結論
シモジマは、紙袋・ポリ袋・食品容器・ラッピング用品などの包装資材を、飲食店や小売店、工場、医療・介護の施設へ届ける専門商社である。営業担当、約 260 の店舗、通販サイトの 3 つで売る。筆者の結論は、堅い商売だが資本の稼ぎが資本コストに届かず、今の値段はやや割高、というものだ。
稼ぎの源は、小口の消耗品を細かく配る仕組みにある。顧客も商品も多く、1 社への依存が小さい。景気が悪くても売上は崩れにくい。営業利益率は 2022 年 3 月期の 0.1% から、直近は 5% 台まで戻った。
だが、市場は伸びない。国内の包装需要は人口とともに細る。ここ 4 年の増収は、値上げの定着と買収の効果が大きく、物量が増えたわけではない。筆者は、10 年後も数量はほぼ横ばいと置く。
会社は 2030 年 3 月期に売上 800 億円、営業利益率 6.5% を掲げる。方向は妥当だが、届くのは数年遅れると見る。兵庫県に約 150 億円の配送センターを建てるため、潤沢な現金は借入に変わる。
資本効率も弱い。自己資本比率は 8 割を超え、ROE は 7% 前後にとどまる。中立の筋書きでも、10 年後の時価総額と配当を合わせた年率は、資本コストを下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「手堅いが、オーナーとして持ちたい会社ではない」と映る。理由は、稼いだお金の使い道に魅力が乏しいからだ。
事業は 10 年後も残る。小口の包装資材は、なくならない。だが、堀が浅いので、利益率は上がりにくい。会社が目指す 6.5% は、過去 12 年の最高である 5.6% を超える。
株主のものになる利益で見ると、営業利益のうち約 3 割が税金と金融の差で消え、残りが純利益になる。そのうち半分強を配当で返す。残りは、配送センターのような物流の設備に回る。この設備は費用を減らすが、利益を新しく生む力は弱い。
安全域は、純現金と低い借入だ。悲観の筋書きでも、事業が一瞬で崩れる姿は描きにくい。ただ、今回の設備投資で純現金は消え、安全域は薄くなる。
筆者は、10 年で資本コストを上回る年率のリターンは出にくいと見る。損をする会社ではなく、満足しにくい会社である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、メーカーから仕入れた包装資材を、小口で細かく届ける物流と提案力だ。2026 年 3 月期の売上は約 648 億円。商品の区分では、化成品・包装資材が約 396 億円、店舗用品が約 146 億円、紙製品が約 106 億円である。
化成品・包装資材は、ポリ袋、食品用の容器やラップ、衛生用の手袋などだ。飲食店、スーパー、食品工場、病院や介護施設が顧客になる。営業利益は約 40 億円で、全社の稼ぎの柱である。紙製品は、紙袋や包装紙、紙箱で、営業利益率が 11% と高い。店舗用品は、レジ周りの用品や店舗の備品で、利益率は 4% 台と薄い。
売り方は 3 つある。営業担当が顧客を訪ねる営業販売が約 7 割。自社の店とフランチャイズの「パッケージプラザ」を合わせた約 260 の店舗が約 2 割。通販が約 1 割で、取扱点数は 170 万点を超える。
自社ブランドの「HEIKO」も軸だ。オリジナル商品は約 1 万 2 千点あり、仕入れ値と売値の差が厚い。環境に配慮した品も 2 千点を超えた。粗利益率は 32〜33% で、この比率を上げられるかが利益率を決める。
仕入先は約 1,800 社。1 社への依存は小さい。全社の費用は約 23 億円で、物流と本社の人件費が中心だ。為替は 1 ドル 150 円で置く。
優良さと弱いところ
優良さは「堅い」であって「強い」ではない。顧客も仕入先も分散していて、1 社を失っても痛手は小さい。小口の消耗品なので、値上げも通しやすい。これが堅さの理由だ。
一方で堀は浅い。包装資材は、アスクルやモノタロウなどの通販でも買える。メーカーが大口顧客へ直接売ることもある。切り替えの費用が低いので、利益率は低いままだ。営業利益率は 2019 年から 2022 年まで 1% 前後に落ち、原料高で転嫁が遅れた時の弱さも見せた。
資本の稼ぐ力は弱い。ROE は過去 10 年の中央値が 3.5% で、直近でも 7% 台だ。自己資本の 8 割が現金と有形固定資産で、事業に必要な量を超えて積んである。だから借金はほぼ無いが、資本効率は上がりにくい。
経営は、保守的で堅実だ。買収は小粒で、失敗の痛手も小さい。グローバルブランドは買って 3 年で売却した。見切りが早いのは長所だ。
創業家の資産管理会社が、合計で 3 割台半ばを持つ。経営の安定には効くが、少数株主にとっては、買収や資本政策が創業家の意向で決まる面がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場は、人口とともにゆっくり縮む。国内の包装材料は、人口減で需要の縮小が続くと見られる。飲食店や小売店の数も増えない。数量に追い風はなく、期待できるのは値上げと、同業の再編によるシェアの拡大だ。
足元は強い。2027 年 3 月期の第 1 四半期は、売上が 2 割増え、営業利益が 2.5 倍になった。中東情勢を心配した顧客の前倒し仕入れと、値上げの浸透が重なった。粗利益率も 1 ポイント改善した。ただ、前倒しの需要は後で反動が出る。会社も通期予想を据え置いた。
値段の面では、樹脂と紙の原料が物価以上に動くのが悩みだ。原料高の時は、仕入れ値が先に上がり、売値の転嫁が遅れる。2022 年はこれで利益がほぼ消えた。反対に原料が下がる時は、値下げ圧力を受ける。
構造の変化は 3 つある。1 つ目はレジ袋に続くプラスチックの規制で、紙や植物由来の品への切り替えが進む。2 つ目は通販だ。小口の注文は、ネットで比べて買う顧客が増える。3 つ目は人手不足だ。配送の費用が上がり、小さな卸が淘汰される。規模のある会社が有利になる。
競合は、地域の小さな卸と、通販大手、メーカー直販だ。専業の上場同業は少なく、シモジマは店舗網と通販を併せ持つ点で独自の位置にある。
資本政策と M&A
還元の方針は、連結配当性向 50% または株主資本配当率 3% 以上だ。2026 年 3 月期は期末配当を増やし、配当性向は 5 割を超えた。2027 年 3 月期から 4 年間の配当総額は約 50 億円の計画だ。自社株買いは「検討」にとどまり、実行したことはない。
資本の使い道は、配送センターが中心だ。兵庫県加西市に約 150 億円を投じ、2028 年 6 月に完成する予定である。4 年間で営業の現金収入が約 155 億円、借入などの調達が約 200 億円で、成長投資は約 305 億円。現金は借入に置き換わり、自己資本に対する借入の比率は 5 割を目指す。
買収は積極的に進める方針だ。これまでは、ミタチパッケージ、朝日樹脂工業、大倉産業のような、資本金 1 億円以下の小粒が中心である。長期の目標である売上 1,500 億円は、大型の買収が前提で、中立の筋書きには入れていない。
株主優待は、100 株以上でクオカード、1,000 株以上で生活雑貨を贈る。費用は年 1 億円に届かないと推定し(株主数は未確認)、還元への上乗せは小さいので数えていない。
創業家の持株が厚く、政策保有株も 5 億円と小さい。非公開化の可能性は、10 年で 2 割ほどだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
下支えの要因は多い。値上げは定着した。2027 年 3 月期の第 1 四半期は、営業利益が 2.5 倍になり、粗利益率は 1 ポイント改善した。自社ブランドの比率が上がれば、利益率は 6% 台に届く。
構造の面でも、追い風がある。人手不足で配送費が上がり、小さな卸が続けられなくなる。シモジマは約 260 店と配送網を持つ。同業を買い、規模を増やす余地が大きい。会社は買収を積極的に進めると明言し、大倉産業の買収で衛生用品を取り込んだ。
新しい配送センターは、西日本の物流を一本化し、配送費を下げる。AI を使った事務の効率化で、定型業務を 3 割減らす計画もある。全社費用の約 23 億円は、物価で増える一方、効率化で相殺できる。
資本の面でも、変化の兆しがある。PBR を 1 倍以上にする目標を明言し、配当は株主資本配当率 3% を下限にした。創業家が持株を保つので、短期の圧力は少なく、じっくり利益率を引き上げられる。通販は会員が 100 万人を超え、越境販売にも出る。
慎重な見方
伸びる市場ではない。国内の包装需要は人口とともに縮み、飲食店と小売店の数も増えない。売上の増加は、値上げと買収の効果で、物量が増えたわけではない。
足元の好決算は、前倒し仕入れに支えられている。反動が出れば、営業利益は戻る。会社が通期予想を据え置いたのは、その警戒の表れだ。2022 年に営業利益が消えた通り、原料高の局面で転嫁が遅れる弱さが残る。
堀が浅い。通販大手やメーカー直販と競う中で、利益率を過去の最高以上に上げるのは難しい。会社が掲げる 6.5% は、これまで一度も出していない水準である。
150 億円の配送センターは、純現金を借入に変える。新リース会計基準も、2028 年から借入と家賃の負担を見かけ上大きくする。費用の削減が見込み通りにならなければ、ROE は資本コストを下回ったままだ。買収も、大型になれば失敗の痛手が大きい。
資本効率が低い会社に、1 倍近い PBR は割高である。10 年後の時価総額は今と同程度で、配当を入れても資本コストを下回る。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、短期の利益と物流投資の効果を正しく押さえている。だが、利益率が過去の最高を超えるには、実績が足りない。慎重な見方は、数量が増えない点と、資本効率が低い点を的確に突いている。
確率は中立を中心に置き、悲観側をやや厚くした。強気の筋書きは、買収と自社ブランドで利益率が 7% に届く場合に限った。悲観は、通販への移りと原料高で、利益率が 2% 台まで落ちる場合だ。差は小さいが、慎重な見方がやや強い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,689 円396 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 686 円161 億円)。 今の値に割り戻すと 1,273 円298 億円、今との差 −11.7%、 期待の年率 +5.1%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,948 円691 億円 | 917 円215 億円 | +168.2% | +10.4% | 271 円63 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,330 円546 億円 | 811 円190 億円 | +117.9% | +8.1% | 628 円147 億円 |
| 中立 | 42% | 1,904 円446 億円 | 725 円170 億円 | +82.5% | +6.2% | 1,104 円259 億円 |
| やや悲観 | 21% | 726 円170 億円 | 555 円130 億円 | −11.1% | −1.2% | 269 円63 億円 |
| 悲観 | 10% | 640 円150 億円 | 384 円90 億円 | −28.9% | −3.4% | 102 円24 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,689 円396 億円 | 686 円161 億円 | +64.8% | +5.1% | 2,374 円557 億円 |
今の株価時価総額 1,441 円338 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 買収と自社ブランドで規模と利益率が上がる 利益 49 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 2,948 円691 億円
重点業界の開拓と数件の買収で、化成品・包装資材の数量が 2 割増える。大型ではないが、同業の小さな卸を相次いで取り込み、配送センターの稼働率を上げる。自社ブランドの比率が高まり、粗利益率は 35% 近くに届く。営業利益率は 7% 前後と、会社が掲げる 6.5% を超える。配送センターの効果で全社費用の伸びは物価より小さい。純現金は消えるが、借入は 5 年ほどで返せる。配当は株主資本配当率 3% を上回り、一部は自社株買いに回る。PBR の 1 倍割れも解消され、10 年後には効率のよい専門商社として評価される。
- 化成品・包装資材:数量 475(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 637 億円・営業利益 70 億円。市場 1.5 兆円 × シェア 3.2%、営業利益率 11%
- 店舗用品:数量 146(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 196 億円・営業利益 10 億円。シェア 2.4% を維持、営業利益率 5%
- 紙製品:数量 106(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 142 億円・営業利益 17 億円。シェア 2.1% を維持、営業利益率 12%
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.13 倍、時価総額 691 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収が当たり、自社ブランド比率が上がり、利益率が過去の最高を大きく超える必要があり、重なる確率は低い。
やや楽観 20% 利益率が 6% 台に届く 利益 42 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 2,330 円546 億円
自社ブランドの比率が上がり、粗利益率が 1 ポイント改善する。重点業界の開拓で、化成品・包装資材の数量は 1 割強増える。店舗は不採算店の整理で数量が減るが、利益率は 5% 近くに上がる。営業利益率は 6% 強で、会社の 2030 年の目標に数年遅れて届く。新しい配送センターで物流費の増加を抑えられる。借入は完成後に返し始め、自己資本比率は 7 割台に落ち着く。配当性向は 5 割台半ばを保つ。成長は物価並みで、資本コストをわずかに超える程度の ROE にとどまる。買収は小粒のまま年に 1 件ほど続き、通販の会員は 150 万人に近づく。ただ、市場の縮みが重しで、シェアの拡大でようやく売上が物価並みに伸びる。優良な卸として評価されるが、成長株の扱いにはならない。
- 化成品・包装資材:数量 448(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 600 億円・営業利益 63 億円。シェア 2.9%、営業利益率 10.5%
- 店舗用品:数量 142(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 190 億円・営業利益 9 億円。シェアはやや低下、営業利益率 4.8%
- 紙製品:数量 103(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 138 億円・営業利益 16 億円。シェアはやや低下、営業利益率 11.5%
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.16 倍、時価総額 546 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げの定着は実績があり、利益率が 6% 台に乗る可能性は十分ある。ただ、数量が増えない点が壁になる。
中立 42% 堅いが伸びず、ROE は 7% 弱 利益 35 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,904 円446 億円
化成品・包装資材は、人口減を重点業界と買収が相殺し、数量が 6% 増える。店舗用品と紙製品は、店舗の整理と包装紙の減少で、数量が 5% ほど減る。値段は物価並みに上がり、売上は 880 億円ほどと、会社の 2030 年の目標である 800 億円に数年遅れて届く。営業利益率は過去の最高に近い 5.6% で、6.5% には届かない。配送センターの費用と金利負担が、効率化の効果を打ち消す。純利益は 35 億円ほどで、配当性向は 5 割台半ばを保つ。ROE は 7% 弱で、資本コストに届かない。時価総額は今とほぼ同じ水準で、配当を足して、やっと資本コストに並ぶ程度だ。
- 化成品・包装資材:数量 420(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 562 億円・営業利益 56 億円。シェア 2.7%、営業利益率 10.0%
- 店舗用品:数量 139(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 186 億円・営業利益 8 億円。シェア 2.3%、営業利益率 4.5%
- 紙製品:数量 101(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 135 億円・営業利益 15 億円。シェア 2.0%、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 446 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は人口減で横ばい、価格は物価並みという構造が最も起こりやすい。利益率は過去の最高に近い 5.6% で、これは直近の実績の延長である。
やや悲観 21% 通販への移りと原料高で利益率が 4% 弱 利益 19 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 726 円170 億円
通販大手とメーカー直販が小口の注文を奪い、店舗用品と紙製品の数量が 15% 減る。化成品・包装資材も、飲食店の減少で 3% 減る。原料高の局面で転嫁が遅れ、売値は物価に届かず、10 年で 1.30 倍にとどまる。営業利益率は 3.8% まで下がる。配送センターの稼働率が低く、減価償却と金利が重い。店舗の家賃も売上ほどには減らない。配当は性向を保つが、金額は減る。ROE は 4% で、資本コストを大きく下回る。買収に使う余力も乏しく、成長の物語は途切れる。会社は不採算の店舗を閉め、配送センターの運用費を削ろうとするが、人員整理の費用が先に出て、利益の回復は遅れる。優良な卸としての評価は落ち、割安な低成長株の扱いになる。
- 化成品・包装資材:数量 384(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 130.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 499 億円・営業利益 42 億円。シェア 2.3%、営業利益率 8.5%
- 店舗用品:数量 124(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 130.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 161 億円・営業利益 5 億円。シェア 1.9%、営業利益率 3.0%
- 紙製品:数量 90.1(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 130.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 117 億円・営業利益 11 億円。シェア 1.8%、営業利益率 9.5%
倍率:事業の純利益 19 億円、ROE は 4% 台で資本コストを大きく下回る。式の上限は約 8.6 倍で、それをやや下回る 8 倍に置いた。
確率:小口の包装資材は通販で比べやすく、利益率が下がる流れは現実味がある。過去 12 年の平均もこの水準に近い。
悲観 10% 構造的に負け、利益率 2% 台に 利益 10 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 640 円150 億円
通販大手とメーカー直販が小口の取引先を取り、数量が大きく減る。化成品・包装資材は 15%、店舗用品と紙製品は 3 割減る。売値も、原料安と競争で、物価に届かず 1.25 倍に終わる。営業利益率は 2% 台まで落ち、純利益は 10 億円を割る。配送センターは荷物量が足りず、稼働しない部分が重くのしかかる。店舗の家賃は固定費として残り、店舗の利益はほぼ消える。減損で自己資本が 90 億円ほど減る。創業家の持株の厚さもあり、売却の話は進まず、配当は性向を下げて続く。借入があり、純現金に頼れない。小口の顧客は通販で比べて買うことが当たり前になり、営業担当の訪問と店舗の強みは、価格競争の前で意味を失う。会社は縮小均衡に入り、買収の余力もなく、優良な卸という評価は消える。
- 化成品・包装資材:数量 337(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 125.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 421 億円・営業利益 32 億円。シェア 2.0%、営業利益率 7.5%
- 店舗用品:数量 102(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 125.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 128 億円・営業利益 2 億円。シェア 1.4%、営業利益率 1.5%
- 紙製品:数量 74.2(取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア)× 価格 125.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 93 億円・営業利益 7 億円。シェア 1.5%、営業利益率 8.0%
倍率:事業の稼ぐ力は純利益 10 億円 ÷ 資本コスト 7.75% で約 125 億円だが、売れる資産の税後の方が大きい。時価総額は床の 150 億円に置いた。
確率:通販・直販への流出が止まらず、配送センターの投資も裏目に出る構造的な負けの筋書き。事業が一瞬で崩れる姿は描きにくく、10% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
化成品・包装資材
ポリ袋、食品容器、ラップ、衛生用の手袋などを、飲食店・小売店・食品工場・病院や介護施設へ届ける。全社の稼ぎの柱。
| 数量取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 396 | 100.0% | 396 | 40 |
| 10 年後 中立 | 420 | 134.0% | 562 | 56 |
取り方:今。取扱高 396 億円を、対象市場(国内の飲食・小売・衛生用の使い捨て包装の卸流通)約 1.5 兆円(推定、公表資料が見つからず)× シェア 2.6% に分けて置いた。人口減で市場は細るが、重点業界の開拓と買収でシェアを取る。
店舗用品
レジ周りの用品、店舗の備品、ラッピング用品。店舗販売の比率が高く、利益率は薄い。
| 数量取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 146 | 100.0% | 146 | 6 |
| 10 年後 中立 | 139 | 134.0% | 186 | 8 |
取り方:今。取扱高 146 億円を、対象市場(店舗用品の卸・小売流通)約 0.6 兆円(推定)× シェア 2.4% に分けて置いた。店舗と通販の両方で売るため、通販へ移る分は数量の減りに入れる。
紙製品
紙袋、包装紙、紙箱。自社ブランド「HEIKO」の紙袋が中心で、利益率が高い。
| 数量取扱高(今の値段で見た億円)=対象市場 × シェア | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 106 | 100.0% | 106 | 12 |
| 10 年後 中立 | 101 | 134.0% | 135 | 15 |
取り方:今。取扱高 106 億円を、対象市場(紙袋・包装紙・紙箱の卸流通)約 0.5 兆円(推定)× シェア 2.1% に分けて置いた。包装紙は細り、紙袋は環境対応で下支えされる。
リスクと懸念
原料高と転嫁の遅れ
樹脂と紙の原料は物価以上に動く。仕入れ値が先に上がり、売値の改定が遅れると、利益が一気に削られる。2022 年 3 月期は営業利益がほぼ消えた。中東情勢などで再び起きうる。
足元の好決算の反動
2027 年 3 月期の第 1 四半期は、顧客の前倒し仕入れで営業利益が 2.5 倍になった。この反動が出る時期は、売上が落ちる。会社が通期予想を据え置いたのも、この警戒による。
通販・直販による価格の圧力
小口の包装資材は、通販大手で比べて買える。大口顧客はメーカー直販に切り替える。価格で選ばれるなら、粗利益率は下がる。店舗販売は売上の約 2 割で、最も影響を受ける。
配送センター投資と借入
兵庫県の約 150 億円の投資で、純現金は借入に変わる。完成が遅れる、荷物量が想定に届かない、金利が上がるといった時に、利益と資本効率の両方を圧迫する。
人口減による数量の縮み
飲食店と小売店は増えない。人口減で、包装資材の物量は細る。重点業界の開拓や買収で補う前提だが、うまくいかなければ、売上は値上げ分でしか伸びない。
創業家の持株と資本政策
創業家の資産管理会社が合計 3 割台半ばを持つ。安定の面ではよいが、自社株買いや大型の資本政策が創業家の意向で決まる。少数株主の意見が通りにくい面がある。
店舗の家賃という固定費
店舗は約 260 で、家賃は営業費用に入る。売上が落ちても家賃は減らない。新リース会計基準で見かけの借入と総資産が膨らみ、財務の見え方も変わる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 期続けて 6% を超えた
- 自社ブランドの比率が定着し、利益率の天井が上がった合図になる。楽観側の確率を上げてよい。過去の最高を超える実績になる。
- 原料が急騰し、売値の改定が 1 年以上遅れた
- 2022 年と同じ形で利益が消える。やや悲観の確率を上げる。転嫁の仕組みが弱まっているかを見る。
- 配送センターの完成が遅れる、または投資額が膨らんだ
- 借入が増え、利益率の改善が先送りになる。資本効率の面で、中立の ROE を下げる。
- 大型の買収を発表した
- 規模は一気に増えるが、買収額と利益率次第で資本効率が崩れる。売上 1,500 億円への道に近づくかは、買収先の利益率を見て判断する。
- 創業家が持株を減らす、または非公開化の動きが出た
- 少数株主に有利な価格が付く可能性がある。事業の価値は変わらないが、時価総額は上振れうる。
- 通販の売上比率が 15% を超えた
- 店舗販売の縮みを通販で補えている証拠になる。利益率が下がっていなければ、悲観の確率を下げる。
見ておくもの
- 営業利益率と粗利益率の推移(自社ブランド比率)
- 第 1 四半期の前倒し仕入れの反動が出る時期の売上
- 加西市の配送センターの工程と投資額
- 通販の会員数・取扱点数と、売上比率
- 原料価格と、売値の改定のタイミング
- 買収の発表と創業家の持株の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コストを下回る事業として、正当化 PER の式(g は 4%)から上限を出し、その約 9 割に置いた。今の PER や PBR、過去の水準には寄せていない。数量は人口減を前提に横ばい、価格は物価並みの 10 年 1.34 倍で積んだ。市場の規模は公表資料が見つからないため推定で、根拠は notes に書いた。新リース会計基準(2028 年 3 月期から)は、10 年後の数字を家賃を営業費用に入れた今の形でそろえて置いた。2027 年 3 月期の第 1 四半期の好決算は一過性として、起点に使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→14.13 倍・やや楽観 PER 11.5→13.16 倍・中立 PER 10.5→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した。個別の事情は筋書きと確率で表した。