結論
東海エレクトロニクスは、半導体や電子部品を仕入れて、デンソーやアイシンなど自動車関連と、工作機械や通信機器のメーカーに売る名古屋の専門商社だ。売上は 394 億円、営業利益は 8 億円。筆者の結論は、事業の稼ぎは薄いが、現金が時価総額を上回るので、今の値段はほぼ適正ということだ。
2026 年 3 月期の売上は前期比 31% 減った。長年の主力仕入先だったルネサス エレクトロニクスとの代理店契約が終わり、2025 年 3 月で同社製品の販売が止まったためだ。アイシン向けは売上の 37% から 9% に落ちた。商社にとって、仕入先の方針ひとつで事業の半分が消えうることを示した出来事である。
もう一つの特徴が財務だ。現金は 119 億円で、有利子負債 30 億円を引いた純現金は 90 億円。時価総額の 1.4 倍にあたる。売上が縮み、売掛金と在庫が現金に変わった結果だ。
10 年後の中立では、売上は 560 億円まで戻り、営業利益は 11 億円になる。半導体の山谷を平均した姿で、山の年の利益には高い倍率を掛けない。それでも利益率は 2% の薄利で、ROE は 5% 台と資本コストに届かない。
現金の戻り方は 0.75 と置いた。配当性向は約 6 割と高いが、現金そのものは使途の方針が見えない。確率で重みづけした総合は、今の時価総額とほぼ同じ水準の適正である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「事業は並、現金が主役」の会社と映る。時価総額は 63 億円。純現金は 90 億円。極端にいえば、現金だけで時価総額を超える。事業の稼ぎがゼロでも、元は取れる計算だ。
ただし、バリュー投資家は現金の額でなく、その現金がどう使われるかを見る。この会社は配当性向が高いが、現金そのものの使い方は決めていない。現金が膨らんだのは、売上が縮んで売掛金が現金に変わった結果であり、稼いだ現金ではない。
事業の質は、堀がない。仕入先との契約は契約更新の都度で変わりうる。ルネサスの件がその証拠だ。営業利益率は 2% 前後で動き、ROE は資本コストの半分にも届かない。
一方、経営は堅実だ。借金は小さく、赤字の期はない。配当は高い性向で、株主優待もある。小さな買収を重ねる姿勢は、無理な拡大よりよい。
筆者は、これを「事業を買い持つ会社」でなく、「現金を割安で買う会社」と見る。安全域は現金の厚みから生まれ、事業の価値に頼らない。だから確信度は中程度に置く。現金の戻り方 0.75 が、価値の大きさを決める。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、半導体・電子デバイス、センサ、制御機器、コネクタ・ハーネス、樹脂材料などの仕入れ販売だ。仕入先とは特約店・販売店・代理店の契約を結ぶ。有報の「重要な契約」には、沖電気工業、ラピスセミコンダクタ、オムロン、山洋電気、CKD、住友ベークライト、三菱電機、アズビル、ドイツの Elmos と Bosch、米国の Vishay などが並ぶ。
売上を市場分野で分けると、自動車が約 217 億円(55%)、FA・工作機械が約 66 億円(17%)、情報通信が約 53 億円(13%)、医療・環境・その他が約 58 億円(15%)。直近の伸びは、自動車が 47% 減、FA・工作機械が 10% 増、医療が 24% 増、環境が 16% 増だった。
主要顧客はデンソーが 14.0%、アイシンが 9.1%。アイシンは前期に 37.1% を占めていた。顧客の中心は自動車の一次部品メーカーで、東海地方に営業基盤がある。
組織は、関東・甲信越、中部・関西の第 1 と第 2 の各カンパニー、海外販売子会社 10 社のオーバーシーズ、ソフトウエアのシステム・ソリューションに分かれる。2025 年 4 月に完全子会社の東海オートマチックスを吸収合併した。連結従業員は約 350 人で、うち海外が約 120 人だ。
今後の動きとして、北関東に基盤を持つ成電社を完全子会社にする基本合意を結んでいる。最終契約は 2026 年 7 月、株式の譲渡は 10 月の予定で、顧客と販売網を補い合う狙いだ。
優良さと弱いところ
優良さは低めに見る。商社の収益は、仕入先の許す範囲でしか伸びない。営業利益率は過去 12 年で 1.0% から 3.3% の間にとどまる。最高でも 2007 年 3 月期の 3.3% で、値決めの力は小さい。
ルネサスの件は、その弱さを数字で見せた。主力仕入先が代理店を絞った結果、売上の 3 割と、利益のかなりの部分が消えた。同時に、もう一つの事実がある。売上は 30.9% 減ったが、売上総利益の減少は 2.4 億円にとどまり、営業利益は 27% 減に収まった。ルネサス製品の利益率は低く、残った商品のほうが儲かる構造だったことになる。
強みは、名古屋と東海地方の自動車関連の顧客基盤と、欧州の半導体メーカーとの新しい取引だ。東南アジアでは、欧州メーカーとの取引が増えている。技術者による設計支援を伴う提案ができる点は、物流だけの商社より厚い。
財務は強い。自己資本比率は 63%、営業利益は支払利息の 20 倍、赤字の期は過去にない。配当は性向が約 6 割と高く、株主優待も続ける。ただし純現金の使い道には方針がなく、資本効率は低い。ROE は過去 10 年の中央値が 4.1% だ。
経営は新中期経営計画「AT28」で、2028 年度に売上 550 億円、営業利益 11 億円を掲げる。前の計画は、目標を 700 億円から 420 億円へ引き下げた末の未達だった。実現には、慎重に見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電子部品商社の需要は、半導体と電子部品を使う製品の生産量で決まる。大きな分野は自動車、産業機器、情報通信だ。2025 年の世界の新車販売は約 1 億台で、EV の比率は乗用車の約 4 分の 1。EV 化で 1 台あたりの半導体は増えるため、自動車向けの半導体市場は台数より速く伸びる。
商社の役割は変わりつつある。大手の半導体メーカーは、取扱商社を絞り、特定の商社に集中させる動きを強めている。ルネサスの代理店再編もその一つだ。マクニカ、東京エレクトロンデバイス、加賀電子のような大手に商権が集まり、中堅の地域商社は、独自の仕入先と提案力が生き残りの条件になる。
半導体は山谷が激しい。リーマン、2019 年、2022〜23 年の不況では、商社の営業利益は 5〜7 割落ち、在庫の評価損が直撃した。直近は AI 向けが強い一方、自動車と産業機器向けは在庫調整が長引いた。筆者は、10 年の途中に 1〜2 回の谷が来る前提で、中立を平均の利益で置いた。
FA・工作機械は中国の AI 関連需要と国内の半導体製造装置向けで伸び、東海エレクトロニクスの数少ない成長分野になっている。医療と環境も、規模は小さいが伸びている。
価格は、半導体の単価が物価ほど上がらないため、売上は物価並みには増えにくい。分かれ目は、欧州メーカーとの新しい取引が、ルネサスの穴をどこまで埋めるかである。
資本政策と M&A
資本政策は、高い配当性向と手厚い現金、そして小さな M&A だ。直近の配当は中間・期末とも同額で、性向は約 6 割だ。次期の配当予想も同額である。株主優待も続ける方針で、年 1 回の QUO カード(保有株数に応じて金額が増える)が主体だ。株主数は多くないと見られ、費用は年 1 億円に届かないので、価値への影響は小さい。
現金は 119 億円、純現金は 90 億円。うち売上の縮小で売掛金・在庫が現金に変わった分が大きい。買掛金の支払と運転資金、成電社の取得費を考え、筆者は事業に要らない余った現金を約 70 億円と見る。戻り方は 0.75。配当性向は高いが、自社株買いの実績が見えない。筆頭株主の OKURA 株式会社が 15.0%、HARUKAZ 株式会社が 5.2% を持つ。
M&A では、東海オートマチックスを吸収し、成電社を買う。どちらも小さく、営業エリアと顧客を補う買収だ。大型の買収はなく、現金が事業の拡大に使われる速度は遅い。
政策保有株は上場株で約 25 億円。山洋電気、三菱 UFJ、ダイフク、キムラユニティー、ホシザキなどを持つ。配当収入が利益に入っているので、余り資産には足さない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額 63 億円に対し、純現金は 90 億円ある。事業の価値がゼロでも、現金だけで元が取れる。しかも現金は、売上の縮小で生まれた一時的な膨らみで、本業の運転資金はすでに確保されている。
事業は底を打った。ルネサスの終了を乗り越え、売上は 394 億円に落ち着いた。それでも営業利益は 8 億円と、計画を 33% 上回った。利益率の高い商品が残ったため、利益率はむしろ上向いている。
成長の種もある。欧州の半導体メーカーとの取引が東南アジアで増え、FA・工作機械は中国の AI 関連で 10% 増えた。医療は 24%、環境は 16% 伸びている。2028 年度の目標は売上 550 億円、営業利益 11 億円。達成されれば、純利益は今の 2 倍近くになる。
配当は高い。性向は約 6 割で、減配の気配がない。時価総額に対する配当利回りは 3.8%、株主優待もある。現金を抱えたまま、配当だけで利回りを稼ぐ姿は、投資家にとって悪くない。
慎重な見方
現金が多いのは、会社が縮んだ結果だ。売上が 31% 減り、売掛金と在庫が現金に変わっただけで、稼いだわけではない。商売が戻れば、運転資金に現金が戻っていく。余った現金が 90 億円もあるとは限らない。
事業の稼ぐ力は低い。営業利益率は 2%、ROE は 2% で、資本コストの 4 分の 1 だ。次期の予想営業利益は 6 億円と、さらに 25% 減る。ルネサスの終了は、仕入先に依存する商社の構造的な弱さを示した。次の終了がないとは言えない。
現金の使い道は不明だ。成電社の買収は、規模が分からない。もし割高な買収をすれば、現金は株主から離れていく。筆頭株主の OKURA が 15% を持ち、少数株主が現金の使い方を決められない。
さらに、半導体の山谷が 10 年に 1〜2 回来る。谷では在庫の評価損が出て、利益が消える。計画「AT28」は、前の計画が 700 億円から 420 億円へ下方修正されたあとの目標で、達成の保証はない。
どちらに重みを置いたか
現金の厚みは本物で、事業が悪くても元は取れる。この点を重く見る一方、事業の稼ぐ力は薄く、現金の戻り方にも不確実さが残る。このため確率は中立に厚く、やや悪い側に寄せ、悲観を 14% と置いた。現金は戻り方 0.75 で数え、その分を価値から割り引いた。楽観は、AI 向けと欧州メーカーの取引が大きく伸びる筋書きで 8% とした。事業の質より現金の厚みが評価の中心になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,023 円127 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,526 円32 億円)。 今の値に割り戻すと 3,752 円79 億円、今との差 +28.0%、 期待の年率 +9.9%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 10,973 円232 億円 | 2,378 円50 億円 | +355.5% | +16.4% | 1,068 円23 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,510 円180 億円 | 2,085 円44 億円 | +261.5% | +13.7% | 2,119 円45 億円 |
| 中立 | 34% | 6,851 円145 億円 | 1,711 円36 億円 | +192.1% | +11.3% | 2,911 円62 億円 |
| やや悲観 | 24% | 3,484 円74 億円 | 1,182 円25 億円 | +59.2% | +4.8% | 1,120 円24 億円 |
| 悲観 | 14% | 1,981 円42 億円 | 378 円8 億円 | −19.5% | −2.1% | 330 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,023 円127 億円 | 1,526 円32 億円 | +157.5% | +9.9% | 7,548 円160 億円 |
今の株価時価総額 2,931 円62 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:欧州メーカーと FA が大きく伸び、利益率が 2.8% に 利益 16 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 10,973 円232 億円
欧州の半導体メーカーとの取引が東南アジアから国内に広がり、自動車向けは今の 1.3 倍に戻る。FA・工作機械は中国と国内の半導体製造装置向けで 1.7 倍に伸び、医療と環境も 2 倍近くになる。
売上は 760 億円、営業利益は 21 億円で、利益率は 2.8%。過去の最高 3.3% を下回る水準だ。山の年にあたるため、倍率は上限の 8 割を超えない。
純利益は 15 億円。成電社の買収も寄与し、現金の一部が買収に使われて、事業の規模が広がる。配当は性向 5 割で増える。ただし、薄利の商社が 2.8% を保つには、仕入先の構成が大きく変わる必要がある。
- 自動車向け:数量 260(取扱個数(百万個))× 価格 141(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 366 億円・営業利益 7 億円。欧州メーカーとの取引で 1.3 倍
- FA・工作機械向け:数量 68.0(取扱個数(百万個))× 価格 206(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 140 億円・営業利益 5 億円。FA・工作機械が 1.7 倍
- 情報通信向け:数量 60.0(取扱個数(百万個))× 価格 110(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 66 億円・営業利益 1 億円。横ばい
- 医療・環境・その他:数量 63.0(取扱個数(百万個))× 価格 209(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 132 億円・営業利益 5 億円。医療・環境が伸びる
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)52 億円。全体の PER 12.37 倍、時価総額 232 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:欧州メーカーとの取引が自動車向けの穴を大きく埋め、FA・工作機械が 2 倍近くになる必要がある。ルネサスの契約終了の傷跡を見て 8%。
やや楽観 20% やや楽観:欧州メーカーが穴を半分埋め、FA が伸びて利益率 2.3% 利益 12 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 8,510 円180 億円
欧州メーカーとの取引が定着し、自動車向けは今の 1.15 倍に戻る。FA・工作機械は 1.5 倍に伸びる。情報通信は横ばい、医療・環境は 1.6 倍だ。
売上は 640 億円、営業利益は 14.6 億円で利益率は 2.3%。半導体の山谷を平均しており、谷の年は赤字に近い。
純利益は 11.5 億円。営業外の受取利息と配当が利益の底上げに寄与する。現金は成電社の買収や設備に使われつつ、配当性向 5 割台の配当が続く。商社の薄利は変わらず、ROE は 6% 台にとどまる。一方、谷の年に赤字へ落ちる深さは今より浅く、純現金が下支えになる。成電社の統合は営業エリアの補完にとどまり、売上を大きく押し上げるほどではない。
- 自動車向け:数量 230(取扱個数(百万個))× 価格 125(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 288 億円・営業利益 5 億円。自動車向けが 1.15 倍
- FA・工作機械向け:数量 60.0(取扱個数(百万個))× 価格 190(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 114 億円・営業利益 3 億円。FA が 1.5 倍
- 情報通信向け:数量 60.0(取扱個数(百万個))× 価格 99(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 59 億円・営業利益 1 億円。横ばい
- 医療・環境・その他:数量 56.0(取扱個数(百万個))× 価格 185(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 104 億円・営業利益 3 億円。医療・環境が 1.6 倍
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)52 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 180 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新しい仕入先の取引が定着する筋書き。直近の営業利益が計画を上回った実績から、十分ありうるので 20%。
中立 34% 中立:売上は 560 億円まで戻り、山谷を平均した利益率は 2% 利益 9 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 6,851 円145 億円
自動車向けは今の 1.05 倍と、ルネサスの穴を欧州メーカーなどで埋め切る手前にとどまる。FA・工作機械は 1.3 倍、医療・環境は 1.4 倍に伸び、情報通信は 5% 減る。
売上は 556 億円。名目で 41% 増えるが、物価を除けば 5% 増だ。営業利益は 10.8 億円、利益率は 1.9%。10 年の途中に営業赤字に近い谷が 1〜2 回来る前提で、山と谷の平均で置いた。
純利益は 8.6 億円。現金の利息と配当収入が利益の約 2 割を占める。配当は性向 5 割台で増え、現金は成電社の取得や運転資金の増加に使われる。
- 自動車向け:数量 210(取扱個数(百万個))× 価格 135(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 284 億円・営業利益 4 億円。自動車向けが 1.05 倍、単価は物価に届かない
- FA・工作機械向け:数量 52.0(取扱個数(百万個))× 価格 206(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 107 億円・営業利益 3 億円。FA・工作機械が 1.3 倍
- 情報通信向け:数量 57.0(取扱個数(百万個))× 価格 110(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 63 億円・営業利益 1 億円。5% 減
- 医療・環境・その他:数量 49.0(取扱個数(百万個))× 価格 208(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 102 億円・営業利益 3 億円。医療・環境が 1.4 倍
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)52 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 145 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界のノートの見方(半導体は構造需要で伸びるが山谷は残る)に沿い、会社の目標より控えめに置いた。もっとも重みを置く筋書きで 34%。
やや悲観 24% やや悲観:仕入先がさらに絞られ、自動車向けが縮み利益率が 1.2% 利益 5 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 3,484 円74 億円
別の仕入先が代理店を絞り、自動車向けの数量は今の 8 割に落ちる。FA・工作機械は 1.1 倍にとどまり、情報通信は 2 割減る。
売上は 440 億円と、物価分で名目は増えても実質は縮む。営業利益は 5 億円、利益率は 1.2%。
純利益は 4.7 億円の大半が現金の利息と配当収入である。配当は性向を保つが、買収や運転資金に現金が使われる。本業だけを見れば利益率は薄く、仕入先の構成が変わっても取り戻せない。半導体の谷が一度重なれば、営業赤字の年も出る。株価は事業よりも純現金の厚みに支えられる形になる。
- 自動車向け:数量 160(取扱個数(百万個))× 価格 120(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 192 億円・営業利益 2 億円。数量は 8 割に縮む
- FA・工作機械向け:数量 44.0(取扱個数(百万個))× 価格 190(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 84 億円・営業利益 2 億円。FA が 1.1 倍
- 情報通信向け:数量 48.0(取扱個数(百万個))× 価格 99(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 48 億円・営業利益 1 億円。2 割減
- 医療・環境・その他:数量 40.0(取扱個数(百万個))× 価格 185(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 74 億円・営業利益 2 億円。微増
倍率:PER 6.5 倍。利益が薄く ROE は 2〜3% 台。構造的な負けに近づく筋書きなので、上限の 7 割を超えて引き上げない。
確率:半導体メーカーの代理店絞り込みが続く中で、ほかの仕入先でもルネサスと似た動きが出る筋書き。24%。
悲観 14% 悲観:主要仕入先を再び失い、売上が縮んで赤字すれすれ 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,981 円42 億円
主要仕入先の一つが代理店契約を終え、自動車向けの数量は 6 割に縮む。半導体の谷で在庫の評価損も出て、営業利益はほぼゼロになる。
売上は 330 億円と実質では 4 割以上減り、利益は現金の利息と配当収入だけが残る。純利益は 2 億円だ。
現金は損失の穴埋めと運転資金で減り、配当は縮む。株価は稼ぐ力でなく、純現金の一部と政策保有株という資産の価値で測られる。仕入先の入れ替えや新規開拓で売上を戻すには数年かかり、その間の固定費が利益を削る。構造的に収益力を失った商社の姿である。それでも財務は借金が小さく、すぐに行き詰まる状態ではない。
- 自動車向け:数量 120(取扱個数(百万個))× 価格 110(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 132 億円・営業利益 0 億円。数量は 6 割に縮む
- FA・工作機械向け:数量 40.0(取扱個数(百万個))× 価格 175(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 70 億円・営業利益 1 億円。横ばい
- 情報通信向け:数量 40.0(取扱個数(百万個))× 価格 95(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 38 億円・営業利益 0 億円。縮む
- 医療・環境・その他:数量 34.0(取扱個数(百万個))× 価格 170(1 個あたり平均販売単価(円))→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。微増
倍率:PBR 0.225 倍を今の自己資本に掛けた約 42 億円。稼ぐ力は純利益 2 億円でほぼ無く、床は純現金の一部と政策保有株の税後に近い。
確率:構造的に負ける筋書き。ルネサスの再現が起き、仕入先の絞り込みと半導体の谷が重なる。純現金が床になるので崖ではない。14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自動車向け
デンソー・アイシンなど一次部品メーカー向けの半導体・センサ・電子部品。ルネサスの終了で大きく縮んだ。
| 数量取扱個数(百万個) | 価格1 個あたり平均販売単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 108 | 216 | 3 |
| 10 年後 中立 | 210 | 135 | 284 | 4 |
取り方:有報の市場分野別売上 216.5 億円(前期比 47.4% 減)。取扱個数と平均単価は推定(個数は非開示)。営業利益は利益率 1.4% と推定(会社全体 2.0% から、利益率の高い商品が残った点と薄利の自動車向けを勘案した推定)。
FA・工作機械向け
工作機械・産業機器メーカー向けの制御機器・センサ・半導体。中国の AI 関連と国内の半導体製造装置向けで伸びた。
| 数量取扱個数(百万個) | 価格1 個あたり平均販売単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 165 | 66 | 2 |
| 10 年後 中立 | 52.0 | 206 | 107 | 3 |
取り方:有報の市場分野別売上 65.9 億円(前期比 10.0% 増)。個数と単価は推定。利益率 2.9% は推定。
情報通信向け
通信機器・情報機器メーカー向けの電子デバイス。国内外とも減少傾向。
| 数量取扱個数(百万個) | 価格1 個あたり平均販売単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 88 | 53 | 1 |
| 10 年後 中立 | 57.0 | 110 | 63 | 1 |
取り方:有報の市場分野別売上 52.7 億円(前期比 1.5% 減)。個数と単価は推定。利益率 1.5% は推定。
医療・環境・その他
医療機器・環境エネルギー向けの部材とソフトウエア。規模は小さいが伸びている。
| 数量取扱個数(百万個) | 価格1 個あたり平均販売単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 35.0 | 167 | 59 | 2 |
| 10 年後 中立 | 49.0 | 208 | 102 | 3 |
取り方:医療 10.8 億円・環境 10.7 億円・その他 37.0 億円の合計 58.5 億円。個数と単価は推定。利益率 3.9% は推定(ソフトウエア・システムを含むため高め)。
リスクと懸念
仕入先の契約終了
ルネサスの代理店契約が 2025 年 3 月で終わり、売上は 31% 減った。商社は仕入先の方針ひとつで事業の一部を失う。主要仕入先が代理店を絞る動きは、ほかの半導体メーカーでも続く。
半導体の山谷
過去の不況では、商社の営業利益は 5〜7 割落ち、在庫の評価損が直撃した。10 年の間に 1〜2 回の谷が来る前提で、山の年の利益に高い倍率を掛けられない。
薄利の構造
営業利益率は過去 12 年で 1.0〜3.3%。賃上げと物流費の上昇を、価格に十分転嫁できない。次期の営業利益予想は 6 億円と、さらに 25% 減る。
現金の使い方
純現金 90 億円は時価総額の 1.4 倍だが、使途の方針が見えない。成電社の買収額は未公表で、割高な買収になれば現金が株主から離れる。
主要顧客の偏り
デンソーが 14.0%、アイシンが 9.1%。自動車関連が 55%。EV 化と国内生産の縮小で、地域の部品メーカーの購入が減れば影響を受ける。
主要株主と流動性
OKURA が 15.0%、HARUKAZ が 5.2% を持つ。時価総額が小さく、少数株主は現金の使い方を決められない。出来高も細い。
今後の分かれ目
- 欧州メーカーとの取引が売上の 15% を超え、自動車向けの落ち込みを埋める
- ルネサスの穴が埋まったと見て、中立の数量を上方に直す。
- 次の景気後退でも営業黒字を保つ
- 山谷の振れ幅が縮んだと見て、k の循環の上乗せを下げる。
- 成電社の取得額が純現金の 2 割を超える、または買収が続く
- 現金が事業拡大に使われる速度が上がるとして、戻り方 0.75 を見直す。
- 自社株買いや特別配当など、現金の戻し方を示す方針が出る
- 戻り方を 1.0 に近づけ、価値が 15〜20 億円ほど上がる。
- ほかの主要仕入先が代理店契約を絞る
- ルネサスと同じ構造的な負けとして、やや悲観・悲観に重みを寄せる。
- OKURA など主要株主の動きや買収提案が出る
- 時価総額が純現金を下回る水準のため、価格の上振れ余地は大きい。条件次第。
見ておくもの
- 新しい仕入先(欧州メーカー)の売上比率
- 営業利益率(直近 2.0%、次期予想 1.5%)
- 純現金の水準と成電社の取得額
- 配当の水準と自社株買い・特別配当の有無
- デンソー・アイシン向けの比率
- 新中期経営計画 AT28(2028 年度 売上 550 億円・営業利益 11 億円)の進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。ROE が k 未満(中立で 5% 台)なので PER の上限は 1÷k の約 10.5 倍で、中立はその約 7 割。今の株価や同業の PER は使っていない。今の時価総額は純現金より小さいが、価値は事業の純利益(現金の利息を除く)と余った現金の戻り方で決めた。中立は半導体の山谷を平均した利益で置き、山の年の利益を土台にしていない。新リース会計基準は事務所の賃借が主で影響は小さく、10 年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.4→12.37 倍・やや楽観 PER 7.8→12.12 倍・中立 PER 7.4→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +2.0% を足して 9.5%。同じ領域の商社と並べ、仕入先依存の分を寿命で、半導体の山谷を循環で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 8.25%。