結論
ハピネットは、玩具・ゲーム・映像ソフトの卸で、最近はカプセルトイの店も営む。筆頭株主はバンダイナムコだ。作る側ではなく運ぶ側だから、利益率は 3% 台と薄い。
筆者の結論は、今の値段は割高というものだ。本業は強い。2026 年 3 月期の営業利益は 156 億円と、前の期より 3 割増えた。ただ、その追い風には、トレカやくじのヒット、Switch 2 の発売年の特需という一時的な部分が多い。
追い風はさらに強まっている。2026 年 9 月、会社は今期の中間期の営業利益予想を 78 億円から 135 億円へ引き上げた。それでも、10 年の目で見ると、ヒットは続かない。
筆者が評価するのは、カプセルの専門店を自前で持ち、卸の薄い利ざやを補い始めた点だ。ここは成長の質が違う。ただ、全体では取引先のヒットに左右される構造は変わらない。
10 年後の営業利益は、中立で 260 億円ほどと見る。強気で 410 億円、慎重で 150 億円だ。今の時価総額は、強気の見方でも届きにくい水準にある。
純現金は 500 億円を超え、財務は安全だ。ただ、現金の使い道は、これからの評価を分ける。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業の本質は「ヒットの流通業」だ。作る側が当たれば運ぶ側も潤うが、当たらなければ薄利のままだ。10 年後も玩具は売れるし、ハピネットは存在する。ただ、今の利益の水準が続くとは言いにくい。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、今期は大きい。ただ、これは好況の利益だ。在庫と売掛金を抱える卸では、利益が増えるほど運転資金も要る。純利益のすべてが現金になるわけではない。
堀の見方は割れる。長い取引と配送網は確かに強みだ。ただ、取引先が中抜きに動けば崩れる弱さがある。カプセルの専門店は、堀になりうる芽だが、まだ実績は浅い。
資本の使い方には、期待と不安がある。配当性向 40% の目標は評価できる。一方、米国の出店や洋画の買付で、価値を壊さないか注意が要る。
最後に安全域を見る。今の値段は、ヒットが続くことを前提にしており、安全域が薄い。事業は悪くないが、値段が高い。これが筆者の見立てだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは 4 つの事業からなる。2026 年 3 月期は、玩具が売上 1,924 億円・利益 113 億円、ビデオゲームが 1,190 億円・22 億円、アミューズメントが 654 億円・52 億円、映像音楽が 622 億円・11 億円の赤字だった。
玩具では、バンダイなどのキャラクター玩具や、トレカ、コンビニで売る一番くじ、プラモデルを問屋として小売店に届ける。メーカーと小売店のあいだに入り、物流と代金回収の手間を引き受けて、手数料に近い利ざやを得る。
ビデオゲームは、ゲーム機とソフトの卸で、任天堂向けが事業の約 8 割を占める。2025 年 6 月の Switch 2 発売で売上は 5 割増えた。ただ、利益率は 2% に届かない薄さだ。
アミューズメントは、全国のショッピングモールなどで「ガシャココ」というカプセルトイの専門店を営む事業だ。2025 年末に 153 店で、2028 年 3 月期に 260 店(うち FC 100 店)を目指す。米国でもガシャポン専門店を始め、2026 年 3 月期末に 12 店とした。ここが利益率の高い、新しい柱である。
映像音楽は、DVD・ブルーレイ・CD の卸で、市場の縮小が続く。買い付けた洋画の失敗で赤字になった。
優良さと弱いところ
この会社の堀、つまり他社がまねしにくい強みは、バンダイをはじめとするメーカーとの長い取引にある。玩具の卸ではトップ級とみられ、2014 年の証券レポートは国内の玩具の卸でおよそ 3 割と推定した(古い資料)。店への配送網と、メーカーの在庫リスクを肩代わりする力が、取引を支える。
一方で、堀は深くない。バンダイが直販や自前の物流に傾けば、卸の取り分は削られる。筆頭株主のバンダイナムコは、持株比率が 26% あり、味方であると同時に、取引条件を決める側でもある。
利益率が薄いのも弱点だ。営業利益率は過去 10 年で 1〜3% 台、直近の 3.5% は好況による。ヒット商品に左右され、読みにくい。
資本の効率は上がった。ROE は 3 期で 12% から 17% へ上がった。ただ、その多くは、ヒットによる利益の上振れだ。
強みは、カプセルの専門店という売り場を持ったことだ。卸だけの会社には無い利益率で、ここが育てば質は変わる。ただ、まだ成長の途中で、確かな実績とは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
舞台は国内の玩具市場で、2024 年度は 1 兆 992 億円と、5 年連続で最高を更新した。伸びを引っ張ったのはカードゲームとトレカで、3,024 億円と市場の 27% を占める。2025 年度も 1 割ほど伸びる見込みだ。
子どもが減る国で、市場が伸びる理由は、大人の買い手が増えたことだ。一番くじ、ホビー、トレカ、推し活のグッズに、大人が財布を開く。ただ、この需要は景気や流行に左右され、10 年先まで伸び続けるとは言いにくい。
カプセルトイの市場も、2025 年度に約 1,960 億円と、前の年より 4 割近く伸びた。ここにはタカラトミーアーツなどの競合もいる。店が増えれば客の取り合いになり、過熱の反動が来る懸念もある。
ゲーム市場は、ゲーム機の世代交代で大きく振れる。Switch 2 は 2025 年 6 月に出て、会社のゲーム事業は 5 割増えた。次の谷は数年後に来る。ダウンロード販売が増え、パッケージの卸には逆風だ。
映像ソフトは、配信に押され、DVD・ブルーレイが縮み続けている。
卸全体の課題は、メーカーが直販や自前の物流を強めて、中抜きが進むことだ。
資本政策と M&A
還元は拡大の途上にある。第 10 次中期経営計画(2026 年 3 月期〜2028 年 3 月期)で、連結の配当性向 40% を掲げ、2026 年 1 月には 1 株を 2 株に分けた。自社株買いは目立たない。
資金の使い道は、運転資金に 300 億円、戦略投資に 190 億円を見込む。戦略投資の中身は、カプセル専門店の増設、米国展開、自社が企画するゲームやキャラクターの育成だ。
筆者がいちばん気にしているのは、純現金の 508 億円の使い道だ。買掛金が大きい卸だから、全部が自由なお金ではない。運転資金を引いても 200 億円ほど余る、と見る。ここを配当や自社株買いに回すのか、海外店に投じるのかで、評価は大きく変わる。
M&A は、これまで大きなものは少ない。ただ、映像の買付洋画では損失が出た。投資の規律が問われる場面だ。
筆頭株主のバンダイナムコが 26% を持つ。買収される確率は他社より高いが、少数株主に有利な値段が付くとは限らない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ハピネットは、玩具の卸で首位級にあり、その地位はヒットの時代にこそ強い。トレカ、くじ、ホビーは大人が買う市場で、子どもが減っても需要は落ちない。玩具市場は 5 年連続で最高を更新しており、その伸びは構造的だ。
カプセルの専門店は、利益率の高い新しい柱だ。2026 年 3 月期のアミューズメントは売上が 25% 増、利益が 72% 増えた。店は 153 店から 260 店へ増える計画で、米国でも店が根づき始めた。ここが育てば、卸の薄い利ざやだけの会社ではなくなる。
足もとの勢いも強い。2026 年 9 月に会社は、今期の中間期の営業利益予想を 78 億円から 135 億円へ引き上げた。通期の予想は 158 億円だが、中間だけで 135 億円を見込むなら、通期は大幅に上振れする可能性が高い。
財務も安全だ。純現金は 500 億円を超え、借金に頼らず投資できる。配当性向 40% の方針で、株主還元も厚くなる。金利が上がる世界では、現金の利息も利益を押し上げる。筆頭株主のバンダイナムコの後ろ盾は、商品の供給でも強みになる。
慎重な見方
今の利益は、ヒットが重なった特別な水準だ。営業利益は 3 年で 87 億円から 156 億円へ増えたが、その中身は、トレカとくじのヒット、Switch 2 の発売年の特需だ。どちらも、数年は続かない。
そもそも卸の利益率は 3% 台で、10 年で見れば 1〜3% 台に戻る性格だ。過去には営業利益が 26 億円まで落ちた年もある。今期の中間の予想 135 億円も、季節性とヒットの重なりによる一時的なものだ。
ゲームは任天堂向けが 8 割で、依存が高い。次世代機の谷が来れば、量は一気に減る。ダウンロード販売の増加は、パッケージの卸には逆風だ。映像音楽は赤字で、市場は縮み続ける。
カプセルの店は、急に増えた市場の過熱が懸念される。店が増えれば客の取り合いになり、米国の出店は赤字が続きやすい。メーカーが直販を強めれば、卸は中抜きされる。
そして、今の時価総額は、純利益の 25 倍近い。成長が物価並みなら、この倍率は 10 年で縮む。
どちらに重みを置いたか
事業の方向では、強気の言い分が一部正しい。カプセルの専門店は本物の成長で、玩具の大人需要も根強い。一方、値段と持続性では、慎重な見方の指摘が勝る。今の利益はヒットの上振れで、卸の利ざやは薄い。
確率は、中立に最も厚く置き、悲観側にやや寄せた。ヒット依存の事業では、10 年のうちに谷が来る確率が高いからだ。結果として、本質価値は今の値段を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,729 円3,349 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,364 円591 億円)。 今の値に割り戻すと 4,700 円2,037 億円、今との差 −20.6%、 期待の年率 +4.4%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 15,156 円6,567 億円 | 1,823 円790 億円 | +186.8% | +11.1% | 1,358 円589 億円 |
| やや楽観 | 20% | 11,562 円5,010 億円 | 1,588 円688 億円 | +122.1% | +8.3% | 2,630 円1,140 億円 |
| 中立 | 37% | 9,023 円3,909 億円 | 1,406 円609 億円 | +76.2% | +5.8% | 3,859 円1,672 億円 |
| やや悲観 | 25% | 3,070 円1,330 億円 | 1,159 円502 億円 | −28.6% | −3.3% | 1,057 円458 億円 |
| 悲観 | 10% | 978 円424 億円 | 912 円395 億円 | −68.1% | −10.8% | 189 円82 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,729 円3,349 億円 | 1,364 円591 億円 | +53.6% | +4.4% | 9,093 円3,940 億円 |
今の株価時価総額 5,920 円2,565 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% トレカとカプセルが長く続き、米国でも根づく 利益 267 億円 · PER 23.1 倍 · 株価時価総額 15,156 円6,567 億円
国内外のカプセル専門店が計画を大きく超えて増え、米国のガシャポン店も根づく。カプセルの販売回数は今の 2.6 倍まで伸びる。玩具は、大人が買うトレカ・くじ・ホビーが子どもの減少を補い、取扱量が 3 割増える。ゲームは次世代機の発売サイクルをうまく拾う。映像音楽は縮むが、パッケージ製造の受託で下支えする。営業利益は 410 億円を超え、今の 2.6 倍になる。自社が企画する商品も育ち、卸の薄い利ざやに頼る度合いが下がる。ただ、この姿はバンダイなど取引先のヒットが 10 年途切れないことを前提にする。筆頭株主のバンダイナムコとの関係は、商品の優先的な供給という形で強みに働く。資本は成長投資と配当にバランスよく回る。
- 玩具:数量 250(卸の出荷点数(百万点))× 価格 1,340(1 点あたり卸値(円・名目))→ 売上 3,351 億円・営業利益 208 億円。250.1 百万点 × 1 点 1.34 千円、営業利益率 6.2%
- ビデオゲーム:数量 18.8(卸の出荷点数(百万点))× 価格 8,040(1 点あたり卸値(円・名目))→ 売上 1,512 億円・営業利益 30 億円。18.8 百万点 × 1 点 8.04 千円、営業利益率 2.0%
- アミューズメント(カプセルトイ):数量 425(カプセルの販売回数(百万回))× 価格 536(1 回あたり売上(円・名目))→ 売上 2,279 億円・営業利益 194 億円。425.1 百万回 × 1 回 0.54 千円、営業利益率 8.5%
- 映像音楽:数量 12.4(卸の出荷枚数(百万枚))× 価格 4,690(1 枚あたり卸値(円・名目))→ 売上 582 億円・営業利益 9 億円。12.4 百万枚 × 1 枚 4.69 千円、営業利益率 1.5%
倍率:事業の純利益 264 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 34.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 20.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 23.08 倍、時価総額 6,248 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:8%。カプセルの店と米国展開がともに計画を超え、玩具のヒットも切れ目なく出る姿。3 つが同時にそろう必要があり、薄く置いた。
やや楽観 20% カプセルが計画どおり伸び、玩具は高止まり 利益 209 億円 · PER 22.2 倍 · 株価時価総額 11,562 円5,010 億円
ガシャココは計画の 260 店に届き、米国の店も 60 店前後まで増える。カプセルの販売回数は今の 2 倍強になる。玩具は、トレカや一番くじの大人需要が高止まりし、取扱量は 15% 増える。ゲームは Switch 2 の盛り上がりが一巡したあとも、一定の水準を保つ。映像音楽は赤字を脱するが、利益は小さい。営業利益は 320 億円ほど、純利益は 210 億円前後になる。配当性向 40% の方針は守られ、手元の現金は成長投資に使われる。弱点は変わらず、取扱商品のヒットの出方に利益が左右されることだ。ただ、カプセルという自前の売り場を持つ強みが、卸だけの時より利益を安定させる。
- 玩具:数量 221(卸の出荷点数(百万点))× 価格 1,340(1 点あたり卸値(円・名目))→ 売上 2,965 億円・営業利益 172 億円。221.3 百万点 × 1 点 1.34 千円、営業利益率 5.8%
- ビデオゲーム:数量 16.9(卸の出荷点数(百万点))× 価格 8,040(1 点あたり卸値(円・名目))→ 売上 1,359 億円・営業利益 24 億円。16.9 百万点 × 1 点 8.04 千円、営業利益率 1.8%
- アミューズメント(カプセルトイ):数量 343(カプセルの販売回数(百万回))× 価格 536(1 回あたり売上(円・名目))→ 売上 1,841 億円・営業利益 147 億円。343.4 百万回 × 1 回 0.54 千円、営業利益率 8.0%
- 映像音楽:数量 11.6(卸の出荷枚数(百万枚))× 価格 4,690(1 枚あたり卸値(円・名目))→ 売上 544 億円・営業利益 7 億円。11.6 百万枚 × 1 枚 4.69 千円、営業利益率 1.2%
倍率:事業の純利益 206 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 28.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 22.18 倍、時価総額 4,724 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:20%。カプセル 260 店の計画をほぼ果たし、玩具の大人需要が高止まりする姿。会社の中計をなぞるため、中立の次に厚く置いた。
中立 37% ブームは落ち着くが、物価の分は伸びる 利益 167 億円 · PER 21.3 倍 · 株価時価総額 9,023 円3,909 億円
トレカ・くじ・ホビーの勢いは落ち着くが、大人の買い手は残り、玩具の取扱量は今より 5% 増にとどまる。カプセルは店が 260 店まで広がったあと伸びが鈍り、販売回数は今の 1.7 倍に収まる。ゲームは Switch 2 の発売年の特需が消え、パッケージの販売がダウンロードに奪われて、量は 2 割減る。映像音楽はパッケージの縮小が続く。営業利益は 260 億円ほど、純利益は 170 億円前後になる。現金は配当性向 4 割と戦略投資に回り、純現金は今よりやや増える程度だ。利益率は、今の好況期より下がる。ただし過去の薄利の時代には戻らない。カプセルという利益率の高い事業の比重が上がっているからだ。
- 玩具:数量 202(卸の出荷点数(百万点))× 価格 1,340(1 点あたり卸値(円・名目))→ 売上 2,707 億円・営業利益 149 億円。202.0 百万点 × 1 点 1.34 千円、営業利益率 5.5%
- ビデオゲーム:数量 15.9(卸の出荷点数(百万点))× 価格 8,040(1 点あたり卸値(円・名目))→ 売上 1,278 億円・営業利益 20 億円。15.9 百万点 × 1 点 8.04 千円、営業利益率 1.6%
- アミューズメント(カプセルトイ):数量 278(カプセルの販売回数(百万回))× 価格 536(1 回あたり売上(円・名目))→ 売上 1,490 億円・営業利益 112 億円。277.9 百万回 × 1 回 0.54 千円、営業利益率 7.5%
- 映像音楽:数量 10.7(卸の出荷枚数(百万枚))× 価格 4,690(1 枚あたり卸値(円・名目))→ 売上 502 億円・営業利益 4 億円。10.7 百万枚 × 1 枚 4.69 千円、営業利益率 0.8%
倍率:事業の純利益 164 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 21.28 倍、時価総額 3,644 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:37%。今のヒットの一部は一巡するが、カプセルの店は増え、玩具の大人需要も残る。10 年の落としどころとして最も厚く置いた。
やや悲観 25% ヒットが一巡し、薄利の卸に戻りかける 利益 99 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 3,070 円1,330 億円
トレカとくじの反動で玩具の取扱量が 1 割減り、利益率も 4% 台に戻る。カプセルは店が増えすぎて 1 店あたりの売上が落ち、販売回数は今の 1.3 倍で頭打ちになる。米国の店は黒字化が遅れ、固定費が重い。ゲームは任天堂向けの比重が高いまま、ハードの谷で量が 3 割減る。映像音楽は利益が出ない。営業利益は 150 億円で、今の水準に戻る。現金の一部は米国店と買付洋画のような投資で目減りする。株主還元の方針は保つが、成長を語れなくなり、評価は成熟した卸のものに下がる。筆頭株主のバンダイナムコとの取引条件は変わらないが、メーカーの直販が少しずつ広がり、卸の取り分は細る。会社は自社企画の商品で利益率を守ろうとするが、投資の回収には時間がかかる。
- 玩具:数量 173(卸の出荷点数(百万点))× 価格 1,340(1 点あたり卸値(円・名目))→ 売上 2,321 億円・営業利益 104 億円。173.2 百万点 × 1 点 1.34 千円、営業利益率 4.5%
- ビデオゲーム:数量 13.9(卸の出荷点数(百万点))× 価格 8,040(1 点あたり卸値(円・名目))→ 売上 1,118 億円・営業利益 11 億円。13.9 百万点 × 1 点 8.04 千円、営業利益率 1.0%
- アミューズメント(カプセルトイ):数量 213(カプセルの販売回数(百万回))× 価格 536(1 回あたり売上(円・名目))→ 売上 1,140 億円・営業利益 63 億円。212.6 百万回 × 1 回 0.54 千円、営業利益率 5.5%
- 映像音楽:数量 8.9(卸の出荷枚数(百万枚))× 価格 4,690(1 枚あたり卸値(円・名目))→ 売上 417 億円・営業利益 0 億円。8.9 百万枚 × 1 枚 4.69 千円、営業利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 96 億円・事業 ROE 8.2% は k 7.5% 並みで、上限は 1÷k=12.1 倍。ヒットが剥がれた卸の筋書きなので、その約 9 割弱(10.5 倍)に置いた。
確率:25%。トレカ・くじの反動とカプセル店の飽和が重なる姿。ヒット商品に左右される事業で、10 年のうちに一度は谷が来る可能性が高いと見て、厚めに置いた。
悲観 10% 取引先に中抜きされ、ブームが終わる 利益 45 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 978 円424 億円
メーカーが物流と販売を自前で握り、卸の取り分が構造的に薄くなる。取扱量は玩具で 4 分の 1 減り、利益率は 3% 台まで下がる。次のゲーム機の世代交代でも任天堂向けの卸の役割が小さくなり、ゲームは量が半分近くに縮む。カプセルのブームは終わり、過剰な店と米国の赤字が重しになる。映像音楽は縮小を続ける。営業利益は 70 億円ほどで、過去の薄利の時代に戻る。余った現金は運転資金と失敗した投資で減り、純利益は 45 億円ほどにとどまる。筆頭株主の事情で、取引条件が不利に変わる可能性もある。成長の物語は終わり、安定した小さな卸として値が付く。
- 玩具:数量 144(卸の出荷点数(百万点))× 価格 1,340(1 点あたり卸値(円・名目))→ 売上 1,934 億円・営業利益 68 億円。144.3 百万点 × 1 点 1.34 千円、営業利益率 3.5%
- ビデオゲーム:数量 10.9(卸の出荷点数(百万点))× 価格 8,040(1 点あたり卸値(円・名目))→ 売上 876 億円・営業利益 4 億円。10.9 百万点 × 1 点 8.04 千円、営業利益率 0.5%
- アミューズメント(カプセルトイ):数量 147(カプセルの販売回数(百万回))× 価格 536(1 回あたり売上(円・名目))→ 売上 789 億円・営業利益 24 億円。147.2 百万回 × 1 回 0.54 千円、営業利益率 3.0%
- 映像音楽:数量 7.1(卸の出荷枚数(百万枚))× 価格 4,690(1 枚あたり卸値(円・名目))→ 売上 333 億円・営業利益 −3 億円。7.1 百万枚 × 1 枚 4.69 千円、営業利益率 -1.0%
倍率:事業の純利益 44 億円・事業 ROE 4.5% は k 以下で、上限は 1÷k=12.1 倍。構造的に取り分を失う筋書きのため約 7 割弱(8.0 倍)に置いた。余った現金も運転資金・失敗投資で半分に減る前提(検査の標準どおり)。
確率:10%。バンダイなどメーカーが直販を強めて卸が外される、または任天堂向けが崩れ、ブームも終わる姿。10 年先にこの形に至る可能性は 1 割と見る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
玩具
バンダイなどの玩具・トレカ・一番くじ・ホビーを小売店に卸す。
| 数量卸の出荷点数(百万点) | 価格1 点あたり卸値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 192 | 1,000 | 1,924 | 113 |
| 10 年後 中立 | 202 | 1,340 | 2,707 | 149 |
取り方:売上 1,924 億円を、トレカ・くじ・玩具・ホビーの混合の平均卸値 1 千円(推定)で割り、1.92 億点とした。点数は開示が無く推定。物価の分は価格に入れ、数量は実質。小売ベースで 1.1 兆円の国内玩具市場の 2 割前後に当たる。
ビデオゲーム
ゲーム機・ソフト・周辺機器の卸。任天堂向けが約 8 割。
| 数量卸の出荷点数(百万点) | 価格1 点あたり卸値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 19.8 | 6,000 | 1,190 | 22 |
| 10 年後 中立 | 15.9 | 8,040 | 1,278 | 20 |
取り方:売上 1,190 億円を、ハード・ソフト・周辺の平均卸値 6 千円(推定)で割り、約 2,000 万点とした。2025 年 6 月発売の Switch 2 の特需を含む。点数は推定。
アミューズメント(カプセルトイ)
カプセルトイ専門店「ガシャココ」の運営と、自販機などの販売。
| 数量カプセルの販売回数(百万回) | 価格1 回あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 164 | 400 | 654 | 52 |
| 10 年後 中立 | 278 | 536 | 1,490 | 112 |
取り方:売上 654 億円を、1 回 0.4 千円(推定)で割り、約 1.6 億回とした。店は 2025 年末で 153 店。2028 年 3 月期に 260 店の計画。数量は店数と 1 店あたりの回数の積で、推定。 数量はカプセルの販売回数(店数の増加が中心の実物)。
映像音楽
DVD・ブルーレイ・CD の卸と、パッケージの製造、映画の配給。
| 数量卸の出荷枚数(百万枚) | 価格1 枚あたり卸値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 17.8 | 3,500 | 622 | −11 |
| 10 年後 中立 | 10.7 | 4,690 | 502 | 4 |
取り方:売上 622 億円を、1 枚平均 3.5 千円(推定)で割り、約 1,800 万枚とした。買い付けた洋画の損失で赤字。
リスクと懸念
取引先のヒットに利益が左右される
利益の大半は、バンダイなど取引先のヒットで決まる。トレカ・くじ・たまごっちのような当たり商品が切れれば、利益率は 3% 台から 1〜2% 台に戻りうる。2020 年 3 月期には営業利益が 26 億円まで落ちた。
任天堂向けの偏りとハードの谷
ビデオゲームは任天堂向けが約 8 割を占める。Switch 2 の発売年の特需が終われば、量は大きく減る。ダウンロード販売が増えれば、パッケージの卸は構造的に細る。ソニー向けは 35% 減と、すでに弱い。
メーカーによる中抜き
バンダイをはじめメーカーが、直販や自前の物流を強めれば、卸の取り分は削られる。筆頭株主のバンダイナムコは取引先でもあり、条件を決める側でもある。ここが最も深い構造のリスクだ。
カプセル店の過熱と米国展開
ガシャココは 2028 年 3 月期に 260 店、米国は 60 店を計画する。急な出店は家賃などの固定費を増やし、市場が飽和すれば客の取り合いになる。米国は認知度が課題で、黒字化が遅れる恐れがある。
映像音楽の縮小と投資損失
DVD・ブルーレイは配信に押されて縮み、2026 年 3 月期は 11 億円の赤字だった。買い付けた洋画の損失は、投資の規律への疑問を残す。
資本の使い道と少数株主
純現金 508 億円のうち、運転資金を引いた分の使い道が見えにくい。中計の戦略投資 190 億円が価値を生むかは未知だ。筆頭株主が 26% を握り、少数株主の声は通りにくい。
今後の分かれ目
- 年末商戦で通期の営業利益が 250 億円を超えたら
- ヒットの勢いが想定より強い合図。ただ、一時的か構造かを見る。カプセルの利益の比重が上がれば、やや楽観に重みを移す。
- ガシャココの 1 店あたり売上が 2 期続けて落ちたら
- 店の過熱の合図。カプセルの数量の前提を下げ、慎重な見方に重みを移す。
- バンダイなどメーカーが直販を強める発表を出したら
- 卸の取り分が削られる構造の変化。悲観の確率を上げて見る。
- 純現金を使った大型の買収が発表されたら
- 買収額と稼ぐ力を確かめる。本業の水準を超える利益が見込めなければ、価値を削る。
- 配当性向を 40% より引き上げるか、自社株買いを出したら
- 余った現金が株主へ戻る合図。戻り方の前提を上げてよい。
- Switch 2 の販売が前年を下回り始めたら
- ゲームの谷の入口。量の前提を下げ、特需の終わりを織り込む。
見ておくもの
- 四半期の玩具・アミューズメントの営業利益と、ガシャココの店数・1 店あたり売上
- 任天堂向けの売上の比率とハードの販売の動き
- 米国のガシャポン店の黒字化の時期
- 純現金の水準と、配当・自社株買いの方針
- バンダイナムコとの取引条件と持株比率の変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の純利益と k 7.5%(基本 7.5%+quality 0.75%)、g 4% から求めた正当化 PER の 7〜9 割に置いた。確率は今の株価からは動かしていない。今の PER は 25 倍近くあるが、これは使っていない。純現金 508 億円のうち、運転資金を引いた 200 億円を余った現金とし、PER に混ぜず戻り方 0.5 を掛けて足した。悲観は事業の稼ぐ力から出し、過去の PBR の底は使っていない。10 年先の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた(新リース会計基準で営業利益が少し増え、純負債が増えるが、価値は変わらない)。金利は、純現金の受取利息の増加(約 9 億円)を純利益に含めた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→23.08 倍・やや楽観 PER 13.2→22.18 倍・中立 PER 12.5→21.28 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。