結論
藤井産業は、栃木県宇都宮市に本社を置く電設資材・建設資材・産業機器の専門商社だ。物を売るだけでなく、電気・空調・建築・設備の工事まで自社で請け負う。筆者の結論は、今の値段は割安寄りというものだ。時価総額の3分の2にあたる純現金を抱えながら、PERは7倍前後に置かれている。
稼ぎの源は、北関東の電気工事店・ゼネコン・工場との取引だ。2026年3月期は売上1,059億円、営業利益62億円で、営業利益率5.9%は過去12年で最も高い。受変電設備の改修、蛍光管の製造中止に伴うLED化の駆け込み、大型の外壁工事が追い風になった。会社は今期、営業利益53億円と減益を見込む。追い風が一服する姿だ。
10年の中立では、人口減で需要は実質やや縮み、値上がり分で売上が膨らむとみる。営業利益は75億円前後、利益率は5%台半ばにとどまる。卸は地域で競争が激しく、利益率が上がりにくい。それでも借金に頼らない財務が下支えになり、PERは10倍弱が妥当と考える。
分かれ目は二つある。首都圏への進出とM&Aが実るか。そして、ためた現金を株主に返すのか、割高な買収で使ってしまうのか。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を一言でいえば「地味だが、潰れにくい商売」だ。電気、建築、設備という生活と産業の土台に部材を納め、工事で顧客を囲う。事業の存続は10年先も疑わない。
一方で、儲けの質は高くない。営業利益率は5%台で、堀といえるほどの値決め力はない。オーナーとして持ちたい会社かといえば、利益率の上振れを期待する会社ではなく、財務の安全域を買う会社だ。
資本の使い方は評価が割れる。配当を4期続けて増やし、借金も持たない。反面、約221億円の現金と自己資本の厚みに対して、還元は純利益の3割弱にとどまる。余った資金が低い利回りで積み上がれば、ROEは9%から8%台へ下がる。この点が、筆者がいちばん気にしている点だ。
それでも、今の値段は時価総額の3分の2を現金が占め、事業の評価はごく小さい。安全域は十分にある。ただし、ためた現金が割高な買収に消えるなら、この安全域は崩れる。
払う値段に見合うかを考えるなら、見るべきは成長ではなく、現金の使い道と配当の方針だ。
何で稼ぐ会社か
藤井産業は1955年に宇都宮で生まれた。本業は卸売だが、施工までこなす点が特徴だ。2026年3月期の売上1,059億円の内訳は、マテリアルイノベーションズ(MI)が約594億円、インフラソリューションズ(IS)が約385億円、コマツ栃木が約65億円、その他が約15億円である。
MIは電設資材、情報機器、建設資材、コンクリート圧送から成る。電設資材は照明・電線・受配電盤・空調機器などで、売り先は電気工事店やゼネコン、工務店だ。建設資材はALC(軽量気泡コンクリート)や外壁材、屋根材、杭を扱い、施工も担う。仕入先ではパナソニックが全体の約1割を占める。
ISは工場向けの事業を束ねる。制御機器や産業用ロボット、工作機械を売り、制御盤の設計製作や保守も請ける。建物の設計施工と改修を行う総合建築、空調・給排水・クリーンルームなどの設備プラント、産業用太陽光の環境エネルギーもここに入る。
コマツ栃木は持株60%の子会社で、建設機械の販売・整備・賃貸を行う。その他には、路面切削、測量機器、メガソーラーによる発電がある。
2026年10月、会社は持株会社体制に移り、社名を藤井産業ホールディングスに改めた。事業ごとの責任を明確にし、首都圏への展開とM&Aを進める体制づくりだ。中長期の目標は売上1,000億円と経常利益率5%超で、2026年3月期にどちらも超えた。
優良さと弱いところ
堀は広くない。ただ、地域に根を張った商社としての強みはある。
第一に、顧客との距離だ。電気工事店が急ぎの部材を求めるとき、在庫と配送で応えられるかが商売の核になる。栃木を中心とする拠点網と、工事まで自社でこなす力が、この信頼を支える。
第二に、工事を抱えるため、右から左へ流すだけの卸より中抜きされにくい。制御盤の製作や設備の保守は、会社が重視するストック型の仕事でもある。
第三に、財務が堅い。自己資本比率は約6割、現金は約221億円で、利払いに追われる場面はない。
弱みは三つある。まず値決めの力が弱い。次に、仕入先の大手が価格を握り、パナソニックとの販売代理店契約が揺らげば事業に響く。そして営業利益率が5%台と薄く、人件費や物流費の上昇で削られやすい。
株主構成も見ておきたい。社長が筆頭株主で11%台を持ち、関係する持株会社と取引先持株会を合わせると3割を超える。経営は安定するが、少数株主が資本効率の改善を迫る力は働きにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電設資材の流通は、メーカー、商社・卸、電気工事店の三段階で成り立つ。電設業界全体の市場規模は約5兆円とされ、全国展開の大手として因幡電機産業や渡辺パイプが挙がる。藤井産業は、栃木を中心とする地域密着の中堅だ。
需要は二つに分かれる。新築は人口減で細る。一方、改修と更新は底堅い。省エネ法の変圧器の基準に伴う受変電設備の入れ替え、蛍光管の製造中止によるLED化は、2026年3月期に利益を押し上げた。ただ、どちらも期間限定の需要だ。会社が今期に減益を見込むのは、この山を越えるからだろう。
建設の側では、国土交通省が2025年度の建設投資を75兆円台と見込む。物価上昇で金額は保たれるが、工事量は職人不足が上限を決める。工場や物流施設の更新、設備の自動化投資は、産業機器と設備工事に追い風だ。
業界の構造として、中抜き圧力はつねにある。メーカー直販やネット通販が、汎用品から侵食する。生き残るのは、在庫、配送、技術提案、工事までを一体で出せる卸だ。
再編も進む。M&A仲介の案件には、後継者不在の地場の電材卸が数多く並ぶ。買い手にとっては商圏を買える好機だが、値段次第では資本を傷める。建材卸の利益率は1割前後の粗利から出るため、1%の差が営業利益を大きく動かす。
景気の循環でいえば、今は利益率が過去の山にある。リーマン期の新設住宅着工は約3割落ちた。同じ強さの不況が来れば、売上が2〜3割減る前提で見るべきだ。
資本政策と M&A
還元は、安定配当を基本とする。年間配当は4期続けて増え、2022年3月期から2026年3月期までの4年で約3倍になった。純利益に対する比率は約28%で、現金の厚さから見れば控えめだ。2027年3月期の予想は、前期と同額で据え置かれる。
自社株買いは、直近では確認できない。発行株式の約15%は自己株式として会社が持つ。
政策保有株は、上場22銘柄で約14億円、時価総額の4%にとどまる。当期に一部を売却しており、整理は進んでいる。
M&Aの実績は小さい。2019年に路面切削の日本切削工業を子会社化した程度だ。今後は首都圏でのシェア拡大とM&Aを重点戦略に掲げ、2026年10月の持株会社化はその受け皿になる。
資本政策の論点は、約221億円の現金だ。ただ、その大半は仕入先への支払いを待つ預かり金に近く、自由に使える余剰とは言いにくい。買収に回すなら、買う値段の規律が価値を左右する。
TOBの可能性は否定できない。社長ら3割超の安定株主がいるため、友好的な再編なら成立しやすい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026年3月期は営業利益率5.9%と過去最高で、会社の目標である売上1,000億円と経常利益率5%超を、早くも超えた。受変電設備の改修やLED化は終わる需要だが、その先に工場や物流施設の更新、産業機器の自動化、老朽ビルの改修という、息の長い需要が控える。
会社は持株会社に移り、首都圏でのシェア拡大とM&Aを前に出した。地場の電材卸には後継者不在の案件が多く、商圏と顧客をまとめて買える。221億円の現金と6割の自己資本比率は、買収を続けても財務が傷まない余力だ。工事まで一体で出せる藤井産業が買い手になれば、買った先の売上にも工事や保守を乗せられる。
配当は4期続けて増え、方針は安定配当だ。純利益の3割弱という配当性向には、まだ引き上げる余地がある。利益が伸び、還元が厚くなれば、時価総額の3分の2を占める現金が株主に回る。
コマツ栃木や太陽光発電のように、利益率が高く安定した部分もある。全社の利益率が6%台に乗れば、PERの評価も上がる。
慎重な見方
今期の営業利益は53億円と、14%の減益予想だ。追い風の需要が剥がれるだけで、利益は簡単に減る。2026年3月期の利益率は、過去12年の山にある。山の利益率を前提に10年を考えるのは危うい。
北関東の新築は人口減で細る。改修と更新は一時の需要で、毎年は続かない。職人不足で工事そのものが受けられなくなれば、施工を抱える強みも売上の天井に変わる。
仕入先のパナソニックは売上の約1割を占め、代理店契約が見直されれば痛手になる。メーカーの直販やネット通販は汎用品から広がり、地場の卸の取り分を削る。
約221億円の現金も、実体は仕入債務を待つ預かり金に近い。余剰とは呼べない。首都圏のM&Aは、高い値段で地場の卸を買い、統合に失敗すれば資本を傷める。社長ら3割超の安定株主がいて、資本効率の改善を迫られる圧力も弱い。
配当性向が3割弱にとどまる限り、ためた利益はROE 8%台の低い利回りで眠り続ける。
加えて、中立で物価分の値上げがすべて通るとは限らない。仕入先の値上げを売値に乗せられない局面では、粗利の率が崩れる。卸の利益率の薄さは、こうした小さな誤差に弱い。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも根拠がある。ただ、薄い利益率と地域の競争は変わらず、利益率の山を前提にした強気は取りにくい。一方で、潰れにくさと現金の厚みは慎重な見方でも否定できない。
そこで確率は中立に厚く置き、下振れ側も楽観側より厚くした。ただし事業が壊れる悲観は1割に満たない。評価の差は、現金の使い道で最も大きく開く。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 11,651 円985 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,125 円180 億円)。 今の値に割り戻すと 7,284 円616 億円、今との差 +80.3%、 期待の年率 +13.1%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 19,181 円1,622 億円 | 2,862 円242 億円 | +445.6% | +18.5% | 2,204 円186 億円 |
| やや楽観 | 22% | 15,645 円1,323 億円 | 2,377 円201 億円 | +346.1% | +16.1% | 3,965 円335 億円 |
| 中立 | 38% | 13,196 円1,116 億円 | 2,152 円182 億円 | +279.9% | +14.3% | 5,832 円493 億円 |
| やや悲観 | 22% | 5,310 円449 億円 | 1,963 円166 億円 | +80.0% | +6.1% | 1,600 円135 億円 |
| 悲観 | 8% | 1,358 円115 億円 | 828 円70 億円 | −45.9% | −6.0% | 175 円15 億円 |
| 加重平均 | 100% | 11,651 円985 億円 | 2,125 円180 億円 | +241.0% | +13.1% | 13,776 円1,165 億円 |
今の株価時価総額 4,040 円342 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 首都圏への進出とM&Aが実り、利益率が6%台に乗る 利益 87 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 19,181 円1,622 億円
首都圏でのシェア拡大が当たる10年だ。後継者不在の地場の電材卸や設備工事会社を数社買い、持株会社の下で仕入と物流を束ねる。買った先にも工事と保守を乗せられるので、売上は1,700億円台に届く。工場や物流施設の更新、産業機器の自動化も続き、ISの利益率は6%台後半まで上がる。コマツ栃木の整備・賃貸も底堅い。買収の対価は手元の現金で賄えるため、財務は傷まない。配当は利益と一緒に増える。営業利益率は過去の山を超え、6%強に定着する。ただし、この上振れの多くは買収によるものだ。買った会社の統合が続き、のれんを減損しないことが条件になる。それでも、地場の卸を束ねた規模の経済が仕入の交渉力を高め、粗利の率を押し上げる筋書きは無理がない。
- マテリアルイノベーションズ(電設資材・情報・建設資材):数量 24,960(北関東・首都圏の電設資材・建設資材・情報機器の卸市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 3.8%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 955 億円・営業利益 60 億円。市場+4%・シェア拡大(首都圏、買収)
- インフラソリューションズ(産業システム・建築・設備):数量 20,160(北関東・首都圏の産業機器卸と設備・改修工事の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 3.2%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 654 億円・営業利益 43 億円。設備更新と自動化が続く
- コマツ栃木(建設機械の販売・整備・賃貸):数量 1,000(栃木県の建設機械の販売・整備・賃貸の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 9.0%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 90 億円・営業利益 9 億円。市場横ばい
- その他(路面切削・測量機器・発電):数量 15.2(栃木県の路面切削・測量機器・小規模発電の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 120.0%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(発電は固定価格))→ 売上 18 億円・営業利益 4 億円。発電は固定
倍率:事業の純利益 87 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.8 倍、時価総額 1,554 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率が過去の山を超え、さらに首都圏のM&Aも成功する必要がある。連続して当たる確度は高くなく、1割に置く。
やや楽観 22% 追い風が緩やかに続き、首都圏で小さな案件を積む 利益 72 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 15,645 円1,323 億円
追い風が緩やかに続く10年だ。受変電設備の改修やLED化の山は過ぎるが、工場や物流施設の更新、老朽ビルの改修、産業機器の自動化が次を支える。首都圏では小さな案件を積み、MIのシェアがわずかに上がる。人手不足で工事単価が上がり、物価に合わせた値上げも通るので、営業利益率は5%台後半に落ち着く。コマツ栃木は横ばい、発電は固定価格のままだ。配当は純利益の3割台半ばを保ち、現金は静かに積み上がる。派手な拡大はないが、過去数年の水準を保てる、地道な10年になる。会社が掲げる首都圏のシェア拡大は、大きな買収ではなく、取引先の紹介と小さな統合で進む。
- マテリアルイノベーションズ(電設資材・情報・建設資材):数量 24,000(北関東・首都圏の電設資材・建設資材・情報機器の卸市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 3.5%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 848 億円・営業利益 50 億円。市場横ばい・首都圏で小幅に拡大
- インフラソリューションズ(産業システム・建築・設備):数量 19,080(北関東・首都圏の産業機器卸と設備・改修工事の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 3.0%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 577 億円・営業利益 35 億円。更新需要が続く
- コマツ栃木(建設機械の販売・整備・賃貸):数量 980(栃木県の建設機械の販売・整備・賃貸の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 8.8%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 87 億円・営業利益 8 億円。市場ほぼ横ばい
- その他(路面切削・測量機器・発電):数量 15.2(栃木県の路面切削・測量機器・小規模発電の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 117.0%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(発電は固定価格))→ 売上 18 億円・営業利益 3 億円。発電は固定
倍率:事業の純利益 72 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.17 倍、時価総額 1,234 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改修・更新需要が続き、値上げも通る程度の筋書き。十分ありうるが、利益率の山を前提にするため2割強にとどめた。
中立 38% 人口減で数量は縮むが、値上がりと更新需要で利益は微増 利益 61 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 13,196 円1,116 億円
人口減で数量はゆっくり縮み、値上がりがそれを補う10年だ。栃木と北関東の新築は減る。ただし、改修と工場・設備の更新が下支えし、MIの市場は実質で4%縮むにとどまる。ISは横ばい、コマツ栃木は新車の落ち込みが続き5%縮む。物価は10年で1.34倍になり、仕入と販売の両方が上がるので、粗利の率は大きく動かない。本社費や人件費も同じ率で増えるため、営業利益率は5%台半ばで、過去の山の少し下だ。会社は配当を3割台半ばに保ち、残りの現金は2%の利回りで積み上がる。2036年3月期の売上は1,400億円弱、営業利益は75億円前後になる。
- マテリアルイノベーションズ(電設資材・情報・建設資材):数量 23,040(北関東・首都圏の電設資材・建設資材・情報機器の卸市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 3.4%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 779 億円・営業利益 43 億円。市場-4%・シェア微増
- インフラソリューションズ(産業システム・建築・設備):数量 18,000(北関東・首都圏の産業機器卸と設備・改修工事の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 2.9%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 515 億円・営業利益 29 億円。市場横ばい
- コマツ栃木(建設機械の販売・整備・賃貸):数量 950(栃木県の建設機械の販売・整備・賃貸の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 8.7%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 83 億円・営業利益 7 億円。市場-5%
- その他(路面切削・測量機器・発電):数量 15.2(栃木県の路面切削・測量機器・小規模発電の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 115.0%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(発電は固定価格))→ 売上 18 億円・営業利益 3 億円。発電は固定価格
倍率:事業の純利益 61 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍。全体の PER 16.61 倍、時価総額 1,016 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの建材卸の中立(数量は年-1〜0%、価格は+1〜2%)を、北関東の地盤と施工を持つ強みで少し上に置いた中心の筋書き。
やや悲観 22% 新築の減少と中抜きで、利益率が4%台へ戻る 利益 43 億円 · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 5,310 円449 億円
新築の減少と中抜きが、10年かけてじわじわ効く10年だ。北関東の住宅と小規模建築が減り、MIの市場は実質で1割縮む。メーカー直販やネット通販が汎用の電材から広がり、地場の卸のシェアも下がる。ISも設備更新が先送りされ、コマツ栃木は新車販売の落ち込みが続く。価格は物価ほど上がらず、人件費や物流費の増加を転嫁しきれない。営業利益率は4%台に戻り、2026年3月期の山は一過性だったとわかる。配当は減らさないよう努めるが、利益が細るため配当性向は4割に上がる。現金の積み上がりも鈍り、ROEは資本コストを下回る。優良な商社と呼ぶには苦しいが、事業が壊れたわけではない。
- マテリアルイノベーションズ(電設資材・情報・建設資材):数量 21,600(北関東・首都圏の電設資材・建設資材・情報機器の卸市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 3.1%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 674 億円・営業利益 31 億円。市場-10%・シェア低下
- インフラソリューションズ(産業システム・建築・設備):数量 16,740(北関東・首都圏の産業機器卸と設備・改修工事の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 2.7%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 446 億円・営業利益 21 億円。市場-7%
- コマツ栃木(建設機械の販売・整備・賃貸):数量 850(栃木県の建設機械の販売・整備・賃貸の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 8.0%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 68 億円・営業利益 5 億円。市場-15%
- その他(路面切削・測量機器・発電):数量 15.2(栃木県の路面切削・測量機器・小規模発電の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 110.0%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(発電は固定価格))→ 売上 17 億円・営業利益 3 億円。価格は微増
倍率:事業の純利益43億円・事業ROE 6.5%は k 以下なので、上限は1÷k=11.8倍。利益が谷に近い筋書きで谷の倍率を重ねないため、上限の約7割の8.3倍に置いた。
確率:新築の減少と中抜きは10年かけて効く。利益率が山から過去の平均に戻るだけでも起こりうるので、楽観側と同じ厚みに置く。
悲観 8% メーカー直販と代理店契約の見直しで、地場の卸が痩せる 利益 16 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 1,358 円115 億円
構造的に負ける10年だ。メーカーが直販とネット販売を広げ、パナソニックなどとの代理店契約も条件が厳しくなる。地場の卸は商流から外され、MI・ISの数量は2割強減る。値下げ競争で売値は物価に追いつかず、営業利益率は2〜3%に落ちる。さらに、首都圏のM&Aで割高な買収をして現金を使い、統合に失敗する。のれんの減損も出る。コマツ栃木も市場が縮み、発電は固定価格の期間が終わって収益が細る。配当は利益の大幅減に合わせて減らさざるをえず、経営は資本を守る方向に動く。人員の削減や拠点の統廃合も進むが、賃金と物流費の物価上昇に追いつかない。優良な商社ではなく、薄利の地場卸として評価される姿だ。それでも借金はなく、清算に近い価値は残る。
- マテリアルイノベーションズ(電設資材・情報・建設資材):数量 18,720(北関東・首都圏の電設資材・建設資材・情報機器の卸市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 2.5%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 469 億円・営業利益 13 億円。市場-22%・シェア大幅低下
- インフラソリューションズ(産業システム・建築・設備):数量 14,040(北関東・首都圏の産業機器卸と設備・改修工事の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 2.2%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 304 億円・営業利益 9 億円。市場-22%・値下げ
- コマツ栃木(建設機械の販売・整備・賃貸):数量 700(栃木県の建設機械の販売・整備・賃貸の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 6.7%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 47 億円・営業利益 2 億円。市場-30%
- その他(路面切削・測量機器・発電):数量 13.7(栃木県の路面切削・測量機器・小規模発電の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 100.0%(実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(発電は固定価格))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。発電の更新が遅れる
倍率:事業の純利益16億円・事業ROE 2.6%は k 以下で、上限は1÷k=11.8倍。構造的な負け筋で新しい投資の稼ぎが資本コストを大きく下回るため、上限の約6割の7.0倍に置いた。
確率:代理店契約の見直しやメーカー直販の拡大、買収の失敗が重なる構造的な負け。無借金で現金が厚く、8%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
マテリアルイノベーションズ(電設資材・情報・建設資材)
電気工事店・ゼネコン・工務店向けに、照明・電線・受配電盤・空調・外壁材・屋根材などを売り、付随する工事も請ける。
| 数量北関東・首都圏の電設資材・建設資材・情報機器の卸市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア | 価格実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 24,000 | 2.5% | 594 | 35 |
| 10 年後 中立 | 23,040 | 3.4% | 779 | 43 |
取り方:2026年3月期のMI売上は約594億円(有報の販売実績)。営業利益は、セグメント利益(経常ベース)38.4億円から営業外収益を按分して約35億円とした。対象市場は北関東と首都圏の電設資材・建設資材・情報機器の卸(推定2.4兆円。全国の電設業界約5兆円の約半分という仮置きで、根拠は弱い)で、シェアは約2.5%。
インフラソリューションズ(産業システム・建築・設備)
工場向けの制御機器・ロボット・工作機械の販売と制御盤の製作、建物の設計施工と改修、空調・給排水・プラントの設備工事。
| 数量北関東・首都圏の産業機器卸と設備・改修工事の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア | 価格実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18,000 | 2.1% | 385 | 22 |
| 10 年後 中立 | 18,000 | 2.9% | 515 | 29 |
取り方:2026年3月期のIS売上は約385億円。営業利益はセグメント利益24.3億円から営業外を按分して約22億円。対象市場は北関東と首都圏の産業機器卸と設備・改修工事(推定1.8兆円、根拠は弱い)で、シェアは約2.1%。
コマツ栃木(建設機械の販売・整備・賃貸)
持株60%の子会社。栃木県でコマツの建設機械を売り、整備し、貸す。
| 数量栃木県の建設機械の販売・整備・賃貸の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア | 価格実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 6.5% | 65 | 6 |
| 10 年後 中立 | 950 | 8.7% | 83 | 7 |
取り方:コマツ栃木の売上は64.9億円(前期比-7.3%)。営業利益はセグメント利益6.6億円から約5.9億円。栃木県のコマツ系建機の販売・整備・賃貸の市場を1,000億円と仮置きし、シェア約6.5%(推定、根拠は弱い)。
その他(路面切削・測量機器・発電)
路面切削工事、測量機器の販売修理、メガソーラーなどの再エネ発電。
| 数量栃木県の路面切削・測量機器・小規模発電の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア | 価格実質の市場1億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(発電は固定価格) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 5.1% | 15 | 3 |
| 10 年後 中立 | 15.2 | 115.0% | 18 | 3 |
取り方:栃木県の路面切削・測量機器・小規模発電の市場を約300億円と仮置きし、シェア約5%(推定、根拠は弱い)。2026年3月期の売上は15.2億円、営業利益は約3.2億円。発電の売電は固定価格で物価に連動しない。
リスクと懸念
利益率が過去の山にある
2026年3月期の営業利益率5.9%は過去12年で最も高い。受変電設備の改修やLED化の駆け込みという期間限定の需要が押し上げた面が強い。会社は今期、営業利益53億円と減益を見込む。山の利益率が定着するとは限らず、平均に戻るだけで利益は1〜2割減る。
仕入先への依存
パナソニックが仕入の約1割を占める。販売代理店契約の更新や条件の変更は、会社自身が経営成績に影響しうると記している。メーカーが直販やネット販売を広げれば、地場の卸は商流から外れやすい。
新築の減少と職人不足
北関東の住宅・小規模建築は人口減で減る。改修や更新は支えになるが、職人が足りなければ施工を受けられず、施工を抱える強みが売上の天井に変わる。リーマン期の新設住宅着工は約3割落ちた。
首都圏M&Aの実行
首都圏のシェア拡大とM&Aは重点戦略だ。実績は2019年の日本切削工業程度で、買収を重ねた経験は乏しい。後継者不在の卸は買いやすいが、値段が高ければ現金を傷める。
余剰資金の使い道
現金約221億円は、実体は仕入債務を待つ預かり金に近い。一方、還元は純利益の3割弱にとどまる。資本が低い利回りで積み上がるとROEが薄まる。社長ら安定株主が3割超を持ち、改善を迫る圧力は弱い。
株主構成と流動性
社長、関係する持株会社、取引先持株会で3割を超える。経営は安定するが、市場で売買できる株が少なく、時価総額は335億円と小さい。買い手がつかない局面では値段が実力を映さない。
今後の分かれ目
- 営業利益率が6%を超えて定着し、今期の減益予想が覆ったら
- 追い風が一過性でなかったことになる。楽観・やや楽観の確率を上げ、倍率の評価も引き上げる。
- 配当性向を4割以上に引き上げる、または自社株買いを始めたら
- 現金が株主に回る道ができ、ROEの薄まりが止まる。やや楽観寄りに確率を移す。
- 首都圏で複数の買収を現金で行い、利益率が下がったら
- 割高な買収で資本が傷む兆しとして、やや悲観側の確率を上げる。
- パナソニックとの代理店契約の条件が悪化したら
- 仕入と粗利に直結する。やや悲観・悲観側の確率を上げる。
- 新設住宅着工が大きく落ち込み、北関東の工事量が減ったら
- MIの数量が縮み、利益率も下がる。やや悲観側に重みを移す。
- 社長ら安定株主の持分が動く、または再編の提案が出たら
- TOBや株主構成の変化が起きうる。現金を含めた価値の再評価につながる。
見ておくもの
- 営業利益率とセグメント別の利益(今期の減益予想の中身)
- 配当性向と自社株買いの有無
- 首都圏での買収の件数と価格
- パナソニックなど主要仕入先との契約条件
- 北関東の新設住宅着工と工場・物流施設の更新投資
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROEが資本コストを下回る中立では上限1÷k、下回らない楽観側では式で出した正当化PERの約8割に置いた。今のPER 7倍やPBR 0.8倍は根拠に使っていない。現金は余剰と見ず、事業の純利益に含めて評価した。リースは店舗を借りる事業ではないため影響は小さい。新リース会計基準で営業利益と純負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→17.8 倍・やや楽観 PER 10.8→17.17 倍・中立 PER 10→16.61 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した(決まりv2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.25%。