結論
アップルインターナショナルは、日本で買い取った中古車を東南アジアへ輸出する会社だ。売上の 4 割強がマレーシア、2 割弱がタイ向けで、残りは国内の業者に売る。筆者の結論は、今の値段はやや割安だが、安全域は厚くないというものだ。
一番の理由は利ざやの薄さにある。営業利益率は良い年で 5%、普通の年は 2〜3% にとどまる。仕入れの値段は国内の買取大手と競り合って決まり、売り値は輸出先の相場が決める。会社が値段を決められる場面はほとんど無い。
2025 年はタイで中国製 EV が急に増え、営業利益は前の年の半分以下に落ちた。2026 年は円安とマレーシアの好調で持ち直し、会社は利益の見通しを上げた。この振れ幅こそが事業の性格だ。
10 年で見ると、東南アジアの EV への移り変わりが最大の分かれ目になる。筆者は、中古の日本車の需要が急に消えるとは見ないが、増える理由も乏しいと見る。ROE は資本コストを下回る年が多く、ためた利益が株主の価値になりにくい。それでも今の値段は帳簿の自己資本の半分で、中立の稼ぎと配当だけで元は取れる。悲観の筋書きでは在庫を処分した後の資産しか残らない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「長く持ちたい事業」には入りにくい。理由は値決め力が無いことだ。仕入れも売りも相場で決まり、会社の努力は台数と回転の速さにしか出ない。そうした商売では、良い年の利益が続く保証が無い。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、見かけの純利益より少ない。台数を増やせば在庫と借金がふくらみ、現金は在庫に吸われるからだ。過去 10 年で自己資本は増えたが、ROE は資本コストに届かない年が多かった。
安全域で見ると、今の値段は帳簿の自己資本の半分ほどだ。これは割安に見えるが、ROE が資本コストを下回る会社の帳簿は、そのまま価値にならない。悲観の筋書きでは在庫を投げ売りし、残る資産は帳簿の 3 割ほどまで縮む。払う値段は本質価値をやや下回るが、事業の質を考えると安全域は薄い。わからない部分が多い事業には、高い値段は払えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は単純だ。日本の個人や業者から中古車を買い、船で海外へ送り、現地の販売業者に売る。差額から輸送費と人件費を引いた残りが利益になる。売上の 99.8% がこの自動車販売の事業で、ほかにブランド品の買い取りなどが少しある。
売り先の国が業績を決める。2025/12 期の売上 408 億円のうち、マレーシアの顧客が 183 億円、日本が 142 億円、タイが 69 億円だった。マレーシアは右ハンドルで日本車が好まれ、中古の輸入車に一定の需要がある。タイは以前の主力だったが、2025 年に中国製の EV が新車市場で急に増え、日本の中古車が売れにくくなった。
仕入れの網も持つ。子会社のアップルオートネットワークは買取店のフランチャイズを運営し、加盟店からロイヤリティを受け取る。加盟店が買った車の一部は会社の輸出に回る。タイでは中古車のオートオークションを運営する会社に出資し、持分法の利益を得ている。現地の相場を肌で知り、売り先を広げる足場になっている。
借金は在庫を抱えるためのものだ。船に積むまでの車を資金で支えるので、純有利子負債は 36 億円ある。台数が増えるほど在庫と借金がふくらむ商売の形をしている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。中古車の輸出は参入が簡単で、日本には数千の輸出業者がいる。国内の買い取りでは大手の買取チェーンと値段で競う。会社の強みは、マレーシアとタイで長く築いた売り先の関係と、タイのオークションへの出資にとどまる。
利益の質も低い。過去 10 年の営業利益率は 1〜5% の間を上下し、決まった水準に落ち着かない。円安の年と輸出先の景気が良い年に利益が出て、逆の年には消える。ROE の中央値は 7% で、資本コストを下回る。
財務はそこそこ堅い。自己資本比率は 50% あり、借金は在庫の裏付けがある。過去には 2009〜2012 年に赤字が続き、2017 年には新株を出して資本を増やした。経営は危機を乗り越えてきたが、資本を使って高い利益を生む力は示せていない。
筆者がいちばん気にしているのは、会社の利益が自分の力より外の風で決まる点だ。為替と輸出先の政策という二つの風が止まれば、残る強みは多くない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の中古車輸出は伸びている。2025 年の輸出台数は約 149 万台で、前の年より 9% 増えた。日本の車は丁寧に使われて状態が良く、右ハンドルの国やアフリカで人気が高い。円安も追い風で、日本で仕入れた車が海外で割安に見える。
ただし伸びの中身は国ごとにまるで違う。マレーシアは中古の輸入車に枠を設けつつ、日本車への信頼が厚い。タイは 2025 年に中国製 EV が値下げで新車市場を押さえ、中古の日本車の値段が崩れた。東南アジアの各国は EV の普及を後押ししており、ガソリン車の中古への需要は長い目で見て細る方向にある。
競争の構図も厳しい。国内の仕入れでは、大手の買取チェーンやオークション会社が値段を競り上げる。輸出では中小の業者が無数にいて、相場が少し良くなるとすぐに参入が増える。誰もが同じ車を同じ港から送れるので、利ざやは長く厚くならない。
筆者は、この業界の 10 年を「量は保てても、利ざやは薄いまま」と見る。日本車への信頼はすぐには消えないが、EV への移り変わりは国ごとに時間差で進む。会社がどの国に軸足を置くかで、業績の振れは大きく変わる。アフリカは量の伸びしろが大きいが、代金の回収と輸送の手間が重い。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は期末の 1 回で、2026/12 期は好調を受けて予定を引き上げた。それでも利益の 4 分の 1 ほどにとどまる。自社株買いの実績は乏しい。
資本の使い道は在庫と、タイのオークションへの出資が中心だった。大きな買収で価値を壊した例は無いが、利益を高い率で再投資できる先も持たない。2025 年は投資有価証券を売って利益を上乗せした。
時価総額は小さく、買収の候補になりうる。ただ、国内の大手から見て欲しい資産は売り先の網くらいで、高い値段が付く理由は少ない。
筆者は、資本の使い方を変える材料が出るまで、還元の大きな改善は見込まない。配当の増額は利益の好調に合わせた一時のものと見るのが自然だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
日本の中古車への信頼は、10 年で消えるものではない。日本の車は走行距離が短く、整備の記録も残っている。マレーシアをはじめ右ハンドルの国では、今も中古の日本車が庶民の足だ。中国製の EV は新車の話で、中古車を買う層とは財布の大きさが違う。
会社には足場がある。タイのオートオークションに出資し、現地の相場と業者を直接知っている。国内では買取店のフランチャイズを持ち、仕入れの量を確保できる。2026 年の上方修正は、タイの不振の後でもマレーシアと円安で利益を戻せることを示した。
財務にも余裕がある。自己資本比率は 50% で、借金は売れる在庫の裏付けがある。今の値段は帳簿の自己資本の半分ほどで、中立の利益でも配当と合わせて 10 年で今の値段を十分に超える。アフリカや中東など新しい売り先を開ければ、台数はさらに伸びる。円安が続くかぎり、日本で仕入れて海外で売る商売の土台は揺るがない。
今の値段はその可能性をほとんど織り込んでいない。
慎重な見方
2025 年の減益は一時の出来事ではない。タイで起きたのは、中国製 EV が新車の値段を下げ、中古のガソリン車の相場ごと崩した現象だ。同じことはマレーシアやインドネシアでも起こりうる。各国の政府は EV の普及を後押ししており、流れは一方向だ。
利ざやの薄さも変わらない。国内の仕入れでは大手の買取チェーンが値段を競り上げ、輸出では無数の業者が同じ車を同じ港から送る。営業利益率が 3% を超えた年は少なく、利益の多くは円安の追い風だった。円安が止まれば、その分はすぐ消える。
ROE は資本コストに届かない年が多い。利益をためても株主の価値は増えず、在庫と借金がふくらむだけだ。帳簿の自己資本は在庫と売掛金が中心で、商売が細れば投げ売りで目減りする。PBR が低いのは割安だからではなく、資本の稼ぐ力が低いからだ。
しかも小さな会社で、一つの国の政策の変更が全社の利益を左右する。売り先を広げる余力も限られ、アフリカは代金の回収と輸送の手間が重い。強みと呼べる資産は乏しく、守りの手は少ない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方がやや強い。日本車への信頼という強気の根拠は本物だが、それは業界全体の話で、この会社だけの強みではない。利ざやを決めるのは相場で、会社の力ではない。確率は中立を中心に置き、やや悲観と悲観に楽観側より厚い重みを置いた。ただ、今の値段は帳簿の半分で、悲観が続かなければ配当と合わせて元は取れる。結論はやや割安の側だが、それは事業の強さでなく値段の低さから来ている。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,091 円141 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 182 円24 億円)。 今の値に割り戻すと 591 円76 億円、今との差 +53.2%、 期待の年率 +12.7%(資本コスト 8.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,269 円293 億円 | 364 円47 億円 | +582.0% | +21.2% | 211 円27 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,589 円205 億円 | 262 円34 億円 | +379.7% | +17.0% | 370 円48 億円 |
| 中立 | 37% | 1,156 円149 億円 | 188 円24 億円 | +248.1% | +13.3% | 497 円64 億円 |
| やや悲観 | 22% | 609 円79 億円 | 113 円15 億円 | +87.0% | +6.5% | 159 円21 億円 |
| 悲観 | 13% | 231 円30 億円 | 46 円6 億円 | −28.0% | −3.2% | 36 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,091 円141 億円 | 182 円24 億円 | +229.8% | +12.7% | 1,273 円165 億円 |
今の株価時価総額 386 円50 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 東南アジアとアフリカで日本車の需要が続く 利益 23 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,269 円293 億円
マレーシアは中古の日本車を好む国であり続け、輸入の枠も緩む。タイでは中国製の EV が値下げ競争で疲れ、ガソリン車とハイブリッド車の中古に需要が戻る。会社は出資するタイのオートオークションを足場に、現地で売り先を増やす。アフリカや中東にも売り先を広げ、台数は 3 割増える。円安が続き、日本で仕入れた車が海外で割安に見える状態も続く。粗利は厚くなり、営業利益率は 3.5% と過去の良い年並みに戻る。借金は在庫の分だけで、利払いは増えても吸収できる。配当は増え、10 年で純利益の 3 割を株主に戻す。
- 中古車の買取・輸出・国内販売:数量 52,000(販売台数(台・年、推定。輸出と国内の業者向けの合計))× 価格 143(1 台あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 743 億円・営業利益 26 億円。5.2 万台 × 1 台 142.8 万円(今の 1.40 倍)、営業利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.53 倍、時価総額 293 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:タイの EV への移り変わりが止まり、マレーシアに加えてアフリカ・中東の新しい市場まで取る筋書き。小さな会社が複数の国で同時に勝つ形で、確度は低い。
やや楽観 20% マレーシアが支え、タイも持ち直す 利益 17 億円 · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 1,589 円205 億円
マレーシア向けは安定して伸び、タイも EV への移り変わりが緩やかになって日本車の中古が一定の量を保つ。会社は買い取りの網を広げ、輸出の台数は 15% ほど増える。1 台あたりの売上は物価に少し勝つ。日本の車の値段が上がり、輸出先でも高い車が売れるからだ。営業利益率は 3% に戻る。中国製 EV が東南アジアで広がる流れは止まらないが、新車の EV と中古の日本車は客層が違い、すみ分けが進む。借金は在庫の分だけで、配当は利益に合わせて少しずつ増える。ROE は資本コストをわずかに上回り、ためた利益がようやく株主の価値になり始める。
- 中古車の買取・輸出・国内販売:数量 46,000(販売台数(台・年、推定。輸出と国内の業者向けの合計))× 価格 139(1 台あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 638 億円・営業利益 19 億円。4.6 万台 × 1 台 138.7 万円(今の 1.36 倍)、営業利益率 3%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.6 倍。全体の PER 11.62 倍、時価総額 200 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年の上方修正のように、輸出の好調と円安が数年続く形。過去にも 2015 年・2022 年に利益率 5% 前後の年があり、無理のない上振れ。
中立 37% 台数は横ばい、薄い利ざやのまま 利益 12 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,156 円149 億円
10 年後も台数は今とほぼ同じ 4 万台にとどまる。マレーシア向けは堅いが、タイでは中国製 EV が新車市場で場所を取り、日本の中古車の出番は細る。その分をアフリカや国内の業者向けで埋める。1 台あたりの売上は物価並みに上がる。営業利益率は 2.4% と過去の真ん中に戻る。買い取りの値段は国内の大手と競り合って決まり、売り値は輸出先の相場で決まるので、利ざやは厚くならない。借り換えの金利が上がり、在庫の借金の利払いは 1 億円ほど増える。配当は利益の 4 分の 1 前後を続ける。ROE は資本コストに届かず、ためた利益は額面ほどの値打ちを持たない。
- 中古車の買取・輸出・国内販売:数量 40,000(販売台数(台・年、推定。輸出と国内の業者向けの合計))× 価格 137(1 台あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 547 億円・営業利益 13 億円。4 万台 × 1 台 136.7 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 2.4%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 131 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:マレーシアの強さとタイの弱さが打ち消し合う形を中心に置いた。過去 10 年の営業利益率の中ほど(2〜3%)に戻るのが最もありそうだ。
やや悲観 22% タイに続きマレーシアでも EV が広がる 利益 5 億円 · PER 8.7 倍 · 株価時価総額 609 円79 億円
中国製 EV の安売りがマレーシアにも広がり、中古の日本車の需要が細る。台数は 2 割減る。1 台あたりの売上も物価に負ける。ガソリン車の中古の相場が海外で下がるからだ。営業利益率は 1.6% に落ちる。国内の買い取りでは大手が価格で攻め、仕入れの値段が上がる。会社は輸出先を広げようとするが、アフリカは代金の回収と輸送の手間が重く、利ざやは取れない。借金は在庫を減らして返し、配当は細るが続く。ROE は資本コストの半分ほどにとどまり、ためた利益は帳簿ほどの値打ちを持たない。株主に残るのは配当と、縮んだ事業の稼ぐ力だけだ。
- 中古車の買取・輸出・国内販売:数量 32,000(販売台数(台・年、推定。輸出と国内の業者向けの合計))× 価格 130(1 台あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 416 億円・営業利益 7 億円。3.2 万台 × 1 台 130 万円(今の 1.27 倍)、営業利益率 1.6%
倍率:事業の ROE 3.5% が k 8.75% を大きく下回るので PER は 1÷k の 10.8 倍まで。稼ぐ力(純利益÷k)を上限に、その 8 割の 8.7 倍。
確率:2025 年にタイで起きたことが他の国に広がる懸念は現実的だ。中国製 EV の値下げは続いており、慎重な見方にも十分な重みを置いた。
悲観 13% 輸出の商売が成り立たなくなる 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 231 円30 億円
東南アジアの主な国で EV が新車の主流になり、中古のガソリン車の需要が落ちる。輸入の規制も強まる。台数は今の半分ほどに減り、1 台あたりの売上も物価に大きく負ける。営業利益はほぼゼロになり、在庫の借金の利払いで最終損益は赤字に近い。会社は在庫を減らして借金を返し、規模を縮める。タイのオークションの持分も値打ちが下がる。株主に残るのは、在庫・売掛金・出資を処分して借金を返した後の正味の資産だけになる。配当は最初の数年で止まる。タイのオークションへの出資は残るが、買い手は限られ、売れても帳簿の値を大きく割る。
- 中古車の買取・輸出・国内販売:数量 22,000(販売台数(台・年、推定。輸出と国内の業者向けの合計))× 価格 120(1 台あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 264 億円・営業利益 1 億円。2.2 万台 × 1 台 120 万円(今の 1.18 倍)、営業利益率 0.3%
倍率:赤字に近いので PBR で。事業の稼ぐ力は残らず、今の自己資本 103 億円のうち在庫・売掛金・出資を処分して残る分(約 3 割)を床に置いた。EV÷営業利益は営業利益がほぼ 0 のため意味を持たず、資産の床で見た。
確率:EV への移り変わりが東南アジア全体で一気に進み、日本の中古車の輸出が構造的に細る筋書き。2025 年の急な減益を見ると、無視できない重みがある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
中古車の買取・輸出・国内販売
国内で買い取った中古車を、マレーシア・タイなどへ輸出し、残りは国内のオークションや業者に売る。タイのオートオークション会社への出資と、買取店のフランチャイズのロイヤリティも含む。
| 数量販売台数(台・年、推定。輸出と国内の業者向けの合計) | 価格1 台あたりの平均売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 40,000 | 102 | 408 | 6 |
| 10 年後 中立 | 40,000 | 137 | 547 | 13 |
取り方:台数の開示は無いので推定。2025/12 期の売上 408 億円を、輸出向けの中心価格帯から 1 台あたり平均 102 万円とみて約 4 万台と置いた。顧客の所在地別ではマレーシア 183 億・日本 142 億・タイ 69 億。台数は実質、物価は 1 台あたりの売上に入れる。
リスクと懸念
東南アジアの EV への移り変わり
2025 年のタイでは、中国製 EV の値下げで新車の市場が変わり、中古の日本車が売れにくくなった。マレーシアやインドネシアでも同じ流れが起きれば、主力の輸出先がまとめて細る。各国の EV の補助金や輸入の規制の動きが、台数と相場を直接動かす。
為替の振れ
円安は日本で仕入れた車を海外で割安に見せ、利ざやを広げてきた。円高に振れると、輸出先での値段が上がって売れにくくなるか、利ざやが削られる。利益の厚い年の多くは円安の年で、為替が戻れば利益も戻る。
国内の仕入れの競争
国内の中古車の買い取りでは、大手の買取チェーンやオークション会社が値段を競う。仕入れの値段が上がっても、輸出先の売り値は相場で決まるので、上がった分を転嫁できない。利ざやはさらに薄くなる。
在庫と借金
船に積むまでの車を借金で抱える商売なので、相場が急に下がると在庫の評価損が出る。借り換えの金利が上がれば利払いも増える。台数を増やすほど在庫と借金がふくらみ、景気の谷で一度に傷が出やすい。
輸出先の規制
マレーシアなどは中古の輸入車に許可の枠や年式の制限を設けている。枠の縮小や関税の引き上げがあれば、その国向けの台数がすぐに減る。売り先が少数の国に偏っているので、一つの国の規制の変更が業績を大きく揺らす。
今後の分かれ目
- マレーシアでも中国製 EV が新車の 2 割を超えたら
- タイと同じ相場崩れが主力の国で起きる兆しとみて、やや悲観と悲観に重みを移す。
- 円高が 1 割以上進んだら
- 輸出の利ざやが削られるので、中立の利益率を下げる方向で見直す。
- アフリカや中東向けの売上が全体の 2 割を超えたら
- 売り先が分散し、東南アジアの EV の影響が和らぐとみて、やや楽観の重みを上げる。
- 営業利益率 3% 超が 3 年続いたら
- 利ざやの構造が変わった証拠として、中立の利益率と倍率を上げて見直す。
- 在庫の評価損が出たら
- 相場の下落が深いとみて、悲観側の床の資産の見積もりを下げる。
見ておくもの
- 国別の売上(マレーシア・タイ・日本)の推移
- 日本の中古車輸出台数(財務省の貿易統計)
- 東南アジア各国の EV の新車比率
- 在庫と純有利子負債の増減
- 為替(円ドル)
倍率と資本コストの決め方
倍率は市場の値付けから置かず、事業の ROE と資本コスト 8.75% から決めた。中立は ROE が k を下回るので PER の上限は 1÷k で、輸出先の振れを見てその 7.5 割にした。悲観は赤字に近く、今の自己資本のうち在庫・売掛金・出資を処分して残る分を床にした。今の PBR 0.5 倍前後は割安の根拠にしていない。新リース会計の影響は小さい(店舗をほとんど持たない)。中立は今の時価総額の 2 倍弱に出るが、これは ROE を高く見たからでなく、今の値段が帳簿の半分しかないためだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.22→12.53 倍・やや楽観 PER 8.65→11.62 倍・中立 PER 8.11→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。