結論
コメダホールディングスは、「コメダ珈琲店」の本部だ。店の多くはフランチャイズ(加盟店)が営み、本部は食材を卸して稼ぐ。国内で 1,000 店を超える、数少ない喫茶店チェーンである。
筆者の結論は、今の値段は少し先を走りすぎている、というものだ。事業の質は高い。しかし国内の喫茶需要は人口とともに細り、店数の伸びにも天井が見える。10 年後の中立の価値は、今の時価総額を下回ると見る。
強みは、客が戻ってくる店づくりにある。ゆったりした席と、手のかかるモーニングが固定客を作る。加盟店が増えるたびに卸売の利益が積み上がり、本部が自ら店を借りるリスクは小さい。国内事業の利益率は 22% と高い。
弱みは、利益率の低下だ。上場前に 3 割あった営業利益率は、16% 台まで下がった。コストの上昇と、低採算の海外事業の連結が重なった。
会社は 2031 年 2 月期に 1,400 店、営業利益 130 億円を掲げる。筆者は店数を少し割り引き、成長の大半は値上げと店の積み増しで稼ぐとみる。ROE は 11% 台と、資本コストを少し上回る程度で落ち着く。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い商売だが、成長の天井が近い会社」と映る。
良い商売の中身は、フランチャイズの本部事業だ。店を借りるのも、人を雇うのも加盟店で、本部は食材と看板を提供する。少ない投資で利益が出るので、オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、純利益に近い。
弱点は、国内の需要が実質で伸びない点だ。店数は増えるが、1 店あたりの客数は増えにくい。成長の多くは物価の上昇と店の積み増しで、実質の力が大きく伸びるわけではない。
経営者の資本配分は、これまで堅実だった。還元を 5 割以上保ち、買収も慎重に進めてきた。ただ、新しい計画は借入を使った M&A を前面に出している。ここが、これまでのコメダと違う点だ。
払う値段の安全域は薄い。今の値段は、10 年後も増収増益が続く筋書きを前提にしている。中立の筋書きでは、価値は今の値段を下回る。もう少し安ければ、長く持ちたい会社だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、国内のコメダ珈琲店だ。加盟店に、コーヒー豆、パン、シロップなどの食材と、店舗の資材を卸す。加えて、開店時の指導料や、売上に応じたロイヤルティ(ブランド使用料)も入る。店が増え、1 店あたりの売上が増えるほど、本部の収入が伸びる形だ。
国内の店は、直営が少なく加盟店が大半を占める。食材の一部は自社の工場でつくる。品質を保てる半面、工場への投資が要る。
店の形は一つではない。和風喫茶の「おかげ庵」は、抹茶の人気と訪日客を追い風に、2026 年 2 月期末の 18 店から 50 店以上へ増やす計画だ。ほかに「米屋の太郎」など新しい形も試している。
海外は台湾、シンガポール、香港などに約 80 店ある。2025 年にシンガポールのプーン社を子会社にして、現地の店と調達の力を取り込んだ。売上は国内の約 1 割だが、利益はまだほとんど出ていない。
2026 年 2 月期のセグメント利益は、国内が約 115 億円で、海外は 1 億円強だった。つまり稼ぎのほぼ全部が国内の本部事業から出ている。海外は育てる段階だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、固定客を作る店づくりだ。ソファの座り心地、ゆったりした席の間隔、長居しても許される空気を、全国で同じ水準に保っている。名古屋のモーニング文化を全国に広げた経験も大きい。
加盟店は店の運営に責任を持ち、本部は食材と看板を供給する。この分業のおかげで、本部は多額の設備投資を背負わずに店数を増やせた。ROE は過去 10 年の中央値が 13% ほどで、小売・外食としては高い。
堀が弱まる所もある。喫茶店の競合は多い。ドトールや星乃珈琲店、コンビニのコーヒーまで、客の選択肢は広い。コメダが高い価格でも客を集めるのは、居心地という価値を売っているからだ。この価値が崩れると、値上げの余地は一気に狭まる。
筆者がいちばん気にしているのは、利益率の低下だ。営業利益率は 30% 台から 16% 台に下がった。原材料と人件費の上昇を、加盟店の採算を守りながら価格に乗せる作業は難しい。
自己資本比率は 45% で、純有利子負債はほぼゼロだ。財務は堅いが、会社は今後、借入を使った M&A も視野に入れている。資本の配り方が試される局面に入った。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の喫茶市場は、成熟した需要だ。人口は減る。1 人が 1 年に飲むコーヒーの量も大きくは増えない。市場全体は伸びないとみる。その中で、チェーンは個人経営の喫茶店のシェアを奪ってきた。
コメダは全国に店を広げ、郊外のロードサイドから都市部のビルの中まで、立地を増やしている。会社の計画では 2031 年 2 月期に国内 1,220 店ほどになる。国内の店数は、この先もゆるやかに増えるが、天井が見え始めている。
コストの面では、コーヒー豆、乳製品、小麦などの食材の相場と、人件費が上昇している。値上げで吸収する場面が増えるが、客数が落ちないかが分かれ目になる。直近は客単価が上がっても客足が保たれており、価格を決める力は強い。
競合では、星乃珈琲店を持つドトール・日レスホールディングスが、原材料高で苦戦したと報じられた。コメダが好調な背景には、規模による調達力の差がある。
海外では、台湾とシンガポールが中心だ。会社は 2031 年 2 月期に海外 180 店を目指す。ただ海外は、現地のコーヒー文化との相性が問われる。伸びれば効くが、国内の穴を埋める規模には 10 年かかる。
外食全体の需要は、景気と感染症に左右される。2021 年 2 月期は営業利益が 3 割落ちた。それでも赤字には沈まなかったのが、このモデルの強さだ。
資本政策と M&A
還元は厚い。前の中期計画では、5 年累計の総還元性向を 50% 以上としていた。実績は 50.9% で、約束を守った。今回の計画でも同じ 50% 以上を掲げる。2026 年 2 月期の配当は毎年増えており、2027 年 2 月期も増配の予想だ。
一方で、資本の使い方は変わりつつある。新しい計画では、5 年間の営業キャッシュフロー約 500 億円に、借入を足して使う。使い道は、成長投資に 500 億円、還元に 200 億円という配分だ。成長投資の内訳は、既存事業に 200 億円、M&A と新規事業に 300 億円とされる。
M&A は 2025 年のプーン社が初の大きな案件で、新しい業態や食材の供給網の獲得を狙う。筆者はここを最も注意して見ている。外食の買収は、ブランドも人も買う仕事で、失敗の例が多い。
借入を使う方針は、ROE を支える反面、財務の余裕を削る。純有利子負債はほぼゼロなので、すぐに問題にはならない。
また、コメダ自体が買われる可能性もある。kabufu の推定では、10 年以内の買収・TOB の確率は 18% ほどだ。ただし、これは確率の話にとどめる。
株主優待は株主に渡る現物の配当なので、還元に足した。年の費用は約 1.1 億円(株主約 201,526 人×100 株の年額面 2,000 円×単元以上の割合 0.7×大口の上乗せ 1.1×使われる割合 1.0×原価率 0.35。推定)。10 年で中立 11 億円(続く見込み 1.0)、悲観は 0.5 で 5 億円。費用は販管費に入って利益を既に下げているので、自己資本の流れには足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
コメダの強さは、他のチェーンが追いつけない所にある。居心地という価値で、客が値上げを受け入れている。26 年 2 月期は、加盟店への卸売の既存店売上が前年を 1 割近く上回った。
店数にはまだ余白がある。会社は 1,400 店という目標を掲げ、国内は都市部のビルや駅の近くなど、立地の幅を広げている。おかげ庵は 50 店以上に増える。抹茶と訪日客は追い風で、若い層と女性の客も取り込める。
海外は、店数が 180 に増える計画だ。台湾とシンガポールに加え、ASEAN の新しい国に出る。シンガポールのプーン社を足がかりに、現地での調達と運営が軌道に乗れば、海外も稼ぐ事業になる。
財務は堅く、利益の半分以上を株主に戻しながら、借入を使った M&A の余力もある。新しい業態を買って、国内の天井を超える筋書きも描ける。
これらがそろえば、店数は国内 1,400 店台、海外 250 店を超え、営業利益は 200 億円を超える。ROE は 15% 台に上がり、倍率も高くなる。
慎重な見方
国内の需要は、人口とともに細る。コメダの店数は既に 1,000 を超え、出店の適地は減っている。新しい店は、今ある店の客を取り合う形になりやすい。
利益率は、すでに下がっている。上場前に 30% を超えた営業利益率が 16% 台になったのは、食材と人件費の上昇を価格に乗せきれていない証拠でもある。加盟店の採算が悪化すれば、本部は支援に回らざるをえず、利益率はさらに下がる。
前の計画の目標だった 1,200 店は、1,150 店に終わった。新しい計画の 1,400 店も、同じように届かない恐れがある。海外 180 店は、今の 83 店から倍以上で、現地の競合と文化の壁を考えれば、かなり強気な計画だ。
海外の利益は 1 億円強で、プーン社の買収の効果はまだ見えない。外食の M&A は、ブランドと人の統合を誤ると価値を壊す。借入を使った買収は、失敗した時の傷が深い。
さらに、客足は景気や感染症で急に落ちる。2021 年 2 月期のように営業利益が 3 割落ちる局面が来れば、今の高い値段は保てない。
どちらに重みを置いたか
事業の堀では強気の見方が正しい。居心地という価値で価格を決められる点は本物で、国内の本部事業の利益率は 22% と高い。一方で、慎重な見方が突く成長の天井と利益率の低下も事実だ。
中立の筋書きでは、10 年後の時価総額が今を上回っても、資本コストを稼ぐには届かない。そのため、確率は中立を中心に置き、悲観を楽観よりやや厚くした。構造的な負けは起きにくいが、10% を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 3,691 円1,680 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 987 円449 億円)。 今の値に割り戻すと 2,633 円1,199 億円、今との差 −10.9%、 期待の年率 +4.7%(資本コスト 6.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,805 円3,098 億円 | 1,320 円601 億円 | +175.0% | +10.6% | 650 円296 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,013 円2,282 億円 | 1,136 円517 億円 | +108.1% | +7.6% | 1,353 円616 億円 |
| 中立 | 38% | 4,097 円1,865 億円 | 1,021 円465 億円 | +73.2% | +5.6% | 1,945 円886 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,023 円921 億円 | 846 円385 億円 | −2.9% | −0.3% | 631 円287 億円 |
| 悲観 | 10% | 415 円189 億円 | 575 円262 億円 | −66.5% | −10.4% | 99 円45 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,691 円1,680 億円 | 987 円449 億円 | +58.3% | +4.7% | 4,678 円2,130 億円 |
今の株価時価総額 2,955 円1,345 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 計画どおり 1,400 店、海外も稼ぐ会社に 利益 153 億円 · PER 20.3 倍 · 株価時価総額 6,805 円3,098 億円
会社の計画が、ほぼ思い通りに進む 10 年だ。国内は都市部のビルや駅の近くへ立地を広げ、おかげ庵が 100 店近くまで増える。国内の店数は 1,450 店に届く。モバイルオーダーや季節商品で 1 店あたりの売上が伸び、価格の指数は物価を 1 割ほど上回る。
海外は ASEAN の新しい国にも出て、250 店を超える。プーン社の調達と運営の仕組みが効き、海外の利益率は 1 割に乗る。
M&A は新しい業態を一つ取り込み、国内の天井を超える役目を果たす。ROE は 15% 台に上がる。この筋書きは、会社の計画がすべて当たる場合で、実現には出店の適地と加盟店の採算の両方が必要になる。
- 国内(コメダ珈琲店・おかげ庵など):数量 1,450(国内の店舗数(店。1 店あたりの客数は実質で横ばいと置く))× 価格 0.70(1 店あたりの本部の売上(億円・名目。食材卸売・ロイヤルティ・直営を含む))→ 売上 1,012 億円・営業利益 238 億円。国内 1450 店、1 店あたり今の 1.45 倍、利益率 23.5%
- 海外(台湾・シンガポールなど):数量 260(海外の店舗数(店))× 価格 1.02(1 店あたりの売上(億円・名目。円換算は 150 円で固定))→ 売上 266 億円・営業利益 27 億円。海外 260 店、1 店あたり今の 1.45 倍、利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 153 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.6% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.3 倍。全体の PER 20.25 倍、時価総額 3,098 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の店数・海外・M&A がほぼ全部そろう必要があり、前の計画が未達だった実績からも確度は高くない。
やや楽観 22% 計画の 8 割で進み、利益は着実に伸びる 利益 119 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 5,013 円2,282 億円
国内の出店が計画の 8 割ほど進み、海外が 200 店に近づく 10 年だ。国内の店数は 1,320 店になる。値上げは物価をわずかに上回り、1 店あたりの売上は着実に増える。
おかげ庵が都市圏に定着し、若い層と訪日客の取り込みが利益を押し上げる。国内の利益率は 22% 台を保つ。
海外は台湾とシンガポールで店数を伸ばし、利益率は 8% に届く。一方で、新しい国への展開は一部が失敗し、撤退も起きる。ROE は 13% ほどで、資本コストを十分に上回る。
中立との違いは、国内の店数が 90 店ほど多いことと、値上げが物価を少し上回ることだ。M&A は小さな案件が一つ成功し、新しい稼ぎの柱になりかけるが、全体を押し上げるほどの規模ではない。
- 国内(コメダ珈琲店・おかげ庵など):数量 1,320(国内の店舗数(店。1 店あたりの客数は実質で横ばいと置く))× 価格 0.66(1 店あたりの本部の売上(億円・名目。食材卸売・ロイヤルティ・直営を含む))→ 売上 877 億円・営業利益 197 億円。国内 1320 店、1 店あたり今の 1.38 倍、利益率 22.5%
- 海外(台湾・シンガポールなど):数量 200(海外の店舗数(店))× 価格 0.99(1 店あたりの売上(億円・名目。円換算は 150 円で固定))→ 売上 197 億円・営業利益 16 億円。海外 200 店、1 店あたり今の 1.40 倍、利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 119 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍。全体の PER 19.18 倍、時価総額 2,282 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の出店余地と値上げの力が残る前提で、実現しやすいが、中立より重くはしない。
中立 38% 店は増えるが鈍り、物価の分だけ育つ 利益 99 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 4,097 円1,865 億円
店は増えるが、増え方が鈍る 10 年だ。国内の店数は 1,230 店で、会社の計画をほぼ達成し、そのあとは頭打ちになる。1 店あたりの客数は実質で横ばいで、売上は物価並みに増える。
利益率は、コストの上昇を価格に乗せきれず、国内で 21% 台にやや下がる。海外は 150 店に増えるが、会社の計画ほどは伸びない。利益率は 6% 台にとどまる。
M&A は小さな案件に限られ、価値を大きく壊しも、上積みもしない。還元は利益の 5 割台を保ち、ROE は 11% 台に下がる。営業利益は 145 億円前後で、会社の 2031 年 2 月期の目標を 10 年かけて超える姿だ。 株主優待は年およそ 1.1 億円(会社の費用ベースの推定)。続く見込み 1.0 で 10 年 11 億円を還元に足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内(コメダ珈琲店・おかげ庵など):数量 1,230(国内の店舗数(店。1 店あたりの客数は実質で横ばいと置く))× 価格 0.65(1 店あたりの本部の売上(億円・名目。食材卸売・ロイヤルティ・直営を含む))→ 売上 794 億円・営業利益 171 億円。国内 1230 店、1 店あたり今の 1.34 倍、利益率 21.5%
- 海外(台湾・シンガポールなど):数量 150(海外の店舗数(店))× 価格 0.94(1 店あたりの売上(億円・名目。円換算は 150 円で固定))→ 売上 142 億円・営業利益 9 億円。海外 150 店、1 店あたり今の 1.34 倍、利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 99 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍。全体の PER 18.57 倍、時価総額 1,838 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:成熟した国内需要で、店数は計画を少し割り引いた水準、価格は物価並みという素直な置き方。
やや悲観 22% 出店が頭打ちで、客足がじわじわ減る 利益 61 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 2,023 円921 億円
国内の出店が頭打ちになり、既存店の客数がじわじわ減る 10 年だ。国内の店数は 1,080 店で、今とほぼ同じになる。値上げは物価に届かず、1 店あたりの売上は 3 割弱の増加にとどまる。
加盟店の採算が悪化し、本部は食材の卸価格を抑えて支えるので、国内の利益率は 18% に下がる。海外は 110 店で、利益はほぼ出ない。
M&A は期待した成果が出ず、一部を減損する。還元は利益の 6 割に高めるが、利益が伸びないので ROE は 8% 台に落ちる。優良な会社だった面影は残るが、成長株ではなくなる。
- 国内(コメダ珈琲店・おかげ庵など):数量 1,080(国内の店舗数(店。1 店あたりの客数は実質で横ばいと置く))× 価格 0.62(1 店あたりの本部の売上(億円・名目。食材卸売・ロイヤルティ・直営を含む))→ 売上 666 億円・営業利益 120 億円。国内 1080 店、1 店あたり今の 1.28 倍、利益率 18.0%
- 海外(台湾・シンガポールなど):数量 110(海外の店舗数(店))× 価格 0.90(1 店あたりの売上(億円・名目。円換算は 150 円で固定))→ 売上 99 億円・営業利益 2 億円。海外 110 店、1 店あたり今の 1.28 倍、利益率 2.0%
倍率:ROE 8.1% は k 6.75% を少し上回るが、やや悲観は稼ぐ力が落ちた構造で、新しい投資の稼ぎも薄れる。上限 14.0 倍に寄せず 14.36 倍に置いた。
確率:国内の店数の天井と利益率の低下が現に進んでおり、やや上振れより厚く置く。借入を使った M&A の失敗もここに入る。
悲観 10% 客を奪われ、構造的に稼ぐ力が傷む 利益 21 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 415 円189 億円
構造的に負ける 10 年だ。国内の喫茶需要が細り、コンビニのコーヒーや宅配に客を奪われる。加盟店の閉店が増え、国内の店数は 850 店に減る。
価格競争が続き、1 店あたりの売上は 1.15 倍にとどまる。本部は加盟店の支援に回り、国内の利益率は 13% まで下がる。
海外は採算がとれず、60 店まで縮小して赤字になる。借入を使った M&A が失敗し、減損で自己資本も傷む。ROE は 3% 台に落ちる。ブランドの力は残るが、稼ぐ力は今の 3 割ほどになる。
配当は利益の 7 割に高めて株主に戻すが、利益そのものが細るので、還元の総額も中立を大きく下回る。優良な外食本部という評価は崩れ、倍率は資本コストの逆数を下回る水準まで下がる。 株主優待は縮む前提(続く見込み 0.5)で、還元に 5 億円を足した。
- 国内(コメダ珈琲店・おかげ庵など):数量 850(国内の店舗数(店。1 店あたりの客数は実質で横ばいと置く))× 価格 0.55(1 店あたりの本部の売上(億円・名目。食材卸売・ロイヤルティ・直営を含む))→ 売上 471 億円・営業利益 61 億円。国内 850 店、1 店あたり今の 1.15 倍、利益率 13.0%
- 海外(台湾・シンガポールなど):数量 60.0(海外の店舗数(店))× 価格 0.70(1 店あたりの売上(億円・名目。円換算は 150 円で固定))→ 売上 42 億円・営業利益 −2 億円。海外 60 店、1 店あたり今の 1.00 倍、利益率 -5.0%
倍率:ROE 3.4% が k 6.75% を大きく下回る。優位を失った会社は、倍率を上げず稼ぐ力(純利益÷k)の範囲で 9.0 倍に置いた。売れる資産は、確かめられた額がないので床には足していない。
確率:構造の負けは堀があって起きにくいが、需要の蒸発(2021 年 2 月期に営業利益が 3 割減)の前例と M&A の失敗の可能性があり、5% を超えて置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内(コメダ珈琲店・おかげ庵など)
国内の加盟店への食材卸売、ロイヤルティ、直営店の売上。
| 数量国内の店舗数(店。1 店あたりの客数は実質で横ばいと置く) | 価格1 店あたりの本部の売上(億円・名目。食材卸売・ロイヤルティ・直営を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1,067 | 0.48 | 514 | 115 |
| 10 年後 中立 | 1,230 | 0.65 | 794 | 171 |
取り方:2026 年 2 月期末の総店舗数 1,150 のうち海外 83 を引いて国内 1,067 店と置いた。国内セグメント売上 514 億円を割ると 1 店あたり約 0.48 億円。数量は店数、物価と値上げは 1 店あたりの売上に入れた。
海外(台湾・シンガポールなど)
海外の店舗運営と、シンガポールのプーン社の事業。
| 数量海外の店舗数(店) | 価格1 店あたりの売上(億円・名目。円換算は 150 円で固定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 83.0 | 0.70 | 59 | 1 |
| 10 年後 中立 | 150 | 0.94 | 142 | 9 |
取り方:海外 83 店、セグメント売上 58.5 億円を割ると 1 店あたり約 0.70 億円。プーン社の売上を含む。利益は 1.4 億円で、まだ育てる段階。 数量は実物(海外の店舗数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
リスクと懸念
国内の店数の天井
国内は既に 1,000 店を超え、出店の適地は減っている。新しい店が既存店の客を取り合う(カニバリ)と、加盟店の採算が下がる。本部の利益は店数と 1 店あたりの売上の積なので、天井に近づくほど成長は物価頼みになる。前の計画の 1,200 店が未達に終わった点も重い。
利益率の低下
営業利益率は上場前の 30% 台から 16% 台に下がった。食材と人件費の上昇を、加盟店の採算を守りつつ価格に乗せるのは難しい。海外の低採算な事業の連結も押し下げる。この傾向が続けば、売上が伸びても利益は伸びにくい。
借入を使った M&A
新しい計画は、財務のレバレッジ(借入)を使った M&A を掲げる。外食の買収は、ブランドも人も買う仕事で、統合を誤ると価値を壊しやすい。今は純有利子負債がほぼゼロで余力はあるが、大型の失敗は ROE と配当の両方を傷める。
海外展開の遅れ
海外は 83 店から 180 店へ倍増する計画だが、利益は 1 億円強しかない。コーヒー文化も競合も国ごとに違い、ブランドの浸透には時間がかかる。シンガポールのプーン社の統合が順調かは、これから見えてくる。
景気と感染症
外食は景気と感染症に左右される。2021 年 2 月期は営業利益が 3 割ほど落ちた。赤字にはならなかったが、来店が止まれば、卸売の収入も加盟店の経営も同時に傷む。
加盟店の採算と人手不足
店を運営するのは加盟店で、人手不足と賃金の上昇が最も効く。オーナーの高齢化や後継者難で閉店が増えると、本部の卸売が細る。人の確保は、店数を増やす計画の足かせにもなる。
原材料と為替
コーヒー豆や乳製品などの食材は、国際相場と為替の影響を受ける。先物予約や複数社購買で和らげているが、急騰時は加盟店との利益の分け方で本部が負担を負う場面も出る。
今後の分かれ目
- 国内の 1 店あたりの既存店売上が 2 期続けて物価を下回って伸びたら
- 値上げが客足に響き始めたとみる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 国内の店数が年に 30 店を下回る純増にとどまったら
- 出店の天井が近いと判断する。楽観の確率を下げ、中立の店数を 1,230 店から下げる。
- 借入を使った M&A で、売上の 1 割を超える買収を発表したら
- 資本配分のリスクが跳ね上がる。成果が見えるまで悲観側に重みを置く。
- 海外の利益が 3 期続けて 5 億円を超えたら
- 海外が稼ぐ事業になったと判断し、楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 国内の営業利益率が 20% を割り込んだら
- コストが価格に乗らなくなったとみる。中立の利益率を下げる。
- 買収・TOB の提案が出たら
- 提案の価格が筋書きの価値とどう違うかを見る。価値を割る価格なら応じる理由は薄い。
見ておくもの
- 国内の店数の純増と、1 店あたりの既存店売上(四半期の決算説明資料)
- 国内・海外それぞれのセグメント利益率
- おかげ庵の店数(目標は 50 店以上)
- M&A の発表と、のれんや減損の動き
- 総還元性向(50% 以上の約束)と自己株式の取得
倍率と資本コストの決め方
倍率は、資本コスト 6.75%(循環 +0.25%・値決め力 −0.25%・借金 0・寿命 0 で quality は 0)と、長期の成長 4% から利益ベースの正当化 PER で出した。中立の ROE は 11% 台で、資本コストを上回るので PER の下限 1÷k(13.3 倍)は割らせない。今の PER や過去・同業の倍率は見ていない。店数は会社の計画を 2031 年 2 月期に 1,400 店と読んだうえで、過去の計画の未達(1,200 店に対し 1,150 店)を踏まえて割り引いた。価格は物価並みの 1.34 倍とし、数量は店数の側に置いた。コメダは加盟店が店を借りる形が中心で、本部のリース負担は小さいと見ているが、有報で確かめていない。新リース会計基準(2028/03 期から)では営業利益と借入の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ、家賃を営業費用に入れた形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17.7→20.25 倍・やや楽観 PER 15.7→19.18 倍・中立 PER 14.5→18.57 倍・やや悲観 PER 12→14.36 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。