結論
中部水産は、名古屋市中央卸売市場の本場で魚を売る荷受の最大手だ。産地から魚を預かり、せりや相対で仲卸に売って手数料と差益を得る。筆者の結論は「割高」である。帳簿の純資産は時価総額の 3 倍近いが、その多くは少数株主の手に戻りにくい形で眠っている。
本業はやせ細っている。名古屋本場の水産の取扱量は、15 年で半分になった。量販店や外食が産地と直接つながり、市場を通る魚が減っているからだ。会社の営業利益は 4 億円台で、利益率は 1% 強にとどまる。
資産は厚い。現金は 37 億円、借金は無い。投資有価証券も 58 億円あり、ニッスイや極洋など取引先の株が中心だ。ただ、その取引先が逆にこの会社の大株主でもある。持ち合いの株は売りにくく、現金も配当で少しずつ返すだけだ。
10 年後の中立は、数量が 4 分の 3 に細り、物価の分だけ売上が保たれる姿である。稼ぐ力は資本コストに遠く届かない。資産の厚さを価値に数えるには、還元か再編という出口が要る。筆者はその出口がまだ見えないとみる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は事業より資産で見る銘柄だ。ただ、その資産が少数株主のものになる道筋が細い。ここが判断の分かれ目になる。
事業そのものは、長く持ちたい種類ではない。許認可の場所は残るが、そこを通る魚が毎年減っていく。利益率は 1% 前後で、物価の上昇を少しずつ値段に移すのが精一杯だ。
資産の側は魅力的に見える。現金 37 億円と株 58 億円で、時価総額の倍近くある。だが、株の多くは取引先との持ち合いで、売れば取引が細る。現金は荷受の決済にも一部が要る。経営は増やした自己資本を返すより、持ち続けることを選んできた。
筆者は、帳簿の厚さをそのまま価値とは見ない。稼ぐ力が資本コストに届かない会社では、ためた利益は、その額ほどの価値を持たない。還元方針が変わるか、再編が起きるまで、安全域は帳簿ほど厚くない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、名古屋市中央卸売市場の本場での水産物の卸売だ。売上は 366 億円で、全社の 98% を占める。全国の産地や輸入業者から魚を預かり、仲卸や売買参加者に売る。卸売市場法で決まった役割で、本場の荷受は数社しかない。
卸売の利益は薄い。営業利益は 4.3 億円で、利益率は 1.2% だ。今期は魚の値段が高く、計画を 2 割超えた。取扱の量は細っているが、キロあたりの値段が上がって売上を支えている。最大の売り先は仲卸の丸鮮で、売上の 16% を占める。
残りの 2 つは小さいが利益率が高い。冷蔵倉庫は市場の魚を預かる事業で、売上 5.4 億円に対し営業利益 2.1 億円だ。不動産賃貸はマンション・店舗・工場を貸し、売上 2.4 億円で営業利益 1.7 億円になる。2 つで本業と同じくらいを稼ぐ。
会社の本体は 83 人の小さな組織だ。中期計画は持たず、毎年の目標だけを置く。関連会社には北部市場の荷受、名北魚市場(持分 36%)がある。全社の費用 3.6 億円を引くと、営業利益は 4.5 億円になる。
優良さと弱いところ
この会社の質は、許認可で守られた場所と、細る需要の綱引きだ。中央卸売市場の荷受は、誰でも始められる商売ではない。名古屋本場で魚を集めて売る役割は、10 年後も残るだろう。
弱みはその場所そのものが縮むことだ。本場の水産の取扱量は、平成 22 年度の 14.2 万トンから 7.3 万トンへ減った。2020 年の卸売市場法の改正で、産地と量販店の直接取引も自由になった。荷受の存在意義は、少しずつ削られている。
値段を決める力も弱い。売値はせりと量販店の買い方で決まり、卸の取り分は手数料と薄い差益だけだ。過去 12 年の営業利益率は 0.2〜1.2% で、今期が最も高い。
資本の効率は低い。ROE の過去 10 年の中央値は 2.2% で、資本コストの 4 分の 1 ほどだ。自己資本の 3 分の 2 が現金と株に眠っており、事業に使われていない。経営は堅実だが、資本を増やさず株主に返す発想は乏しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
水産卸の環境は、量が減り、値段が上がる構図だ。人口が減り、1 人あたりの魚の消費も細っている。漁獲は減り、輸入は世界の需要と円安で高い。売上は値段で保たれても、運ぶ魚の量は年々減る。
市場を通る魚の割合も下がっている。全国の水産物の市場経由率は 5 割を切った。量販店は産地や商社から直接買い、加工場で切り身にして店に並べる。名古屋本場の取扱量が年 4% 強で減ったのは、人口減だけでは説明できない。
競合は同じ市場のもう 1 社の荷受と、市場外の商社・水産メーカーだ。大手の水産会社は荷受を系列に取り込む動きを見せる。東京ではマルハニチロ(今の Umios)が大都魚類を子会社にした。中部水産の大株主にもニッスイや極洋が並ぶ。
今は魚の値段が高止まりし、荷受の利益は膨らんでいる。高値が続けば量はさらに落ちる。人件費と物流費も上がる。10 年の中立は、取扱量が 4 分の 3 に細り、利益率が 1% 前後に戻る姿とみる。
一方で、市場の役割がすぐに消えるわけではない。鮮魚は日々の値段の振れが大きく、目利きと集荷の力は簡単にはまねできない。名古屋の量販店や飲食店の多くは、今も市場の荷を頼りにしている。細りながら残る、というのが筆者の見立てだ。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。今期の配当は記念配当を含めて少し増え、総額は 1.5 億円で、純利益の 3 分の 1 にあたる。自社株買いは行っていない。株主優待も無い。
投資有価証券は 58 億円あり、時価総額を上回る。ニッスイ・あいち FG・極洋・Umios などが中心だ。ニッスイと極洋はこの会社の大株主でもあり、典型的な持ち合いである。縮減の数字目標は開示されていない。
大株主は取引先と地元の銀行で固まる。上位 10 社で約 5 割を持つ。水産大手による系列化の再編は起こりうるが、具体的な動きは確かめられなかった。筋書きの確率には、再編の上振れを少しだけ含めた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
資産の裏付けは圧倒的だ。現金 37 億円と投資有価証券 58 億円で、時価総額 53 億円を大きく超える。借金は無く、本業が赤字でも会社は揺るがない。
本業も底を打った。今期の営業利益は 4.5 億円で、計画を 2 割超えた。魚の値段は上がり続け、手数料と差益は名目で伸びる。冷蔵倉庫と賃貸は利益率が高く、安定した下支えになる。
名古屋本場の荷受という場所は、許認可で守られる。取扱量が減っても、市場がなくなるわけではない。地域の量販店や飲食店は、目利きされた鮮魚を市場から買い続ける。
大株主にはニッスイと極洋がいる。水産大手が荷受を系列に取り込む流れの中で、いずれ買収の対象になりうる。東京では同じ形の再編がすでに起きた。資本市場からの圧力が強まれば、還元が厚くなる余地も大きい。
東証と名証は、資本効率の低い会社に改善を求めている。PBR が 0.4 倍を割る会社は、その対象の筆頭だ。配当性向を上げるだけで、眠った現金は少しずつ株主に戻り始める。その時、資産の厚さはそのまま値段の支えになる。
慎重な見方
本業は確実に細っている。名古屋本場の水産の取扱量は、15 年で半分になった。市場を通らない流通は増え続け、この流れが逆に戻る理由は見当たらない。今期の増益は、魚の高値に乗った一時的な姿だ。
利益率は 1% 前後で、人件費と物流費の上昇に弱い。過去 12 年で最も高い利益率が今期であり、ここから平均に戻る公算が大きい。会社自身も来期は横ばいの計画だ。
資産は厚いが、少数株主には届かない。株は取引先との持ち合いで、売る計画は無い。配当性向は 3 割強で、現金は 10 年前とほとんど変わらない水準に置かれたままだ。
ROE は 2〜3% が続き、資本コストに遠く届かない。自己資本が増えるほど、株主の価値は目減りする。再編の話も具体的なものは無く、期待だけで値段を払うのは危うい。
施設の更新も重荷になる。冷蔵倉庫や市場の設備は、建て替えのたびに建築費の上昇で高くつく。帳簿の償却は昔の値段のままでも、更新の現金は今の値段で出ていく。会計の利益より、手元に残る現金は細くなる。
どちらに重みを置いたか
慎重な側の主張がやや強いと筆者は見る。取扱量の半減という事実は重く、資産を少数株主に返す仕組みも弱い。一方で、借金が無く資産が厚いので、深い悲観は起きにくい。中立を最も厚くし、やや悲観をそれに次ぐ重さにした。再編の上振れは楽観に少しだけ含めた。資産が株主に戻るかどうかは、確率でなく現金の戻り方で表した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,676 円77 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 901 円15 億円)。 今の値に割り戻すと 2,667 円44 億円、今との差 −17.9%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,024 円99 億円 | 1,197 円20 億円 | +122.2% | +8.3% | 578 円9 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,842 円96 億円 | 1,002 円16 億円 | +110.6% | +7.7% | 1,369 円22 億円 |
| 中立 | 38% | 5,676 円93 億円 | 892 円15 億円 | +102.1% | +7.3% | 2,496 円41 億円 |
| やや悲観 | 24% | 3,033 円50 億円 | 855 円14 億円 | +19.6% | +1.8% | 933 円15 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,405 円23 億円 | 611 円10 億円 | −38.0% | −4.7% | 202 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,676 円77 億円 | 901 円15 億円 | +71.6% | +5.5% | 5,577 円91 億円 |
今の株価時価総額 3,250 円53 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 魚の高値が定着し、系列の再編で取引が太る 利益 7 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 6,024 円99 億円
水産大手との結びつきが深まり、本場の取扱量の減りが緩む。産地からの集荷を系列が後押しし、量は今の 9 割強を保つ。魚の値段は物価をやや上回って上がる。
卸売の利益率は 1.3% に乗る。人件費と物流費の上昇を、手数料と差益の上乗せで吸収できる姿だ。冷蔵倉庫は市場の物流拠点として使われ、利用料も上がる。
営業利益は 6 億円台に増え、配当も増える。株の配当と現金の利息も利益を下支えする。それでも ROE は 3% 台で、資本コストには届かない。資産の厚さが値段に乗るには、なお還元か再編が要る。
系列の色が濃くなれば、取引の安定と引き換えに、少数株主への還元が後回しになる恐れもある。上振れの筋書きでも、資本の使い方は大きく変わらないとみる。
- 水産物卸売(名古屋本場の荷受):数量 2.5(取扱数量(万トン))× 価格 1,871(キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 465 億円・営業利益 6 億円。量は今の 92%、売値 1.38 倍、利益率 1.3%
- 冷蔵倉庫:数量 3.0(年間の入庫量(万トン・推定))× 価格 24,120(1 トンあたりの保管・荷役料(円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。量を保ち料金は物価並み
- 不動産賃貸:数量 20.0(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 15,665(1 ㎡あたりの年間賃料(円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。賃料は物価にやや遅れる。償却は増えない
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 97 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:8%。本場の取扱量の減りが緩み、利益率が過去 12 年の山を超えて続く必要がある。薄利の荷受では低く置く。
やや楽観 20% 取扱量の減りが緩み、利益率が今の水準を保つ 利益 5 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 5,842 円96 億円
本場の取扱量は 10 年で 2 割弱減るが、減り方は過去 15 年より緩む。量販店の一部が鮮魚の目利きを市場に頼り続けるからだ。売値は物価並みに上がる。
卸売の利益率は 1.15% と、今期に近い水準を保つ。冷蔵倉庫と賃貸は物価の分だけ稼ぎが増える。償却は建てた時の値段のままなので、利益率は少し上がる。
営業利益は 4〜5 億円で今と同じくらいだ。配当は利益に合わせて少し増える。現金と株は持ち続け、自己資本は 1.2 倍になる。
本業の利益は崩れないが、資本の効率は低いままだ。ROE は 3% 前後にとどまり、ためた利益は帳簿ほどの価値を生まない。
- 水産物卸売(名古屋本場の荷受):数量 2.2(取扱数量(万トン))× 価格 1,844(キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 413 億円・営業利益 5 億円。量は今の 83%、売値 1.36 倍、利益率 1.15%
- 冷蔵倉庫:数量 2.9(年間の入庫量(万トン・推定))× 価格 23,760(1 トンあたりの保管・荷役料(円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。量は少し減り料金は物価並み
- 不動産賃貸:数量 20.0(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 15,063(1 ㎡あたりの年間賃料(円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。賃料は物価にやや遅れる
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 83 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:20%。今期の利益率が大きく崩れずに続く姿。魚の高値が続く年が多ければ届く。
中立 38% 取扱量は 4 分の 3 に細り、物価の分で売上を保つ 利益 4 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 5,676 円93 億円
名古屋本場の取扱量は、人口減と市場外流通で 10 年に 4 分の 1 減る。過去 15 年の年 4% 強の減りよりは緩むが、流れは変わらない。売値は物価並みに 1.34 倍になり、売上はほぼ今と同じだ。
卸売の利益率は 1.0% に戻る。今期の 1.2% は魚の高値による山で、人件費と物流費の上昇がそれを削る。冷蔵倉庫は量の減りを料金の上げで補う。賃貸は償却が増えないので利益率を保つ。
営業利益は 3 億円台に下がる。株の配当と現金の利息が利益の半分近くを支える。配当は 3 割強の性向を保ち、自己資本は 175 億円ほどに積み上がる。ROE は 2% 台にとどまる。
- 水産物卸売(名古屋本場の荷受):数量 2.0(取扱数量(万トン))× 価格 1,817(キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 368 億円・営業利益 4 億円。量は今の 75%、売値 1.34 倍、利益率 1.0%
- 冷蔵倉庫:数量 2.7(年間の入庫量(万トン・推定))× 価格 23,400(1 トンあたりの保管・荷役料(円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。量は 1 割減、料金は物価並み、償却は増えない
- 不動産賃貸:数量 20.0(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 15,063(1 ㎡あたりの年間賃料(円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。賃料は古い建物で物価にやや遅れる。償却は増えない
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 70 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:38%。本場の取扱量が年 3% 弱で減り、利益率が過去の平均寄りに戻る。過去 15 年の流れの延長として最も厚く置いた。
やや悲観 24% 市場外流通に押され、卸売の利益が消えかける 利益 2 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 3,033 円50 億円
量販店と外食が産地と直接結ぶ動きが、過去 15 年と同じ速さで続く。本場の取扱量は 10 年で 4 割近く減る。売値は物価ほど上がらず、1.3 倍にとどまる。
卸売の利益率は 0.75% に下がる。人件費と物流費は物価並みに上がるが、量が減るので固定費を賄えない。冷蔵倉庫の稼働も落ちる。
営業利益は 1 億円を割る。純利益は株の配当と現金の利息が頼りだ。配当は今の額を守るが、性向は 6 割に上がる。余った現金の一部は、施設の更新と赤字の穴埋めに使われる。
借金が無いので会社が揺らぐことはない。ただ、本業は市場の場所を守るだけの存在になり、株主にとっての価値は配当と現金に限られていく。
- 水産物卸売(名古屋本場の荷受):数量 1.7(取扱数量(万トン))× 価格 1,763(キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 295 億円・営業利益 2 億円。量は今の 62%、売値 1.30 倍、利益率 0.75%
- 冷蔵倉庫:数量 2.6(年間の入庫量(万トン・推定))× 価格 22,500(1 トンあたりの保管・荷役料(円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。稼働が落ちる
- 不動産賃貸:数量 18.0(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 13,858(1 ㎡あたりの年間賃料(円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。空室が増え賃料は物価に遅れる
倍率:ROE は 1% 台で k 8.5% を大きく下回り、上限は 1÷k=11.8 倍。本業の利益はほぼ消え、配当と利息の利益だけが残るので、上限の約 7 割弱の 8.0 倍。
確率:24%。本場の取扱量の減りが過去 15 年の速さで続く姿。実際に起きてきた流れなので中立に近い厚さで置いた。
悲観 10% 荷受の役割が細り、本業が赤字に沈む 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,405 円23 億円
市場を通る魚がさらに減り、本場の取扱量は 10 年で半分になる。卸売はほとんど利益を出せず、市場の再編で手数料の取り分も削られる。冷蔵倉庫も空きが目立つ。
営業利益は赤字になり、純利益は株の配当と利息で何とか黒字を保つ程度だ。配当は減らされる。施設の減損も出る。
資産は残るが、少数株主に戻る道は細い。持ち合いの株は取引を守るために売られず、現金は赤字の穴埋めと施設の更新に回る。値段の土台は、戻りうる現金と取引に縛られない株だけになる。
市場の中で荷受どうしの統合が進めば、条件の悪い側として吸収される恐れもある。その時の値段は、帳簿でなく稼ぐ力で決まる。
- 水産物卸売(名古屋本場の荷受):数量 1.3(取扱数量(万トン))× 価格 1,695(キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 220 億円・営業利益 0 億円。量は今の 48%、売値 1.25 倍、利益率 0.2%
- 冷蔵倉庫:数量 2.3(年間の入庫量(万トン・推定))× 価格 21,600(1 トンあたりの保管・荷役料(円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。空きが目立つ
- 不動産賃貸:数量 17.0(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 13,255(1 ㎡あたりの年間賃料(円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。空室と修繕が増える
倍率:本業は赤字で稼ぐ力は値段の土台にならない。床の資産 23 億円を今の自己資本 148 億円で割った 0.155 倍に置いた。
確率:10%。市場の再編や取扱量の急減で、荷受の事業が赤字になる構造的な負け。借金が無いので、これ以上は厚くしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
水産物卸売(名古屋本場の荷受)
名古屋市中央卸売市場の本場で、産地・輸入業者から魚を預かり、仲卸などに売って手数料と差益を得る。
| 数量取扱数量(万トン) | 価格キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.7 | 1,356 | 366 | 4 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 1,817 | 368 | 4 |
取り方:卸売の売上 366.2 億円を、本場の水産のキロ単価(令和 7 年度 約 988 億円 ÷ 7,277 万 kg ≒ キロ 1.36 千円)で割り、約 2.7 万トンと推定した。本場の約 37% にあたる。
冷蔵倉庫
市場の魚を預かる冷蔵倉庫。保管料と荷役料で稼ぐ。
| 数量年間の入庫量(万トン・推定) | 価格1 トンあたりの保管・荷役料(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 18,000 | 5 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2.7 | 23,400 | 6 | 2 |
取り方:売上 5.39 億円を、入庫量 3 万トン × 1 トンあたり約 1.8 万円とみた推定値。入庫量の開示は無い。
不動産賃貸
マンション・店舗・工場・事務所を貸して賃料を得る。簿価は約 27 億円。
| 数量賃貸の床面積(千㎡・推定) | 価格1 ㎡あたりの年間賃料(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 12,050 | 2 | 2 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 15,063 | 3 | 2 |
取り方:売上 2.41 億円を、床面積 2 万㎡ × 年 1.2 万円/㎡ とみた推定値。面積の開示は無い。
リスクと懸念
市場を通る魚がさらに減る
名古屋本場の水産の取扱量は、15 年で半分になった。量販店と外食が産地と直接結ぶ流れは続く。卸売は売上の 98% を占め、量の減りがそのまま利益の減りになる。
魚の高値が崩れる
今期の増益は、魚の値段が高かったことが大きい。相場が下がれば、手数料と差益の額も減る。過去 12 年の利益率は 0.2〜1.2% で、今期が山にあたる。
資産が少数株主に戻らない
現金 37 億円と投資有価証券 58 億円は時価総額を上回る。だが株の多くは取引先との持ち合いで、縮減の目標は無い。配当性向は 3 割強で、現金は積まれたままになりやすい。
人件費と物流費の上昇
利益率が 1% 前後の事業では、費用の上昇を値段に移せないと利益がすぐ消える。市場の施設の更新費も物価で膨らむ。償却を超える更新投資は現金を細らせる。
市場の再編と取引先の集中
最大の売り先の丸鮮が売上の 16% を占める。市場の再編や仲卸の淘汰が起きれば、取引が細る。水産大手による系列化は、上振れにも下振れにもなりうる。
今後の分かれ目
- 配当性向の引き上げや自社株買いの方針が出たら
- 資産が株主に戻る道が開いたとみて、余った現金の戻り方を 0.75 以上に直す。
- 持ち合いの株を売る数字の目標が出て、実際に売り始めたら
- 株の価値を余り資産として別に足すことを考える。
- 本場の取扱量の減りが年 2% 未満に緩んだら
- 中立の数量を上に直し、やや楽観の確率を上げる。
- 卸売の利益率が 2 年続けて 0.7% を割ったら
- やや悲観の筋書きが現実になったとみて、悲観側の確率を上げる。
- ニッスイや極洋などが出資の引き上げや TOB を発表したら
- 再編の価値が加わる。筋書きの外の上振れとして別に考える。
見ておくもの
- 名古屋市中央卸売市場の本場の水産取扱量(年度)
- 卸売部門の営業利益率
- 配当性向と自社株買いの有無
- 投資有価証券の残高と持ち合いの縮減
- 大株主の持株比率の変化
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PBR には寄せていない。売上は取扱量(実質)と売値(名目)から積み、倍率は ROE が k を下回るので上限 1÷k(11.8 倍)の 7〜9 割で置いた。PBR が 0.36 倍と低いことは、割安の根拠にしていない。持ち合いの株は配当を利益に残し、余り資産には足していない。悲観は純現金と縛られない株に戻り方を掛けた床で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.76 倍・やや楽観 PER 9.5→11.76 倍・中立 PER 8.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。