結論
木徳神糧は、コメの集荷・精米・販売を柱とする専門卸だ。ほかに鶏卵、飼料、食品を持つ。筆者の結論は「割高」で、理由は2025年12月期の大きな利益を、そのまま続く稼ぎとは見ないことにある。
2025年12月期は売上が1,762億円と前期の1.5倍、営業利益が80億円と3.4倍になった。コメの価格が急騰し、安く仕入れた在庫を高く売れたことが主因だ。営業利益率は4.5%で、過去12年の最高が2%だったのと比べて突出している。
その後は逆風に変わった。2026年12月期の上半期の営業利益は8.8億円と前年から8割以上減り、高値で積んだ在庫を販促で圧縮するのに粗利を使った。会社予想の営業利益は2026年が10億円、2027年が25億円の見通しだ。
卸は価格を決められず、薄い利益率で量をこなす商売だ。筆者は10年後の中立の営業利益を、インフレを足した20億円ほどと置く。ROEは4%台にとどまり、資本コストの9.0%に届かない。
いちばん気にするのは、コメの相場が山から崩れる時の在庫の損失と、小売が産地から直接買う動きだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、木徳神糧は「安く見えても、続く稼ぎが小さい会社」だ。時価総額は自己資本の7割ほどだが、2025年の自己資本のふくらみは米価の急騰による一過性の利益が積み上がったものだ。ROEが資本コストに届かない会社では、自己資本の安さは割安の根拠にならない。
株主が受け取れる利益は、純利益から運転資本の借入に回る分を引いた額になる。米の在庫を積むほど借入が増え、利益の質は低い。
経営の資本配分は、DOE 2%以上の下限と業績連動の配当で、堅実だ。ただ、米価が高い間に積み増した在庫の損失が、次の相場の下落で出る恐れがある。
安全域は、固定資産と運転資本の回収にあるが、高値の在庫は相場が崩れれば目減りする。筆者は、営業利益が過去の水準を超えて続くと確かめられるまで、割安とは見ない。株主への戻りは配当が中心になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は米穀事業で、売上の86%、営業利益の9割を占める。全国の産地から玄米を集め、精米して、スーパー、外食、中食、ドラッグストア、食品メーカーに卸す。年間の取扱量は45万トン前後で、国内では上位の卸にあたる。ほかに、国の備蓄米の取り扱いと、ミニマムアクセス米の輸入・販売も手がける。
鶏卵事業は売上の6%で、鶏卵の卸と、液卵や加工卵の販売を担う。飼料事業も6%で、畜産向けの配合飼料や原料を売る。食品事業は2%で、小さい。
米穀は薄利多売の事業だ。2022年までの営業利益率は1%前後と低く、卸の取り分は1トン当たりで数千円にとどまる。2025年は米価が急騰し、在庫の値上がりで利益率が5.7%まで跳ねた。この水準は、米の値段が上がる局面だけに現れる。
2025年12月期の売上は1,762億円、営業利益は80億円、純利益は55億円。従業員は約700人で、年間の稼ぎは米の相場と取扱量の両方に左右される。会社は2026年2月、2026年から2028年の3カ年計画を公表し、「コメ食のインフラ企業」への進化を掲げた。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば「相場に乗って稼ぐ、薄利の卸」だ。堀、つまり他社がまねできない強みは弱い。
強みは三つある。一つ目は、産地との取引と精米・物流の設備で、集荷力に厚みがあることだ。二つ目は、備蓄米やミニマムアクセス米など、国の制度に絡む取引を扱える実績だ。三つ目は、2025年に自己資本が204億円まで積み上がり、ROEが一時的に27%まで上がったことだ。
弱みも三つある。一つ目は、売上の86%を占める米穀が、相場と国の政策で利益が大きく振れることだ。二つ目は、有利子負債が重く、純負債が117億円ある点だ。在庫と売掛金に張りついた借入で、自己資本比率は36%にとどまる。三つ目は、小売や外食が産地から直接買う動きで、卸の取り分が構造的に縮みうることだ。
過去には赤字の期も2003年、2006年、2013年にあり、2020年は営業利益がほぼゼロだった。利益率が長く1%前後だったことが、この会社の本来の姿だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の米の市場は、人口減と食の多様化で数量が縮み続けてきた。主食用米の需要は年に10万トン前後ずつ減り、一人当たりの消費量も細っている。2024年から2025年にかけての米価の急騰は、猛暑による不作と流通在庫の薄さ、インバウンドの需要が重なった一時的な現象で、政府備蓄米の放出と増産で落ち着きつつある。
10年後の需給は、数量が実質で今より1割ほど減ると見る。一方で、作付けの拡大と輸入米の増加で、価格は2025年の山から大きく下がる。物価の分で、名目では2023年の水準より上に残る。
卸は、集荷力と物流、在庫のリスクを引き受ける機能で稼ぐ。ただし、小売のプライベートブランドや、産地との直接取引が増えれば、卸を通らない量が増える。規模の大きい卸は、精米・加工・輸出で付加価値を取りにいく。再編の動きもあり、中堅の卸は買い手にも売り手にもなりうる。木徳神糧は中堅の上位にあたり、規模と財務の両面で、統合の担い手にも対象にもなりうる位置だ。
追い風は輸出の拡大と、備蓄制度の変更による取引の増加だ。向かい風は、人口減、直接調達、相場の下落による在庫の損失になる。
資本政策と M&A
還元の方針は、自己資本配当率(DOE)2%以上を下限とし、業績に応じて配当を上げることだ。2025年12月期は、利益の急増を受けて増配した。2026年12月期は利益が落ち込むが、配当は下限を守る方針で、DOEに沿った水準を維持する。親会社はなく、持ち合い株の売却や自己株式の取得は、方針に挙げていない。
自己株式はすでに発行済みの4%ほどを持つ。株数は自己株式を除いた約819万株で数えた。
純負債は117億円と重い。米の在庫と売掛金に張りついた運転資本の借入で、余った現金ではない。金利が上がると、利払いが10年で3億円ほど増える。投資は、精米設備と物流の更新が中心で、大型のM&Aは見当たらない。
中計は2028年12月期が最終年度で、営業利益は50億円に近い目標を置く。米価の高止まりを前提にした数字で、10年の中立には置かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会社は変わりつつある。木徳神糧は、米価が高い間に、会社は集荷と精米の体制を強め、備蓄米と輸入米も取り扱える実績を作った。2025年12月期の営業利益は80億円で、前期の3.4倍だ。自己資本は204億円に厚くなり、純負債の比率も下がった。
中計は2028年12月期に営業利益50億円を掲げる。米の消費は減るが、価格が2023年以前に戻る見込みは薄い。作付け面積を絞る政策や、収量の低下、人手不足による生産コストの上昇で、米は高い水準で落ち着く。会社の取り分も、1トン当たりで2024年より厚くなる。
輸出や業務用の拡大、小売との直接取引の強化で、数量も保てる。DOE 2%以上と業績連動の配当で、還元も進む。時価総額は自己資本の7割ほどで、PBRが1倍を下回る。配当と成長が評価されれば、見直される余地がある。さらに、会社は上場を維持しながら、備蓄米や輸出など、制度の変更を取り込む柔軟さを持つ。2025年は、その力が利益に出た年だった。
慎重な見方
利益が続かない。2025年の営業利益率4.5%は、価格が急騰した局面で在庫が値上がりした分で、卸の本来の姿ではない。過去12年の最高は2%で、2022年までは1%前後だった。2026年12月期の上半期は、営業利益が8.8億円と前年から8割以上減り、高値の在庫を販促で減らしている。
米の需要は人口減で縮み、一人当たりの消費も細っている。2025年に高騰した価格は、作付けの拡大と備蓄米の放出、輸入米の増加で山から下がる。高値で積んだ在庫の評価損と、値引きの販売が、これから利益を削る。
借入が重い。純負債は117億円で、自己資本比率は36%だ。金利が上がれば利払いが増え、在庫の借入は返しにくい。中計の営業利益50億円は、米価が高止まりする前提だ。小売や外食が産地から直接買う動きも、卸の取り分を構造的に細らせる。ROEは4%台で、資本コストの9.0%に届かない。配当も業績連動のため、利益が落ちれば減る。株主への戻りは細る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。2025年の利益は相場の急騰による一過性で、10年の中立は過去12年の最高に近い営業利益率に、物価の分を足した水準に置いた。確率は、中立に4割弱、やや悲観に3割弱を置き、悲観を1割強に置いたのは、過去に赤字の期があり、高値在庫の損失の道を無視できないからだ。強気の見方が挙げる中計の目標は、米価が高止まりする前提で、中立には置かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,395 円196 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 590 円48 億円)。 今の値に割り戻すと 1,511 円124 億円、今との差 −12.2%、 期待の年率 +5.7%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 5,724 円469 億円 | 977 円80 億円 | +289.6% | +14.6% | 402 円33 億円 |
| やや楽観 | 17% | 4,189 円343 億円 | 757 円62 億円 | +187.6% | +11.1% | 841 円69 億円 |
| 中立 | 38% | 2,601 円213 億円 | 611 円50 億円 | +86.7% | +6.4% | 1,220 円100 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,056 円86 億円 | 550 円45 億円 | −6.6% | −0.7% | 434 円35 億円 |
| 悲観 | 12% | 548 円45 億円 | 183 円15 億円 | −57.5% | −8.2% | 88 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,395 円196 億円 | 590 円48 億円 | +73.5% | +5.7% | 2,985 円244 億円 |
今の株価時価総額 1,720 円141 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 米の高値が続き、精米と輸出が育って利益が定着する 利益 28 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 5,724 円469 億円
米の需給が10年にわたって締まり、価格は名目で今の水準を保つ。取扱量は精米と業務用、輸出の拡大で実質46万トンまで増え、卸の粗利が1トン当たりで厚いまま残る。鶏卵と飼料も価格の転嫁が進み、全体の営業利益は40億円ほどになる。
純利益は28億円で、自己資本は320億円台に積み上がる。配当は自己資本配当率2%以上の方針を超え、性向を4割に上げる。ROEは9%近くで、資本コストにようやく届く水準だ。会社が掲げる「コメ食のインフラ企業」への進化が、価格の追い風に頼らず数量と機能で稼ぐ形に変わった姿である。
- 米穀事業(コメの集荷・精米・販売):数量 46.0(取扱量(万トン、実質))× 価格 34(1万トン当たり売上(億円・名目))→ 売上 1,564 億円・営業利益 41 億円。数量 46・価格 34.0・営業利益率 2.6%
- 鶏卵事業:数量 100(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 1.41(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 141 億円・営業利益 4 億円。数量 100・価格 1.414・営業利益率 2.8%
- 飼料事業:数量 100(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 1.48(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 148 億円・営業利益 7 億円。数量 100・価格 1.478・営業利益率 4.8%
- 食品事業:数量 110(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 0.47(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。数量 110・価格 0.467・営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.86 倍、時価総額 416 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:米の供給が締まったまま需給が戻らず、会社の精米・業務用・輸出の拡大も計画どおり進む筋書き。会社の中計の営業利益に近い水準が続く姿で、両方がそろう必要があり1割未満に置く。
やや楽観 17% 米価は高めに残り、精米と業務用で利益率が少し上がる 利益 21 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 4,189 円343 億円
米の取扱量は実質44万トンと今よりわずかに減るが、価格は名目で今の水準のすぐ下に残る。会社は産地との直接取引と精米の設備投資で、粗利を取りやすい業務用と中食向けを増やす。小売の直接調達が進んでも、集荷と物流の機能を持つ卸は、一定の取り分を守れる。米穀の営業利益率は2%台前半で、2023年と2024年の水準を少し上回る。
鶏卵と飼料は物価の分を価格に転嫁し、営業利益は合わせて10億円弱になる。全体の営業利益は30億円ほど、純利益は21億円。配当は自己資本配当率2%と性向4割弱で、自己資本は300億円台になる。ROEは7%近くで、資本コストにはまだ届かない。
- 米穀事業(コメの集荷・精米・販売):数量 44.0(取扱量(万トン、実質))× 価格 33(1万トン当たり売上(億円・名目))→ 売上 1,430 億円・営業利益 32 億円。数量 44・価格 32.5・営業利益率 2.2%
- 鶏卵事業:数量 100(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 1.36(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 136 億円・営業利益 3 億円。数量 100・価格 1.36・営業利益率 2.5%
- 飼料事業:数量 98.0(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 1.43(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 140 億円・営業利益 6 億円。数量 98・価格 1.426・営業利益率 4.4%
- 食品事業:数量 105(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 0.45(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 47 億円・営業利益 1 億円。数量 105・価格 0.45・営業利益率 1.7%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.62 倍、時価総額 286 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:米価が2025年の山からは下がるが、2022年以前より高い水準に落ち着き、会社の集荷・精米・業務用の強化で1トン当たりの利益が少し厚くなる筋書き。
中立 38% 米価は山から下がり、卸の薄い利益率に戻る 利益 14 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,601 円213 億円
米の取扱量は実質42万トンと、今の44.7万トンから縮む。2025年は政府備蓄米の取り扱いと輸入米の増加で量が膨らんだが、人口減と一人当たり消費の減少が続くためだ。価格は名目で1トン当たり31億円台(60キロ当たりでは今の約9割)に下がり、米穀の営業利益率は2024年の水準に近い1.8%に戻る。
鶏卵と飼料の価格は、物価の分より弱く置く。鶏卵は2025年に鳥インフルエンザで卵価が高かったため、10年で1.15倍にとどめた。米の価格が今の0.91倍なのは、2025年の急騰が山で、名目でも下がる前提による。利益率は2〜4%にとどまる。本社費など全社の費用は、10年で物価の分だけ増えて年12億円弱になる。営業利益は20億円、純利益は13億円台だ。2027年12月期の会社予想(営業利益25億円)より低く、会社の中計の営業利益50億円とは大きく離れる。米価が高止まりする前提の計画は、中立には置かない。
配当は自己資本配当率2%以上の方針で、10年で50億円前後を払い、自己資本は280億円台になる。ROEは4%台で、資本コストに届かない。
- 米穀事業(コメの集荷・精米・販売):数量 42.0(取扱量(万トン、実質))× 価格 31(1万トン当たり売上(億円・名目))→ 売上 1,302 億円・営業利益 23 億円。数量 42・価格 31.0・営業利益率 1.8%
- 鶏卵事業:数量 95.0(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 1.25(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 119 億円・営業利益 3 億円。数量 95・価格 1.251・営業利益率 2.2%
- 飼料事業:数量 95.0(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 1.37(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 130 億円・営業利益 5 億円。数量 95・価格 1.373・営業利益率 4.0%
- 食品事業:数量 100(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 0.43(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。数量 100・価格 0.432・営業利益率 1.5%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 169 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025年の高値在庫の利益は一過性で、米の相場は需要減と作付けの拡大で山から下がり、卸の利益は2022〜2024年の水準にインフレを足した形へ戻る筋書き。過去12年の営業利益率は0%台から2%までで、最高の2025年は中立に置かない。
やや悲観 27% 米価の下落と小売の直接調達で、卸の粗利が削られる 利益 8 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,056 円86 億円
米の取扱量は実質38万トンまで減る。人口減で需要が縮む上に、小売と外食、ドラッグストアが産地や農協から直接買う比率を上げ、卸を通る量が縮む。価格は名目で1トン当たり28億円台まで下がり、高い値で積んだ在庫の売却が粗利を削る。米穀の営業利益率は1%台前半に下がり、鶏卵と飼料の利益も薄い。
営業利益は12億円ほど、純利益は8億円になる。借入の金利が上がる分も効く。配当は自己資本配当率2%の下限に近く、性向は5割を超える。自己資本は250億円台後半で、ROEは3%ほどにとどまる。2018年から2021年の水準に近く、卸としては稼ぎが薄い姿だ。米価の下落に伴う在庫の評価損は、特別損失として一部に出る。
- 米穀事業(コメの集荷・精米・販売):数量 38.0(取扱量(万トン、実質))× 価格 30(1万トン当たり売上(億円・名目))→ 売上 1,121 億円・営業利益 17 億円。数量 38・価格 29.5・営業利益率 1.5%
- 鶏卵事業:数量 90.0(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 1.20(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 108 億円・営業利益 2 億円。数量 90・価格 1.197・営業利益率 1.8%
- 飼料事業:数量 90.0(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 1.32(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 119 億円・営業利益 4 億円。数量 90・価格 1.32・営業利益率 3.5%
- 食品事業:数量 95.0(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 0.40(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 0 億円。数量 95・価格 0.398・営業利益率 0.8%
倍率:ROE 約 3%。ROE が k 8% 以下なので上限は 1÷k = 11.1 倍。需要と粗利が弱い局面で、上限の 6 割 8 分の 7.5 倍に置いた。
確率:米の相場が下がる過程で在庫の評価損が出て、小売とドラッグストアが産地から直接買う動きも強まり、卸の取り分が減る筋書き。2018年から2021年に営業利益率が0%前後まで下がった実績があり、中立に近い厚みで置く。
悲観 12% 米価が崩れ、高値在庫の損失と量の減少で赤字が続く 利益 −9 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 548 円45 億円
米の相場は2023年以前の水準へ戻る。名目で1トン当たり21億円台まで下がり、高値で積んだ在庫の評価損と、売り急ぎによる値引きが重なる。取扱量は実質33万トンまで減り、精米工場と物流の固定費を回収できない。大口の取引先の信用悪化で、貸倒れも出る。取引先との直接取引が増え、卸の機能が置き換わる。
営業利益は赤字になり、純利益も9億円規模の赤字が出る。借入は在庫と売掛金に張りついたまま重く残り、自己資本は在庫の評価損と赤字で150億円ほどまで目減りする。配当は下限だけになる。株主に戻るのは、固定資産と運転資本の回収に限られる。
- 米穀事業(コメの集荷・精米・販売):数量 33.0(取扱量(万トン、実質))× 価格 21(1万トン当たり売上(億円・名目))→ 売上 693 億円・営業利益 2 億円。数量 33・価格 21.0・営業利益率 0.3%
- 鶏卵事業:数量 80.0(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 1.09(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 87 億円・営業利益 0 億円。数量 80・価格 1.088・営業利益率 0.5%
- 飼料事業:数量 85.0(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 1.16(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 99 億円・営業利益 2 億円。数量 85・価格 1.162・営業利益率 2.0%
- 食品事業:数量 85.0(取扱量の指数(今を100とした実質))× 価格 0.35(指数1当たり売上(億円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 0 億円。数量 85・価格 0.346・営業利益率 -1.0%
倍率:稼ぐ力は赤字で、床は売れる資産の税後で測る。今の自己資本 204 億円に PBR 0.22 倍を掛けた約 45 億円。floor_assets_why の内訳と同じ額。
確率:減反の見直しと増産で米が余り、相場が崩れる。高い値で積んだ在庫の評価損が出て、小売の直接調達で卸を通る量も縮む構造的な負けの筋書き。2003年に赤字になり、2006年と2013年にも赤字の期がある会社で、1割強を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
米穀事業(コメの集荷・精米・販売)
全国の産地から米を集め、精米してスーパー・外食・中食・食品メーカーに卸す。備蓄米とミニマムアクセス米も扱う。売上の約86%、営業利益の約9割。
| 数量取扱量(万トン、実質) | 価格1万トン当たり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 44.7 | 34 | 1,521 | 87 |
| 10 年後 中立 | 42.0 | 31 | 1,302 | 23 |
取り方:売上は1,520.7億円、営業利益は87.3億円(有価証券報告書の数値を集計した外部サイト)。取扱量44.7万トンは会社の開示の概数で、備蓄米と輸入米を含む可能性があり、売上との割り算で出した単価は推定。単価は2025年の米価の急騰を含む。10年の価格は、山から下がるが物価の分で名目では2023年を上回ると置く。
鶏卵事業
鶏卵の卸と、液卵・加工卵の販売。売上の約6%。
| 数量取扱量の指数(今を100とした実質) | 価格指数1当たり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 1.09 | 109 | 3 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 1.25 | 119 | 3 |
取り方:売上は108.8億円、営業利益は2.88億円(外部サイトの集計)。取扱量の開示が無いため、今を100とした指数。2025年は鳥インフルエンザで卵価が高かった。
飼料事業
畜産向けの配合飼料と原料の販売。売上の約6%。
| 数量取扱量の指数(今を100とした実質) | 価格指数1当たり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 1.06 | 106 | 5 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 1.37 | 130 | 5 |
取り方:売上は105.6億円、営業利益は5.4億円(外部サイトの集計)。取扱量の開示が無いため、今を100とした指数。
食品事業
加工食品などの販売。売上の約2%。
| 数量取扱量の指数(今を100とした実質) | 価格指数1当たり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 0.35 | 35 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.43 | 43 | 1 |
取り方:売上は34.6億円、営業利益は0.38億円(外部サイトの集計)。原料高騰への価格改定の遅れで減益。開示が無いため指数。セグメント営業利益の合計は約96億円で、連結の80億円との差約16億円は全社費用などの調整とみて adjust に置いた。
リスクと懸念
米価の下落と高値在庫の評価損
2025年の高値で積んだ在庫は、相場が山から下がると評価損や値引きの販売になる。2026年12月期の上半期は、すでに粗利が大きく落ちた。作付けの拡大と輸入米の増加で、下落が続く恐れがある。
小売・外食の直接調達で卸を通る量が減る
スーパー、ドラッグストア、外食が産地や農協から直接買う動きは、卸の取り分を構造的に削る。中抜きが進めば、取扱量と粗利が同時に縮む。
借入の重さと金利の上昇
純負債は117億円で、自己資本比率は36%だ。借入は在庫と売掛金に張りついていて、金利が上がると利払いが10年で3億円ほど増える。
国の米政策の変更
備蓄米の放出、作付けの調整、輸入米の枠は、国の政策で変わる。会社の利益は、制度の変更で大きく振れる。
人口減による数量の縮み
主食用米の需要は年に10万トン前後減っている。10年で数量が1割ほど縮む前提で、価格の上昇が取扱量の減りを補えるかが分かれ目になる。
会社予想の下振れ
2026年12月期の予想は期初に営業利益が大きく見込まれていたが、上半期の実績は8.8億円にとどまった。会社予想の修正が多く、中計の営業利益50億円も大きく外れる恐れがある。
今後の分かれ目
- 米穀の営業利益率が1.8%を2期続けて超えたら
- 山でない水準が定着したと見て、やや楽観の確率を少し増やす。
- 米の相場が2025年の山から3割以上下がったら
- 高値在庫の評価損が出る局面と見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 取扱量が前年比5%超の減少を2期続けたら
- 直接調達による中抜きが進んだと見て、数量を下へ直す。
- 純負債が100億円を下回ったら
- 運転資本の借入が減ったと見て、借金の質の評価を軽くする。
- 輸出や業務用の売上が全体の1割を超えたら
- 米の相場に頼らない稼ぎが育ったと見て、中立の利益率を少し上げる。
- 2026年12月期の営業利益が会社予想(10億円)を大きく下回ったら
- 会社予想の信頼を下げ、中立の利益率も下げる。
見ておくもの
- 米穀の営業利益率と取扱量
- 米の相場(相対取引価格)と在庫の水準
- 純負債と金利
- 直接調達の動き
- 輸出・業務用の比率
- DOEと配当
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト k 8%(基本 7.5% + quality 1.5%)に届かない前提で、正当化 PER の上限(1÷k = 約11.1 倍)の 6〜9 割に置いた。悲観は谷の利益でなく、固定資産と運転資本の回収(約45億円)で測り、谷の PBR は使っていない。今の株価や PER を見てから決めたわけではない。中立の営業利益率は米穀で 1.8%(過去の最高圏 2022〜2024 年の水準)に置き、2025年の 5.7%(相場の急騰による在庫の値上がり)は中立に置かない。本社などの全社費用は、10年で物価の分だけ増やして年 11.5 億円とした。純利益÷営業利益は 0.66 で、過去の中央値 0.79 より低い(金利の上昇を入れたため)。減価償却は物価で一律には増やしていない。純負債は余った現金ではなく運転資本の借入のため、余り現金としては分けていない。10年後の数字は今と同じ形でそろえた。セグメント別の数量と単価は推定で、誤差が大きい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→14.86 倍・やや楽観 PER 8.5→13.62 倍・中立 PER 7.8→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.5% = 9.0%。コメの政策・価格のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.00%。