結論
田中商事は、電線、照明、配電盤など、建物の電気工事に使う材料を電気工事店に卸す会社だ。筆者の結論は適正の範囲である。首都圏の工事店との長い付き合いで売上は着実に伸びてきたが、営業利益率は 3% 台と薄く、自己資本利益率(ROE)は 6% 前後で資本コストに届かない。
強みは、現場に早く、必要な分だけ材料を届ける物流の網だ。電気工事店は小さな会社が多く、材料を自分で多く抱えられない。卸がその在庫を代わりに持ち、翌朝までに現場に運ぶ。この役割は簡単には消えない。
一方で、卸の取り分は薄い。電線の値段は銅の相場で動き、照明や配電盤はメーカーが値段を決める。大手の電材の卸やネットの通販も手を伸ばす。筆者は 10 年後の営業利益を 21 億円ほどと見る。建設の量は細るが、改修とデータセンター、再エネの電気工事が支える。ROE は 6% 前後のままで、帳簿より安い値段は、稼ぎの薄さを映したものと見る。安全域は、利益率が上がる証拠を待ってから考えたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、田中商事は「なくならないが、儲けの薄い中間の商売」だ。電気工事店が現場で材料に困らないよう、在庫を持って運ぶ役割は確かに要る。だが、その役割に払われる対価は小さい。
筆者がいちばん気にしているのは、資本の稼ぎの薄さだ。過去 10 年、ROE が資本コストに届いた年はない。営業所と倉庫、売掛金と在庫に資本を積んでも、それが生む利益は 6% 前後にとどまる。ためた利益は、株主にとって帳簿の額ほどの価値を持たない。配当で受け取った方が、株主には得になる計算だ。
今の値段は帳簿の半分ほどだが、それ自体は安さの証拠にならない。稼ぎの薄い資本には、帳簿より低い値段が付くのが自然だ。安全域が生まれるのは、改修と電気の新しい仕事で利益率が 4% 台に上がる時か、再編で営業所と倉庫に値段が付く時だろう。
何で稼ぐ会社か
田中商事は、建物の電気工事に要る材料を幅広く扱う。電線とケーブル、照明器具、配電盤と分電盤、スイッチやコンセント、空調と換気の機器まで、電気工事店が現場で使うほぼすべてだ。報告するセグメントは電設資材の卸だけで、売上は 440 億円ある。
客は首都圏を中心とする電気工事店と設備工事会社だ。ビルやマンション、工場、店舗の新築と改修で、工事店が必要な材料をまとめて注文する。田中商事は営業所と倉庫を各地に置き、メーカーから仕入れた品を在庫として持ち、現場に届ける。有形固定資産が 109 億円と卸としては厚いのは、営業所と倉庫を自社で持つからだ。
稼ぎの形は、仕入れと販売の値段の差だ。電線は銅の相場で値段が大きく動き、照明や配電盤はパナソニックや三菱電機などのメーカーが値段を決める。卸の粗利は 1 割台で、営業所と倉庫、配送の費用を引くと、営業利益は売上の 3% ほどしか残らない。
売上は年末と年度末に偏る。工事の完成が年度末に集まるからだ。子会社には電気設備の工事を行う八汐電気と、2020 年に買ったカワツウがある。従業員は約 450 人だ。
優良さと弱いところ
強みは、首都圏の電気工事店との長い付き合いと、現場に早く届ける物流の網だ。工事店は小さな会社が多く、材料を自分で多く抱えられない。卸が在庫を持ち、翌朝までに届け、ときには支払いの猶予も与える。この役割は、ネットの通販に簡単には置き換わらない。
弱さは 3 つある。第 1 に、値段を決める力が弱い。電線は銅の相場、器具はメーカーが値段を決め、卸はその差で稼ぐ。同業の電材の卸も多く、値段の競争は厳しい。第 2 に、資本の稼ぎが薄い。過去 10 年の ROE の中央値は 6.3% で、資本コストに届いた年はない。第 3 に、建設の量に縛られることだ。
経営は財務を堅く保ち、買収で工事の会社を足してきた。堀、つまり他社がまねしにくい強みは、工事店の名簿と物流の網にあるが、狭い。大手の商社が同じ地域に網を広げれば、守るのは難しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電設資材の卸は、建設の量に連れて動く業界だ。首都圏では再開発のビル、データセンター、物流倉庫の建設が続き、電気工事の量は底堅い。一方で、住宅の着工は人口の減りで細っている。電気工事の量は、この 2 つの綱引きで決まる。
構造の変化は 3 つある。1 つは改修の増加だ。古い建物の照明を LED に替え、配電盤を更新し、省エネの設備を入れる仕事が増える。2 つ目は電気の仕事の広がりだ。太陽光と蓄電池、電気自動車の充電器、データセンターの電源の工事が増え、扱う品が広がる。3 つ目は人手の不足だ。電気工事店は職人が足りず、卸に現場への細かな配送や材料の加工を求めるようになった。
競争は分散している。因幡電機産業や泉州電業のような大手の電材の商社、地域の電材の卸、メーカーの販売会社が入り乱れる。ネットの通販も、小口の材料で手を伸ばしている。
10 年の流れでは、筆者は取引する工事店の数を横ばい、1 社あたりの取引額を物価並みと見る。新築の減りを、改修と電気の新しい仕事が埋める形だ。銅の相場は売上を大きく動かすが、数量の見通しには入れていない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2026 年 3 月期の配当性向は 26.9% で、自己資本に対する配当の比率(DOE)は 1.6% だった。2023 年の中期目標では配当性向 30% 以上を掲げた。2026 年 9 月には中間配当の増配を発表した。かつてあった株主優待は今はない。
財務は穏当だ。現預金 29 億円に対し、短期の借入が 39 億円あり、差し引き 10 億円の純負債だ。年度末に売上が集まる商売なので、売掛金と在庫の資金を短期の借入で回す。自己資本比率は 5 割を超える。
M&A は工事の会社を足す形で行ってきた。2009 年に電気設備の工事の八汐電気、2020 年にカワツウを買った。2026 年には同業の電材のトウテックが 5% を取得した。電材の卸の再編は続いており、買う側にも買われる側にもなりうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電気の仕事は増えていく。古いビルの照明と配電盤の更新、省エネの改修、太陽光と蓄電池、電気自動車の充電器、データセンターの電源。首都圏はこの全部が集まる場所だ。田中商事の売上は 10 年で 1.5 倍になり、会社は 2027 年 3 月期に営業利益 18 億円と大きな増益を見込む。
人手の不足も卸の追い風だ。職人が足りない工事店は、現場への細かな配送や材料の切断、加工を卸に頼む。その手間に対価が付けば、利益率は上がる。営業所と倉庫を自社で持つ田中商事は、こうした細かなサービスで大手の通販より有利だ。
財務も堅い。営業所と倉庫の土地は簿価で持たれ、時価はそれを上回るとみられる。同業のトウテックが 5% を取得し、電材の卸の再編も進む。帳簿の半分という値段は、買い手にとって魅力的だ。
銅の相場も追い風になりうる。電気の需要が世界で増え、銅の値段は長く高止まりするとの見方が多い。電線の値段が上がれば、売上と在庫の利益が膨らむ。
慎重な見方
卸の取り分は薄く、厚くならない。電線は銅の相場、器具はメーカーが値段を決め、卸はその差で稼ぐ。営業利益率は 10 年以上 3〜4% にとどまり、過去 10 年の ROE は一度も資本コストに届かなかった。会社の増益の予想も、銅の相場の上昇に助けられた面がある。
建設の量も細る。住宅の着工は人口とともに減り、ビルの建設も再開発の波が過ぎれば落ちる。改修は増えるが、1 件が小さく、手間の割に稼げない。小口の配送が増えるほど、費用は膨らむ。
競争も厳しい。因幡電機産業や泉州電業のような大手は規模と品揃えで勝り、ネットの通販は小口の材料を安く速く届ける。メーカーが工事会社に直接売る動きもある。帳簿より安い値段は、資本が稼がないことへの値付けで、安さの証拠ではない。
人手の不足も逆風になる。倉庫と配送の人が足りず、運ぶ費用は物価より速く上がる。その費用をメーカーと工事店の間で転嫁できなければ、薄い利益はさらに削られる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。電気の新しい仕事と改修が売上を支えるのは確かだが、卸の取り分の薄さは構造の話で、利益率が大きく上がる理由は見えない。中立を厚くし、楽観は 1 割未満に、悲観は 1 割強に置いた。帳簿の半分の値段は、確率を上に寄せる理由にしていない。2027 年 3 月期の増益の予想が銅の相場を除いても続くかで、見方を見直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,040 円167 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 401 円33 億円)。 今の値に割り戻すと 1,218 円100 億円、今との差 +19.1%、 期待の年率 +9.1%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,395 円278 億円 | 550 円45 億円 | +285.7% | +14.5% | 276 円23 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,801 円229 億円 | 489 円40 億円 | +221.6% | +12.4% | 658 円54 億円 |
| 中立 | 38% | 2,425 円198 億円 | 428 円35 億円 | +178.9% | +10.8% | 1,084 円89 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,093 円89 億円 | 342 円28 億円 | +40.3% | +3.4% | 345 円28 億円 |
| 悲観 | 11% | 535 円44 億円 | 183 円15 億円 | −29.8% | −3.5% | 79 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,040 円167 億円 | 401 円33 億円 | +138.7% | +9.1% | 2,442 円200 億円 |
今の株価時価総額 1,023 円84 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 電気の新しい仕事と再編で、利益率が過去の山に戻る 利益 21 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 3,395 円278 億円
電気の新しい仕事と業界の再編が重なる筋書きだ。データセンターの電源、太陽光と蓄電池、充電器の工事が首都圏で増え、扱う品が広がる。後継ぎのいない地域の電材の卸を買い、取引する工事店の数は 1 割増える。
職人の足りない工事店は、現場への細かな配送と材料の加工を田中商事に頼み、その手間に対価を払う。営業利益率は 4.5% と過去の山に戻り、営業利益は 30 億円になる。ROE は 8% 台に上がるが、資本コストにはわずかに届かない。配当は利益とともに増え、配当性向も 3 割を超える。同業との統合で仕入れの力も増し、メーカーとの値段の交渉で少し有利になる。
- 電設資材卸:数量 8,800(取引する電気工事店・設備工事会社の数(社・推定))× 価格 760(1 社あたりの年間の売上(万円))→ 売上 669 億円・営業利益 30 億円。8,800 社(1.10 倍)× 760 万円(1.38 倍)、営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.84 倍、時価総額 267 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 4.5% は 2016 年の 1 度だけで、取引先の増加と値段の力の両方が要る。7% とした。
やや楽観 20% 改修と電気の仕事で、利益率が 4% に上がる 利益 17 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,801 円229 億円
改修と電気の新しい仕事が、新築の減りを埋めて余る筋書きだ。古いビルの照明と配電盤の更新、省エネの改修、データセンターの電源の工事が増え、取引する工事店の数は 5% 増える。1 社あたりの取引額は物価よりやや速く伸びる。
営業利益率は 4% と、会社の 2027 年 3 月期の予想の水準を保つ。営業利益は 25 億円ほどになる。ROE は 7% 弱で、資本コストに届かないが、今よりは上がる。配当は性向 3 割ほどで増え、ためた利益は営業所と倉庫の更新に回る。工事店への細かな配送と加工のサービスが、大手の通販との違いとして定着する。
- 電設資材卸:数量 8,400(取引する電気工事店・設備工事会社の数(社・推定))× 価格 745(1 社あたりの年間の売上(万円))→ 売上 626 億円・営業利益 25 億円。8,400 社(1.05 倍)× 745 万円(1.35 倍)、営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 216 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は 2027/03 期に営業利益 18 億円(3.9%)を見込み、改修と電気の新しい仕事は確かに増えている。4% を保つ筋として 20% とした。
中立 38% 新築の減りを改修が埋め、利益率は少し上がる 利益 15 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,425 円198 億円
新築の減りを改修と電気の新しい仕事が埋め、利益率が少し上がる筋書きだ。住宅とビルの新築は細るが、照明と配電盤の更新、太陽光と充電器の工事が増え、取引する工事店の数は横ばいを保つ。1 社あたりの取引額は物価並みに伸びる。
営業利益率は 3.6% と今より少し上がり、営業利益は 21 億円ほどになる。値段の力は弱いままで、銅の相場が利益を上下させる。ROE は 6% 前後で、資本コストに届かない。配当は性向 3 割弱で続き、ためた利益は営業所と倉庫、小さな買収に回る。帳簿の価値はゆっくり増えるが、株主の稼ぎは資本に比べて薄いままだ。
- 電設資材卸:数量 8,000(取引する電気工事店・設備工事会社の数(社・推定))× 価格 737(1 社あたりの年間の売上(万円))→ 売上 590 億円・営業利益 21 億円。8,000 社(横ばい)× 737 万円(物価並み 1.34 倍)、営業利益率 3.6%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 182 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:建設の量の細りと、改修と電気の新しい仕事の伸びが打ち消し合う落としどころ。最も起こりやすい筋として 38% とした。
やや悲観 24% 建設の量が細り、大手と通販に客を取られる 利益 9 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 1,093 円89 億円
建設の量が細り、客が大手と通販に流れる筋書きだ。住宅とビルの新築が減り、再開発の波も過ぎる。大手の電材の商社は規模と品揃えで工事店を囲い、ネットの通販は小口の材料を安く速く届ける。取引する工事店の数は 1 割減る。
値段の競争も厳しくなり、1 社あたりの取引額は物価に届かない。営業所と倉庫、配送の費用は固定で残り、営業利益率は 2.5% に下がる。営業利益は 13 億円ほどだ。ROE は 4% 前後に落ち、配当も伸びない。倉庫と配送の人手の費用が上がり、転嫁できない分が利益を削る。株主の価値は、帳簿の 3 分の 1 ほどの値段に沈む。
- 電設資材卸:数量 7,200(取引する電気工事店・設備工事会社の数(社・推定))× 価格 700(1 社あたりの年間の売上(万円))→ 売上 504 億円・営業利益 13 億円。7,200 社(0.90 倍)× 700 万円(1.27 倍、値段が物価に届かない)、営業利益率 2.5%
倍率:ROE 4.0% は k 8% を下回る。稼ぐ力(純利益÷k ≒ 102 億円)で見て、1÷k の 11.8 倍の 7 割の 8.23 倍。
確率:住宅の着工は人口とともに減り、大手の電材の商社とネットの通販も伸びている。客が少しずつ流れる筋として 24% とした。
悲観 11% 中間の役割が細り、稼ぎがほぼ消える 利益 3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 535 円44 億円
卸という中間の役割そのものが細る筋書きだ。メーカーは大きな工事会社に直接売り、小さな工事店はネットの通販で材料をそろえる。大手の電材の商社は物流の網を広げ、地域の卸の取引先を奪う。取引する工事店の数は 2 割減る。
銅の相場の下落も重なり、売上は伸びない。営業所と倉庫の費用は固定で残り、営業利益率は 1% に沈む。配当は細り、増配の方針も取り下げる。株主の価値は、営業所と倉庫の土地、売掛金と在庫を回収して借入を返した残りに近づく。大手の商社に安く買われる道も現実味を帯びる。工事店の名簿だけが、最後まで値段を保つ。
- 電設資材卸:数量 6,400(取引する電気工事店・設備工事会社の数(社・推定))× 価格 660(1 社あたりの年間の売上(万円))→ 売上 422 億円・営業利益 4 億円。6,400 社(0.80 倍)× 660 万円(1.20 倍)、営業利益率 1.0%
倍率:利益がほぼ消えるので PBR で置く。稼ぐ力(純利益÷k ≒ 34 億円)より、営業所と倉庫の土地と運転資金の回収の床の方が高く、今の自己資本 156 億円の 0.28 倍の約 44 億円。
確率:2010 年には営業利益率 0.1% まで落ちた。メーカーの直販と通販が広がれば構造的に負けるので 11% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電設資材卸
電線・ケーブル、照明器具、配電盤・分電盤、配線器具、空調・換気機器などを電気工事店・設備工事会社へ卸す。子会社の工事を含む。
| 数量取引する電気工事店・設備工事会社の数(社・推定) | 価格1 社あたりの年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8,000 | 550 | 440 | 14 |
| 10 年後 中立 | 8,000 | 737 | 590 | 21 |
取り方:取引先の数の開示がないため推定。売上 440 億円を、首都圏の中小の電気工事店を中心に 1 社あたり年約 550 万円の取引とみて割った約 8,000 社。営業利益は全社の 14 億円。
リスクと懸念
薄い利益率
営業利益率は 10 年以上 3〜4% にとどまる。電線は銅の相場、器具はメーカーが値段を決め、卸はその差で稼ぐ。営業所と倉庫、配送の費用が少し増えるだけで、利益は大きく削られる。
建設の量の細り
住宅の着工は人口とともに減り、ビルの再開発の波もいずれ過ぎる。改修と電気の新しい仕事が埋めきれなければ、取引の量は細る。
大手と通販の競争
因幡電機産業や泉州電業のような大手は規模と品揃えで勝る。ネットの通販は小口の材料で手を伸ばし、メーカーが大きな工事会社に直接売る動きもある。
銅の相場
電線の値段は銅の相場で大きく動く。相場が上がれば売上と在庫の利益が膨らみ、下がれば縮む。今の増益の予想も、相場に助けられた面がある。
資本の稼ぎの薄さ
過去 10 年の ROE の中央値は 6.3% で、資本コストに届いた年はない。営業所と倉庫、売掛金と在庫に積んだ資本が、十分な利益を生んでいない。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 期続けて 4% を超えたら
- 改修と電気の新しい仕事で値段の力が付いた証拠として、やや楽観の確率を上げる。
- 銅の相場が大きく下がり、売上が 2 期続けて減ったら
- 相場に助けられた利益が剥がれたとみて、中立の利益率を見直す。
- 配当性向を 4 割以上に上げるか、自社株買いを始めたら
- ためた利益が株主に戻る証拠として、戻り方を引き上げる。
- 同業のトウテックなどと資本提携や経営統合に進んだら
- 再編で規模の利益が出るかを見て、利益率の見通しを直す。帳簿に近い値段での統合もありうる。
- 大手の電材の商社やメーカーの直販が首都圏で取引先を奪い始めたら
- 中間の役割が細る筋として、やや悲観に重みを移す。
見ておくもの
- 営業利益率(4% を超えて保てるか)
- 首都圏の建設・改修の工事量
- 銅の相場と電線の値段
- 配当性向と自社株買い
- 電材の卸の再編(トウテックの保有など)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PBR を見ずに、ROE と k 8% から決めた。中立の ROE は 6% 前後で k を下回るので、PER の上限は 1÷k の 11.8 倍で、その 8 割を使った。利益率は過去 12 年の山(4.5%)より下の 3.6% に置いた。純負債なので余った現金は分けず、10 年で溜まる現金は還元の弱さから戻り方 0.75 にした。PBR 0.5 倍は割安の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.84 倍・やや楽観 PER 10→12.5 倍・中立 PER 9.4→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。