結論
OCHIホールディングスは、住宅の建材を建材店やハウスメーカーに卸す会社だ。ほかに、木造住宅の骨組みの加工、空調・暖房機器の販売、商業施設や公共工事の建設も持つ。売上は 1,204 億円、営業利益は 17 億円。利益率は 1.4% と薄い。
筆者の結論は、今の値段はやや割高、である。数字だけ見れば強く見える。純現金は 106 億円で、時価総額の 6 割近い。ただ、これは売り手から仕入代金の支払いを待ってもらっている分が大きい。実際に株主のものと呼べる余った現金は、その3分の1ほどにすぎない。
事業の中身は、新築住宅に頼る建材卸が売上の 6 割だ。新設住宅は 2025 年度に 71 万戸と、前年から 13% 減った。人口が減る日本では、長い目で見ても新築は細る。一方、建設事業は前期に利益が 2.6 倍になり、全体を支えた。波が大きい事業で、毎年は期待できない。
10 年後の中立は、売上が 1,400 億円まで増えても、人件費の上昇で営業利益は 17 億円前後と横ばいだ。資本コストは 7%、ROE は 4% 台にとどまる。配当は純資産配当率 2.8% を下限の目安にしており、還元は手堅い。計算の総合は約 −40% の割高だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、OCHI は「財務は堅いが、事業は伸びない卸」だ。純現金が時価総額の 6 割近いのは魅力に見える。だが、そのまま株主の取り分と数えるのは危うい。現金のかなりの部分は、仕入先への支払いを後に回して生まれた預かり金に近く、売上が縮めば吐き出す側にある。
稼ぐ力は、粗利が薄く、人件費に連動する。新築住宅は細り、建材の営業利益率は 1% 前後。堀が深ければ値上げが通るはずだが、卸の粗利は物価と一緒にしか動かない。唯一の高収益は建設事業で、これは案件ごとの波が大きい。
資本配分は穏当だ。配当の下限を決め、無理な買収より物流網の整備に投じている。この規律は評価できる。ただ、積み上がる現金を株主に戻す速度は遅い。
安全域は、現金の厚みにある。悲観の筋書きでも、売れる資産と余った現金で、今の値段の 3 割弱は残る。ただ、中立の価値でも今の値段に届かない。払う値段に見合う安全域とは言えない。
筆者がいちばん知りたいのは、現金のうち何割が仕入先からの預かりかだ。この会社の貸借対照表では、約 3 分の 2 がその性格を持つ。ここを見誤ると、割安に見える。
何で稼ぐ会社か
事業は 5 つに分かれる。建材事業は売上の 6 割を占める中核で、建材メーカーや代理店から住宅用の資材を仕入れ、全国の建材店、工務店、ハウスメーカーに売る。売上は 708 億円だが、営業利益は 5 億円、利益率は 0.8% にすぎない。2026 年 3 月期は熊本に物流センターを新設し、その費用で利益が 3 割減った。
環境アメニティ事業は、業務用・家庭用の空調機器や暖房機器を、メーカーや代理店から仕入れて売る。売上は 172 億円、利益率は 1.8%。北東北の売上が減った。加工事業は、木造住宅の柱や梁といった構造部材を工場で刻んで届ける。売上は 150 億円で、利益率は 3.5% と卸より高い。
エンジニアリング事業は、商業施設や公共工事の建設を請け負う。売上は 142 億円と前期から 49% 増え、営業利益は 12 億円と 2.6 倍になった。利益率は 8.1% で、グループでいちばん高い。ただし工事は案件ごとの波が大きい。
連結の従業員は 1,742 人で、建材が 752 人と最多。持株会社の本体は 46 人で、事業は子会社が担う。2026 年 3 月期の設備投資は 11 億円。熊本の物流センターのほか、大阪と宮崎で営業所の用地を買った。
その他は産業資材の卸で、売上は 43 億円と小さい。持株会社の OCHIホールディングスは 2010 年 10 月に、越智産業の株式移転で設立された。福岡証券取引所にも上場しており、九州・西日本に強みを持つ。取引先は建材店、工務店、ハウスメーカー、ゼネコンと広く、売上の 10% を超える大口は目立たない。
優良さと弱いところ
堀は、全国に張った建材の配送網と、取引先との関係にある。住宅の資材は種類が多く、1 件ごとの量は小さい。納期に間に合わせる物流と、多品種を揃える力が、小さな建材店には自前で持てない。ここが卸の存在理由だ。
ただし堀は浅い。粗利は 1 割台で、価格を決める力は弱い。メーカーの直販やネット通販が、卸を飛ばす可能性もある。取引先は中小の建材店や工務店が多く、信用リスクも抱える。2026 年 3 月期は建材の営業利益が 3 割減り、利益率が 0.8% まで下がった。
資本効率は低い。ROE は直近 5.3%、過去 10 年の中央値は 9.8% だが、2022 年 3 月期の 17% は資材高騰の特需だった。自己資本比率は 35.6% で、純現金が 106 億円ある。財務は堅い。借入は 61 億円。ただし現金 166 億円のうち、買掛金が売掛金などより多い分(約 66 億円)は、仕入先との支払いの時間差で生まれた預かりだ。
経営は M&A を成長の手段にしてきた。事業リスクの欄にも「M&A 後の企業価値低下」が並ぶ。のれんは 11 億円と小さく、いま大きな減損の懸念はない。配当は純資産配当率 2.8% か配当性向 30% の高いほうを選ぶ方針で、株主還元には前向きだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
新築住宅は、日本の人口減と住宅価格の高止まりで、長期の縮小が続く。2025 年度の新設住宅着工は 71 万 1 千戸で、前年から 12.9% 減った。2025 年 4 月の建築基準法の改正で申請が混乱した影響もあり、持家と分譲戸建は 10.2% 減だった。住宅ローン金利が上がり、中東情勢による資材価格の高騰も重なる。
建材卸の価格は、合板・鋼材・樹脂などの相場に連なる。人件費と物流費は上がるが、卸は粗利率を一定に保つのが精いっぱいで、販売価格は物価ほど上がりにくい。一方、リフォームや非住宅、インフラの更新は底堅く、新築の減少を一部補う。
競合は、全国規模の建材商社と地場の問屋が混在し、寡占ではない。大手が地場を買い取る再編が続いている。OCHI も M&A で規模を伸ばしてきた会社だ。空調・暖房機器の卸は、省エネ更新の需要が追い風だが、メーカー直販との競争がある。
分かれ目は 3 つ。新築と改修の比率、資材の相場と物流費の転嫁、そして建設事業の案件の積み上げだ。
建設事業の側では、商業施設の改装や公共工事の需要が堅い。人手不足で工期が延び、工事単価が上がる局面は、受注側に有利に働く。ただし建設資材の高騰が続けば、請負価格の見直しが遅れて利益を削る。住宅の資材卸と建設事業が、住宅市況と別の景気で動くことは、会社にとって分散になる。環境アメニティの空調では、業務用の省エネ更新が数年続く見込みだ。
資本政策と M&A
還元は、純資産配当率(DOE)2.8% 程度と連結配当性向 30% 程度のうち、高いほうを採る方針だ。2026 年 3 月期は配当総額が 7 億円強で、配当性向は 5 割強。現金が積み上がる会社なので、下限の方針が手堅い。自社株買いの実績は小さく、自己株式は 6 億円ほどだ。
成長投資は、物流センターの新設や営業所の用地取得、M&A が中心。現金 166 億円に対し借入は 61 億円で、機動的に動ける。中期経営計画(2023〜2027 年 3 月期)は、事業ポートフォリオの変革、成長分野への注力、経営基盤の確立を掲げるが、数値の目標は公表していない。
店舗や営業所の賃借は少なく、リース債務は 1 億円にとどまる。物流センターと営業所を自社で持つ。新リース会計基準の影響は小さい。減価償却は 9 億円と軽く、物価で増やさず、新しい物流センター等の分だけ上乗せした。10 年後は約 10 億円(物価で一律に増やすと約 12 億円)。
創業家の持ち株や TOB の可能性は、確認できた資料に記載がない。価値の数字には入れていない。
純現金が時価総額の 6 割近い会社は、本来なら株主還元の拡充を迫られる立場にある。実際に株主総会で還元の強化を求める声が出る余地はあるが、確認できた資料には記載がない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
住宅は底を打つ。2025 年度の着工減は建築基準法の改正が重なった一時要因が大きく、2026 年度から戻りが始まる。住宅価格の上昇は続くが、住み替えと建て替えの需要は残り、リフォームと非住宅が新築の減少を埋める。建材卸の取扱量は、10 年でほぼ横ばいに収まる。
建設事業は伸びる。前期に利益が 2.6 倍になったのは、商業施設と公共工事の受注が実を結んだ結果で、受注残も厚い。利益率 8% 台が定着すれば、グループの利益は大きく変わる。加工事業は、人手不足で大工の工数を減らせるプレカット需要が伸びる。
財務は強い。現金 166 億円に対し借入は 61 億円で、M&A の余地が大きい。建材店の再編で、地場の問屋を買い取って規模を取れば、仕入れの力が強まる。配当は下限が決まっており、利益が伸びれば還元も増える。
2027 年 3 月期の予想は営業利益 18 億円と回復が見込まれており、物流センターの新設費用が一巡すれば、建材の利益率も戻る。
配当の下限が決まっていることも、買い手には安心材料だ。純資産配当率 2.8% を下回らないという約束は、利益が落ちる年でも還元を支える。業績の回復が見えれば、純現金の厚さが再評価される余地もある。
慎重な見方
新築住宅の縮みは構造的だ。人口が減り、住宅価格が高止まりし、住宅ローン金利が上がる。2025 年度の着工は 12.9% 減の 71 万戸だが、これが戻る保証はない。建材卸の売上の 6 割はこの新築に頼る。しかも価格は物価ほど上がらず、人件費だけが先に上がる。利益率の低い卸にとって、これは致命傷になりうる。
建設事業の利益は波が大きい。前期の 2.6 倍はたまたま案件が重なった結果かもしれず、ここが元に戻れば、グループの営業利益は一気に減る。M&A で買った会社の価値が下がるリスクも、会社自身が重要なリスクに挙げている。
現金は見かけほど自由ではない。買掛金が多く、売上が縮めば、仕入先への支払いのために現金が出ていく。配当は純資産配当率で決まるため、利益が減っても出し続けることになり、現金の減りが早まる。
メーカーの直販と通販が広がれば、卸を飛ばす流れは止まらない。取引先は中小の建材店・工務店が多く、貸し倒れも増える。建材の利益率は、すでに 0.8% まで下がっている。
加えて、持株会社の本体は従業員 46 人で、事業の運営は子会社に任されている。M&A で積み上げた会社群を一つにまとめて効率を上げる仕事は、まだ途中だ。
どちらに重みを置いたか
新築の底打ちと建設事業の伸びという強気の見方は、起こりうる。ただし、人口減による新築の縮みと、薄い粗利が人件費に押される構造という慎重な見方のほうが重い。確率は中立を中心に、楽観・やや楽観を 24%、やや悲観・悲観を 38% に置いた。中立でも営業利益は今とほぼ同じで、ROE は 4% 台にとどまる。純現金の厚みは、悲観の床を支える。総合は約 −40% の割高になった。現金を余りと預かりに分けて見たことが、割高の判定を決めている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,363 円178 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 596 円78 億円)。 今の値に割り戻すと 1,118 円146 億円、今との差 −20.4%、 期待の年率 +3.4%(資本コスト 7.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,739 円357 億円 | 805 円105 億円 | +152.4% | +9.7% | 213 円28 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,130 円278 億円 | 728 円95 億円 | +103.6% | +7.4% | 514 円67 億円 |
| 中立 | 38% | 1,681 円219 億円 | 621 円81 億円 | +63.9% | +5.1% | 875 円114 億円 |
| やや悲観 | 26% | 545 円71 億円 | 537 円70 億円 | −22.9% | −2.6% | 281 円37 億円 |
| 悲観 | 12% | 291 円38 億円 | 345 円45 億円 | −54.7% | −7.6% | 76 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,363 円178 億円 | 596 円78 億円 | +39.6% | +3.4% | 1,959 円256 億円 |
今の株価時価総額 1,404 円183 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 新築が底を打ち、建設事業が伸びる 利益 22 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 2,739 円357 億円
新築住宅が底を打ち、改修と非住宅が減少を埋めて、建材の取扱量は 10 年で 3% 減にとどまる。建設事業は受注の積み上げで利益率が 6〜7% に定着し、加工事業はプレカット需要で堅調。M&A で地場の問屋を取り込み、仕入れの力が強まる。それでも卸は粗利が薄く、人件費の上昇を吸収するのが精いっぱいで、営業利益率は 2% に届く程度に抑えた。配当は下限を守りつつ、利益に応じて増える。
(名目の前提)価格は名目、数量は実質で置いた。本社費などの共通費も物価で増やした(10 年 1.34 倍に近い)。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、物流センターなどの新しい投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の約 9 億円が 10 年後に約 10 億円(物価で一律に増やすと約 12 億円)。利払いは、現金が 2% で回る分を純利益に入れた。
- 建材:数量 275(出荷・納品の件数(万件、推定))× 価格 3.25(1 件あたり売上(万円))→ 売上 893 億円・営業利益 14 億円。数量 0.97 倍(実質)・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 1.6%
- 環境アメニティ:数量 4.6(販売台数(万台、推定))× 価格 51(1 台あたり売上(万円))→ 売上 236 億円・営業利益 5 億円。数量 1.02 倍(実質)・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 2.3%
- 加工:数量 1.0(加工した住宅の戸数(万戸、推定))× 価格 196(1 戸あたり売上(万円))→ 売上 192 億円・営業利益 8 億円。数量 0.98 倍(実質)・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 4.2%
- エンジニアリング:数量 138(完成工事の件数(件、推定))× 価格 1.66(1 件あたり売上(億円))→ 売上 229 億円・営業利益 15 億円。数量 1.15 倍(実質)・価格 1.40 倍(名目)・営業利益率 6.5%
- その他(産業資材の卸):数量 18.8(取引の件数(万件、推定))× 価格 3.35(1 件あたり売上(万円))→ 売上 63 億円・営業利益 3 億円。数量 1.10 倍(実質)・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 14.98 倍、時価総額 357 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新築の底打ちと建設事業の定着と M&A の成功が重なる必要があり、揃う確度は低い。
やや楽観 18% 改修と非住宅が新築の減少を支える 利益 18 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 2,130 円278 億円
新築は緩やかに減るが、改修と非住宅が支える。建材の取扱量は 6% 減、価格は物価に少し遅れて上がる。建設事業は前期の水準に近い利益を保ち、環境アメニティも省エネ更新で伸びる。物流センターの費用が一巡し、建材の利益率は 1% 台前半に戻る。営業利益は 24 億円ほどまで増える。
(名目の前提)価格は名目、数量は実質で置いた。本社費などの共通費も物価で増やした(10 年 1.34 倍に近い)。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、物流センターなどの新しい投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の約 9 億円が 10 年後に約 10 億円(物価で一律に増やすと約 12 億円)。利払いは、現金が 2% で回る分を純利益に入れた。
- 建材:数量 266(出荷・納品の件数(万件、推定))× 価格 3.13(1 件あたり売上(万円))→ 売上 832 億円・営業利益 12 億円。数量 0.94 倍(実質)・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 1.4%
- 環境アメニティ:数量 4.5(販売台数(万台、推定))× 価格 51(1 台あたり売上(万円))→ 売上 228 億円・営業利益 5 億円。数量 1.00 倍(実質)・価格 1.32 倍(名目)・営業利益率 2.0%
- 加工:数量 1.0(加工した住宅の戸数(万戸、推定))× 価格 193(1 戸あたり売上(万円))→ 売上 183 億円・営業利益 7 億円。数量 0.95 倍(実質)・価格 1.28 倍(名目)・営業利益率 3.8%
- エンジニアリング:数量 130(完成工事の件数(件、推定))× 価格 1.62(1 件あたり売上(億円))→ 売上 210 億円・営業利益 12 億円。数量 1.08 倍(実質)・価格 1.37 倍(名目)・営業利益率 5.7%
- その他(産業資材の卸):数量 17.9(取引の件数(万件、推定))× 価格 3.35(1 件あたり売上(万円))→ 売上 60 億円・営業利益 3 億円。数量 1.05 倍(実質)・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 4.2%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 278 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改修・非住宅の底堅さと建設事業の維持が重なる現実的な上振れ。
中立 38% 中立:数量の減を価格で埋め、営業利益は横ばい 利益 14 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 1,681 円219 億円
新築住宅は人口減で 10 年に 1 割ほど減り、建材の取扱量は 10% 減。建材の価格は業界の見通し(年 1〜2%)に沿って 1.2 倍、加工は木材相場に連なり 1.25 倍。物価の 1.34 倍には届かない。人件費と物流費は物価並みに上がるため、粗利が増えても営業利益は横ばいになる。建設事業は前期の急伸から平均的な水準に戻る。環境アメニティは 3% 減で踏みとどまる。現金は積み上がるが、配当の下限が手堅く、余りは戻りにくい。ROE は 4% 台。
(名目の前提)価格は名目、数量は実質で置いた。本社費などの共通費も物価で増やした(10 年 1.34 倍に近い)。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、物流センターなどの新しい投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の約 9 億円が 10 年後に約 10 億円(物価で一律に増やすと約 12 億円)。利払いは、現金が 2% で回る分を純利益に入れた。
- 建材:数量 255(出荷・納品の件数(万件、推定))× 価格 3.00(1 件あたり売上(万円))→ 売上 765 億円・営業利益 9 億円。数量 0.90 倍(実質)・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 1.2%
- 環境アメニティ:数量 4.4(販売台数(万台、推定))× 価格 50(1 台あたり売上(万円))→ 売上 217 億円・営業利益 4 億円。数量 0.97 倍(実質)・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 1.7%
- 加工:数量 0.9(加工した住宅の戸数(万戸、推定))× 価格 188(1 戸あたり売上(万円))→ 売上 173 億円・営業利益 6 億円。数量 0.92 倍(実質)・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 3.3%
- エンジニアリング:数量 120(完成工事の件数(件、推定))× 価格 1.58(1 件あたり売上(億円))→ 売上 190 億円・営業利益 10 億円。数量 1.00 倍(実質)・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.0%
- その他(産業資材の卸):数量 17.1(取引の件数(万件、推定))× 価格 3.35(1 件あたり売上(万円))→ 売上 57 億円・営業利益 2 億円。数量 1.00 倍(実質)・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 7.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 219 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新築の緩やかな減少を価格で相殺する中心の筋書き。同業の建材商社と同じ物差し。
やや悲観 26% 新築の縮みが速く、利益率が 1% を割る 利益 7 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 545 円71 億円
新築の縮みが速く、建材の取扱量は 16% 減。価格は 1.14 倍と、物価に届かない。人件費が先に上がって利益率が圧迫され、建材は 1% を割る。建設事業も案件が減る。買い取った会社の価値が下がり、減損も出る。余った現金は、仕入先への支払いと配当に使われて目減りする。
(名目の前提)価格は名目、数量は実質で置いた。本社費などの共通費も物価で増やした(10 年 1.34 倍に近い)。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、物流センターなどの新しい投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の約 9 億円が 10 年後に約 10 億円(物価で一律に増やすと約 12 億円)。利払いは、現金が 2% で回る分を純利益に入れた。
- 建材:数量 238(出荷・納品の件数(万件、推定))× 価格 2.85(1 件あたり売上(万円))→ 売上 678 億円・営業利益 5 億円。数量 0.84 倍(実質)・価格 1.14 倍(名目)・営業利益率 0.8%
- 環境アメニティ:数量 4.1(販売台数(万台、推定))× 価格 48(1 台あたり売上(万円))→ 売上 198 億円・営業利益 2 億円。数量 0.92 倍(実質)・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 1.2%
- 加工:数量 0.9(加工した住宅の戸数(万戸、推定))× 価格 178(1 戸あたり売上(万円))→ 売上 153 億円・営業利益 4 億円。数量 0.86 倍(実質)・価格 1.18 倍(名目)・営業利益率 2.3%
- エンジニアリング:数量 108(完成工事の件数(件、推定))× 価格 1.51(1 件あたり売上(億円))→ 売上 164 億円・営業利益 6 億円。数量 0.90 倍(実質)・価格 1.28 倍(名目)・営業利益率 3.5%
- その他(産業資材の卸):数量 16.2(取引の件数(万件、推定))× 価格 3.25(1 件あたり売上(万円))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。数量 0.95 倍(実質)・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 3.0%
倍率:ROE 2.5% は k 7% 以下。ためた利益の価値は 1 を下回るので PER の上限は 1÷k = 12.1 倍。利益の質(粗利の薄さ・建設事業の波)を見て、上限の 6.2 割の 7.5 倍に置いた。時価総額は(純利益 − 余った現金 30 億円 × 1.4%)× PER + 余った現金 × 戻り方 0.5。純現金は時価総額の 5 割超で EV ÷ 営業利益は参考にとどめる。
確率:新築の縮みが速く、価格が物価に届かず、人件費が先に上がる想定。粗利の薄い卸では起きやすい。
悲観 12% 新築の構造的な縮みと直販化で赤字に沈む 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 291 円38 億円
新築が構造的に縮み、建材の取扱量は 25% 減。メーカーの直販と通販で、卸を飛ばす動きが進む。価格は物価に追いつかず 1.05 倍。営業利益は赤字に沈む。建設事業の受注も細り、中小の取引先の貸し倒れが増える。仕入先への支払いと配当のために現金が減り、余った現金は半分に減る。値打ちは、現金と売れる資産が支える床までになる。
(名目の前提)価格は名目、数量は実質で置いた。本社費などの共通費も物価で増やした(10 年 1.34 倍に近い)。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、物流センターなどの新しい投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の約 9 億円が 10 年後に約 10 億円(物価で一律に増やすと約 12 億円)。利払いは、現金が 2% で回る分を純利益に入れた。
- 建材:数量 212(出荷・納品の件数(万件、推定))× 価格 2.63(1 件あたり売上(万円))→ 売上 558 億円・営業利益 2 億円。数量 0.75 倍(実質)・価格 1.05 倍(名目)・営業利益率 0.3%
- 環境アメニティ:数量 3.8(販売台数(万台、推定))× 価格 44(1 台あたり売上(万円))→ 売上 169 億円・営業利益 1 億円。数量 0.85 倍(実質)・価格 1.15 倍(名目)・営業利益率 0.6%
- 加工:数量 0.8(加工した住宅の戸数(万戸、推定))× 価格 162(1 戸あたり売上(万円))→ 売上 127 億円・営業利益 1 億円。数量 0.78 倍(実質)・価格 1.08 倍(名目)・営業利益率 1.0%
- エンジニアリング:数量 96.0(完成工事の件数(件、推定))× 価格 1.36(1 件あたり売上(億円))→ 売上 131 億円・営業利益 3 億円。数量 0.80 倍(実質)・価格 1.15 倍(名目)・営業利益率 2.0%
- その他(産業資材の卸):数量 14.5(取引の件数(万件、推定))× 価格 3.00(1 件あたり売上(万円))→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円。数量 0.85 倍(実質)・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 1.5%
倍率:純利益 0.1 億円とほぼゼロで、稼ぐ力は床を下回る。余った現金 20 億円(戻り方 0.5 を掛けた 10 億円)と上場株・不動産の売れる資産を足した床 38 億円を置いた(floor_assets_oku)。今の自己資本 246 億円に対する PBR は 0.15 倍。仕入先への預かりに近い現金は、売上が縮めば出ていくので数えない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.154 倍・時価総額 38 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:新築の構造的な縮みと直販化が重なる構造的な負け。売上の 6 割が新築に連なるため 12% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建材
住宅用の建材を、メーカー・代理店から仕入れて建材店・工務店・ハウスメーカーに卸す。
| 数量出荷・納品の件数(万件、推定) | 価格1 件あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 283 | 2.50 | 708 | 5 |
| 10 年後 中立 | 255 | 3.00 | 765 | 9 |
取り方:建材の売上 708 億円を、年間の納品 283 万件(推定、開示なし)で割った 1 件あたり売上。2026 年 3 月期は熊本の物流センター新設費用で営業利益が 3 割減り、利益率は 0.8%。価格は業界の見通し(建材の販売単価は年 1〜2%)に沿って置く。
環境アメニティ
業務用・家庭用の空調機器・暖房機器の卸。
| 数量販売台数(万台、推定) | 価格1 台あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.5 | 38 | 172 | 3 |
| 10 年後 中立 | 4.4 | 50 | 217 | 4 |
取り方:売上 172 億円を、年間の販売 4.5 万台(推定、据付や部材を含む換算)で割った単価。北東北の売上が減った。省エネ更新の需要が下支え。
加工
木造住宅の構造躯体(柱・梁)の加工・販売。
| 数量加工した住宅の戸数(万戸、推定) | 価格1 戸あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 150 | 150 | 5 |
| 10 年後 中立 | 0.9 | 188 | 173 | 6 |
取り方:加工の売上 150 億円を、年間約 1 万戸(推定)で割った 1 戸あたり売上。売上は 6.3% 増えたが、利益は 17% 減った。木材の相場に連なり、価格は物価をやや下回る前提。
エンジニアリング
商業施設や公共工事の建設。
| 数量完成工事の件数(件、推定) | 価格1 件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 1.18 | 142 | 12 |
| 10 年後 中立 | 120 | 1.58 | 190 | 10 |
取り方:売上 142 億円を、年間の完成工事 120 件(推定)で割った単価。前期から売上 49%・利益 2.6 倍と急伸した。案件ごとの波が大きい。
その他(産業資材の卸)
産業資材の卸。
| 数量取引の件数(万件、推定) | 価格1 件あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 17.1 | 2.50 | 43 | 2 |
| 10 年後 中立 | 17.1 | 3.35 | 57 | 2 |
取り方:売上 43 億円を、取引 17 万件(推定)で割った単価。前期比 18% 増。
リスクと懸念
新築住宅の構造的な縮み
建材卸は売上の 6 割が新築住宅に連なる。2025 年度の新設住宅着工は 71 万戸と前年比 12.9% 減。人口減と住宅価格の高止まり、住宅ローン金利の上昇が重なり、戻りは保証されない。取扱量が減ると、固定費の重い物流網の稼働率が下がる。売上債権や在庫の評価の悪化も重なりやすい。
人件費・物流費の上昇と粗利の薄さ
粗利は 1 割台で、人手不足による賃上げと物流費の上昇が先に来る。販売価格に転嫁できる範囲は、資材の相場に縛られる。2026 年 3 月期は熊本の物流センターの費用だけで建材の利益が 3 割減った。物価が上がる局面ほど、利益率が削られやすい。
建設事業の波
エンジニアリング事業は前期に営業利益が 2.6 倍の 12 億円となり、連結の営業利益 17 億円の大半を稼いだ。案件ごとの波が大きく、受注が途切れれば、連結の利益は一気に減る。前期の水準が続く前提は置いていない。全社の受注残は 103 億円と、年間売上の1割弱にとどまる。
M&A 後の企業価値の低下
成長の手段にしてきた M&A は、買った会社の収益が想定を下回れば、減損につながる。会社自身が重要なリスクに挙げている。のれんは 11 億円と小さいが、大型の買収をすれば残高は増え、現金を減らしながら利益の質が下がる恐れもある。経営の目が買収に向きすぎれば、本業の改善が後回しになる。
取引先の信用リスク
取引先は中小の建材店や工務店が多く、住宅市況が悪化すれば貸し倒れが増える。売上債権は 167 億円と、営業利益の 10 倍に近い。1 社ごとの額は小さくても、積み上がれば利益を削る。会社も重要なリスクとして挙げている。売掛金の回収が延びれば、運転資金も増える。
現金が見かけほど自由ではない
純現金は 106 億円あるが、買掛金が売掛金より多い分(約 66 億円)は仕入先との時間差で生まれたもの。売上が縮めば現金が出ていく。配当は純資産配当率の下限があり、利益が減っても出し続けることになる。売上が1割縮むだけで数十億円の現金が動く。
原材料・エネルギー価格
石油由来の資材の調達と価格は、会社が重要なリスクに挙げている。中東情勢による原油価格の高騰は、資材価格を押し上げ、住宅着工の下振れ要因にもなる。販売価格への転嫁が遅れれば、粗利が先に減る。中小の販売店は価格を比べるので、転嫁は一律にいかない。
今後の分かれ目
- 新設住宅着工が 2026 年度に 75 万戸を超えて回復したら
- 建材の数量の前提を上方修正し、楽観・やや楽観に確率を寄せる。
- 建設事業の営業利益が 2 期続けて 8 億円を下回ったら
- 前期の急伸が一時的だったとみて、中立の利益率を下げる。
- 建材の営業利益率が 1% を割る状態が続いたら
- 粗利の薄さが構造的とみて、やや悲観・悲観に確率を寄せる。
- 現金が積み上がり、自社株買いや増配が決まったら
- 余った現金の戻り方を 1.0 に引き上げ、価値を足し直す。
- 大型の M&A が発表されたら
- 買収額と収益力を確かめ、のれんの減損リスクを見直す。
- メーカーの直販や通販が取引先の仕入れに入り込んだら
- 卸の取扱量の前提を下方修正する。
見ておくもの
- 新設住宅着工戸数と持家・分譲戸建の動き
- 建材事業の営業利益率(物流センター費用の一巡後)
- エンジニアリング事業の受注残と利益率
- 現金・買掛金・売上債権の推移(運転資本)
- 配当方針(DOE 2.8%、性向 30%)と自社株買い
- M&A の実績とのれんの残高
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 184 億円や PBR 0.75 倍には寄せていない。事業ごとの数量と名目の価格から利益を積み、倍率は式で置いた。中立は ROE 4.6% が k 7% に届かないので PER の上限 1÷k = 12.1 倍の 7.7 割、やや楽観 8.1 割、楽観 8.5 割とした。純現金 106 億円は、仕入先との支払いの時間差で生まれた約 66 億円を除いた 40 億円だけを余った現金とした(残りは売上が縮めば出ていく預かり)。戻り方は 0.5:配当性向は 5 割強で、10 年で現金が 28 億円から 106 億円に積み上がっており、余りは戻っていない。やや悲観は余った現金を 0.75 倍、悲観を 0.5 倍にした。建設事業の利益は波が大きいので、中立は前期の水準でなく平均に近い 5% で置いた。新リース会計基準の影響は小さく、家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→14.98 倍・やや楽観 PER 9.8→14.29 倍・中立 PER 9.3→14.29 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.75%(循環 +0.5・値決め力 +0.25・借金 0・寿命 0)= 8.25%。同じ領域の JK ホールディングスと同じ物差し。純現金の厚さでは k を下げない。個別の懸念は筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.00%。