結論
ナ・デックスは、自動車の車体をつなぐ抵抗溶接の制御装置で国内首位とされる設備メーカー兼商社だ。筆者の結論は、時価総額の4割強にあたる純現金と北米の巨額の受注残は魅力だが、利益の薄さがそれを打ち消し、今の値段はほぼ妥当、というものだ。
稼ぐ力は、まだ薄い。2026年4月期の営業利益は11億円、営業利益率は3%。ROEは3%台で、資本コストの8.5%に届かない。自己資本は200億円あり、時価総額103億円の2倍近い。市場が事業の稼ぎよりも低く値付けしているのは、この資本が利益に結びついていないからだ。
転機は北米にある。前期末の受注残は225億円で、前の年の2.5倍に膨らんだ。このうち北米が184億円。前年に買ったEV充電設備会社を含む大型案件とみられる。会社は次期の売上を480億円と、3割増で計画する。第1四半期は売上が23%増え、営業利益は黒字に戻った。
一方、国内は縮んでいる。国内の売上は前期1割減り、受注残も4分の1減った。電動化とギガキャストが、溶接の点数そのものを減らす構造的な逆風になる。元業務委託社員による循環取引が見つかり、内部統制にも傷がついた。
筆者は、北米の受注が利益に変わる確率を五分五分と見る。変われば強気の筋書きに近づくが、補助金の政策に左右されるため、確率は分散して置いた。10年で測ると、価値は今の値段の9割ほどだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、資産に比べて安い会社だが、わかりやすい事業とは言えない。
まず資産を見る。自己資本は200億円、純現金は47億円。時価総額は103億円で、自己資本の半分しかない。純現金を引くと、事業そのものには56億円しか払っていない計算になる。
次に稼ぐ力を見る。過去10年の営業利益は6億〜21億円で、中央値は12億円前後。中立の筋書きでは、北米の受注が売上になり、10年後に21億円を稼ぐと置いた。それでもROEは5%台で、資本コストに届かない。事業の価値は、純利益の13億円ほどに10倍前後を掛けた額だ。
安全域は、現金と受注残にある。受注残は225億円と、売上の7割近くある。赤字の期は過去20年で2回しかない。ただし、元社員の不正は内部統制の弱さを示し、経営の質には不安が残る。
10年で測ると、価値は今の値段の9割ほどで、ほぼ妥当な水準だ。割安に傾くか割高に傾くかは、北米の受注がどれだけ利益に変わるかで決まると筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
ナ・デックスは、溶接機と生産設備を自動車メーカーに納める会社だ。名古屋に本社があり、連結で従業員は約840人。
中心は抵抗溶接。自動車の車体は、薄い鉄板を電気を流して点で溶かして接合する。ナ・デックスはその電流を制御する装置で、国内の自動車業界で首位とされる。トヨタ系を始め、自動車関連企業が主な顧客だ。
事業は4本ある。溶接やロボットの設備をつくるプロセスソリューション、工場の自動化設備のFA、システム構築のシステムインテグレーション、制御部品の4つだ。
開示される区分は地域別だ。2026年4月期の売上は、日本261億円、北米68億円、東南アジア26億円、中国13億円。利益の主力は日本の8億円で、東南アジアの利益率が最も高い。
北米は前年に買収したEV充電設備会社Uptime EV Chargerを含み、売上が81%増えた。受注残は184億円と前期の5倍以上になり、足元の売上の3年分近くにあたる。会社は2026年5月にロボット自動化のRobofullも子会社にする予定で、物流向けの自動化に広げる。
設備投資は年6億円と軽く、減価償却も5.5億円と小さい。人手とノウハウで稼ぐ会社だ。
優良さと弱いところ
事業の質は、強い部分と弱い部分がはっきり分かれる。
強いのは、車体工程の溶接制御という地味だが欠かせない領域だ。国内自動車では首位とされ、一度ラインに入れば保守と更新の需要が続く。顧客は、長年の取引で工場のラインを熟知する会社に頼り続けやすい。堀、つまり他社がまねしにくい強みは、この顧客との関係と現場の知識にある。
弱いのは、需要が自動車の設備投資の波に左右される点だ。営業利益は、2015年4月期の21億円から2021年4月期の6億円まで、6年で3分の1に落ちた。利益の山と谷が深く、値段は顧客の入札に決められやすい。
資本の使い方は、控えめだ。ROEは過去10年の中央値で5%。利益の大半を現金のまま持ち、純現金は47億円に積み上がった。会社は総還元性向50%以上を掲げ、前期は自社株買いも3.9億円行った。変化の兆しではある。
ガバナンスには傷がある。元業務委託社員による循環取引が2024年に見つかった。特別調査委員会が原因を調べ、仕入れの実在性を第三者の証憑で確かめる仕組みを入れた。再発防止の費用は、当面の利益率を押し下げる。
筆者が一番気にするのは、巨額の受注残を利益に変える実行力だ。受注残が売上になっても、利益率が薄ければ価値は増えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車の生産設備の市場は、電動化という大きな転換の渦中にある。
車体の組み立てでは、テスラが先行したギガキャスト、つまり大型部品の一体成形が広がり、溶接する点そのものが減っていく。トヨタなど日本の自動車メーカーもこの方式の採用を進めている。抵抗溶接の需要は長期では細る方向にある。一方で、既存のラインの保守と更新、電池の組み立て、ロボットによる自動化といった新しい需要も生まれている。
競合は国内外の溶接機メーカーと、ロボットSIer(システム構築会社)だ。ナ・デックスは自社で溶接制御を持つので、ロボットSIerよりも装置の核を握る。ただし規模は小さく、海外の大手が北米に進出すると競争が厳しくなる。
北米では、EV充電設備の大量設置が政策で後押しされている。ナ・デックスはUptime EV Chargerを通じて、設置工事と保守を取り込んだ。補助金は政権で変わるので、需要の見通しは読みにくい。ただ、充電設備は一度置けば保守契約が続き、安定した収益になる可能性もある。
国内は、工場の自動化と人手不足がFA設備の追い風になる。物価3%の世界では、設備の値段は上がる。需要の数量が実質で減っても、売上は保てる。景気の谷では、自動車メーカーが設備投資を絞るため、受注が3〜4割落ちる年がある。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向30%以上に、自社株買いを加えた総還元性向50%以上だ。前期の配当性向は38%。自社株買いも3.9億円行った。次期は配当を増やす予定だ。
純現金は47億円で、時価総額の4割強にあたる。会社は「機動的な財務体制」を課題に挙げており、現金を使う意思はある。ただし、受注残の増加で運転資金が膨らむため、全額を還元には回せない。
M&Aは積極的だ。2024年に米国のUptime EV Chargerを50.1%取得し、2026年5月にはRobofullを子会社にする予定。中心は買う側だ。小さな会社を買って新しい領域に広げる方針で、取得額は小さい。失敗のリスクは、買収先の赤字が連結を押し下げる点にある。
筆頭株主はアート・ギャラリー富士見で20%。米国の運用会社フィデリティ系も約10%を持つ。この2者だけで3割を占め、浮動株は多くない。TOBの可能性は否定できないが、足元では観測がない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注残の質を見れば、北米の売上は3年分が確定している。EV充電設備の大量設置は政策の後押しがあり、設置したあとの保守契約は積み上がる。会社は、すでに売上の3割増を計画している。Q1は営業利益が黒字に戻り、計画が順調に動き出している。
国内も、人手不足を背景にFA設備の更新需要がある。抵抗溶接制御は首位を守り、東南アジアは営業利益率が7%近い。事業の利益率が上がれば、ROEは資本コストを超える。
さらに、純現金が時価総額の4割を超える。総還元性向50%の方針が実行されれば、現金が株主に戻る。PBRが0.5倍の会社が自社株買いを続ければ、残る株主の取り分は目に見えて増える。
ガバナンスの傷は、再発防止策で塞がれつつある。調査報告で全容が明らかになり、不確実性は小さくなった。
最悪の場合を考えても、足元の自己資本と純現金が下値を支える。事業の価値が資本コストを超えなくても、現金の還元だけで株価が上がる余地がある。中立の筋書きですら、会社が示す次期の営業利益と同じ水準に置いており、保守的だ。
国内の自動車向けは縮むとの見方があるが、前期の営業利益は24%増えた。縮む中でも利益率を上げた実績は、経営の実力を示す。
慎重な見方
国内の売上は前期1割減り、受注残も25%減った。電動化とギガキャストで、溶接の点数は構造的に減る。抵抗溶接の首位は、縮む市場の首位にすぎない。
北米の受注残は、ほぼ一件の大型案件の色が濃い。EV充電は政権交代で補助金が止まると、失注や取り消しが起こりうる。連結に入れた子会社は、同時に利益の49.9%を外部株主に渡す。売上が増えても、利益は増えにくい。会社の計画でも、売上480億円に対する純利益は10.5億円と薄い。
元業務委託社員による循環取引は、内部統制が緩かったことを示す。再発防止にかかる費用と、営業の負担は利益を押し下げる。ROEは過去10年の中央値で5%、資本コストに届いたことはほとんどない。
純現金は魅力だが、事業のための運転資金が受注残とともに増える。現金が株主に戻るとは限らず、買収に使われるおそれもある。
最後に、買収に傾く経営の資本配分を警戒する。Robofullの買収価格は開示されておらず、のれんの減損が将来の利益を壊すおそれがある。小さな会社を次々に買う手法は、成功率が高いとは言えない。
この会社の過去10年の営業利益率は、最高でも6.8%で、直近は3%。強気の筋書きは利益率が5〜6%に戻る前提で、その実績はここ数年にない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方に、確率の3割半を置いた。北米の受注は確定した事実だが、利益になる保証がない点を重く見た。
強気側の根拠は純現金と受注残の質で、どちらも数字で確かめられる。慎重側の根拠は構造変化と実行力で、どちらも長期の不確実性だ。
強気の確率は3割、中立は3割半、慎重側は3割半とした。10年後の時価総額は中立で今の約1.4倍だが、資本コストで割り戻すと、総合では今の値段の9割ほどになる。
最も重く見たのは、北米の受注残が利益に変わる確率だ。受注の質が悪ければ、売上が増えても価値は増えない。そこを中立の利益率3.8%で控えめに置いたため、総合は適正の範囲に収まった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 2,137 円168 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 611 円48 億円)。 今の値に割り戻すと 1,405 円111 億円、今との差 +9.8%、 期待の年率 +7.9%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,460 円351 億円 | 1,076 円85 億円 | +332.5% | +15.8% | 554 円44 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,063 円241 億円 | 810 円64 億円 | +202.5% | +11.7% | 774 円61 億円 |
| 中立 | 35% | 2,379 円187 億円 | 642 円51 億円 | +136.0% | +9.0% | 1,057 円83 億円 |
| やや悲観 | 23% | 919 円72 億円 | 409 円32 億円 | +3.8% | +0.4% | 305 円24 億円 |
| 悲観 | 12% | 285 円22 億円 | 187 円15 億円 | −63.2% | −9.5% | 57 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,137 円168 億円 | 611 円48 億円 | +114.6% | +7.9% | 2,747 円216 億円 |
今の株価時価総額 1,280 円101 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 北米の大型案件が続き、国内も踏みとどまる 利益 24 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 4,460 円351 億円
北米の受注残が順調に売上へ変わり、その後も新しい大型案件が入る。EV充電器の設置と保守が事業として積み上がり、北米の売上は今の3倍を超える。
国内は自動車メーカーの設備更新が底堅く、抵抗溶接制御装置の首位の座を守る。東南アジアではタイとインドネシアの日系メーカー向けが伸び、利益率は7%に乗る。
全社の営業利益は30億円台後半に届く。国内の更新需要と東南アジアの拡大が、北米の追い風に重なる。会社が示す次期の22億円から、さらに7割近く積み上がる。ROEは約9%と資本コストを超え、純現金も還元に回る。自己資本は270億円まで厚くなる。それでも、この水準は過去の最高益(2015年4月期の21億円)を大きく超える。筆者は、受注の山を数年の平均に直した姿として見る。
- 日本:数量 2,600(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,347(1件あたりの売上(万円))→ 売上 350 億円・営業利益 18 億円
- 北米:数量 1,260(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 2,025(1件あたりの売上(万円))→ 売上 255 億円・営業利益 15 億円
- 中国:数量 156(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,190(1件あたりの売上(万円))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円
- 東南アジア:数量 440(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,754(1件あたりの売上(万円))→ 売上 77 億円・営業利益 5 億円
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 13.81 倍、時価総額 351 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気は、北米の受注残184億円が一過性でなく、EV充電と自動車ラインの需要が続く場合だけ。受注残は前期の5倍だが、連邦の補助金は政治で変わる。確率は1割にとどめた。
やや楽観 20% 北米が伸び、国内は横ばいで利益が積み上がる 利益 18 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,063 円241 億円
北米の受注残が売上になり、EV充電以外のロボット・溶接ラインにも広がる。10年の北米売上は今の2.9倍、国内は数量が1割弱減るが値上げでほぼ維持する。
営業利益は20億円台後半。ただ、利益率は4.6%にとどまる。大型案件は値引き競争になりやすく、利益率は今の延長にとどまると筆者は見る。
還元は総還元性向50%の方針を守り、自社株買いが続く。自己資本は260億円前後で、ROEは7%弱と資本コストに届かない。会社は総還元性向50%の方針を守るが、利益が積み上がる分だけ現金も積み上がり、倍率は資本コストの逆数の手前で止まる。受注の増加で運転資金が膨らむことも、還元の余力を縛る。
- 日本:数量 2,548(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,347(1件あたりの売上(万円))→ 売上 343 億円・営業利益 15 億円
- 北米:数量 990(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 2,025(1件あたりの売上(万円))→ 売上 201 億円・営業利益 9 億円
- 中国:数量 143(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,240(1件あたりの売上(万円))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円
- 東南アジア:数量 360(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,754(1件あたりの売上(万円))→ 売上 63 億円・営業利益 4 億円
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 241 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残の転換と国内の底堅さが両立する筋書き。次期計画の営業利益22億円が達成され、その後も緩やかに積み上がることを2割とみた。
中立 35% 北米の受注は売上になるが、国内の縮みがそれを相殺する 利益 14 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,379 円187 億円
北米の売上は今の2.4倍に増える。受注残184億円の転換と、その後の保守・追加設置が主な中身だ。国内は数量が5%減り、価格は物価並みに上がる。自動車の車体づくりが電動化とギガキャストで簡素化され、溶接点数が減る逆風がある。
営業利益は21億円強、営業利益率は3.8%。これは過去12年の最高(6.8%)を下回り、会社が次期に見込む22億円とほぼ同水準だ。人件費の上昇は価格で転嫁できる範囲に収まる。減価償却は年5.5億円で、物価では増えず、新工場の分だけが足される。
還元は総還元性向50%。ROEは5%台で資本コストに届かない。余った現金は帳簿より小さい価値で数える。
- 日本:数量 2,470(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,347(1件あたりの売上(万円))→ 売上 333 億円・営業利益 13 億円
- 北米:数量 810(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 2,025(1件あたりの売上(万円))→ 売上 164 億円・営業利益 5 億円
- 中国:数量 130(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,329(1件あたりの売上(万円))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円
- 東南アジア:数量 300(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,754(1件あたりの売上(万円))→ 売上 53 億円・営業利益 3 億円
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 187 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中立は、北米の受注残が数年かけて売上になる一方、国内の自動車向けが緩やかに縮む筋書き。国内の受注残が前期25%減ったこと、不正の再発防止で営業負担が増すことを重く見た。
やや悲観 23% 北米の案件が途切れ、国内も細る 利益 8 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 919 円72 億円
北米の受注残の一部が先送り・失注になり、10年後の売上は今の1.5倍にとどまる。国内の数量は1割5分減り、値上げも物価に届かない。
営業利益は11億円台。固定費の多い設備メーカーの面があり、売上が1割落ちると利益が3割落ちる。利益率は2.6%まで下がる。
配当は維持するが、自社株買いは細る。会社は次期の計画で売上480億円を掲げるが、この筋書きでは10年かけても440億円台にとどまる。現金は事業の不振と運転資金で減り、余った現金の価値は4分の3に割り引く。国内の更新需要は残るため、赤字には落ちない。ただし中国は引き続き赤字で、買収先の採算も重荷になる。
- 日本:数量 2,210(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,306(1件あたりの売上(万円))→ 売上 289 億円・営業利益 8 億円
- 北米:数量 540(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,889(1件あたりの売上(万円))→ 売上 102 億円・営業利益 2 億円
- 中国:数量 104(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,190(1件あたりの売上(万円))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円
- 東南アジア:数量 240(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,702(1件あたりの売上(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 2 億円
倍率:事業ROEは約3.2%でkの8.5%に遠く及ばない。上限11.8倍の約6.4割の7.5倍に置いた。
確率:EV充電の補助金が縮み、受注残の一部が先送りになる筋書き。電動化の逆風が国内にじわじわ効く点も重ねた。国内は自動車の設備投資が細る。過去の営業利益の低水準(2021年4月期の6億円)を考えると、現実味は高い。
悲観 12% 国内の自動車向けが崩れ、北米も不発に終わる 利益 2 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 285 円22 億円
国内の自動車の溶接設備が3割減る。電動化とギガキャストで溶接点数が減り、中国系の設備に押される。北米は補助金の縮小で受注残の大半が取り消され、EV充電子会社は赤字に転じる。
営業利益は2億円、純利益は2億円弱。固定費の重さが利益を消す。
手元の現金は事業の維持に使われ、余った現金の価値は半分に割り引く。それでも自己資本は230億円近くあり、事業が崩れても会社が消えることは考えにくい。ただし現金は買収や運転資金に回りやすく、少数株主に戻る額は小さい。電動化が進むほど、溶接の専門性は生かせなくなる。経営は新規事業に舵を切るが、その成否は誰にもわからない。
- 日本:数量 1,820(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,206(1件あたりの売上(万円))→ 売上 220 億円・営業利益 2 億円
- 北米:数量 315(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,738(1件あたりの売上(万円))→ 売上 55 億円・営業利益 −1 億円
- 中国:数量 65.0(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,091(1件あたりの売上(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円
- 東南アジア:数量 160(年間の納入案件数(件換算・推定))× 価格 1,571(1件あたりの売上(万円))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円
倍率:事業ROEは約0.8%。稼ぐ力は小さいが、純現金は残る。上限11.8倍の約6割の7.0倍に置き、余った現金は半分を数える。
確率:10年の悲観は構造的な負け。電動化とギガキャストで抵抗溶接の需要が消え、北米の大型案件が不発に終わる。確率は1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本
自動車メーカー・部品メーカー向けの抵抗溶接制御装置、溶接機、FA設備、システム構築、制御部品。国内の収益の中心。
| 数量年間の納入案件数(件換算・推定) | 価格1件あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 2,600 | 1,005 | 261 | 8 |
| 10 年後 中立 | 2,470 | 1,347 | 333 | 13 |
取り方:セグメント売上261億円を、1件あたり平均約1千万円(推定)で割った件数。件数と単価は開示がなく、案件規模の推定。国内の受注残は39億円で前期比25%減。
北米
米国・カナダ・メキシコの溶接機・FA設備の販売と、Uptime EV Chargerによる充電設備の設置・保守。前年のM&Aで連結に入った。
| 数量年間の納入案件数(件換算・推定) | 価格1件あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 450 | 1,511 | 68 | 2 |
| 10 年後 中立 | 810 | 2,025 | 164 | 5 |
取り方:セグメント売上68億円(前期比81%増)を、1件あたり平均約1.5千万円(推定)で割った件数。受注残は184億円(前期の5.4倍)で、数量は今後2〜3年で急増する前提。内訳は開示で確認できず推定。
中国
上海の子会社による溶接関連機器の販売。日系自動車メーカーの現地生産に依存し、縮小が続く。
| 数量年間の納入案件数(件換算・推定) | 価格1件あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 130 | 992 | 13 | −1 |
| 10 年後 中立 | 130 | 1,329 | 17 | 0 |
取り方:セグメント売上13億円を、1件あたり平均約1千万円(推定)で割った件数。前期は18%減収で赤字が続く。
東南アジア
タイ・インドネシアの子会社による日系自動車メーカー向けの溶接・FA設備の販売。
| 数量年間の納入案件数(件換算・推定) | 価格1件あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 200 | 1,309 | 26 | 2 |
| 10 年後 中立 | 300 | 1,754 | 53 | 3 |
取り方:セグメント売上26億円(前期比12%増)を、1件あたり平均約1.3千万円(推定)で割った件数。営業利益率は6.8%と全社で最も高い。
リスクと懸念
北米の大型案件の実現と政策
北米の受注残184億円は、補助金の変更や顧客の延期で売上にならないおそれがある。EV充電は政権で政策が変わる。受注が取り消されると、買収した子会社の損失が連結に響く。
電動化・ギガキャストによる溶接の減少
車体の一体成形が広がると、抵抗溶接の点数は減る。国内の売上は前期1割減り、受注残も25%減った。構造変化が早まれば、首位でも縮む市場の中で戦うことになる。
内部統制と循環取引
元業務委託社員による循環取引が2024年に見つかった。再発防止の仕組みは入ったが、営業所ごとの管理が弱い体質が残るなら、同じ種類の問題が再び起きうる。
買収先の採算
Uptime EV Chargerは外部株主が49.9%を持つ。Robofullの買収も加わり、のれんの減損や買収先の赤字が連結を押し下げるおそれがある。
自動車の設備投資の循環
景気の谷では、自動車メーカーが設備投資を絞り、営業利益が3分の1まで落ちた年がある(2015年4月期21億円→2021年4月期6億円)。固定費があるため、売上の減少以上に利益が落ちる。
AIエージェントによる代替
システム構築(SI)は事業の一部で、人月で売る部分は代替の影響を受ける。ただし売上の大半は溶接設備とFAの現物で、影響は限定的とみる。
今後の分かれ目
- 北米の受注残が2期続けて売上に変わり、営業利益率が4%を超える
- 中立の利益率3.8%が低すぎることになり、価値が上方修正される。
- EV充電の補助金が打ち切られ、北米の受注が取り消される
- 北米の売上が今の水準に戻り、やや悲観の筋書きに近づく。純現金が支えになる。
- 総還元性向50%が実行され、自社株買いが毎年5億円規模で続く
- 余った現金が株主に戻り、戻り方を1.0に近づけて数えられる。
- 国内の受注残の減少が2期続く
- 国内の縮みが想定より早く、中立の数量0.95倍を引き下げる。
- 新たな不正や監査上の問題が見つかる
- ガバナンスの評価が下がり、倍率を引き下げる。
見ておくもの
- 北米の受注残(前期末184億円)が売上に変わる速度と、新規受注
- 国内の受注残(前期末39億円)の回復
- EV充電を巡る米国の補助金と、Uptime EV Chargerの採算
- 自動車の車体工程の変化(ギガキャスト)による溶接点数の動き
- 総還元性向50%の実行(自社株買いの規模)と内部統制の再発防止
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業ROEが資本コスト8%を下回る筋書きで上限を1÷k=約11.8倍とし、利益の質(大型案件の振れ・不正の再発防止費用・国内の縮み)に応じて、その6〜9割に置いた。今のPER・PBR、過去の倍率は使っていない。中立の10年後の時価総額が今を上回るのは、純現金の約30億円と、中立の営業利益21億円という置き方による。資本コストで割り戻すと総合は今の9割ほどになる。会社の計画(売上480億円・営業利益22億円)は10年後の営業利益とほぼ同じ水準に置いており、物価で名目の利益が伸びる分を加えていない。計画の達成が難しいと見るなら、価値は下がる。減価償却は年5.5億円のままで物価では増やしていない。
悲観のPBRは0.1倍と低いが、これは稼ぐ力の弱さを式で置いた結果で、余った現金は別に半分を数えている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→13.81 倍・やや楽観 PER 10.3→12.5 倍・中立 PER 9.3→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した(決まり v2)。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。