結論
カメイは仙台に本拠を置く、東北の複合商社だ。柱はENEOS系の石油・LPガス販売と、トヨタ系ディーラー。米国の日系スーパー、建設資材、食料、薬局も持つ。筆者の結論は、今の値段は10年先の価値に照らして割高である。
稼ぎは好調だ。2026年3月期は営業利益が170億円で、7期連続の最高益を見込む。ただ、その山の利益が先も続くとは見ない。営業利益の4割強を稼ぐ石油は、ガソリン需要が毎年2〜3%ずつ細る市場にある。
気になるのは、利益の伸びよりも資本の使い方だ。自己資本は10年で約2倍に膨らんだのに、自己資本に対する稼ぎは7%前後で動かない。資本コストを下回る水準だ。稼いだお金が、稼ぐ力を育てる先を見つけられていない。
会社は営業利益200億円と自己資本利益率8%、配当性向40%を掲げた。方向は正しい。ただ、先の10年を通して数量が細る事業が中心にある限り、物価で名目の売上を保っても、利益は同じ速さでは伸びない。
創業家とその関連で約3割を持つため、経営の変化は急には起きにくい。守りには強いが、資本の使い方が改まるのも遅い。この点が、値段の安全域を薄くしている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべき点は三つある。事業が10年後も強いか、資本を賢く使う経営か、払う値段に安全域があるか。
事業は丈夫だが、強くはならない。石油は縮み、自動車と海外が補う構図だ。堀と呼べるのは、地域の顧客基盤と、トヨタ・ENEOSとの長い関係で、それは広がるより守る性格のものだ。
資本の使い方は、まだ合格点ではない。自己資本は増えたが、稼ぐ力は同じ速さでは伸びなかった。経営は慎重で借金はなく、潰れる心配は小さい。ただ、貯めた現金が資本コストに届く稼ぎを生まない限り、内部留保は、稼ぎを生まない限り、額面の価値に届かない。
安全域は薄い。10年先の価値を計算すると、今の時価総額を下回る。物価で名目の利益が増えても、石油の数量の減りがそれを削る。今の値段は、利益の山と資産の厚みを同時に織り込んだ水準で、そこに余裕は見えない。
筆者は、この会社を競争に強い守りの銘柄として評価する。ただ、守りが利益の成長に変わる証拠が出るまでは、値段の安全域を認められない。
何で稼ぐ会社か
カメイは東北を地盤に、石油製品から食料、自動車まで幅広く扱う。事業は八つに分かれるが、稼ぎの大半は四つが担う。
一つ目はエネルギーだ。ENEOSの特約店として、ガソリン、灯油、軽油、重油、LPガスを企業と家庭に届ける。給油所は東北を中心に80か所余り。売上は2,796億円、営業利益は75億円で、全社の売上の半分近くを占める。
二つ目は自動車関連。仙台トヨペットと山形トヨペットの二つのトヨタ系ディーラーを持ち、営業所は合わせて34。ボルボやジャガーなどの輸入車、レンタカー、リースも手がける。売上は803億円、営業利益は50億円と、利益率は石油より高い。
三つ目は海外・貿易で、売上は912億円。米国で日系スーパーのMitsuwaを営み、シンガポールで船舶用の燃料油を売る。水産物の輸入や機械部品の輸出も加わる。
残りは建設資材とリフォーム、米穀や給食などの食料、ペット用品、調剤薬局だ。どれも売上は数百億円規模で、利益は薄い。
この会社の強みは、地域に根を張った顧客基盤と、複数の収益源を持つことだ。単独で売上の1割を超える取引先はない。ただし、石油の仕入れはENEOS、車の仕入れはトヨタという二つの大手に依存する。値段を決めるのは仕入れ先と市場で、カメイではない。
優良さと弱いところ
カメイの優良さは、地域に深く根を張った顧客基盤にある。一度つながった企業や家庭は簡単には切り替えない。石油とLPガスのように、配送網と信用が要る商売では、この粘りが利益を支える。
稼ぐ力は安定してきた。営業利益は2015年3月期の103億円から、2026年3月期の170億円まで、ほぼ毎年積み上がった。借金は少なく、純現金が219億円ある。景気の谷でも潰れる心配は小さい。
一方、値決めの力は弱い。石油の価格はENEOSと市況が決め、車の値段はメーカーが決める。営業利益率は3%を割る。低い利益率で売上を回す商売だ。
筆者が最も気にするのは、資本効率だ。自己資本利益率は過去10年、おおむね6〜7%で動かなかった。資本コストを超えるどころか、届いていない。自己資本は増えたが、増えた資本は稼ぐ力に変わっていない。
経営は慎重で、配当は12期連続で増える見込みだ。自己株の取得も一度行い、460万株を消却した。株主への姿勢は改善している。ただ、薬局のように赤字の事業を抱え、新規事業の収益は先の話だ。資本の使い道は、まだ答えが出ていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
カメイの稼ぎの中心は、構造的に縮む市場にある。国内のガソリン需要は2023年度の約4,450万kLから、2028年度には約3,900万kLへ減る見通しだ。年に2.6%ずつ細る計算になる。ハイブリッド車と電気自動車が普及し、燃費も良くなっている。
給油所も減る。ピークの約6万か所から、2023年度末には約2.7万か所まで落ちた。残る店は人手不足と設備の老朽化に直面する。小さな販売店が閉じると、その顧客を取り込める余地が、カメイのような地域の大手に生まれる。
LPガスも同じだ。国内の需要は年に1.6〜1.7%ずつ減っている。人口の減少とオール電化が主な理由で、東北のような地方ほど影響が大きい。制度の見直しで、設備の無償貸与や不透明な料金の慣行は改まりつつある。
自動車販売は、数量では人口減の逆風を受ける。新車の需要は大きくは伸びない。ただ、車に頼る暮らしの東北では、整備・リース・中古車で稼ぐ余地が残る。トヨタ系の信用は、この地域では強い。
成長の芽は、米国の食品小売と日本食の輸出にある。物価の上昇を価格に転嫁しやすい事業だ。ただ、カメイにとっては売上の16%にとどまる。国内の石油の縮みを補うには、この領域が何倍にも大きくならなければならない。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから攻めへ動き始めた段階にある。2026年5月の長期経営方針は、配当性向を30%から40%の目安へ段階的に上げ、政策保有株を3年で50〜100億円売ると定めた。自己資本利益率の目標は8%以上だ。
還元は着実に増えている。配当は12期連続で増える見込みで、2025年には自己株を220万株取得し、460万株を消却した。ただ、直近の1年は自己株の取得がなかった。
投資は200億円規模の新規事業を計画する。建設基礎の省力化、水処理、太陽光、農業などだ。9件の候補がある。どれも、石油の縮みを補うほどの大きさにはまだ見えない。
株主の構成は特徴的だ。創業家の亀井興産、亀井文行氏、亀井記念財団、カメイ不動産の4者で約3割を持つ。光通信も純投資で6%強を持つ。創業家が動かない限り、買収は起きにくい。
筆者は、方針の言葉よりも、増え続ける現金をどこに使うかを見る。目標が実行に移れば、自己資本利益率は8%に近づく。実行が伴わなければ、現金だけが積み上がる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
カメイは、過去10年、赤字の期が一度もない。営業利益は103億円から170億円まで積み上がり、7期連続の最高益が見えている。石油が縮む市場でも、小さな販売店の撤退を受けて顧客を取り込める。ガソリン需要の減少は、地域最大手に有利な再編を呼ぶ。
複合商社の強みも生きる。トヨタ系の二つのディーラーは利益率が高く、輸入車やリースで稼ぎを厚くできる。米国のMitsuwaは日本食の人気に乗る。物価が年3%で上がる世界では、車も食品も名目の売上が自然に増える。
資本の面でも変化が始まった。配当性向を40%に上げ、政策保有株を売り、自己株も消却した。純現金は219億円あり、自己資本は約1,700億円と厚い。還元を厚くするだけで、自己資本利益率は8%台へ届く。
200億円規模の新規事業が一つでも育てば、石油の縮みを埋められる。会社は営業利益200億円を掲げている。創業家が支える安定した経営の下で、10年かけて達成する道は十分にある。
慎重な見方
稼ぎの4割強を生む石油は、年2〜3%ずつ細る。ENEOSの特約店という立場は、値決めの力を持たない。足元の利益は、販売価格の上昇で押し上げられた面が大きい。2026年3月期のエネルギーの営業利益は前期より3割近く増えたが、石油事業の利益率がこの水準を保つ保証はない。
成長を担うはずの事業も心もとない。海外・貿易は前期に営業利益が17%減った。ペットは4割近く減り、薬局は赤字に転じた。新規事業の200億円は、石油の縮みを補うには小さい。
資本の面では、方針と実績にずれがある。自己資本利益率は10年で7%前後から動かず、資本コストに届かない。直近の1年は自己株の取得もなかった。政策保有株の売却も、3年で50〜100億円と、時価総額から見れば小さい。
創業家が約3割を持つ会社では、外から圧力がかかりにくい。経営が変わらなければ、内部留保だけが積み上がる。そうなれば、自己資本利益率は5%台まで下がる。純現金を抱えるだけの会社に、高い倍率はつかない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方の中身は、守りの強さと還元の改善だ。慎重な見方の中身は、石油の縮みと、資本が稼ぎに変わらないことだ。筆者は後者がやや強いと見る。
守りの強さは本物だ。ただ、価値を決めるのは、利益がどれだけ伸びるかである。石油の数量が縮む以上、物価で保った売上が利益の伸びに結びつく道は細い。
このため10年の確率は、楽観を8%と薄く置いた。楽観とやや楽観で3割、やや悲観と悲観で3割余りに分かれる形で、中立を38%とした。慎重な見方に、わずかに寄せている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,273 円1,922 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,075 円636 億円)。 今の値に割り戻すと 4,578 円1,402 億円、今との差 −7.2%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,734 円2,675 億円 | 2,905 円890 億円 | +135.8% | +9.0% | 931 円285 億円 |
| やや楽観 | 22% | 7,636 円2,339 億円 | 2,448 円750 億円 | +104.3% | +7.4% | 2,219 円680 億円 |
| 中立 | 38% | 7,229 円2,215 億円 | 2,057 円630 億円 | +88.2% | +6.5% | 3,529 円1,081 億円 |
| やや悲観 | 24% | 4,102 円1,257 億円 | 1,697 円520 億円 | +17.5% | +1.6% | 1,392 円426 億円 |
| 悲観 | 8% | 2,039 円625 億円 | 1,436 円440 億円 | −29.6% | −3.4% | 278 円85 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,273 円1,922 億円 | 2,075 円636 億円 | +69.2% | +5.4% | 8,348 円2,557 億円 |
今の株価時価総額 4,935 円1,512 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 石油の再編を取り込み、海外と自動車が伸びる 利益 179 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 8,734 円2,675 億円
石油の販売店が次々と撤退し、カメイは東北でその顧客を取り込む。ガソリン需要は減っても、数量の減りは10年で1割余りにとどまる。産業用の燃料やバイオ燃料、EV充電が、縮みを補い始める。
米国のMitsuwaは店を増やし、日本食の輸出も伸びて、海外・貿易の物量は5割を超えて増える。トヨタ系ディーラーは整備とリースで利益率を保つ。営業利益は260億円まで伸び、会社の目標200億円を超える。
政策保有株の売却と自己株の取得が進み、還元は純利益の6割に達する。自己資本利益率は8%近くまで戻り、資本コストを辛うじて上回る。
- エネルギー(石油・LPガス):数量 211(石油製品・LPガスの販売量(万kL 換算、推定))× 価格 16(1kL あたり売上(万円/kL、名目))→ 売上 3,297 億円・営業利益 92 億円
- 自動車関連(トヨタ系ディーラー等):数量 17.6(取扱台数(千台、新車・中古・輸入車・リースの合計、推定))× 価格 598(1 台あたり売上(万円/台、整備・リースを含む、名目))→ 売上 1,054 億円・営業利益 65 億円
- 海外・貿易:数量 69.8(取扱物量(万トン相当、推定))× 価格 27(1 トンあたり売上(万円/トン、名目))→ 売上 1,894 億円・営業利益 91 億円
- 建設関連:数量 79.1(取引・工事の件数(千件、推定))× 価格 80(1 件あたり売上(万円/件、名目))→ 売上 636 億円・営業利益 19 億円
- 食料・ペット・薬局・その他:数量 24.4(取引・来店件数(百万件、推定))× 価格 4.69(1 件あたり売上(千円/件、名目))→ 売上 1,143 億円・営業利益 34 億円
倍率:事業の純利益 179 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.2 倍、時価総額 2,542 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自己資本を稼ぎに変える経営が定着する筋書き。過去の自己資本利益率が7%前後で動かず、新規事業の収益も見えていないため、8%と薄く置いた。
やや楽観 22% 目標どおりに200億円を超え、資本効率が少し戻る 利益 152 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 7,636 円2,339 億円
石油の数量は10年で16%減る。小さな販売店の撤退を取り込み、減りのペースはガソリン需要の減少より緩やかだ。海外・貿易は米国の店舗増で、物量が3割ほど増える。
自動車は台数が減っても、整備とリースで稼ぎを守る。建設はリフォームと太陽光が新設住宅の減りを補う。営業利益は220億円に届き、会社の目標200億円を超える。
配当性向は40%を超え、自己株の取得も続く。ただ、純現金は積み上がり続け、自己資本利益率は6〜7%にとどまる。資本コストに届かない状態が続く。
会社の方針は実行に移るが、新規事業の稼ぎはまだ小さい。石油の縮みを自動車と海外が埋め、利益は物価に近い速さで伸びる。それでも資本の厚みが利益率を押し下げ、倍率は高くならない。
- エネルギー(石油・LPガス):数量 202(石油製品・LPガスの販売量(万kL 換算、推定))× 価格 16(1kL あたり売上(万円/kL、名目))→ 売上 3,147 億円・営業利益 82 億円
- 自動車関連(トヨタ系ディーラー等):数量 16.7(取扱台数(千台、新車・中古・輸入車・リースの合計、推定))× 価格 598(1 台あたり売上(万円/台、整備・リースを含む、名目))→ 売上 1,000 億円・営業利益 59 億円
- 海外・貿易:数量 59.4(取扱物量(万トン相当、推定))× 価格 27(1 トンあたり売上(万円/トン、名目))→ 売上 1,613 億円・営業利益 74 億円
- 建設関連:数量 72.6(取引・工事の件数(千件、推定))× 価格 80(1 件あたり売上(万円/件、名目))→ 売上 584 億円・営業利益 16 億円
- 食料・ペット・薬局・その他:数量 23.2(取引・来店件数(百万件、推定))× 価格 4.69(1 件あたり売上(千円/件、名目))→ 売上 1,087 億円・営業利益 30 億円
倍率:事業の純利益 152 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 2,096 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新規事業が計画どおりに育つ筋書き。会社の目標を自力で達成するのは簡単ではないが、足元の最高益が続く力はあるため、22%とした。
中立 38% 石油は縮み、車と海外が補うが、利益は物価ほど伸びない 利益 133 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 7,229 円2,215 億円
石油は10年で数量が2割減る。ガソリンは年2.6%ずつ細り、LPガスも減る。物価の分だけ値段は上がるので売上は保てるが、数量の減りが利益を削る。利益率は足元の山から2%台半ばへ戻る。
自動車は台数が1割ほど減るものの、整備とリースで底を支える。海外・貿易は米国の店舗増で伸びる。建設と食料は人口減に押されて横ばいに近い。
営業利益は193億円で、会社の目標200億円に届かない。配当性向は5割に達するが、純利益が伸びないまま現金が積み上がる。自己資本利益率は6%を割り、資本コストを下回る。
足元の最高益は、10年のあいだに少しずつ平らになる。新規事業は一部が育つが、全体を押し上げるほどにはならない。経営が変わらないという意味で、これが最も起こりやすい姿だ。
- エネルギー(石油・LPガス):数量 192(石油製品・LPガスの販売量(万kL 換算、推定))× 価格 16(1kL あたり売上(万円/kL、名目))→ 売上 2,997 億円・営業利益 75 億円
- 自動車関連(トヨタ系ディーラー等):数量 15.8(取扱台数(千台、新車・中古・輸入車・リースの合計、推定))× 価格 598(1 台あたり売上(万円/台、整備・リースを含む、名目))→ 売上 947 億円・営業利益 55 億円
- 海外・貿易:数量 51.8(取扱物量(万トン相当、推定))× 価格 27(1 トンあたり売上(万円/トン、名目))→ 売上 1,405 億円・営業利益 62 億円
- 建設関連:数量 68.6(取引・工事の件数(千件、推定))× 価格 80(1 件あたり売上(万円/件、名目))→ 売上 551 億円・営業利益 14 億円
- 食料・ペット・薬局・その他:数量 22.2(取引・来店件数(百万件、推定))× 価格 4.69(1 件あたり売上(千円/件、名目))→ 売上 1,043 億円・営業利益 28 億円
倍率:事業の純利益 133 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 1,834 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2人の議論の落としどころ。足元の最高益と還元の改善を認めつつ、石油の縮みと資本効率の低さを重く見て、慎重側へわずかに寄せた。
やや悲観 24% 石油の縮みが速まり、ほかの事業も伸びない 利益 88 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 4,102 円1,257 億円
電気自動車の普及が想定より早く進み、ガソリン需要は年3〜4%のペースで減る。石油の数量は10年で3割減る。給油所は統廃合を迫られ、利益率は2%台前半に落ちる。
自動車は新車の需要が細り、台数が2割減る。海外・貿易は為替と競争で伸び悩む。薬局やペットも赤字が続き、新規事業は費用ばかりが先行する。
営業利益は130億円まで落ち、純利益は90億円を割る。配当は累進を守るため、自己資本は積み上がるが、稼ぎは増えない。自己資本利益率は4%を割り込む。
創業家の持株が厚く、再編や資本の使い方の見直しは遅れる。会社は守りには強いまま、稼ぐ力だけが細っていく。景気の悪化がなくても、構造の変化だけでこの姿に落ちうる。
- エネルギー(石油・LPガス):数量 168(石油製品・LPガスの販売量(万kL 換算、推定))× 価格 15(1kL あたり売上(万円/kL、名目))→ 売上 2,584 億円・営業利益 54 億円
- 自動車関連(トヨタ系ディーラー等):数量 14.0(取扱台数(千台、新車・中古・輸入車・リースの合計、推定))× 価格 589(1 台あたり売上(万円/台、整備・リースを含む、名目))→ 売上 827 億円・営業利益 41 億円
- 海外・貿易:数量 45.0(取扱物量(万トン相当、推定))× 価格 26(1 トンあたり売上(万円/トン、名目))→ 売上 1,185 億円・営業利益 43 億円
- 建設関連:数量 60.5(取引・工事の件数(千件、推定))× 価格 78(1 件あたり売上(万円/件、名目))→ 売上 472 億円・営業利益 10 億円
- 食料・ペット・薬局・その他:数量 21.0(取引・来店件数(百万件、推定))× 価格 4.55(1 件あたり売上(千円/件、名目))→ 売上 957 億円・営業利益 22 億円
倍率:事業の純利益 88 億円・ROE 3.9%。ためた利益が額面の価値に満たない水準で、稼ぐ力は構造的に縮んでいる。PER は上限の 1÷k よりずっと低い 8.5 倍に置いた。
確率:電気自動車の普及が想定より早く進む筋書き。石油の構造的な縮みが重なる可能性は高いと見て、24%と厚く置いた。
悲観 8% 石油と車の両方が構造的に崩れ、複合の利点が消える 利益 57 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 2,039 円625 億円
脱炭素の政策と電気自動車の急伸で、ガソリンとLPガスの数量は4割減る。石油の利益は半分以下に落ち、ENEOSの再編で特約店の立場も弱まる。
トヨタ系ディーラーは新車の販売が大きく細り、営業所の統廃合が続く。米国の小売は競争に敗れ、新規事業は失敗に終わる。
営業利益は90億円を割る。借金はなく、純現金と資産が残るので会社は続くが、10年後には稼ぐ力の弱い、複合の看板だけの会社になっている。自己資本利益率は3%を割る。
複数の事業を持つ利点は、どれも強くないという弱点に変わる。売却や撤退で整理を進めても、縮む市場に残る資産の価値は低い。株主には配当が残るだけで、成長は戻らない。
- エネルギー(石油・LPガス):数量 144(石油製品・LPガスの販売量(万kL 換算、推定))× 価格 15(1kL あたり売上(万円/kL、名目))→ 売上 2,097 億円・営業利益 40 億円
- 自動車関連(トヨタ系ディーラー等):数量 12.2(取扱台数(千台、新車・中古・輸入車・リースの合計、推定))× 価格 571(1 台あたり売上(万円/台、整備・リースを含む、名目))→ 売上 699 億円・営業利益 31 億円
- 海外・貿易:数量 38.3(取扱物量(万トン相当、推定))× 価格 24(1 トンあたり売上(万円/トン、名目))→ 売上 930 億円・営業利益 30 億円
- 建設関連:数量 52.5(取引・工事の件数(千件、推定))× 価格 75(1 件あたり売上(万円/件、名目))→ 売上 393 億円・営業利益 8 億円
- 食料・ペット・薬局・その他:数量 19.6(取引・来店件数(百万件、推定))× 価格 4.38(1 件あたり売上(千円/件、名目))→ 売上 858 億円・営業利益 19 億円
倍率:事業の純利益 57 億円・ROE 2.6%。稼ぐ力は細り、新規の投資も失敗した筋書き。PER は 7.0 倍に置いた。稼ぐ力から出した 399 億円は、純現金と売れる資産の床(270 億円)を上回るので、床には当たらない。PBR が低いのは自己資本の大半が稼ぎを生まないと見るため。
確率:石油の急速な縮みと、ディーラーの再編・撤退が重なる筋書き。8%としたのは、借金がなく純現金があり、創業家が支えるため潰れるまでは行かないと見るからだ。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エネルギー(石油・LPガス)
ENEOS の特約店として、ガソリン・灯油・軽油・重油・LPガスを企業と家庭に販売する。給油所の運営を含む。
| 数量石油製品・LPガスの販売量(万kL 換算、推定) | 価格1kL あたり売上(万円/kL、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 240 | 12 | 2,796 | 75 |
| 10 年後 中立 | 192 | 16 | 2,997 | 75 |
取り方:販売量は開示がない。売上 2,796 億円を、ガソリン・灯油・重油・LPガスの平均単価(1kL あたり約 11.7 万円)で割り、約 240 万kL と推定した。国内需要の減りは年 2.6%、LPガスは年 1.7%。
自動車関連(トヨタ系ディーラー等)
仙台トヨペット・山形トヨペットの新車・中古車・整備と、輸入車、レンタカー、リース。
| 数量取扱台数(千台、新車・中古・輸入車・リースの合計、推定) | 価格1 台あたり売上(万円/台、整備・リースを含む、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18.0 | 446 | 803 | 50 |
| 10 年後 中立 | 15.8 | 598 | 947 | 55 |
取り方:台数は開示がない。営業所 34・新車の価格帯から、年 1.8 万台と推定した。整備とリースの売上は 1 台あたりに割り戻して単価に含めた。
海外・貿易
米国の日系スーパー Mitsuwa、シンガポールの船舶用燃料油、水産物の輸入、機械部品の輸出。
| 数量取扱物量(万トン相当、推定) | 価格1 トンあたり売上(万円/トン、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 45.0 | 20 | 912 | 42 |
| 10 年後 中立 | 51.8 | 27 | 1,405 | 62 |
取り方:食品小売・燃料油・水産物・部品の混合で、物量は開示がない。売上 912 億円を、平均単価 1 トンあたり約 20 万円で割り、約 45 万トンと推定した。数量の伸びは米国の店舗増と日本食の輸出に置く。
建設関連
住宅設備機器、鋼材などの建設資材の販売と、建設・リフォーム工事。土木建設機械の製造(近江機工)を含む。
| 数量取引・工事の件数(千件、推定) | 価格1 件あたり売上(万円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 80.7 | 60 | 484 | 13 |
| 10 年後 中立 | 68.6 | 80 | 551 | 14 |
取り方:件数は開示がない。資材納入と工事・リフォームの 1 件あたり平均を約 60 万円と置き、売上 484 億円から約 8 万件と推定した。新設住宅の減りをリフォーム・太陽光・防災が部分的に補う。
食料・ペット・薬局・その他
米穀・畜産・酒類の卸と給食・スーパー、ペット用品、調剤薬局、物流、オフィス機器、不動産、保険代理店など。
| 数量取引・来店件数(百万件、推定) | 価格1 件あたり売上(千円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 23.9 | 3.50 | 837 | 22 |
| 10 年後 中立 | 22.2 | 4.69 | 1,043 | 28 |
取り方:件数は開示がない。食料・ペット・薬局・その他の売上合計 837 億円を、1 件あたり約 3.5 千円で割り、年約 2,400 万件と推定した。人口減で件数は減るが、給食と薬局の在宅医療が支える。
リスクと懸念
ガソリン・LPガスの数量が想定より速く縮む
電気自動車の普及や脱炭素の政策が早く進めば、石油の数量は年3%を超えて減る。稼ぎの4割強を占める事業のため、全社の利益に直接響く。給油所の統廃合が遅れると固定費が重くなる。
足元の最高益は山の利益かもしれない
2026年3月期のエネルギーの営業利益は前期より3割近く増えた。販売価格の上昇が効いた面があり、仕入れ先と市況が決める利益率は下がりうる。山の利益に高い倍率を掛けるのは危うい。
仕入れ先への依存
石油はENEOS、車はトヨタに仕入れを頼る。どちらも値段を決める側だ。再編や販売網の見直しが起きれば、カメイの取り分は削られる。単独で売上の1割を超える顧客はない一方、仕入れは二つに集中する。
資本が稼ぎに変わらない
純現金は219億円、自己資本は約1,700億円と厚い。自己資本利益率は7%前後で、資本コストに届かない。新規事業の200億円が失敗すれば、内部留保は価値を生まないまま積み上がる。
成長を担う事業の不振
海外・貿易は前期に営業利益が17%減り、ペットは4割近く減り、薬局は赤字に転じた。石油の縮みを補うはずの事業が伸びていない。成長の道筋は、計画より遅れうる。
創業家支配の下での変化の遅さ
創業家とその関連が約3割を持つ。守りには強いが、資本の使い方の改革は進みにくい。光通信が純投資で6%強を持つが、株主構成だけでは経営を動かしにくい。
今後の分かれ目
- 石油の販売量の減りが、年2.6%より緩やかに収まる
- やや楽観以上の確率を上げる。小さな販売店の撤退を取り込めている証拠で、石油の稼ぎが長く続く。
- 石油の数量の減りが年3.5%を超える
- やや悲観・悲観の確率を上げる。稼ぎの4割強を占める事業が速く細る。
- 自己株の取得を毎年続け、政策保有株の売却も計画どおりに進む
- 資本効率の改善が本物になる。自己資本利益率が8%に近づく筋書きの確率を上げる。
- 新規事業のうち一つが、営業利益で数十億円規模に育つ
- 石油の縮みを補う道が見える。楽観寄りに確率を動かす。
- 自己資本利益率が6%を下回ったまま、純現金だけが積み上がる
- 内部留保が価値を生んでいない証拠だ。倍率を低く置く理由が強まる。
- 創業家が持株を動かし、買収や再編の提案が出る
- 事業の価値は変わらないが、値段が価値を上回る形で決まるかを確かめる。
見ておくもの
- 石油製品・LPガスの販売量の前年比
- トヨタ系ディーラーの台数と整備・リースの利益
- 海外・貿易の営業利益(米国の店舗数)
- 自己株の取得額と政策保有株の売却額
- 自己資本利益率(8%の目標への距離)
- 新規事業 9 件の進み具合
倍率と資本コストの決め方
事業を石油・自動車・海外・建設・食料その他の5つに分け、数量と価格で10年を積んだ。倍率は、資本コスト7.25%と自己資本利益率から式で決め、今の株価や同業の倍率には寄せていない。自己資本利益率が資本コストを下回るため、中立の倍率は上限の12.9倍より低く置いた。数量はすべて推定で、根拠は各セグメントの欄に書いた。新リース会計基準(2028年3月期から)で貸借対照表の形が変わるが、数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→14.2 倍・やや楽観 PER 10.8→13.79 倍・中立 PER 10→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.25% を足した。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.25%。