結論
神栄は、1887年創業の神戸の商社だ。冷凍の野菜や調理品、カシューナッツなどを主に中国から輸入し、外食や介護の施設に売る。売上の8割が食品で、ほかに湿度センサなどの電子部品も作る。筆者の結論は「ほぼ適正」で、割安に見える指標の多くは、株主の取り分にならない資産から来ている。
PERは6倍台、PBRは0.7倍だ。だが自己資本の4割近くは、取引銀行の株の値上がり益だ。MUFGや京都フィナンシャルグループの株を約70億円持ち、売る数値の目標は無い。銀行から120億円を借りている関係上、この株は簡単には手放せない。配当は利益に入っているが、株の値打ちそのものは株主に届かない。
事業は手堅い。人手不足で厨房の下ごしらえが外に出され、自然解凍の冷凍食品が伸びる。品質の管理の厳しい医療・老健の施設の販路も持つ。ただ、輸入の商社の利幅は薄く、過去12年の営業利益率の最高は4.5%だ。借入の金利が上がれば利払いが利益を削る。稼ぐ力に見合う値段は、ほぼ今の値段だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「帳簿は安いが、安さの中身が株主のものではない」例だ。PBR0.7倍の裏には、取引銀行の株の値上がり益がある。借入で結ばれた銀行の株は、事業を続ける限り売りにくい。配当は入るが、それは利益に数え済みだ。
事業そのものは、10年後も残るだろう。人手不足の厨房は冷凍の野菜と調理品に頼り続ける。品質の管理で医療・介護の客に選ばれる強みも、簡単には消えない。だが、輸入の商社の利幅は薄く、為替と原料の波をかぶる。過去には赤字が続き、自己資本が細った時期もあった。
株主のものになる利益は、純利益から在庫と売掛金の積み増しを引いた額だ。売上が伸びれば運転資金も増え、手元に残る現金は細い。筆者は、今の値段は稼ぐ力にほぼ見合っており、安全域は小さいと見る。持ち合いの株を売って借入を返すか、還元に回す方針が出れば、評価は変わる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は食品関連で、売上の8割、セグメント利益の4分の3を占める。中国などの協力工場で作った冷凍の野菜や調理品、冷凍の水産加工品を輸入し、外食・中食・給食・介護の施設に売る。インドやアフリカのカシューナッツなど、ナッツの輸入も大きい。
強みは品質の管理だ。産地の工場に人を送り、残留農薬や異物の検査を重ねる。病院や老人ホームのように、食品の安全の要求が厳しい客に選ばれる。人手不足で厨房の下ごしらえが外に出されるほど、自然解凍で出せる品や切ってある品の需要が増える。
残りは3つの事業だ。物資関連は建設機械や金属製品の輸出、建築金物、生活用品、アゼルバイジャンなど海外の防災の調査を手がける。電子関連は湿度センサやホコリセンサ、粒子の計測機器、輸送の試験機を作る。赤字続きのコンデンサは2026年4月に撤退を決めた。事業開発関連はテレビ通販の衣料品と、日本の食品の輸出を育てている。
お金の流れは商社そのものだ。仕入れた食品を在庫として約100億円持ち、売掛金も約60億円ある。これを銀行の借入約120億円で賄う。利益は薄く、在庫を回すほど借入の金利が効いてくる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは細い。冷凍食品の輸入は、ニチレイフーズやマルハニチロ、味の素冷凍食品のような大手のメーカーと、多くの専門の商社が競う。神栄の強みは、産地の工場の管理と、医療・介護の施設の販路だ。ここは長年の積み重ねで、すぐには崩れない。
だが値段を決める力は弱い。原料の値段と為替が動けば、値上げで追いかけるしかない。客の外食や施設も値上げを渋る。2026年3月期は柔軟な価格の改定で利益率を保ったが、円安と原料高が重なった年には利益が大きく削られた。
資本効率は、見た目ほど良くない。ROEは2024年3月期に20%を超えたが、2016年から2020年は赤字の年が多く、自己資本は16億円まで細った。今のROE12%台も、銀行の株の値上がり益を除けば2割ほど高く見える。経営は中計で資本コストを上回る収益を掲げ、自己資本比率を37%まで戻した。立て直しの手腕は評価できる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
冷凍食品の市場は、量で見ても伸びている数少ない食品の分野だ。共働きと単身の世帯が増え、外食・中食・介護の施設は人手不足に苦しむ。下ごしらえ済みの冷凍の野菜や、温めるだけの調理品は、厨房の人手を減らす道具になった。冷凍野菜の輸入は年100万トンを超え、その多くが中国から来る。
一方で、人口は減る。食べる量の総量は細り、伸びるのは調理の手間を外に出す分だけだ。筆者は、神栄が扱う量は10年で5%ほど増えるとみる。値段は物価並みに上がる。
輸入の商社にとっての危うさは3つある。為替、中国の産地の原料と人件費、そして食品の安全だ。2000年代の中国産の冷凍食品の問題では、輸入の量が一気に落ちた。産地を東南アジアに広げる動きも、管理の手間と値段で簡単ではない。
競う相手は、大手の冷凍食品のメーカーと、日本水産や伊藤忠食品のような大手の商社、それに専門の輸入の会社だ。規模では大手に勝てない。神栄が残るのは、品質の要求の厳しい客の小さな市場だ。その市場は小さいが、手間をかけた管理の分だけ、客は簡単には離れない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、配当性向30%程度を目標にする。2026年3月期は1株あたりの配当を2割ほど増やし、総額は約4.3億円だった。2027年3月期は利益が減る見込みでも、創立140周年を理由に同じ額を払う。2025年2月には、株を売りたい損保から約3億円分の自己株式を買い取った。
財務は立て直しの途中だ。自己資本比率は2022年3月期の15%から37%まで上がった。借入は約120億円で、在庫と売掛金の見合いだ。
最大の課題は、約70億円の持ち合いの株だ。MUFG、京都フィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、りそななど、ほとんどが取引銀行の株で、数値の縮減目標は無い。2026年3月期に一部を売って約5億円の売却益を出したが、取締役会は残りの10銘柄の保有を適正と判断した。株主から見れば、この株は配当を生むだけで、値打ちは手の届かない所にある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
PERは6倍台、PBRは0.7倍で、配当の利回りは5%台だ。2026年3月期のROEは12%台で、過去最高に近い利益を出した。会社は2031年3月期に経常利益25億円以上、ROE12%以上を掲げる。今の経常利益17億円から見れば、まだ伸びる余地がある。
冷凍の野菜と調理品は、人手不足の時代の必需品だ。外食・介護の施設の厨房は、下ごしらえを外に出すほど人を減らせる。神栄は産地の工場の管理と、病院・老人ホームの販路を持ち、品質で選ばれる。カシューナッツも健康志向で伸びる。
電子の赤字のコンデンサを手放し、センサと計測に絞る。利益の足を引っ張っていた事業が消えれば、全社の利益率は上がる。さらに約70億円の銀行の株は時価総額に近い。一部を売って借入を返すだけで、財務も利払いも軽くなる。損保の売りを自己株式で受けた判断も、株主を意識した経営の表れだ。配当も2割増やし、利回りは5%台に乗った。株主への姿勢は確かに変わった。
慎重な見方
輸入の商社の利幅は薄く、過去12年の営業利益率の最高は4.5%だ。2016年から2020年には赤字が続き、自己資本は16億円まで細った。為替と中国の産地の原料が逆に振れれば、利益はすぐに消える。
借入は約120億円あり、在庫と売掛金を回すほど金利が効く。10年国債が3%の世界では、借り換えの金利は3.5%前後になり、利払いは年2億円ほど増える。純利益の1割半にあたる。
銀行の株は時価総額に近いが、借入先の銀行の株だ。売る数値の目標は無く、取締役会は保有を適正と判断した。株主の手には届かない。PBRの安さは、この株の値上がり益が自己資本をふくらませた結果だ。
中国の産地で食品の安全の問題が起きれば、輸入の冷凍食品は一気に売れなくなる。2027年3月期の1Qは最終赤字で、中計の3年の累計の目標にも届かない。電子の撤退の費用も残り、目標の達成力には疑問がある。利益の薄い商社の高いROEは、長く続かないのが普通だ。
どちらに重みを置いたか
両方に理があり、確率は中立を中心にほぼ左右対称に置いた。人手不足の厨房の需要は本物で、品質の管理の強みもある。だが利幅の薄い輸入の商社で、借入の金利の上昇と為替の波を受ける。銀行の株は配当を利益に数え済みで、値打ちを別に足さない。結果は今の値段の前後で、ほぼ適正だ。持ち合いの株を売って還元に回す方針が出れば、上に見直す余地がある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,318 円130 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 999 円39 億円)。 今の値に割り戻すと 2,050 円80 億円、今との差 +2.9%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,892 円231 億円 | 1,391 円55 億円 | +265.6% | +13.8% | 728 円29 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,593 円180 億円 | 1,210 円47 億円 | +191.3% | +11.3% | 1,277 円50 億円 |
| 中立 | 35% | 3,650 円143 億円 | 1,059 円42 億円 | +136.4% | +9.0% | 1,648 円65 億円 |
| やや悲観 | 21% | 1,514 円59 億円 | 768 円30 億円 | +14.6% | +1.4% | 479 円19 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,021 円40 億円 | 511 円20 億円 | −23.1% | −2.6% | 184 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,318 円130 億円 | 999 円39 億円 | +116.7% | +8.0% | 4,316 円169 億円 |
今の株価時価総額 1,992 円78 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 冷凍野菜の需要の波に乗る 利益 21 億円 · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 5,892 円231 億円
人手不足で、外食や介護の施設の厨房は下ごしらえを外に出す。自然解凍で出せる冷凍の野菜や調理品の需要は伸び、神栄の食品の輸入の量は10年で1割半増える。品質の管理の厳しい医療・老健の施設の販路で選ばれ、値上げも物価を少し上回って通る。ナッツも健康志向で伸びる。電子はコンデンサを手放し、湿度とホコリのセンサ、粒子の計測に絞って利益率が上がる。全社の営業利益率は4%台半ばと過去の最高に並び、ROEは資本コストを上回る。会社の2031年の目標の経常利益25億円を超え、株価は利益の10倍ほどで評価される。
- 食品関連:数量 80,155(輸入・販売の量(トン・年、推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目。約 50 万円))→ 売上 553 億円・営業利益 37 億円。輸入の量(トン)1.15 倍 × トンあたりの値段 1.38 倍、利益率 6.6%
- 物資関連:数量 1,300(取引の件数(件・年、推定))× 価格 0.04(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 6 億円。取引の件数 1.00 倍 × 1 件の売上 1.34 倍、利益率 12.0%
- 電子関連:数量 1,945(センサ・計測機器の出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.03(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 2 万円))→ 売上 53 億円・営業利益 7 億円。出荷台数 1.00 倍 × 1 台の値段 1.36 倍、利益率 14.0%(コンデンサの撤退を含む)
- 事業開発関連:数量 153(通販・輸出の受注件数(千件・年、推定))× 価格 0.13(1 千件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。通販の受注件数 2.50 倍 × 1 件の売上 1.34 倍、利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.2 倍。全体の PER 11.2 倍、時価総額 231 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手不足で外食・中食・介護の厨房が冷凍の野菜や調理品に頼る流れが強まり、品質の管理で選ばれる神栄の食品が伸びる筋書き。2024年3月期に営業利益率4.5%を出した実績はあるが、輸入の商社の利幅は薄く、確率は1割にとどめた。
やや楽観 22% 中計の目標に近づく 利益 16 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 4,593 円180 億円
冷凍の野菜と調理品は、人手不足の厨房の需要で量が1割増える。冷凍の水産品は原料の高さで細るが、全体を大きくは崩さない。値段は為替と原料の動きに合わせて物価並みに改定できる。物資は建設機械の輸出とアゼルバイジャンの防災の仕事で量を保つ。電子はコンデンサを手放し、センサと計測の機器に絞って利益率が上がる。全社の営業利益率は4%台前半で、会社の2031年の目標に近い経常利益を出す。配当性向は3割を保つ。借入の金利は上がるが、利益の伸びで吸収する。ROEは資本コストをわずかに上回り、株価は利益の9倍ほどになる。
- 食品関連:数量 76,670(輸入・販売の量(トン・年、推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目。約 50 万円))→ 売上 522 億円・営業利益 32 億円。輸入の量(トン)1.10 倍 × トンあたりの値段 1.36 倍、利益率 6.2%
- 物資関連:数量 1,261(取引の件数(件・年、推定))× 価格 0.04(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 5 億円。取引の件数 0.97 倍 × 1 件の売上 1.32 倍、利益率 11.0%
- 電子関連:数量 1,751(センサ・計測機器の出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.03(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 2 万円))→ 売上 47 億円・営業利益 6 億円。出荷台数 0.90 倍 × 1 台の値段 1.34 倍、利益率 13.0%(コンデンサの撤退を含む)
- 事業開発関連:数量 122(通販・輸出の受注件数(千件・年、推定))× 価格 0.13(1 千件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。通販の受注件数 2.00 倍 × 1 件の売上 1.34 倍、利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 180 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:冷凍食品の量が少しずつ増え、電子がコンデンサの撤退で黒字を厚くする筋書き。会社は2031年3月期に経常利益25億円以上・ROE12%以上を掲げ、足元の経常は17億円強で、そこへの道の半ば以上を描いた。
中立 35% 輸入の量は保ち、利幅は薄いまま 利益 12 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 3,650 円143 億円
冷凍の野菜と調理品の需要は伸びるが、人口は減り、総量の伸びは10年で5%ほどにとどまる。値段は物価並みに改定でき、食品の利益率は今より少し低い5%台後半に落ち着く。物資の輸出は円安の追い風が細り、量が少し減る。電子はコンデンサを手放して売上が減るが、センサと計測で利益率は上がる。全社の営業利益率は今と同じ3%台後半だ。借入は約120億円あり、金利が3.5%に上がると利払いが年2億円ほど増える。持ち合いの銀行の株は持ち続け、配当を受け取る。配当性向は3割強で、ROEは6%台にとどまる。株価は利益の10倍ほどだ。
- 食品関連:数量 73,185(輸入・販売の量(トン・年、推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目。約 50 万円))→ 売上 491 億円・営業利益 28 億円。輸入の量(トン)1.05 倍 × トンあたりの値段 1.34 倍、利益率 5.8%
- 物資関連:数量 1,235(取引の件数(件・年、推定))× 価格 0.04(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 5 億円。取引の件数 0.95 倍 × 1 件の売上 1.30 倍、利益率 10.0%
- 電子関連:数量 1,653(センサ・計測機器の出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.03(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 2 万円))→ 売上 43 億円・営業利益 5 億円。出荷台数 0.85 倍 × 1 台の値段 1.30 倍、利益率 12.0%(コンデンサの撤退を含む)
- 事業開発関連:数量 91.5(通販・輸出の受注件数(千件・年、推定))× 価格 0.13(1 千件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。通販の受注件数 1.50 倍 × 1 件の売上 1.34 倍、利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 138 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:冷凍食品の量は人口の減りを人手不足の需要が補って少し増えるが、輸入の商社の利幅は薄く、借入の金利の上昇が利益を削る筋書きを中心に置いた。過去12年の営業利益率の最高は4.5%、中央値は2%前後だ。
やや悲観 21% 円安と原料高で利幅が削られる 利益 5 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 1,514 円59 億円
中国の産地で人件費と原料の値段が上がり、為替も円安に振れる。神栄は値上げを急ぐが、外食や介護の施設の客は値上げを渋り、量も1割減る。食品の利益率は5%に下がる。物資は北米向けの輸出が細り、電子も産業向けのセンサの需要が伸びない。全社の営業利益率は2%台に落ち、借入の金利の上昇が純利益をさらに削る。配当は利益に合わせて減る。ROEは3%前後に下がり、株価は自己資本の3割ほどまで沈む。持ち合いの銀行の株は残るが、売られる見込みは無く株主の取り分にはならない。電子の撤退の後も、育成の事業の赤字が続く。
- 食品関連:数量 66,215(輸入・販売の量(トン・年、推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目。約 50 万円))→ 売上 424 億円・営業利益 21 億円。輸入の量(トン)0.95 倍 × トンあたりの値段 1.28 倍、利益率 5.0%
- 物資関連:数量 1,105(取引の件数(件・年、推定))× 価格 0.04(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 3 億円。取引の件数 0.85 倍 × 1 件の売上 1.25 倍、利益率 8.0%
- 電子関連:数量 1,459(センサ・計測機器の出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.03(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 2 万円))→ 売上 36 億円・営業利益 4 億円。出荷台数 0.75 倍 × 1 台の値段 1.25 倍、利益率 10.0%(コンデンサの撤退を含む)
- 事業開発関連:数量 61.0(通販・輸出の受注件数(千件・年、推定))× 価格 0.13(1 千件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。通販の受注件数 1.00 倍 × 1 件の売上 1.30 倍、利益率 -5.0%
倍率:ROE 3.1% と低く、PER の上限 1÷k = 11.8 倍の 7 割 5 分の 8.8 倍。円安と原料高で稼ぐ力を薄く見た。EV÷営業利益は純負債約 107 億円を足しても十数倍。
確率:中国の産地の原料高と円安が重なり、値上げが追いつかず冷凍食品の利幅が削られる筋書き。2019〜2020年3月期に営業利益率が1%を割った実績があり、悪い方に振れる余地は大きい。
悲観 12% 中国の産地の問題と在庫の評価損 利益 −5 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,021 円40 億円
中国の産地で残留農薬などの問題が起き、輸入の冷凍食品が売れなくなる。神栄の在庫は値引きで処分され、評価損が出る。食品の量は15%減り、利益率は2%台に落ちる。物資と電子も細り、営業利益はほぼ消える。借入の金利は3.5%に上がり、利払いが利益を食う。銀行の求めで在庫を減らし、配当も細る。価値を支えるのは、持ち合いの銀行の株を一部売り、在庫と売掛金で借入を返した後に残る額だ。株価は自己資本の4割ほどに沈む。過去の赤字の時期のように、立て直しに何年もかかる。銀行は在庫を減らすよう求め、攻めの手は打てない。
- 食品関連:数量 59,245(輸入・販売の量(トン・年、推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目。約 50 万円))→ 売上 362 億円・営業利益 9 億円。輸入の量(トン)0.85 倍 × トンあたりの値段 1.22 倍、利益率 2.5%
- 物資関連:数量 975(取引の件数(件・年、推定))× 価格 0.04(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。取引の件数 0.75 倍 × 1 件の売上 1.20 倍、利益率 4.0%
- 電子関連:数量 1,264(センサ・計測機器の出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.02(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 2 万円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。出荷台数 0.65 倍 × 1 台の値段 1.20 倍、利益率 3.0%(コンデンサの撤退を含む)
- 事業開発関連:数量 30.5(通販・輸出の受注件数(千件・年、推定))× 価格 0.12(1 千件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。通販の受注件数 0.50 倍 × 1 件の売上 1.20 倍、利益率 -10.0%
倍率:利益はほぼ無く、利益の倍率は使えない。床は銀行の株の一部の売却と在庫・売掛金で借入を返した後に残る額(floor_assets_oku)。今の自己資本 108.59 億円に 0.3684 倍を掛けて同じ額。
確率:中国の産地で食品の安全の問題が起き、輸入の冷凍食品の信頼が揺らぐ筋書き。神栄は過去に赤字が続いた時期があり、在庫と借入の重い商社は崩れると早い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品関連
冷凍の野菜・調理品・水産加工品とカシューナッツなどの農産物を、主に中国から輸入して外食・中食・介護の施設などに売る。
| 数量輸入・販売の量(トン・年、推定) | 価格1 トンあたりの売上(億円・名目。約 50 万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 69,700 | 0.01 | 349 | 21 |
| 10 年後 中立 | 73,185 | 0.01 | 491 | 28 |
取り方:量は開示が無いので推定。2026年3月期の売上348.7億円を、冷凍の野菜・調理品と水産品、ナッツをならした1トン約50万円で割り約7万トンとした。利益はセグメント利益(経常ベース・一般管理費の配賦前)21.48億円。
物資関連
建設機械や金属製品・試験機器の輸出、建築金物・資材、生活用品、海外の防災の調査、不動産と保険の代理。
| 数量取引の件数(件・年、推定) | 価格1 件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,300 | 0.03 | 39 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1,235 | 0.04 | 48 | 5 |
取り方:件数は開示が無いので推定。売上38.9億円を1件約300万円で割った。セグメント利益4.61億円。
電子関連
湿度センサ、ホコリセンサ、粒子の計測機器、輸送・梱包の試験機、水分計を作って売る。コンデンサは2026年4月に撤退を決めた。
| 数量センサ・計測機器の出荷台数(千台・年、推定) | 価格1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 2 万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,945 | 0.02 | 39 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,653 | 0.03 | 43 | 5 |
取り方:台数は開示が無いので推定。安いセンサと高い試験機をならした1台約2万円で売上38.9億円を割った。セグメント利益3.06億円(赤字のコンデンサを含む)。
事業開発関連
テレビ通販向けの衣料品と、香港などへの日本の食品の輸出を育てる。
| 数量通販・輸出の受注件数(千件・年、推定) | 価格1 千件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 61.0 | 0.10 | 6 | −1 |
| 10 年後 中立 | 91.5 | 0.13 | 12 | 0 |
取り方:件数は開示が無いので推定。売上6.1億円を1件約1万円で割った。セグメント損失0.56億円。セグメント利益の合計28.59億円と営業利益16.45億円の差−12.14億円(一般管理費と営業外の差)は adjust に置き、物価で増やした。
リスクと懸念
為替と原料の値段
仕入れの多くが中国などからの輸入で、円安と産地の原料・人件費の上昇は利幅を直接削る。値上げで追いかけるが、外食や介護の施設の客は値上げを渋る。2019〜2020年3月期のように利益がほぼ消える年がありうる。
中国の産地の食品の安全
冷凍の野菜と調理品の多くを中国から仕入れる。産地で残留農薬などの問題が起きれば、輸入の冷凍食品の信頼が揺らぎ、在庫の評価損と売上の急減が同時に起きる。
借入と金利
在庫と売掛金を賄う借入は約120億円ある。借り換えの金利が3.5%前後に上がれば、利払いは年2億円ほど増える。利幅の薄い商社では、純利益の1割半にあたる。
持ち合いの株
取引銀行を中心に約70億円の株を持ち、数値の縮減目標は無い。銀行の株価が下がれば自己資本が減り、売らない限り株主の取り分にもならない。資本の効率を下げる要因でもある。
電子の撤退と育成の事業
コンデンサの撤退には事業整理の費用がかかり、2027年3月期の1Qは最終赤字だった。テレビ通販や食品の輸出の育成の事業も赤字で、育たなければ費用だけが残る。
今後の分かれ目
- 持ち合いの銀行の株の売却と、借入の返済か還元の数値の方針が出る
- 株の値打ちが株主に届く道が開くので、価値を上に見直す。
- 食品のセグメント利益率が2期続けて6.5%を超える
- 値上げの力が定着したとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 中国の産地で食品の安全の問題が報じられる
- 悲観の確率を上げる。
- 円安が進み、食品の利益率が4%台に落ちる
- やや悲観に寄せる。
- 2031年3月期の経常利益25億円の目標に向けて2年続けて増益
- 中計の達成力を認め、中立の利益率を見直す。
見ておくもの
- 食品関連のセグメント利益率
- 為替と中国の冷凍野菜の輸入の値段
- 借入の残高と平均の金利
- 政策保有株式の残高と売却
- 配当性向と自己株式の取得
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEと資本コスト9%から決めた。中立はROEがkを下回る(自己資本に銀行の株の評価差額約39億円が入るため)ので、PERの上限は1÷kの11.8倍で、その9割に置いた。今のPER6倍台やPBR0.7倍、過去の株価は使っていない。持ち合いの株は配当が利益に入っているので価値を別に足さず、悲観の床にだけ戻り方0.5で入れた。中立の営業利益率は過去12年の最高4.5%を下回る3.8%。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→11.2 倍・やや楽観 PER 10→11.11 倍・中立 PER 10.6→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 9.00%。