結論
オーウエルは、大阪に本店を置く塗料と化学品、車載向け電子部品の専門商社だ。日本ペイントや関西ペイントなどの特約店として、自動車や機械の工場に塗料を届ける。筆者の結論は「本業は薄利で、割安とまでは言えない。ただ持ち合い株の厚みが、下値を支える」である。
まず稼ぐ力。売上は 683 億円あるが、営業利益は 12.6 億円で、利益率は 1.8% にとどまる。商社の薄い口銭で稼ぐ事業で、10 年先も大きくは変わらないと筆者は見る。自動車の国内生産が細れば、塗料の数量は減る。
次に資産。投資有価証券(持ち合い株)は 95 億円ほどあり、純資産 228 億円の 4 割に当たる。配当が純利益に入るため、稼ぎの一部は持ち合い株が生んでいる。
最後に株主還元。配当性向は 25% 程度で、純利益の多くは会社に残る。ROE は 8% 前後で、資本コストを下回る。持ち合い株の売却が進めば価値が表に出るが、縮減の数値目標は開示されていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安い資産に薄い事業がついた会社」だ。時価総額は純資産の 5 割強で、持ち合い株の価値だけで時価総額の 6 割強に届く。ここだけを見ると安全域は厚い。
だが、持ち合い株が株主に戻る道は細い。仕入先との関係維持が目的で、縮減の数値目標もない。配当は純利益の 25% にとどまり、積み上がった資本は ROE を押し下げる。筆者は、持ち合い株の価値を半分だけ認める。残りの半分は、戻る道が見えるまで数えない。
本業は、利益率 2% の商社だ。10 年後も大きくは変わらず、名目では物価の分だけ営業利益が増える程度とみる。
結論は、下値は固いが上値は重い。割安と言い切るには、資本の使い方に変化が要る。変化の兆しは、縮減の数値目標、配当性向の引き上げ、自社株買いの三つのどれかが示された時に表れるはずだ。
何で稼ぐ会社か
事業は 2 つある。柱はコーティング関連で、売上 479 億円、全体の 7 割を占める。日本ペイント系、関西ペイント系、大日本塗料、日本特殊塗料、神東塗料などの特約店として、塗料や表面処理剤、塗装設備、保護フィルムを自動車、船舶、機械、鉄鋼、建設の工場に売る。販売先は約 3,000 社、仕入先は約 2,000 社。自動車メーカー向けが売上の約半分とされる。
残りはエレクトロニクス関連で、売上 204 億円。ドイツ TDK-Micronas のホール IC(磁気センサー)の代理店として、車載のセンサーやモーター制御の部品を売る。カーナビ向けソフトの販売も手がけるが、こちらは減っている。
セグメントの利益は合計 30 億円だが、全社の費用の調整が 17.5 億円ほど引かれ、営業利益は 12.6 億円に縮む。連結の従業員は 618 人。2025 年に塗料販売の明豊商事を買収し、2027 年 4 月に吸収合併する。
本社は大阪、技術センターは神奈川県座間市にあり、塗装の現場を管理するシステム(OLDAS)など、商社の枠を超えた開発も進めている。
優良さと弱いところ
優良さは、仕入先との関係の長さにある。日本ペイントや関西ペイントとの特約店契約は 1 年ごとの自動更新だが、取引は長く続き、主要メーカーが株主にもなっている。工場に塗料を切らさず届け、塗装の現場の相談にも乗る。この信用が参入を防ぐ。
ただし、堀は深くない。商社の利益は仕入先の方針で決まり、メーカーが直販に切り替えれば口銭は削られる。営業利益率が 2% を超えたことは、過去 10 年で一度もない。
資本の効率も低い。過去 10 年の ROE の中央値は 5.1%、直近でも 7.9% だ。売掛金など運転資金が重く、営業キャッシュフローは 2026 年 3 月期に 15 億円の支出だった。
弱点は 3 つ。薄い口銭、自動車産業への依存、使われない資本(持ち合い株)の厚さである。仕入先が株主である点は安定でもあり、交渉力の弱さでもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は国内の工場の稼働で決まる。塗料は自動車、機械、鉄鋼、建設に使われ、国内の自動車生産が細れば数量は減る。電動化で車体の構造が変わっても塗装は残るが、国内生産そのものは人口減と海外移転で緩やかに縮む。工場の自動化が進めば、塗装の現場が必要とする資材も変わる。筆者は塗料の数量を 10 年で 1 割減とみる。
2026 年 3 月期は、自動車の生産減でコーティング関連が減収減益になった。米国の通商政策で国内製造業の先行きが不透明になり、会社は中期計画の目標を下げた。
一方、価格は上がる。塗料メーカーの値上げが続き、商社の売上は物価に沿って伸びる。口銭率は変わらない前提だ。
エレクトロニクスは、車載センサーやモーター制御の需要が伸びる。ただ代理店の立場で、仕入先の方針と半導体の価格下落に左右される。
競争は、同業の塗料商社と、メーカーの直販になる。商社の機能は在庫、与信、現場対応だが、デジタル発注が広がれば中間の価値は薄れる。環境規制で塗料が水性や粉体に移る流れは、新しい配合の提案ができる商社には追い風になる。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。2026 年 3 月期の年間配当は、連結の配当性向で約 25%。純利益の多くは会社に残り、自己資本は 228 億円まで積み上がった。ROE は 8% 前後で、資本コストを下回る。
中期計画は、政策保有株式(持ち合い株)の縮減を掲げる。上場 249 銘柄、約 90 億円を持ち、2026 年 3 月期は 13 銘柄を売却した。縮減の数値目標は示されていない。売却益は純利益に入り、2027 年 3 月期の目標純利益 16 億円にも織り込まれる。
成長投資は M&A とベンチャー投資で、2025 年に塗料販売の明豊商事を買収し、CVC ファンドに約 10 億円を出した。大株主は日本ペイント、関西ペイント、大日本塗料の仕入先で、親会社はない。TOB の話は出ていない。株主優待は保有株数に応じた数千円相当の品で、年 1 億円未満と筆者は見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
持ち合い株と現金で時価総額の大半が説明できる。投資有価証券は約 95 億円、純資産 228 億円に対し時価総額は 123 億円にすぎない。本業は、おまけで付いてくる。持ち合い株の価値を半分しか認めなくても、本業にはほとんど値段が付いていない計算になる。
縮減は動き出している。2026 年 3 月期は上場 13 銘柄を売却し、売却益で 2027 年 3 月期の純利益目標を 16 億円に引き上げた。売却が進めば、資金は配当や自社株買いに回る余地がある。
本業も悪くない。エレクトロニクスは車載センサーとモーター制御の受注で、利益が 33% 増えた。塗料も、自動車の稼働が戻れば数量が回復し、仕入先の値上げで売上は伸びる。
明豊商事の買収で国内の塗料販売を広げ、合併で効率も上がる。ROE 8% 超の中期目標が達成されれば、純資産に対する評価の改善余地は大きい。仕入先が株主として名を連ねる安定した取引基盤も、景気の谷での下値を支える。
慎重な見方
本業の稼ぐ力が細い。営業利益率は 1.8% で、過去 10 年で 2% を超えたことがない。営業利益 12.6 億円に対し、純資産は 228 億円。ROE は 8% に届かず、資本コストを下回る。
持ち合い株は、売れる前提を置きにくい。縮減の数値目標がなく、取引先の関係維持が目的だ。仕入先の日本ペイントなどが株主で、売る側と買う側の関係が絡む。仕入先に頼む立場の商社が、株主である仕入先に株を持ち続けてもらう意味もある。売っても配当や自社株買いに回る保証はない。
自動車への依存は重い。国内生産は細り、米国の通商政策で先行きは不透明。会社は 2026 年 3 月に中期目標を下げた。純利益だけが上がったのは売却益のためで、本業は下方修正である。売却益は一度きりで、来期以降の利益の土台にならない。
営業キャッシュフローは 2026 年 3 月期に 15 億円の支出。運転資金が膨らみ、現金は 26 億円減った。商社の薄利は、メーカーの直販に弱い。ROE の目標は 8% 超だが、これは資本コストにも届かない水準である。
どちらに重みを置いたか
筆者は、持ち合い株の価値を半分だけ認め、本業は名目で横ばいと見た。確率は中立に 40%、やや悲観に 27%、悲観に 10%、やや楽観に 17%、楽観に 6%。強気の言い分の「売却が進む」は半分の戻り方で数字に入れ、慎重な言い分の薄利と自動車依存は、やや悲観の厚みで受けた。持ち合い株の価値は、悲観の床にも数える。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,089 円210 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 374 円38 億円)。 今の値に割り戻すと 1,222 円123 億円、今との差 +0.2%、 期待の年率 +7.3%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,742 円377 億円 | 546 円55 億円 | +251.4% | +13.4% | 257 円26 億円 |
| やや楽観 | 17% | 3,139 円316 億円 | 486 円49 億円 | +197.1% | +11.5% | 616 円62 億円 |
| 中立 | 40% | 2,445 円246 億円 | 397 円40 億円 | +133.0% | +8.8% | 1,137 円115 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,096 円110 億円 | 278 円28 億円 | +12.7% | +1.2% | 371 円37 億円 |
| 悲観 | 10% | 566 円57 億円 | 248 円25 億円 | −33.3% | −4.0% | 81 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,089 円210 億円 | 374 円38 億円 | +101.9% | +7.3% | 2,463 円248 億円 |
今の株価時価総額 1,220 円123 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% M&A と車載需要が噛み合い、口銭率が上がる 利益 23 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 3,742 円377 億円
国内の塗料商社を買い増し、販売先と物流の重なりを減らして利益率を高める。自動車の国内生産は横ばいで、塗料の数量は今の水準を保ち、仕入先の値上げを売上に乗せて単価は 10 年で 1.40 倍になる。
エレクトロニクスは、車載センサーとモーター制御の需要が伸び、取扱量は 1.25 倍。ホール IC の価格は下がるが、代理店としての利益は保つ。
営業利益は 25 億円(利益率 2.6%)、純利益は 23 億円。持ち合い株の縮減も進み、売却益と配当の増加で株主への還元が厚くなる。ただし利益の質は商社のままで、景気が悪化すれば在庫と与信のリスクを再び負う。
- コーティング関連:数量 7.0(取扱量(塗料・表面処理剤などの万トン換算))× 価格 96(1 トンあたり売上(万円)。設備・フィルムを含む)→ 売上 670 億円・営業利益 34 億円。塗料 取扱 1.00 倍 × 単価 1.40 倍、セグメント利益率 5.0%
- エレクトロニクス関連:数量 125(取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.20(取扱量 100 あたり売上の指数(2026/03 = 1.0))→ 売上 306 億円・営業利益 14 億円。電子 取扱 1.25 倍 × 価格 1.20 倍、セグメント利益率 4.6%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 13.35 倍、時価総額 353 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:明豊商事など国内の塗料商社の買収が利益に結びつき、車載センサーの代理店事業が伸びる筋書き。薄利の商社で利益率が 2.5% を超えるには複数の条件が重なる必要があり、確率は低い。
やや楽観 17% 口銭は保たれ、車載向けが利益を支える 利益 19 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 3,139 円316 億円
塗料の数量は今の 97% を保ち、単価は物価並みより少し高い 1.37 倍。販売先と仕入先の関係は変わらず、口銭率はほぼ今のまま推移する。
エレクトロニクスは取扱量が 1.1 倍に増え、利益率も 4.2% に上がる。ただし半導体の価格下落で、売上の伸びは物価に届かない。
営業利益は 21 億円(利益率 2.3%)、純利益は 19 億円。持ち合い株の縮減は緩やかに進むが、売却資金の使い道は M&A が中心で、株主への還元はあまり増えない。本業の利益が伸びるため、評価は上がるが、資本の効率は目標の ROE 8% 付近にとどまる。
- コーティング関連:数量 6.8(取扱量(塗料・表面処理剤などの万トン換算))× 価格 94(1 トンあたり売上(万円)。設備・フィルムを含む)→ 売上 636 億円・営業利益 32 億円。塗料 取扱 0.97 倍 × 単価 1.37 倍、セグメント利益率 5.0%
- エレクトロニクス関連:数量 110(取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.15(取扱量 100 あたり売上の指数(2026/03 = 1.0))→ 売上 258 億円・営業利益 11 億円。電子 取扱 1.10 倍 × 価格 1.15 倍、セグメント利益率 4.2%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 12.66 倍、時価総額 286 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自動車の国内生産が横ばいで、塗料の口銭率が保たれ、車載部品が伸びる筋書き。直近の利益率を超える点で、確率は中立より低い。
中立 40% 口銭率は今のまま、数量は緩やかに減り、利益は名目で横ばい 利益 13 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,445 円246 億円
自動車を中心とした国内の工場の稼働は緩やかに細り、塗料の取扱量は今の 9 割になる。単価は物価並みの 1.34 倍で、売上は 577 億円まで増える。
エレクトロニクスは車載センサーの伸びがカーナビ向けの減少を補い、取扱量は横ばい、価格は 1.10 倍。
営業利益は 14.5 億円で利益率は 1.8% と、いまと同じ。人件費など全社の費用は物価で増え、数量の減少を価格の伸びが吸収する形だ。純利益は 13 億円。持ち合い株は少しずつ減るが、売却益は一過性なので純利益には積み上げない。配当は純利益の 3 割程度で、自己資本はゆっくり厚くなる。
- コーティング関連:数量 6.3(取扱量(塗料・表面処理剤などの万トン換算))× 価格 92(1 トンあたり売上(万円)。設備・フィルムを含む)→ 売上 577 億円・営業利益 28 億円。塗料 取扱 0.90 倍 × 単価 1.34 倍、セグメント利益率 4.8%
- エレクトロニクス関連:数量 100(取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.10(取扱量 100 あたり売上の指数(2026/03 = 1.0))→ 売上 225 億円・営業利益 9 億円。電子 取扱 1.00 倍 × 価格 1.10 倍、セグメント利益率 3.9%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 212 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内生産の緩やかな縮みと、物価並みの値上げ、口銭率の維持を、過去 10 年の利益率の幅から落としどころとした。
やや悲観 27% メーカーの直販が進み、口銭が削られる 利益 5 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,096 円110 億円
国内の工場の稼働が下がり、塗料の取扱量は 2 割減る。メーカーが大口の顧客に直販を広げ、単価は 1.30 倍にとどまる。
エレクトロニクスも、車載向け半導体の価格下落と顧客の内製で、取扱量は 15% 減る。
営業利益は 5.6 億円(利益率 0.8%)、純利益は 5 億円。全社の費用は物価で増える一方、売上は伸びない。口銭の薄い商社は、売上が減ると固定費を吸収できず、利益が急に落ちる。配当は純利益に合わせて縮み、持ち合い株の売却が減損の穴埋めに使われる。取引先との関係で売れない株も残り、資本の効率はさらに下がる。
- コーティング関連:数量 5.6(取扱量(塗料・表面処理剤などの万トン換算))× 価格 89(1 トンあたり売上(万円)。設備・フィルムを含む)→ 売上 498 億円・営業利益 21 億円。塗料 取扱 0.80 倍 × 単価 1.30 倍、セグメント利益率 4.2%
- エレクトロニクス関連:数量 85.0(取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.05(取扱量 100 あたり売上の指数(2026/03 = 1.0))→ 売上 182 億円・営業利益 6 億円。電子 取扱 0.85 倍 × 価格 1.05 倍、セグメント利益率 3.4%
倍率:事業の純利益 4 億円、事業の自己資本 約 146 億円で、事業の ROE は 3% に届かない。ROE が k 以下の会社の PER は 1÷k(11.8 倍)が上限で、利益が細る途中のため上限の 7 割弱(8.0 倍)に置く。持ち合い株は 0.75 倍の 60 億円に戻り方 0.5 を掛ける。
確率:自動車の国内生産が細り、塗料メーカーの直販やデジタル発注で商社の口銭が削られる筋書き。薄利の商社では起きやすい。
悲観 10% 仕入先が直販に切り替え、商社の機能が細る 利益 3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 566 円57 億円
主要メーカーが特約店の役割を縮め、大口の顧客への直販に移る。自動車の国内生産は大きく縮み、塗料の取扱量は 35% 減る。単価は 1.20 倍にとどまる。
エレクトロニクスも、取扱量が 35% 減り、価格は上がらない。
営業利益は 3 億円(利益率 0.7%)まで落ちる。全社の費用は 4 割ほど削るが、それでも稼ぐ力は今の 4 分の 1 以下になる。
持ち合い株を売って現金化しても、その資金が株主に戻るとは限らない。財務は倒れないが、株主にとっては何年も報われない時期が続く。仕入先は大株主でもあり、売却の交渉は簡単には進まない。
- コーティング関連:数量 4.6(取扱量(塗料・表面処理剤などの万トン換算))× 価格 82(1 トンあたり売上(万円)。設備・フィルムを含む)→ 売上 373 億円・営業利益 14 億円。塗料 取扱 0.65 倍 × 単価 1.20 倍、セグメント利益率 3.8%
- エレクトロニクス関連:数量 65.0(取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.00(取扱量 100 あたり売上の指数(2026/03 = 1.0))→ 売上 133 億円・営業利益 3 億円。電子 取扱 0.65 倍 × 価格 1.00 倍、セグメント利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 3 億円で稼ぐ力(純利益÷k)は小さい。値は、持ち合い株の売却額(税引き後 80 億円を 30% 割り引いた 56 億円)の床で測り、今の自己資本 226 億円に 0.25 を掛けた 57 億円を置く。
確率:構造的な負けの筋書き。塗料メーカーが直販に切り替え、自動車の国内生産が大きく縮み、商社の口銭が奪われる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コーティング関連
日本ペイント系・関西ペイント系などの特約店として、塗料・表面処理剤・塗装設備・保護フィルムを自動車や機械の工場に売る。
| 数量取扱量(塗料・表面処理剤などの万トン換算) | 価格1 トンあたり売上(万円)。設備・フィルムを含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.0 | 68 | 479 | 23 |
| 10 年後 中立 | 6.3 | 92 | 577 | 28 |
取り方:取扱量の開示はない。売上 478.6 億円を、塗料・薬剤・設備・フィルムを含む 1 トンあたり売上 68 万円前後(筆者の推定)で割り、7 万トン換算とした。推定であり、実際の数量とずれうる。売上と利益はセグメント開示の実額(セグメント利益は全社費用を引く前)。
エレクトロニクス関連
TDK-Micronas のホール IC(磁気センサー)の代理店として車載部品を売る。カーナビ向けソフトの販売もある。
| 数量取扱量(2026/03 を 100 とした指数) | 価格取扱量 100 あたり売上の指数(2026/03 = 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.00 | 204 | 8 |
| 10 年後 中立 | 100 | 1.10 | 225 | 9 |
取り方:個数の開示がないため指数で置く。売上 204.1 億円、セグメント利益 7.6 億円(前期比 33% 増)は開示の実額。車載センサーとモーター制御の受注が伸び、カーナビ向けは減っている。
リスクと懸念
自動車の国内生産の縮み
塗料の売上の約半分が自動車向けとされる。国内生産が細り、米国の通商政策で先行きが不透明になれば、数量は減る。会社は 2026 年 3 月に中期計画の目標を下げた。
仕入先の方針と直販化
日本ペイントや関西ペイントとの特約店契約は 1 年ごとの自動更新で、メーカーの判断で条件が変わりうる。大口顧客への直販やデジタル発注が広がれば、口銭が削られる。
薄利と運転資金
営業利益率は 2% 未満で、売掛金などの運転資金が重い。2026 年 3 月期は営業キャッシュフローが 15 億円の支出になった。景気が悪化すれば、貸し倒れと在庫の評価損で利益が飛ぶ。
持ち合い株の価格と売却の遅れ
上場 249 銘柄、約 90 億円を持つ。株価が下がれば純資産と配当が減る。縮減の数値目標がなく、売却が進んでも資金が株主に戻るとは限らない。
エレクトロニクスの価格下落
ホール IC の代理店で、半導体の価格下落と仕入先の方針に左右される。カーナビ向けのソフト販売は減少が続く。
M&A の実行
2025 年に塗料販売の明豊商事を買収し、2027 年 4 月に合併する。統合が進まなければ、費用だけが残る。CVC ファンドへの約 10 億円の出資も、成果は見えにくい。
今後の分かれ目
- 持ち合い株の縮減に数値目標が付き、売却資金の還元(配当・自社株買い)が示される
- 持ち合い株の戻り方を 0.5 から上げられ、価値が上がる。
- 塗料メーカーが特約店の取引条件を変え、直販を広げる
- 口銭が削られ、やや悲観の確率を上げる。
- 営業利益率が 2.3% を超え、2027 年 3 月期以降も保たれる
- M&A の効果が出た合図で、やや楽観の確率を上げる。
- 自動車の国内生産が大きく落ち、塗料の取扱量が 1 割以上減る
- 数量の減少が価格上昇を上回り、営業利益が減る。悲観の筋書きに近づく。
- 営業キャッシュフローのマイナスが続く
- 運転資金の増加が構造的な問題になり、現金と配当の余力が細る。
見ておくもの
- コーティング関連の取扱量と口銭率(四半期)
- 営業利益率(2% を超えるか)
- 持ち合い株の売却額と、売却資金の使い道
- 塗料メーカーの特約店政策
- 営業キャッシュフローと運転資金
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化 PER の式(g 4%、k 8%、残る割合 1/2)から出し、ROE が k 以下の筋書きは 1÷k を上限にした。今の PER や PBR、同業の倍率は使っていない。数量は売上を推定の単価で割った推定値。持ち合い株は配当が純利益に入っているため、帳簿の額(80 億円、税引き後の推定)を余った資産として足すときは、利息の控除と戻り方 0.5 を掛けた。足し方は二重に数えないよう、事業の純利益から配当相当分だけを除いている。営業利益率は 1.8% と、過去 10 年の最良(1.9%)を超えない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→13.35 倍・やや楽観 PER 9.2→12.66 倍・中立 PER 9.5→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。