結論
久世は、首都圏のレストランやホテル、総菜の店に食材を届ける業務用の食品卸だ。自前のソースやスープの工場も持つ。筆者の結論は「やや割安」である。コロナ後に値上げと品ぞろえの見直しで利益率が3倍に上がり、今の値段はその稼ぐ力をほとんど見ていないからだ。
2026年3月期の営業利益は22億円で、コロナ前の最高の4倍近い。売上735億円に対し利益率は3.0%と、薄利の卸としては高い。中期計画の目標(2%)を2年早く超えた。
心配も二つある。一つは、この利益率が続くかだ。今期は物流拠点の整備と人件費で減益を見込む。もう一つは、還元の薄さである。配当性向は10〜15%しかなく、利益の大半が会社に残る。資本を厚くため込めば、自己資本利益率は下がっていく。
それでも、利益率が今の3%から2%台後半に下がる程度なら、今の値段は利益の5倍ほどにすぎない。筆者は、今の値段は本質価値を2割ほど下回ると見る。外食の景気の谷と、還元の薄さを差し引いてもなお安い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「地味だが、安く買える稼ぎ手」だ。首都圏の外食に食材を届ける仕事は、10年後も確実にある。個人店やホテルのように手間のかかる顧客に強いことは、大手が簡単には攻めてこない理由になる。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、純利益から物流の投資の上乗せを引いて、年12〜14億円ほどと筆者は見る。新しい物流センターの投資は重いが、利益に比べて大きすぎはしない。
気になるのは二つだ。一つはコロナで見た固定費の重さで、外食が止まれば赤字になる。もう一つは資本の使い方で、利益の9割近くを社内に残す。ためた資本が資本コストを上回って回らなければ、価値は増えない。
それでも、払う値段に対して安全域は大きい。今の時価総額は純利益の5倍ほどで、利益率がある程度下がっても元は取れる。筆者は、外食の景気の谷を何度か越える覚悟があれば、持つ価値のある事業だと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、外食の店が使う食材を集め、毎日届けることだ。肉、魚、野菜の加工品、冷凍食品、調味料、酒まで、何千もの品目をそろえ、レストランの厨房に必要な分だけ配る。顧客は町の飲食店から、ホテル、結婚式場、病院や学校の給食、駅や百貨店の総菜まで広い。首都圏が中心で、関西や東北にも拠点がある。
事業は二つに分かれる。売上の9割を占めるのが食材の卸売で、2026年3月期の売上は664億円、利益は26億円だった。もう一つが食材の製造で、子会社のキスコフーズがソースやスープ、ブイヨンを作る。売上は69億円と小さいが、利益は9億円あり、利益率は卸の3倍を超える。
本社の費用を差し引いた全社の営業利益は22億円だ。会社は、利益率を上げた理由を三つ挙げる。原価の高騰に合わせた値上げ、自社の商品(プライベートブランド)と付加価値の高い商品の販売、仕入れの見直しである。新規の顧客の開拓と、海外への輸出も伸びた。
物流は自前で持つ。2025年3月期に新しい物流センターを開き、今も拠点の整備を続けている。業務用の卸は、小口の荷物を毎日、決まった時間に届けることが価値になる。そのための倉庫と車と人の費用は重く、売上が落ちても簡単には減らない。
優良さと弱いところ
強みは、首都圏の外食に根を張った配送網と、自前の工場の組み合わせである。レストランは、品ぞろえが広く、少しずつ確実に届けてくれる卸を簡単には替えない。シェフが使い慣れたソースやブイヨンを作れることも、顧客をつなぎとめる。これが久世の堀、つまり他社がまねしにくい強みだ。
ただし、堀は深くない。業務用の食品卸には、トーホー、セントラルフォレストグループ、国分の業務用部門など競合が多い。値段の交渉では、大きなチェーンほど強い。利益率3%は、コロナ後の値上げの波にうまく乗れた面がある。
コロナは、この事業の弱さを見せた。外食が止まると、2021年3月期は売上が4割減り、営業赤字は23億円に達した。固定費の重い卸は、売上が落ちると一気に赤字になる。その後、国分グループ本社から出資を受け、立て直した。
立て直しの手腕は評価できる。中期計画の利益率2%の目標を2年早く超え、利益率は過去最高の3.0%に達した。筆者がいちばん評価するのは、値上げを顧客に受け入れてもらいながら、新しい顧客も増やした点だ。一方、資本の使い方は物足りない。配当性向は10〜15%と低く、利益の大半を社内に残している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業務用の食品卸は、外食の景気とともに動く市場だ。外食の市場は約25兆円あり、コロナで大きく落ち込んだあと、2024年には前の水準に戻った。訪日客の増加でホテルと観光の需要が伸び、総菜などの中食も広がっている。首都圏は人口が横ばいで、外食の数量は全国より底堅い。
値段は上がりやすくなった。原材料と物流の費用が上がり、外食の店も値上げを受け入れるようになった。卸は仕入れ値の上昇に自分の取り分を上乗せしやすい。この数年、業務用の卸の利益率はそろって上がった。ただ、値上げの波が落ち着けば、取り分の上乗せは難しくなる。
費用の側では、人手不足が重い。運転手と倉庫の人件費は物価以上に上がり、物流の2024年問題で運べる量も細った。卸はセンターの自動化と、配送の回数の見直しで対応している。久世も新しい物流センターに投資し、今期はその費用で減益を見込む。
競争の形は、大手の総合卸と、地域や業態に強い専門の卸が入り混じる。大きな外食チェーンは自前の物流を持つことも多い。久世の顧客は、個人店やホテル、給食など、小口で品目の多い先が中心だ。こうした顧客は大手の総合卸には手間がかかり、専門の卸の強みが生きる。業界の見通しでは、国内の食品の数量は横ばいから微減で、値段の上がりで金額が増える。筆者は、首都圏の外食に特化した卸は、全国平均より数量を保ちやすいと見る。
資本政策と M&A
還元は薄い。会社の配当性向の目標は10〜15%で、2026年3月期の配当の総額は約2.1億円にとどまる。純利益18億円の1割強だ。自社株買いの実績もほとんど無い。利益の大半は物流の投資と、自己資本の積み増しに回る。
大株主は国分グループ本社で、株の約2割を持つ。2022年に資本業務提携を結び、第三者割当で株を引き受けた。2024年には、久世の中国の子会社の持ち分の8割を国分に譲った。国分は食品卸の最大手で、久世にとって仕入れや物流の協力先でもある。創業家とみられる個人の大株主も上位に並ぶ。
この株主構成は、二つの意味を持つ。一つは、国分による完全子会社化の可能性だ。国分にとって久世は、首都圏の業務用の足場になる。もう一つは、還元が増えにくいことだ。大株主が還元を強く求めない限り、現金は社内にたまり続ける。
会社は2029年3月期に売上840億円、利払い・税・償却の前の利益(EBITDA)34億円の新しい計画を掲げた。今と同じ利益率を保ちつつ、売上を伸ばす計画である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益率の上昇は一時の追い風ではない。久世は値上げを通しただけでなく、自社の商品と付加価値の高い商品を増やし、仕入れも見直した。売上総利益率は2026年3月期にさらに0.7ポイント上がった。中期計画の利益率2%の目標を2年早く超え、3.0%に届いた。
顧客の層も強い。個人店、ホテル、結婚式場、給食、総菜と、小口で品目の多い先が中心だ。こうした顧客は手間がかかり、大手の総合卸が取りにくい。訪日客の増加で観光とホテルの需要が伸び、首都圏の外食は人口が減っても底堅い。
製造のキスコフーズは利益率12%を超える。シェフが使うソースやブイヨンは、一度採用されると替えにくい。卸と工場の組み合わせは、ほかの卸にない強みだ。
国分グループとの提携も効く。仕入れと物流で協力すれば費用は下がる。国分が完全子会社化を選べば、株主は上乗せの値段で売れる。今の値段は純利益の5倍ほどで、どの道を通っても安い。
純現金もあり、借金の心配は無い。
慎重な見方
利益率3%は山の数字だ。値上げの波に乗れたのは、原材料が一斉に上がった特殊な数年だったからだ。波が落ち着けば、顧客は値下げを求め、取り分は細る。会社自身が今期は減益を見込んでいる。物流拠点の整備、人件費、システムの費用は、これからも物価以上に増える。
外食は景気に弱い。コロナの時、久世の売上は4割減り、営業赤字は23億円に達した。物流の固定費は売上が落ちても減らない。次の不況や感染症で、同じことは起こりうる。物流センターを借りているなら、家賃も固定の約束として残る。
資本の使い方も物足りない。配当性向は10〜15%で、利益の大半が社内に残る。自己資本は毎年膨らみ、自己資本利益率は今の18%から下がっていく。ためた現金を高く回す使い道は、物流の投資のほかに見えない。
大株主の国分は、還元を求める株主ではない。むしろ取引の相手で、久世の利益の一部が国分との取引条件で調整される恐れもある。安いのには理由がある。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや強い。利益率は山に近いと見るが、値上げを通した力と新規の開拓は本物で、2%台後半なら十分に保てる。外食の景気の谷は確率で表し、悲観に11%を置いた。還元の薄さは倍率と現金の戻り方の低さで表した。中立に38%、楽観側に3割を置いた。
筆者は、利益率がコロナ前の1%未満に戻る姿は、外食の大きな谷が来ない限り考えにくいと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,825 円316 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 575 円27 億円)。 今の値に割り戻すと 3,553 円164 億円、今との差 +86.7%、 期待の年率 +14.5%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 13,749 円636 億円 | 1,081 円50 億円 | +679.3% | +22.8% | 1,186 円55 億円 |
| やや楽観 | 22% | 10,213 円472 億円 | 681 円32 億円 | +472.5% | +19.1% | 2,397 円111 億円 |
| 中立 | 38% | 7,598 円351 億円 | 590 円27 億円 | +330.3% | +15.7% | 3,111 円144 億円 |
| やや悲観 | 21% | 2,484 円115 億円 | 426 円20 億円 | +52.9% | +4.3% | 611 円28 億円 |
| 悲観 | 11% | 627 円29 億円 | 231 円11 億円 | −54.9% | −7.7% | 94 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,825 円316 億円 | 575 円27 億円 | +288.9% | +14.5% | 7,400 円342 億円 |
今の株価時価総額 1,903 円88 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 製造と新規が伸び、利益率が4%台へ 利益 32 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 13,749 円636 億円
首都圏の外食と観光の需要が伸び、取引先は10年で15%増える。自社の商品と付加価値の高い商品の比率が上がり、1店あたりの売上は物価を上回って4割増える。新しい物流センターの自動化が効き、卸の利益率は4%に上がる。
キスコフーズは製造の能力を増やし、外部の卸やチェーンへの販売を伸ばす。製造量は4割増え、利益率は13%になる。全社の営業利益は45億円前後、純利益は32億円になる。配当性向も少しずつ上がり、自己資本利益率は資本コストを上回り続ける。国分グループとの物流の協力も費用を下げる。中期計画の売上840億円を早めに超え、首都圏の業務用の卸として確かな地位を築く。
- 食材の卸売:数量 18.4(取引先の店舗数(千店・推定))× 価格 581(1店あたりの年間の売上(万円))→ 売上 1,069 億円・営業利益 43 億円。店舗1.15倍・1店の売上1.40倍・利益率4.0%(自社商品と自動化の効果)
- 食材の製造(キスコフーズ):数量 32.2(製造量(千トン・推定))× 価格 43(1トンあたりの売値(万円))→ 売上 138 億円・営業利益 18 億円。製造量1.40倍・単価1.40倍・利益率13%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍。全体の PER 17.53 倍、時価総額 568 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が過去最高の3.0%をさらに超える必要があり、外食の景気の谷も避ける筋書き。実現の道は狭く8%とした。
やや楽観 22% 利益率3%前後を保ち、売上が伸びる 利益 24 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 10,213 円472 億円
取引先は10年で5%増え、1店あたりの売上は物価並みに上がる。値上げの波が落ち着いても、自社の商品と仕入れの見直しで卸の利益率は3.7%を保つ。
キスコフーズの製造量は25%増え、利益率は12%を保つ。本社の費用は物価で増えるが、全社の営業利益は34億円、純利益は24億円になる。2029年3月期の計画は少し遅れて届く。配当性向は15%のままで、自己資本は大きく膨らむ。自己資本利益率は9%前後で、資本コストをわずかに上回る。
首都圏の訪日客と総菜の需要が支えになり、外食の景気の小さな谷は利益率を大きく崩さない。
- 食材の卸売:数量 16.8(取引先の店舗数(千店・推定))× 価格 569(1店あたりの年間の売上(万円))→ 売上 955 億円・営業利益 35 億円。店舗1.05倍・1店の売上1.37倍・利益率3.7%
- 食材の製造(キスコフーズ):数量 28.8(製造量(千トン・推定))× 価格 42(1トンあたりの売値(万円))→ 売上 121 億円・営業利益 15 億円。製造量1.25倍・単価1.37倍・利益率12%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍。全体の PER 16.55 倍、時価総額 404 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げを通した力と新規の開拓は本物で、今の利益率に近い水準が続く姿は十分ありうる。中期計画の売上目標に近い筋書きとして22%とした。
中立 38% 利益率は2%台後半に落ち着く 利益 19 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 7,598 円351 億円
首都圏の外食は人口が横ばいの中で底堅く、取引先の数は今と同じ程度を保つ。1店あたりの売上は物価並みに上がる。ただ値上げの波が落ち着き、人件費と物流費は物価以上に増える。卸の利益率は3.4%に下がる。
キスコフーズの製造量は15%増え、利益率は11%を保つ。本社の費用は物価で3割増える。全社の営業利益は26億円前後、利益率は2.6%になる。純利益は19億円で、今とほぼ同じ水準だ。
還元は配当性向15%のまま変わらず、自己資本は10年で2.5倍に膨らむ。自己資本利益率は7%台に下がり、資本コストに届かない。稼ぐ力は保たれるが、ためた資本が株主の利回りを薄める。
- 食材の卸売:数量 16.0(取引先の店舗数(千店・推定))× 価格 556(1店あたりの年間の売上(万円))→ 売上 890 億円・営業利益 30 億円。店舗1.00倍・1店の売上1.34倍(物価並み)・利益率3.4%
- 食材の製造(キスコフーズ):数量 26.5(製造量(千トン・推定))× 価格 41(1トンあたりの売値(万円))→ 売上 109 億円・営業利益 12 億円。製造量1.15倍・単価1.34倍・利益率11%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍。全体の PER 15.39 倍、時価総額 289 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げの波が落ち着き、人件費と物流費の上昇が利益率を少し削る、最も起こりやすい姿として38%とした。
やや悲観 21% 値下げ圧力と費用高で利益率が半分に 利益 9 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 2,484 円115 億円
原材料の相場が落ち着き、顧客は値下げを求める。大手の総合卸も業務用に力を入れ、取引先は1割近く減る。1店あたりの売上は物価に届かず、卸の利益率は2.6%に落ちる。
キスコフーズも競合のソースに押され、製造量は横ばい、利益率は9%に下がる。物流の家賃と人件費は固定費として残り、本社の費用も物価で増える。営業利益は12億円前後、純利益は9億円弱になる。自己資本は膨らみ続け、自己資本利益率は4%台に落ちる。
ためた現金の使い道は物流の投資のほかに見つからず、還元も増えない。株主の利回りは資本コストを大きく下回る。
- 食材の卸売:数量 14.7(取引先の店舗数(千店・推定))× 価格 519(1店あたりの年間の売上(万円))→ 売上 764 億円・営業利益 20 億円。店舗0.92倍・1店の売上1.25倍・利益率2.6%
- 食材の製造(キスコフーズ):数量 23.0(製造量(千トン・推定))× 価格 38(1トンあたりの売値(万円))→ 売上 88 億円・営業利益 8 億円。製造量1.00倍・単価1.25倍・利益率9%
倍率:事業ROEは4%台でk 8%を大きく下回る。稼ぐ力÷kは約11.8倍だが、利益率が下がり続ける筋書きなので上限の約3分の2の8.0倍。
確率:利益率3%は山に近く、会社自身が今期の減益を見込む。コロナ前の利益率は1%未満だった。元に近い水準へ戻る姿として21%とした。
悲観 11% 外食の大きな谷で赤字に戻る 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 627 円29 億円
景気後退と新しい感染症で、首都圏の外食が長く落ち込む。個人店とホテルの閉店が続き、取引先は2割減る。生き残ったチェーンは大手の総合卸に集約され、1店あたりの売上も物価に届かない。卸の利益率は1%に落ちる。
物流センターの家賃と人件費は固定費として残り、全社は営業赤字に戻る。キスコフーズの利益も細る。自己資本は赤字で削られ、ためてきた現金は運転資金と人員の整理に消える。コロナの時と同じく、外部の資本に頼る立て直しが再び必要になる。
国分グループとの提携は残るが、助けの条件は株主に厳しいものになる。
- 食材の卸売:数量 12.8(取引先の店舗数(千店・推定))× 価格 477(1店あたりの年間の売上(万円))→ 売上 611 億円・営業利益 6 億円。店舗0.80倍・1店の売上1.15倍・利益率1.0%
- 食材の製造(キスコフーズ):数量 19.6(製造量(千トン・推定))× 価格 35(1トンあたりの売値(万円))→ 売上 69 億円・営業利益 4 億円。製造量0.85倍・単価1.15倍・利益率6%
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。今の自己資本96.7億円のうち在庫と売掛金は回収できても、物流の設備は安くしか売れないので、今の自己資本に0.3倍を掛けた。
確率:コロナでは売上が4割減り営業赤字になった。景気後退か感染症で外食が長く落ち込み、大手に顧客を奪われる構造的な負けとして11%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食材の卸売
首都圏を中心に、レストラン・ホテル・給食・総菜の店へ食材を届ける。
| 数量取引先の店舗数(千店・推定) | 価格1店あたりの年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16.0 | 415 | 664 | 26 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 556 | 890 | 30 |
取り方:店舗数の開示は無い。個人店からホテルまで1店あたり年415万円前後と見て、売上664.3億円から約1.6万店の推定。千店×万円×0.1で億円。利益は二次情報のセグメント利益25.6億円(本社費の配分前)。
食材の製造(キスコフーズ)
業務用のソース・スープ・ブイヨンを作り、自社の卸とほかの卸を通じて外食に売る。
| 数量製造量(千トン・推定) | 価格1トンあたりの売値(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 23.0 | 31 | 71 | 9 |
| 10 年後 中立 | 26.5 | 41 | 109 | 12 |
取り方:製造量の開示は無い。業務用のソースとスープを1トン30万円前後と見て、売上70.7億円から約2.3万トンの推定。千トン×万円×0.1で億円。利益は二次情報のセグメント利益8.7億円。全社の営業利益22.0億円との差の約12億円は本社費で、筋書きでは物価で増やして別に引く。
リスクと懸念
外食の景気の谷
外食は景気と感染症に弱い。コロナの時は売上が4割減り、営業赤字は23億円に達した。物流の固定費は売上が落ちても減らないので、売上の1割減でも利益は大きく削られる。
値上げの波の終わり
利益率3%は、原材料の一斉の値上げに取り分を上乗せできた数年の結果でもある。相場が落ち着けば、顧客は値下げを求める。利益率が2%に戻るだけで、営業利益は3分の1減る。
人件費と物流費の上昇
運転手と倉庫の人件費は物価以上に上がる。今期は物流拠点の整備と人件費で減益を見込む。自動化の投資が利益に見合わなければ、費用だけが残る。
薄い還元と資本のため込み
配当性向は10〜15%と低く、利益の大半が社内に残る。自己資本が膨らむほど、自己資本利益率は下がる。ためた現金の使い道が物流の投資だけなら、株主の利回りは細る。
国分グループとの関係
国分は株の約2割を持つ大株主で、取引の相手でもある。完全子会社化の可能性があり、その値段で株主の取り分が決まる。取引の条件が国分に有利に動く恐れもある。
物流拠点の家賃と新リース会計
物流センターや拠点の家賃は、売上が落ちても払い続ける固定の約束だ。2028年3月期から新しいリース会計で借金のように載り、自己資本比率は見かけより下がる。
今後の分かれ目
- 減益の予想の今期も、営業利益率2.5%以上を保った
- 利益率の上昇が構造的とみて、やや楽観の確率を上げる。
- 外食の売上が景気後退で1割以上落ちた
- 固定費の重さが出る。やや悲観と悲観の確率を厚くし、卸の利益率を2%未満で見る。
- 配当性向を30%以上に上げる、または自社株買いを始めた
- 現金の戻り方を0.75以上に上げる。稼ぐ力は変わらないので倍率は据え置く。
- 国分グループが完全子会社化の提案をした
- 買付けの値段で評価が決まる。本質価値の計算は止め、分析の対象から外す。
- キスコフーズの製造の能力を増やし、外部への販売が伸びた
- 利益率の高い製造の比率が上がるので、楽観側の利益率を引き上げる。
- 2029年3月期の計画(売上840億円、EBITDA34億円)に届いた
- 規模と利益率の両立が確かめられたとみて、中立の数量を引き上げる。
見ておくもの
- 卸の売上総利益率と全社の営業利益率(2026年3月期3.0%)
- 外食の市場の売上と首都圏の客数
- 物流拠点の投資額と人件費の伸び
- 配当性向と自社株買い、純現金の残高
- 国分グループとの取引と資本関係の変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。資本コストは8%。還元が薄く自己資本が膨らむので、中立の10年後の自己資本利益率は7%台とkに届かず、PERの上限は1÷k≒11.8倍、中立はその85%に置いた。楽観側だけ資本コストを超えるので式の上限の9割とした。家賃は今と同じく営業費用に入れた形でそろえ、新リース会計で形が変わる点はリスクに書いた。悲観は今の自己資本に低いPBRを掛け、過去のPBRは使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→17.53 倍・やや楽観 PER 11→16.55 倍・中立 PER 10→15.39 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+1.0%を足した(決まりv2)。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。