結論
キムラは北海道の住宅資材の卸と、大型ホームセンター「ジョイフルエーケー」を営む札幌の会社だ。筆者の結論は割高である。土地や店などの資産は厚いが、その資産が稼ぐ利益は資本コストに届いていない。
売上の3分の2はホームセンターで、残りは工務店向けの建材の卸、賃貸ビル、足場の貸し出し、ガラス工事だ。北海道の住宅着工は2025年度に前年から2割以上減った。人口も減り続ける。卸の数量は細る一方である。
それでも会社は攻めている。2025年に釧路へ新しい店を出し、60億円を借りて土地と店に投じた。その結果、純負債は70億円に膨らみ、今期の利益はほぼ半分になった。新しい店が軌道に乗れば利益は戻るが、縮む市場で資産を積むほどROEは上がりにくい。
PBRは0.4倍ほどで、帳簿の上では安く見える。だが利益が資本コストを下回る会社では、帳簿の純資産はそのままの価値にならない。筆者は今の値段に安全域を見ない。
この考えで数字を積むと、10年後の中立でも時価総額は今を少し上回る程度にとどまる。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の目で見ると、キムラは堅実だが報われにくい会社だ。北海道の住宅と暮らしを支える事業は10年後も残る。土地を持ち、無理な買収もしない。潰れにくさは十分にある。
ただ、オーナーとして気になるのは資本の使い方だ。縮む市場で借金をして店を増やし、ROEは資本コストを下回り続けている。利益の7割を会社に残しても、残した利益が元手以上の価値を生む見込みは薄い。帳簿の純資産が時価総額の2倍以上あっても、それを株主が手にする道は見えない。
筆者が払ってよいと思う値段は、今の利益がそのまま続く前提の、資本コストで割り戻した水準までだ。新しい店が軌道に乗る前提を値段に含める理由はない。還元を厚くするか、利益の薄い資産を売る動きが出れば、見方は変わる。それまでは、安く見えるPBRに安全域は無い。
今の値段は、その変化をまだ待つ段階だ。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は二つある。工務店に建材を卸す卸売事業と、子会社ジョイフルエーケーのホームセンターだ。
卸売事業は創業の事業で、北海道の工務店や住宅会社に、断熱材・サッシ・住宅設備・換気システムなどを届ける。寒冷地の住宅は断熱と換気の部材が多く、その品ぞろえと配送網が強みだ。自社開発の換気システム「Air save」は、ダクトのいらない熱交換の換気として売り込んでいる。売上は95億円で、需要は持家の着工に連動する。
ホームセンター事業はジョイフルエーケーが担い、キムラが7割を持つ。札幌の屯田や大曲、帯広、釧路などに売場の広い大型店を構え、資材・園芸・ペット・日用品を売る。売上は241億円と最大の柱だ。2025年7月に釧路店を開いた。
ほかに、札幌を中心とする賃貸ビルの賃料、分譲マンション「ザ・札幌タワーズ」の販売、中高層の現場に足場を貸す事業、子会社東洋ガラス工業のサッシ・ガラス工事がある。賃料は年5億円弱で、利益の安定した下支えになっている。
利益の柱は年によって入れ替わる。今期はホームセンターの立ち上げの費用が重く、分譲マンションの売却益と賃料が全体を支えた。分譲は案件のある年だけの利益で、続くものではない。
優良さと弱いところ
強みは北海道に根を張った物流と、土地を自前で持つ大型店だ。寒冷地向けの建材は品目が多く、工務店は細かい注文をまとめて受けてくれる卸を手放しにくい。店の土地を持つので、家賃の固定費に縛られにくい。
弱みは値決めの力が弱いことだ。建材はメーカーの値上げをそのまま渡す商売で、利幅は5%前後にとどまる。ホームセンターはDCMやニトリ、コメリ、ネット通販と同じ客を奪い合い、価格で差をつけにくい。
資本効率は低い。ROEは過去10年の中央値で7%ほどで、資本コストを下回る。今期は4%まで落ちた。借金で土地と店を積み増したため、資産は増えても利益は増えていない。経営は創業家が担い、地域の雇用と店を守る姿勢は堅い。ただし株主への還元は配当性向3割ほどと控えめで、資本の使い方に株主の目線は弱い。
土地を持つ強さは守りには効くが、攻めの利益にはつながりにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
北海道の住宅市場ははっきりと縮んでいる。2025年度の新設住宅着工は2.2万戸で前年から27%減り、持家は7千戸を割った。人口は年1%近く減り、札幌への集中で地方の需要はさらに薄くなる。資材と工事費が上がり、住宅ローンの金利も上向く。卸の数量は10年で3割近く減るのが中立の見方だ。
ホームセンターの業界も成熟している。全国の売上はここ数年ほぼ横ばいで、DCMとカインズ、コメリなどの大手が規模で押す。北海道ではDCMの前身ホーマックの地盤が厚く、ニトリも生活用品で重なる。ネット通販は資材の小物や日用品を少しずつ奪う。客数が減る中で、1店あたりの売上を実質で保つのは難しい。
追い風もある。寒冷地の住宅の断熱と換気の基準は年々上がり、1棟あたりの部材の量と単価は増える。古い住宅の断熱改修も、国の補助金で増えている。卸はリフォームの需要で着工の減りを一部埋められる。物価が上がれば、資材の単価はそのまま売上に乗る。
つまり、数量は縮み、値段は物価並みに上がり、利幅は大手との争いで削られる。北海道の地場の卸とホームセンターにとって、10年は守りの時代になる。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は1株あたりの額を安定させる方針で、配当性向は3割前後にとどまる。自社株買いはほとんど無い。創業家と社員持株会が上位株主に並び、買収の標的になる見込みは薄い。
資本の多くは店と土地に向かう。2025年度は小売事業に63億円を投じ、長期借入を62億円増やした。釧路店の土地と建物が中心だ。純負債は70億円になり、金利が上がれば利払いが年2億円ほど増える。
株主優待は持株数に応じた買い物券を贈る形で、費用は年0.1億円に満たず還元としては小さい。
利益が戻った後に配当性向を上げるか、借入の返済を優先するかが、株主にとっての分かれ目になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今期の減益は一時的だ。釧路店の開業費用と、既存店の立ち上げの費用が重なっただけである。ホームセンターの利益は前期に9.7億円あった。新しい店が通年で売上を積み、費用が落ち着けば、利益は2年で元に戻る。会社も来期は営業利益が2割増えると見ている。
北海道の大型ホームセンターは数が限られる。広い売場で資材とプロの客を取り込む店は、ネット通販に置き換わりにくい。土地を自前で持つので家賃の固定費も軽い。寒冷地の住宅の断熱と換気の基準が上がるほど、卸の扱う部材は増える。物価の上昇はそのまま売上を押し上げる。
資産も厚い。土地140億円と賃貸ビルを持ち、PBRは0.4倍だ。賃料は景気に左右されにくい。創業家の経営で、10年先も店と地域の顧客は残る。純資産の厚さが下値を支える。
会社が配当を少しずつ増やしてきたことも、経営が株主を軽んじていない証拠だ。新しい店が軌道に乗れば、借入は数年で減り始める。利払いの増加を心配するのは早い。
慎重な見方
縮む市場で借金をして店を増やすのは、資本の使い方として筋が悪い。北海道の住宅着工は1年で2割以上減り、人口も減る。ホームセンターの客数も実質で減っていく。新しい店は既存の店の客を食い合う面もある。
ROEは過去10年で一度も資本コストを上回っていない。60億円を投じた新しい店が、資本コストに見合う利益を出す保証は無い。純負債は70億円に増え、金利が上がるほど利払いが利益を削る。卸の利幅は5%前後で、メーカーの値上げを渡すだけの商売だ。
PBRの低さは安さではない。利益が資本コストを下回る会社では、帳簿の純資産は値段の床にならない。創業家が支配し、土地を売って株主に返す見込みも薄い。配当性向は3割で、利益の7割は低い利回りの資産に積まれ続ける。
新しい店の土地と建物は、地方では売ろうにも買い手が限られる。利益を株主に戻さず資産に積む会社は、帳簿が厚いほど株主の取り分が見えにくくなる。金利が上がる今、借金で攻める時期でもない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方に分がある。新しい店の立ち上げで利益が戻るのは確かだが、戻った先の利益でもROEは資本コストに届かない。市場は数量で縮み、還元は控えめで、資産の厚さが株主に届く道も見えない。確率はやや悲観側に寄せた。悲観の床は売れる資産だが、創業家の支配で清算されない以上、その価値は半分しか株主に届かないとみた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 573 円85 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 140 円21 億円)。 今の値に割り戻すと 353 円52 億円、今との差 −24.9%、 期待の年率 +4.2%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,141 円169 億円 | 202 円30 億円 | +185.7% | +11.1% | 107 円16 億円 |
| やや楽観 | 20% | 844 円125 億円 | 182 円27 億円 | +118.3% | +8.1% | 205 円30 億円 |
| 中立 | 35% | 635 円94 億円 | 155 円23 億円 | +68.1% | +5.3% | 277 円41 億円 |
| やや悲観 | 24% | 284 円42 億円 | 108 円16 億円 | −16.7% | −1.8% | 94 円14 億円 |
| 悲観 | 13% | 170 円25 億円 | 54 円8 億円 | −52.4% | −7.1% | 29 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 573 円85 億円 | 140 円21 億円 | +51.6% | +4.2% | 712 円106 億円 |
今の株価時価総額 470 円70 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 新店が軌道に乗り、断熱改修の需要で卸も伸びる 利益 14 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,141 円169 億円
釧路店が通年で売上を積み、さらに道内で2店を出す。どの店も土地を自前で持ち、家賃の固定費に縛られない。1店あたりの売上は客数の減りを単価の上昇とプロ向けの資材で補い、実質でほぼ保つ。ホームセンターの利幅は前期並みの4%台に戻る。
卸は断熱と換気の基準の引き上げを追い風に、改修の需要を取り込む。新築の減りを補い、数量の減少は15%にとどまる。自社の換気システムも売上を伸ばす。賃貸ビルは札幌の再開発で賃料が上がる。借入は新店の利益で着実に返していく。
利益は今の2倍近くに増え、配当も増える。創業家は還元を厚くし、配当性向を4割に上げる。
- 卸売事業(住宅資材):数量 18,855(北海道の新設住宅着工(戸))× 価格 59(着工 1 戸あたりの卸の売上(万円))→ 売上 112 億円・営業利益 7 億円。着工 0.85 倍・単価 1.38 倍
- 小売事業(ホームセンター「ジョイフルエーケー」):数量 8.8(店舗数 × 1 店の実質の売上の指数(店換算・推定))× 価格 47(今の値段での 1 店あたりの年間売上(億円)× 物価)→ 売上 414 億円・営業利益 18 億円。9 店・1 店の実質の売上 0.98 倍・単価 1.36 倍
- 不動産事業(賃貸):数量 44.0(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 0.16(1 千㎡あたりの年間賃料(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 4 億円。床 1.1 倍・賃料 1.34 倍
- 不動産事業(分譲):数量 10.0(引き渡し戸数(戸・推定))× 価格 0.79(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。年 10 戸
- 足場レンタル・サッシ・ガラス施工:数量 950(工事・貸出の件数(件・推定))× 価格 0.03(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。件数 0.95 倍・単価 1.38 倍
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 169 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新店の立ち上げが成功し、卸もリフォームの需要で着工の減りを埋める組み合わせ。過去10年でROEが資本コストを超えた年は無く、重なる条件が多いので低く置く。
やや楽観 20% 新店で利益が戻り、縮む市場をしのぐ 利益 10 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 844 円125 億円
釧路店の立ち上げの費用が一巡し、ホームセンターの利益は2年で前期の水準に戻る。道内でもう1店を出し、8店の体制になる。1店あたりの売上は客数の減りで実質4%ほど減るが、物価の上昇で名目では伸びる。
卸は着工の減りに押されるが、断熱と換気の部材の単価が上がり、数量の減少は2割ほどにとどまる。賃貸ビルは安定して賃料を生む。純負債は新店の利益で少しずつ減る。会社は配当を少しずつ増やす。
それでもROEは資本コストに届かず、株主の価値の伸びは利益の伸びより小さい。賃貸ビルは札幌の中心部で空室が少なく、賃料は物価に近い速さで上がる。
- 卸売事業(住宅資材):数量 17,302(北海道の新設住宅着工(戸))× 価格 58(着工 1 戸あたりの卸の売上(万円))→ 売上 100 億円・営業利益 6 億円。着工 0.78 倍・単価 1.34 倍
- 小売事業(ホームセンター「ジョイフルエーケー」):数量 7.7(店舗数 × 1 店の実質の売上の指数(店換算・推定))× 価格 46(今の値段での 1 店あたりの年間売上(億円)× 物価)→ 売上 355 億円・営業利益 14 億円。8 店・1 店の実質の売上 0.96 倍・単価 1.34 倍
- 不動産事業(賃貸):数量 42.0(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 0.16(1 千㎡あたりの年間賃料(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 4 億円。床 1.05 倍・賃料 1.3 倍
- 不動産事業(分譲):数量 7.0(引き渡し戸数(戸・推定))× 価格 0.79(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。年 7 戸
- 足場レンタル・サッシ・ガラス施工:数量 880(工事・貸出の件数(件・推定))× 価格 0.03(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 2 億円。件数 0.88 倍・単価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 125 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の来期予想の延長で、新店の利益が戻り、もう1店を加える筋書き。足元の計画に沿うので一定の確率を置く。
中立 35% 店は増えるが、縮む市場で稼ぐ力は資本コストに届かない 利益 8 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 635 円94 億円
北海道の住宅着工は10年で3割近く減る。卸は改修の需要と部材の単価の上昇で一部を補うが、利幅は5%台にとどまる。ホームセンターは8店の体制になり、名目の売上は伸びる。ただ1店あたりの客数は実質で減り、大手やネット通販との価格の争いで利幅は3%台半ばに落ち着く。
既存の店の償却は建てた時の値段のまま据え置かれるが、建て替えや改装は新しい値段で膨らむ。新店と改装に借入を使い続け、金利の上昇で利払いは年2億円ほど増える。利益は名目で今と同じ程度に戻るが、資産に比べて薄い。配当性向は3割前後のままで、自己資本は低い利回りで積み上がる。
- 卸売事業(住宅資材):数量 15,971(北海道の新設住宅着工(戸))× 価格 56(着工 1 戸あたりの卸の売上(万円))→ 売上 89 億円・営業利益 5 億円。着工 0.72 倍・単価 1.3 倍
- 小売事業(ホームセンター「ジョイフルエーケー」):数量 7.4(店舗数 × 1 店の実質の売上の指数(店換算・推定))× 価格 46(今の値段での 1 店あたりの年間売上(億円)× 物価)→ 売上 340 億円・営業利益 12 億円。8 店・1 店の実質の売上 0.92 倍・単価 1.34 倍
- 不動産事業(賃貸):数量 40.0(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 0.15(1 千㎡あたりの年間賃料(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 3 億円。床据え置き・賃料 1.25 倍
- 不動産事業(分譲):数量 5.0(引き渡し戸数(戸・推定))× 価格 0.79(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。年 5 戸
- 足場レンタル・サッシ・ガラス施工:数量 800(工事・貸出の件数(件・推定))× 価格 0.03(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。件数 0.8 倍・単価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 94 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種のノートの住宅着工の減少と、ホームセンター業界の成熟をそのまま当てた落としどころ。最も起こりやすい筋書きとして厚く置く。
やや悲観 24% 新店が客を食い合い、ホームセンターの利益が細る 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 284 円42 億円
新しい店は思ったほど客を集めず、既存の店の客を食い合う。DCMやニトリの改装とネット通販の値引きに押され、1店あたりの売上は実質で15%減る。ホームセンターの利幅は2%台に落ちる。
卸は着工が4割減り、改修の需要も補助金の縮小で伸び悩む。分譲マンションの案件も無くなる。純負債は高止まりし、利払いが利益を削る。会社は配当を据え置くのがやっとで、店の改装も先送りになる。資産は残るが、稼ぐ力は細る。
株主は配当を受け取るだけで、資産の厚さを手にする機会は来ない。利払いの増加は利益の3割近くを食い、会社は新店の計画を止める。
- 卸売事業(住宅資材):数量 13,309(北海道の新設住宅着工(戸))× 価格 54(着工 1 戸あたりの卸の売上(万円))→ 売上 72 億円・営業利益 3 億円。着工 0.6 倍・単価 1.25 倍
- 小売事業(ホームセンター「ジョイフルエーケー」):数量 6.0(店舗数 × 1 店の実質の売上の指数(店換算・推定))× 価格 43(今の値段での 1 店あたりの年間売上(億円)× 物価)→ 売上 256 億円・営業利益 6 億円。7 店・1 店の実質の売上 0.85 倍・値引きで単価 1.25 倍
- 不動産事業(賃貸):数量 38.0(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 0.14(1 千㎡あたりの年間賃料(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。床 0.95 倍・賃料 1.15 倍
- 不動産事業(分譲):数量 0.0(引き渡し戸数(戸・推定))× 価格 0.74(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。分譲なし
- 足場レンタル・サッシ・ガラス施工:数量 700(工事・貸出の件数(件・推定))× 価格 0.03(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。件数 0.7 倍・単価 1.25 倍
倍率:事業の ROE 1.2% は資本コスト 8.25% を大きく下回るので、PER は 1÷k の 12.12 倍まで。稼ぐ力(純利益 2.37 億円 ÷ k)で測った。
確率:新店が既存の店の客を食い合い、大手の出店とネット通販で利幅が削られる筋書き。北海道の人口減と借金の重さを考えると、起こりうる確率は小さくない。
悲観 13% 店が赤字になり、借金と土地だけが残る 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 170 円25 億円
北海道の住宅着工は10年で半分以下になり、卸の利益はほとんど残らない。ホームセンターは大手の新店とネット通販に客を奪われ、1店あたりの売上は実質で4分の1減る。家賃は無くても人件費と光熱費、償却が重く、店は赤字すれすれになる。
利払いは借り換えのたびに増え、会社は赤字になる。配当は減らされ、改装は止まる。土地と建物は帳簿に残るが、地方の大型店の土地は買い手が限られる。創業家は事業を続け、資産を売って株主に返す道は開かれない。
純資産は帳簿に残っても、株主の手には半分も届かない。会社は存続するが、少数株主にとっては価値の大半が帳簿の中に閉じ込められる。
- 卸売事業(住宅資材):数量 9,982(北海道の新設住宅着工(戸))× 価格 49(着工 1 戸あたりの卸の売上(万円))→ 売上 49 億円・営業利益 1 億円。着工 0.45 倍・単価 1.15 倍
- 小売事業(ホームセンター「ジョイフルエーケー」):数量 5.3(店舗数 × 1 店の実質の売上の指数(店換算・推定))× 価格 40(今の値段での 1 店あたりの年間売上(億円)× 物価)→ 売上 208 億円・営業利益 1 億円。7 店・1 店の実質の売上 0.75 倍・値引きで単価 1.15 倍
- 不動産事業(賃貸):数量 34.0(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 0.13(1 千㎡あたりの年間賃料(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。床 0.85 倍・賃料 1.05 倍
- 不動産事業(分譲):数量 0.0(引き渡し戸数(戸・推定))× 価格 0.68(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。分譲なし
- 足場レンタル・サッシ・ガラス施工:数量 550(工事・貸出の件数(件・推定))× 価格 0.02(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。件数 0.55 倍・単価 1.15 倍
倍率:赤字で稼ぐ力は 0 とみる。床は売れる資産で、今の自己資本 168 億円の 15% にあたる 25 億円。内訳は floor_assets_why。
確率:ホームセンターが赤字に転じ、卸も着工の半減で利益が消える構造的な負け。土地を持つので倒れはしないが、北海道の縮み方が想定より速い場合の筋書きとして置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
卸売事業(住宅資材)
北海道の工務店・住宅会社に、建材・住宅設備・換気システムなどを卸す創業の事業。自社開発の換気システム「Air save」も売る。
| 数量北海道の新設住宅着工(戸) | 価格着工 1 戸あたりの卸の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 22,182 | 43 | 95 | 6 |
| 10 年後 中立 | 15,971 | 56 | 89 | 5 |
取り方:外部売上 95.48 億円を北海道の新設住宅着工 22,182 戸(2025 年度)で割った 1 戸あたりの売上。リフォームや非住宅向けも含むので、着工を需要の物差しとした推定。
小売事業(ホームセンター「ジョイフルエーケー」)
札幌・帯広・釧路などで大型ホームセンターを営む子会社ジョイフルエーケー(持株 70%)。資材・園芸・日用品を売る。
| 数量店舗数 × 1 店の実質の売上の指数(店換算・推定) | 価格今の値段での 1 店あたりの年間売上(億円)× 物価 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.0 | 34 | 241 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7.4 | 46 | 340 | 12 |
取り方:外部売上 241.35 億円を店舗数 7 店(2025 年 7 月の釧路店を含む推定)で割った。今期は釧路店の開業費用で利益が 0.64 億円に落ちた(前期は 9.67 億円・利益率 4.3%)。
不動産事業(賃貸)
札幌を中心に持つ賃貸ビル・商業施設の賃料収入。
| 数量賃貸の床面積(千㎡・推定) | 価格1 千㎡あたりの年間賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 0.12 | 5 | 3 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 0.15 | 6 | 3 |
取り方:その他の収益(賃料)4.86 億円を、賃貸用の建物の規模から推定した床 40 千㎡で割った。利益は不動産事業の 7.48 億円から分譲の分を除いた推定(償却 1.1 億円を引いた後)。
不動産事業(分譲)
分譲マンション「ザ・札幌タワーズ」などの販売。案件のある年だけ計上される。
| 数量引き渡し戸数(戸・推定) | 価格1 戸あたりの販売額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15.0 | 0.59 | 9 | 5 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 0.79 | 4 | 1 |
取り方:不動産事業の売上 13.75 億円から賃料 4.86 億円を除いた 8.89 億円を分譲とし、1 戸 0.59 億円で戸数を推定。利益は不動産事業の利益から賃貸の推定を引いた残り。一過性の大きい事業。
足場レンタル・サッシ・ガラス施工
中高層の建築現場に足場を貸す事業と、子会社東洋ガラス工業のサッシ・ガラス工事。
| 数量工事・貸出の件数(件・推定) | 価格1 件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 0.02 | 21 | 2 |
| 10 年後 中立 | 800 | 0.03 | 23 | 1 |
取り方:足場 7.75 億円とサッシ・ガラス 13.32 億円の外部売上の合計 21.07 億円を、1 件 200 万円強の工事・貸出として件数を推定。
リスクと懸念
北海道の住宅着工の減少
卸の需要は持家の着工に連動する。2025年度の北海道の着工は前年から27%減った。人口減と工事費の上昇、金利の上向きが重なり、減り方が想定より速ければ卸の利益は早く細る。
新店の投資の回収
釧路店の土地と建物に60億円を投じた。客が想定ほど集まらず、既存の店の客を食い合えば、投資は資本コストに見合う利益を生まない。立ち上げの費用は今期の利益をほぼ半分にした。
借入金と金利
純負債は70億円に膨らんだ。借り換えのたびに金利が上がり、利払いは10年で年2億円ほど増える。新店や改装を続ければ借入はさらに増え、利益を削る。
ホームセンターの競争
DCMやニトリ、コメリが北海道で店を構え、ネット通販は日用品と資材の小物を奪う。価格の争いで利幅は削られやすい。客数が減る地方では、店の数が多すぎる状態が続く。
更新の投資と償却
店の改装と建て替えは建築費の上昇で膨らむ。今の償却は建てた時の値段のままで、会計の利益は物価の分だけ見かけ上ふくらむが、更新の時には現金が多く出ていく。
今後の分かれ目
- ホームセンターの利益が2年で前期の9億円台に戻る
- 新店の立ち上げが成功した印で、やや楽観に近づく。
- 北海道の持家着工がさらに2割減る
- 卸の数量の減りが速まり、やや悲観に近づく。
- 新たな出店のために借入をさらに増やす
- ROE は上がりにくく、利払いが重くなる。中立より下を見る。
- 配当性向を上げる、または賃貸ビルや土地を売って還元する
- 資産の厚さが株主に届く道が開け、価値の見方が上がる。
- 大手のホームセンターが道内で大型店を出す
- 客の食い合いが強まり、小売の利幅が下がる。
見ておくもの
- 北海道の新設住宅着工(持家)
- ジョイフルエーケーの既存店の売上と利益
- 純負債と支払利息
- 新店・改装の投資額
- 配当性向と自社株買い
- 断熱・換気の基準と改修の補助金
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER や PBR から置かず、10 年後の事業の ROE が資本コスト 8.25% を下回るので PER の上限 1÷k を使い、その 9 割前後に置いた。PBR 0.4 倍の安さは根拠にしていない。悲観は稼ぐ力と売れる資産の床(戻り方 0.5)で、過去の PBR の底は使っていない。2028/03 期の新リース会計基準で店の借地などが BS に載るが、10 年後の数字は今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.56→12.12 倍・やや楽観 PER 10→12.12 倍・中立 PER 10→12.12 倍・やや悲観 PER 11.11→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.5%で9.0%。創業家支配や新店の成否といった個別の事情は k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.25%。