結論
松田産業は、電子部品や宝飾品のくずから金・銀・白金を取り出して売る会社だ。売上の8割強が貴金属で、残りは魚のすり身や肉を扱う食品である。
筆者の結論は、やや割高だ。直近の稼ぎは金相場の急騰に押し上げられた分が大きく、10年ならした姿はそれより低い。
稼ぎの中身を見ると、取り扱う量は大きく増えていない。貴金属の営業利益は70億円から193億円へ約2.8倍になったが、金換算の量はほぼ横ばいと推定される。増えたのは値段と、売上に対する利益の割合だ。
この会社は、金の値段が上がるほど在庫と売掛金に資金を取られる。営業のキャッシュフローは直近でマイナス90億円だった。利益が出ても現金が増えにくい。
10年後の中立の姿は、純利益がおよそ200億円。今より少し多い程度だ。自己資本が積み上がるため、ROE は14%台から8%台へ落ち着く。
強みもある。回収網と製錬の技術、電子材料の開発力は、簡単にまねできない。ただ、その強みで資本コストを大きく上回る利益を長く稼げるとは、筆者は考えていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い商売」ではあるが「資本を食う商売」だ。
良い点は、くずから価値を取り出す技術と回収網が、需要に左右されにくい土台になっていることだ。電子部品が使われ続ける限り、くずは出る。
気になるのは、稼ぎのかなりの部分が金の値段で決まることだ。値段が上がれば利益は増えるが、同じ速さで在庫と売掛金も膨らむ。利益の割にオーナーの手元に現金が残らない。前の計画の営業キャッシュフローは、目標の7分の1にとどまった。
オーナー利益、つまり事業を維持するのに必要な投資を引いた株主の取り分は、会計上の利益よりかなり小さい。運転資金が値段とともに増えるからだ。
安全域の面では、直近の利益が山の水準にある点が大きい。10年ならした利益を基準にすると、今の値段に十分な余裕があるとは言えない。
持ち続けたい会社かと問われれば、金の値段を見通せる人でなければ、確信は持てない。筆者は、確信度の低い事業として、確率を悲観寄りに置いた。
何で稼ぐ会社か
松田産業は、貴金属関連と食品関連の二つの事業を持つ。
貴金属関連は、売上の83%を占める。電子部品のくず、歯科材料、宝飾品、触媒などを回収し、製錬して金・銀・白金族の地金に戻す。地金そのものと、電子材料に使う化成品を売る。産業廃棄物の処理も手がける。売上の内訳は、金が4,380億円、白金族が672億円、銀が427億円だ。
稼ぎ方は、回収したくずの価値に対する手数料と、仕入れから販売までの値動きの管理にある。仕入れ値も売り値も、地金の市場価格に連動する。値動きは先物でヘッジするが、全量は消せない。
顧客は、電子部品や半導体のメーカーが中心だ。大口の取引先は、三菱商事RtMジャパンが売上の15.7%、三井物産が11.6%を占める。いずれも地金の流通を担う商社で、松田産業はその川上で原料を確保する立場にある。関連会社の日鉄マイクロメタルは、半導体に使うボンディングワイヤを作る。
食品関連は売上の17%。水産品(すり身など)が474億円、畜産品が469億円、農産品が143億円だ。海外の産地から食品メーカーへ原料を卸す。営業利益率は2.6%と薄いが、安定している。
生産拠点は北九州、入間、タイに広がる。産廃の中間処理会社を買い、回収から処理までを自社でつなぐ形を整えている。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、回収網と製錬の技術に宿る。他社が捨てるくずから価値を取り出す仕事で、電子部品メーカーとの付き合いが長い。くずの出どころを押さえる力が、利益の土台だ。
ただし、堀、つまり他社がまねできない強みは深くない。貴金属は市場価格で値段が決まり、松田産業が決められるのは手数料の部分だけだ。田中貴金属工業、三菱マテリアル、JX金属、住友金属鉱山といった大手の製錬会社も、くずの回収に力を入れている。
営業利益率は、貴金属で2.8%前後、直近で3.4%だ。値段が上がれば利益も増えるが、守りの手段はヘッジに頼る。相場が下がる局面では、在庫の値下がりが利益を削る。
資本の効率は、直近のROE 14%台が目立つ。だが過去10年の中央値は8.7%にすぎない。今の高さは金相場の山と重なっている。
経営は、中期計画で配当の目安を自己資本の2.5%以上へ引き上げた。ただ、前の計画では営業キャッシュフローの目標400億円に対し、実績は60億円だった。稼いだ利益が運転資金に消える構造を、経営がどう扱うかが問われる。
弱みは三つある。金相場への依存、大口取引先への偏り、キャッシュの薄さだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
貴金属リサイクルの需要は、二つの流れで決まる。一つは電子部品のくずの量、もう一つは宝飾品の売却だ。
電子部品のくずは、半導体と電子機器の生産に連動する。AI向けのデータセンターで生産は持ち直しているが、自動車向けは弱い。2024年3月期に貴金属の営業利益が70億円まで落ちたのは、電子デバイスの生産停滞が理由だった。
宝飾品は、金の値段が上がるほど売りが増える。直近の取扱量の増加はこの面が大きい。値段が落ち着けば、この分は減る。
金の値段は、2026年1月に1オンス5,500ドルを超えたあと、6月に4,000ドルを割り、8月に戻した。振れ幅が大きく、利益も同じ向きに振れる。
国内外の鉄鋼商社と違い、この領域の数量は鋼材の需要でなく、資源の回収量で決まる。電池のリサイクルや海外のくず回収は、伸びしろがある。ただし大手の製錬会社も同じ市場に入る。
食品は、人口が減る国内で量が伸びにくい。それでも、医療介護食や中食向けなど、用途を絞った提案で利益率を上げられる。会社は食品の営業利益率を2.5%に上げる目標を掲げる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、稼ぎの割に還元が控えめだ。直近の配当は純利益の2割に届かない。
中期計画2028は、3年で営業キャッシュフロー約350億円を見込む。事業投資に約180億円、株主還元に100〜120億円を充て、残りを借入金の返済に回す。配当は自己資本の2.5%以上を目安にし、自社株買いは相場を見ながら行う。
過去には、産廃の中間処理会社の山陽レックとフラップリソースを買った。回収から処理までの一貫体制をつくる狙いで、大型の買収ではない。
買われる側の可能性も残る。今のところ、そうした動きは表に出ていない。ただ、貴金属リサイクルは大手の製錬会社にとって魅力があり、再編があれば価値が見直される。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
貴金属リサイクルは、これから長い成長に入る。強気の根拠は三つある。
一つ目は、電子部品のくずが増えることだ。AIのデータセンター、電気自動車、通信機器が増えるほど、金・銀・パラジウムを使う部品も増える。10年後には、その使用済み品が大量に出てくる。
二つ目は、電池だ。会社は使用済みリチウムイオン電池の水平リサイクル、つまり電池の材料を電池に戻す仕組みを作ろうとしている。先行すれば、新しい収益の柱になる。
三つ目は、回収の拡大だ。北九州の新工場とタイ工場が動けば、処理能力が増える。海外のくずを取り込めば、量はさらに伸びる。
そのうえで、金の値段は物価以上に上がり続ける。各国の中央銀行が金を買い続けており、実質で値上がりする可能性は高い。値段が上がれば手数料の絶対額も増える。
中期計画では、2028年度に営業利益280億円、ROE 11%以上を目指す。この目標が達成され、その後も伸びれば、10年後の純利益は300億円に迫る。食品も、高付加価値品の比率が上がり利益率が改善する。
この強気の筋書きが実現すれば、倍率も13倍台に乗り、時価総額は今の2倍以上になる。
慎重な見方
稼ぎの山にいる会社を、山の利益で評価してはいけない。
まず、直近の利益は異常な環境で作られた。金は急騰し、宝飾品のくずの売りが増え、在庫の値上がりも利益に乗った。利益率3.4%は、過去2年の2.8%を上回る。この上積みは、相場が落ち着けば消える。
次に、資金が足りない。営業キャッシュフローはマイナス90億円。利益が出るほど運転資金が膨らみ、借入金に頼る。前の計画の営業キャッシュフロー目標400億円は、実績が60億円だった。今回の計画の350億円も、金の値段が上がれば同じ目に遭う。
三つ目は、競争だ。大手の製錬会社は、くずの回収を強化している。回収量が開示されていないことは、シェアが不明という意味でもある。大口の取引先は2社で売上の27%を占め、条件を変えられれば手数料が削られる。
最後に、ROEだ。過去10年の中央値は8.7%。計画の11%以上は、金が高止まりする前提でしか届かない。利益を積み上げて自己資本が増えれば、ROEは資本コストの近くまで下がる。
金の値段が実質で元に戻れば、利益率は2%台前半に下がり、営業利益は今の6割ほどになりうる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。取扱量が増えていないこと、キャッシュが残らないこと、直近の利益が山にあることの三点が、強気の成長の話より確かな事実だからだ。
強気にも根拠はある。電子部品と電池のくずは増え、金の値段は物価並みには上がる。それを中立に織り込んだ。
確率は、やや悲観寄りに置いた。金相場の予想がもともと難しく、確信度が低い事業でもある。悲観を1割強、楽観を1割未満にした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 10,734 円2,774 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,450 円633 億円)。 今の値に割り戻すと 6,775 円1,751 億円、今との差 +12.4%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 18,914 円4,888 億円 | 3,870 円1,000 億円 | +277.8% | +14.2% | 1,367 円353 億円 |
| やや楽観 | 19% | 15,165 円3,919 億円 | 3,096 円800 億円 | +202.8% | +11.7% | 3,470 円897 億円 |
| 中立 | 38% | 13,146 円3,397 億円 | 2,709 円700 億円 | +162.9% | +10.1% | 6,025 円1,557 億円 |
| やや悲観 | 25% | 5,681 円1,468 億円 | 1,935 円500 億円 | +26.3% | +2.4% | 1,904 円492 億円 |
| 悲観 | 12% | 2,515 円650 億円 | 967 円250 億円 | −42.2% | −5.3% | 418 円108 億円 |
| 加重平均 | 100% | 10,734 円2,774 億円 | 2,450 円633 億円 | +118.6% | +8.1% | 13,183 円3,407 億円 |
今の株価時価総額 6,030 円1,558 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:電子とリサイクルの量が伸び、金も実質で上がる 利益 297 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 18,914 円4,888 億円
10年後、AI向けの電子部品と電気自動車の使用済み品が大量に出てくる。会社は北九州とタイの工場を動かし、海外のくずも取り込む。金換算の取扱量は今より3割以上増える。電池の水平リサイクルも事業として立ち上がる。
金は実質でも値上がりし、値段は物価の伸びを超える。手数料の絶対額が増え、営業利益率は3%台を保つ。貴金属の営業利益は350億円を超え、食品を含めた全体で400億円ほどになる。中期計画の目標を大きく超える姿だ。
純利益は300億円近くになる。運転資金がかさむため借入金は増えるが、利益がそれを上回る。還元も厚くなり、ROEは12%近くまで上がる。大手の製錬会社との競争は続くが、回収網の価値が評価され、倍率も高めに付く。
- 貴金属関連(回収・製錬・地金と電子材料の販売):数量 39.6(金換算の取扱量(トン))× 価格 30(金1kgあたりの値段(百万円。金・銀・白金族をまとめた換算値))→ 売上 11,872 億円・営業利益 356 億円。電子・電池のくずが増え、金も実質で上昇
- 食品関連(水産・畜産・農産の原料卸):数量 32.3(取扱数量(万トン換算))× 価格 54(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,728 億円・営業利益 48 億円。高付加価値品で量・利益率とも改善
倍率:事業の純利益 297 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.17 倍、時価総額 4,802 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電子部品・電池のくずが増え、金が物価以上に上がり続ける筋書き。キャッシュの薄さと金相場の読みにくさから、1割未満にとどめた。
やや楽観 19% やや楽観:計画に近い道筋で伸びる 利益 236 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 15,165 円3,919 億円
電子デバイスの生産が戻り、回収量は緩やかに増える。金換算の取扱量は今より2割ほど多い。金は物価を少し上回って上がる。
貴金属の営業利益率は2.85%と、過去の水準を保つ。営業利益は貴金属が280億円、食品が43億円で、全体では320億円ほどになる。会社の2028年度の目標には届くが、その先の伸びは緩やかだ。
食品は、医療介護食や中食向けの提案で利益率が2.6%に上がる。自己資本は、利益の積み上げと中程度の還元で増え、ROEは10%近くになる。借入金の利払いは増えるが、営業利益の伸びが吸収する。
競合の大手製錬会社は回収を強めるが、電子材料や電池の分野で松田産業が一定の取引先を押さえ、シェアは今の水準を保つ。事業は堅いが、金の値段に利益が左右される性質は変わらない。
- 貴金属関連(回収・製錬・地金と電子材料の販売):数量 35.2(金換算の取扱量(トン))× 価格 28(金1kgあたりの値段(百万円。金・銀・白金族をまとめた換算値))→ 売上 9,828 億円・営業利益 280 億円。量は2割増、金は物価を少し上回る
- 食品関連(水産・畜産・農産の原料卸):数量 30.9(取扱数量(万トン換算))× 価格 54(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,653 億円・営業利益 43 億円。医療介護食など高付加価値で利益率改善
倍率:事業の純利益 236 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.65 倍、時価総額 3,693 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の方向に近い穏やかな成長。回収量の増加と金の物価並みの上昇が重なる。
中立 38% 中立:量は1割増、利益は物価並みに伸びる 利益 200 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 13,146 円3,397 億円
10年後の中立は、量は少し増え、値段は物価並みに上がる姿だ。金換算の取扱量は今より1割ほど多い。電子部品のくずが増える一方、宝飾品の売りは落ち着くと見る。金の値段は10年で物価の分だけ上がる。
貴金属の営業利益率は2.8%。直近の3.4%は相場の勢いによる上振れで、過去2年の水準に戻る。貴金属の営業利益は235億円、食品が39億円。全体で275億円ほどになる。
純利益は200億円。今より2割ほど多いが、10年の年率では1〜2%の伸びにとどまる。運転資金が金の値段とともに増え、自己資本が積み上がるため、ROEは8〜9%に落ち着く。
競合は大手の製錬会社で、この構図は変わらない。会社は計画どおり配当の目安を守るが、自己資本の積み上げを止めるほどの還元は難しい。筆者は、これが10年の落としどころと見る。
- 貴金属関連(回収・製錬・地金と電子材料の販売):数量 32.2(金換算の取扱量(トン))× 価格 26(金1kgあたりの値段(百万円。金・銀・白金族をまとめた換算値))→ 売上 8,401 億円・営業利益 235 億円。量は1割増、金は物価並みに上昇、利益率は2.8%
- 食品関連(水産・畜産・農産の原料卸):数量 29.4(取扱数量(万トン換算))× 価格 54(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,573 億円・営業利益 39 億円。量は横ばい、価格は物価並み
倍率:事業の純利益 200 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍。全体の PER 15.37 倍、時価総額 3,074 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電子とリサイクルの量が緩やかに増え、金は物価並みに上がる穏やかな成長。両側の見方の落としどころとして最も厚くした。
やや悲観 25% やや悲観:金が実質で下がり、利益率が縮む 利益 127 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 5,681 円1,468 億円
10年のうちに、金の値段が物価に追いつかなくなる。名目では今より2割ほど上がるが、実質では1割以上下がる。宝飾品の売りは減り、電子デバイスの生産の戻りも鈍い。金換算の取扱量は今より1割弱少ない。
大手の製錬会社が回収を強め、手数料の取り分が縮む。貴金属の営業利益率は2.3%に下がり、営業利益は150億円を割る。食品も人口減で量が減り、利益は30億円ほどだ。
純利益は130億円。ROEは6%ほどで資本コストを下回る。自己資本はそれでも積み上がり、会社は還元を絞って借入金の返済を優先する。評価は、利益の水準に見合った低い倍率に落ちる。
- 貴金属関連(回収・製錬・地金と電子材料の販売):数量 27.0(金換算の取扱量(トン))× 価格 23(金1kgあたりの値段(百万円。金・銀・白金族をまとめた換算値))→ 売上 6,340 億円・営業利益 146 億円。金が実質で下がり、量・手数料とも縮む
- 食品関連(水産・畜産・農産の原料卸):数量 27.3(取扱数量(万トン換算))× 価格 52(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,417 億円・営業利益 31 億円。人口減で量が減り、利益率も低下
倍率:事業の純利益127億円・事業 ROE 5.9% は k 7.75% 以下なので、上限は 1÷k=12.1倍。ROE÷k=0.71 に相当する 8.5倍に置いた。
確率:金の値段が実質で下がり、競争で手数料が削られる筋書き。金相場への依存が高く、利益の質が低いため、確率を厚めにした。
悲観 12% 悲観:構造的に負ける 利益 72 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,515 円650 億円
10年のうちに、構造的に負ける。大手の製錬会社と海外の回収業者がくずを囲い込み、松田産業の取扱量は今の7割に減る。大口の取引先との条件も悪化し、手数料は削られる。金は名目では上がっても、実質では大きく下がる。
貴金属の営業利益率は1.8%まで落ち、営業利益は80億円ほどだ。工場の稼働率が下がり、固定費が重くなる。食品も縮み、利益は20億円ほどになる。純利益は70億円で、ROEは3%台に沈む。
事業が小さくなる中、工場の減損も出る。もう優良な会社ではない。それでも、地金と在庫は市場で売れるため、床は純資産の半分以上に保たれる。
- 貴金属関連(回収・製錬・地金と電子材料の販売):数量 20.5(金換算の取扱量(トン))× 価格 22(金1kgあたりの値段(百万円。金・銀・白金族をまとめた換算値))→ 売上 4,551 億円・営業利益 82 億円。取扱量が3割減、手数料が削られる
- 食品関連(水産・畜産・農産の原料卸):数量 25.0(取扱数量(万トン換算))× 価格 48(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,198 億円・営業利益 22 億円。需要減と競争で縮小
倍率:事業の純利益72億円・事業 ROE 3.5% は k 7.75% 以下なので、上限は 1÷k=12.1倍。稼ぐ力だけで測ると 9倍でも650億円は床の資産(下記)が支える水準。
確率:金が実質で下がり、大手に回収を取られ、電子の顧客も失う構造的な負け。金相場依存の高さと過去の取扱量の頭打ちから1割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
貴金属関連(回収・製錬・地金と電子材料の販売)
電子部品・宝飾品・触媒などのくずから金・銀・白金族を回収・製錬し、地金や電子材料として売る。産業廃棄物の処理も含む。
| 数量金換算の取扱量(トン) | 価格金1kgあたりの値段(百万円。金・銀・白金族をまとめた換算値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 29.3 | 19 | 5,704 | 193 |
| 10 年後 中立 | 32.2 | 26 | 8,401 | 235 |
取り方:売上5,704億円を、金換算の取扱量と値段に分けた推定。FY26の金の平均を1gあたり約1.95万円(約4,100ドル/オンス×150円)と置くと29.3トン。開示は金額だけで取扱量は非開示。同じ置き方で、FY24は約28トン、FY25は約26トンとなり、量はほぼ横ばいで利益の急増は値段と利益率(2.8%→3.4%)による。数量は実質、値段は名目で、中立は10年で1.34倍。
食品関連(水産・畜産・農産の原料卸)
海外産地からすり身・肉・野菜などを仕入れ、食品メーカーに売る。物流もグループで担う。
| 数量取扱数量(万トン換算) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 29.4 | 40 | 1,174 | 31 |
| 10 年後 中立 | 29.4 | 54 | 1,573 | 39 |
取り方:売上1,174億円(水産474・畜産469・農産143)を、取扱数量29.4万トン換算と平均単価約40万円に分けた推定。開示は金額のみ。すり身・肉・野菜の構成から平均を置いた。国内は人口減で量は横ばい、物価の分は単価に入れる。
リスクと懸念
金相場の下落と在庫の値下がり
仕入れ値も売り値も金の市場価格に連動する。上がる局面では利益が増えるが、下がる局面では在庫の評価が下がり、利益率が縮む。先物のヘッジでも全量は消せない。2026年に金が1,500ドル超の幅で動いたことが、この振れの大きさを示している。
運転資金とキャッシュの薄さ
値段が上がるほど、在庫と売掛金が膨らむ。直近の営業キャッシュフローはマイナス90億円で、借入金は525億円に増えた。成長して利益が出ても、現金が手元に残らない。還元を厚くしにくい構造だ。
大手の製錬会社との競争
三菱マテリアル、JX金属、住友金属鉱山、田中貴金属工業など、資本力のある会社が同じ市場でくずを集める。回収網を握る松田産業の立場は強いが、取扱量に比べて手数料の取り分が削られる恐れがある。
大口取引先への偏り
三菱商事RtMジャパンと三井物産の2社で、売上の約27%を占める。どちらも地金の流通を担う商社で、条件を見直されれば利益に響く。取引の継続は長いが、集中は集中だ。
電子デバイスの生産停滞
電子部品のくずは、半導体と電子機器の生産と連動する。2024年3月期は、この生産停滞で貴金属の営業利益が約4割減った。AI向けは強いが、自動車向けなど他の分野が落ちると、回収量が減る。
環境規制と事故
製錬の工程では毒劇物を扱う。工場事故や規制の強化があれば、追加の設備投資や操業の停止につながる。北九州などの新工場への投資も、立ち上げが遅れれば利益に反映されない。
食品の品質問題
食品は、海外産地から輸入する。品質の問題で輸入が止まれば、食品の利益が落ちる。利益の比率は小さいが、信用に傷が付けば、貴金属を含めた会社全体に波及しうる。
今後の分かれ目
- 金の値段が10年かけて実質で下がる(物価に追いつかない)
- 取扱量が同じでも売上と利益が縮む。利益率は2%台前半に下がり、悲観に近づく。
- 電池リサイクルが事業として軌道に乗る
- 新しい回収の柱ができ、量が増える。強気の筋書きが現実味を帯び、倍率の上昇も見込める。
- 営業キャッシュフローが黒字になり、還元が厚くなる
- 自己資本の積み上がりが抑えられ、ROEの低下が緩やかになる。倍率の見直しにつながる。
- 大手の製錬会社が回収を強化し、くずの調達価格が上がる
- 手数料の取り分が縮み、利益率が下がる。やや悲観の筋書きが濃くなる。
- 大手との資本提携やTOBが起きる
- 回収網の価値が評価され、時価総額は大きく見直される。ただし確率は低く、本文の筋書きには織り込まない。
- 電子デバイスの生産が自動車向けも含めて回復する
- 回収量が増え、貴金属の利益が会社予想を上回る。
見ておくもの
- 貴金属関連事業の営業利益率(3%を保てるか、2%台に落ちるか)
- 営業キャッシュフローの黒字化と借入金の水準
- 中期計画2028の営業利益280億円、ROE 11%以上の達成度
- 金・銀・白金の相場と、宝飾品・電子部品からの回収量の動き
- 株主還元(配当の自己資本比率2.5%以上、自社株買いの有無)
倍率と資本コストの決め方
先に貴金属を金換算の取扱量×値段、食品を取扱量×単価で10年の営業利益に積み、次に純利益と自己資本の流れから ROE を出し、式の上限から倍率を置いた。今の株価と PER は見ていない。金の値段は FY26 の推定平均を起点に物価並みの上昇を中立とした。新リース会計は工場・倉庫が自社所有中心で影響は小さいが、今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→16.17 倍・やや楽観 PER 12.2→15.65 倍・中立 PER 12.2→15.37 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。