結論
ワキタは、大阪に本社を置く建機レンタルの会社である。売上の8割が建機で、残りは介護・カラオケ機器の商事と、賃貸不動産・ホテルだ。筆者の結論は割高である。会社に問題があるわけではない。資本に対する稼ぎが薄すぎる。
自己資本は1,000億円を超えるのに、純利益は30億円台にとどまる。ROEは3%台で、資本コストの半分に届かない。しかも配当は純利益を上回る。払うほど自己資本は育たず、利益も増えにくい。
稼ぎ頭は意外にも不動産だ。売上は全体の6%だが、営業利益では3分の1強を占める。建機は売上の割に利益が薄く、営業利益率は4%に届かない。
10年の中立では、物価の上昇と介護事業の通年化で、純利益は7割近く伸びる。それでもROEは6%台で、資本コストには届かない。筆者は、今の値段がこの先の改善をかなり織り込んでいると見る。
割安に転じる道は、資本政策にある。眠る資産を売り、株主に返せば、ROEは大きく上がる。ただ創業家が筆頭株主で、これまで動かなかった。この道は少数の筋書きに置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社から取れる「株主のもの」の利益は、見かけより少ない。純利益は35億円だが、機械の更新に年々お金が出ていく。減価償却は73億円、機械代金の割賦の返済は64億円だ。利益と現金は、思ったほど手元に残らない。
経営の資本の使い方は、評価が割れる。財務は堅く、配当も厚い。だが1,000億円超の自己資本が、ROE3%台でしか働いていない。資本コストを下回る稼ぎの会社では、ためた利益は額面どおりの価値を持たない。
堀、つまり他社がまねできない強みは、広くない。機械は買えば誰でも貸せる。差がつくのは拠点網、整備、稼働率の管理で、どれも時間をかけて磨く種類のものだ。不動産とホテルは安定しているが、本業の資本効率を埋めるほど大きくない。
安全域は、資産にある。純現金、持ち合い株、賃貸不動産を保守的に売ると、悲観でも400億円前後の床が見える。それでも今の値段の4割強にすぎない。払う値段に見合う優良さがあるかと問えば、筆者の答えは否である。
何で稼ぐ会社か
ワキタは、建機事業・商事事業・不動産事業の3本で成り立つ。2026年2月期の売上932億円のうち、建機が768億円、商事が108億円、不動産が56億円だ。営業利益は建機28億円、商事6億円、不動産18億円である。
建機事業は、土木・建設機械を建設会社に貸し、売る。中心はレンタルで、機械を買い、貸し、整備し、使い終えたら中古で売る。利益を決めるのは稼働率と貸出単価だ。国内の拠点を、買収と新規出店で広げている。ICT(情報通信技術)を使った施工支援や、仮設資材の分野への進出も進める。
商事事業は、業務用カラオケ機器と介護の2本立てだ。介護は福祉用具のレンタルで、2025年12月にケアレックスを買収し、グループの拠点は87になった。買収額は発行済みの8割分で52億円だ。2026年2月期には3か月分しか入っておらず、次の期から通年で効く。
不動産事業は、オフィスビルとマンションの賃貸、戸建ての分譲、ホテルの運営である。株主優待の宿泊先であるホテルコルディアもここに入る。賃貸不動産などの設備は、帳簿で約350億円ある。
資金の使い方にも特徴がある。機械の代金は割賦、つまり分割払いで払う。今期の返済は64億円で、減価償却の73億円と並ぶ大きさだ。さらに外部から借りて使う設備の契約残高が、約170億円ある。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、そこそこと見る。強みは3つある。拠点網と整備の力、自己資本比率69%の厚い財務、景気に左右されにくい不動産の収益だ。買収と出店で、介護でも建機でも拠点を増やしてきた。
弱みは、価格を自分で決めにくいことだ。建機レンタルは市場が1.2兆円ほどで、アクティオやカナモトなど大手が上位を占める。ワキタの建機は770億円で、規模では下の集団にいる。機械の購入価格が上がった2024年2月期には、料金への転嫁が遅れた。
資本効率はこの10年で悪化した。営業利益率は2015年2月期の15%から、2026年2月期は6%まで下がった。ROEは6.6%から3.4%になった。純資産にあたる自己資本は823億円から1,015億円へ増えたのに、利益は減った。
経営については、創業家の社長が取締役会の議長も兼ねる。会社は中期計画でROE5%を掲げるが、資本コストよりずっと低い。株主への払い出しは厚く、配当と優待は利益を超える。ただ、稼ぐ力を上げる策は見えにくい。筆者がいちばん気にしているのは、この資本配分である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建機レンタルの国内市場は、1兆2千億円ほどである。経産省の統計では2022年が1兆1,884億円だった。上位はアクティオ(売上約3,600億円)、カナモト(約2,100億円)、ニシオHD、レンタルのニッケン(約1,400億円)で、ワキタの建機は770億円だ。
数量は実質で横ばいに近い。国内の建設投資は人口減で伸びにくい。一方で、老朽インフラの更新、防災、都市の再開発、データセンター建設が下支えする。人手不足の中で、建設会社が機械を自分で持たず借りる流れも続く。筆者は、10年で市場が実質5%ほど増えれば上出来と見る。
価格は物価に連動しやすいが、遅れる。機械の購入価格やメーカーの値上げが先に来て、料金が追いかける。同業が値下げで稼働率を取りに来る局面では、転嫁は進まない。固定費が重い事業なので、稼働率が数ポイント動くだけで利益が大きく振れる。
介護の福祉用具貸与は、2023年度に約4,300億円だった。高齢者が増えるので数量は2030年代まで伸びる。ただ貸与の価格には上限があり、物価ほど上がらない。船井総研は市場が成熟期に入ったと指摘している。小さな事業者が多く、買収で拠点を増やす余地はある。
循環のどこにいるかといえば、今は増益の局面だ。2027年2月期の第1四半期は営業利益が約11%伸びた。ただ過去10年は、売上が6割増えても営業利益は増えなかった。局面の良さだけで10年を語れない。
資本政策と M&A
資本政策は、会社が株主に厚く払う形だ。配当は2028年2月期まで今の水準以上を続ける方針で、総額は約50億円になる。純利益の約35億円を上回る。これに株主優待が加わり、優待の引当金は2026年2月期に5.5億円積み増した。
買収では、2025年12月にケアレックスを子会社にした。8割で52億円だから、会社全体では65億円の勘定だ。売上59億円に対し営業利益は3億円弱で、営業利益の約22倍を払った。残る2割は1年半から2年後に買い取る予定で、追加の支出もある。
持ち合い株は上場185銘柄、帳簿で58億円ある。前期から約27億円増えた。資産効率の改善を掲げる会社としては、整理の姿勢は弱い。
買われる側になる可能性は、少なくない。創業家の資産管理会社が共同保有を含め約12%を持ち、2026年5月に増やした。議決権の約半数は安定株主だ。ストラテジックキャピタルは毎年株主提案を出し、2025年には非公開化の検討委員会の設置を求めた。同社の保有は2025年8月に5%未満へ下がった。
10年の還元は、今の配当(年約50億円)を維持する前提で、中立は純利益の1.15倍。差は手元の資金で払い、余った現金は別に数えていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
資産が厚すぎるからこそ、変われば伸びしろが大きい。自己資本1,000億円超のうち、現金、上場株、賃貸不動産は稼ぎに回っていない。これを売って株主に返せば、利益は変わらずにROEが跳ね上がる。会社はすでに資産効率を方針に掲げ、創業家が持株を12%近くまで増やした。非公開化や大型の自社株買いに動く余地は残っている。
本業も良い方向にある。2027年2月期の第1四半期は、建機の賃貸が伸びて営業利益が約11%増えた。人手不足で建設会社は機械を借りる側に回り、レンタル需要は底堅い。仮設資材への進出とICT施工の提案は、稼働率と単価の両方を押し上げる。
介護は、買収した拠点網が通年で効き始める。ケアレックスの売上は59億円で、2026年2月期にはほとんど入っていない。福祉用具の拠点は87まで増え、業界で3位の規模になった。高齢者が増える2030年代まで数量は伸びる。
物価が年3%上がる世界では、取得済みの機械と賃貸不動産の帳簿価額は据え置かれ、料金と賃料だけが上がる。利益は名目で伸び、配当を厚く払っても現金が減りにくい。会社の5%というROE目標は、過去10年の水準を超えれば達成できる。
慎重な見方
資本効率が低いまま動かない会社に、割高の値段を払う理由はない。ROEは3%台で、資本コストの半分に届かない。株主提案が5年続いても、創業家が議決権の半数近い安定株主を背に動かなかった。ROE5%という目標そのものが低く、達成しても資本コストに届かない。
建機は、価格を決められない事業である。アクティオやカナモトが規模で勝り、稼働率を取りに来れば、料金は下がる。固定費が重く、減価償却は73億円、外部から借りる設備の契約は約170億円ある。稼働率が少し落ちるだけで、営業利益率4%のこの事業は赤字に近づく。過去10年、売上が6割増えても営業利益は増えなかった。
稼ぎ頭の不動産は、一時の売却益に振れる。2025年2月期には横浜の物件の売却益が7.6億円出て、翌期は反動で不動産の営業利益が26%減った。ホテルは万博の追い風が終わる。優待の宿泊券も毎年の費用だ。
介護の買収は高い買い物だった。営業利益の約22倍を払い、残る2割の追加支出もある。介護報酬と貸与価格の上限は国が決めるので、規模を持っても価格は取れない。買収で売上は増えたが、商事の利益率は下がっていると指摘される。配当が純利益を上回る状態は長く続けられず、続ければ現金が減る。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、資産を稼ぎに回す道を描くが、その道を決める創業家が5年以上動かなかった。慎重な見方の、資本効率の低さと価格を決められない事業という指摘のほうが、10年の見通しとしては強い。
このため中立は、物価と介護の通年化で利益が伸びても、ROEが資本コストに届かない姿にした。確率は、慎重側のやや悲観を厚く、強気側の楽観は薄く置いた。それでも悲観の底は、現金と不動産が支える。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,062 円1,025 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,075 円535 億円)。 今の値に割り戻すと 1,788 円889 億円、今との差 −3.9%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,921 円1,950 億円 | 1,649 円820 億円 | +199.5% | +11.6% | 390 円194 億円 |
| やや楽観 | 19% | 2,962 円1,473 億円 | 1,287 円640 億円 | +128.4% | +8.6% | 807 円401 億円 |
| 中立 | 40% | 2,396 円1,191 億円 | 1,066 円530 億円 | +86.1% | +6.4% | 1,385 円689 億円 |
| やや悲観 | 25% | 816 円406 億円 | 945 円470 億円 | −5.3% | −0.5% | 440 円219 億円 |
| 悲観 | 9% | 694 円345 億円 | 583 円290 億円 | −31.3% | −3.7% | 115 円57 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,062 円1,025 億円 | 1,075 円535 億円 | +68.7% | +5.4% | 3,137 円1,560 億円 |
今の株価時価総額 1,860 円925 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 資本政策が動き、建機も介護も伸びる 利益 95 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 3,921 円1,950 億円
資本政策が動き、建機も介護も伸びる。創業家が会社を非公開化するか、大型の自社株買いと資産の売却で資本を絞る。賃貸不動産の一部とホテルを売り、持ち合い株を整理して、10年で820億円を株主に返す。
建機は、人手不足でレンタル化が進み、国内市場が実質1割ほど増える。拠点の買収と出店、仮設分野への進出で、ワキタのシェアが1.25倍になる。稼働率が上がり、料金も物価を少し上回って上がる。
介護は、ケアレックスが通年で効いたうえ、小さな事業者の買収が続く。拠点は100を超え、商事の売上は300億円に近づく。営業利益は、建機が約90億円、不動産が約32億円、商事が約21億円になる。ROEは11%を超え、資本を効率よく使う会社に変わる。
- 建機事業:数量 17,500(国内建機レンタル・販売の対象市場(億円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.40(値段の指数(今を1.00))→ 売上 1,506 億円・営業利益 90 億円。利益率6.0%
- 商事事業:数量 9,804(福祉用具貸与の市場(億円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.20(値段の指数(今を1.00))→ 売上 295 億円・営業利益 21 億円。利益率7.0%
- 不動産事業:数量 406(保有する賃貸不動産などの帳簿価額(億円・今の値段))× 価格 0.22(資産1億円あたりの年間売上(億円。賃料・単価の名目の指数))→ 売上 90 億円・営業利益 32 億円。利益率35.0%
倍率:事業の純利益 95 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 7.20% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.13 倍、時価総額 1,629 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:創業家が非公開化や大型の自社株買いに動き、同時に建機と介護も伸びる必要がある。創業家はこれまで動かず、株主提案も通らなかったので薄く置いた。TOB・買収が10年内に起きる確率の参考値は約19%だが、買収価格は本質価値と別なので、そのままは使わない。
やや楽観 19% 稼働率と介護の通年化で少し上向く 利益 75 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 2,962 円1,473 億円
建機の稼働率と介護の通年化が効き、資本効率が少しだけ上向く。会社は配当を保ちつつ、自社株買いを小さく足し、10年で640億円を返す。
建機は、市場が実質8%ほど増え、シェアも拠点の買収で1.15倍に広がる。料金は物価をわずかに上回る。営業利益率は5%台に乗り、大手との差が少し縮む。
商事は、ケアレックスの通年化に加え、介護の買収が1〜2件続く。不動産は、賃料が物価並みに上がり、バリューアップで資産の価値が少し上がる。それでもROEは資本コストと並ぶ8%程度にとどまる。創業家の姿勢が変わらず、資本の使い方が大きくは動かない、という前提の筋書きだ。
- 建機事業:数量 15,525(国内建機レンタル・販売の対象市場(億円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.37(値段の指数(今を1.00))→ 売上 1,307 億円・営業利益 69 億円。利益率5.3%
- 商事事業:数量 8,301(福祉用具貸与の市場(億円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.17(値段の指数(今を1.00))→ 売上 244 億円・営業利益 15 億円。利益率6.2%
- 不動産事業:数量 381(保有する賃貸不動産などの帳簿価額(億円・今の値段))× 価格 0.21(資産1億円あたりの年間売上(億円。賃料・単価の名目の指数))→ 売上 82 億円・営業利益 27 億円。利益率33.0%
倍率:事業の純利益 75 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.20% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.76 倍、時価総額 1,103 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:稼働率の改善と介護の通年化は、すでに数字に出始めている。資本政策が大きくは動かない前提で、無理のない上振れを厚めに置いた。
中立 40% 中立:利益は伸びるが資本コストに届かない 利益 58 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 2,396 円1,191 億円
物価と介護の通年化で利益は伸びるが、資本効率は資本コストに届かない。建機は、市場が実質4%ほど増え、シェアは買収で1.1倍になる。料金は物価並みに上がり、営業利益率は4.5%と、2025年2月期並みに戻る。
商事は、ケアレックスの通年化で売上が伸び、介護報酬の制約で価格は物価ほど上がらない。利益率は5%にとどまる。不動産は、賃料が物価の7割程度で上がり、売却益は見込まない。
配当は今の水準を維持し、10年で530億円を払う。自己資本はほぼ横ばいで、純利益は58億円まで増えてもROEは6%台だ。筆者は、これがこの会社の実力どおりの10年だと見る。
- 建機事業:数量 14,300(国内建機レンタル・販売の対象市場(億円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 1,178 億円・営業利益 53 億円。利益率4.5%
- 商事事業:数量 6,983(福祉用具貸与の市場(億円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.12(値段の指数(今を1.00))→ 売上 196 億円・営業利益 10 億円。利益率5.0%
- 不動産事業:数量 353(保有する賃貸不動産などの帳簿価額(億円・今の値段))× 価格 0.21(資産1億円あたりの年間売上(億円。賃料・単価の名目の指数))→ 売上 73 億円・営業利益 23 億円。利益率31.0%
倍率:事業の純利益 58 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 7.20% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.89 倍、時価総額 803 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物価の上昇と介護の通年化で利益が伸びる、会社の実力どおりの姿。これまでの中期計画は未達が多く、慎重な見方がやや強いので、中立を中心に置きつつ悲観側を厚くした。
やや悲観 25% 料金競争と介護の停滞で緩やかに悪化 利益 38 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 816 円406 億円
建設投資が実質で減り、料金競争が強まる。国内の建設投資は人口減で縮み、レンタル市場の数量は3%ほど減る。大手が稼働率を取りに来て、料金の上がり方は物価に届かない。営業利益率は3%台に下がる。
介護は、ケアレックスの統合が思うように進まず、報酬の制約で価格が伸びない。商事の利益率は4%を割る。不動産は、賃料の伸びが鈍り、一部を売って現金を作る。
配当を保つために現金が減り、10年で470億円を払う。ROEは4%台にとどまる。それでも資産が厚く、悲観の中では床が見える筋書きだ。介護は買収した拠点を維持するだけの守りに入り、新しい出店や買収は止まる。建機の営業利益は、新しい機械を入れるより、今ある機械を長く使うことで保つ。創業家は動かず、資本の使い方は変わらない。
- 建機事業:数量 12,125(国内建機レンタル・販売の対象市場(億円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.28(値段の指数(今を1.00))→ 売上 954 億円・営業利益 32 億円。利益率3.3%
- 商事事業:数量 5,870(福祉用具貸与の市場(億円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.05(値段の指数(今を1.00))→ 売上 155 億円・営業利益 6 億円。利益率3.8%
- 不動産事業:数量 335(保有する賃貸不動産などの帳簿価額(億円・今の値段))× 価格 0.19(資産1億円あたりの年間売上(億円。賃料・単価の名目の指数))→ 売上 64 億円・営業利益 18 億円。利益率28.0%
倍率:床は純現金・持ち合い株・賃貸不動産を保守的に売った額(今の自己資本に掛けるPBR0.40倍)。稼ぐ力(純利益÷k)は約459億円で、床のほうが大きい。
確率:資本効率が10年で悪化し、営業利益が増えなかった実績がある。大手との料金競争と、介護買収の高値づかみで、緩やかに悪化する筋書きは起こりやすい。慎重な見方が強いので厚く置いた。
悲観 9% 建設投資の縮小と介護の失敗が重なる 利益 17 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 694 円345 億円
建設投資の縮小と値下げ競争に、介護の失敗が重なる。公共投資が減り、市場は実質で1割以上縮む。ワキタは稼働率を落とし、料金は物価に追いつかない。償却と外部リースの固定費が重くのしかかり、建機の利益はほぼ消える。
介護は、ケアレックスの統合に失敗してのれんを減損し、拠点を絞る。不動産は、空室とホテルの不振で収益が落ち、売却を急ぐ。
配当は減らさざるをえず、10年の払い出しは290億円にとどまる。ROEは2%を割る。会社の稼ぐ力は落ちるが、現金と不動産と持ち合い株の価値が、値段の下支えになる。ただ、機械の更新は止まり、拠点も減る。10年後のワキタは、利益を生む会社というより、資産を抱えた会社として見られる。
- 建機事業:数量 10,450(国内建機レンタル・販売の対象市場(億円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.15(値段の指数(今を1.00))→ 売上 739 億円・営業利益 11 億円。利益率1.5%
- 商事事業:数量 5,057(福祉用具貸与の市場(億円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 0.95(値段の指数(今を1.00))→ 売上 121 億円・営業利益 1 億円。利益率1.0%
- 不動産事業:数量 300(保有する賃貸不動産などの帳簿価額(億円・今の値段))× 価格 0.17(資産1億円あたりの年間売上(億円。賃料・単価の名目の指数))→ 売上 50 億円・営業利益 12 億円。利益率24.0%
倍率:床は純現金・持ち合い株・賃貸不動産の売却額(今の自己資本に掛けるPBR0.34倍)。稼ぐ力(純利益÷k)は約206億円で、床のほうが大きい。
確率:建設投資の縮小・値下げ競争・介護の失敗が同時に起きる必要がある。ただ固定費が重い事業なので、無視できない確率を置いた。悲観の底は現金と不動産が支える。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建機事業
土木・建設機械のレンタルと販売。機械を買い、貸し、整備し、中古で売る。国内の拠点網で建設会社に供給する。
| 数量国内建機レンタル・販売の対象市場(億円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア | 価格値段の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 12,500 | 1.00 | 768 | 28 |
| 10 年後 中立 | 14,300 | 1.34 | 1,178 | 53 |
取り方:国内の建機レンタル市場は2022年に1兆1,884億円(経産省統計)。販売などを含む対象市場を1.25兆円と置き、ワキタ建機の売上768億円を市場の約6.15%(rev_factor)とした。数量は市場の実質規模×相対シェア、価格は値段の指数。営業利益は建機セグメント利益28億円(優待引当の追加5.5億円を含む後の値)。
商事事業
業務用カラオケ機器の販売と、介護の福祉用具レンタル・卸。2025年12月のケアレックス買収で介護が通年で入る。
| 数量福祉用具貸与の市場(億円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア | 価格値段の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 4,300 | 1.00 | 108 | 6 |
| 10 年後 中立 | 6,983 | 1.12 | 196 | 10 |
取り方:福祉用具貸与の市場は2023年度に約4,300億円。カラオケ機器を含む商事の売上108億円を、この市場の約2.5%分として置く(カラオケ分を含む割り切り)。ケアレックス(年商59億円)は2026年2月期に3か月分しか入っておらず、10年の筋書きでは通年分を相対シェアに織り込む。営業利益は商事セグメント利益6.4億円。
不動産事業
オフィスビル・マンションの賃貸、戸建ての分譲、ホテルの運営。景気に左右されにくい安定収益の柱。
| 数量保有する賃貸不動産などの帳簿価額(億円・今の値段) | 価格資産1億円あたりの年間売上(億円。賃料・単価の名目の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 353 | 0.16 | 56 | 18 |
| 10 年後 中立 | 353 | 0.21 | 73 | 23 |
取り方:有報の設備表で不動産部(賃貸不動産等)の帳簿価額は約353億円。数量はこの資産量(実質)、価格は資産1億円あたりの売上で、賃料の上昇や分譲・ホテルの単価を含む。営業利益は不動産セグメント利益18.4億円。前期は売却益7.6億円が入り、今期は反動で減った。
リスクと懸念
資本効率が改善しないリスク
ROEは3%台で、中期計画の目標5%も資本コストに届かない。創業家が議決権の半数近い安定株主を背景に、株主提案にも動かなかった。眠る資産が眠ったままなら、利益が伸びても1株の価値は増えにくい。
建設投資と稼働率の振れ
公共投資や民間の設備投資が減ると、稼働率が落ちる。減価償却は73億円、外部から借りる設備の契約は約170億円あり、固定費が重い。稼働率が数ポイント動くだけで、営業利益率4%台の建機の利益は大きく振れる。
料金競争と転嫁の遅れ
アクティオ、カナモトなど大手は規模で勝る。機械の購入価格が上がる局面では、料金への転嫁が遅れる。2024年2月期に利益が伸び悩んだのはこの形だった。値下げで稼働率を取りに来られれば、利益率はさらに下がる。
介護買収の高値づかみと報酬の制約
ケアレックスは営業利益の約22倍、純資産の約4.6倍で買った。残る2割の追加支出もある。貸与価格には上限があり、規模を持っても価格を取れない。商事の利益率が下がっているとの指摘もあり、統合が遅れれば減損もありうる。
不動産の売却益頼みと優待費用
不動産は営業利益の3分の1強を稼ぐが、前期の横浜の物件売却益7.6億円の反動で、今期は26%減った。ホテルは万博の追い風が終わる。優待の引当金は5.5億円積み増しており、毎年の費用として利益を削る。
配当が利益を上回る状態の持続性
配当は約50億円で、純利益の約35億円を超える。差額は手元の現金から出る。利益が伸びなければ、現金の目減りか減配を迫られる。上場株を58億円持つなど、資金の使い方の優先順位も見えにくい。
新リース会計基準による見かけの変化
2028年3月期から、外部から借りる設備のリースが貸借対照表に載る。契約残高は約170億円で、純現金と自己資本比率が見かけ上、弱く見える。実態は変わらないが、比較には注意が要る。
今後の分かれ目
- 資産の売却や大型の自社株買いなど、資本効率の改善策が出たら
- ROEが上がるので、強気側の筋書きに確率を寄せる。売却益が一時的でないかは見分ける。
- 創業家が持株を増やし、非公開化に動いたら
- 買収価格が本質価値を上回るかが分かれ目になる。強気側に重みを移す。
- 建機の稼働率と貸出単価が、2年続けて改善したら
- 営業利益率4.5%以上が定着するので、中立から強気側へ寄せる。
- 建設投資や公共投資が実質で2年連続して減ったら
- 固定費の重さが効くので、弱気側の確率を上げる。
- ケアレックスの利益率が上がり、介護で拠点を増やしても商事の利益率が保たれたら
- 介護買収への評価を上げ、商事の前提を上方修正する。
- 商事の利益率が下がり続け、減損が出たら
- 介護買収の失敗として、やや悲観側に重みを移す。
見ておくもの
- 建機の稼働率・貸出単価・営業利益率
- ケアレックスを含む商事の売上と利益率
- 不動産の営業利益(売却益を除く)
- 配当・自社株買い・持ち合い株の売却
- 創業家・安定株主の持株の動き
- 設備代金の割賦払いと外部リースの残高
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。ROEがkに届く筋書きは正当化PERの9割強、届かない中立は1÷kの8割とし、今の株価は見ていない。悲観の床は過去のPBRではなく、純現金・持ち合い株・賃貸不動産を保守的に売った額から出した。賃貸不動産の時価は確認できないので、含み益は入れていない。10年後の数字は、新リース会計基準(2028年3月期以降)を入れず、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→17.13 倍・やや楽観 PER 12→14.76 倍・中立 PER 9.8→13.89 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した(決まりv2)。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.20% → 7.20%。