結論
スターティアホールディングスは、中小企業のオフィスに必要な複合機、ネットワーク、情報セキュリティー、通信回線を提供し、その顧客にデジタルマーケティングのソフトも売る会社である。筆者の結論は「適正圏の高値側」だ。堅い継続収益を持つ一方、10年先の利益を今の勢いのまま伸ばせるほど強い堀はなく、現時点では長期株主に十分な安全域があるとは言いにくい。
この会社の真の強みは、Cloud CIRCUSというソフト単体ではなく、中小企業のIT担当者が頼れる窓口を既に持っていることにある。複合機を入れ、回線を手配し、セキュリティーを守り、保守を続ける。そこから追加の契約を取れるので、顧客数が急増しなくても一社から得る売上を増やせる。2026年3月期には売上高238億円、営業利益32億円となり、営業利益率も13.6%まで高まった。純現金48億円があり、借金に追われて成長投資を急ぐ必要もない。
ただし、過去数年の改善を10年間そのまま延ばすのは危険だ。機器販売は競合が多く、紙の使用は減る。デジタルマーケティングの画面操作、広告制作、営業支援はAIエージェントによって仕事の形が変わる。会社はAIと人による支援を成長の柱としているが、AI関連の独立した売上金額は確認できず、代替を上回る新たな収益源ができたとはまだ言えない。
さらに中期計画の大きな部分は、同業の小さな販売会社を買い、その顧客に多くの商材を売る構想に依存する。成功すれば顧客基盤を厚くできるが、買収価格、顧客離反、営業人員の統合には不確実性がある。10年後の中立では事業収益はなお健全とみるものの、楽観的な買収成果を先取りしない。五つの筋書きを資本コストで現在価値に直した目安は約273億円であり、基準時点の時価総額約302億円を約10%下回る。会社は評価できるが、価格面での余裕は乏しい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、この会社の価値は、どれだけ多くの機器を一度売るかよりも、取引先が10年後も毎月お金を払ってくれるかにある。通信回線、セキュリティー、保守は企業活動の基盤であり、契約の積み上がりが利益を支える。販売担当者が追加商材を売れることも強みだ。反面、必要な機器を他社も調達できる以上、顧客との関係を保つための営業費と人件費はなくならない。
筆者は、直近のROE27.6%をそのまま将来の増分投資利回りとは見ない。2017年や2021年には収益力が弱く、その後の利益改善には固定費吸収と事業構成の変化が大きく効いた。薄い運転資本で稼げる点は優秀だが、新しく買う販売会社には取得対価が要る。買収後の増分営業利益と実際に支払った対価を突き合わせ、資本コストを上回っているか確かめるまでは、すべての留保利益に高い価値を与えられない。
また、Cloud CIRCUSの導入実績は確かな営業資産だが、法規制に守られた唯一の記録基盤ではない。価格改定の実績はあるものの、AIエージェントがユーザー画面を不要にした際にも同じ料金を取り続けられる証拠は弱い。ソフトの利用料と人による運用支援には、別々の寿命を認めるべきだ。投資家が買うのは過去の成長率ではなく、将来も手元に残る現金である。
財務は健全で、還元方針も明確になってきた。この二つは安心材料だが、買収費用と技術の転換が重なる10年間を考えると、長期価値の推定には幅がある。現値が本質価値の中心に近いなら、優れた事業を安く手に入れたことにはならない。強い堀が確認できるまでは、良い会社という判断と十分に安い株という判断を分けておきたい。
何で稼ぐ会社か
事業の約8割を占めるITインフラは、中小企業にとっての社外IT担当者に近い。スターティア株式会社などが複合機、ビジネスホン、ネットワーク機器、セキュリティー製品を販売し、設置後は保守、コピーの利用量、光回線、電力、クラウドPBX、法人向けサポートから収入を得る。2026年3月期の売上189億円のうち、機器販売など一度きりの売上は約117億円、継続型は約72億円である。単に機器を仕入れて転売する会社ではなく、導入後の接点を次の販売につなげるところに経済的な意味がある。
継続型の顧客は四半期平均で約2万4,000社に達する。顧客が複数の商材を使うほど、他社に一本化する手間が増え、営業効率も上がる。とりわけセキュリティー、回線、機器保守は、トラブルが起きた時に現場で対応してもらう価値が残りやすい。反対にコピーの利用量は電子化で減るため、同じ継続契約でも電力や保守と一緒に成長させて考えてはいけない。
残る主力はDXソリューションで、Cloud CIRCUSのBowNow、ActiBook、Fullstar、IZANAIなどを使い、顧客企業の集客、見込み客の育成、サイト改善を支える。RoboTANGOによる事務作業の自動化やJENKAによるクラウド間連携もある。2026年3月期のDX売上49億円のうち約40億円が継続型であり、Cloud CIRCUSの期末有料ライセンスは6,698件、月額経常売上は約2.9億円だった。ソフトを導入した後に運用方法まで教えることが中小企業向けの特色である。
だが、この運用支援は同時にAI代替に弱い。決算資料のDX継続売上には、ソフト利用料だけでなく広告運用やコンサルティングも含まれる。そこで継続売上の商材構成を基に、SaaS中心の部分と人手による支援を分けて考える。どちらも10年後まで今の課金体系が残るとは限らない。CVC事業は新興企業への投資であり、現状では継続して利益を生む独立した事業とは評価せず、全社調整と資産評価の側で扱う。
優良さと弱いところ
収益の質は、機器の売り切りから継続契約へ移るにつれて改善している。2021年3月期には営業利益がほぼ消えたが、その後は複数商材の販売が進み、2026年3月期には営業利益32億円を稼いだ。ROEも27.6%と高く、現時点の稼ぐ力は資本コストを大きく超える。もっとも、これは古い事業の採算改善と比較的軽い自己資本による部分があり、新しい買収案件も同じ利回りで成功する証拠にはならない。
守りになるのは、顧客との継続的な関係である。会社はITインフラの保守料金を値上げしても契約が継続したと説明しており、実際の値上げ力を示す事例だ。通信回線と複合機とセキュリティーをまとめて頼む企業にとって、販売会社を変えることは、単なる価格比較以上の仕事になる。ただし機器そのものはリコー、富士フイルムビジネスイノベーション、キヤノンなどから調達する商材が中心で、製造技術や特許による独占は持っていない。
DXではBowNowの導入実績と日本語での支援体制が強みだ。Cloud CIRCUSは過去に価格改定を実施し、2026年3月末時点の過去12カ月平均の月次解約率は1.4%だった。しかし、これは年間解約率1.4%という意味ではない。月次1.4%が続けば年間では約16%に相当し、法定帳簿や決済記録のような強固な固定客の証拠にはならない。操作画面を飛ばしてAIが仕事を完了する時代には、使いやすさだけの優位は失われる。
資本配分にも評価と留保がある。配当を増やしながら純現金を増やしてきたことは好ましいが、買収を大幅に増やす段階では、過去の高ROEが保たれるかを改めて確かめる必要がある。独立した小規模代理店の顧客基盤は、契約を保ったまま移管できて初めて資産になる。ブランドと販売網の堀はあるが、強い独占的な堀ではなく、今後も維持費を払わなければ狭くなる堀だと判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
中小企業のIT投資には、追い風と向かい風が同居している。人手不足とサイバー攻撃への備えにより、機器の安全な接続や運用を社外に頼みたい企業は増える。IDCは2026年の国内IT市場を約28.4兆円と予測し、中堅企業の投資拡大も見込む。ただしこの数字には大企業や広いIT支出が含まれ、スターティアが直接取りに行ける市場規模ではない。会社の対象は主にIT部門を持たない中小企業であり、国全体のIT支出の伸びをそのまま売上成長率に移すことはできない。
母集団となる中小企業数も無限には増えない。中小企業庁の2021年時点の集計では約336.5万者で、スターティアの広義の顧客基盤が約4万数千社なら、そのおよそ1%強を接点としている計算になる。ただし一つの企業に複数契約があるため、売上シェアとは異なる。大塚商会、リコー系販社、富士フイルム系販社、キヤノン系販社、NTT系の代理店、地方のOA販売店が同じ顧客を争う。販売範囲が違うため、これらを合算した比較可能な企業別市場シェアは確認できない。
機器需要ではペーパーレス化が最も大きな構造変化だ。JBMIAは2025年の国内複合機出荷を約44.5万台と見込み、2026年も微減傾向を予測した。もっとも同社の機器販売にはネットワーク、セキュリティー、PCなども含まれるので、複合機市場の台数を同社の販売台数として扱うことはできない。今後はコピーの減少をセキュリティーや通信の増加で補い、同業買収で営業地域を広げられるかが鍵になる。
DXの市場はさらに複雑だ。矢野経済研究所はMA、CRM、CDPなどの国内市場を2025年に約4,201億円、2026年に約4,789億円と推計した。この大きな市場に対する同社のSaaS関連売上は1%未満の規模だが、対象製品の範囲が一致しないため厳密なシェアではない。一方、2025年の国内23万サイト余りを調べた民間調査では、MAツールが検出された8,796サイトのうちBowNowは2,005サイトで22.8%、HubSpotは21.7%、SalesforceのAccount Engagementは12.8%、Adobe Marketoは7.2%だった。これはサイト検出数の比率であり、有料契約数や売上の市場シェアではない。
業界の最大の変化はAIエージェントである。人がマーケティング画面を操作し、レポートを作り、広告を設定する仕事は自動化されやすい。逆に、企業ごとの通信環境を確認し、機器を設置し、障害に駆けつける仕事には現場が残る。10年後の勝者はソフトの画面を多く提供する会社ではなく、顧客が困った時に結果まで引き受ける会社かもしれない。スターティアがその役割を収益化できる余地はあるが、まだ結果は確認できていない。
資本政策と M&A
会社の2026年3月期から2028年3月期までの中期経営計画は野心的だ。2028年3月期に既存事業で売上高290億円、営業利益42億円を目指し、買収と相乗効果で売上高80億円、営業利益8億円を上乗せする構想である。合計では売上高370億円、営業利益50億円となる。ROEは20%以上、自己資本比率は40〜55%程度を掲げる。既存事業の改善に加えて、買収を成長のもう一つの柱にする計画だ。
資金配分では、計画期間中のM&A投資枠を約100億円、開発・戦略投資を約20億円、株主還元を約30億円としている。営業キャッシュフローは累計約70億円を想定し、必要に応じて最大約50億円の有利子負債も活用する考えだ。ただし投資枠は実行済みの支出ではなく、相応の価格で優良な販売会社を買えるかは別問題である。2026年3月期は目標とする大型のM&A案件が成約せず、買収成果の先取りは避けたい。
株主還元の方針は2026年5月に変わった。従来の累進配当と連結配当性向55%を目途とする方式から、累進配当とDOE、すなわち株主資本に対する配当総額の比率13%を目途とする方式になった。過去には増配に加えて自己株式取得も行っている。純現金約48億円のうち、運転資金や保守の約束に必要な部分を除く資金には価値があるが、株主への戻り方は買収の成否にも左右される。
長期の還元は、業績が保たれる筋書きではDOEを意識した増配を見込み、業績が大きく落ちる場合は減配を認める。累進配当は意向であって、利益を超える現金支出を永遠に保証するものではない。余った現金を使う大型買収が続けば、投資先の利益と減損リスクを同時に引き受けることになる。過去の営業地域拡大には一定の成果があるが、今後の買収は取得した顧客の定着率と投下額に対する利益を案件ごとに評価すべきだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社には、国内の中小企業がまだ十分にIT化されていないという大きな余地がある。日本の中小企業は人材を採りにくく、情報セキュリティーに詳しい専任者も置きにくい。スターティアは機器を売るだけでなく、導入、保守、通信、運用をまとめて引き受けられる。ひとつの窓口に任せたい顧客が増えれば、複数商材の利用率が上がり、同じ営業人員でも収益が増える。ITインフラの保守料金を引き上げても契約が継続した実績は、値上げ力の証拠として軽視できない。
市場が分散していることも好機だ。地方には小規模の複合機販売店や通信機器代理店が多く、経営者の高齢化による事業承継需要がある。こうした会社を適切な価格で買い、既存のセキュリティーや電力、クラウドサービスを追加販売できれば、買収した顧客の価値は単独経営時より高くなる。中期計画にある約100億円の買収枠は、実行できれば全国の営業基盤を広げる力を持つ。
Cloud CIRCUSについても、料金だけで比較されるソフトとは言い切れない。日本語の相談窓口と運用支援を持ち、中小企業の仕事を実際に進める役割を担っている。AIを道具として営業支援の生産性を高め、顧客に成果を提供する事業へ進化すれば、失う収益の一部を補える。ただし、AI関連製品の独立した売上実績は未確認なので、この可能性を既に実現した成長としては評価しない。機器と保守の利益が大きく伸び、買収が円滑に進むことが上振れの中心になる。
過去数年の営業利益率の改善と純現金の厚さを合わせれば、危機に耐えながら成長する条件は整っている。DOEを意識した還元が続くなら、10年間に受け取る現金も相当な額になる。機器更改と地域買収の両方に成功すれば、2036年には今より広い顧客基盤と高い営業利益を持つ企業になっているはずだ。
慎重な見方
成長の前提には、弱い部分が三つある。第一に、会社が扱う複合機、通信機器、PC、セキュリティー製品は多くの競合が販売できる。メーカーや大手販社が価格を下げれば、単なる転売部分の利幅は守りにくい。コピー枚数も長期的には減少する。機器の販売価格が物価とともに上がっても、顧客が買う台数や紙の利用量が減れば、売上と利益が同じように増えるわけではない。
第二に、Cloud CIRCUSの強みはAIエージェントによる代替を免れない。見込み客の分類、広告設定、Web制作、レポート作成、営業の定型作業は、人が専用画面を開かなくても実行できるようになる。BowNowは一定の導入実績を持つが、決済記録や法定帳簿の正本を独占しているわけではない。顧客がAIへ仕事を指示し、複数のツールを裏側で使い分けるようになれば、ソフトごとの契約数と利用料には圧力がかかる。人的なコンサルティングや広告運用も、成果報酬への転換が実証されない限り工数の減少を受ける。
第三に、会社が期待する買収の相乗効果は必ずしも実現しない。小規模な販売店の価値は担当者と顧客の信頼関係にあり、買収後に担当者が辞めれば契約も失われ得る。事業承継案件が増えても、良質な買収先は他社も欲しがる。取得対価の上昇やのれんの減損が重なれば、これまでの高いROEは下がる。2026年3月期の買収計画が成約に結び付かなかったことは、案件の発掘と契約を同一視できない証拠である。
配当も無条件の防波堤ではない。DOE13%を守るために利益以上の現金を配り続ければ、将来の投資余力が削られる。売上が落ちた時には営業人員やオフィス費用の固定部分が残り、利益率が急低下する。2021年3月期に収益がほぼ消えた経験を考えれば、今の利益率を普遍的な最低水準とみるべきではない。財務が健全でも、事業の優良さを失った企業に高い価値は払えない。
どちらに重みを置いたか
ITインフラの顧客接点と実際の値上げ実績は評価する。反面、DXの利用画面や人的支援を長期の強い堀とみる証拠は不足し、買収計画にも実行上の不確実性がある。そこで上側21%、中立34%、下側45%とし、慎重な側を厚くした。下に寄せる理由は主に買収の実行遅れ、地方中小企業の減少、機器更新需要の競争であり、AI代替の影響そのものは既に各事業の数量・価格と長期成長率に反映している。二重に悲観しているわけではない。確率を加重した価値は約273億円となり、現在の約302億円に対して適正圏ではあるが高い側に位置する。10年保有の魅力を明確にするには、買収後の顧客定着とAI時代の収益化を数字で確認したい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 3,488 円328 億円(+ 還元の換算額還元の合計 1,668 円157 億円)。 今の値に割り戻すと 2,908 円273 億円、今との差 −3.7%、 期待の年率 +6.7%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 9,123 円857 億円 | 2,466 円232 億円 | +283.7% | +17.0% | 811 円76 億円 |
| やや楽観 | 14% | 6,537 円614 億円 | 2,138 円201 億円 | +187.2% | +13.3% | 1,214 円114 億円 |
| 中立 | 34% | 4,329 円407 億円 | 1,874 円176 億円 | +105.4% | +9.1% | 2,109 円198 億円 |
| やや悲観 | 28% | 1,239 円116 億円 | 1,420 円133 億円 | −11.9% | −1.7% | 745 円70 億円 |
| 悲観 | 17% | 681 円64 億円 | 952 円89 億円 | −45.9% | −8.0% | 278 円26 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,488 円328 億円 | 1,668 円157 億円 | +70.8% | +6.7% | 5,157 円484 億円 |
今の株価時価総額 3,020 円284 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 地域買収が成功し、ITの継続契約を大きく拡大 利益 55 億円 · PER 15.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 9,123 円857 億円
地方のOA販売店とIT保守会社の事業承継案件が増え、スターティアは優良な顧客基盤を適切な価格で取得する。買収先の営業担当者が定着し、既存顧客へ情報セキュリティー、通信、電力、保守を広く提供できるようになる。機器導入案件は大きく増え、複数商材を使う企業も着実に増える。競争の激しい複合機販売だけに依存せず、保守と通信が利益の中心になる。
ITインフラの現場対応力は、大塚商会やメーカー系販社とも競争できる地域網に育つ。値上げはサービス品質と組み合わせて進み、顧客から必要な費用として受け入れられる。人材の採用と買収先の統合が順調に進み、固定費の増加を大きく上回る売上総利益を得る。
Cloud CIRCUSはAI機能を取り込みながら既存の有料顧客をほぼ維持するが、未確認のAI事業収入を新たな高成長として数えない。運用支援の契約件数も過去の伸びを単純に延ばさず、価格と顧客基盤の維持によって事業を支える。買収投資の後にも現金が残り、積極的な株主還元と事業拡大を両立する10年になる。
- ITインフラ:機器販売・導入:数量 57,000(年間機器導入・更新案件数(件、推定))× 価格 50(一案件当たり平均売上(万円))→ 売上 285 億円・営業利益 33 億円。買収による営業地域拡大で案件数1.90倍。単価は1.28倍。機器・導入の利益率11.5%。
- ITインフラ:保守・通信・継続契約:数量 43,000(継続取引顧客数(社、期中四半期平均))× 価格 40(一社当たり年間継続売上(万円))→ 売上 172 億円・営業利益 40 億円。継続契約の顧客数約1.82倍。単価は1.31倍、利益率23%。
- DX:SaaS・デジタルツール継続課金:数量 4,500(DXストック取引社数(社、期中四半期平均を代理数量とする))× 価格 82(一社当たりツール関連年間売上相当(万円、按分推計))→ 売上 37 億円・営業利益 9 億円。AI代替下でも有料顧客数は現状以下。価格1.105倍、利益率25%。AIの未確認新規収益を加えない。
- DX:継続型コンサルティング・広告運用:数量 680(年間の継続支援契約社数(社、推定))× 価格 110(一契約社当たり年間売上(万円、推定))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。継続支援契約数は現状以下。単価上昇はコンサル部分の高付加価値化を限定的に見込む。
- DX:Web制作・導入支援・単発受託:数量 1,050(年間受託・制作案件数(件、推定))× 価格 75(一案件当たり売上(万円、推定))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。制作受託案件数は現状の0.875倍。AI代替下で利益率5%。
倍率:資本コストk=7.25%。将来の余剰現金50億円を除いた事業ROEは約25.6%。堀は普通として増分超過収益の残存割合を1/2とし、RONICは約16.4%。10年後以降の長期名目成長率g=1%を使い、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)の上限約15.04倍をそのまま適用する。時価総額は事業純利益(55.2−50×1.4%)×倍率+余剰現金50×戻り方0.75。買収で伸びた顧客基盤は2036年までの利益に反映済みで、倍率の成長率には重ねていない。
確率:全国の小規模IT・OA販社を適切な価格で継続的に買収し、顧客の移管、営業組織の統合、追加商材の販売まで成功する必要がある。複数の難しい条件が連続して成立するため、上振れの可能性は認めつつ7%に抑える。AI関連の未開示売上を成長の根拠にはしていない。
やや楽観 14% 買収と継続契約の拡大が着実に進む 利益 39 億円 · PER 15.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6,537 円614 億円
小規模な販売会社の買収が定期的に成立し、ITインフラの取引先を広げる。全案件が成功するわけではないが、買収した顧客の過半を維持し、セキュリティー、保守、通信などの複数契約に移行させることができる。機器販売では価格競争が続くものの、複数の商材をまとめて納める利便性が評価される。
中小企業は専任IT人材を確保しにくく、トラブル時の支援やセキュリティー更新への支出を優先する。スターティアの継続型サービスは取引社数と平均単価がともに増え、機器販売より高い採算を維持する。競合の大塚商会やメーカー系販社も顧客を狙うため、成長は市場全体の急拡大ではなく営業地域と一社当たり商材数の増加から生まれる。
DXのSaaS利用社数はAIエージェントによって伸びにくくなるが、既存顧客との取引と値上げで収入を大きく崩さずに済む。広告制作や人的な支援は少し縮む。成長投資の後も現金が残り、DOEに沿った増配を継続する。全社としてはITインフラの成果がDXの伸び悩みを上回る。
- ITインフラ:機器販売・導入:数量 45,000(年間機器導入・更新案件数(件、推定))× 価格 48(一案件当たり平均売上(万円))→ 売上 216 億円・営業利益 24 億円。案件数1.50倍、単価1.23倍。機器の粗利は強すぎない水準にとどめる。
- ITインフラ:保守・通信・継続契約:数量 33,000(継続取引顧客数(社、期中四半期平均))× 価格 39(一社当たり年間継続売上(万円))→ 売上 129 億円・営業利益 28 億円。継続取引社数1.40倍、単価1.28倍。複数商材化で利益率21.5%。
- DX:SaaS・デジタルツール継続課金:数量 4,300(DXストック取引社数(社、期中四半期平均を代理数量とする))× 価格 80(一社当たりツール関連年間売上相当(万円、按分推計))→ 売上 34 億円・営業利益 7 億円。AI代替下で利用社数は現状の0.955倍。価格は1.078倍。
- DX:継続型コンサルティング・広告運用:数量 580(年間の継続支援契約社数(社、推定))× 価格 105(一契約社当たり年間売上(万円、推定))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。継続支援契約の件数は0.83倍。人手部分の競争が利益率を抑える。
- DX:Web制作・導入支援・単発受託:数量 900(年間受託・制作案件数(件、推定))× 価格 72(一案件当たり売上(万円、推定))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。制作案件数0.75倍。単価は現状に近い。
倍率:k=7.25%、g_long=1%。2036年の余剰現金48億円を除いた事業ROEは約24.8%。堀を普通、超過収益の残存割合を1/2としたRONICは約16.0%で、正当化PER上限は約15.00倍。今の株価や同業PERは参照せず、事業利益(39.2−48×1.4%)×PER+余剰現金48億円×0.75で時価総額を評価する。
確率:既存の販売網に買収先を加え、クロスセルを進める経営上の方向性は合理的である。ただし資金投下と顧客定着の両方が必要なため、強い拡大は中立より低い確率とする。
中立 34% ITは育つが、DXはAI代替を受けて成熟 利益 26 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,329 円407 億円
10年間で一部の地域販売会社を買収し、既存顧客へのセキュリティー、回線、保守の追加販売が進む。ただし買収件数は当初の中期計画ほど増えず、顧客の統合にも時間がかかる。国内の中小企業数は長期的に減り、機器の台数も大きくは伸びない。営業地域の拡大と更新案件の取り込みによって、ITインフラの取引数量は緩やかに増える。
機器販売はリコー系、富士フイルム系、キヤノン系の販社や大塚商会との競争を受ける。単価をある程度引き上げても、仕入れ価格と人件費も上がるため、現在より際立って高い利益率を期待しない。継続契約では顧客数が少し増え、値上げと複数商材化が売上を支える。保守と通信は企業活動に必要だが、コピーカウンターはペーパーレス化によって縮む。
Cloud CIRCUSなどのSaaSは利用画面を直接使う顧客が減り、AIエージェントを介する仕事が増える。ツールの利用社数は現在の約8割、平均料金の上昇は1割未満にとどまる。広告運用やコンサルティング、Web制作の工数も減少し、人的な収入は縮む。会社がAI関連の新しいサービスを提供していても、現在確認できない新たな高成長収入は見込まない。
全社の営業利益は現在より少し増えるが、その主因はITインフラである。買収対価、通常の成長投資と配当を払った後には、一定の現金が残る。企業としての収益力は維持されるものの、2036年には成熟した中小企業向けITサービス会社としての姿が中心になる。
- ITインフラ:機器販売・導入:数量 34,500(年間機器導入・更新案件数(件、推定))× 価格 48(一案件当たり平均売上(万円))→ 売上 164 億円・営業利益 15 億円。機器・導入案件数は1.15倍、価格1.22倍。物価3%を全額転嫁できず、利益率は9%。
- ITインフラ:保守・通信・継続契約:数量 26,000(継続取引顧客数(社、期中四半期平均))× 価格 38(一社当たり年間継続売上(万円))→ 売上 99 億円・営業利益 19 億円。継続取引社数1.10倍、単価1.24倍。複数商材化が紙の使用減を補う。
- DX:SaaS・デジタルツール継続課金:数量 3,600(DXストック取引社数(社、期中四半期平均を代理数量とする))× 価格 80(一社当たりツール関連年間売上相当(万円、按分推計))→ 売上 29 億円・営業利益 5 億円。AIエージェント代替のSaaS型。利用社数0.80倍、価格1.078倍で、許容範囲内。
- DX:継続型コンサルティング・広告運用:数量 455(年間の継続支援契約社数(社、推定))× 価格 110(一契約社当たり年間売上(万円、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。人月・広告運用型。契約数量0.65倍、価格1.12倍。広告部分は値上げせず、コンサル部分で一部を補う。
- DX:Web制作・導入支援・単発受託:数量 780(年間受託・制作案件数(件、推定))× 価格 71(一案件当たり売上(万円、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。制作・受託の案件数0.65倍、平均単価横ばい。固定費で利益率0%。
倍率:k=7.25%、g_long=1%。2036年の余剰現金30億円を除く事業純利益は26.3−30×1.4%=25.88億円、事業自己資本は157−30=127億円でROE約20.4%。超過収益が半分残る普通の堀とするとRONIC約13.8%、正当化PER=(1−1%/RONIC)/(7.25%−1%)=約14.84倍。上限を手で値引きせず、事業純利益×正当化PER+余剰現金30億円×0.75で評価した。過去PERや現在の株価は倍率の根拠に使わない。
確率:実績のあるIT継続契約と値上げを評価しつつ、100億円規模の買収計画を全額成功とはみなさない。DXについてはAI代替の型に従い、SaaSの利用社数0.80倍、人的支援0.65倍という中立を採用する。
やや悲観 28% 機器競争が激しく、買収の成果が限定的 利益 12 億円 · PER 9.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,239 円116 億円
地域のOA販売会社を買収しても、営業担当者の退職や顧客の競合流出によって期待した相乗効果が得られない。複合機の更新台数は減り、ネットワーク機器も大手販社の価格競争にさらされる。物価上昇分を完全には売価に移せず、仕入れ価格と営業人員の費用が採算を圧迫する。
保守と通信の継続契約は残るが、国内中小企業の廃業や契約の集約により取引社数が減少する。機器・導入の営業利益率は現在の水準を保てず、全社として規模があっても以前ほど利益を生まない会社になる。顧客接点という強みは消えないものの、他社へ乗り換える費用は価格差を覆すほど大きくなくなる。
SaaSでは利用社数が減り、価格改定による補填も限定的になる。AIエージェントが広告運用や制作の工数を減らすため、人的な支援は赤字案件も抱える。2026年に掲げた高い還元方針は利益の縮小に合わせて見直され、配当総額は減る。蓄積する現金も買収費用と事業維持費に使われ、株主に戻せる余剰資金は少なくなる。
- ITインフラ:機器販売・導入:数量 27,000(年間機器導入・更新案件数(件、推定))× 価格 43(一案件当たり平均売上(万円))→ 売上 115 億円・営業利益 6 億円。案件数0.90倍、価格1.09倍。機器競争で利益率5.5%。
- ITインフラ:保守・通信・継続契約:数量 21,000(継続取引顧客数(社、期中四半期平均))× 価格 33(一社当たり年間継続売上(万円))→ 売上 69 億円・営業利益 10 億円。継続取引社数0.89倍、単価1.08倍。保守採算も低下。
- DX:SaaS・デジタルツール継続課金:数量 3,150(DXストック取引社数(社、期中四半期平均を代理数量とする))× 価格 76(一社当たりツール関連年間売上相当(万円、按分推計))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。AI代替により利用社数0.70倍。単価の上昇はごく小さい。
- DX:継続型コンサルティング・広告運用:数量 350(年間の継続支援契約社数(社、推定))× 価格 95(一契約社当たり年間売上(万円、推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。人的支援数量0.50倍、価格0.97倍。利用率低下で赤字。
- DX:Web制作・導入支援・単発受託:数量 660(年間受託・制作案件数(件、推定))× 価格 65(一案件当たり売上(万円、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。制作・受託の案件数0.55倍、平均単価低下。固定費負担で赤字。
倍率:営業利益の低下と買収の投下資本効率悪化で超過収益が失われる筋書き。利益の正当化PER上限は引き続きkとRONICの式で管理するが、やや悲観では競争による利益の不安定性を反映して9.5倍で評価する。余剰現金10億円を明示し、(11.6−10×1.4%)×9.5+10×0.75=116.37億円とする。現金以外の資産の見かけの帳簿価額には高い倍率を与えない。
確率:ITインフラの取引社数が大きく増えず、機器競争と買収先の顧客離反で収益率が落ちる筋書き。2026年3月期の買収成約遅れ、地方企業の減少、コピー需要の縮小というAI以外の固有要因を重く見ている。
悲観 17% 顧客基盤と利益率を失い、資産価値が中心になる 利益 1 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 681 円64 億円
複合機の更新需要が長く減り、ネットワーク機器でも大手販社やメーカー系列との競争に勝てなくなる。営業地域を拡大するための買収は、対価に見合う顧客と利益を得られず、のれんの減損を伴う。複数商材の販売を支えていた営業担当者が流出し、顧客は価格の安い他社に移る。過去の販売網は残っても、高い利益率を支える堀は失われる。
保守と回線には必要不可欠な需要が残るものの、契約社数は大きく減る。残った顧客の料金を急に引き上げることも難しい。Cloud CIRCUSを操作する利用者は減り、AIエージェントがマーケティングの仕事を他の仕組みで実行する。ソフト利用料の下落と運用支援の赤字が重なり、DXはほとんど利益を生まなくなる。
経営は事業再編と費用削減を進めるが、通信・保守の顧客を維持する人件費や固定の契約費用はすぐには消えない。配当は大きく縮小し、残された現金も事業維持に使われる。会社そのものは存続していても、資本コストを超える利益を十分には生めない。この場合の10年後の価値は、低迷した利益への期待ではなく、現金と処分可能資産の保守的な回収価値が中心となる。
- ITインフラ:機器販売・導入:数量 18,000(年間機器導入・更新案件数(件、推定))× 価格 37(一案件当たり平均売上(万円))→ 売上 67 億円・営業利益 1 億円。案件数0.60倍、価格0.95倍。複合機需要と代理店シェアを失い利益率2%。
- ITインフラ:保守・通信・継続契約:数量 15,000(継続取引顧客数(社、期中四半期平均))× 価格 29(一社当たり年間継続売上(万円))→ 売上 44 億円・営業利益 5 億円。継続取引社数0.64倍、単価0.95倍。保守の固定費が残る。
- DX:SaaS・デジタルツール継続課金:数量 2,250(DXストック取引社数(社、期中四半期平均を代理数量とする))× 価格 60(一社当たりツール関連年間売上相当(万円、按分推計))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。AI代替で利用社数0.50倍、平均価格0.81倍。利益率は2%。
- DX:継続型コンサルティング・広告運用:数量 250(年間の継続支援契約社数(社、推定))× 価格 70(一契約社当たり年間売上(万円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。人的支援契約数0.36倍、単価0.71倍。継続赤字。
- DX:Web制作・導入支援・単発受託:数量 450(年間受託・制作案件数(件、推定))× 価格 52(一案件当たり売上(万円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 −1 億円。制作案件数0.375倍、単価0.74倍。受託部門の構造的な赤字。
倍率:10年後のROEは約1.3%で資本コスト7.25%を大きく下回る。低利益を永続的に資本還元できると考えず、現在の自己資本84億円を基準にした処分可能価値64億円を採用する。PBRは64÷84=約0.762倍。10年後まで留保した利益を床の分母に積み増さない。
確率:大手販社との競争、地域代理店の統合失敗、中小企業の顧客減少が重なり、会社の堀が構造的に失われる筋書き。倒産を前提とするのではなく、低い稼ぐ力と換金可能資産を中心に評価する。過去に営業利益がほぼゼロまで落ちた期があるため無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ITインフラ:機器販売・導入
複合機、ビジネスホン、ネットワーク、PC、情報セキュリティー機器の販売と初期導入。実物の設置・更新を伴い、AIエージェントによる人月・席課金代替の型には直接当たらない。
| 数量年間機器導入・更新案件数(件、推定) | 価格一案件当たり平均売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30,000 | 39 | 117 | 9 |
| 10 年後 中立 | 34,500 | 48 | 164 | 15 |
取り方:2026年3月期決算補足資料11ページのITフロー売上116.78億円を起点にした。機器別販売台数・案件数・単価は開示されないため、広義の顧客基盤が4万数千社あることを踏まえ、年3万件の更新・新設案件、平均38.93万円という組み立てを推計として採用した。複合機だけの台数ではなく通信・セキュリティー機器も含む。JBMIAの複合機国内出荷予測約44.5万台は市場の部分的な外部指標であり、当社の市場シェア推計には直接流用していない。出典:https://www.jbmia.jp/whatsnew/detail.php?id=1967 。営業利益9.34億円はIT全体の開示利益21.77億円を収益特性に応じて按分した推計である。
ITインフラ:保守・通信・継続契約
コピーカウンター、機器保守、光回線、ISP、電力、クラウドPBX、ビジ助などの継続課金。契約には実際の保守や通信供給が伴うため、画面操作だけのSaaSとは別に評価する。
| 数量継続取引顧客数(社、期中四半期平均) | 価格一社当たり年間継続売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 23,620 | 31 | 72 | 12 |
| 10 年後 中立 | 26,000 | 38 | 99 | 19 |
取り方:2026年3月期決算補足資料のITストック売上72.16億円を用いる。四半期平均取引社数は23,439社、23,564社、23,686社、23,795社で、年度の概数を23,620社とした。72.16億円をこの社数で割り、年30.55万円、月約2.55万円の複合平均とした。2027年3月期第1四半期には取引社数23,609社とやや減る一方、単価上昇が続いている。売上には通信、保守、電力、コピー使用量を含み、顧客数と市場シェアは同じではない。営業利益12.43億円はIT全体利益の按分推計。
DX:SaaS・デジタルツール継続課金
BowNow、ActiBook、Fullstar、IZANAI、RoboTANGO、JENKAなどの継続利用を中心とする。AIエージェント代替の型は『操作画面が価値の中心となる業務SaaS』であり、独立した法定記録の正本とは扱わない。
| 数量DXストック取引社数(社、期中四半期平均を代理数量とする) | 価格一社当たりツール関連年間売上相当(万円、按分推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,502 | 74 | 33 | 8 |
| 10 年後 中立 | 3,600 | 80 | 29 | 5 |
取り方:DXストック売上40.30億円のうち、2026年3月期第4四半期に開示された商材別構成でコンサル関連14.9%と広告関連2.2%を除いた82.9%を、仮にツール中心33.41億円と推計した。『その他』25.4%の実態は完全に開示されず、この区分は推計誤差を含む。DXストック取引社数の四半期平均4,506・4,480・4,488・4,535社の年度平均約4,502社を代理数量とし、一社当たり約74.21万円とした。Cloud CIRCUSの有料ライセンス6,698件は複数商材契約を含む別KPIであり、契約社数と同一視しない。直近月次解約率1.4%は年率ではない。矢野経済研究所の広義のMA・CRM・CDP市場約4,201億円は厳密には対象範囲が一致しない。出典:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/4145 。BowNowのサイト検出比率22.8%は売上シェアではない。出典:https://bbmarketing-jp.com/btob_column/marketing-automation-survey-20251001/ 。営業利益7.55億円は按分推計。
DX:継続型コンサルティング・広告運用
広告運用やデジタルマーケティングの実務支援を継続契約で提供する部分。AIエージェント代替の型は『人月・工数型のコンサルティング・広告運用』であり、ソフトの席課金とは別に数量減少を見込む。
| 数量年間の継続支援契約社数(社、推定) | 価格一契約社当たり年間売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 98 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 455 | 110 | 5 | 0 |
取り方:2026年3月期決算補足資料のDXストック売上40.30億円に、第4四半期の商材別構成であるコンサル関連14.9%と広告関連2.2%の合計17.1%を適用し、約6.89億円と推計した。実際の契約社数は非開示であり、全DX取引社約4,500社の一部、年間700社が継続支援契約を利用すると仮定して平均年98.43万円を得た。四半期構成を通年に延ばした推計であり、内訳の確認が必要である。広告運用の単価には物価上昇を無条件に転嫁せず、コンサル部分にも工数削減圧力を反映する。営業利益1.31億円は按分推計。
DX:Web制作・導入支援・単発受託
Webサイト制作、デジタルツール導入、個別の受託開発・初期支援などの単発収入。AIエージェント代替の型は『人月・工数型受託および広告制作』である。
| 数量年間受託・制作案件数(件、推定) | 価格一案件当たり売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,200 | 71 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 780 | 71 | 5 | 0 |
取り方:2026年3月期決算補足資料のDXフロー売上8.46億円を起点とする。案件数は開示がないため、年1,200件、平均70.5万円と推定した。制作・導入・受託の構成比も非開示であり、案件単価は実際の価格表ではない。AIエージェントによる制作時間と運用工数の削減を中立の案件数量に反映する。営業利益0.59億円は按分推計。
リスクと懸念
AIエージェント代替
Cloud CIRCUSなどのSaaSは、利用者が画面を操作してマーケティング業務を行うことを前提にしている。AIエージェントが見込み客の分類、広告運用、Web制作を直接実行すれば、ツールの契約数や価格が下がり得る。人的な受託・コンサル・広告運用も工数そのものが減る。法定記録の正本や独自データによる強い堀を裏付ける証拠が不足するため、全社の過去の成長率を将来の前提にはしない。
M&Aの取得価格と顧客離反
中期計画の買収枠は約100億円と、現在の自己資本を上回る規模である。地方の販売会社は経営者や担当者と顧客の関係が価値の中心であり、買収後に社員や顧客が離れれば予定した相乗効果を得られない。取得価格が高ければ、追加販売に成功しても増分投資利回りが資本コストを下回る。買収件数よりも取得対価、買収後の営業利益、顧客定着率を重視すべきだ。
複合機・コピー利用量の長期減少
ITインフラには複合機本体とコピーカウンターの収入が含まれる。オフィスの電子化とペーパーレス化が進むほど、更新台数や印刷利用量には下押し圧力がかかる。セキュリティーや通信の継続契約を増やすことで補える可能性はあるが、それらにも競争がある。機器販売とコピー関連の収入が同時に縮む場合、営業人員の固定費が利益率を押し下げる。
中小企業の廃業と顧客獲得競争
国内の中小企業数は長期的に減少傾向にある。小規模顧客の廃業、拠点統合、契約の一本化が増えると、継続契約の解約と機器更新の減少が同時に生じる。大塚商会、メーカー系販売会社、地域代理店なども同じ需要を追うため、新規顧客の獲得単価が上がりやすい。売上の伸びを物価上昇だけで説明せず、取引社数と一社当たり商材数を継続的に確かめたい。
Cloud CIRCUSの解約と競争
BowNowには導入実績があるが、HubSpot、Salesforce、Adobe Marketo、国内各社の製品が競合する。公表される月次解約率は年間解約率ではなく、年にわたる積み上げを考えると相応の顧客流出がある。単価改定の実績は認めるものの、利用画面が不要になる変化まで防げるわけではない。有料取引社数とライセンス数、月額経常売上を分けて追い、値上げが数量減少を隠していないかを見る。
累進配当と成長投資の両立
DOE13%を目途にした累進配当は株主還元への意思を示すが、業績が落ちても続けられるかは別問題である。買収資金や新規事業への投資が増えた時に高い配当を維持すれば、借入金の増加や運転資金の圧迫を招き得る。現在の純現金は安全余力だが、すべてが株主に直ちに分配できる現金ではない。営業キャッシュフロー、買収支出、増配額を一体で確認する必要がある。
外部サービスへの依存と収益率の変化
Cloud CIRCUSの製品群は海外のクラウド基盤やAPIなども利用しており、供給元の値上げや仕様変更に影響を受ける。会社は顧客料金への転嫁を進めているが、競合が多ければすべての費用を転嫁できるとは限らない。また、2027年4月以後に始まる年度から日本の新リース会計基準が強制されるため、事務所等の賃借が負債として表れる場合は財務指標の比較に注意が要る。固定の家賃は売上が減っても残る。
今後の分かれ目
- 買収先の取得価格と買収後の顧客定着率・営業利益が継続して開示され、投下資本利益率が資本コストを上回ると確認できたら
- 地域買収を単なる売上拡大ではなく価値を生む再投資と認め、ITインフラの数量と楽観側の確率を見直す。
- ITインフラの継続取引社数が3年程度増え続け、一社当たり単価も保守料金の値上げで上昇したら
- 中立のIT継続契約の数量・単価を引き上げる。継続契約の利益率と顧客維持力が改善していれば、堀の評価も再点検する。
- Cloud CIRCUSの月次解約率が継続して低下し、有料契約社数とMRRが価格改定後もともに増え続けたら
- AI代替下でも顧客価値が残っている証拠としてSaaSの数量縮小幅を再検討する。ただし法定記録の正本と同じ堀には自動的に格上げしない。
- AIエージェントを使った新サービスの独立した売上・受注金額が開示され、既存SaaSの減収を補い始めたら
- 未確認としていたAI関連の新規収益を数量と価格のモデルに加える。AIという名称や導入件数だけでは楽観の成長率を引き上げない。
- 買収案件ののれん減損、営業社員の大量離職、または買収先顧客の解約が続いたら
- 追加買収による数量拡大を取り消し、やや悲観・悲観側を厚くする。残余現金の使い道と資本効率も評価し直す。
- 営業キャッシュフローが配当と買収支出を継続的に賄えず、純現金が純負債へ転じたら
- DOEに沿った還元の持続性を下げ、将来配当の合計と余剰現金の価値を見直す。借入金の借り換え費用も純利益に反映する。
- 複合機やコピー関連の収入が減っても、情報セキュリティー・通信・保守の売上総利益がそれを安定して上回ったら
- ITインフラの長期的な利益率低下リスクを弱める。製品ミックスの変化を一時的な機器更新需要と区別して評価する。
見ておくもの
- ITインフラのフロー売上、ストック売上、継続取引社数、複数商材取引社数とARPU
- ITインフラの保守料金改定後の契約継続率と、複合機・コピー関連の利用量
- Cloud CIRCUSの有料ライセンス数、実契約社数、MRR、月次解約率
- DXストック売上のうちツール利用料とコンサル・広告運用が占める比率
- BowNowのMA導入サイト検出比率とHubSpotなど競合との推移
- 買収案件ごとの取得対価、取得した顧客数、買収後の定着率、追加販売額
- DOE13%の運用、実際の配当総額、自社株式取得額、営業キャッシュフロー
- 純現金、有利子負債、のれん、無形固定資産、CVC保有投資の評価
- AI関連サービスの独立した売上・受注金額と既存SaaSの置き換わり具合
- 中小企業の廃業・事業承継件数と地域のOA・IT販売会社の買収価格
倍率と資本コストの決め方
数量の起点は会社が公表するIT・DX各事業のフロー/ストック売上と取引社数を優先した。開示のない機器導入案件数、受託案件数、支援契約社数は、売上を任意の指数に置き換えず、実際の件数と平均単価の仮定で組み立て、その不確実性をhowに明記した。中立のSaaS利用社数0.80倍、人的な支援0.65倍、価格の抑制とg_long=1%にAI代替を反映し、資本コストの寿命には重複計上していない。倍率は7.25%の資本コストと2036年以降の成長率、増分資本の収益力から計算し、現在・過去・同業の市場PERを使用しなかった。10年で累積する余剰現金は各筋書きの明示額に含め、自動加算との重複を避ける。中立の10年後自己資本は現状84億円に累積純利益を加え、DOEを意識した累積還元を引いた約157億円である。悲観は現在自己資本84億円から無形資産11.76億円と追加の回収不確実性8.24億円を控除した64億円を床とし、純現金を二重に加えない。新リース会計基準による表示変更は事業価値の改善とみなさない。基準時点の時価総額約302億円との比較は、事業の数量・価格・利益・倍率を決めた最後に行った。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%を出発点とする。質の調整は純現金によるマイナス0.25%だけで、株式の値動きや時価総額の小ささによる上乗せはしない。買収失敗やAI代替は資本コストではなく将来の事業収益で評価する。