結論
アズワンは、研究室・工場・病院で使う道具と消耗品を一手に引き受ける専門商社だ。紙のカタログとネット通販で1,000万点を超える品を揃え、売上は16期続けて増えている。筆者の結論は「適正」。良い会社だが、今の値段に安全域はないとみる。
稼ぎの中心は研究室向けで、売上の6割を占める。顧客の研究費は景気に左右されにくく、一度使い慣れた購買の窓口は簡単に乗り換えられない。借金もなく、自己資本比率は約7割ある。
伸びる余地ははっきりしている。ネット通販の売上を3年で5割増やす計画で、自社ブランド品やレンタル・校正などのサービスも厚くする。10年では、研究物販の市場が実質で1割ほど広がり、シェアが2割台の後半へ上がる姿を中立に置く。
一方で、数字が示すほど簡単な会社ではない。商社の利益率は1割そこそこで、ネット通販の大手やメーカーの直販に客を奪われれば、薄い利益が先に削れる。前の中期計画でも、利益率は想定を下回り、医療向けと中国は伸び悩んだ。
資本の使い方は変わりつつある。2026年8月に、創業家系の大株主が売る株をそのまま自社で引き取り、中計は総還元性向60〜75%を掲げる。株主には優しい。ただし、その分だけ自己資本が薄くなり、成長の元手は営業の稼ぎだけになる。
10年先の中立では、事業の稼ぎが今の6割ほど増え、本質価値は今の時価総額とほぼ同じ水準に収まる。上振れも下振れも広く、確率の重みは中立に集まる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、アズワンは「分かりやすく、続きそうで、守りの強い」会社に入る。10年後も研究室は存在し、試薬も器具も必要だ。事業が消える心配は小さい。
一方で、「超過利益を長く生む堀」かと問われると、答えは「中程度」だ。品揃えと購買窓口の便利さは強みだが、ブランドや規制のように、他社が入れない壁ではない。利益率が1割強で止まっていることが、それを物語る。
オーナー利益の視点では、成長に要る再投資は軽い。物流センターとシステムが主で、設備投資で膨らむ会社ではない。稼いだ利益の大半を株主に戻しても、会社は回る。これは強みだ。ただし、ためた現金の使い方で、買収が割高になれば価値を壊す。この点を、筆者はいちばん警戒している。
安全域は、取れていない。中立の筋書きで、10年後の価値は今の値段とほぼ同じになる。下振れの幅は大きく、悲観では価値が半分以下になる。確率を寄せても、今の時点で積極的に割安とは言えない。
この会社を持ち続けたいかと言えば、答えは「適正な値段なら」だ。景気に強く、配当も増えるが、大きく超過する利益には期待しない。値段が今より2〜3割下がる場面があれば、見直す価値がある。
何で稼ぐ会社か
アズワンの商売は、顧客の「あれもこれも欲しい」を一つの窓口で満たすことだ。1933年に大阪で個人商店として始まり、いまは研究機関・企業の研究所・工場・病院・介護施設に、多くのメーカーの品を届ける。紙のカタログと、ネット通販のAXELの両方で受注する。
売上は3つに分かれる。研究室向け(ラボラトリー)が約6割、工場・クリーンルーム向け(インダストリー)が約2割、病院・介護向け(メディカル)が約1.5割だ。海外は売上の約5%にとどまり、拠点は中国が中心になる。
稼ぎ方は薄利多売に近いが、仕組みに工夫がある。まず、仕入先と自社ブランド品。自社ブランド品(オリジナル品)は粗利が高く、売上は中計で約330億円から420億円へ伸ばす計画だ。次に、ネット通販。会社のネット売上は約380億円で、3年後に500億円超を狙う。受注と配送を機械的に回せる分、手間のわりに利益が残る。
さらに、「買う」から「使い続ける」への拡張がある。機器のレンタル、校正(測定器の精度確認)、ラボの設計施工、購買管理のシステムなど、物を売るだけでは取れない領域だ。長期ビジョンは、これらを含めて市場を約1.6兆円とみる。
もう一つ、顧客側の事情を押さえたい。大企業や大学は購買を一社にまとめたがる。点数の多い窓口に発注が集まりやすく、アズワンの品揃えの広さはそのまま武器になる。ただし、アマゾンのようなネット通販が理化学品に力を入れれば、同じ土俵で戦うことになる。
優良さと弱いところ
優良さの核は、品揃えの広さと、顧客が窓口を変えにくい点にある。1,000万点を超える品を、専門知識のある営業と物流で速く届ける。これは一朝一夕では真似できない。ただし、「ブランドで値段を決められる」類の堀ではない。商社の堀は、利便性の堀だ。
数字で見ると、営業利益率は過去10年ほぼ11〜12.5%の狭い帯に収まる。赤字の年はなく、売上は16期続けて伸びた。景気の谷でも崩れにくい事業だと分かる。借金もほとんどなく、利益の質は高い。
弱いのは、利益率を自力で上げにくい点だ。前の中計では粗利率・営業利益率が想定を下回った。仕入価格と人件費・物流費が上がる中で、転嫁できる範囲に限りがある。ネット通販が広がるほど、価格比較もしやすくなる。
資本の使い方は、ここ数年で改善した。配当は14期連続で増え、自己株の消却と買い取りも動いた。筆者が気にするのは、中期計画の約100億円の戦略投資だ。前の中計では企業買収が計画の半分に終わった。買収の腕はまだ証明されていない。
医療向けの減速と、中国の横ばいも見逃せない。全体の1割台の事業だが、成長の穴になれば、研究室向けに全部を頼る形になる。堀は中程度で、強いとまでは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
研究用品の市場は、大きくないが落ち着いた市場だ。会社は研究室向けの物販市場を約3,000億円とみている。研究費の多くは国と大学・企業の予算で、景気が悪くても急には止まらない。
追い風は2つある。ひとつは半導体、バイオ、創薬、材料の研究投資だ。研究が増えれば試薬、器具、測定機器の購入が増える。もうひとつは、研究室の購買をネットにまとめる動きだ。紙の見積りと電話の時代から、ネットで比べて注文する時代へ移っている。
逆風は、大学の運営費が伸びないことと、人口減による国内の研究人材の頭打ちだ。数量が実質で大きく伸びる業界ではない。筆者は、10年で実質1割増えれば十分だとみる。
競争は静かに形が変わっている。従来は、各地の理化学ディーラーが顧客を囲っていた。いまは、アズワンのような広域のネット対応型が優位になり、ディーラーの統合や廃業が進む。この再編は、シェアを積み上げる好機だ。一方で、メーカーの直販と、アマゾンなどの総合ネット通販が、品揃えと価格で迫る。工場向けの消耗品では、ネット通販の大手が先行する。アズワンは彼らに卸す側でもあり、競い合う側でもある。
病院・介護向けは、高齢化で需要の底は固いが、病院の経営が苦しく、値引き圧力が強い。ここで稼げるかは、ネットの提案力にかかる。
資本政策と M&A
資本政策は、いま転換点にある。中期計画(2025〜27年度)は、3年の総還元性向を60〜75%とし、配当は利益の5割以上、毎年の増配を掲げる。自己株は発行済株式の5%程度までは持ち、超えた分は消却する。実際、2025年5月に440万株を消した。
2026年8月には、自己株の公開買付けを実施した。創業家系の大株主、井内盛英堂が現金化のために売る意向を示し、その売り物を会社が市場価格から1割引きで引き取る形だ。上限は発行済の3.9%、約59億円だ。市場に一度に売りが出る衝撃を避けつつ、1割引きで買えた点は、株主にとって悪くない。ただし、同社の持ち分はなお5百万株前後残るとみられ、さらに売りが出る余地はある。
企業買収は、前の中計で計画の半分にとどまった。今の中計では100億円以上を戦略投資に回す。買い手として動くなら、理化学ディーラーや、検査・校正・ラボ設計の会社が候補になる。逆に、アズワン自身が買われる可能性もある。大株主の入れ替わりと、潤沢な現金、強い顧客基盤を考えると、MBOや事業会社による買収の筋は否定できない。
政策保有株は減らす方針だ。経営は資本効率への意識を高めており、ROE13%の目標は妥当に見える。ただし、自己資本比率が約7割の財務は、まだ資本を使い切っていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
研究室の購買は、ネットへ全面的に移る。会社は、その受け皿として最有力だ。ネット掲載の点数は今でも1,200万点を超え、中計では1,700万点まで広げる。大学や企業の研究所が購買を一本化する流れが続けば、受注は高い比率でアズワンに集まる。
自社ブランド品とサービスは、利益率を引き上げる。自社ブランド品は粗利が高く、レンタル、校正、ラボ設計は、物を売るだけの商社とは別の稼ぎ方だ。長期ビジョンが描く売上2,000〜3,000億円は、このサービス領域が育つ前提で出た数字だ。
半導体、バイオ、創薬への投資は、世界で続く。国内でも、研究費の重点分野に予算が集まり、試薬・消耗品の需要は実質で伸びる。研究室の自動化は、器具や測定機器の需要も増やす。
ディーラーの再編は、シェアの取り込みを加速させる。小さなディーラーは後継ぎ探しに苦しむところが多いとみられ、買収でも顧客の移管でも、アズワンは有利だ。前の中計で買収が進まなかった反省から、今の中計は100億円以上の枠を確保した。
財務は盤石で、借金もない。利益の大半を還元しても、成長の元手は営業の稼ぎで足りる。資本効率が上がれば、ROEは17%に届き、倍率も高く評価される。10年で、時価総額は今の2倍を超えうる。
慎重な見方
商社の利益率は薄く、競争が一巡すれば、先に削れるのは利益だ。ネットの大手は、品揃えと価格でアズワンに迫っている。工場向けの消耗品は、すでにネット通販の大手が主導権を握った。研究室向けも、同じ道をたどるおそれがある。
メーカーの直販は、年々進んでいる。メーカーが自社のサイトで直接売る体制を整えれば、商社を介さない取引が増える。商社の役割は「流通」から「提案」へ移るが、提案で稼げる会社は多くない。
前の中計で、利益率は想定を下回り、医療向けは減速し、中国は伸びなかった。計画どおりにいかない例が続いている。今の中計も、ネットの売上を3年で5割増やす強気の絵だ。無理に伸ばせば、値引きと物流費で利益が削れる。
大学の運営費は伸びず、研究人材も減る。国内の数量は、実質で横ばいか、わずかな減少が続く。物価の上昇を価格に転嫁できなければ、人件費と物流費の上昇が、そのまま利益を食う。
大株主の売り圧力も残る。創業家系の井内盛英堂は、5百万株前後を持ち続けているとみられ、さらに現金化を進めるかもしれない。需給の重さは続く。買収に100億円以上を使う計画も、失敗すれば価値を壊す。10年で、利益は横ばいにとどまり、倍率は今より下がる可能性が高い。
どちらに重みを置いたか
堅実さは本物で、確率の重みは中立に置いた。ただし、慎重な見方のほうが、論点として硬い。利益率は1割強で、これを自力で上げられた実績が薄い。一方、強気の見方は、市場の拡大とシェアの取り込みという、時間をかければ実現しやすい話に支えられている。
確率は、楽観から悲観まで広く取り、悲観側にやや厚く寄せた。強気の根拠は、前の中計が未達だった実績と照らすと、そのまま信じにくい。悲観は、事業が消える筋書きではなく、利益が横ばいで止まる程度にとどめた。結果として、中立の筋書きの価値は、今の時価総額とほぼ重なる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,979 円2,728 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,207 円828 億円)。 今の値に割り戻すと 2,883 円1,977 億円、今との差 +10.7%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 7.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 6,942 円4,761 億円 | 1,563 円1,072 億円 | +226.5% | +12.6% | 1,021 円700 億円 |
| やや楽観 | 23% | 5,107 円3,502 億円 | 1,353 円928 億円 | +148.0% | +9.5% | 1,486 円1,019 億円 |
| 中立 | 38% | 4,181 円2,867 億円 | 1,240 円850 億円 | +108.1% | +7.6% | 2,060 円1,412 億円 |
| やや悲観 | 19% | 1,755 円1,203 億円 | 1,028 円705 億円 | +6.8% | +0.7% | 529 円363 億円 |
| 悲観 | 8% | 610 円418 億円 | 526 円361 億円 | −56.4% | −8.0% | 91 円62 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,979 円2,728 億円 | 1,207 円828 億円 | +99.1% | +7.1% | 5,186 円3,556 億円 |
今の株価時価総額 2,605 円1,786 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 研究室の購買を取り切る 利益 227 億円 · PER 21.0 倍 · 株価時価総額 6,942 円4,761 億円
10年後、研究室の購買はネットに集約され、アズワンはその最大の窓口になる。研究物販の市場は実質で25%広がり、シェアは3割に届く。半導体・バイオ・創薬の研究投資が続き、研究室の自動化が器具と測定機器の需要を増やす。
自社ブランド品とレンタル・校正・ラボ設計が利益を引き上げ、営業利益率は14%台に乗る。長期ビジョンの売上2,000億円台がほぼ実現する。小さなディーラーの買収も、100億円規模の戦略投資で進む。
還元は7割で続き、自己資本の厚みは増さない。ROEは19%に近づく。10年後の姿は、研究室向けの「購買インフラ」としての評価に変わる。
- ラボラトリー(研究室向け):数量 1,163(研究物販市場(実質・億円)× シェア)× 価格 1.36(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 1,581 億円・営業利益 245 億円。市場 3,750億(実質)× シェア31%、営業利益率15.5%
- インダストリー(工場・クリーンルーム向け):数量 334(取扱高(実質・億円)。市場は非開示のため推定)× 価格 1.38(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 460 億円・営業利益 58 億円。実質1.35倍、利益率12.5%
- メディカル(病院・介護向け):数量 181(取扱高(実質・億円)。高齢化と病床数で推定)× 価格 1.32(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 238 億円・営業利益 22 億円。実質1.05倍、利益率9%
倍率:事業の純利益 227 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.0 倍。全体の PER 20.99 倍、時価総額 4,760 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:研究費の重点分野への集中、ディーラー再編、サービス領域の立ち上がりが全部そろう必要がある。中計の未達の実績を考えると、重くは置けない。
やや楽観 23% シェアが伸び、利益率も少し上がる 利益 177 億円 · PER 19.8 倍 · 株価時価総額 5,107 円3,502 億円
研究物販の市場は実質で15%広がり、アズワンのシェアは28%台へ上がる。ネットの受注が広がり、小さなディーラーから顧客が移る。工場向けも、自社ブランド品とネットの提案で2割強伸びる。
医療向けは、病院の値引き圧力が強く、数量は横ばいにとどまる。営業利益率は12.9%まで上がるが、人件費と物流費の上昇が、上振れを抑える。
還元は7割で、自己資本は約1,100億円まで増える。ROEは16%近くになる。
会社の主力は変わらず、少し強くなった姿だ。ネット通販の売上は計画どおりに積み上がり、自社ブランド品の比率も上がる。ただし、強気の見方が言う「購買インフラ」までは届かない。売上は1,900億円台、純利益は170億円台にとどまる。
- ラボラトリー(研究室向け):数量 983(研究物販市場(実質・億円)× シェア)× 価格 1.35(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 1,327 億円・営業利益 186 億円。市場 3,450億 × シェア28.5%、利益率14%
- インダストリー(工場・クリーンルーム向け):数量 301(取扱高(実質・億円)。市場は非開示のため推定)× 価格 1.36(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 410 億円・営業利益 47 億円。実質1.22倍、利益率11.5%
- メディカル(病院・介護向け):数量 172(取扱高(実質・億円)。高齢化と病床数で推定)× 価格 1.31(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 225 億円・営業利益 19 億円。実質1.0倍、利益率8.5%
倍率:事業の純利益 176 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.8 倍。全体の PER 19.84 倍、時価総額 3,502 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場の拡大とシェアの取り込みは、中計の方向とほぼ一致する。ただし利益率の上振れは限られる。
中立 38% 堅実に伸びるが、特別なことは起きない 利益 151 億円 · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 4,181 円2,867 億円
研究物販の市場は実質で1割増え、アズワンはシェアを27%へ上げる。ネットの強さと品揃えが効くが、メーカーの直販やネット大手との競争も続き、上積みは限られる。
工場向けは、ネット通販の大手に押されながらも、研究室の購買と抱き合わせで15%伸びる。医療向けは横ばい。価格は物価並みに上がり、営業利益率は12%で、過去の帯の上端だ。
還元は7割。配当は増え続けるが、自社株買いは節目に限る。ROEは14%。10年かけて、売上1,800億円、純利益150億円の安定した会社になる。長期ビジョンの下限にも届かない。
- ラボラトリー(研究室向け):数量 891(研究物販市場(実質・億円)× シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 1,194 億円・営業利益 155 億円。市場 3,300億 × シェア27%、利益率13%
- インダストリー(工場・クリーンルーム向け):数量 284(取扱高(実質・億円)。市場は非開示のため推定)× 価格 1.34(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 381 億円・営業利益 42 億円。実質1.15倍、利益率11%
- メディカル(病院・介護向け):数量 172(取扱高(実質・億円)。高齢化と病床数で推定)× 価格 1.30(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 224 億円・営業利益 18 億円。実質1.0倍、利益率8%
倍率:事業の純利益 150 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍。全体の PER 19.05 倍、時価総額 2,867 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:事業の安定性は高く、中計の方向も妥当。ただし、利益率の上振れを自力で作れた実績は薄く、中立に重心を置く。
やや悲観 19% 利益率が削られ、成長が止まる 利益 100 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,755 円1,203 億円
研究費が伸びず、数量は実質で横ばいにとどまる。シェアは23%台に下がり、ネット大手やメーカー直販に、価格の高い客から奪われる。
価格は物価の上昇に追いつかず、10年で1.3倍にとどまる。人件費と物流費は物価並みに上がるので、営業利益率は10%を割り込む。医療向けは、病院の値引きで利益が薄くなる。
配当は守るが、成長の元手はなく、買収にも慎重になる。ROEは10%に落ち、成長が止まった会社として評価される。
前の中計で見せた未達の再来に近い。ネットの売上は伸びても、粗利が薄いので利益に結びつかない。売上は1,400億円台、純利益は100億円前後で、10年の利益はほぼ横ばいだ。
- ラボラトリー(研究室向け):数量 705(研究物販市場(実質・億円)× シェア)× 価格 1.30(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 916 億円・営業利益 101 億円。市場 3,000億 × シェア23.5%、利益率11%
- インダストリー(工場・クリーンルーム向け):数量 247(取扱高(実質・億円)。市場は非開示のため推定)× 価格 1.28(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 316 億円・営業利益 29 億円。実質1.0倍、利益率9%
- メディカル(病院・介護向け):数量 163(取扱高(実質・億円)。高齢化と病床数で推定)× 価格 1.25(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 204 億円・営業利益 13 億円。実質0.95倍、利益率6.5%
倍率:ROE約10%は k 7%を上回るが、成長が止まり g を2%に下げると、薄めたROE約8.7%で正当化PERは約15倍。構造が弱っているのでその8割弱の11.8倍に置いた。
確率:事業が崩れる姿ではなく、競争で利益が薄くなる程度。前の中計の未達の実績に近い。
悲観 8% 中抜きで構造的に負ける 利益 42 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 610 円418 億円
研究室向けの購買は、メーカー直販とネット大手に奪われる。研究物販の市場は実質で1割縮み、アズワンのシェアは19%へ落ちる。価格は物価の6割ほどしか転嫁できない。
工場向けでも、ネット通販に主役の座を奪われる。医療向けは病院の経営悪化で、ほぼ利益が消える。100億円規模の買収が裏目に出て、減損を出す。
営業利益は60億円まで落ち、ROEは5%を割る。会社は黒字を保つが、配当を削り、成長の物語は終わる。
10年後の評価は、稼ぐ力の低い商社として下がる。研究室という顧客は残るが、値段を決める力が顧客とネット大手の側へ移り、アズワンは物流と在庫を引き受ける下請けのような役回りになる。売上は1,000億円ほどで伸びず、物価の分だけ名目が増えても利益に回らない。
- ラボラトリー(研究室向け):数量 513(研究物販市場(実質・億円)× シェア)× 価格 1.20(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 616 億円・営業利益 49 億円。市場 2,700億 × シェア19%、利益率8%
- インダストリー(工場・クリーンルーム向け):数量 210(取扱高(実質・億円)。市場は非開示のため推定)× 価格 1.20(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 252 億円・営業利益 15 億円。実質0.85倍、利益率6%
- メディカル(病院・介護向け):数量 155(取扱高(実質・億円)。高齢化と病床数で推定)× 価格 1.15(値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 178 億円・営業利益 5 億円。実質0.9倍、利益率3%
倍率:ROE約5%は k 7%以下。ためた利益は額面未満の価値で、稼ぐ力(純利益÷k)の範囲に収まる10倍に置いた。稼ぐ力は低く、床になる資産は見込まない。
確率:ネット大手の本格参入、メーカー直販、研究費の削減、買収の失敗が重なる姿。事業は残るが、優良さを失う。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ラボラトリー(研究室向け)
研究機関・大学・企業の研究所向けの理化学機器・試薬・消耗品。売上の約62%。
| 数量研究物販市場(実質・億円)× シェア | 価格値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 688 | 1.00 | 688 | 86 |
| 10 年後 中立 | 891 | 1.34 | 1,194 | 155 |
取り方:市場は会社資料の研究物販約3,000億円。売上は2026年版資料の構成比62%(約690億円)で、シェアは約23%と推定。区分ごとの利益は非開示で、全社営業利益128億円に合うよう、利益率12.5%と推定。
インダストリー(工場・クリーンルーム向け)
工場・クリーンルーム向けの機器・消耗品。売上の約22%。
| 数量取扱高(実質・億円)。市場は非開示のため推定 | 価格値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 247 | 1.00 | 247 | 28 |
| 10 年後 中立 | 284 | 1.34 | 381 | 42 |
取り方:区分の市場規模は会社資料に無い。売上は構成比22%(約250億円)。数量は今期の実質取扱高とし、10年は顧客数の増加と研究室との抱き合わせで置く。利益率は全社に合うよう11%と推定。
メディカル(病院・介護向け)
病院・介護施設向けの医療用品・機器。売上の約15%。
| 数量取扱高(実質・億円)。高齢化と病床数で推定 | 価格値段の指数(今期=1。物価並みなら10年で1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 172 | 1.00 | 172 | 15 |
| 10 年後 中立 | 172 | 1.30 | 224 | 18 |
取り方:売上は構成比15%(約170億円)。前の中計で減速した事業。利益率は病院の値引き圧力を踏まえ8.4%と推定。
リスクと懸念
ネット大手・メーカー直販による中抜き
商社の利益は薄く、価格比較が楽なネットでは差が出にくい。工場向けの消耗品では、ネット通販の大手が先に主導権を握った。研究室向けも同じ道をたどれば、利益率は先に削られる。
利益率の想定割れが続いている
前の中計では、粗利率・営業利益率が想定を下回った。今の中計は営業利益率11.4%と、過去の帯の中にある。ただし、ネットの売上を3年で5割増やす計画は強気で、値引きと物流費が利益を削るおそれがある。
買収の腕が未知数
前の中計で、買収は計画の約半分にとどまった。今の中計は100億円以上を戦略投資に回す。高値でつかめば、資本の使い方が弱みに変わる。逆に、買わずに現金を抱えれば、還元の増額が必要になる。
医療向けと中国の伸び悩み
医療向けは前の中計で減速し、病院の経営難で値引き圧力が強い。中国も横ばいが続いた。医療向けだけで全社売上の約15%を占める。研究室向け一本に頼る形では、数量の上振れを欠く。
大株主の需給
創業家系の井内盛英堂は、2026年の自己株の公開買付けで一部を売ったあとも、5百万株前後を持つとみられる。追加の売りが出れば、需給の重しになる。一方、まとまった株の入れ替わりは、買収の話にもつながりうる。
研究費の頭打ち
大学の運営費は伸びず、国内の研究人材も減る。研究室向けの数量は、実質ではほぼ横ばいが基本だ。半導体・バイオ・創薬への予算の重点化が追い風だが、全体を押し上げるほどではない。
物流センターの投資
九州に、現行の2.6倍の物流センターを新設する(2026年10月末竣工予定)。減価償却と立ち上げ費用で、1〜2年は利益率を押し下げる。売上が計画どおり伸びなければ、固定費が重くなる。
今後の分かれ目
- ネットの売上が中計どおり、3年で5割増える
- 楽観寄りの確率を厚くしてよい。ただし、粗利率が下がっていないかを併せて確認する。
- 営業利益率が13%を超えて定着する
- 自社ブランド品とサービスの効果が出ている。やや楽観の確率を上げる。
- 営業利益率が10%を割り込む
- 価格競争が始まったとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 100億円規模の買収を、高い倍率で実施する
- 資本の使い方の評価を下げる。買収後の利益率と減損の有無を注視する。
- 創業家系の大株主が、さらに大きく売る
- 一時の需給悪化は避けられない。事業の価値は変わらないので、需給で下がる局面は見直しの材料になる。
- ネット大手が理化学品で本格的に値引きを始める
- 中抜きの筋書きが近づく。悲観側の確率を引き上げる。
見ておくもの
- 研究物販のネット売上とシェア(会社資料)
- 営業利益率と粗利率の四半期の動き
- 戦略投資(買収)の案件と価格
- 大株主の持ち分の変化
- 医療向けと中国の売上の伸び
倍率と資本コストの決め方
倍率は、各筋書きの ROE と k 7%・g 3.75%から正当化 PER を出し、薄利の卸という利益の質で8〜9割に置いた。やや悲観・悲観は ROE と成長から別に置いた。今の株価や同業の倍率は見ていない。10年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置き、新リース会計(2028年3月期以降)で形が変わる点は考えに入れた。株数は自己株TOBの結果が未確認のため、上限満額で取得したと仮定した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 18.5→20.99 倍・やや楽観 PER 16.4→19.84 倍・中立 PER 14.8→19.05 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質−0.25%を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.25% → 7.00%。