結論
リックスは、福岡市に本社を置く産業機械の専門商社だ。製鉄所や自動車工場に油圧機器や計測機器を納め、自社でも回転継手や高圧洗浄装置を作る「メーカー商社」である。筆者の結論は「やや割安」。堀と自社製品の伸びしろに比べ、今の値段は低めだ。ただし景気の波があり、安全域は厚くない。
稼ぎ方のカギは自社製品だ。売上の約3割がオリジナル品で、商社の仕入販売より利益率が高い。会社はこの比率を2030年度に55%へ引き上げる計画を掲げる。営業利益率は過去3年、7%台を保ってきた。
2026年3月期の営業利益は35億円で、前期より9%減った。人件費と基幹システム投資が先に出た。純利益の32億円には、旧本社の売却益が入っている。ならした実力は27億円ほどだ。
筆者の中立は、10年後の営業利益が56億円、純利益が42億円。会社の2030年度目標(営業利益56億円)の水準を、6年遅れで達成する見方である。自己資本利益率は8〜9%で、資本コスト7.25%をわずかに上回る。
財務は強い。純現金49億円、自己資本比率は60%だ。ただし、取引の決済条件の見直しで、この現金は運転資金に消えやすい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、リックスは「よくできた小さな商売」だ。地域の機械商社から出発し、自社製品を持つことで、仕入販売の薄利から抜け出しつつある。経営は堅実で、純現金を持ちながら配当も増やしている。
ただ、この商売には二つの限界がある。ひとつは規模だ。売上558億円の会社が、10年で営業利益を56億円にするのは堅実だが、飛躍ではない。もうひとつは景気だ。設備投資が止まる年は、機械商社の営業利益が4〜6割減る。
10年の筋書きでは、自社製品の比率が上がり、利益率は7%近くを保つ。自己資本利益率は9%前後で、資本コストをわずかに上回る。倍率は式で測って13倍近い。
安全域は、厚くはないが存在する。営業利益が会社予想の42億円に届けば、価値は今の時価総額を上回る。景気の谷で利益が半分になる筋書きが、いちばんの下振れである。
この会社を長く持ちたいかと問われれば、経営の姿勢は好ましく、値段にも余裕がある。ただ、景気の波は織り込んで持つ必要がある、と答える。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく二つに分かれる。
ひとつは商社事業だ。高圧の油圧機器、空圧機器、精密計測・検査機器などを仕入れ、製鉄、自動車、半導体などの工場に納める。顧客は業種別に8つの区分で開示され、鉄鋼が売上の28%、自動車が22%、電子・半導体が14%を占める。日本製鉄一社で売上の11%だ。
もうひとつが自社製品事業で、回転継手(回転する軸に液体や気体を送る部品)と、高圧・精密洗浄装置を作る。1967年に高圧油圧ポンプを作り始めてからの伝統で、福岡工場で生産する。消耗品の交換需要があるため、一度入ると売上が続く。
稼ぐ構造は「商社の薄利を、自社製品の厚い利益が押し上げる」形だ。工作機械向けは売上の4%にすぎないが、利益では9%を占める。自社製品の比率が高いからである。
海外売上比率は12%。北米では電気自動車(EV)やハイブリッド車向けが伸びている。2026年2月にインド南部の工場が動き出した。
従業員は連結で805人、うち提出会社は502人で平均年齢は37歳だ。営業の人数が収益の源であり、人件費が利益率を左右する。
優良さと弱いところ
リックスの堀は、技術を理解して売る営業と、自社製品の消耗品需要にある。ただの代理店と違い、顧客の設備の中に入り込んで保守まで担う。一度採用された部品は、簡単には切り替えられない。
利益率は商社としては高い。営業利益率は過去3年で7%台を維持し、2023年3月期の7.3%が最高だ。同じ業界のミスミ(営業利益率10%前後)には及ばないが、機械商社の平均を上回る。
弱みは三つある。ひとつ目は顧客の偏りだ。鉄鋼が売上の3割近くを占め、この業界の設備投資意欲はやや鈍っている。ふたつ目は規模だ。売上558億円は、山善やトラスコ中山の数分の一にすぎない。みっつ目は人件費で、営業が収益の源である以上、賃上げのたびに利益率が圧迫される。
資本効率は良い。自己資本利益率は10年の中央値で11%、直近も11%だ。ただ、これは純現金を抱えたままの数字であり、無駄な資本は少ない。
経営の姿勢は堅実である。配当を、純資産に連動する基準(DOE)で決める方針に変えた。業績が悪い年でも配当を落としにくく、株主にとっては安心材料だ。
筆者は、自社製品の比率が上がり続けるかどうかを、いちばん重く見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
リックスが属する産業機械・FA部品の商社業界は、設備投資の景気に左右される。人手不足による省人化投資は、国内で慢性的な追い風だ。世界のFA市場の成長率は年6〜12%とされ、国内でも名目で年4〜7%の伸びが見込める。
ただし、リックスの顧客構成は一般のFA部品商社と違う。製鉄所と自動車工場が中心で、この二つで売上の半分に迫る。鉄鋼は国内で設備が老朽化し、更新の需要はあるが、新設は少ない。自動車はEVとハイブリッド車の組み合わせで、部品の需要が変わりつつある。
成長が見込める分野は、半導体と二次電池だ。リックスの回転継手は半導体製造装置にも使われ、2026年3月期はこの分野の売上と利益が過去最高になった。会社は2026年4月に専門の本部を新設し、二次電池、EV、化学なども狙う。
競争は分散的だ。ミスミ、トラスコ中山、山善といった大手は標準品の在庫とネット販売で規模を取り、地域には多数の専門商社が競う。リックスは「特定の顧客の特定の設備」に深く入るので、大手とは重なりが少ない。
脅威はメーカーの直接販売とネット化である。商社を通さず、メーカーが顧客に直接売る流れは続く。商社機能の中抜きが進む筋書きは、悲観に織り込んでいる。
10年の見通しはこうだ。数量は電子・半導体と自動車で実質で伸び、鉄鋼は横ばいから微減。単価は名目で物価並みに上がる。
資本政策と M&A
還元は厚い。2026年3月期の配当性向は40%で、2027年3月期もさらに増やす予定だ。配当は純資産に連動するDOEを基準にするため、利益が一時的に落ちても減らしにくい。自社株買いは目立たない。
投資は基幹システムに約10億円を投じた。工場や海外の設備、インド南部の新工場への投資が続く。設備投資は2026年3月期で22億円と、商社としては小さい。
M&Aは子会社19社を抱えるが、大型の買収は目立たない。長期計画LV2030には、売上700億円、営業利益56億円を掲げ、二次電池や半導体などの成長分野で売上100億円を目指す。
政策保有株は上場22銘柄で約18億円、時価総額の6%ほど。配当が営業外収益として利益に入るため、価値は別に足さない。
株主では、NOKグループが10%を保有する(2026年10月1日、NOKとイーグル工業の持株会社設立に伴う報告)。取得の目的は確認できない。ほかに信託銀行、取引先持株会、役員個人が並ぶ。創業家の動きや、資本提携の可能性は筋書きに織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
自社製品の比率が上がれば、リックスは商社でなくメーカーになる。会社は、オリジナル品の比率を29%から55%に引き上げる計画を持つ。自社製品の利益率は商社の仕入販売より高く、比率が上がるほど利益率が押し上がる。
半導体と二次電池の需要が追い風だ。回転継手と洗浄装置は、半導体の製造装置の消耗品であり、工場が増えるほど売上が積み上がる。2026年3月期は電子・半導体の売上と利益が過去最高だった。インドの新工場も動き出し、欧州向けの生産も検討している。
国内の人手不足は構造的で、省人化投資は止まらない。リックスは顧客の設備に入り込んでおり、更新の需要が確実に来る。
会社の目標も現実的だ。2027年3月期の営業利益42億円は、過去最高を見込む。長期計画の56億円を達成すれば、10年後はさらに上を見込める。純現金も厚く、配当は純資産に連動して増える。
この筋書きなら、10年後の営業利益は80億円を超え、倍率も14倍台まで評価される。
慎重な見方
商社の仕事は、メーカーに中抜きされる運命にある。ミスミやトラスコ中山のようなネット販売と在庫の大手が、標準品の市場を取っている。メーカーも直接販売を強め、リックスのような中堅商社は、取扱品目を奪われていく。
鉄鋼は成長しない。顧客のトップは日本製鉄で、売上の11%を占める。この業界の設備投資意欲はすでに鈍り、2026年3月期も鉄鋼の利益は前期並みにとどまった。自動車は関税の影響を受け、第1四半期の売上が減った。
利益の増え方にも不安がある。2026年3月期は、売上が過去最高でも営業利益は9%減った。人件費と成長投資が先に出た。営業活動のコストは売上より速く増える。
米国の非連結の孫会社では、業績悪化で貸倒引当金を計上した。海外展開の難しさを示す。取適法への対応で仕入債務が19億円減り、営業キャッシュフローも悪化した。
純利益32億円は旧本社の売却益を含み、ならすと27億円ほどと推定される。
この筋書きなら、景気の谷で営業利益は半分になり、10年後も今の水準に届かない。
どちらに重みを置いたか
どちらも事実に基づく。強気は自社製品の比率が上がる構造を突き、慎重な見方は中抜きと景気の波を突く。ただ、2026年3月期でも自社製品の比率は29%にとどまり、55%への道はまだ実績にならない。営業利益率が7%を超えた年は、過去12年で3回だけである。
中立を最も厚く置き、強気側と慎重側をほぼ同じ重さにした。強気は9%とやや強気21%、慎重側はやや弱気22%と弱気10%とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,197 円584 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,767 円143 億円)。 今の値に割り戻すと 4,819 円391 億円、今との差 +39.3%、 期待の年率 +10.0%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 12,640 円1,025 億円 | 2,416 円196 億円 | +335.1% | +15.8% | 1,355 円110 億円 |
| やや楽観 | 21% | 9,499 円771 億円 | 2,083 円169 億円 | +234.8% | +12.8% | 2,432 円197 億円 |
| 中立 | 38% | 8,348 円677 億円 | 1,911 円155 億円 | +196.5% | +11.5% | 3,898 円316 億円 |
| やや悲観 | 22% | 3,719 円302 億円 | 1,528 円124 億円 | +51.7% | +4.3% | 1,154 円94 億円 |
| 悲観 | 10% | 740 円60 億円 | 493 円40 億円 | −64.4% | −9.8% | 123 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,197 円584 億円 | 1,767 円143 億円 | +159.1% | +10.0% | 8,963 円727 億円 |
今の株価時価総額 3,460 円281 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 9% 自社製品の比率が上がり、半導体の追い風で長期計画を超える 利益 60 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 12,640 円1,025 億円
自社製品の比率が目標どおり上がり、半導体と二次電池の需要が追い風になる。電子・半導体向けの数量は10年で9割増え、回転継手と洗浄装置の消耗品が積み上がる。自動車向けもEV・ハイブリッド車関連で3割強伸びる。鉄鋼は横ばいを保つ。
自社製品の比率は50%台に乗り、営業利益率は8%台まで上がる。会社が掲げる長期計画の営業利益56億円を、さらに5割上回る。インドの工場から欧州向けの生産も始まる。
本社費などの全社費用は、物価で1.34倍に増える。人件費は賃上げで増えるが、売上の伸びが上回る。
配当はDOE基準で増え、純現金は配当と成長投資で少しずつ使われる。減価償却は商社として小さく、物価の影響は小さい。
(名目の前提)数量は実質、価格は物価並みの1.34倍。純現金の受取利息が年1億円ほど増える。
- 重厚長大向け(鉄鋼・環境・紙パルプ・ゴム):数量 100(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 3.11(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 311 億円・営業利益 37 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 12.0%
- 自動車向け:数量 135(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 1.63(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 220 億円・営業利益 28 億円。数量 1.35 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 12.5%
- 電子・半導体・工作機械・高機能材向け:数量 190(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 1.71(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 324 億円・営業利益 52 億円。数量 1.90 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 16.0%
- その他の顧客向け:数量 120(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 1.03(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 123 億円・営業利益 0 億円。数量 1.20 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.09 倍、時価総額 1,025 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自社製品の比率が目標どおり55%へ向かい、半導体の追い風も続く道。実績のない目標なので9%にとどめた。
やや楽観 21% 半導体と自動車が伸び、長期計画に近づく 利益 48 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 9,499 円771 億円
半導体と自動車が伸び、会社の長期計画に近づく。電子・半導体向けの数量は6割増え、自動車は2割強増える。鉄鋼は新設の鈍りを更新需要で補い、わずかに減る。
自社製品の比率は上がり、営業利益率は7%台前半を保つ。過去3年の水準を維持しながら、売上が物価と数量の分で積み上がる。
本社費などの全社費用は物価で増える。人件費の増加は、売上の伸びとほぼ釣り合う。
配当は純資産に連動して増える。減価償却は小さく、物価の影響は限られる。
(名目の前提)数量は実質、価格は物価並みの1.34倍。純現金の受取利息が増える分を利益に入れた。
- 重厚長大向け(鉄鋼・環境・紙パルプ・ゴム):数量 97.0(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 3.11(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 302 億円・営業利益 35 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 11.5%
- 自動車向け:数量 125(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 1.63(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 204 億円・営業利益 24 億円。数量 1.25 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 11.5%
- 電子・半導体・工作機械・高機能材向け:数量 165(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 1.71(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 282 億円・営業利益 42 億円。数量 1.65 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 14.8%
- その他の顧客向け:数量 115(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 1.03(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 118 億円・営業利益 0 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍。全体の PER 16 倍、時価総額 768 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自社製品と半導体が会社予想を上回って伸び、利益率が7%台後半に乗る道。会社の長期計画に近いので2割を置いた。
中立 38% 鉄鋼の鈍りを半導体と自動車が補い、利益は6年遅れで計画に届く 利益 42 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 8,348 円677 億円
鉄鋼の鈍りを、半導体と自動車が補う。鉄鋼・重厚長大向けは実質で5%減る。自動車は15%増え、電子・半導体・工作機械向けは4割増える。売上は名目で5割強増える。
営業利益は56億円。会社の2030年度目標と同じ水準を、数年遅れで達成する見方だ。営業利益率は6.7%と、過去の最高(7.3%)を下回る。自社製品の比率は上がるが、人件費の増加が利益率を押し下げるからだ。
本社費などの全社費用は物価で1.34倍に増え、34億円になる。
減価償却は商社として小さく、物価の影響は限られる。更新するシステムは今の値段で償却が足される。純現金が配当と成長投資に回り、受取利息が年1億円ほど増える。配当は純利益の45%ほど。
(名目の前提)数量は実質、価格は物価並みの1.34倍。
- 重厚長大向け(鉄鋼・環境・紙パルプ・ゴム):数量 95.0(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 3.11(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 296 億円・営業利益 34 億円。数量 0.95 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 11.5%
- 自動車向け:数量 115(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 1.63(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 188 億円・営業利益 22 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 11.5%
- 電子・半導体・工作機械・高機能材向け:数量 140(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 1.71(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 239 億円・営業利益 35 億円。数量 1.40 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 14.5%
- その他の顧客向け:数量 110(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 1.03(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 113 億円・営業利益 0 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.6 倍、時価総額 655 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自社製品の比率は少しずつ上がり、鉄鋼の鈍りを半導体と自動車が補う、最も自然な道。5つの中でいちばん高い38%を置いた。
やや悲観 22% 中抜きと鉄鋼の鈍りで、数量も価格も伸びない 利益 28 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 3,719 円302 億円
メーカー直販の中抜きと鉄鋼の鈍りで、数量も価格も伸びない。重厚長大向けは実質で12%減り、自動車は横ばい。電子・半導体向けは2割増にとどまる。値上げは競争で通りきらず、10年で1.30倍になる。
営業利益率は5%に下がる。商社の機能が薄まり、人件費の増加を吸収できない。営業利益は36億円と、2026年3月期とほぼ同じ水準で10年が過ぎる。
本社費などの全社費用は33億円と、売上が減っても削りきれない。
配当はDOE基準で維持するが、利益の伸びが鈍り、配当性向が上がる。純現金は運転資金に消えていく。
(名目の前提)数量は実質、価格は10年1.30倍(物価に届かない)。
- 重厚長大向け(鉄鋼・環境・紙パルプ・ゴム):数量 88.0(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 3.02(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 266 億円・営業利益 28 億円。数量 0.88 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 10.5%
- 自動車向け:数量 100(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 1.58(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 158 億円・営業利益 16 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 10.0%
- 電子・半導体・工作機械・高機能材向け:数量 120(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 1.66(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 199 億円・営業利益 26 億円。数量 1.20 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 13.0%
- その他の顧客向け:数量 100(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 1.00(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 100 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 0.0%
倍率:自己資本利益率は6%台でk以下。PERの上限は1÷k=12.9倍で、その約74%にあたる9.5倍に置いた。
確率:メーカー直販の中抜きと鉄鋼の鈍りで、数量も価格も伸びない道。過去の景気の谷に近いので22%を置いた。
悲観 10% 空洞化と中抜きが重なり、商社の機能を失う 利益 5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 740 円60 億円
国内製造業の空洞化に、メーカー直販・ネット化の中抜きが重なる。重厚長大向けは3割減り、自動車と電子・半導体も振るわない。値上げは通らず、10年で1.20倍にとどまる。
営業利益は5億円まで落ち、純利益は5億円。営業活動の人員を大きく減らしても、全社費用は26億円と重い。
自社製品はあるが、規模が小さく、赤字を埋めるには足りない。減損も出て、自己資本は減る。
少数株主には、現金の使い方を決められない。ただ、配当は純現金を取り崩して維持する。10年の配当は40億円にとどまる。
(名目の前提)数量は実質、価格は10年1.20倍。純現金の受取利息は縮む分を利益から引いた。
- 重厚長大向け(鉄鋼・環境・紙パルプ・ゴム):数量 70.0(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 2.79(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 195 億円・営業利益 12 億円。数量 0.70 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 6.0%
- 自動車向け:数量 80.0(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 1.46(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 117 億円・営業利益 7 億円。数量 0.80 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 6.0%
- 電子・半導体・工作機械・高機能材向け:数量 90.0(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 1.53(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 138 億円・営業利益 12 億円。数量 0.90 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 9.0%
- その他の顧客向け:数量 80.0(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 0.92(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 74 億円・営業利益 0 億円。数量 0.80 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 0.0%
倍率:利益が出ない筋書きなので、稼ぐ力(純利益5億円÷k=65億円)と、純現金・売れる資産の税後(63億円)を見る。今の自己資本287億円に0.21を掛け、60億円と置いた。
確率:国内製造業の空洞化に、メーカー直販・ネット化の中抜きが重なる複合の筋書き。頻度は低いが、10年では無視できないので10%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
重厚長大向け(鉄鋼・環境・紙パルプ・ゴム)
鉄鋼、紙パルプ、ゴム・タイヤ、環境の顧客向け。製鉄所や重厚長大な工場に、油圧機器や洗浄装置、副資材を納める。
| 数量販売数量の指数(2026年3月期=100、実質) | 価格指数1点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 2.32 | 232 | 27 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 3.11 | 296 | 34 |
取り方:2026年3月期の鉄鋼・ゴム・タイヤ・環境・紙パルプの売上合計232.2億円、セグメント利益の合計27.0億円(有価証券報告書)。開示された数量はないため、指数100と単価2.322に分けた推定。数量は実質、価格は名目。
自動車向け
自動車メーカーと部品工場向け。EV・ハイブリッド車関連のオリジナル品が伸びている。
| 数量販売数量の指数(2026年3月期=100、実質) | 価格指数1点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.22 | 122 | 14 |
| 10 年後 中立 | 115 | 1.63 | 188 | 22 |
取り方:2026年3月期の自動車の売上121.8億円・セグメント利益13.7億円(有報)。数量は指数100・単価1.218の推定。
電子・半導体・工作機械・高機能材向け
電子・半導体、工作機械、高機能材向け。回転継手や洗浄装置など自社製品の比率が高く、利益率が高い。
| 数量販売数量の指数(2026年3月期=100、実質) | 価格指数1点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.27 | 127 | 18 |
| 10 年後 中立 | 140 | 1.71 | 239 | 35 |
取り方:2026年3月期の電子・半導体、工作機械、高機能材の売上合計127.4億円・利益合計18.4億円(有報)。数量は指数100・単価1.274の推定。
その他の顧客向け
上の区分に入らない顧客向けの売上。セグメント利益は非開示で、全社の費用に含めて扱う。
| 数量販売数量の指数(2026年3月期=100、実質) | 価格指数1点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.77 | 77 | 0 |
| 10 年後 中立 | 110 | 1.03 | 113 | 0 |
取り方:2026年3月期のその他の売上76.8億円(有報)。利益は非開示のため0と置き、全社の調整額(マイナス23.7億円。本社費・その他の利益・セグメントに配られない費用)に含めた。営業利益35.4億円に合わせた。
リスクと懸念
鉄鋼と自動車への偏り
鉄鋼が売上の28%、自動車が22%を占め、日本製鉄一社で11%だ。この二つの設備投資が止まれば、売上と利益が同時に落ちる。2026年3月期の鉄鋼は、設備投資意欲の鈍りで成長が止まった。
メーカー直販・ネット化による中抜き
メーカーが顧客に直接売る動きや、ミスミ・トラスコ中山のネット販売の拡大は続く。標準品の商社機能が薄まり、取扱品目と利益率が削られる恐れがある。自社製品の比率を上げられなければ、守りが弱い。
人件費と営業利益率
営業が収益の源であり、賃上げのたびに販管費が増える。2026年3月期は売上が過去最高でも営業利益が9%減った。売上の伸びが人件費の増加に追いつかない年が続くと、利益率の7%台が崩れる。
米国関税と海外展開の難しさ
米国の関税で第1四半期の自動車向け売上が圧迫され、米国の非連結孫会社では貸倒引当金を計上した。海外売上比率は12%で、20%以上の目標は遠い。インド南部の新工場も、立ち上がりの損失が先に出る可能性がある。
運転資金と取適法
取適法への対応で仕入債務が19億円減り、営業キャッシュフローが悪化した。支払いが早まる分、手元の現金が運転資金に食われる。純現金49億円は見かけほど余裕がない。
大株主の動き
NOKグループが10%を保有する。NOKとイーグル工業の持株会社設立に伴う報告で、取得の目的は確認できない。資本提携や買収の動きがあれば、筋書きは変わる。
今後の分かれ目
- 自社製品(オリジナル品)の比率が毎年1ポイント以上上がり、営業利益率が7.5%を超える
- 商社からメーカーへの移行が数字に出ており、強気の筋書きの確率が上がる。
- 鉄鋼向けの売上が2年続けて前年を下回る
- 重厚長大向けの数量が減り、やや弱気の確率が上がる。
- 営業利益が会社予想の42億円を下回る
- 人件費の増加が収益を食っており、中立の営業利益を下げて見直す。
- インド工場や北米で、自社製品の売上が計画を上回る
- 海外売上比率20%の目標が現実になり、その他の筋書きを上方に見直す。
- NOKグループが取得目的を提携や経営参加に変える
- 資本提携や買収の可能性が出て、価値の見方が変わる。
- 取適法対応で現金がさらに運転資金に回る
- 純現金は見かけほど余裕がなく、倍率は上げられない。
見ておくもの
- オリジナル品の比率(29.3%から55%への道筋)
- 営業利益の会社予想(2027年3月期は42億円)への進捗
- 鉄鋼向け・自動車向けの売上
- 電子・半導体向けの売上と利益
- 海外売上比率とインド工場の立ち上がり
- NOKグループの保有目的
- 純現金と仕入債務の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。事業の自己資本利益率(中立8.8%)が資本コスト7.25%をわずかに上回り、残る割合を普通の1/2として長く続く稼ぎを薄めた。成長g=4%で正当化PERの上限は約13.8倍、下限は1÷k=12.9倍。自社製品の比率は上がるが、顧客の偏りと景気の波を見て、下限の1÷k=12.9倍(上限の約93%)に置いた。強気は上限の93%、やや強気は94%。やや悲観はROEがk以下の上限1÷k=12.9倍の約74%、悲観は純現金と売れる資産の税後から。今の株価や市場の倍率には寄せていない。
減価償却は設備投資の範囲で小さく、物価での増加は利益にほとんど響かない。基幹システムなどの更新は、今の値段で償却が足される。2026年3月期の純利益32億円は旧本社の売却益を含み、ならした27億円を起点にした。リースは営業車が中心で年1.3億円と小さく、新リース会計基準の影響は小さい。基準年の形(家賃・リース料を費用に入れた形)で10年後もそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→17.09 倍・やや楽観 PER 13.5→16 倍・中立 PER 12.9→15.6 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。