結論
オルバヘルスケアホールディングスは、病院に医療機器や医療材料を届ける中四国・関西の卸だ。2026 年 9 月、関東で心臓の治療機器を扱うディーブイエックスと株式交換で一緒になり、社名はオルバディーブイエックスヘルスケアに変わった。筆者の結論は「割高」である。
要点は 2 つある。まず、株数が 593 万株から 1,111 万株へほぼ倍になった。時価総額は 113 億円から 212 億円に膨らんだが、合算の純利益は 13 億円ほどで、利益は倍になっていない。次に、事業の利益率が薄い。売上 1,826 億円に対し、営業利益は 20 億円しかない。
統合の狙いは仕入れの交渉力、物流、システム投資の共同化だ。ただ、数字の裏づけはまだなく、旧オルバの株主は会社の 47%を新しい株主に渡した。筆者は、統合が成功しても今の値段には届かないと見る。営業利益率は 1%台と薄く、わずかな費用増で利益が大きく動く構造も変わらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を長く持ちたいか。筆者の答えは「医療を支える卸は残る。ただ、この値段と、この統合の形では持ちたくない」だ。
事業は 10 年後も存在する。病院は機器を買い、卸は届ける。この必需の性質は評価できる。一方で、利益率は 1%台で、売上が数%動けば利益が半分になる。堀は深くない。
統合の評価は分かれる。仕入れ、物流、システムを共同化する筋は通る。しかし、旧オルバの株主は、営業利益の 8 割を稼ぐ会社の持ち分を、2 割にも満たない会社の株主と分け合った。株数がほぼ倍になるぶん、一株の取り分は薄まる。
安全域でも見劣りする。純現金は合算で 49 億円ほどあるが、売掛金と在庫を抱える卸の現金は運転資金で、余りではない。統合が全部うまくいっても、10 年後の価値は今の時価総額に届きにくい。
何で稼ぐ会社か
オルバヘルスケアホールディングスは、持株会社の下で医療機器を病院に卸す。2026 年 6 月期は、売上 1,266 億円、営業利益 17 億円、従業員は連結で 1,405 人だった。
中心は医療器材事業で、売上 1,195 億円。内訳は手術で使う消耗品が 515 億円、整形外科用が 303 億円、循環器用が 252 億円、設備備品が 142 億円。商圏は中国・四国が中心で、関西にも広がる。病院の在庫を預かって管理する SPD 事業が 61 億円、介護用品が 29 億円ある。
いちばん大きな顧客は、エム・シー・ヘルスケアで売上の 11%を占める。
そこに、2026 年 9 月 1 日にディーブイエックスが加わった。こちらは関東・東海で、心臓の不整脈を治す治療機器を中心に、売上 560 億円を稼ぐ。売上の 82%が不整脈向けで、PFA(パルスフィールドアブレーション)というカテーテルの普及が追い風になっている。営業利益は 2.9 億円と薄い。
合算の売上は約 1,830 億円。業界では中堅の位置になる。
優良さと弱いところ
強みは、病院との結びつきの深さと、地域ごとの配送網だ。手術や循環器の現場は、機器の使い方の説明や、緊急時の納品まで卸に頼る。この関係は簡単には切れない。SPD 事業は病院の在庫管理を請け負うので、取引が長続きする。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるほど深くはない。卸の粗利は薄く、価格は病院とメーカーの間で決まる。償還価格(国が決める医療機器の公定価格)はおおむね 2 年ごとに引き下げられ、販売単価を押し下げる。メーカーが直販に切り替えれば、卸の役割は縮む。
収益性は低い。旧オルバの営業利益率は 2022〜2024 年に 1.9%まであったが、直近は 1.3%に落ちた。仕入れ値の上昇を価格に転嫁しきれなかったためだ。ディーブイエックスはさらに低く 0.5%。自己資本比率は旧オルバで 28%。
経営は、増配または維持を第一に掲げる堅実さがある。ただ、統合の実行力はこれから試される。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
医療機器卸の需要は、手術と治療の件数で決まる。高齢化で治療件数は長く増えてきた。特に心臓の不整脈の治療は、PFA の登場で件数が大きく伸びている。ここはディーブイエックスの稼ぎどころだ。
一方で、価格の逆風は強い。償還価格の引き下げ、病院の経営悪化、人件費と物流費の上昇が重なる。2026 年 6 月期のオルバは、売上が 3%増えたのに営業利益は 15%減った。賃上げやシステム投資、統合の準備費用が先行し、仕入れの上昇を価格に載せきれなかった。
構造の変化として、メーカーが販売を自社に取り込む動き、病院の再編による購買の集約、卸どうしの統合がある。オルバとディーブイエックスの統合も、その一つだ。
物価が年 3%で続く世界では、診療報酬や償還価格が上がらなければ、卸の利益は圧迫される。診療報酬が物価に追いつけば、病院の購買力は保たれる。この点は、10 年の最大の分かれ目になる。なお心臓の治療機器は技術の更新が早く、新製品が出るたびに償還価格が見直されるため、単価の下落は避けにくい。競合は、メディアスホールディングス、シップヘルスケアホールディングス、日本ライフラインなどだ。
資本政策と M&A
資本の使い方は、堅実な配当と、今回の大きな株式交換だ。
配当方針は「増配または維持を第一に、内部留保は次」。2026 年 6 月期の配当は総額 4.9 億円で、純利益の 44%だった。自社株買いも株主優待もない。月末の現金は 20 億円を確保する方針だ。
株式交換は、ディーブイエックス 1 株にオルバ 0.5 株を渡す形で、新株 518 万株を出した。旧オルバの株主の持ち分は 53%に下がった。取得するディーブイエックスの純資産は 88 億円、一方で渡した株の値打ちは約 99 億円で、差は小さなのれんになる。ディーブイエックスの筆頭株主は光通信で、間接に 29.9%を持つ。統合後は 1 割を超える大株主になる見込みで、大量保有報告書では 16.6%の保有者も現れた。
新リース会計基準の影響は、卸では小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
統合で「総合 × 専門」の医療機器商社が生まれた。オルバの強い手術・整形・消耗品の網に、ディーブイエックスの不整脈・循環器の専門力が加わる。ディーブイエックスの関東でオルバの品を、オルバの中四国でカテーテルを売れば、売上の上積みが見込める。
PFA の普及で不整脈の治療件数は大きく伸びている。ここを握る会社の利益は、薄い利益率でも、売上の伸びで増える。仕入れの交渉力、物流の共同化、システム投資の分担で、営業利益率が 1.3%から 2%近くまで上がれば、利益は 5 割以上増える。
オルバは増配または維持を掲げ、配当は堅い。光通信などの大株主が加わり、再編の主体としての力も増す。規模が大きくなれば、メーカーとの価格交渉や、病院への提案力でも、これまでより有利な立場に立てる。海外やアジアの事業、国内最高の医療機器商社という長期の目標にも、規模は役立つ。さらに、ディーブイエックスは不整脈の治療に使う機器で関東の主要な病院に深く入っており、取扱量の伸びがそのまま利益に乗りやすい。
慎重な見方
株数がほぼ倍になった。旧オルバの株主は、営業利益の 85%を稼ぐ会社の持ち分を、15%の会社の株主と分け合っている。ディーブイエックスの純利益は 2 億円ほどで、その株主に 99 億円分の株を渡した。一株あたりの取り分は薄まる。
利益率は薄い。合算の営業利益率は 1.1%。償還価格は 2 年ごとに下がり、人件費と物流費は毎年上がる。旧オルバは 2026 年 6 月期に、売上が増えたのに営業利益が 15%減った。統合の準備費用も重かった。
ディーブイエックスの営業キャッシュフローは赤字で、配当は純利益の 2 倍以上を払っていた。主力の不整脈向けはメーカーへの依存が大きく、メーカーが直販に切り替えれば取扱量が一気に消える。統合の成果は数字で見えておらず、シナジーの数値目標もない。薄い利益率のまま株数だけが倍になったため、一株あたりの利益は、統合が成功しても大きくは増えない。のれんの減損という爆弾も、小さいが残る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。統合は筋が通るが、利益率の薄さと株数の倍増が重く、成果の裏づけがない。中立に 4 割弱、やや悲観に 3 割弱を置き、楽観は 6%に抑えた。悲観は、メーカーの直販化や償還価格の大幅な引き下げを織り込み、12%とした。強気が示すカテーテルの伸びは実績があるため、やや楽観に 18%を残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 1,863 円207 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 637 円71 億円)。 今の値に割り戻すと 1,272 円141 億円、今との差 −33.9%、 期待の年率 +2.6%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,989 円443 億円 | 1,170 円130 億円 | +168.0% | +10.4% | 310 円34 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,782 円309 億円 | 900 円100 億円 | +91.3% | +6.7% | 663 円74 億円 |
| 中立 | 36% | 2,127 円236 億円 | 720 円80 億円 | +47.9% | +4.0% | 1,025 円114 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,000 円111 億円 | 495 円55 億円 | −22.3% | −2.5% | 404 円45 億円 |
| 悲観 | 13% | 672 円75 億円 | 90 円10 億円 | −60.4% | −8.8% | 99 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,863 円207 億円 | 637 円71 億円 | +29.9% | +2.6% | 2,500 円278 億円 |
今の株価時価総額 1,925 円214 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% 統合の効果が出て、利益率が 2%近くに乗る 利益 34 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 3,989 円443 億円
関東でオルバの品、中四国でカテーテルを売る交差販売が進み、仕入れの交渉力も上がる。不整脈の治療件数は PFA の普及で大きく伸び、専門商社の取扱量は今の 1.7 倍になる。
物流とシステムの共同化で費用が下がり、営業利益率は 2%近くに上がる。診療報酬の改定が物価に追いつき、価格の下げも小さくなる。
配当は拡大し、再編の主体としてさらに卸を統合する。統合した会社の格が上がり、仕入れ条件の改善も続く。10 年のあいだに、主力メーカーの直販化や償還価格の大きな引き下げがない前提で、強気の側の最上位である。
- 医療器材事業(旧オルバ:手術・整形・循環器・設備備品):数量 120(取扱量の指数(2026/06 を 100))× 価格 14(取扱量 100 あたりの売上(億円)。売価の上昇を含む)→ 売上 1,692 億円・営業利益 34 億円。取扱量 120、売価 1.18 倍、営業利益率 2.0%
- SPD・介護用品事業:数量 115(取扱量の指数(2026/06 を 100))× 価格 1.13(取扱量 100 あたりの売上(億円)。単価の上昇を含む)→ 売上 130 億円・営業利益 6 億円。取扱量 115、単価 1.25 倍、営業利益率 4.5%
- 専門商社事業(ディーブイエックス:不整脈・虚血・その他):数量 170(取扱量の指数(2026/03 を 100)。治療件数の伸びを含む)× 価格 5.88(取扱量 100 あたりの売上(億円)。償還価格の引き下げを含む)→ 売上 999 億円・営業利益 13 億円。取扱量 170、単価 1.05 倍、営業利益率 1.3%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.23 倍、時価総額 443 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:統合の効果、不整脈治療の伸び、償還価格の下げ止まりが重なる形。薄い利益率が 10 年かけて 2%近くに上がるのは、旧オルバの最高水準を超える。
やや楽観 18% 統合が進み、カテーテルの伸びで利益率は 1.7% 利益 26 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,782 円309 億円
不整脈の治療件数が伸び、専門商社の取扱量は今の 1.5 倍になる。医療器材は取扱量が 1.14 倍、価格は 1.15 倍。統合による仕入れの交渉力と物流の効率化が、利益率を 1.7%まで引き上げる。
償還価格は 2 年ごとに下がるが、診療報酬の改定で病院の購買力は保たれ、価格の下げは緩やかにとどまる。
配当は増配を続け、純利益の 4 割強を払う。統合費用は 3 年で終わり、のれんの減損は出ない。病院の購買の集約が進んでも、地域の配送網と現場の信頼で取引は守られ、値引きの圧力は想定の範囲に収まる。
- 医療器材事業(旧オルバ:手術・整形・循環器・設備備品):数量 114(取扱量の指数(2026/06 を 100))× 価格 14(取扱量 100 あたりの売上(億円)。売価の上昇を含む)→ 売上 1,566 億円・営業利益 27 億円。取扱量 114、売価 1.15 倍、営業利益率 1.7%
- SPD・介護用品事業:数量 110(取扱量の指数(2026/06 を 100))× 価格 1.10(取扱量 100 あたりの売上(億円)。単価の上昇を含む)→ 売上 121 億円・営業利益 5 億円。取扱量 110、単価 1.22 倍、営業利益率 4.2%
- 専門商社事業(ディーブイエックス:不整脈・虚血・その他):数量 150(取扱量の指数(2026/03 を 100)。治療件数の伸びを含む)× 価格 5.71(取扱量 100 あたりの売上(億円)。償還価格の引き下げを含む)→ 売上 857 億円・営業利益 9 億円。取扱量 150、単価 1.02 倍、営業利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 309 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:不整脈治療の伸びと、統合による仕入れ・物流の改善は、実績のある方向。ただ数値目標は示されておらず、慎重に置く。
中立 36% 統合は進むが、薄い利益率が効かず、利益は物価並みに伸びる 利益 20 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,127 円236 億円
医療器材の取扱量は高齢化で 1.08 倍になり、価格は仕入れ値の上昇を転嫁して 1.26 倍まで上がるが、償還価格の引き下げで物価の 1.34 倍には届かない。専門商社は不整脈の治療件数に押され 1.35 倍に伸び、単価は 1.27 倍にとどまる。
営業利益率は医療器材 1.3%、専門商社 0.7%。統合による仕入れと物流の効率化が、人件費と物流費の上昇を何とか吸収する。本社費は物価で膨らむ。営業利益は 30 億円で、合算の売上の 1.1%だ。
配当は純利益の 4 割強を払い、維持の方針が続く。価格が物価の 1.34 倍に届かないのは、償還価格の引き下げが毎回の改定で単価を削るためだ。償却は取得原価のままだが、物流拠点とシステムの更新は費用が膨らむ。
- 医療器材事業(旧オルバ:手術・整形・循環器・設備備品):数量 108(取扱量の指数(2026/06 を 100))× 価格 15(取扱量 100 あたりの売上(億円)。売価の上昇を含む)→ 売上 1,626 億円・営業利益 21 億円。取扱量 108、売価 1.26 倍、営業利益率 1.3%
- SPD・介護用品事業:数量 105(取扱量の指数(2026/06 を 100))× 価格 1.08(取扱量 100 あたりの売上(億円)。単価の上昇を含む)→ 売上 114 億円・営業利益 5 億円。取扱量 105、単価 1.20 倍、営業利益率 4.0%
- 専門商社事業(ディーブイエックス:不整脈・虚血・その他):数量 135(取扱量の指数(2026/03 を 100)。治療件数の伸びを含む)× 価格 7.11(取扱量 100 あたりの売上(億円)。償還価格の引き下げを含む)→ 売上 960 億円・営業利益 7 億円。取扱量 135、単価 1.27 倍、営業利益率 0.7%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 236 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:統合の効果は仕入れ・物流にとどまり、償還価格の引き下げと人件費の上昇が打ち消す。合算の営業利益率は 1.2%で、旧オルバの最高水準に届かない。
やや悲観 27% 償還価格の下げが先行し、利益率は 1%に戻る 利益 11 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,000 円111 億円
医療器材の取扱量は横ばい、価格は 1.05 倍にとどまる。専門商社は PFA の件数が伸びても、価格の下げと競争で利益率が 0.4%に落ちる。統合の効果は出ず、費用が先行する。
営業利益は 16 億円ほどで、合算の売上の 0.7%。純利益は 11 億円に落ちる。配当は純利益の 5 割で、増配は止まる。
病院の経営悪化で、購買の集約と値引き要求が強まる。物流費と人件費の上昇も続き、費用の増加を価格に載せきれない年が重なる。のれんの一部を減損し、自己資本の積み上がりも鈍る。株価は統合の期待が剥がれ、利益の低さに見合う水準へ向かう。配当は維持するのがやっとで、自社株買いの余力はない。
- 医療器材事業(旧オルバ:手術・整形・循環器・設備備品):数量 100(取扱量の指数(2026/06 を 100))× 価格 13(取扱量 100 あたりの売上(億円)。売価の上昇を含む)→ 売上 1,254 億円・営業利益 13 億円。取扱量 100、売価 1.05 倍、営業利益率 1.0%
- SPD・介護用品事業:数量 100(取扱量の指数(2026/06 を 100))× 価格 1.04(取扱量 100 あたりの売上(億円)。単価の上昇を含む)→ 売上 104 億円・営業利益 4 億円。取扱量 100、単価 1.15 倍、営業利益率 3.5%
- 専門商社事業(ディーブイエックス:不整脈・虚血・その他):数量 110(取扱量の指数(2026/03 を 100)。治療件数の伸びを含む)× 価格 5.32(取扱量 100 あたりの売上(億円)。償還価格の引き下げを含む)→ 売上 585 億円・営業利益 2 億円。取扱量 110、単価 0.95 倍、営業利益率 0.4%
倍率:合算の純利益 10.8 億円、自己資本 295 億円で ROE 3.7%と、k 8.25%を大きく下回る。上限の 1÷k の 11.8 倍の約 68%(8.0 倍)に置く。余った現金は分けていない。
確率:償還価格の引き下げと人件費の上昇が転嫁を上回る形は、旧オルバの直近の決算で実際に起きた。統合費用ものれんの償却も加わる。
悲観 13% 主力メーカーが直販に切り替え、専門商社の取扱量が消える 利益 2 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 672 円75 億円
心臓治療の主力メーカーが、直販へ切り替える。専門商社は代理店契約を失い、取扱量が今の半分近くに落ちる。医療器材も病院の購買集約で値下げを迫られ、価格は 1.0 倍にとどまる。
営業利益は 2 億円ほどで、統合費用とのれんの減損が出る。配当は止まり、借入が増える。
値打ちは稼ぐ力ではなく、売掛金と在庫を処分した価値と純現金で測る。統合で膨らんだ自己資本の大半を占めるのれんと顧客資産は、評価に入れない。配当が止まれば、株を持ち続ける理由は資産の値打ちだけになる。ブランドも、取扱商材を失った商社には残らない。医療器材の卸としての事業は続くが、規模の縮小と費用の固定化で、赤字の年が出る。
- 医療器材事業(旧オルバ:手術・整形・循環器・設備備品):数量 92.0(取扱量の指数(2026/06 を 100))× 価格 12(取扱量 100 あたりの売上(億円)。売価の上昇を含む)→ 売上 1,099 億円・営業利益 4 億円。取扱量 92、売価 1.00 倍、営業利益率 0.4%
- SPD・介護用品事業:数量 90.0(取扱量の指数(2026/06 を 100))× 価格 0.97(取扱量 100 あたりの売上(億円)。単価の上昇を含む)→ 売上 88 億円・営業利益 2 億円。取扱量 90、単価 1.08 倍、営業利益率 2.0%
- 専門商社事業(ディーブイエックス:不整脈・虚血・その他):数量 55.0(取扱量の指数(2026/03 を 100)。治療件数の伸びを含む)× 価格 5.04(取扱量 100 あたりの売上(億円)。償還価格の引き下げを含む)→ 売上 277 億円・営業利益 −2 億円。取扱量 55、単価 0.90 倍、営業利益率 -0.6%
倍率:稼ぐ力は純利益 1.5 億円で、÷k でも 18 億円ほど。値打ちは純現金と売れる資産の税後。旧オルバの自己資本 131 億円への PBR 0.57 倍(約 75 億円)で見る。床の資産の内訳は floor_assets_why に書く。
確率:メーカーが販売を自社に取り込む動きは医療機器全体で進み、専門商社は少数のメーカーに依存する。償還価格の大幅な引き下げも重なれば、起こりうる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
医療器材事業(旧オルバ:手術・整形・循環器・設備備品)
中国・四国と関西の病院へ、手術・整形・循環器の消耗品と設備備品を卸す。
| 数量取扱量の指数(2026/06 を 100) | 価格取扱量 100 あたりの売上(億円)。売価の上昇を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 100 | 12 | 1,195 | 15 |
| 10 年後 中立 | 108 | 15 | 1,626 | 21 |
取り方:有価証券報告書の医療器材事業の売上 1,194.53 億円とセグメント利益 14.66 億円。取扱量の開示はなく、今を 100 とした指数で置いた。
SPD・介護用品事業
病院の在庫と物流を請け負う SPD と、介護用品を売る。利益率が高めで安定している。
| 数量取扱量の指数(2026/06 を 100) | 価格取扱量 100 あたりの売上(億円)。単価の上昇を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 100 | 0.90 | 90 | 4 |
| 10 年後 中立 | 105 | 1.08 | 114 | 5 |
取り方:SPD 事業(売上 60.96 億円・利益 1.19 億円)と介護用品事業(売上 29.10 億円・利益 2.45 億円)の合計。取扱量の開示はなく指数で置いた。
専門商社事業(ディーブイエックス:不整脈・虚血・その他)
関東・東海で、心臓の不整脈を治すカテーテルなどを病院へ売る専門商社。2026 年 9 月に傘下に入った。
| 数量取扱量の指数(2026/03 を 100)。治療件数の伸びを含む | 価格取扱量 100 あたりの売上(億円)。償還価格の引き下げを含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 5.60 | 560 | 3 |
| 10 年後 中立 | 135 | 7.11 | 960 | 7 |
取り方:ディーブイエックスの 2026 年 3 月期の連結売上 559.89 億円(不整脈 457.09、虚血 40.02、その他 62.77)と営業利益 2.94 億円。2026 年 9 月に傘下に入ったため合算の起点に使った。
リスクと懸念
償還価格の引き下げと転嫁の失敗
償還価格はおおむね 2 年ごとに引き下げられ、販売単価を押し下げる。仕入れの上昇、人件費の上昇も重なり、旧オルバは 2026 年 6 月期に売上増でも営業利益が 15%減った。物価が年 3%で続く世界では、診療報酬の改定が遅れるほど卸の利益が削られる。
メーカーの直販化と専門商社の依存
ディーブイエックスの売上の 82%は不整脈向けで、少数のメーカーの商材に依存する。メーカーが販売を自社に切り替えれば、代理店契約が終わり、取扱量が一気に消える。関東への売上の偏りも大きい。
統合の実行と一株あたりの希薄化
株数が 593 万株から 1,111 万株へほぼ倍になった。シナジーの数値目標は示されておらず、物流・システム・仕入れの統合には時間と費用がかかる。統合費用が利益を圧迫し、のれんの減損が出る可能性もある。
ディーブイエックスの資金繰り
ディーブイエックスの 2026 年 3 月期は、営業キャッシュフローが 11.7 億円の赤字、配当は純利益の 2 倍以上だった。当座貸越の枠は 33 億円ある。統合後は運転資金の調達が合算で必要になり、借入が増える恐れがある。
大株主の動向と需給
光通信が間接に持つ株は、株式交換で新たなオルバ株になり、1 割を超える大株主として加わる。大量保有報告書では 16.6%の保有者も現れた。大株主の売却があれば、流動性の低い株の需給が崩れる。
今後の分かれ目
- 2027 年 6 月期の営業利益が 25 億円を超えたら
- 統合の効果が出始めた証拠になる。やや楽観の確率を上げる。
- 統合後の営業利益率が 1%を割ったら
- 薄い利益の構造が解けておらず、やや悲観の確率を上げる。
- 主力メーカーが直販への切り替えを発表したら
- 専門商社の取扱量が消える。悲観の確率を上げる。
- のれんの減損や統合費用の追加が出たら
- 統合の失敗を示す。自己資本の見方を下げる。
- 診療報酬の大幅な引き上げが決まったら
- 病院の購買力が戻り、卸の価格転嫁が進む。楽観側の材料になる。
見ておくもの
- 統合後の四半期の営業利益率と、統合費用
- 不整脈向け(PFA)の取扱量と主力メーカーとの契約
- 償還価格と診療報酬の改定
- 配当方針(増配か維持か)
- 光通信や大量保有者の持株比率
倍率と資本コストの決め方
今の株価からは置かず、旧オルバの医療器材・SPD・介護用品と、ディーブイエックスの 3 つに分けて取扱量 × 単価で積んだ。取扱量は開示がなく、売上から指数で置いた。株数は株式交換後の 1,111 万株に直し、合算の純利益と自己資本を起点にした。倍率は ROE が資本コストに届かない会社の 1÷k を基準に、中立は 8 割に置いた。新リース会計基準の影響は卸では小さく、10 年後の数字は今の形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→13.23 倍・やや楽観 PER 10.5→12.12 倍・中立 PER 9.5→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。