結論
神鋼商事は、神戸製鋼所の製品を売る商社として生まれ、いまは鉄鋼・アルミ・銅・機械・溶接材料まで手広く扱う専門商社だ。売上は6千億円を超えるが、営業利益は116億円で、利益率は2%に届かない。
筆者の結論は、今の値段はやや高いというものだ。会社に欠点があるわけではない。利益は2022年3月期から水準が上がり、配当も増えている。ただ、稼いだ利益を事業にもう一度投じても、資本コストを超える稼ぎは得にくい。ためた利益の価値が目減りする構造だ。
稼ぎの中身を見ると、鉄鋼が利益の4割、機械が3割弱、アルミ・銅が2割強を占める。原料はほぼ利益を出していない。成長するのは機械(半導体・省人化)とアルミ・銅(自動車・リサイクル)で、鉄鋼は国内の需要が細る。
会社の中期計画は、2027年3月期の経常利益145億円を掲げる。足もとの見通しは125億円で、まだ距離がある。筆者は、計画の数字より、投資230億円が前の計画で未達だった点を重く見る。
10年後の中立の純利益は、今の1.4倍ほどだ。それでも自己資本の積み上がりが速く、ROEは7%台に下がる。倍率は9倍前後が妥当で、悲観の下振れも浅くない。
買われる側の話もある。神戸製鋼は上場子会社を取り込む動きを続けている。ただ、確かな材料は見当たらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、神鋼商事は「堅実だが、割安ではない」会社だ。事業は10年後も残る。神戸製鋼の製品を売る役目は簡単になくならない。
問題は、稼いだ利益の使い道だ。利益の4割ほどを配当に回し、残りは事業に戻す。だが、商社の追加投資の稼ぎは、資本コストを超えにくい。ためた利益は、帳簿の額より小さい価値になる。
オーナー利益、つまり事業を続けるための再投資を除いて株主が自由にできる利益は、純利益の半分前後と筆者は見る。運転資金の増加と、借金の借り換えコストが、残りを吸う。
倍率は、利益の質から中立で9倍前後に抑える。ROEが資本コストにわずかに届かないので、ためた利益に高い倍率は付けられない。
安全域は、悲観の筋書きで測る。神戸製鋼の支えがあるので倒産は考えにくい。だが、親会社が取引を絞れば、利益は4割以上削れる。
長く持つなら、機械とアルミ・銅の積み上がりに期待することになる。ただ、その期待を払う値段が今はまだ割り引かれていないと、筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
神鋼商事は、1946年に神戸製鋼所が全額を出して作った商社だ。製品を売り、必要な資材を調達するのが役目だった。いまも神戸製鋼は仕入れの4割近くを占め、議決権の約36%(間接分を含む)を握る。
事業は金属本部と機械・溶接本部の二つに分かれる。売上のうち鉄鋼が4割、アルミ・銅が3割、原料が1割強、機械が1割、溶接が1割弱だ。
鉄鋼は、特殊鋼線材や鋼板を神戸製鋼などから仕入れ、自動車や建設の顧客に売る。自動車向けの特殊鋼線材は、神戸製鋼の強みと重なる。アルミ・銅は、自動車・半導体・空調向けの素材と加工品を供給し、スクラップのリサイクルも手がける。
原料は、鉄鉱石・石炭・スクラップなど製鉄の原料を扱う。利益は薄く、直近はほぼゼロだ。
機械は、産業機械や設備を顧客に納める部門で、半導体や省人化の設備が伸びている。溶接は、神戸製鋼の溶接材料に溶接ロボットなどを組み合わせて売る。
2024年4月に5本部制を2本部制に改め、新事業推進室を置いた。海外はアセアンとインドを成長地域と位置づける。トレード(右から左へ売る仕事)から、事業に出資して稼ぐ形へ移すのが会社の方針だ。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、神戸製鋼グループという後ろ盾だ。製品の仕入れ先が安定し、特殊鋼線材や溶接材料のように、親会社の技術が顧客に響く商材を持つ。
ただし、堀、つまり他社がまねできない強みは深くない。扱う鋼材やアルミは市況品で、値段はメーカーと市場が決める。商社の取り分は営業利益で2%ほどにとどまる。
利益の質は、10年前よりは良い。2022年3月期から営業利益は100億円を超え、過去の水準から一段上がった。それでもROEは8%台で、資本コストにわずかに届かない。
財務は薄い。自己資本比率は26%で、純負債は360億円ある。中期計画は自己資本比率21%以上、負債の目安を自己資本の0.7倍以下としており、大きく積み増す気はない。
経営は、政策保有株を減らしている。2024年度に5銘柄を売り、残高は連結の純資産の18%まで下げた。今後15%以下、将来は10%以下を目指す。この姿勢は悪くない。
弱みは三つある。親会社への依存、鋼材の市況に振れる薄利、そして投資の実行力だ。前の中期計画は事業投資の目標200億円に対し、実績は117億円にとどまった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
神鋼商事の業界は、鉄鋼と非鉄金属の商社だ。市場は分散していて、製鉄所系の商社と独立系が混在する。同じ領域の上場会社には、阪和興業と岡谷鋼機がある。
鉄鋼は、世界の需要がほぼ横ばいだ。中国の不動産不況で中国の需要は細り、インドや東南アジアの伸びが穴を埋める。国内の鋼材需要は人口減と建設投資の縮小で、年に1〜2%ずつ減っている。価格を決めるのは製鉄所と中国の生産調整で、商社は受け手だ。
アルミと銅は、自動車の軽量化、電動化、半導体、空調の需要に乗る。数量は国内の鋼材より強い。リサイクル(都市鉱山)も、環境規制を追い風にじわじわ伸びる。
機械は、半導体や省人化の設備投資に連動する。人手不足で、自動化の需要は国内でも底堅い。一方で、設備投資は数年ごとに冷える。
商社全体に共通するのは、メーカーが直接売る動きだ。商社には、物流・金融・在庫の肩代わり・海外の拠点網という機能がある。この機能が安く速く提供できなければ、取り分は削られる。
競合は、総合商社の鉄鋼部門、製鉄所系の商社、阪和興業のような独立系だ。神鋼商事は規模では上位でなく、神戸製鋼の商材で差をつける立場だ。
資本政策と M&A
還元の方針は、連結配当性向30%以上だ。2027年3月期は記念配当を含めて増配を予定し、実際の配当性向は4割近くになる。自社株買いの実績は確かめられなかった。
3年の投資は230億円の計画だ。うち30億円はDXに使う。前の計画は200億円の目標に対し117億円で終わった。投資は慎重だが、慎重すぎて成長が鈍るおそれもある。
政策保有株は、2024年度に5銘柄・104億円を売った。残高は純資産の18%で、15%以下を目指す。売却の資金は事業投資と還元に回る。
神戸製鋼との関係は、仕入れと資本の両面で深い。神戸製鋼は近年、上場子会社を株式交換で取り込んでいる。神鋼商事が同じ道をたどる可能性はあるが、公表された材料は確認できない。外部の推計は、10年以内の買収の確率を2割ほどとする。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、利益の質が変わりつつあることに注目する。営業利益は2022年3月期から100億円を超える水準に上がり、利益の3割弱を機械が、2割強をアルミ・銅が稼ぐ。この二つは国内の鋼材より数量が伸びる。
半導体と省人化の設備は、人手不足と国内回帰で需要が長く続く。アルミと銅は、自動車の軽量化と電動化、リサイクルの規制が追い風だ。数量が10年で3割ほど増えれば、利益率は目に見えて上がる。
経営も動いている。2本部制への再編で機動力が上がり、新事業推進室は脱炭素や省人化の案件を探す。政策保有株を売り、事業投資と還元へ資金を回す。配当性向は30%以上で、実際は4割近い。
さらに、神戸製鋼との結びつきは強みだ。特殊鋼線材と溶接材料は、親会社の技術が顧客に響く。親会社が上場子会社を取り込む流れなら、買収の上乗せも期待できる。
これらがそろうと、10年で純利益が1.4倍を超え、ROEも9%台に乗る。そうなれば、倍率は10倍を超える。
慎重な見方
慎重な見方は、まず利益率の薄さを突く。営業利益率は2%に届かず、市況が少し動くだけで利益が吹き飛ぶ。2020年3月期には純利益が16億円まで落ちた。今の水準が山の上にある可能性もある。
次に、資本の使い方だ。ROEは8%台で、資本コストにわずかに届かない。利益をためても、稼ぎは増えない。前の計画で投資の目標に届かなかったことも、投資先を見つける力の弱さを映している。
財務も厚くない。自己資本比率は26%で、純負債は360億円ある。金利が上がると、借り換えのたびに利払いが増える。10年で利益を9億円ほど削る計算だ。
さらに、親会社への依存がある。仕入れの4割近くが神戸製鋼だ。神戸製鋼が販売の方針を変えれば、取り分は一気に変わる。国内の鋼材需要は細り、中国の過剰生産が価格を押さえる。
足もとの経常利益は、会社の予想に届かなかった。貸倒引当金の計上があったことも、与信の管理に不安を残す。中期計画の145億円は遠く、倍率に上乗せはできない。
どちらに重みを置いたか
機械とアルミ・銅の伸びは本物だが、ためた利益が資本コストを超えて稼げない構造と、親会社への依存の指摘は重い。そのため、中立を最も厚くしたうえで、やや悲観と悲観を楽観側より厚く置いた。
10年の悲観は、構造的に負ける筋書きとして1割強を置く。理由は、国内の鋼材の細りと中国の過剰生産で取り分が削られ、原料と鉄鋼で赤字に近づくうえ、親会社が取引を絞る可能性があるからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,177 円1,368 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,481 円391 億円)。 今の値に割り戻すと 3,543 円936 億円、今との差 +16.0%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 9,544 円2,522 億円 | 2,104 円556 億円 | +281.3% | +14.3% | 699 円185 億円 |
| やや楽観 | 20% | 7,450 円1,969 億円 | 1,756 円464 億円 | +201.3% | +11.7% | 1,841 円487 億円 |
| 中立 | 38% | 6,356 円1,680 億円 | 1,529 円404 億円 | +158.1% | +9.9% | 2,996 円792 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,487 円657 億円 | 1,241 円328 億円 | +22.0% | +2.0% | 895 円236 億円 |
| 悲観 | 12% | 856 円226 億円 | 1,037 円274 億円 | −38.0% | −4.7% | 227 円60 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,177 円1,368 億円 | 1,481 円391 億円 | +117.9% | +8.1% | 6,658 円1,760 億円 |
今の株価時価総額 3,055 円807 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:機械とアルミ・銅が稼ぎの柱になる 利益 164 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 9,544 円2,522 億円
10年後、機械とアルミ・銅が会社の稼ぎの柱になる。半導体と省人化の設備が長く伸び、機械の取扱量は3割以上増える。アルミ・銅は自動車の電動化とリサイクルで同じように伸び、利益率も上がる。鉄鋼は国内の細りを、特殊鋼線材の海外販売が補う。純利益は160億円を超え、ROEは9〜10%に届く。ためた利益の稼ぎが、ようやく資本コストを上回る。投資は計画どおり進み、買収の失敗は出ない。神戸製鋼との結びつきも深まり、親会社が商材と販路を預ける。ただし、薄利の商社の倍率は10倍台にとどまる。
競合の総合商社や製鉄所系の商社が同じ分野に力を入れても、神戸製鋼の商材と専門性で守る。政策保有株の売却資金は機械の周辺事業の買収に使われ、価格を守れば成功する。
- 鉄鋼(特殊鋼線材・鋼板など):数量 420(取扱数量(万トン))× 価格 8.38(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 3,519 億円・営業利益 81 億円。鉄鋼の数量と利益率
- アルミ・銅:数量 81.0(取扱数量(万トン))× 価格 42(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 3,399 億円・営業利益 65 億円。アルミ・銅の数量と利益率
- 原料(鉄鉱石・石炭・スクラップなど):数量 500(取扱数量(万トン))× 価格 2.08(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,040 億円・営業利益 8 億円。原料の数量と利益率
- 機械:数量 5.7(取扱高(実質の億ドル換算))× 価格 201(1ドルあたり円(為替150円×物価の指数))→ 売上 1,153 億円・営業利益 63 億円。機械の数量と利益率
- 溶接:数量 10.5(取扱数量(万トン、溶接材料換算))× 価格 40(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 420 億円・営業利益 11 億円。溶接の数量と利益率
倍率:事業の純利益 164 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍。全体の PER 15.38 倍、時価総額 2,522 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:機械・アルミ銅の両方が10年伸び、鉄鋼も崩れない好条件がそろう筋書き。外れやすいので小さく置いた。
やや楽観 20% やや楽観:機械とアルミ・銅が計画どおり育つ 利益 138 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 7,450 円1,969 億円
10年後、機械とアルミ・銅が期待どおり育つ。機械の取扱量は2割強、アルミ・銅は2割増える。鉄鋼は国内が細るが、アセアンとインドの販売が下支えし、減りは小さい。原料は市況に左右され、利益はわずかだ。純利益は140億円近くになり、ROEは8%台後半で資本コストにほぼ並ぶ。還元は純利益の4割を超える水準を続ける。政策保有株の売却資金は事業投資に回り、投資は計画の8割ほど実行される。倍率は、資本コストと同じ水準の稼ぎから見て、10倍に届かない。
経営は、投資の実行力を少しずつ高める。だが、成長を買う案件は価格次第で、失敗すれば減損が出る。親会社との関係は変わらず、仕入れと販売は安定する。鉄鋼は国内の細りが続き、全体の足を引く。
- 鉄鋼(特殊鋼線材・鋼板など):数量 400(取扱数量(万トン))× 価格 8.38(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 3,351 億円・営業利益 70 億円。鉄鋼の数量と利益率
- アルミ・銅:数量 75.0(取扱数量(万トン))× 価格 42(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 3,148 億円・営業利益 54 億円。アルミ・銅の数量と利益率
- 原料(鉄鉱石・石炭・スクラップなど):数量 475(取扱数量(万トン))× 価格 2.08(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 988 億円・営業利益 5 億円。原料の数量と利益率
- 機械:数量 5.3(取扱高(実質の億ドル換算))× 価格 201(1ドルあたり円(為替150円×物価の指数))→ 売上 1,068 億円・営業利益 56 億円。機械の数量と利益率
- 溶接:数量 10.0(取扱数量(万トン、溶接材料換算))× 価格 40(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 401 億円・営業利益 10 億円。溶接の数量と利益率
倍率:事業の純利益 138 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.26 倍、時価総額 1,968 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:機械とアルミ銅が期待どおり伸び、鉄鋼の細りは小さい筋書き。経営の計画が半分程度は実る前提。
中立 38% 中立:国内の細りを機械とアルミ・銅が補う 利益 119 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 6,356 円1,680 億円
10年後、国内の鉄鋼と原料は人口と建設の縮小で数量が1割ほど減る。その分を、機械とアルミ・銅の伸びが補う。機械とアルミ・銅の数量は、それぞれ15%ほど増える。物価の分は価格に乗り、売上は8千億円台になる。営業利益は170億円ほど、純利益は120億円ほどで、今の1.4倍だ。ただし、自己資本の積み上がりが速く、ROEは7%台にとどまる。ためた利益の稼ぎが資本コストに届かないため、倍率は10倍に届かない。途中で鋼材の不況が一度は来るが、赤字にはならない。神戸製鋼との関係は今のまま続く。筆者は、この筋書きが10年の落としどころと見る。
- 鉄鋼(特殊鋼線材・鋼板など):数量 380(取扱数量(万トン))× 価格 8.38(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 3,184 億円・営業利益 62 億円。鉄鋼の数量と利益率
- アルミ・銅:数量 69.0(取扱数量(万トン))× 価格 42(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 2,896 億円・営業利益 46 億円。アルミ・銅の数量と利益率
- 原料(鉄鉱石・石炭・スクラップなど):数量 450(取扱数量(万トン))× 価格 2.08(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 936 億円・営業利益 3 億円。原料の数量と利益率
- 機械:数量 4.9(取扱高(実質の億ドル換算))× 価格 201(1ドルあたり円(為替150円×物価の指数))→ 売上 982 億円・営業利益 49 億円。機械の数量と利益率
- 溶接:数量 9.5(取扱数量(万トン、溶接材料換算))× 価格 40(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 382 億円・営業利益 9 億円。溶接の数量と利益率
倍率:事業の純利益 119 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.67 倍、時価総額 1,627 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の鉄鋼が細り、機械とアルミ銅が穏やかに伸びる。最も起こりやすい形として最も厚くした。
やや悲観 24% やや悲観:取り分が削られ、伸びが止まる 利益 81 億円 · PER 6.8 倍 · 株価時価総額 2,487 円657 億円
10年後、鋼材の需要は世界で伸び悩み、中国の過剰生産が価格を押さえ続ける。国内の鉄鋼は数量が1割以上減り、原料は赤字すれすれだ。機械とアルミ・銅も、メーカーの直接販売が増えて伸びが鈍る。取扱量は横ばいで、利益率は今より下がる。営業利益は120億円前後で、今とほぼ変わらない。物価の分を価格に乗せても、利払いの増加で純利益は80億円ほどにとどまる。ROEは5%台まで下がる。配当は維持するが、投資の余力はない。商社としての成長は評価されなくなる。
神戸製鋼との取引は残るが、取り分の交渉で不利になる。政策保有株を売っても、事業に使える先が見つからず、現金が積み上がる。経営は還元を増やして対応するが、倍率は上がらない。
- 鉄鋼(特殊鋼線材・鋼板など):数量 352(取扱数量(万トン))× 価格 8.13(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 2,861 億円・営業利益 46 億円。鉄鋼の数量と利益率
- アルミ・銅:数量 60.0(取扱数量(万トン))× 価格 41(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 2,481 億円・営業利益 32 億円。アルミ・銅の数量と利益率
- 原料(鉄鉱石・石炭・スクラップなど):数量 400(取扱数量(万トン))× 価格 1.99(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 795 億円・営業利益 0 億円。原料の数量と利益率
- 機械:数量 4.2(取扱高(実質の億ドル換算))× 価格 198(1ドルあたり円(為替150円×物価の指数))→ 売上 841 億円・営業利益 35 億円。機械の数量と利益率
- 溶接:数量 8.6(取扱数量(万トン、溶接材料換算))× 価格 40(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 339 億円・営業利益 6 億円。溶接の数量と利益率
倍率:事業の純利益81億円・事業 ROE 5.5% は k 7.5% 以下で、稼ぐ力は純利益÷k で測る。取り分が削られ成長しない筋書きなので、上限 11.4倍の約6割の6.8倍に置いた(SCHEMA §1-3。7割へ引き上げない)。
確率:鋼材の不況が長引き、メーカー直販で取り分が削られる筋書き。慎重な見方の指摘が重く、楽観側より厚く置いた。
悲観 12% 悲観:構造的に取り分を失う 利益 39 億円 · PER 5.8 倍 · 株価時価総額 856 円226 億円
10年のあいだに、構造的に負ける。神戸製鋼が自社で販売を進め、鋼材の取引で取り分を失う。中国の過剰生産が鋼材と非鉄の価格を押さえ、国内の需要は縮み続ける。原料は赤字に落ち、鉄鋼の利益は半分以下になる。機械とアルミ・銅も、メーカーの直接販売で数量が減る。営業利益は70億円を割り、純利益は40億円ほどだ。ROEは3%まで下がる。もう堅実な商社ではない。借金の利払いが重く、配当は半分に減る。のれんの減損や撤退損も出る。ただし、神戸製鋼の支えがあり、倒産には至らない。
投資家の評価は、堅実な商社から、資産と配当で測る株へ移る。自己資本は積み上がらず、減損で目減りする。再建のために事業の整理が進み、鉄鋼と原料の一部は他社に売られる。
- 鉄鋼(特殊鋼線材・鋼板など):数量 300(取扱数量(万トン))× 価格 7.50(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 2,251 億円・営業利益 27 億円。鉄鋼の数量と利益率
- アルミ・銅:数量 51.0(取扱数量(万トン))× 価格 39(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,997 億円・営業利益 18 億円。アルミ・銅の数量と利益率
- 原料(鉄鉱石・石炭・スクラップなど):数量 300(取扱数量(万トン))× 価格 1.74(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 522 億円・営業利益 −3 億円。原料の数量と利益率
- 機械:数量 3.6(取扱高(実質の億ドル換算))× 価格 192(1ドルあたり円(為替150円×物価の指数))→ 売上 694 億円・営業利益 21 億円。機械の数量と利益率
- 溶接:数量 7.1(取扱数量(万トン、溶接材料換算))× 価格 38(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 274 億円・営業利益 3 億円。溶接の数量と利益率
倍率:事業の純利益39億円・事業 ROE 3.9%(減損で自己資本を1,000億円に)は k 7.5% 以下。構造的に取り分を失う筋書きで、稼ぐ力(純利益÷k)で測る。上限 11.4倍の約5割の5.8倍に置いた。純現金はなく、床の資産は足していない。
確率:親会社の販売方針の変更、中国の過剰生産、メーカー直販が重なり、構造的に負ける筋書き。親会社への依存を考えて1割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鉄鋼(特殊鋼線材・鋼板など)
神戸製鋼などから仕入れた鋼材を、自動車・建設・製造業の顧客に売る。国内が中心でアセアンとインドへ広げる。
| 数量取扱数量(万トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 6.25 | 2,501 | 47 |
| 10 年後 中立 | 380 | 8.38 | 3,184 | 62 |
取り方:鉄鋼ユニットの売上2,501億円を、取扱量400万トン換算と平均単価6.25万円に分けた推定値。開示は金額だけで、数量は鋼材の単価から置いた。国内の鋼材需要は年1〜2%減るので、数量の中立は10年で0.95倍(海外で一部を補う)。
アルミ・銅
自動車・半導体・空調向けのアルミ・銅の素材と加工品を供給し、スクラップのリサイクルも手がける。
| 数量取扱数量(万トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 31 | 1,879 | 28 |
| 10 年後 中立 | 69.0 | 42 | 2,896 | 46 |
取り方:アルミ・銅ユニットの売上1,879億円を、取扱量60万トン換算と平均単価31.3万円に分けた推定値。アルミ(約40万円)と銅(約150万円)の構成から置いた単価の目安。自動車・半導体・リサイクルの需要で数量の中立は10年で1.15倍。
原料(鉄鉱石・石炭・スクラップなど)
製鉄の原料やスクラップを扱う。利益はほぼゼロで、市況の影響が大きい。
| 数量取扱数量(万トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 500 | 1.55 | 777 | −1 |
| 10 年後 中立 | 450 | 2.08 | 936 | 3 |
取り方:原料ユニットの売上777億円を、取扱量500万トン換算と平均単価1.55万円に分けた推定値。鉄鉱石・石炭・スクラップの平均的な単価の目安。国内の製鉄の縮小で数量の中立は10年で0.9倍。
機械
産業機械や設備を顧客に納める。半導体関連や省人化の設備が伸びている。
| 数量取扱高(実質の億ドル換算) | 価格1ドルあたり円(為替150円×物価の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.2 | 150 | 637 | 31 |
| 10 年後 中立 | 4.9 | 201 | 982 | 49 |
取り方:機械ユニットの売上637億円を、ドル換算4.25億ドル(実質)とドル円150円に分けた推定値。為替は150円で固定し、物価の分は価格の指数に入れた。数量は半導体・省人化の設備市場に対する取扱分で、開示がないため推定。
溶接
神戸製鋼の溶接材料に、溶接ロボットなどを組み合わせて売る。
| 数量取扱数量(万トン、溶接材料換算) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.5 | 30 | 285 | 6 |
| 10 年後 中立 | 9.5 | 40 | 382 | 9 |
取り方:溶接ユニットの売上285億円を、溶接材料換算9.5万トンと単価30万円に分けた推定値。数量は国内の造船・建築・インフラ向けの溶接材料が中心で、人口減で中立は10年で横ばい。
リスクと懸念
親会社への依存
仕入れの4割近くが神戸製鋼で、議決権でも約36%を握られている。親会社の販売方針や資本の動きが、この会社の取り分と上場を左右する。取引条件が変われば、利益が大きく振れる。
鋼材とアルミの市況
扱う鋼材・アルミ・銅は市況品で、値段は製鉄所と中国の生産が決める。営業利益率は2%に届かず、少しの値下がりで利益が消える。2020年3月期には純利益が16億円まで落ちた。
国内需要の細り
鉄鋼と原料で売上の半分を占める。国内の鋼材需要は人口減と建設投資の縮小で年1〜2%ずつ減る。海外で補うには、アセアンとインドで取引先と拠点を作る時間と費用がかかる。
薄い財務と金利
自己資本比率は26%、純負債は360億円ある。借り換えのたびに新しい金利が乗り、10年で利益を9億円ほど削る。不況と金利の上昇が重なると、配当の維持が課題になる。
投資の実行と減損
前の中期計画の事業投資は、目標200億円に対し実績117億円だった。新しい計画は230億円で、買う価格を誤れば減損が出る。貸倒引当金の計上があったことも、与信の管理を問う材料だ。
メーカーの直接販売
商社の中抜きは、鋼材・非鉄・機械のどれにも当てはまる。顧客の大手メーカーが調達を自前化すれば、取り分は縮む。物流と金融の機能で、これに勝てるかが分かれ目だ。
今後の分かれ目
- 神戸製鋼が神鋼商事を株式交換などで完全子会社化すると発表する
- 買い取りの条件次第で、上場の値段は大きく動く。ただし、本質価値は変わらない。条件が価値を上回るかを見直す。
- 機械の取扱量が半導体・省人化の設備とともに2年続けて伸びる
- 中立の数量を上げ、やや楽観の確率を上げてよい。ROEが資本コストを超えるかを確かめる。
- 神戸製鋼の仕入れ比率が4割を大きく下回る、または販売方針の変更が発表される
- 親会社依存の前提が崩れる。やや悲観と悲観の確率を上げ、利益を下方に直す。
- 国内の鋼材需要の減少が年3%を超える
- 縮小が想定より速い。中立の鉄鋼の数量を下げ、10年のやや悲観を厚くする。
- 事業投資で数百億円規模の大型買収を発表する
- のれんの減損のリスクが増える。買う事業の利益率と価格を確かめ、割高なら悲観の確率を上げる。
- 政策保有株の売却が計画を超え、自社株買いや投資に回る
- 資本の使い方が改善する。還元を厚くする筋書きの確率を上げてよい。
見ておくもの
- 金属本部と機械・溶接本部の四半期ごとの営業利益と利益率
- 中期計画の2027年3月期の経常利益145億円の達成度
- 神戸製鋼の持分・販売方針と、神鋼商事の仕入れ比率
- 政策保有株の売却額と残高(純資産比15%以下の目標)
- 国内の鋼材需要、アルミ・銅の価格、半導体・省人化の設備投資
- 自己資本比率、純負債、借り換えの金利
倍率と資本コストの決め方
先に5つのユニットごとに数量×価格で10年の営業利益を積み、利払いの増加(10年で約9億円)と過去の純利益÷営業利益(中央値0.66)から純利益を出した。自己資本は今の990億円に純利益の合計を足し、還元を引いて流し、ROEは結果として出した。倍率は式の上限(ROEが資本コスト以下なので1÷k)の7〜9割の範囲で、薄利・親会社依存を見て置き、悲観側は稼ぐ力から出した。市場の倍率や今の株価から逆算していない。リースは借りて営む業態ではなく、新リース会計基準で形が変わっても10年後は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.7→15.38 倍・やや楽観 PER 9.7→14.26 倍・中立 PER 9.1→13.67 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.80% → 7.50%。