結論
ポエックは、広島県福山市の技術商社が、買収で製造の子会社を束ねてきた会社だ。ポンプなどの水処理機器を売り、船舶エンジンの部品や消火装置を作る。筆者の結論は割高寄り。事業は伸びているが、転換社債が株に替わると株数が 3 割増え、今の株主の取り分が薄まるからだ。
強みは買収の目利きにある。地方の中小の製造会社を買い、商社の販路に乗せてきた。船舶のエンジン台板を作る三和テスコは、利益率が 15% を超える。病院と介護施設向けのスプリンクラー「ナイアス」は自社の製品だ。
弱みは、資本の稼ぎが資本コストに届かないことだ。買収と新工場で借入が増え、2025 年には株価で転換価格が動く転換社債を 20 億円出した。
2026 年 8 月期の純利益は補助金で膨らんだ。本業の稼ぎは 2027 年 8 月期の予想が目安になる。筆者は、全株に替わった後の会社の値打ちを今の株数で割ると、今の値段は少し高いとみる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、長く持ちたい会社かと問えば、答えは「事業は面白いが、株主の取り分が気になる」だ。
良い点は、地方の中小の製造会社を買い、商社の販路で育てる仕組みだ。エンジン台板やナイアスのように、他社がまねしにくい製品を持つ会社を集めてきた。
悪い点は、資本の使い方だ。買収と新工場の資金を、借入と株価で転換価格が動く転換社債でまかなった。この形の社債は、株価が下がるほど多くの株に替わり、今の株主の取り分を削る。自己資本利益率は、補助金を除けば資本コストに届かない。
払う値段で見ると、転換社債が全部株に替わった後の時価総額は、今の 1.35 倍になる。その値段は、2027 年 8 月期の予想の純利益の 13 倍台だ。資本コストに届かない稼ぎに払う値段としては、安全域が薄い。買うなら、転換が終わって株数が落ち着き、利益率 9% が続くのを見てからでよい。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つある。売上の半分が環境・エネルギー、4 割が動力・重機等、1 割が防災・安全だ。
環境・エネルギーは、創業以来の技術商社の仕事が中心だ。産業用のポンプや送風機を工場や自治体に売り、保守も受け持つ。陸上養殖の冷却装置を作るマリンリバー、使った有機溶剤を回収して再び使う装置を作るコーベックスも、この区分に入る。溶剤の回収装置の主な客は半導体の工場だ。
動力・重機等は、買収で加わった製造の会社だ。三和テスコと東洋精機産業が、船舶用エンジンの台板や精密部品を受託で作る。2026 年 2 月には東鉄工から高炉向けバルブの事業を譲り受けた。この区分は利益率が 15% を超え、全社の利益の 7 割を稼ぐ。
防災・安全は、自社の製品のスプリンクラー消火装置「ナイアス」と、建物向けのスプリンクラーヘッドだ。ナイアスは水道の配管につなぐだけで動き、病院や介護施設に向く。
2026 年 7 月には、受変電設備の試験と保守を手がけるマルコ電機技術も買った。工場の電気設備の点検を、ポンプの保守と一緒に売る狙いだ。
親会社や支配株主は無く、創業者が筆頭株主の独立した会社だ。客は工場、自治体、造船所、エンジン会社、病院と幅広く、一社に頼る形ではない。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば、買収で作った寄せ木細工で、芯は船舶の部品だ。
強みは、動力・重機等の稼ぐ力だ。エンジン台板は大きく精密な加工が要り、長年の取引で大手のエンジン会社に食い込んでいる。造船の好況が追い風だ。ナイアスも、配管の工事が少なくて済む独自の製品だ。
弱みは 3 つある。第一に、売上の半分の商社の部分は、仕入れて売る商いで値段を市場に決められる。第二に、成長の多くを買収に頼り、買う値段が高ければ価値を壊す。2026 年 8 月期も減損を計上した。第三に、財務が薄い。自己資本比率は 3 割で、転換社債を含めた純負債は 49 億円ある。
補助金と負ののれんを除いた自己資本利益率は、過去 10 年の中央値で 8.6% と、資本コストとほぼ同じ水準だ。稼ぎは資本コストを少し上回る年と下回る年を行き来し、価値を大きく積み上げる会社ではない。
資本コストは基本より 0.75 ポイント高い 8.25% とみる。造船の波と借入の重さの分だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界を動かすのは、造船の波、工場の環境の投資、建物の防災の決まりの 3 つだ。
造船は好況にある。燃費と排ガスの規制で古い船の建て替えが進み、中国・韓国・日本の造船所の受注は数年分たまっている。エンジン台板の仕事は、この波に沿う。ただ、造船は歴史的に 10 年単位で山と谷を繰り返してきた。
工場の環境の投資は、構造的に伸びる。脱炭素、排ガスの規制、人手不足による省力化が、ポンプやボイラーの更新を促す。溶剤の回収は、中東情勢で原料の調達が不安定になり、半導体と化学の工場の関心が高まっている。ただ、大型の案件は客の投資の時期で決まりが遅れやすい。
防災は、病院と介護施設のスプリンクラーの設置の決まりが需要を作る。古い建物の改修と自治体の助成が支える一方、大型ビルの建設の波で上下する。
競合は、ポンプの販売で荏原製作所の代理店や地域の商社、溶剤の回収で化学装置の会社だ。ポエックの戦い方は、地方の小さな製造会社を買って束ねることで、規模で戦う会社ではない。後継者のいない中小の製造会社は多く、買う先に困らないのは追い風だ。
資本政策と M&A
資本政策は、買収が先で、還元は安定配当だ。配当は補助金を除いた純利益の半分以上を目安とし、2027 年 8 月期も前の期と同じ額を出す予定だ。
2025 年 4 月に、株価で転換価格が動く転換社債を 20 億円出した。全部が株に替わると、株数は今の 1.35 倍になる。今の株主の取り分は 4 分の 3 に薄まる。その代わり、借入は減り、利払いは軽くなる。
創業者の来山哲二氏が 14% 弱を持つ筆頭株主だ。買収は年に 1〜2 件のペースで続き、2026 年も東鉄工の事業とマルコ電機技術を加えた。自社株買いは小さく、余った現金は買収と設備に回る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026 年 8 月期の減益は、先行の費用が重なった結果だ。新工場の償却、東鉄工とマルコ電機技術の買収の費用、人への投資である。会社は 2027 年 8 月期に営業利益 5 割増を見込む。利益率は 1 割に乗る。
溶剤の回収装置は、中東情勢で需要が急に増えた。大手の事業会社と販売の協力を結び、問い合わせは急増している。後ろ倒しになった大型案件が決まれば、環境・エネルギーの利益は大きく増える。
造船の好況は数年続く。三和テスコの受注は厚く、東鉄工のバルブは水素で鉄を作る新しい炉にも使われる。国の 17 の戦略分野のうち、造船、防災、GX、半導体と、ポエックの事業の多くが重なる。
転換社債が株に替われば、借入は 20 億円減り、財務は軽くなる。買収を続ける力も増える。
後継者のいない中小の製造会社は全国に多く、買う先は尽きない。買った会社を商社の販路に乗せて伸ばす型は、三和テスコとコーベックスで実績がある。利益率 1 割が続けば、自己資本利益率は 11% を超え、今の値段は安い。
慎重な見方
2027 年 8 月期の利益率 1 割は、過去の最高の 9% を超える計画だ。2026 年 8 月期も期初の計画を大きく下回った。大型案件の後ろ倒しは、この会社では珍しくない。
転換社債は、株価で転換価格が動く形だ。株価が下がるほど多くの株に替わり、今の株主の取り分を削る。全部が株に替われば、株数は 1.35 倍になる。
造船の好況は永遠ではない。過去にも 10 年単位で谷が来た。エンジン台板は全社の利益の多くを稼ぐ一本足で、谷では利益が大きく削られる。
買収を重ねる会社は、高く買えば減損で傷む。2026 年 8 月期も減損を計上した。補助金を除けば、自己資本利益率は資本コストに届かない。
商社の部分は、売上の半分を占めるのに利益は少ない。仕入れ先のメーカーが直販を強めれば、この部分はさらに細る。借入の金利が上がる中で、純負債 49 億円の重さも増す。
2026 年 8 月期の純利益は補助金で膨らみ、見かけの稼ぎは実力より高い。本業の純利益は 6〜7 億円で、転換後の株数で割ると 1 株の稼ぎは今の見かけの 4 分の 3 に下がる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。事業の伸びは本物だが、転換社債による取り分の薄まりと、資本コストに届かない稼ぎが重いからだ。
確率は中立を軸に、上と下をほぼ同じ重さに置いた。会社の 2027 年 8 月期の計画は、やや楽観の筋書きの入口とみた。
判断を変えるのは、利益率 9% が 2 年続くことと、転換社債の転換が終わって株数が落ち着くことの 2 つだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 1,535 円69 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 577 円26 億円)。 今の値に割り戻すと 1,104 円50 億円、今との差 −25.3%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 3,144 円142 億円 | 813 円37 億円 | +167.9% | +10.4% | 475 円21 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,048 円93 億円 | 666 円30 億円 | +83.7% | +6.3% | 597 円27 億円 |
| 中立 | 36% | 1,561 円71 億円 | 588 円27 億円 | +45.5% | +3.8% | 774 円35 億円 |
| やや悲観 | 20% | 545 円25 億円 | 483 円22 億円 | −30.4% | −3.6% | 206 円9 億円 |
| 悲観 | 10% | 362 円16 億円 | 246 円11 億円 | −58.8% | −8.5% | 61 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,535 円69 億円 | 577 円26 億円 | +43.0% | +3.6% | 2,112 円95 億円 |
今の株価時価総額 1,477 円67 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 溶剤の回収装置と船舶の部品が伸び、利益率が 1 割に届く 利益 13 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 3,144 円142 億円
中東情勢で溶剤の調達が不安定になり、使った溶剤を回収して再び使う装置の需要が、半導体と化学の工場で広がる。コーベックスの装置は大手との販売協力で数量が 1.5 倍になる。
造船は燃費の規制と船の建て替えで好況が長く続き、三和テスコのエンジン台板は数量が 3 割増える。東鉄工の高炉バルブは、水素で鉄を作る新しい炉にも採用される。
ナイアスは介護施設のスプリンクラー義務化の流れで伸びる。全社の営業利益は 21 億円、利益率は 1 割に届く。
転換社債は株に替わり、借入は減る。配当は純利益の半分を保つ。
- 環境・エネルギー:数量 8,040(機器の販売・保守の件数(件/年・推定))× 価格 140(1 件あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 113 億円・営業利益 10 億円。溶剤の回収装置が伸びる
- 動力・重機等:数量 442(受託製造の加工時間(千時間/年・推定))× 価格 1.68(1 時間あたり売上(万円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 12 億円。造船の好況が続く
- 防災・安全:数量 2.7(装置・ヘッドの出荷(千台/年・推定))× 価格 56(1 台あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。ナイアスが伸びる
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.6 倍、時価総額 191 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:溶剤の回収装置の大型案件、造船の好況の持続、買った会社の立て直しの全部が要る。利益率 1 割は過去の最高 9% を超えるので 1 割強。
やや楽観 22% 会社の計画どおり利益率 9% 前後に乗る 利益 10 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 2,048 円93 億円
2026/08 期に重かった新工場の償却と買収の費用は一巡する。溶剤の回収装置は後ろ倒しになった案件が順に決まり、環境・エネルギーの件数は 3 割増える。
造船の部品は好況の後に落ち着くが、東鉄工のバルブが通年で効き、動力・重機等の加工時間は 2 割増える。防災は数量が 1 割増える。
全社の営業利益は 17 億円前後、利益率は 9% 弱と、過去の最高に並ぶ。転換社債は株に替わり、1 株の取り分は薄まるが、借入の利払いは軽くなる。配当は純利益の半分だ。
それでも自己資本利益率は 9% 弱と、資本コストを少し上回るだけにとどまる。
- 環境・エネルギー:数量 6,968(機器の販売・保守の件数(件/年・推定))× 価格 137(1 件あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 96 億円・営業利益 7 億円。後ろ倒しの案件が決まる
- 動力・重機等:数量 408(受託製造の加工時間(千時間/年・推定))× 価格 1.64(1 時間あたり売上(万円・名目))→ 売上 67 億円・営業利益 10 億円。東鉄工が通年で効く
- 防災・安全:数量 2.5(装置・ヘッドの出荷(千台/年・推定))× 価格 55(1 台あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。1 割増
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.12 倍、時価総額 125 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027/08 期の予想は利益率 10% で、先行の費用が一巡すれば届く道筋は示されている。ただ過去の最高は 9% で、2 割強。
中立 36% 買った事業の分だけ伸び、利益率は 8% 前後 利益 8 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,561 円71 億円
環境・エネルギーは、溶剤の回収装置と省エネのポンプが伸び、件数は 2 割増える。ただ、商社として仕入れて売る部分は値段を市場に決められ、利益率は 6.5% にとどまる。
動力・重機等は、東鉄工のバルブの通年の分で加工時間が 15% 増える。造船の好況は 10 年のうちに一度は谷を迎え、利益率は 14% と今より少し下がる。
防災は数量が横ばいで、値段は物価並みだ。全社の費用は物価で増え、営業利益は 13 億円、利益率は 8% 前後になる。
転換社債は株に替わり、借入は減るが、借り換えの金利は 3.5% に上がる。配当は純利益の半分を保ち、残りは次の買収と設備に回る。
- 環境・エネルギー:数量 6,432(機器の販売・保守の件数(件/年・推定))× 価格 134(1 件あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 6 億円。溶剤回収と省エネポンプで 2 割増
- 動力・重機等:数量 391(受託製造の加工時間(千時間/年・推定))× 価格 1.60(1 時間あたり売上(万円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 9 億円。東鉄工の通年分
- 防災・安全:数量 2.2(装置・ヘッドの出荷(千台/年・推定))× 価格 54(1 台あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。横ばい・物価並み
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 95 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量の伸びは買った事業の通年の分と溶剤の回収装置に限られ、利益率は過去の最高の少し下。最もありそうな筋書きとして 36%。
やや悲観 20% 造船の谷と案件の後ろ倒しが重なる 利益 3 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 545 円25 億円
造船は好況の反動で谷に入り、エンジン台板の加工時間は 5% 減る。新工場の償却は残り、動力・重機等の利益率は 1 割に下がる。
溶剤の回収装置は大型案件の決まりが遅れ、環境・エネルギーの件数は横ばいにとどまる。商社の部分は値上げが仕入れの値上がりに追いつかない。
防災も大型ビル向けの需要が細る。全社の営業利益は 6 億円台、利益率は 4% 台と、2024/08 期並みに戻る。
配当は安定配当の方針で純利益の 6 割に高まり、純資産は伸びにくい。
転換社債は株価が下がるほど多くの株に替わり、少数株主の取り分は予定より薄まる。自己資本利益率は 4% を割り込む。
- 環境・エネルギー:数量 5,360(機器の販売・保守の件数(件/年・推定))× 価格 128(1 件あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 69 億円・営業利益 3 億円。案件が決まらず横ばい
- 動力・重機等:数量 323(受託製造の加工時間(千時間/年・推定))× 価格 1.56(1 時間あたり売上(万円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 5 億円。造船の谷
- 防災・安全:数量 2.0(装置・ヘッドの出荷(千台/年・推定))× 価格 51(1 台あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。大型ビル向けが細る
倍率:ROE 3.6% が k 8% 以下なので、上限は 1÷k=12.1 倍。稼ぐ力が資本コストを大きく下回る筋書きなので、上限に引き上げず 8.5 割の 10.30 倍に置いた。
確率:2026/08 期は溶剤の回収装置の後ろ倒しと造船の反動で減益になった。同じ形が長引く筋書きは十分にあり 2 割。
悲観 10% 買収の失敗と造船の長い谷で、利益がほぼ消える 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 362 円16 億円
造船は長い谷に入り、エンジン台板の仕事は 4 分の 1 減る。高く買った会社は稼げず、のれんの減損が続く。
溶剤の回収装置は大手の装置会社に市場を取られ、環境・エネルギーの件数は 2 割減る。全社の費用は物価で増え、営業利益は 1 億円を割る。
転換社債は株価が下がるほど多くの株に替わる仕組みで、少数株主の取り分はさらに薄まる。配当は大きく減る。
価値は、土地と工場、運転資本から借入を引いた残りで測るしかない。のれんは値打ちが無いものとして数えない。
今の自己資本 42 億円(facts の直近の値)の半分ほどが、借入を返した後に残る値打ちになる。
- 環境・エネルギー:数量 4,288(機器の販売・保守の件数(件/年・推定))× 価格 120(1 件あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 1 億円。大手に市場を取られる
- 動力・重機等:数量 255(受託製造の加工時間(千時間/年・推定))× 価格 1.44(1 時間あたり売上(万円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。造船の長い谷
- 防災・安全:数量 1.8(装置・ヘッドの出荷(千台/年・推定))× 価格 48(1 台あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。細る
倍率:稼ぐ力ではほとんど測れないため、土地・工場・運転資本から借入を引いた残りで測る。今の自己資本 42 億円に約 0.52 倍を掛けた額が床の推定 22 億円と一致する。EV で見ると営業利益の倍率は意味を持たず、資産の残りでしか測れない。
確率:買収を重ねる会社は、高く買った会社の減損で傷む。造船の長い谷と重なる構造的な負けとして 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
環境・エネルギー
産業用ポンプなど水処理機器の販売と保守、陸上養殖の冷却装置、有機溶剤の回収装置(コーベックス)、ボイラー・排ガス処理装置。
| 数量機器の販売・保守の件数(件/年・推定) | 価格1 件あたり平均売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 5,360 | 100 | 54 | 2 |
| 10 年後 中立 | 6,432 | 134 | 86 | 6 |
取り方:2026/08 短信のセグメント売上 53.6 億円・利益 2.19 億円。件数は開示がなく、1 件 100 万円として推定で割った。有機溶剤の回収装置は大型の案件が中東情勢で翌期以降に後ろ倒しになった。
動力・重機等
船舶用エンジンの台板・精密部品の受託製造(三和テスコ・東洋精機産業)、高炉向けバルブ(東鉄工の事業、2026/2 譲受)、亜臨界処理装置。
| 数量受託製造の加工時間(千時間/年・推定) | 価格1 時間あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 340 | 1.20 | 41 | 6 |
| 10 年後 中立 | 391 | 1.60 | 63 | 9 |
取り方:2026/08 短信のセグメント売上 40.7 億円・利益 6.37 億円(利益率 15.7%)。加工時間は開示がなく、1 時間 1.2 万円として推定で割った。東鉄工の事業は 2027/08 期に通年で効く(会社はセグメント売上 16.7% 増を見込む)。
防災・安全
病院・介護施設向けのスプリンクラー消火装置「ナイアス」と、建物向けのスプリンクラーヘッド(アイエススプリンクラー)。
| 数量装置・ヘッドの出荷(千台/年・推定) | 価格1 台あたり平均売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 2.2 | 40 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2.2 | 54 | 12 | 1 |
取り方:2026/08 短信のセグメント売上 9.0 億円・利益 0.70 億円。台数は開示がなく、1 台 40 万円として推定で割った。全社の調整 −1.93 億円は物価で増やす。
リスクと懸念
転換社債による取り分の薄まり
株価で転換価格が動く転換社債 20 億円は、全部が株に替わると株数を 1.35 倍にする。株価が下がるほど多くの株に替わる形で、悪い時ほど今の株主の取り分が削られる。
造船の波
全社の利益の多くを、船舶用エンジンの台板が稼ぐ。造船は 10 年単位で山と谷を繰り返し、谷では受注が大きく減る。今の好況が永遠に続く前提は置けない。
買収の失敗
成長の多くを中小の製造会社の買収に頼る。高く買えば、のれんの減損で純資産が削られる。2026/08 期も減損を計上した。
大型案件の後ろ倒し
溶剤の回収装置や環境の設備は、客の投資の時期で決まりが遅れやすい。2026/08 期は中東情勢で複数の大型案件が翌期以降に持ち越された。
借入と金利
買収と新工場で借入が増え、転換社債を含む純負債は 49 億円ある。借り換えのたびに金利は 3.5% 前後に上がり、利払いが利益を削る。
今後の分かれ目
- 2027/08 期の営業利益が予想の 11 億円に届く
- 先行の費用が一巡した証拠。やや楽観の確率を上げる。
- 転換社債の転換が株価の下落とともに進む
- 取り分の薄まりが予定より大きくなる。悲観側に確率を移す。
- 溶剤の回収装置の大型案件が相次いで決まる
- 環境・エネルギーの利益率が上がる。中立の利益率を見直す。
- 造船の新しい受注が前年を 2 割以上下回る
- エンジン台板の谷が近い。やや悲観の確率を上げる。
- 高い値段の買収を重ねる
- 資本の使い方への懸念が強まる。のれんの大きさと買った会社の稼ぎを見て評価を見直す。
見ておくもの
- 転換社債の転換の進み具合
- 造船の受注量
- コーベックスの溶剤回収装置の受注
- のれんと減損
- 純有利子負債
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や同業の値付けから置かず、10 年後の自己資本利益率と資本コスト 8% から決めた。筋書きは転換社債が株に替わった会社全体で書き、今の株主の取り分 0.743 を holder_share で掛けた(倍率や時価総額に手で掛けていない)。新工場の償却は取得した時の値段のままで物価で増やさず、全社の費用は物価で増やした。今の株価は計算に使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.48→14.6 倍・やや楽観 PER 11.01→13.12 倍・中立 PER 10.3→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75% を足して 8.25%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 8.00%。