結論
アルファパーチェスは、大企業が工場や事務所で使う消耗品や部品、つまり間接材の購買を請け負う会社だ。筆者の結論は、値段はやや安いというものだ。解約がほぼなく、売上の8割が大企業という安定した収益構造を持ち、現金も厚い。
仕組みは単純だ。顧客の購買システムに、同社のカタログを組み込む。顧客の社員がそこで注文すれば、同社が仕入れて納める。一度組み込まれた顧客は離れにくく、大企業向けの解約率はほぼゼロだ。
伸びの余地は大きい。大企業向けの市場は1兆円ほどで、同社が取れているのはごく一部だ。会社は2029年12月期に売上1,000億円、営業利益率3.5%を目指す。筆者は、そこまで届かなくても、10年で利益が今の2倍近くになると見る。
気になるのは、親会社のアスクルだ。議決権の6割を持ち、売上の1割強と仕入の6%を握る。そのアスクルが2025年にサイバー攻撃を受け、大きな赤字を出した。親会社の事情が少数株主にどう響くかが、この株のいちばんの不確かさだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「地味だが、利益が積み上がる仕組み」を持つ。顧客の購買システムに入り込み、解約がほぼない。投下する資本は小さく、ROEは15%前後。10年のあいだ、手元の現金を使い込む必要もない。
ただ、利益率が薄いので、同じ取引の量でも、値引き要求や仕入れ値の変動で利益が大きく振れる。ここが、モノタロウのような高い利ざやの会社との違いだ。
もう一つの条件は、親会社との関係だ。持ち分の売却や吸収は、少数株主にとって有利にも不利にもなる。筆者は、そこは割り引いて見るべきだと考える。
それでも、現金が厚く、借金がなく、解約がほぼない会社が、利益の13倍ほどで買えるなら、安全域はある。10年の筋書きでは、中立で利益が今の1.7倍になる。持ち続けたいと思える事業だ。ただし、確信は親会社の動き次第で変わる。
何で稼ぐ会社か
事業の柱は、間接材の購買代行(MRO)だ。MROとは、工場の消耗品や工具、事務所の備品など、製品の原価に入らない物品のことをいう。同社は、顧客企業の購買システムに自社のカタログを載せ、社員の注文を取りまとめて納める。売上の約7割強がこの事業で、そのうち8割以上は大企業向けだ。
顧客は、トヨタ自動車、ソニー、関西電力、三菱地所といった大手だ。月に1,000万円以上買う企業グループが41、100万〜1,000万円のグループが44ある(2024年通期)。2025年は新しい大口を5〜6社取る目標を掲げた。
2024年に始めた「無限カタログ」は、顧客が探す商品を、同社が勧める商品に自動で置き換える仕組みだ。顧客は探す手間が減り、同社は粗利の高い商品を売れる。
もう一つの柱は、ファシリティ・マネジメント(FM)事業で、商業施設やホテルの改装、保守を請け負う。売上は約140億円で、大口顧客数社への依存が高く、改装の時期で売上が揺れる。2026年12月期の予想は売上653億円、営業利益16.5億円、純利益11.3億円だ。ただし事業ごとの数字は、決算の部分的な開示から組み立てた推定を含む。
優良さと弱いところ
優良さは、収益の安定にある。大企業の購買システムに組み込まれると、他社に切り替える手間が大きい。解約率がほぼゼロなのは、そのためだ。堀、つまり他社がまねしにくい強みは、普通より少し強い。
ただし、儲けの厚みは薄い。営業利益率は2%台で、商品の仕入れ値に少しの利ざやを乗せる商売だ。価格交渉の相手は大企業で、値上げは簡単には通らない。利益が伸びるのは、取引量が増えるからで、利ざやが広がるからではない。
資本効率はよい。ROEは15%前後で、借金はほぼなく、在庫も軽い。稼ぎの3割を配当に回し、残りを成長のためのシステムと人材に投じている。
弱みは親会社だ。アスクルが売上の12%強を占め、サイバー攻撃の時には、同社の売上予想を約24億円引き下げるほどの影響があった。さらに、購買を請け負う仕事は、将来、AIが自動で最安値の仕入先を探す時代になれば、中抜きされる恐れもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の間接材の購買は、いまも多くの企業で人の手作業が残る。工場や事務所ごとに、バラバラの仕入先から買う。これをまとめて、安く、手間なく買う需要は大きい。大企業向けの市場は1兆円ほどと同社は見る。
競争相手は、三つに分かれる。一つはモノタロウやミスミのような、通販型の専門商社だ。品ぞろえと配送の速さで強い。二つめは親会社のアスクルで、オフィス用品を軸にした大手だ。三つめはアマゾンビジネスのような、巨大な通販だ。
同社の立ち位置は、通販ではなく、顧客の購買の仕組みそのものを請け負う側にある。顧客の業務に深く入り込むので、商品の値段だけでは比べられない。この点で、モノタロウとは少し違う商売だ。
物価が年3%で上がる世の中では、間接材の支出額も名目で増える。人手不足も、購買の担当を減らして外に出す動機になる。ただし、AIが購買を自動化する時代には、請負の価値が薄れる面もある。購買の担当者が足りない大企業ほど、外に出す動機は強く、そこが同社の追い風になる。工場の海外移転で国内の消耗品の量が減る逆風も、10年では見ておく必要がある。
資本政策と M&A
資本政策は、親会社のアスクルが議決権の61.4%を握る親子上場だ。少数株主にとっては、親会社の都合で資本が動く余地があることを意味する。アスクルは2026年5月期に大きな営業赤字を出しており、財務に余裕がない。
還元は、配当性向3割が方針だ。2025年12月期は前の期から増配し、創業25周年の記念配当を含む。自社株買いはほとんどしていない。現預金は50億円ほどあるが、その多くは、顧客から入る代金と仕入先への支払いの間に生じる資金で、全部が余った現金ではない。
借入はほぼない。成長のための投資は、システム開発と人材の採用が中心で、大きなM&Aは行っていない。FM事業の工事部門は、2024年に子会社として分けた。
アスクルが同社を完全子会社にする、あるいは持ち分を売る可能性は、どちらもゼロではない。ただし、時期も条件もわからないため、本質価値の計算には入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
購買の請負は、1兆円の市場のごく一部しか取れていない。大企業向けの解約はほぼゼロで、新しい大口を毎年5社取れば、売上は複利で伸びる。会社は2029年12月期に売上1,000億円、営業利益率3.5%を目指している。
「無限カタログ」で、顧客が選ぶ商品を同社の推奨品に置き換える仕組みが働き始めた。粗利率が上がれば、営業利益率の目標も届く。
ITと人材への投資は先行しているが、借金はなく、現金で賄える。ROEは20%を目標にしている。配当性向は3割で、利益が伸びれば配当も伸びる。
アスクルのサイバー攻撃の影響は一時的で、売上の戻りは2026年に入って出ている。値段は、成長の割に控えめだ。新社長はCTO出身で、システムを強みに顧客の購買の中へ深く入る戦略を取っている。解約がほぼないという事実は、他の卸にはない強みだ。10年の複利の力を、今の値段は十分に織り込んでいない。現金も、年間の利益の5倍近くある。
慎重な見方
利益率が2%台と薄い会社が、親会社の事情に引きずられている。アスクルは売上の12%強、仕入の6%を占める。そのアスクルが大きな赤字に陥り、持ち分の売却や吸収の話が出る可能性がある。
大企業の購買は、アマゾンビジネスやモノタロウが、直接取りに来ている。AIが購買を自動化すれば、請負の手間賃は薄くなる。
FM事業は、大口顧客数社に頼り、改装の時期次第で利益が大きく振れる。2026年上半期は、売上が23%増えても利益が減った。
会社の目標は、2024年に示した売上1,000億円の達成を2030年から2029年に前倒ししたもので、実績は遅れている。計画どおり進まない前提で見るべきだ。利益率が薄い請負は、値引き要求一つで稼ぎが消える。市場が利益の13倍ほどにとどめているのは、この不確かさを見ているからだ。安く見えるのには理由がある。配当の増加も、親会社が求める水準次第で変わる。購買の請負は、顧客が自前で最適化できるようになれば、いつでも外されうる。
どちらに重みを置いたか
事業の安定と現金の厚さを評価し、中立と、やや楽観の確率に厚みを置いた。ただし、親会社への依存とAIによる購買の自動化は、悲観側の確率に反映した。計画の達成の遅れは、楽観の確率を8%にとどめる理由にした。強気の見方の中心である解約の無さは、そのまま信じてよい。慎重な見方の中心である親会社の事情は、実際に起きた出来事なので、軽く扱えない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,581 円355 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 455 円45 億円)。 今の値に割り戻すと 2,145 円213 億円、今との差 +57.0%、 期待の年率 +11.4%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 7,765 円770 億円 | 756 円75 億円 | +523.8% | +20.1% | 682 円68 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,411 円536 億円 | 573 円57 億円 | +338.1% | +15.9% | 1,316 円130 億円 |
| 中立 | 38% | 3,893 円386 億円 | 472 円47 億円 | +219.6% | +12.3% | 1,659 円164 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,148 円114 億円 | 324 円32 億円 | +7.7% | +0.7% | 324 円32 億円 |
| 悲観 | 10% | 372 円37 億円 | 175 円17 億円 | −60.0% | −8.7% | 55 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,581 円355 億円 | 455 円45 億円 | +195.4% | +11.4% | 4,036 円400 億円 |
今の株価時価総額 1,366 円135 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 大口の獲得が続き、利益率が目標に届く 利益 35 億円 · PER 21.5 倍 · 株価時価総額 7,765 円770 億円
大企業向けの取引は、10年で大口の数がほぼ倍の約175グループ換算になる。無限カタログの置き換えが広がり、1グループあたりの購入額は物価を上回って伸びる。営業利益率は3.7%と、会社の目標3.5%を上回る。FM事業も、改装需要が新築から改修へ移る流れを取り込み、2.6%の利益率に上がる。借金のない財務で、配当性向は35%に上がり、自社株買いも再開する。親会社アスクルは回復し、持ち分の整理も不利益なく進む。ただし、利益率が3%台後半まで上がる姿は、薄利の請負として楽観の上限で、これ以上は見ない。配当は利益とともに増え、10年の還元は今の時価総額の4割近くに達する。
- MRO事業(間接材の購買代行):数量 175(大企業グループ換算の取引数(中小事業所は大企業グループ 1 あたりの売上で換算))× 価格 6.80(1グループ換算あたりの年間売上(億円))→ 売上 1,190 億円・営業利益 44 億円。175グループ換算×購入額1.15倍・営業利益率3.7%
- FM事業(施設の改装・保守):数量 120(工事・保守の取扱量の指数(今を100))× 価格 1.86(指数 1 あたりの売上(億円))→ 売上 224 億円・営業利益 6 億円。工事量指数120・営業利益率2.6%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.5 倍。全体の PER 21.48 倍、時価総額 750 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画どおり新しい大口が毎年増え、無限カタログの効果で利益率が上がる必要がある。大企業向けの解約がほぼ無い強みはあるが、会社は計画の達成年を前倒しにしながら実績が遅れ気味で、確率は1割弱に抑えた。
やや楽観 22% 大口が増え、利益率が少し上がる 利益 25 億円 · PER 20.7 倍 · 株価時価総額 5,411 円536 億円
大口は年3〜4社のペースで増え、10年で約145グループ換算になる。中小事業所向けは縮むが、大企業向けが穴を埋める。1グループあたりの購入額は物価並みを少し上回る。営業利益率は3.3%まで改善し、会社の目標3.5%には届かない。FM事業は改修需要で売上が伸びるが、利益率は2%台前半にとどまる。アスクルの影響は2026年中に消える。配当性向は3割強を保ち、借入は今後も持たない。計画の売上1,000億円は、2030年代の初めにずれ込んで達成する。大口の解約は起きず、収益の安定は保たれる。無限カタログは広がるが、顧客が値引きを求める力も強く、利ざやの改善は緩やかだ。
- MRO事業(間接材の購買代行):数量 145(大企業グループ換算の取引数(中小事業所は大企業グループ 1 あたりの売上で換算))× 価格 6.39(1グループ換算あたりの年間売上(億円))→ 売上 926 億円・営業利益 31 億円。145グループ換算×購入額1.08倍・営業利益率3.3%
- FM事業(施設の改装・保守):数量 110(工事・保守の取扱量の指数(今を100))× 価格 1.86(指数 1 あたりの売上(億円))→ 売上 205 億円・営業利益 5 億円。工事量指数110・営業利益率2.3%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.7 倍。全体の PER 20.73 倍、時価総額 512 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:大口の獲得は年3〜4社でも十分に積み上がる。解約が無い収益と、無限カタログの手応えから、この筋書きは強気と慎重のどちらから見ても現実的な範囲に入る。
中立 38% 着実に伸び、利益率は少しだけ上がる 利益 18 億円 · PER 20.0 倍 · 株価時価総額 3,893 円386 億円
大企業向けは約125グループ換算まで増え、取引量は年2%ほどの実質で伸びる。物価の分、購入額は10年で1.34倍になる。営業利益率は、無限カタログと規模の効果で、今の2.5%から3.0%へ少し上がる。FM事業は、改修需要を取り込んで工事量が横ばいを保ち、利益率は1.9%の水準にとどまる。中小事業所向けの売上は細る。人件費は物価で上がるが、システム投資の償却が一段落して吸収できる。配当性向は3割で、借入は持たない。親会社アスクルとの関係は、仕入と売上の依存を残したまま続く。10年の間に、アスクルの回復で取引が戻り、サイバー攻撃の影響は消える。大きな買収や出資は行わず、現金は運転資金と配当に使われる。
- MRO事業(間接材の購買代行):数量 125(大企業グループ換算の取引数(中小事業所は大企業グループ 1 あたりの売上で換算))× 価格 5.91(1グループ換算あたりの年間売上(億円))→ 売上 739 億円・営業利益 22 億円。125グループ換算×購入額1.0倍・営業利益率3.0%
- FM事業(施設の改装・保守):数量 100(工事・保守の取扱量の指数(今を100))× 価格 1.86(指数 1 あたりの売上(億円))→ 売上 186 億円・営業利益 4 億円。工事量指数100・営業利益率1.9%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.3% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.0 倍。全体の PER 19.97 倍、時価総額 360 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の見方(大口の獲得と解約の無さ)と慎重な見方(利益率の薄さと親会社の事情)の落としどころ。売上は年7%ほどの名目で伸び、利益率は3%に少し上がる姿を最も確からしいと置いた。
やや悲観 22% 中抜きが進み、利益率が伸び悩む 利益 10 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,148 円114 億円
大企業向けは新しい大口を取れても、既存顧客が一部を通販に切り替え、10年で95グループ換算に縮む。1グループあたりの購入額は物価に届かず、利益率も2.2%に下がる。FM事業は大口顧客の改装が減り、工事量は15%落ちる。親会社アスクルの業績は戻らず、仕入と売上の取引条件が不利になる。配当性向は3割強を保つが、配当の額は据え置きに近い。借金は持たないので倒れないが、成長の物語は終わる。FM事業の改装需要は景気に左右され、利益の振れ幅が大きくなる。顧客の購買担当は、通販の価格を基準に値引きを求め、請負の手数料が圧縮される。会社は存続するが、利益は今の水準をわずかに下回る。
- MRO事業(間接材の購買代行):数量 95.0(大企業グループ換算の取引数(中小事業所は大企業グループ 1 あたりの売上で換算))× 価格 5.73(1グループ換算あたりの年間売上(億円))→ 売上 545 億円・営業利益 12 億円。95グループ換算×購入額0.97倍・営業利益率2.2%
- FM事業(施設の改装・保守):数量 85.0(工事・保守の取扱量の指数(今を100))× 価格 1.86(指数 1 あたりの売上(億円))→ 売上 158 億円・営業利益 2 億円。工事量指数85・営業利益率1.4%
倍率:事業の ROE 7.2%(純利益 ÷ 自己資本)。RONIC = 7.5 + 1/2 ×(7.2 − 7.5)= 7.4%、g 4.0% から正当化 PER = 13.1 倍。利益の質が落ち、上限の約 6.9 割、9.0 倍に置いた。
確率:大企業の購買は、通販大手が直接取りに来ており、AIが最安値の仕入先を自動で探すようになれば、請負の価値は薄まる。値引き圧力が強まる筋書きは、十分にあり得る。
悲観 10% 購買がAIと通販に置き換わり、請負が細る 利益 3 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 372 円37 億円
AIが仕入先の探索と発注を自動で行うようになり、大企業が購買の請負を外す。取引は60グループ換算に減り、1グループあたりの購入額も物価に届かない。利益率は1.2%まで落ち、FM事業も大口顧客の離脱で縮む。親会社アスクルは財務が苦しく、持ち分を売却するか、少数株主に不利な形で整理する。会社は残るが、請負の手数料だけでは稼げなくなる。価値は稼ぐ力ではなく、手元の純現金で測られる。配当は性向3割を守れず、据え置き以下に縮む。上場を維持する意義が薄れ、親会社が少数株主に低い価格で買い取りを迫る可能性もある。
- MRO事業(間接材の購買代行):数量 60.0(大企業グループ換算の取引数(中小事業所は大企業グループ 1 あたりの売上で換算))× 価格 5.32(1グループ換算あたりの年間売上(億円))→ 売上 319 億円・営業利益 4 億円。60グループ換算×購入額0.9倍・営業利益率1.2%
- FM事業(施設の改装・保守):数量 70.0(工事・保守の取扱量の指数(今を100))× 価格 1.86(指数 1 あたりの売上(億円))→ 売上 130 億円・営業利益 1 億円。工事量指数70・営業利益率0.8%
倍率:ROE が k を下回り、稼ぐ力は小さい。売れる資産の税後(純現金の約3分の2)を床とみて、今の自己資本 67 億円に PBR 0.55 倍を掛けた。中立より低い。
確率:大企業の購買をAIが自動化し、通販大手が直取引で取り込む複合の筋書き。親会社の整理が少数株主に不利に働く可能性も重なる。請負の仕事が丸ごと置き換わる例はIT分野で実際にあり、無視しない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
MRO事業(間接材の購買代行)
大企業・中小事業所の間接材の購買を、カタログとシステムで請け負う。
| 数量大企業グループ換算の取引数(中小事業所は大企業グループ 1 あたりの売上で換算) | 価格1グループ換算あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 102 | 4.41 | 450 | 12 |
| 10 年後 中立 | 125 | 5.91 | 739 | 22 |
取り方:2025年12月期の売上589億円のうち、MROを約450億円(2024年412億円から約9%増の推定)とした。うち大企業グループは約85(月100万円以上購入の41+44)で375億円、中小事業所は約75億円で、これを大企業グループ 1 あたり4.4億円で割った約17グループ換算を足して102とした。営業利益は2025年9カ月の開示を年換算した推定。
FM事業(施設の改装・保守)
商業施設やホテルの改装工事、保守を請け負う。大口数社への依存が高い。
| 数量工事・保守の取扱量の指数(今を100) | 価格指数 1 あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 1.39 | 139 | 3 |
| 10 年後 中立 | 100 | 1.86 | 186 | 4 |
取り方:2024年12月期のFM売上146億円・利益3.9億円から、2025年はアスクル停止による9億円の減と改装の先送りで139億円・利益2.7億円(推定)とした。件数などの開示は無く、取扱量を指数で置いた推定。
リスクと懸念
親会社アスクルの事情
アスクルが議決権の61%を持ち、売上の12%強と仕入の6%を占める。2025年のサイバー攻撃で、同社の売上予想は約24億円引き下げられた。アスクルは財務に余裕がなく、持ち分の整理や吸収が少数株主に不利な条件で行われる恐れがある。
購買のAI自動化と中抜き
AIが最安値の仕入先を探して発注まで行う時代になれば、購買代行の価値は薄まる。モノタロウやアマゾンビジネスが大企業の購買を直接取りに来ている。利益率が薄い請負は、手数料の圧力に弱い。
大口顧客数社への依存
FM事業は大口数社に頼り、改装の時期で売上と利益が大きく揺れる。2026年上半期は、売上が23%増えても利益が減った。MRO事業でも、大企業向けは売上の8割を占める。
利益率の薄さ
営業利益率は2%台で、仕入れ値と販売価格のわずかな差が利益だ。人件費やシステム投資が物価を上回って増えると、利益は小さな変動でも大きく動く。
計画の達成の遅れ
会社は2029年12月期に売上1,000億円、営業利益率3.5%を目指すが、2025年12月期の売上は当初予想を下回った。目標年の前倒しを重ねており、実績が追いつくかは確かでない。
株式の流動性
アスクルが6割を持つため、市場に出回る株は少ない。売買は薄く、親会社の判断で株主の立場が大きく変わる。
今後の分かれ目
- 月1,000万円以上購入の企業グループが50を超え、営業利益率が2.8%を超えたら
- 楽観・やや楽観の筋書きに重みを移す。大口の獲得と無限カタログの効果が数字に出た合図だ。
- アスクルが持ち分の売却や吸収を発表したら
- 価格と条件が焦点になる。少数株主に不利な条件なら、悲観側へ重みを移す。
- FM事業の営業利益が2期続けて減ったら
- 大口顧客への依存の重さが表に出たとみて、中立の利益率を引き下げる。
- 大企業の購買をAIで自動化する事業者が、同社の顧客を取り始めたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 配当性向が3割を超えて引き上がり、自社株買いが始まったら
- 資本の使い方が株主向きに動いたとみて、確率を楽観側へ寄せる。
見ておくもの
- 月1,000万円以上購入の企業グループ数と新規獲得数
- MRO事業の売上総利益率(無限カタログの効果)
- FM事業の営業利益
- アスクルの持株比率と財務、整理の動き
- 配当性向と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
大企業グループ換算の取引数を数量、1グループあたりの売上を名目の価格として積み、利益率は競争と規模の効果から出した。倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限(k 7%、g 4.0%、RONIC=k+1/2×(ROE−k))の約9割に置いた。今の株価や同業のPERは、倍率の根拠にしていない。会社の中期目標(売上1,000億円)は参考にとどめ、達成の遅れを織り込んで中立を置いた。純現金は買掛金の見合いと親子上場を考えて、余った現金とは分けなかった。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.4→21.48 倍・やや楽観 PER 13.4→20.73 倍・中立 PER 14→19.97 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。