結論
川辺は、ハンカチ・スカーフ・タオルを百貨店などに卸す、1923年創業の専門商社だ。売上は130億円、営業利益は約2億円と薄い。筆者の結論は、今の時価総額はほぼ妥当、というものだ。
本業の身の回り品は安定している。売上の84%を占め、利益率は5%台を保つ。ここは地味だが、百貨店との長い取引が支えている。問題は、新しく始めた高級香水の事業が、新規出店の費用で赤字になっていることだ。
香水は伸びれば利益を押し上げる。英国発のクリードの独占輸入を始め、ブルガリなどのブランドも扱う。ただ、売上は全体の16%で、赤字は1.6億円ある。これを黒字にできるかが、10年の最大の分かれ目だ。
財務は堅く、自己資本比率は58%、純負債は5億円と軽い。ただ、親会社の一広が株を握っており、余った利益が少数株主に戻る力は強くない。配当は総額で約0.9億円と、利益の約5割を出している。
結論として、時価総額26億円は自己資本74億円の約3.5割で、安さは目立つ。だが、ROEは資本コストに届かず、ためた利益は帳簿の額の価値にならない。香水の黒字化を確かめるまでは、見方を変えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安く見えるが、持ち続けたい事業ではない」。身の回り品は、縮む市場の中で地味に稼ぐ事業で、10年後に強くなる理由は乏しい。
オーナー利益、つまり株主のものになる利益は、直近で2億円弱だ。設備投資は軽いが、在庫と売掛金に資金が張りつく。稼ぎが大きく現金になるわけではない。
高級香水は、成功すれば成長の柱になる。ただ、赤字を出しながら出店を重ねる今は、資本の使い方として評価が分かれる。ブランドの契約に頼るため、成功しても堀は狭い。
経営は借金を返し、配当を保ってきた。この慎重さは良い。ただ、親会社の下で、少数株主のための資本配分が最優先になるとは限らない。
安全域は、自己資本の厚さにある。時価総額は自己資本の約3.5割で、悲観の場合でも大きくは割り込みにくい。ただ、その資産の大半は在庫と売掛金で、売れば目減りする。安さを額面どおりには受け取れない。
何で稼ぐ会社か
事業は二つに分かれる。身の回り品が売上の約84%、フレグランス(香水)が約16%だ。2026年3月期の売上は、身の回り品が109億円、香水が21億円。川辺は1923年に創業し、東京に本社を置く。東証スタンダードに上場している。
身の回り品は、ハンカチ・スカーフ・マフラー・タオル・雑貨を、直営店と卸売で売る。ジルスチュアートやケイト・スペード、ポロ・ラルフローレンなどのブランドの許諾を受けた商品が多い。販路は百貨店が51%、専門店・小売店が39%、量販店が9%だ。利益は6.1億円で、利益率は5.6%と安定している。
フレグランスは、ブルガリ、ヴァンクリーフ&アーペル、アクア ディ パルマなどの香水を輸入して売る。近年は、英国のクリードを日本で独占輸入する契約を結び、百貨店に専用の売り場を出した。2026年3月期は新規出店の費用が先行し、1.6億円の営業赤字になった。
全社の営業利益は1.9億円で、二つの事業の利益の合計4.5億円より小さい。差の約2.6億円が、本社や管理の費用だ。経常利益は3.2億円と、営業利益より1.3億円多い。営業外の収益の内訳は確かめられていない。
子会社は3社で、上海にも販売会社を持つ。親会社は一広で、2020年末に公開買付けで川辺を子会社にした。上場は維持されている。
優良さと弱いところ
優良さは、中の下だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、百貨店との長い取引と、ブランドの許諾・独占輸入の契約にある。ただ、どちらも契約の更新に左右され、ブランドの側が契約を打ち切れば消える。
営業利益率は、2015年以降の12年間で、マイナス4%からプラス4.3%の間を動いた。2020〜2022年3月期は百貨店の休業で赤字になり、立て直しにその後の3期を要した。直近の1.5%は、香水の出店費用のせいで低い。
ROEの10年の中央値は3%で、資本コストを大きく下回ってきた。自己資本は74億円と厚く、稼ぎに対して資本が重い。財務の堅さが、利益を生む力にはなっていない。
強みもある。在庫を絞り、借入を返して、純負債を2016年3月期の36億円から5億円まで減らした。この規律は評価できる。2026年3月期の純利益は半分以下に減ったが、配当の水準は保っている。
弱みは、親会社との関係だ。一広の意向が経営を決め、余った現金が少数株主にどれだけ戻るかは親会社次第になる。株主優待は、自社製品の贈呈で、費用は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
身の回り品の市場は、成熟から縮小の途中にある。ハンカチやスカーフは、使う人の減少で、数量が長期に減る。百貨店の売り場そのものも縮み、川辺の販路の半分が構造的に細る。
百貨店は、インバウンドの追い風で売上を回復したが、国内の客数は減っている。ブランドの許諾を受けた商品は、売り場の面積を取れるかで売上が決まる。売り場が減れば、卸の売上も減る。
一方、フレグランスは、国内の高級香水の市場が育っている。ニッチ香水や高級ブランドの人気で、百貨店の化粧品売り場の中でも成長が目立つ。ただ、この市場は競合が多い。大手の化粧品会社、専門の輸入商社、ブランド本体の直営が、同じ客を取り合う。
費用の面では、人件費と物流費が名目で年3〜5%上がる。ハンカチは中国とベトナムの工場で作られており、円安と原価高が仕入れに効く。親会社の一広は、海外工場の活用で原価を下げる方針を示していた。
筆者は10年の数量を、身の回り品で0.93倍、香水で約1.7倍と置く。身の回り品は価格を物価並みに上げられるが、数量の縮みを補いきれない。香水の伸びが、全体を支えるか、失敗して足を引っ張るかが分かれ目になる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、堅実で控えめだ。配当は年1回の期末のみで、2026年3月期は総額約0.9億円、配当性向は約49%だった。2027年3月期も同じ水準の予想で、利益が落ちても配当を保つ姿勢が見える。
株主優待は、自社製品の贈呈で、年の費用は1億円に届かないとみられる。価値には数えない。
借入は軽く、純負債は5億円。ここ10年で在庫を絞り、借入を返した。M&Aは、親会社の一広が2020年に公開買付けで子会社にした話が最大の出来事だ。川辺自身が買収を仕掛けた実績は小さい。
親会社が筆頭株主で、少数株主が還元を動かす余地は小さい。積み上がる現金の戻り方は、0.5とする。上場を維持した前提が崩れ、完全子会社化される可能性は、確率の中で楽観側に少し反映した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額26億円は、自己資本74億円の約3.5割にすぎない。本業の身の回り品は、利益率5%台で6億円の利益を出している。赤字の元は、香水の新規出店の費用だけで、これが一巡すれば全社の利益は一気に戻る。
香水は、クリードの独占輸入を取り、百貨店に専用の売り場を持った。高級香水は単価が高く、売り場が育てば利益率も上がる。会社は2027年3月期に経常利益3.5億円を見込み、回復の道筋を示している。
親会社の一広は、中国とベトナムの工場を持つ。原価を下げる仕組みが川辺に生かされれば、身の回り品の利益率も上がる。財務は堅く、配当性向約5割と、株主への還元の姿勢も明確だ。時価総額が小さく、親会社による完全子会社化の可能性も、価値を支える。身の回り品は縮む市場だが、価格を物価並みに上げる力は残っており、数量の減りは値上げである程度補える。さらに、百貨店の売り場は、インバウンドの追い風で改善しており、ブランドの許諾商品の売り場の確保にもつながっている。
慎重な見方
2026年3月期は、売上が増えたのに営業利益が4割近く減った。第4四半期の営業利益率は、前年の7.5%から1.6%まで落ちた。2027年3月期の第1四半期は、経常で約0.9億円の赤字で、会社の予想の達成も疑わしい。
身の回り品は、ハンカチを持つ人が減り、百貨店の売り場も縮む。数量は長期で細り、ブランド許諾の契約が打ち切られるリスクもある。新規出店の費用を回収できなければ、香水は赤字を垂れ流す事業になる。
ROEの10年の中央値は3%で、資本コストに大きく届かない。自己資本の厚さは、稼ぐ力に結びついていない。親会社が筆頭株主で、余った現金が少数株主に戻る保証はない。在庫と売掛金が中心の資産は、売れば目減りする。さらに、百貨店の売り場の面積は、売れ行きの悪いブランドから削られていく。許諾を受けた商品は、一度売り場を失うと取り戻しにくい。2027年3月期の通期予想は据え置かれたが、第1四半期の赤字を取り戻すには、残り3四半期で相当の改善が要る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが少し強い。強気の見方の言う、本業の安定と自己資本の厚さは確かだが、香水の黒字化はまだ証明されておらず、ROEの低さは長年変わらない。確率は、中立とやや悲観に厚めに置いた。現金の戻り方は、親会社の存在を踏まえて0.5とした。香水の黒字化が確かめられれば、見方は大きく変わる。逆に、赤字が2期以上続くなら、出店の拡大を止める判断が経営に求められる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,345 円43 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 629 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 1,455 円27 億円、今との差 +4.4%、 期待の年率 +7.9%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,384 円80 億円 | 986 円18 億円 | +285.3% | +14.4% | 430 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,305 円60 億円 | 822 円15 億円 | +196.0% | +11.5% | 825 円15 億円 |
| 中立 | 36% | 2,537 円46 億円 | 685 円13 億円 | +131.2% | +8.7% | 1,160 円21 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,222 円22 億円 | 438 円8 億円 | +19.1% | +1.8% | 432 円8 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,019 円19 億円 | 247 円5 億円 | −9.2% | −1.0% | 127 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,345 円43 億円 | 629 円11 億円 | +113.3% | +7.9% | 2,973 円54 億円 |
今の株価時価総額 1,394 円25 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 香水が黒字の柱になり、本業も堅調 利益 7 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,384 円80 億円
クリードを軸に、香水の売り場が全国の百貨店に広がり、販売本数が10年で2倍を超える。出店費用が一巡し、利益率は6%に達する。身の回り品は、数量を保ち、親会社の海外工場を生かした原価の改善で利益率が6%になる。全社費用は物価で増えるが、売上に対する比率は下がる。営業利益は9億円台、純利益は7億円近くになる。配当は5割前後を保ち、10年で18億円を戻す。香水の売り場が育つほど、1本あたりの利益は厚くなり、規模の効果も出る。筆者は、この筋書きは香水が全国の百貨店で定着した場合の上限と見ている。ブランド側の契約更新が前提になる。全社費用は増えるが、規模の効果で比率は下がる。
- 身の回り品(ハンカチ・スカーフ・タオル):数量 350(年間の販売点数(万点、推定))× 価格 0.43(1 点あたりの平均売上(万円・名目、卸値と直営の混合))→ 売上 151 億円・営業利益 9 億円。350 万点 × 1 点 0.4313 万円(今の 1.38 倍)、利益率 6.0%
- フレグランス(香水):数量 28.0(年間の販売本数(万本、推定))× 価格 2.45(1 本あたりの平均売上(万円・名目、卸値と直営の混合))→ 売上 69 億円・営業利益 4 億円。28 万本 × 1 本 2.4500 万円(今の 1.40 倍)、利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 80 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:香水の出店が軌道に乗り、売上が倍以上に伸びる道。ブランド契約の維持と百貨店の客足が前提で、実現は少数と見る。
やや楽観 20% 香水は黒字化、本業は緩やかに縮む 利益 5 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,305 円60 億円
香水の販売本数は2倍に増え、利益率は4.5%まで上がる。身の回り品は、数量が4%減るが、価格が物価並みの1.36倍まで上がり、利益率は5.5%を保つ。全社費用は物価で上がる。営業利益は約7億円で、純利益は5億円。配当は5割弱で、10年で15億円を戻す。香水の売り場の拡大は、百貨店の売り場の確保とブランドの契約に左右される。価格を物価並みに上げられるかが、利益率を保つ条件になる。身の回り品の縮みを香水で埋める、堅実な形だ。出店のペースを急ぎすぎないことが条件になる。全社費用の増加は、売上の伸びで吸収できる範囲にとどまる。
- 身の回り品(ハンカチ・スカーフ・タオル):数量 335(年間の販売点数(万点、推定))× 価格 0.43(1 点あたりの平均売上(万円・名目、卸値と直営の混合))→ 売上 142 億円・営業利益 8 億円。335 万点 × 1 点 0.4250 万円(今の 1.36 倍)、利益率 5.5%
- フレグランス(香水):数量 24.0(年間の販売本数(万本、推定))× 価格 2.40(1 本あたりの平均売上(万円・名目、卸値と直営の混合))→ 売上 58 億円・営業利益 3 億円。24 万本 × 1 本 2.3975 万円(今の 1.37 倍)、利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 60 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:香水が黒字になるが、本業の縮みを相殺する程度にとどまる形。直近の出店費用が、比較的早く回収される前提が要る。
中立 36% 香水は小さな黒字、本業はじわり縮む 利益 4 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,537 円46 億円
香水の販売本数は10年で1.7倍に増え、利益率は3.5%の小さな黒字になる。身の回り品は、数量が7%減り、価格は物価並みの1.34倍まで上がる。利益率は5%を保つ。全社費用は物価で増え、3.4億円になる。営業利益は5億円で、利益率は2.8%。純利益は3.9億円、配当は約4.5割で、10年で12.5億円を戻す。会社の予想する経常3.5億円は、この筋書きより早い回復を前提にしている。筆者が最も起こりやすいと見る姿は、地味な安定だ。香水が小さな黒字に落ち着き、身の回り品は価格の上昇で数量の縮みを補う。大きな成長はないが、財務の堅さは変わらない。全社費用は物価で増え、利益率を押し下げる。
- 身の回り品(ハンカチ・スカーフ・タオル):数量 325(年間の販売点数(万点、推定))× 価格 0.42(1 点あたりの平均売上(万円・名目、卸値と直営の混合))→ 売上 136 億円・営業利益 7 億円。325 万点 × 1 点 0.4188 万円(今の 1.34 倍)、利益率 5.0%
- フレグランス(香水):数量 20.0(年間の販売本数(万本、推定))× 価格 2.35(1 本あたりの平均売上(万円・名目、卸値と直営の混合))→ 売上 47 億円・営業利益 2 億円。20 万本 × 1 本 2.3450 万円(今の 1.34 倍)、利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.3% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 46 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の来期予想(経常3.5億円)をそのまま信じず、10年かけて香水が小さな黒字に落ち着く形。本業の縮みは価格で一部補う。
やや悲観 26% 香水が赤字のまま、本業も縮む 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,222 円22 億円
香水の出店が想定ほど売れず、販売本数は1.2倍にとどまり、赤字が続く。身の回り品は、数量が16%減り、価格は物価に届かず1.30倍になる。利益率は3.8%に落ちる。全社費用は物価で上がり、営業利益はほぼゼロになる。配当は縮み、10年で8億円の還元にとどまる。床は、在庫と売掛金などの現金化で回収できる資産に置く。香水の売り場を増やすたびに、費用が先に出る負担は続く。それでも黒字を保てるのは、身の回り品の利益が下支えするためだ。香水の損失を、本業の稼ぎで埋める形が続く。全社費用は物価で増え、利益の余地をさらに狭める。
- 身の回り品(ハンカチ・スカーフ・タオル):数量 295(年間の販売点数(万点、推定))× 価格 0.41(1 点あたりの平均売上(万円・名目、卸値と直営の混合))→ 売上 120 億円・営業利益 5 億円。295 万点 × 1 点 0.4063 万円(今の 1.30 倍)、利益率 3.8%
- フレグランス(香水):数量 14.0(年間の販売本数(万本、推定))× 価格 2.19(1 本あたりの平均売上(万円・名目、卸値と直営の混合))→ 売上 31 億円・営業利益 −1 億円。14 万本 × 1 本 2.1875 万円(今の 1.25 倍)、利益率 -2.0%
倍率:稼ぐ力が小さいので、今の自己資本(74 億円)に PBR 0.3 を掛けた床(約 22 億円)で置く。
確率:香水の出店費用が回収できず、赤字が続く形。2020〜2022年3月期の赤字のように、百貨店の客足が落ちる局面も含む。
悲観 10% 許諾契約の打ち切りと百貨店の縮小で本業が傷む 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,019 円19 億円
ブランドの許諾の打ち切りが相次ぎ、百貨店の売り場も縮む。身の回り品の数量は3割減り、価格も物価の6割程度しか上がらない。香水は撤退か大幅な縮小に追い込まれ、赤字が膨らむ。全社費用を減らしても、営業利益は3億円近い赤字になる。親会社の意向で事業の整理が進むが、配当は大きく縮む。床は、在庫・売掛金の現金化で回収できる資産の約25%に置く。在庫の評価損が膨らめば、自己資本そのものも削られる。筆者はこの筋書きを、確率は低いが無視できないと見る。ブランドの許諾に頼る事業は、契約を失った時の落ち込みが大きい。全社費用の削減は進むが、減る売上に追いつかない。
- 身の回り品(ハンカチ・スカーフ・タオル):数量 245(年間の販売点数(万点、推定))× 価格 0.38(1 点あたりの平均売上(万円・名目、卸値と直営の混合))→ 売上 92 億円・営業利益 1 億円。245 万点 × 1 点 0.3750 万円(今の 1.20 倍)、利益率 1.5%
- フレグランス(香水):数量 8.0(年間の販売本数(万本、推定))× 価格 2.10(1 本あたりの平均売上(万円・名目、卸値と直営の混合))→ 売上 17 億円・営業利益 −1 億円。8 万本 × 1 本 2.1000 万円(今の 1.20 倍)、利益率 -8.0%
倍率:稼ぐ力が消えるので、今の自己資本(74 億円)に PBR 0.25 を掛けた床(約 19 億円)で置く。
確率:ブランド許諾の打ち切りと百貨店の売り場の縮小が重なり、香水も撤退に追い込まれる構造的な負けの形。確率は低いが、起これば赤字が続く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
身の回り品(ハンカチ・スカーフ・タオル)
ハンカチ・スカーフ・マフラー・タオル・雑貨を、百貨店・専門店・量販店に卸し、直営店でも売る。ブランドの許諾商品が中心。
| 数量年間の販売点数(万点、推定) | 価格1 点あたりの平均売上(万円・名目、卸値と直営の混合) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 350 | 0.31 | 109 | 6 |
| 10 年後 中立 | 325 | 0.42 | 136 | 7 |
取り方:点数は開示が無いので推定。売上109.4億円を1点あたり平均約0.31万円(卸値の洋品の価格帯に、直営の高単価品を含む)として約350万点と置いた。利益はセグメント利益6.1億円。
フレグランス(香水)
ブルガリ・クリードなどの高級香水を輸入し、百貨店の直営店と卸売で売る。新規出店の費用が先行して赤字。
| 数量年間の販売本数(万本、推定) | 価格1 本あたりの平均売上(万円・名目、卸値と直営の混合) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 1.75 | 21 | −2 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 2.35 | 47 | 2 |
取り方:本数は開示が無いので推定。売上21.0億円を1本あたり平均約1.75万円(高級香水の卸値と直営の混合)として約12万本と置いた。利益はセグメント利益−1.59億円。
リスクと懸念
香水の赤字が続く
フレグランスは2026年3月期に1.6億円の営業赤字で、新規出店の費用が先行している。2027年3月期の第1四半期も経常赤字で、売り場が育たなければ、赤字を垂れ流す事業になる。
ブランド許諾の打ち切り
身の回り品は、ブランドの許諾商品が中心で、香水も独占輸入契約に頼る。契約の更新を断られれば、売上と在庫の価値が一気に落ちる。
百貨店の縮小とハンカチ需要の細り
販路の半分が百貨店で、売り場の面積が減れば卸の売上も減る。ハンカチを持つ人の減少は、数量を長期で押し下げる。
親会社の下で戻らない現金
一広が筆頭株主で、少数株主が還元を動かす余地は小さい。積み上がる現金や自己資本の厚さが、株主に戻る保証はない。
資産の目減り
自己資本の大半は在庫と売掛金とみられ、売れば目減りする。悲観の床を自己資本の2〜3割に置いたのは、このためだ。
今後の分かれ目
- フレグランスの営業損益が黒字に転じ、2期続いたら
- 香水の黒字化が確かめられた合図。やや楽観・楽観の確率を上げてよい。
- ブランド許諾の契約が打ち切られたら
- 悲観の筋書きに重みを移す。在庫の評価損にも注意。
- 親会社の一広が完全子会社化を発表したら
- 筋書きの外。買付価格を、自己資本と稼ぐ力の両方で見比べる。
- 配当性向が6割を超えたら
- 余った現金の戻り方を0.75に近づけてよい。
- 百貨店の売り場縮小で卸の点数が年5%を超えて減ったら
- やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- フレグランスの営業損益と新規出店の数
- 百貨店向けの売上の動きと、ブランド許諾の更新
- 親会社の一広の持株比率と、配当方針の開示
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト 8.5% に届かないことから 1/k(約 11.8 倍)を上限とし、同じ領域のムーンバットと同じ上限の 7〜9 割に置いた。今の株価・過去の PBR・同業の倍率は倍率の根拠に使っていない。純負債(5 億円)なので余った現金は分けず、積み上がる現金は戻り方 0.5 で自動の計算に任せる。直営店の賃借があるが、新リース会計基準で数字の形が変わる点は、10 年後も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→11.76 倍・やや楽観 PER 10→11.76 倍・中立 PER 9→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。