で約 6% と資本コスト 7.75%(基本 7.5% + quality 1.0%)を下回り、正当化 PER の上限は 1÷k の 11.8 倍で、中立はその 7.6 割の 9.0 倍に置いた。今の PER(約 9 倍)に寄せたわけではなく、ROE が k 未満の会社に置く上限から決めた。営業外収益(リベートなど)は売上に比例して増えるとし、営業利益 25 億円と経常利益 35 億円の差の 10 億円を、売上比例で伸ばした。悲観の床は総資産の回収と負債の全額払いで置き、過去の PBR の底は使っていない。統合は条件が未発表のため単独で測り、上と下の筋書きに少しずつ織り込んだ。物流センターなどの減価償却は、物価で増やさず新設分だけ加わるとして利益率に含めた(額は未確認)。新リース会計の影響は、営業所・倉庫の賃借の規模が未確認で、今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。理由は quality_why。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。