結論
ドウシシャは、自社で商品を企画する「開発型」と、他社の有名ブランドを仕入れて売る「卸売型」を持つ企画卸だ。筆者の結論は、今の値段はほぼ妥当というものだ。利益は過去最高だが、それが 10 年続いても、今の時価総額から大きく離れた価値にはならない。
強みは、ニッチ(すき間)の商品を毎年入れ替えて出し続ける開発の仕組みにある。直近はゴリラシリーズやフライパンが当たり、営業利益は前期の 1.3 倍の 119 億円になった。ただ、売上は 10 年前から 1,000 億円前後で横ばいだった。利益率も 6〜8% が普通で、今の 9.9% は異例の高さだ。この水準がそのまま続くとは見ていない。
もう一つの顔は、巨額の現金だ。貸借対照表の現預金は約 635 億円で、時価総額の半分を超える。事業に要るのは 235 億円ほどで、残りの 400 億円は余りと見る。ただ創業家が株の 3 割強を握り、貯めた現金が株主に戻った実績は薄い。そこで余った現金は、帳簿の半分の価値で数える。
10 年後の姿は、国内の人口減と中国生産の調達コストに挟まれながら、物価の分だけ売上が伸びる会社だ。中立では売上が 1,640 億円、営業利益が 145 億円になる。強気ならヒット商品が事業部ごとに生まれ、慎重ならヒットが細って価格競争に負ける。強気の道も残るが、慎重な道の方が重い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を一言で言えば、現金が厚く、事業は優秀だが堀が浅い会社だ。
良い点は 3 つある。借金が無いこと。事業の資本効率が高いこと。小さな単位で当たり外れを管理する仕組みがあることだ。本業の稼ぎだけを見れば、10 年後も続く事業と考えてよい。
気になる点も 3 つある。1 つ目は、利益率が過去最高の水準にあることだ。山の利益に高い倍率を掛けるのは危うい。2 つ目は、現金の戻り方だ。時価総額の半分を超える現金は、株主に戻らなければ半分の価値でしか数えられない。3 つ目は、創業家が 3 割強を握ることだ。経営は安定するが、現金の使い方は外から変えにくい。
払う値段の安全域は、今の時価総額の中に薄くしかない。楽観の筋書きなら大きく報われるが、慎重の筋書きでは現金が下支えになる程度だ。事業の予測のしやすさは中程度で、確信もそれに合わせて中程度にとどめる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は二本立てだ。2026 年 3 月期の売上は 1,205 億円。開発型が 698 億円、卸売型が 478 億円で、残りは子会社などだ。
開発型は、メーカーの機能を持つ。家電、家庭用品、食品、衣料を自社で企画し、中国などの協力工場に作らせ、量販店や均一ショップに売る。代表がゴリラのハイパワーシリーズ(累計 300 万台)と、軽いフライパンのゴリラのひとつまみだ。米国ブランドの鍋 CORELLE や U.S. POLO ASSN. の衣料、ORION ブランドのテレビも扱う。テレビは 2019 年にオリオン電機の AV 事業を譲り受けたものだ。
卸売型は、商社の機能を持つ。バッグや時計の有名ブランド(SUUNTO、COACH など)、お中元・お歳暮向けの加工食品、アソートギフトがある。ギフトは約 200 億円で、卸売型の 4 割超を占める。他社が撤退したあとに残る需要を取る、いわゆる残存者利益の事業だ。
組織は、30〜50 人の事業部を 15 持つ。年間 5 万点超を扱い、毎年半分以上の商品を入れ替える。仕入先は 2,100 社超、販売先は約 4,800 社で、店は 30 万を超える。「100 億円×30 事業部」を長期の目標に掲げ、いまの 15 をその半分と位置づけている。
売り先の広がりも特徴だ。ワンプライス(均一ショップ)が 181 億円、ディスカウントストアが 172 億円、ネット通販が 134 億円で、3 つで売上の 4 割を占める。2026 年 1 月には、EC とオリジナルシールのサンアドシステムを買い、自前のネット販売を足した。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、一つの当たり商品ではなく、当たりを出し続ける組織にある。小さな事業部が自分の商品の損益に責任を持ち、半年ごとに評価される。外れは早く切られ、当たりには人と在庫が集まる。大手が手を出さない市場で首位を狙うので、1 つの商品が外れても会社は傷まない。この分散が、10 年を通じた営業利益率 6〜8% を支えてきた。
ただ、それは堀(他社がまねできない強み)とまでは言えない。ゴリラの当たりは同じ売り場に並ぶ競合がすぐ追う。価格を決めるのは売り先の量販店で、売り先の自社企画(PB)との競争もある。筆者は、堀は普通の水準とみる。開発型の利益率は、在庫の整理と損金販売(赤字で売り切る)の減少で上がった面があり、すべてが構造の改善とは言えない。
財務は鉄壁に近い。自己資本比率は 86%、借金はほぼ無い。資本の使い方は評価が割れる。配当性向は 45〜50% を目安にし、前期は大きく増配した。一方で現金は年々積み上がり、自社株買いは小さい。資本効率の目で見ると、現金を除いた事業の ROE は 15% 前後と高いが、会社全体の ROE は 9% 台にとどまる。
弱点は 3 つある。中国での生産に頼ること、夏物の天候リスク、ギフトの縮小だ。2027 年 3 月期の第 1 四半期も、天候不順で開発型の利益が前年を下回った。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ドウシシャの市場は、人口が減る国内の消費財だ。数量は伸びにくい。ただ売り先の形が変わり、そこに居場所がある。
まず均一ショップだ。市場は 2025 年度で約 1.1 兆円。伸びは 3% 弱に落ち着き、上位 2 社のダイソーとセリアで 8 割を超える。ダイソーは「脱・百円均一」で価格帯を広げている。ドウシシャにとっては、大口の売り先が強くなるほど、値決めの力が弱くなる面がある。
次にネット通販だ。Amazon 向けと自社 EC が伸び、前期は 10% 伸びた。店頭のように棚を取り合う必要が少なく、ニッチ商品に向く。ここでは、ニトリやアイリスオーヤマのような自社企画の大手や、中国発のメーカーの直販が競合になりうる。
ギフトは二つに割れる。市場全体は 11 兆円超で緩やかに伸びるが、お中元・お歳暮は 2017 年の 1.75 兆円から 1.5 兆円前後へ縮んだ。誕生日や母の日などのカジュアルギフトは増えている。ドウシシャは両方を持ち、カタログから発送までを一貫で受ける点で、撤退した同業の分を取り込んできた。
地合いの変数は 3 つある。為替(調達は海外が多く、円安は粗利を削る)、中国生産の関税と人件費、物流費だ。10 年を通じて物価は年 3% 上がる前提なので、これらは価格に転嫁できるかどうかの勝負になる。転嫁が通った前期は粗利率が 1.9 ポイント上がった。
資本政策と M&A
資本政策は、配当は厚く、現金は貯める、という形だ。配当性向は 50% 程度を目安にし、2026 年 3 月期は大きな増配になった。今期も同水準を予定する。2025 年 5 月には、資本効率を見て自社株買いも検討すると表明したが、実績は小さい。PBR を 1 倍超で保つと明言した点は、前向きな変化だ。
ガバナンスは創業家が握る。創業者の野村正治氏が会長、親子の野村正幸氏が社長で、筆頭株主は創業家の資産管理会社とされるエムエス商事(約 34%)だ。少数株主にとっては、経営の意思決定が速い利点がある。反対に、現金の使い道は創業家の意向に左右される。現金を大型の買収に使った例は、これまで無い。
M&A は小さな買収を重ねる形だ。2019 年にオリオン電機の AV 事業を譲り受け、2026 年 1 月にサンアドシステムを買った。大型の買収は無い。「100 億円×30 事業部」を実現する手段として、同じ規模の買収が続くと見る。TOB(公開買付け)の対象になる確率は、創業家の持株が厚いので高くない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
開発の仕組みは、規模が増しても働き続ける。事業部が 15 から 30 に増え、事業部ごとに 100 億円のニッチ首位が生まれる。ゴリラのように、1 つの商品が累計で 300 万台売れる当たりが、家電以外にも広がる。そうなれば開発型の売上は 10 年で 2 倍近くになり、利益率も 12% まで上がる。
売り先も増える。ネット通販が 134 億円から先へ伸び、サンアドシステムのような D2C(メーカーが直接売る)の買収で、直販の比率が上がる。直販は粗利が厚い。前期に粗利率が 1.9 ポイント上がったのは、新商品の比率が高まったことと、過剰在庫の削減が理由だった。これが仕組みとして定着している証拠だ。
財務面では、現金が 600 億円を超えても使い道がある。小さな買収を重ね、事業部の数を増やす原資になる。配当性向 50% は守られたまま、利益が増えるので配当の絶対額が膨らむ。
ギフトも残存者利益が続く。中元・歳暮が縮んでも、カタログから発送までを担う同業が減り、シェアが上がる。有名ブランドの卸も、在庫の絞り込みで収益性が上がった。こうなると、ドウシシャは「当たりを出し続ける会社」として、倍率が普通の卸より高く評価される。
慎重な見方
利益は山にある。粗利率 30% と営業利益率 9.9% は、過去 10 年で最も高い。損金販売の減少や在庫の整理は、1 度やれば終わる改善だ。次の年からは同じ効果が出ない。
その先で効くのは、売り先の力だ。ワンプライスとディスカウントストアだけで売上の 3 割を占め、大手 2 社が市場の 8 割を握る。大口の売り先が自社企画を強め、値下げを求めるおそれがある。開発型は、価格を自分で決められる商品が少ない。前期は転嫁が通ったが、原材料高と為替が続けば、次の改定は通らない。
ネットでは、自社企画の大手や中国の直販メーカーが同じ売り場に来る。当たり商品は半年で真似される。毎年半分を入れ替える仕組みは、外れのコストも毎年払う仕組みでもある。
ギフトは構造的に縮む。お中元・お歳暮は 7 年で 1 割以上減った。残存者利益は、需要が残っている間だけの利益だ。
最後に、現金だ。635 億円は魅力だが、創業家が 3 割強を持つ会社で、貯めた現金が株主に戻る保証は無い。買収に使われれば価値を損なうこともある。利益は過去最高、現金は過去最大の今が、最も良い時期かもしれない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は事業の仕組みが本物であるという点で正しく、慎重な言い分は利益が山にあり、現金が戻りにくいという点で正しい。どちらも決め手にならないので、中立に最も大きい確率を置いた。そのうえで、利益率の山と売り先の力が 10 年の中で効く場面が多いとみて、慎重の側に確率をやや寄せた。現金は半分だけ数えたため、強気が実現しても倍率は普通の会社並みにとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,731 円2,065 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,336 円482 億円)。 今の値に割り戻すと 3,637 円1,311 億円、今との差 +16.6%、 期待の年率 +8.5%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 9,333 円3,363 億円 | 1,790 円645 億円 | +256.5% | +13.6% | 779 円281 億円 |
| やや楽観 | 18% | 8,016 円2,889 億円 | 1,582 円570 億円 | +207.6% | +11.9% | 1,728 円623 億円 |
| 中立 | 38% | 6,644 円2,394 億円 | 1,385 円499 億円 | +157.3% | +9.9% | 3,051 円1,099 億円 |
| やや悲観 | 27% | 3,508 円1,264 億円 | 1,152 円415 億円 | +49.3% | +4.1% | 1,258 円453 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,633 円588 億円 | 891 円321 億円 | −19.1% | −2.1% | 252 円91 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,731 円2,065 億円 | 1,336 円482 億円 | +126.5% | +8.5% | 7,067 円2,547 億円 |
今の株価時価総額 3,120 円1,124 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 100 億円×30 事業部が形になる 利益 172 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 9,333 円3,363 億円
事業部が 15 から 30 に増え、100 億円規模のニッチ首位が次々に生まれる。ゴリラのような累計 300 万台級の当たりが、家電から家庭用品・食品へ広がる。開発型の売上は 10 年でほぼ 2 倍、営業利益率は 12% になる。
ネット通販と、サンアドシステムのような D2C(メーカーが直接売る)の買収で直販が増え、粗利が厚くなる。ワンプライスやディスカウントでも、他社が真似できない商品が棚を取り、値上げが通る。ギフトは、同業の撤退が続いて残存者利益が膨らみ、有名ブランドの卸も、在庫を絞ったまま収益性が保たれる。
会社全体の売上は約 2,120 億円、営業利益は 234 億円まで増える。現金は小さな買収に 250 億円ほど使うが、それでも 600 億円が余る。配当性向 50% は維持され、配当の額は利益とともに膨らむ。この姿なら、当たりを出し続ける会社として、倍率は普通の卸より上に置ける。
- 開発型ビジネス:数量 1.3(年間販売点数(億点))× 価格 980(1 点あたりの卸値(円))→ 売上 1,270 億円・営業利益 152 億円。数量 1.30 倍・価格 1.40 倍、営業利益率 12%
- 卸売型ビジネス:数量 0.3(年間取扱点数(億点))× 価格 2,484(1 点あたりの卸値(円))→ 売上 693 億円・営業利益 66 億円。数量 1.05 倍・価格 1.38 倍、利益率 9.5%
- その他(EC・シール等):数量 0.3(年間販売点数(億点))× 価格 544(1 点あたりの価格(円))→ 売上 158 億円・営業利益 16 億円。サンアド型の買収で 4 倍、利益率 10%
倍率:事業の純利益 163 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)450 億円。全体の PER 17.84 倍、時価総額 3,363 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:100 億円×30 事業部の実現には、当たりを 10 年にわたって続けて出す必要がある。過去 10 年は売上が横ばいだったので、実現の確率は低く置いた。
やや楽観 18% ヒットを出し続け、利益率も高止まりする 利益 142 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 8,016 円2,889 億円
開発の仕組みが働き続け、当たり商品が数年おきに出る。売上は年 6% 弱で伸び、開発型の利益率は 10.8% で高止まりする。事業部は 20 前後に増える。
ネット通販は伸びるが、ワンプライスとディスカウントは売り先の力が強く、価格転嫁は物価をやや超える程度にとどまる。ギフトは、カジュアルギフトの伸びで中元・歳暮の縮小を埋め、横ばいを保つ。
売上は約 1,880 億円、営業利益は 188 億円。大型の買収は無いが、小さな買収を 100 億円ほどする。配当性向 50% を守り、現金は積み上がる。自社株買いは小さいままで、現金の戻り方は変わらない。
- 開発型ビジネス:数量 1.2(年間販売点数(億点))× 価格 959(1 点あたりの卸値(円))→ 売上 1,109 億円・営業利益 120 億円。数量 1.16 倍・価格 1.37 倍、利益率 10.8%
- 卸売型ビジネス:数量 0.3(年間取扱点数(億点))× 価格 2,448(1 点あたりの卸値(円))→ 売上 650 億円・営業利益 57 億円。数量 1.00 倍・価格 1.36 倍、利益率 8.8%
- その他(EC・シール等):数量 0.2(年間販売点数(億点))× 価格 540(1 点あたりの価格(円))→ 売上 117 億円・営業利益 11 億円。3 倍、利益率 9%
倍率:事業の純利益 132 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)540 億円。全体の PER 17.86 倍、時価総額 2,889 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前期の水準を保ちつつ、事業部が増えて伸びる筋書き。仕組みが働いた実績はあるが、利益率の山を超えて続くには条件が多く、2 割弱にとどめた。
中立 38% 利益は伸びるが、過去最高の利益率は一部戻る 利益 113 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 6,644 円2,394 億円
開発型は、国内の人口減を、ネットと売り先の広がりで埋め、数量は 4% ほど増える。価格は物価並みに上がる。利益率は 9.5% に落ち着く。過去最高だった粗利率の一部は、競合の追い上げで戻る。
卸売型は、ギフトの縮小とブランド卸の絞り込みで数量が 1 割弱減るが、残存者利益で利益率は 7.8% を保つ。その他の事業は、サンアドシステムなどの小さな買収で 2 倍になる。
売上は約 1,640 億円、営業利益は 145 億円。現金は配当後も積み上がり、800 億円ほどが余りになる。創業家の方針は変わらず、自社株買いは小さいままだ。物価の分だけ伸びる、普通の優良企業の姿だ。
- 開発型ビジネス:数量 1.0(年間販売点数(億点))× 価格 938(1 点あたりの卸値(円))→ 売上 973 億円・営業利益 92 億円。数量 1.04 倍・価格 1.34 倍、利益率 9.5%
- 卸売型ビジネス:数量 0.2(年間取扱点数(億点))× 価格 2,412(1 点あたりの卸値(円))→ 売上 589 億円・営業利益 46 億円。数量 0.92 倍・価格 1.34 倍、利益率 7.8%
- その他(EC・シール等):数量 0.1(年間販売点数(億点))× 価格 536(1 点あたりの価格(円))→ 売上 78 億円・営業利益 6 億円。2 倍、利益率 8%
倍率:事業の純利益 102 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)600 億円。全体の PER 17.59 倍、時価総額 2,394 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は人口減と売り先の広がりで相殺、価格は物価並み、利益率は山から一部戻る。業界の中心的な見通しに最も近いので、最大の確率を置いた。
やや悲観 27% ヒットが細り、価格競争に押される 利益 80 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 3,508 円1,264 億円
ヒットが細る。ゴリラのような当たりが出ず、開発型の数量は 1 割弱減り、利益率は 7.8% に下がる。売り先が自社企画を強め、価格転嫁は物価に届かない。
卸売型は、中元・歳暮の縮小とブランド卸の撤退で数量が 2 割近く減り、利益率は 6% に落ちる。ネットの成長は、競合の増加で鈍る。事業部の数は 15 のまま増えない。
売上は約 1,380 億円、営業利益は 99 億円。粗利率の改善は 3 割が戻り、利益は山から谷へ向かう。現金は 100 億円ほどを買収に使い、650 億円が余る。配当は守られるが、増える余地は小さい。
- 開発型ビジネス:数量 0.9(年間販売点数(億点))× 価格 896(1 点あたりの卸値(円))→ 売上 822 億円・営業利益 64 億円。数量 0.92 倍・価格 1.28 倍、利益率 7.8%
- 卸売型ビジネス:数量 0.2(年間取扱点数(億点))× 価格 2,340(1 点あたりの卸値(円))→ 売上 510 億円・営業利益 32 億円。数量 0.82 倍・価格 1.30 倍、利益率 6.2%
- その他(EC・シール等):数量 0.1(年間販売点数(億点))× 価格 512(1 点あたりの価格(円))→ 売上 48 億円・営業利益 3 億円。1.3 倍、利益率 6%
倍率:事業の純利益 71 億(現金の利息を除く)、事業の ROE 9.9%(余った現金を除いた自己資本で割る)。RONIC=k 7.75%+1/2×(ROE−k)=8.9%、g 4.0%。正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.8 倍。ROE は k を上回るが、ヒット切れで成長が止まる筋書きなので、上限(13.8 倍)の約 8 割に置いた。稼ぐ力が縮む会社の倍率を、成長が続く会社と同じにしない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 11 倍・時価総額 1,264 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:売り先の力の強まりと、利益率の山からの戻りは、どちらも起こりやすい。過去の営業利益率が 6〜8% だった事実もあり、確率を厚めに置いた。
悲観 10% 開発型が価格競争とヒット切れに負ける 利益 42 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,633 円588 億円
開発型が構造的に負ける。自社企画の大手や中国の直販メーカーが同じニッチに入り、当たり商品は半年で真似される。ヒットが出ず、損金販売(赤字で売り切る処分)が増える。
数量は 2 割強減り、価格は物価を大きく下回る。利益率は 5% まで下がる。卸売型も、ブランド卸の撤退とギフトの縮小で売上が 3 割以上減る。
売上は約 1,080 億円、営業利益は 50 億円まで落ちる。現金は失敗した買収と在庫の損失に 400 億円使い、自己資本も減損で減る。配当は利益に近い額まで負担になる。残る現金と事業の稼ぎが、価値の下支えになる。
- 開発型ビジネス:数量 0.8(年間販売点数(億点))× 価格 854(1 点あたりの卸値(円))→ 売上 664 億円・営業利益 33 億円。数量 0.78 倍・価格 1.22 倍、利益率 5%
- 卸売型ビジネス:数量 0.2(年間取扱点数(億点))× 価格 2,250(1 点あたりの卸値(円))→ 売上 388 億円・営業利益 16 億円。数量 0.65 倍・価格 1.25 倍、利益率 4%
- その他(EC・シール等):数量 0.1(年間販売点数(億点))× 価格 480(1 点あたりの価格(円))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。縮小、利益率 3%
倍率:事業の純利益 37 億(現金の利息を除く)、事業の ROE 7.0%(余った現金を除いた自己資本で割る)。RONIC=k 7.75%+1/2×(ROE−k)=7.5%、g 4.0%。正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.5 倍。事業の ROE 7.0% は k を下回る。ためた利益 1 億円は 1 億円未満の価値なので、PER の上限は 1÷k の 12.5 倍。縮む会社なので、そのうち約 7 割(9.0 倍)に置いた。
確率:構造的な負けは、開発型のヒット切れと価格競争が重なる場合だ。現金と分散した事業部が下支えするため、深い悲観は 1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
開発型ビジネス
自社で企画した家電・家庭用品・食品・衣料を、協力工場で作らせて量販店・ネットに売る。
| 数量年間販売点数(億点) | 価格1 点あたりの卸値(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 700 | 698 | 75 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 938 | 973 | 92 |
取り方:点数は開示が無く、取扱 5 万点超・販売先 4,800 社・店 30 万超から桁を確かめて 1.0 億点と推定、卸値を平均 0.07 万円と置いた(売上 698 億円に合わせた推定)。数量は実質の点数で、物価は価格の側に入れる。利益は上期の開示(41.3 億円)と下期の季節から約 75 億円と推定。
卸売型ビジネス
有名ブランドのバッグ・時計、ギフト、中元・歳暮向けの加工食品を仕入れて売る。
| 数量年間取扱点数(億点) | 価格1 点あたりの卸値(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 1,800 | 478 | 42 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 2,412 | 589 | 46 |
取り方:点数は開示が無く、ギフト(約 200 億円、1 セット 0.3 万円前後)とブランド品を合わせた平均卸値 0.18 万円から 0.27 億点と推定。利益は上期 20.0 億円とギフトが下期寄りであることから約 42 億円と推定。
その他(EC・シール等)
2026 年 1 月に買ったサンアドシステムなど、ネット販売とオリジナルシールの小さな事業。
| 数量年間販売点数(億点) | 価格1 点あたりの価格(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.1 | 400 | 29 | 2 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 536 | 78 | 6 |
取り方:開示は無い。売上の残り約 29 億円を、平均 0.04 万円で 725 万点と推定。買収の取得日が 1 月末なので、通期の貢献は来期から出る。数量は実物(販売点数)。伸びの理由は買収による品目の追加で、名目の市場の伸びではない。価格は物価(10 年 1.34 倍)に近い。
リスクと懸念
利益率が山から戻る
営業利益率 9.9% と粗利率 30.0% は 10 年で最高だ。損金販売の減少と在庫の整理は 1 回限りの改善の面があり、今期の会社予想でも利益は微増にとどまる。戻りが速ければ、利益は 1 割単位で減る。
売り先の価格交渉力
ワンプライスとディスカウントストアで売上の約 3 割を占める。ダイソーとセリアが市場の 8 割超を握る。大口の売り先が自社企画を強め、値下げ要請が強まると、開発型の価格転嫁が止まる。
中国生産・為替・関税
開発型は中国などの協力工場に頼る。円安、人件費、米中関係に伴う関税は粗利を削る。会社も今期上期の減益要因に、原材料高と為替を挙げた。
ヒット商品の波と天候
ゴリラシリーズの伸びが全体を引き上げた。同じ当たりを 10 年続けるのは難しい。夏物は天候に左右され、2027 年 3 月期の第 1 四半期は開発型の利益が前年を下回った。
ギフトの縮小
卸売型の 4 割超を占めるギフトは、お中元・お歳暮の縮小の影響を受ける。カジュアルギフトは伸びるが、単価が小さい。残存者利益は、需要が残る間だけの利益だ。
現金の使い道と創業家の持株
現預金約 635 億円は時価総額の半分を超える。創業家の資産管理会社が約 34% を持ち、自社株買いは小さい。買収に使われる、または貯まり続ける場合は、株主価値に反映されにくい。
買収の統合
サンアドシステムなど小さな買収を重ねる方針で、事業部の数を 15 から 30 に増やす構想がある。統合が不得手だと、のれんの減損や人材の流出が出る。
今後の分かれ目
- 開発型が 2 期続けて増収増益になり、ゴリラ以外の新しい当たりが出る
- 強気の筋書きの確率を上げる。利益率の山が構造の改善だったと判断できる。
- 粗利率が 28% 台に戻り、開発型の増収が止まる
- 利益率の山が一時的だった証拠。慎重の確率を厚くし、中立の利益率を下げる。
- 自社株買いを継続的に実施し、総還元性向が 70% を超える
- 余った現金の戻り方を 0.5 から 1.0 に上げる。本質価値は現金の半分に当たる約 200 億円が上積みされる。
- 現金を使った大型買収(時価総額の 1 割超)が発表される
- 買収の中身で判断する。事業の稼ぎに合う価格なら中立、高値づかみなら慎重の筋書きに寄せる。
- ダイソーやセリアが自社企画を拡大し、ドウシシャの取扱商品を置き換える
- 開発型の数量と価格が同時に下がる。慎重の筋書きを現実的なものとして扱う。
- ギフト事業で同業の撤退が続き、ドウシシャのシェアが上がる
- 卸売型の数量の減りが小さくなる。中立の数量を 0.92 倍から引き上げる。
見ておくもの
- 開発型の売上・セグメント利益と、粗利率が 30% を保てるか(四半期)
- 新しい中期経営計画の数値目標(経常利益・ROE・還元方針)
- 自社株買いの有無と総還元性向
- ワンプライス・ディスカウント・ネット通販 3 チャネルの売上の伸び
- 米国・中国の関税、為替(ドル円)、中国の協力工場のコスト
- 事業部数(15 から 30 への増加)と小型買収の中身
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の純利益・事業の ROE・資本コストから出した正当化 PER を上限にし、堀が普通・利益が山にあることを理由に 8 割前後に置いた。今・過去・同業の PER や PBR は倍率の根拠にしていない。余った現金は 400 億円とし、戻り方 0.5 で数えた(創業家支配・自社株買いが小さい実績)。新リース会計は 2028 年 3 月期から。倉庫・事務所の賃借は小さく、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。筋書きの確率は慎重に寄せたが、強気の確率も 1 割弱は残した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→17.84 倍・やや楽観 PER 14.2→17.86 倍・中立 PER 13.3→17.59 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足した。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。