結論
大水は、大阪市中央卸売市場で水産物を集めて売る大卸、いわゆる荷受の会社だ。筆者の結論は、今の値段は価値をやや上回る、である。売上は 1,000 億円を超えるが、営業利益は 9 億円で、利益率は 1% に届かない。
魚の量は人口と魚離れで細る。その分を魚価の上昇が補い、売上は横ばいで保てる。ただ手数料のように売上に比例して稼ぐ商売なので、利益は物価並みにしか伸びない。
自己資本は 120 億円を超えるが、その多くは取引先の株と売掛金・在庫で、稼ぎに比べて重い。ROE は 5% 前後で、資本コストの 8.5% に届かない。ニッスイが 3 割強を持つ持分法の会社で、余ったお金が株主に戻る力も強くない。
2026 年 5 月に発行済株式の 1 割強を自社株買いした点は評価できる。だが一度きりの買い戻しで、還元の方針そのものはまだ弱い。
筆者は、つぶれにくい事業だが、株主が受け取れる利益は細いと見る。10 年の価値は、今の値段を少し下回る所に落ち着く。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い会社」ではなく「つぶれにくい会社」だ。
大阪の魚市場の大卸という座は、許可制に守られて 10 年後も残る。関西の食卓に魚を届ける機能は、誰かが担わなければならない。だから事業が消える心配は小さい。
だが株主のものになる利益は少ない。営業利益率 1% の商売で、売掛金と在庫に資本を寝かせる。稼いだ利益の多くは運転資金と取引先の株に回り、配当は 1 割台しか出ない。ROE が資本コストを下回り続ける以上、ためた利益は帳簿の額ほどの価値を生まない。
安全域は帳簿の上では厚く見える。PBR は 0.4 倍前後だ。ただ帳簿の自己資本の多くは、売れば値の下がる在庫と、売りにくい取引先の株である。筆者は、払う値段と価値がほぼ釣り合っており、安全域は見かけほど厚くないと見る。
何で稼ぐ会社か
事業は水産物の販売が売上のほぼすべてで、冷蔵倉庫がわずかに加わる。
柱は大阪の本場と東部市場での荷受だ。全国の漁港と輸入業者から鮮魚、冷凍魚、塩干物を集め、仲卸や量販店、外食に売る。マグロ、タイ、ブリなどの養殖魚と、サケ・サバなどの塩冷品が多い。市場の取引は手数料の率が決まっており、薄く広く稼ぐ。
市場の外の取引も育ってきた。海外向けの冷凍サバや、国内の加工メーカー向けのすり身の販売が好調で、2026 年 3 月期の増益を支えた。市場外は値段を交渉で決められる分、利益率が少し高い。
冷蔵倉庫は売上 3 億円弱で、保管料の値上げで利益が出始めた段階だ。全社の費用 1.6 億円を差し引くと、営業利益は 9 億円になる。
売掛金と在庫、輸入の前払いが大きく、借入でそれを賄う。運転資金の重い商売である。株主ではニッスイが 3 割強、極洋が 1 割弱を持ち、水産大手との取引の結び付きは強い。
売上の大きさに比べて利益が小さいのは、荷受の宿命だ。売上のうち、手元に残る営業利益は 1% に満たない。量が少し減るか、費用が少し増えるだけで、利益は大きく動く。
優良さと弱いところ
大水の強みは、関西最大の魚市場で大卸の座を持つことだ。市場の卸は開設者の許可制で、新しく入るのは難しい。関西の量販店と外食にとって、まとまった量の魚をそろえる窓口であることは変わらない。
ただ、それは値段を決める力にはならない。魚の値段は水揚げと輸入の相場で決まり、卸は手数料と小さな売買差益を取るだけだ。営業利益率は過去 12 年で 1% を超えたことが無い。
資本の効率も低い。売掛金と在庫で 150 億円近くを寝かせ、取引先の株を 50 億円近く持つ。ROE は良い年でも 10% 程度、ならせば 5〜6% にとどまる。
2026 年 5 月の大きな自社株買いは、資本を絞る意思を見せた。配当性向が 1 割台と低いままなのが、今後の課題である。
経営の評価は分かれる。直近 3 年の改善は本物だが、相場の追い風に助けられた面もある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
水産物の流通は、量が細り、値段が上がる構図にある。国内の魚の消費は人口減少と魚離れで減り続ける。一方、魚価は資源の減少、海水温の上昇による不漁、世界の需要の増加、円安で上がる。
市場を通る魚の割合も下がっている。大手の量販店は産地や輸入業者から直接仕入れ、市場を飛ばす。卸売市場法の改正で取引の決まりが緩み、卸どうしの競争と、市場外の取引が広がった。
関西でも事情は同じだ。大阪の本場の水産物の取扱いは長く減ってきた。大水の売上は 10 年で約 2 割減った。2022 年 3 月期にはコロナ禍で外食が止まり、赤字になった。
同業の荷受は、豊洲の中央魚類や築地魚市場、横浜丸魚、名古屋・大阪の OUG ホールディングスなどだ。どこも利益率は 1〜2% と薄い。生き残る道は市場外の取引、輸出、加工、冷蔵倉庫といった周辺の機能を厚くすることで、大水もその道を進む。
物流費と人件費の上昇は、薄い利益をさらに削る。それを手数料と販売価格に移せるかが、10 年の分かれ目になる。筆者は、業界の量は 10 年で 1 割前後減ると見る。
資本政策と M&A
配当は 2026 年 3 月期に総額 0.95 億円、配当性向は 13% と低い。会社は来期も同額を予想する。
その代わり、2026 年 5 月に発行済株式の約 1 割にあたる 143 万株を、立会外の取引で 5.4 億円かけて買い戻した。大株主の売りを会社が受け止めた形とみられる。株主優待は無い。
ニッスイが 31.6% を持つ持分法の会社で、極洋も 8.7% を持つ。水産大手が荷受を囲う形は、取引の安定には効くが、余ったお金を株主に戻す圧力を弱める。10 年で溜まる現金の戻り方は、配当と一度の買い戻しの実績から 0.75 とした。
ニッスイが残りを買い取って非上場にする道はありうる。ただ具体的な動きは無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
大水は過去 3 年で稼ぐ力を確実に上げた。営業利益は 2023 年 3 月期の 4 億円から 9 億円へ倍増し、利益率は過去最高の 0.9% に届いた。市場外の輸出と加工向けが伸び、構造が変わり始めている。
世界の魚の需要は伸び、日本のサバやイワシは海外で売れる。円安が続くなか、輸出の窓口を持つ卸は強い。すり身など加工メーカー向けの取引も厚くなった。
資本の使い方も変わった。2026 年 5 月に発行済株式の 1 割強を買い戻した。PBR 0.4 倍での買い戻しは、残る株主の価値を大きく高める。
ニッスイ、極洋という水産大手が株主にいることは、集荷の安定と、将来の再編で有利に働く。大株主が残りを買い取る時は、資産の厚みに見合った値段が付くはずだ。投資有価証券 50 億円近くと、純資産 120 億円を超える会社が、時価総額 50 億円前後で売られている。
関西の中小の卸は後継者難で退いていく。残った大卸に集荷が集まり、量の減りは業界ほど大きくならない。
慎重な見方
利益率 0.9% は山であって、平らな地ではない。来期の会社予想は営業利益 8 億円と減益だ。過去 12 年で利益率が 1% を超えたことは一度も無く、2022 年 3 月期は赤字だった。不漁と相場の振れで、利益は簡単に半分になる。
市場を通る魚は細り続ける。量販店の直接仕入れが広がり、大阪の本場の取扱量は長く減っている。売上は 10 年で 2 割減った。魚価の上昇がそれを隠しているにすぎない。
資本は重い。売掛金と前払い、在庫が増え、短期借入が 10 億円増えた。金利が上がれば、薄い利益はさらに削られる。
投資有価証券は取引先の株で、売れば取引に響く。売らない株の含み益は、少数株主の役に立たない。ニッスイは 3 割強を持ちながら、残りを買い取る動きを見せていない。配当性向 1 割台の会社の帳簿の現金は、株主から遠い。
直近の増益も、サンマとイカの水揚げの回復と、円安による輸入魚の値上がりに助けられた面が大きい。追い風が止めば、利益は元の 4〜5 億円に戻る。
どちらに重みを置いたか
利益率の低さと市場経由の取引の縮みは、具体的な数字で裏付けられ、慎重な見方がやや強い。一方、市場外の伸びと自社株買いは、悲観の底を浅くする。確率は中立を 38% に置き、やや悲観と悲観を合わせて 35%、やや楽観と楽観を合わせて 27% とした。同じ荷受の中央魚類と同じ物差しで、確率の配分もほぼそろえた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 787 円96 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 98 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 431 円53 億円、今との差 +13.1%、 期待の年率 +8.8%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,275 円156 億円 | 139 円17 億円 | +271.1% | +14.0% | 99 円12 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,058 円130 億円 | 122 円15 億円 | +209.8% | +12.0% | 236 円29 億円 |
| 中立 | 38% | 921 円113 億円 | 110 円14 億円 | +170.7% | +10.5% | 392 円48 億円 |
| やや悲観 | 23% | 484 円59 億円 | 73 円9 億円 | +46.2% | +3.9% | 128 円16 億円 |
| 悲観 | 12% | 204 円25 億円 | 41 円5 億円 | −35.6% | −4.3% | 29 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 787 円96 億円 | 98 円12 億円 | +132.2% | +8.8% | 885 円108 億円 |
今の株価時価総額 381 円47 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 輸出と加工の窓口になり、利益率が 1% を超える 利益 12 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,275 円156 億円
世界の魚の需要が伸び、日本のサバやイワシ、養殖のブリやタイが海外で売れ続ける。大水は輸出と、加工メーカー向けのすり身の窓口として存在感を増す。
市場の荷受も、関西の中小の卸が退く中で集荷を集め、取扱量は今と同じ水準を保つ。魚価は物価をやや上回って上がる。市場外の比率が上がり、利益率は 1% を超えて定着する。
冷蔵倉庫も値上げが通る。配当性向は上がり、自社株買いも続く。それでも ROE は資本コストに届かず、倍率は上限の 1÷k に近い所で止まる。
大株主のニッスイとの取引も厚くなり、集荷の安定が利益の振れを小さくする。
- 水産物販売(市場・市場外):数量 140(取扱数量(千トン・推定))× 価格 10(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 1,456 億円・営業利益 17 億円。14 万トン(横ばい)× 単価 1.38 倍、利益率 1.15%
- 冷蔵倉庫等:数量 22.0(保管能力(千トン・推定))× 価格 0.20(1 千トンあたり年間売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。保管 2.2 万トン × 1.4 倍、利益率 10%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 146 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場外の輸出・加工向けが伸び続け、利益率が過去の山を超える姿。過去 12 年に 1% を超えた年が無いので 7%。
やや楽観 20% 市場外が育ち、利益率 1% 前後を保つ 利益 9 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,058 円130 億円
大阪の本場の取扱量は少しずつ減るが、市場外の輸出と加工向けがそれを埋める。魚価は物価並みに上がり、売上は名目で 2 割強増える。
利益率は 1% 前後で落ち着く。人件費と物流費は上がるが、手数料と売値の改定で追いつく。冷蔵倉庫は保管料の値上げで利益を足す。
借入は運転資金の範囲にとどまり、取引先の株も持ち続ける。配当性向は少し上がる。ROE は 5% 前後で、資本コストには届かない。
直近 3 年の改善が実力だったことになり、利益は物価をやや上回って伸びる。
経営は運転資金を絞り、借入を増やさずに回す。ニッスイとの取引も安定し、相場が荒れた年でも赤字にはならない。
- 水産物販売(市場・市場外):数量 133(取扱数量(千トン・推定))× 価格 10(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 1,363 億円・営業利益 14 億円。13.3 万トン(0.95 倍)× 単価 1.36 倍、利益率 1.0%
- 冷蔵倉庫等:数量 21.0(保管能力(千トン・推定))× 価格 0.20(1 千トンあたり年間売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。2.1 万トン × 1.36 倍、利益率 9%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 117 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近 3 年の改善(営業利益 4 億円→9 億円)が大きく崩れず続く姿。来期は減益予想で、2 割にした。
中立 38% 量は 1 割減り、魚価が補う。利益は物価並み 利益 8 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 921 円113 億円
大阪の市場を通る魚は 10 年で 1 割減る。市場外の取引は伸びるが、量販店の直接仕入れの広がりを埋めきれない。魚価は物価並みに上がり、売上は名目で 2 割増える。
利益率は 2026 年 3 月期の山よりわずかに下の 0.9% に落ち着く。全社の費用は物価で増える。税は通常の率に戻り、純利益は 8 億円前後になる。
配当性向は 1 割台のまま、自己資本は積み上がる。ROE は 4% 台に下がり、資本の重さが続く。ニッスイとの関係は変わらず、再編も起きない。
事業は安定して残るが、株主から見れば重い資本の上に薄い利益が乗る会社のままだ。
- 水産物販売(市場・市場外):数量 126(取扱数量(千トン・推定))× 価格 10(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 1,273 億円・営業利益 11 億円。12.6 万トン(0.9 倍)× 単価 1.34 倍、利益率 0.9%(2026/03 期の 0.98% の山より下)
- 冷蔵倉庫等:数量 20.0(保管能力(千トン・推定))× 価格 0.19(1 千トンあたり年間売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。2 万トン × 1.34 倍、利益率 8%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 96 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:魚の消費の減少と市場経由の縮みを、魚価の上昇と市場外の伸びが補う姿。過去 10 年の流れに最も近いので 38%。
やや悲観 23% 市場離れが進み、利益率が薄くなる 利益 5 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 484 円59 億円
量販店と外食チェーンが産地と輸入業者から直接仕入れる流れが加速する。大阪の市場を通る魚は 2 割減り、大水の取扱量も同じだけ減る。
魚価は上がるが、量販店の値下げ圧力で物価には届かない。人件費と物流費の上昇を移しきれず、利益率は 0.7% に下がる。
金利の上昇で借入の利払いも増える。自己資本は積み上がるが、稼ぎは細り、ROE は 3% を割る。少数株主に戻るお金はわずかだ。
2026 年 3 月期の利益は山だったことが、数年のうちにはっきりする。
取引先の株は持ち続け、借入の返済にも還元にも回らない。資本の重さはそのまま残る。
- 水産物販売(市場・市場外):数量 112(取扱数量(千トン・推定))× 価格 9.65(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 1,081 億円・営業利益 8 億円。11.2 万トン(0.8 倍)× 単価 1.28 倍、利益率 0.7%
- 冷蔵倉庫等:数量 19.0(保管能力(千トン・推定))× 価格 0.17(1 千トンあたり年間売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。1.9 万トン × 1.2 倍、利益率 7%
倍率:ROE 2.8% は k 8% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)は PER 11.8 倍相当が上限で、利益が細る筋書きなので 7.5 倍。
確率:量販店の直接仕入れが加速し、取扱量が 2 割減る姿。過去 10 年で売上が 2 割減った実績から 23% と厚めにした。
悲観 12% 荷受の機能が細り、ほぼ利益が出なくなる 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 204 円25 億円
卸売市場を通さない流通が主流になる。大水の取扱量は 35% 減り、市場の施設と人の費用が重くのしかかる。
魚価は不漁で上がる年もあるが、量販店の力が強く、売値に移せない。利益率は 0.35% まで落ち、営業利益はほぼゼロになる。
残る価値は、取引先の株と冷蔵倉庫の資産だ。株を売れば取引に響き、売っても税がかかる。少数株主が資産の使い道を決めることはできない。
株主の価値は、取引先の株を売った税後の額から借入を引いた所まで落ちる。
ニッスイが荷受の機能を自社に取り込む再編も考えられるが、その時の値段は少数株主に有利とは限らない。
- 水産物販売(市場・市場外):数量 91.0(取扱数量(千トン・推定))× 価格 8.67(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 789 億円・営業利益 3 億円。9.1 万トン(0.65 倍)× 単価 1.15 倍、利益率 0.35%
- 冷蔵倉庫等:数量 18.0(保管能力(千トン・推定))× 価格 0.16(1 千トンあたり年間売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。1.8 万トン × 1.1 倍、利益率 5%
倍率:利益がほぼ消えるので PBR。今の自己資本 128 億円の 0.195 倍で、取引先の株の売却価値から純負債を引いた床にあたる。EV(時価総額+純負債 15 億円)÷営業利益は 57 倍と高いが、営業利益がほぼ消える筋書きのためで、価値は利益でなく資産の床で決まる。
確率:卸売市場を通さない流通が主流になり、取扱量が 35% 減る構造的な負けの姿。2022/03 期の赤字の実例から 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
水産物販売(市場・市場外)
大阪市中央卸売市場の本場・東部市場での荷受と、輸出・加工メーカー向けの市場外の販売。
| 数量取扱数量(千トン・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 140 | 7.54 | 1,055 | 10 |
| 10 年後 中立 | 126 | 10 | 1,273 | 11 |
取り方:水産物販売の売上 1,055.4 億円・セグメント利益 10.36 億円(2026/03 期短信)。数量は開示が無く、鮮魚・冷凍・塩干の平均を 1 トン約 75 万円と見て約 14 万トンと推定した(推定)。
冷蔵倉庫等
冷蔵倉庫での保管と荷役。
| 数量保管能力(千トン・推定) | 価格1 千トンあたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 0.14 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 0.19 | 4 | 0 |
取り方:売上 2.86 億円・利益 0.25 億円。保管能力は開示が無く約 2 万トンと推定し、1 トンあたり年 1.4 万円とした(推定)。
リスクと懸念
市場経由の取引の縮み
量販店の産地直送と輸入業者からの直接仕入れが広がり、卸売市場を通る魚は細る。大水の売上は 10 年で約 2 割減った。量が減っても市場の施設と人の費用は残り、利益率を押し下げる。
不漁と相場の振れ
海水温の上昇でカキ、ホタテ、ウニ、秋サケの入荷が不安定になっている。相場が急に動くと、在庫の評価と売買差益で利益が大きく振れる。2022 年 3 月期は赤字だった。
運転資金と金利
売掛金、在庫、輸入の前払いで 150 億円近くを抱え、短期借入で賄う。金利が 3.5% に上がると、利払いが営業利益の 1 割前後に膨らむ恐れがある。
物流費と人件費
トラックの運転手の残業規制と賃上げで、集荷と配送の費用が上がる。薄い利益率の商売では、転嫁が数か月遅れるだけで利益が消える。
大株主と少数株主
ニッスイが 3 割強、極洋が 1 割弱を持つ。取引の安定には効くが、余ったお金の使い道や再編の値段は、大株主の都合で決まりやすい。
新リース会計基準
2028/03 期から、借りている倉庫や設備がリース負債として載る。自己資本比率は下がって見えるが、価値の数字は変わらない。
今後の分かれ目
- 市場外の輸出と加工向けの売上が全体の 3 割を超える
- 利益率 1% 超えが定着する。やや楽観の確率を上げてよい。
- 営業利益が 2 年続けて 6 億円を割る
- 2026 年 3 月期の利益率は山だったことになる。やや悲観の確率を上げる。
- 配当性向を 30% 以上に上げるか、自社株買いを続ける方針が出る
- 溜まる現金の戻り方を 0.75 から 1.0 に上げてよい。
- ニッスイが残りの株を買い取る提案をする
- 資産の厚みに値段が付く可能性がある。ただ少数株主の取り分が公正かを確かめる。
- 取引先の株を売って借入を返す
- 資本が軽くなり ROE が上がる。倍率を一段上げる材料になる。
見ておくもの
- 大阪市中央卸売市場の水産物の取扱量と金額
- 市場外の売上の比率と利益率
- 短期借入金と運転資金の動き
- 配当性向と自社株買い
- ニッスイ・極洋の持株比率
- サンマ・サケ・ホタテの水揚げ
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト 8% と ROE から式で出した。どの筋書きも ROE が k を下回るので PER の上限は 1÷k の 11.8 倍で、楽観〜中立はその 7.5〜9 割に置いた。今の PBR 0.4 倍や同業の値付けは見ていない。悲観は稼ぐ力と、取引先の株の税後の売却価値から純負債を引いた床で置いた。2028/03 期からの新リース会計基準で負債の形が変わるが、10 年の数字は今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.5 倍・やや楽観 PER 9.6→12.5 倍・中立 PER 8.8→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足して 8.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。