結論
ラサ商事は、ジルコンサンドなどの鉱産物を輸入し、鉱山や製鉄所向けのポンプを売る専門商社だ。六つの事業のうち、利益の主役はポンプと整備で、全体の過半を稼ぐ。ほかに、高炉の水砕設備、化学品、プラント工事、東京都心の賃貸ビルがある。
筆者の結論は「適正から、やや割高」だ。会社は堅い。無借金で、配当と自社株買いも厚い。だが、直近の利益は山の高さにある。環境設備で大型案件が重なり、営業利益は30億円に届いた。会社自身が、次の期は25億円に戻ると見ている。
10年の見通しは、数量が細り、物価の分の値上げで補う形になる。国内の製鉄所や石油化学が縮み、ポンプや設備の需要は人口とともに減る。電気炉への移行は、高炉の水砕設備にも逆風だ。
もうひとつの特徴は、資本の厚さだ。利益の4割を内部にためる方針のため、自己資本が積み上がり、ROEは10年後に7%台へ下がる。この資本の余りが、倍率を押し下げる。
一方で、ポンプの部品と整備という、一度入れたら続く収益の核がある。これが下値を支える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い事業の、小さな商い」だ。ポンプの整備のように、一度入れたら続く収益は魅力だ。経営も堅く、借金がない。
ただし、筆者は二つの点を気にしている。一つは、オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益の質だ。営業利益30億円は、環境設備の山に支えられている。ならした利益は25億円ほどで、これを基準に見るべきだ。もう一つは、資本の使い道だ。利益の4割を内部にため、自己資本は10年で1.4倍に膨らむ。ためた現金の稼ぎは2%ほどで、資本コストを下回る。ROEが落ちるのは、そのためだ。
堀の幅と持続は、代理店の権利の更新に左右される。ジルコンの契約は2年更新で、10年後を言い切れない。
払う値段の観点では、今の値段は、ならした利益に対して妥当な水準にある。安全域はほとんどない。配当と自社株買いの厚さは魅力だが、それは価値を生む源ではなく、利益を株主に返しているにすぎない。値段が十分に下がれば、持ち続けたい会社になる。
何で稼ぐ会社か
ラサ商事は、1939年設立の独立系の専門商社だ。海外のメーカーの代理店として、ニッチな分野で国内の販売を担う。2026年3月期の売上は282億円で、六つの事業に分かれる。
最大は産機・建機で、売上の35%、利益の半分強を占める。柱は、豪ワーマン社のスラリーポンプ(鉱山や製鉄所で使う、砂や泥を含む液を送る耐摩耗ポンプ)だ。1959年に日本へ導入し、販売後の部品交換と整備が収益を支える。小型建機やシールド掘進機のレンタルも手がける。
環境設備は、ドイツ製の高圧ピストンポンプと、製鉄所の高炉スラグを粒状にする水砕設備「ラサ・システム」を扱う。官庁向けの汚泥ポンプも主力で、売上は小さいが利益率は高い。
資源・金属素材は、豪アイルカ社のジルコンサンドの日本総代理店だ。耐火材、鋳造、セラミックスの原料になる。化成品は、合成樹脂と添加剤の販売で、利益率は2%ほどと薄い。プラント・設備工事は、京葉臨海コンビナートで石油精製や化学の設備を請け負う。不動産賃貸は、日本橋などのビルを貸す。
連結の従業員は262人で、少人数だ。代理店契約の更新が、事業の継続の鍵になる。産機・建機、環境設備、プラントの売上は第4四半期に偏る。
優良さと弱いところ
強みは、技術と代理店の権利を押さえた「ニッチの選別眼」だ。ワーマンポンプは、日本でトップクラスのシェアと会社が自称する。ポンプは一度入ると、部品と整備の需要が続く。2026年3月期は、産機・建機の部品・整備の好調で、売上が減っても利益が増えた。これが堀、つまり他社が簡単にまねできない強みの中身である。
財務は強い。借金はなく、自己資本比率は7割を超える。純現金は27億円ある。政策保有株は14銘柄で13億円ほどと少なく、毎年売却を進めている。営業利益率は、10年前の4%台から10%台へ上がった。経営の質は高い。
弱みは三つある。第一に、権利が自社のものではない。ジルコンサンドは豪アイルカ社と2年ごとの契約で、現契約は2027年末までだ。ワーマンポンプも、持分法の関連会社である大平洋機工を通じた契約だ。第二に、利益の山が高い。環境設備は前期に利益が倍になった。次の期の会社予想は減益だ。第三に、資源・化成品の利益率は2%以下で、市況と販売費で簡単に消える。
筆者は、堀を「普通」に置く。ポンプの整備は強いが、利益の半分を代理店契約に預けているからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ラサ商事の事業は、日本の重厚長大産業の設備と素材に結びつく。数量は人口とともに縮み、物価の分で名目が支えられる、成熟した領域である。
鉱産物は、中国の需要が弱く、世界の供給が絞られている。ジルコンの契約価格は、2026年7〜9月期に1トン1,760ドル前後へ上がったと、アイルカ社が説明した。2028年以降に供給が足りなくなるという見方もある。ただし、日本向けの数量は、鋳造や耐火材の国内産業が縮むため、増えにくい。
ポンプと環境設備は、鉄鋼の変化に左右される。国内の高炉は電気炉へ移りつつあり、水砕設備の新設は減る。一方で、既存設備の整備と改良は残る。官庁向けの下水道ポンプは、更新需要が続くが、予算で決まる。
競合は、荏原などの国産ポンプメーカーや、古河産機システムズ、みつわポンプ製作所、海外のITTなどだ。ワーマンはスラリーポンプの世界最大手の一つで、日本の代理店としての位置は強い。化学品や樹脂の商社は競合が多く、値段は主要な仕入先に左右される。
プラント工事は、石油化学の再編で国内の設備が減る。その中で、定期修繕の工事は続く。全体として、成長は望めないが、保守という安定した収入が残る領域である。
資本政策と M&A
株主への戻し方は厚い。中期経営計画では、配当性向40%前後を維持し、総還元性向を50%以上とする。2026年3月期の年間配当は前期より1割ほど増えた。自社株買いも、同期に5億円ほど行った。総還元性向は6割に近い。
次の期の会社予想も、配当は据え置きだ。利益が減る中でも、配当を落とさない姿勢が見える。
中期経営計画「Step Forward Rasa 2027」は、2028年3月期に売上315億円、営業利益29億円を目標にする。ROE10%以上と、営業利益率9%以上の指標も掲げる。2026年3月期の実績は、すでにほぼ達成している。ただし、環境設備の山がそれを押し上げた。
M&Aは小さい。外部の推計では、10年以内の買収や公開買付けの確率が2割台とされるが、確かな材料はない。大株主は信託銀行や日本生命で、支配する株主はいない。
政策保有株は、ラサ工業や三機工業など13億円ほどで、ほくほくフィナンシャルグループは全株を売った。配当は利益に含まれているので、価値には別に足さない。賃貸ビルの時価は開示がなく、ここでも足さない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ポンプの部品と整備は、一度入れた設備の寿命に合わせて続く収益だ。ワーマンは世界最大手のブランドで、国内の鉱山や製鉄所、電力、半導体など、幅広い顧客を持つ。2026年3月期は、官庁向けが低迷する中でも、民間向けの部品・整備で利益が伸びた。
資源も追い風になりうる。ジルコンの契約価格は上がっており、2028年以降の供給不足の見方もある。チタン関連素材やアルミナの輸入も広がり始めた。環境設備は、利益率が24%と高く、水砕設備の改良や海外製の特殊ポンプの案件が続けば、山は一時的ではなく、水準の切り上がりになる。
会社の中期計画は、すでに前倒しで達成した。配当性向40%前後と総還元性向50%以上の約束は守られ、2026年3月期は6割近くを返した。無借金で現金を持ち、景気が悪化しても耐えられる。物価の分は価格に転嫁できるため、名目の利益は伸び続ける。
さらに、会社は小さいぶん、意思決定が速い。連結の従業員は262人で、重い組織を抱えない。代理店として得た知識と顧客との関係は、長年の蓄積だ。プラント工事の子会社が持つ袖ケ浦の工場も、同業との差になっている。
慎重な見方
今の利益は山の高さにある。環境設備は売上が7割近く増え、利益が倍になったが、大型案件の反動で、次の期の会社予想は営業利益が25億円へ15%減る。第1四半期は増益だったが、産機・建機の利益は3割以上減った。原価率の高い大型案件が圧迫している。
数量は構造的に細る。国内の高炉は電気炉へ移り、水砕設備の新設は減る。石油化学は再編で設備が減り、プラント工事の量も縮む。化成品は利益率が2%ほどで、仕入先の都合で簡単に消える。資源は、中国の輸出管理で納期が延び、利益が4割減った。
代理店の権利は他人のものだ。ジルコンの契約は2027年末で切れる。ワーマンの総販売代理店契約も、大平洋機工という関連会社を通じており、2029年に切れる。メーカーが直接販売に切り替えれば、利益の柱が失われる。
資本も重い。利益の4割を内部にため続けると、ROEは資本コストを割り込む。10年後に資本効率の悪い会社になる。
加えて、規模が小さく、一つの案件のぶれが利益に大きく出る。2026年3月期のように大型案件が重なれば山になり、重ならなければ谷になる。株式市場が、山の年の利益をそのまま続くものと見ているなら、その見方は危うい。
どちらに重みを置いたか
ポンプの整備という堅い収益の核は、強気の言い分が正しい。一方で、山の高さと、代理店契約の不確かさ、ためすぎる資本の指摘も的を射る。中立の筋書きは、数量が細り、利益はならして横ばい、ROEは7%台に下がる形だ。
確率は、中立を最も厚くし、やや悲観にやや寄せた。代理店契約の更新リスクが片側に偏るためだ。ただし、整備収益の底堅さを考えて、悲観は1割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,172 円348 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,184 円130 億円)。 今の値に割り戻すと 2,410 円264 億円、今との差 +17.0%、 期待の年率 +7.8%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,086 円557 億円 | 1,524 円167 億円 | +221.0% | +12.4% | 529 円58 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,253 円466 億円 | 1,378 円151 億円 | +173.5% | +10.6% | 1,126 円123 億円 |
| 中立 | 37% | 3,743 円410 億円 | 1,277 円140 億円 | +143.8% | +9.3% | 1,858 円204 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,861 円204 億円 | 958 円105 億円 | +36.9% | +3.2% | 705 円77 億円 |
| 悲観 | 10% | 649 円71 億円 | 739 円81 億円 | −32.6% | −3.9% | 139 円15 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,172 円348 億円 | 1,184 円130 億円 | +111.6% | +7.8% | 4,356 円477 億円 |
今の株価時価総額 2,059 円226 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% ポンプの整備と資源が重なり、利益が4割増える 利益 34 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 5,086 円557 億円
ジルコンサンドは供給が足りなくなり、価格は物価を上回って5割上がる。チタン関連素材とアルミナの輸入も伸びて、資源・金属素材の利益率は5%に上がる。ワーマンポンプは、鉱山と半導体向けの部品・整備が伸び、数量が5%増える。
環境設備は、水砕設備の改良と、下水道ポンプの更新需要で、山の水準が切り上がる。化成品は、半導体向け電線の回復で量が伸びる。
営業利益は43億円になり、今の1.4倍だ。利益の半分ほどを返し、ROEは10%近くを保つ。代理店契約はすべて更新され、会社の中期計画の延長線上の10年になる。
- 資源・金属素材:数量 2.6(取扱数量(万トン換算。推定))× 価格 35(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 92 億円・営業利益 5 億円。数量1割増、価格5割増、利益率5%
- 産機・建機:数量 1,050(取扱件数・台数(部品・整備を件数に換算。推定))× 価格 0.14(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 147 億円・営業利益 24 億円。数量5%増、価格4割増、利益率16%
- 環境設備:数量 80.0(取扱件数(設備・ポンプ本体と整備案件。推定))× 価格 0.43(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 7 億円。山から数量2割減、利益率20%
- 化成品:数量 2.4(取扱数量(万トン。推定))× 価格 42(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 99 億円・営業利益 2 億円。数量5%増、利益率2.5%
- プラント・設備工事:数量 100(工事・保守の件数(推定))× 価格 0.36(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 2 億円。数量横ばい、利益率6.5%
- 不動産賃貸:数量 1.2(賃貸面積(万平方メートル。推定))× 価格 4.46(1 万平方メートルあたり年間賃料(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。面積同じ、賃料4割増、利益率58%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.16 倍、時価総額 554 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ジルコンの需給逼迫、ワーマンの整備の拡大、環境設備の山の定着が同時に起きる必要がある。代理店契約を維持したうえでの上振れなので、1割未満にとどめた。
やや楽観 20% 整備が底堅く、資源も回復する 利益 29 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 4,253 円466 億円
ポンプの部品と整備が堅調で、産機・建機の利益率は15%を保つ。ジルコン価格は高値圏が続き、資源・金属素材の利益率は4%に戻る。環境設備は、山から3割ほど落ち着くが、官庁向けの更新で利益率は19%を保つ。
国内の製鉄所の電気炉への移行は進み、水砕設備の新設は減る。それでも、整備と改良の需要が残る。化成品とプラント工事は、小幅に伸びる。
営業利益は36億円で、今の2割増だ。ROEは8%台で、資本コストにやや届かない。
ネット通販のような新しい販路はないが、官庁の下水道更新と、民間の整備需要が、数量の減りを一部補う。景気後退が一度来ても、整備収益は大きくは崩れない。
- 資源・金属素材:数量 2.4(取扱数量(万トン換算。推定))× 価格 33(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 79 億円・営業利益 3 億円。数量横ばい、価格4割増、利益率4%
- 産機・建機:数量 1,000(取扱件数・台数(部品・整備を件数に換算。推定))× 価格 0.14(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 136 億円・営業利益 20 億円。数量横ばい、価格36%増、利益率15%
- 環境設備:数量 70.0(取扱件数(設備・ポンプ本体と整備案件。推定))× 価格 0.42(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 6 億円。山から数量3割減、利益率19%
- 化成品:数量 2.2(取扱数量(万トン。推定))× 価格 41(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 91 億円・営業利益 2 億円。数量横ばい、利益率2.2%
- プラント・設備工事:数量 97.0(工事・保守の件数(推定))× 価格 0.35(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 2 億円。数量3%減、利益率6%
- 不動産賃貸:数量 1.2(賃貸面積(万平方メートル。推定))× 価格 4.27(1 万平方メートルあたり年間賃料(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。面積同じ、賃料34%増、利益率56%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.53 倍、時価総額 447 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:民間向けの部品・整備の好調が続き、ジルコン価格が高止まりする。会社の中期計画が示す水準に近く、重みを置く。
中立 37% 数量は細り、物価の値上げで利益はならして横ばい 利益 25 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 3,743 円410 億円
数量は全体で1割ほど細る。国内の鉱山、製鉄、石油化学が縮み、ポンプの新設は減る。環境設備は、2026年3月期の山から4割落ち着く。それでも、整備と部品の収入は続く。
価格は物価並みの34%増で、人件費と仕入れ値の上昇を吸収する。営業利益率は9%台で、ここ数年と同じだ。営業利益は31億円で、山の30億円と並ぶが、ならした水準と比べれば小幅な増加だ。
純利益は25億円で、利益の6割を返す。自己資本は10年で1.4倍に膨らみ、ROEは7%台へ下がる。ジルコンとワーマンの契約は更新され、会社は穏やかな横ばいの10年を過ごす。
- 資源・金属素材:数量 2.2(取扱数量(万トン換算。推定))× 価格 31(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 67 億円・営業利益 2 億円。数量1割減、価格34%増、利益率3%
- 産機・建機:数量 950(取扱件数・台数(部品・整備を件数に換算。推定))× 価格 0.13(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 127 億円・営業利益 18 億円。数量5%減、価格34%増、利益率14.5%
- 環境設備:数量 60.0(取扱件数(設備・ポンプ本体と整備案件。推定))× 価格 0.41(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 4 億円。山から数量4割減、利益率18%
- 化成品:数量 2.1(取扱数量(万トン。推定))× 価格 40(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 2 億円。数量5%減、利益率2%
- プラント・設備工事:数量 95.0(工事・保守の件数(推定))× 価格 0.35(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。数量5%減、利益率5.5%
- 不動産賃貸:数量 1.2(賃貸面積(万平方メートル。推定))× 価格 4.14(1 万平方メートルあたり年間賃料(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。面積同じ、賃料3割増、利益率55%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.06 倍、時価総額 376 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社予想(次の期は営業利益25億円)と、2026年3月期の山を除いた水準を踏まえた、最も自然な筋書き。数量の減りは国内の人口と産業の縮みに合わせた。
やや悲観 25% 資源の失速と水砕設備の縮みで、利益が3割減る 利益 17 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,861 円204 億円
ジルコンの価格は物価ほど上がらず、中国の需要も弱いままで、資源の利益率は1.5%に落ちる。高炉の電気炉への移行が速まり、水砕設備の新設は消え、環境設備は山から半分以下に縮む。
ポンプの新設も減り、産機・建機の数量は15%減る。部品・整備は続くが、メーカーが取り分を増やし、利益率は12%に下がる。プラント工事は、石油化学の設備再編で量が2割減る。
営業利益は21億円、純利益は17億円で、ROEは5%台まで下がる。配当は守るが、自社株買いは減る。
代理店契約は更新されるが、条件はやや厳しくなる。景気後退が一度来て、設備投資が止まる年がある。それでも、整備と賃貸の収入が残り、赤字にはならない。
- 資源・金属素材:数量 1.9(取扱数量(万トン換算。推定))× 価格 29(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 1 億円。数量2割減、価格25%増、利益率1.5%
- 産機・建機:数量 850(取扱件数・台数(部品・整備を件数に換算。推定))× 価格 0.13(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 110 億円・営業利益 13 億円。数量15%減、価格30%増、利益率12%
- 環境設備:数量 45.0(取扱件数(設備・ポンプ本体と整備案件。推定))× 価格 0.40(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 3 億円。山から数量55%減、利益率14%
- 化成品:数量 1.9(取扱数量(万トン。推定))× 価格 39(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 1 億円。数量15%減、利益率1.5%
- プラント・設備工事:数量 80.0(工事・保守の件数(推定))× 価格 0.34(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。数量2割減、利益率4%
- 不動産賃貸:数量 1.2(賃貸面積(万平方メートル。推定))× 価格 3.66(1 万平方メートルあたり年間賃料(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。面積同じ、賃料15%増、利益率50%
倍率:事業ROE 5.3%はk 7.25%を大きく下回り、上限は1÷k=12.5倍。資源の失速と水砕設備の縮みで稼ぎが細る筋書きなので、上限の約72%の9.0倍に置いた。
確率:ジルコンの価格が戻り、国内の製鉄・化学の縮みが速まる。代理店の条件もやや悪くなる。複数の逆風が同時に来るが、事業は続く。
悲観 10% 代理店の権利を失い、構造的に縮む 利益 8 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 649 円71 億円
アイルカ社が直接販売に切り替え、または別の代理店に移り、ジルコンの取扱はほぼ消える。ワーマンのメーカーが日本で直接販売を広げ、ラサ商事の産機・建機の取扱は4割減る。環境設備は、高炉の縮みで水砕設備がなくなり、山から7割減る。
化成品とプラント工事も、国内の産業の縮みで3割から4割減る。賃貸ビルは残るが、賃料の伸びは止まる。
営業利益は10億円まで落ちる。会社は赤字にはならないが、稼ぐ力は今の3分の1だ。純現金と賃貸ビル、政策保有株に価値の大半が移る。少数株主は、会社を畳めないので、資産を自由には取り出せない。
- 資源・金属素材:数量 0.5(取扱数量(万トン換算。推定))× 価格 28(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。数量8割減、価格20%増、利益率0%
- 産機・建機:数量 600(取扱件数・台数(部品・整備を件数に換算。推定))× 価格 0.12(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 75 億円・営業利益 6 億円。数量4割減、価格25%増、利益率8%
- 環境設備:数量 30.0(取扱件数(設備・ポンプ本体と整備案件。推定))× 価格 0.39(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。山から数量7割減、利益率10%
- 化成品:数量 1.6(取扱数量(万トン。推定))× 価格 38(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 59 億円・営業利益 1 億円。数量3割減、利益率1%
- プラント・設備工事:数量 60.0(工事・保守の件数(推定))× 価格 0.32(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。数量4割減、利益率2%
- 不動産賃貸:数量 1.2(賃貸面積(万平方メートル。推定))× 価格 3.18(1 万平方メートルあたり年間賃料(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。面積同じ、賃料据え置き、利益率45%
倍率:事業ROE 2.6%はk 7.25%を大きく下回る。代理店を失い、稼ぐ力が細った会社なので、事業の質が崩れた筋書きだが、純現金・政策保有株・賃貸ビルの床(約70億円)に近い9.0倍に置いた。稼ぐ力は純利益8億円÷k=約99億円で、時価総額はこれ以下。
確率:ジルコンの契約は2027年末まで、ワーマンの契約は2029年までで、いずれも更新が不確かだ。ただし、整備と代理店の関係は長く、両方が同時に切れる確率は高くない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
資源・金属素材
ジルコンサンド(豪アイルカ社の日本総代理店)を中心に、チタン関連素材やアルミナなどの鉱産物を輸入・販売する。
| 数量取扱数量(万トン換算。推定) | 価格1 万トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.4 | 23 | 56 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2.2 | 31 | 67 | 2 |
取り方:資源・金属素材の売上55.5億円を、取扱数量2.4万トン換算と、1万トンあたり23.1億円に分けた推定。ジルコンサンドの契約価格が1トン1,500ドル前後(150円換算で約22万円)なので、ほぼジルコン中心の換算とした。チタン関連やアルミナも含むため、数量は目安。開示は金額だけで、数量は推定。
産機・建機
ワーマンポンプ(鉱山・製鉄向けのスラリーポンプ)の販売と部品・整備、小型建機・シールド掘進機の販売とレンタル。
| 数量取扱件数・台数(部品・整備を件数に換算。推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 0.10 | 100 | 16 |
| 10 年後 中立 | 950 | 0.13 | 127 | 18 |
取り方:産機・建機の売上99.9億円を、年1,000件・台の取扱(部品・整備の小口を件数に換算)と、1件あたり約1,000万円に分けた推定。開示は金額だけ。国内の鉱山・製鉄・電力向けの設備は人口とともに細り、数量は10年でやや減る。部品・整備は設備の稼働に比例して続く。
環境設備
ドイツ製の高圧ピストンポンプ、特殊ポンプの輸入販売と整備、高炉スラグの水砕設備「ラサ・システム」。
| 数量取扱件数(設備・ポンプ本体と整備案件。推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.31 | 31 | 8 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 0.41 | 25 | 4 |
取り方:環境設備の売上30.9億円を、年100件(設備の本体、ピストンポンプ、整備案件)と、1件あたり約3,100万円に分けた推定。2026年3月期は売上が66%増えた山で、水砕設備の改良工事と官庁向けの大型案件が重なった。10年の数量は、この山から戻る前提で置く。
化成品
合成樹脂・添加剤などの化学品を、自動車・建材・電気電子向けに販売する。
| 数量取扱数量(万トン。推定) | 価格1 万トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.2 | 30 | 67 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2.1 | 40 | 86 | 2 |
取り方:化成品の売上67.2億円を、樹脂・添加剤の取扱2.24万トンと、1トンあたり約30万円に分けた推定。開示は金額のみ。自動車・建材・電気電子向けで、国内の人口減で数量はやや細る。
プラント・設備工事
子会社の旭テックが、石油精製・石油化学・ガスなどの設備の設計・施工・保守を請け負う。
| 数量工事・保守の件数(推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.26 | 26 | 2 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 0.35 | 33 | 2 |
取り方:プラント・設備工事の売上26.0億円を、年100件の工事・保守と、1件あたり約2,600万円に分けた推定。京葉臨海コンビナートの定期修繕が中心。開示は金額のみ。
不動産賃貸
東京都心(日本橋など)の賃貸ビルと賃貸用の土地を貸す。
| 数量賃貸面積(万平方メートル。推定) | 価格1 万平方メートルあたり年間賃料(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 3.18 | 4 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1.2 | 4.14 | 5 | 3 |
取り方:不動産賃貸の売上3.8億円を、賃貸面積1.2万平方メートルと、1万平方メートルあたり約3.2億円に分けた推定。日本橋のビル2棟と賃貸用の土地3か所。面積は帳簿価額と賃料から置いた粗い推定で、価格は賃料の水準。
リスクと懸念
ジルコンサンドの代理店契約
豪アイルカ社との日本総代理店契約は、2027年末までだ。更新されなければ、資源・金属素材の取扱が消える。利益は小さいが、チタンやアルミナなど周辺の取扱も、この関係に支えられている。
ワーマンポンプの契約構造
ポンプの総販売代理店契約は、持分法の関連会社である大平洋機工を通じて結ばれ、2029年6月までだ。メーカーが日本で直接販売を広げれば、利益の半分を占める産機・建機が揺らぐ。
環境設備の山の反動
2026年3月期は、売上が66%増え、利益が倍になった。官庁向けの大型案件と水砕設備の改良工事が重なった結果だ。次の期の会社予想は営業利益が15%減り、第1四半期の売上は24%減った。山を前提にすると見誤る。
国内の製鉄・化学の縮み
高炉の電気炉への移行で、水砕設備の新設は減る。石油化学の再編で、プラント工事の量も縮む。ポンプの需要は、顧客の設備投資に左右される。人口減による国内需要の縮みが、数量に効く。
中国の輸出管理と資源の市況
第1四半期は、中国の輸出管理の強化で納期が延び、資源・金属素材の利益が3割減った。ジルコンの価格は上がっているが、中国の需要は弱い。市況の変動が利益を左右する。
資本をためすぎるリスク
利益の4割を内部にため、自己資本は10年で1.4倍に膨らむ見込みだ。現金の稼ぎは2%ほどで、資本コストを下回る。還元を増やさなければ、ROEは7%台へ下がる。
今後の分かれ目
- アイルカ社が、2027年末以降の総代理店契約の更新を発表した
- 資源・金属素材のリスクが後退する。悲観の確率を下げ、中立に重みを移す。
- ワーマンのメーカーが、日本で直接販売を始めた
- 産機・建機の数量を下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 環境設備の売上が、2期続けて30億円を超えた
- 山ではなく水準の切り上がりと見て、楽観側に重みを移す。
- 総還元性向が7割を超える方針に変わった
- 資本のためすぎが解消されるため、ROEの低下が和らぎ、中立のPERを少し上げて見る。
- 中国の輸出管理が緩み、第2四半期以降の資源の納期が正常化した
- 資源・金属素材の利益率の戻りを、やや楽観側に反映する。
- 国内の高炉の休止が前倒しで発表された
- 水砕設備の新設需要がさらに縮むため、環境設備の数量を下げ、やや悲観側に寄せる。
見ておくもの
- アイルカ社との契約更新(2027年末)と、ワーマンの代理店契約(2029年6月)
- 環境設備と産機・建機の四半期の利益率
- 総還元性向と、自社株買いの規模
- ジルコンの契約価格と、中国の需要
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROEとkとgから、正当化PERの上限を計算して置いた。今の株価に寄せていない。今のPERは9〜10倍と低めだが、それを根拠にせず、10年中立のPERは、ROEがkを下回るため上限の1÷k=12.5倍から、さらに下げて10.8倍に置いた。利益は、2026年3月期の山ではなく、環境設備を平準化したならした水準で見た。賃貸ビルと政策保有株は配当・賃料が利益に入っているため、別に足さない。数量は実質、物価は価格に入れた。新リース会計基準による数字の形の変化は小さく、10年後は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→16.16 倍・やや楽観 PER 12.6→15.53 倍・中立 PER 10.8→15.06 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。