結論
デリカフーズは、外食チェーンなどに野菜を卸し、カットまで済ませて届ける業務用青果物の最大手だ。筆者の結論は「やや割安」。人手不足でカット野菜の需要が伸びる追い風は本物だが、利益はすでに過去最高圏にあり、先の伸びを今の値段が半ば織り込んでいると見る。
直近の営業利益は 21 億円、利益率は 3.4% で、過去 20 年の最高に並んだ。要因は 2025 年度に始めた本部集中仕入と在庫管理で、野菜相場の波を吸収できるようになったことだ。会社は 2027 年 3 月期にさらに 24 億円を見込む。
一方で、利益の薄さは変わらない。外食向けが売上の約 7 割を占め、相場の揺れと店舗の減少で赤字にもなる。コロナ禍では 2 期連続で営業赤字を出した。借入も 110 億円あり、純有利子負債は自己資本の半分を超える。
中立の筋書きでは、利益率は 3% 強に戻り、営業利益は 10 年後に 27 億円前後となる。それでも資本コスト 9% を超える稼ぎは出にくい。ただ、利益の大半を設備に回しても自己資本は積み上がるため、計算上の価値は今の時価総額をやや上回る。筆者は「やや割安」と見るが、安全域は厚くない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い会社に見える、薄利の卸」だ。国内最大手として顧客の信頼を得ており、事業は分かりやすい。ただし、毎年の仕入れ値を自分で決められないのが痛い。
利益のうち株主が自由に使える分は多くない。工場や物流センターの更新に毎年の償却を超える投資が要り、稼いだ利益の半分近くは設備に消える。インフレで更新の費用は膨らむが、減価償却は昔の値段のままで増えない。会計の利益は見かけ上ふくらむが、現金は細る。
直近の利益は過去の山だ。会社が掲げる長期目標(売上 1,000 億円、経常利益率 4〜5%)は、実現すれば価値が大きく上がる。ただ、過去 20 年に一度もない水準で、筆者は低い確率しか置かない。計算上の価値は今の値段をやや上回るが、安全域は薄い。利益が山の水準にある以上、強く推せる値段ではない。相場の荒れで株価が大きく崩れる局面があれば、その時に改めて考える会社だと筆者は見る。経営者が株主への還元を厚くする姿勢を見せれば、評価は変わる。
何で稼ぐ会社か
主力はデリカフーズ㈱が営む青果物の流通加工だ。農家や市場から野菜を仕入れ、外食店や惣菜工場、スーパーへ毎日届ける。売上の 43% はカット野菜、40% は丸のままのホール野菜、残りが日配品とミールキットだ。2010 年代半ばまでホール野菜が過半だったが、外食の人手不足でカット野菜が追い抜いた。
顧客は全国約 800 社・約 3 万店舗で、外食向けが 7 割弱、量販・小売が 1 割強を占める。外資系の外食チェーンは品質管理の基準が厳しく、国際規格 FSSC22000 を各拠点で取った点が強みになる。仕入れは約 6 割が国内の契約農家、2 割が国内の市場、2 割が輸入だ。
物流とカット加工を担う FS センターは、東京、奈良、西東京、中京、埼玉、九州、大阪に置き、仙台は提携で補う。2026 年 4 月には愛知で貯蔵施設の東海マザーセンターが動き始め、物流を担う子会社が運営する。野菜を長く保存する技術を試し、相場が荒れた時の調達を安定させる狙いだ。
新しい試みとして、子会社が業務用のトマトやピーマンを自社で育て始めた。数字に効くほどの規模ではない。売上の 98% は青果物事業であり、物流・分析の子会社は外販が小さい。会社は 2027 年 3 月期に売上 670 億円、営業利益 24 億円を見込み、いずれも過去最高を更新する計画だ。
優良さと弱いところ
優良さは「業界の最大手だが、薄利の卸」だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、規模と品質管理の仕組みにある。
強みは三つある。一つ目は調達力だ。契約農家から仕入れが安定し、天候で産地が荒れても代わりを探せる。二つ目は全国の加工・物流網で、小さな卸が真似しにくい。三つ目は食品安全の認証で、外資系チェーンから選ばれる理由になる。
弱みも三つある。一つ目は価格の決め方だ。野菜の仕入れ値は市況で決まり、顧客の外食チェーンは値上げを嫌う。二つ目は利益の薄さで、営業利益率は 3% 台が上限だった。三つ目は財務で、設備投資が重く、純有利子負債は 58 億円、自己資本比率は 35% だ。
資本効率は改善した。直近の ROE は 14.5% と高いが、前の期は 6% で、コロナ禍の 2 期は赤字だった。筆者は、利益の山が高いほど次の谷も深いと見る。
経営は堅実で、不祥事の履歴も目立たない。持株会社の下で青果、物流、研究を分ける体制を整えた。研究子会社は野菜の成分分析やコンサルティングまで手がけ、契約農家への技術支援の足場にもなる。ただし受託分析の収益は小さく、堀というより信用の補強材料にとどまる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食向けの業務用青果物は、成熟した市場だ。人口は減り、国内の外食の食材の量は横ばいか微減に向かう。それでも今は追い風がある。インバウンドで外食が好調な上、調理人が足りず、店が下ごしらえを減らす流れが強まっている。カット野菜は 2021 年 3 月期にホール野菜を抜き、その差を広げている。
競合は、卸売市場の仲卸や地場の青果卸、食品商社系のカット野菜会社と多く、市場は分散している。デリカフーズは業務用では最大手だが、市場全体から見れば一部にすぎない。顧客の外食チェーンは仕入れ先を複数持つため、価格の交渉力は顧客の側にある。
野菜の相場は天候で決まる。猛暑や長雨で収量が落ちると、仕入れ値が急に上がる。値上げを顧客に通すまでに時間がかかり、その間は利益が削られる。直近の好調は、この時差を小さくする仕組みを整えた成果だ。
10 年先は、外食の店数が減る一方で、1 店あたりのカット野菜の使用は増えると筆者は見る。気候変動で国産野菜の調達が難しくなれば、貯蔵や輸入野菜の国産化に強い会社が選ばれる。そこが差になる。
カット野菜の比率は上がり続けている。2015 年 3 月期の第 3 四半期ではカット野菜が売上の 36%、ホール野菜が 53% だったが、直近は 44% と 39% に入れ替わった。外食向けの比率も当時の 85% から 6〜7 割へ下がり、量販・小売や中食、給食へ顧客が広がっている。
資本政策と M&A
資本政策は、配当性向 30% 程度を目安に、減らさない累進配当を続ける方針だ。直近の配当は記念配当を含めて性向 27% で、来期はさらに引き上げる。自社株買いの方針はなく、2026 年 8 月に株式報酬用の自己株の処分があっただけだ。
成長のための投資が重い。年 20 億円規模の設備投資が続き、減価償却の 12.7 億円を上回る。借入で賄うため、純有利子負債は 58 億円ある。東海マザーセンターや農業参入への投資は、回収に数年かかる。
株主優待はクオカードや青果ボックスで、400 株以上の株主が対象だ。費用は年 1 億円に届かないと見られ、価値への影響は小さい。親会社や大株主はおらず、買収されるかどうかは外部の動き次第で、今のところ公開買付けの発表も観測もない。
買収の履歴は小粒だ。2022 年に青果日和研究所を子会社にし、2025 年に農業法人を新設したが、金額は小さい。大きな買収で価値を壊すタイプではない一方、同業を買って規模を広げる意思も見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
構造が変わった。調理人の不足は外食のどの業態でも続き、カット野菜は伸び続ける。デリカフーズは全国に加工拠点を置き、品質認証を持つため、外資系チェーンなどの大口の新規先を取り込める。直近 4 年間は売上が毎年過去最高を更新した。
利益の改善も、一時的な相場の追い風ではない。国内契約農家からの仕入れが 6 割を占め、産地との関係も深い。2025 年度に本部集中仕入制度を始め、在庫の管理と廃棄ロスの削減を徹底した。猛暑で野菜が高騰した年にも利益を伸ばせた点が、その証拠だ。会社は中期計画の目標を 1 年前倒しで達成し、長期では売上 1,000 億円、経常利益率 4〜5% を掲げる。
新しい芽もある。自社で野菜を育てる農業参入、長期保存の技術、輸入野菜の国産化は、気候変動で国産野菜の調達が難しくなる局面で価値を生む。10 年後に利益率 4% に届けば、利益は今の倍近くになる。外食の景気が悪化しても、人手不足は続くので、省力化のニーズは落ちにくい。景気の波に強い構造に近づいているというのが、強気の見方だ。
慎重な見方
今の利益は山だ。営業利益率 3.4% は過去 20 年の最高で、前の期は 1.4% だった。仕入れ値と販売価格の時差が利益を決める商売で、相場が荒れれば利益はすぐ吹き飛ぶ。コロナ禍では 2 期連続で営業赤字を出した。
価格交渉力が弱い。顧客は外食チェーンで、値上げを渋る。仕入れ側は農家と市場で、相場に従う。間に立つ会社に価格を決める力は残らない。人件費と物流費は毎年上がり、利益率を削る。臨時雇用者を含めて 3 千人規模の工場を回す会社にとって、時給の上昇は直撃する。
財務にも余裕がない。設備投資が償却を上回り、借入は 110 億円。純有利子負債は自己資本の半分を超え、金利が上がれば利払いが増える。東海マザーセンターや農業参入は、回収に時間がかかる賭けだ。国内の外食の量は人口減で伸びず、長期目標の売上 1,000 億円は、他社を買わない限り届きにくい。野菜の値段が下がった年には、売上も利益も同時に細る。会社が好調を維持できるかは、仕組みが不作の年に試されて初めてわかる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。カット野菜の追い風と調達の改善は本物だが、利益率が過去の山を超えて続くには、価格を決める力が足りない。
確率は、中立に 4 割弱を置き、やや悲観に 3 割近くを置いた。楽観を 1 割に満たない低さにしたのは、長期目標が過去に一度も届いていない水準だからだ。悲観は 1 割程度で、外食の減少と相場の荒れが重なる谷を想定した。強気の見方が強調する調達の改善は、実績が 1 年分しかなく、確率を寄せすぎないようにした。結果は、今の値段をやや上回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,555 円253 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 293 円48 億円)。 今の値に割り戻すと 847 円138 億円、今との差 +16.7%、 期待の年率 +9.8%(資本コスト 9.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,874 円468 億円 | 449 円73 億円 | +357.7% | +16.4% | 233 円38 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,278 円371 億円 | 369 円60 億円 | +264.5% | +13.8% | 476 円78 億円 |
| 中立 | 37% | 1,800 円293 億円 | 307 円50 億円 | +190.3% | +11.2% | 780 円127 億円 |
| やや悲観 | 27% | 932 円152 億円 | 252 円41 億円 | +63.0% | +5.0% | 320 円52 億円 |
| 悲観 | 11% | 241 円39 億円 | 123 円20 億円 | −49.9% | −6.7% | 40 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,555 円253 億円 | 293 円48 億円 | +154.6% | +9.8% | 1,848 円301 億円 |
今の株価時価総額 726 円118 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% カット野菜が伸び続け、利益率 4% に届く 利益 29 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 2,874 円468 億円
調理人不足でカット野菜が毎年伸び、取扱量は 10 年で 4 割強増える。調達の仕組みが定着し、相場の振れを吸収できる。大手外食の新規先も取り込み、売上は 1,000 億円に届く。
利益率は 4% を超え、営業利益は 40 億円を上回る。農業参入と長期保存が軌道に乗り、輸入野菜の国産化も進む。配当性向は 3 割台で、ROE は 11% に届く。ただし、これは会社が掲げる長期目標そのもので、過去に一度も実現していない。野菜の価格が下がる年や、外食の客足が戻らない年が混じれば、この水準は維持できない。
- カット野菜:数量 7.9(取扱量(万トン、推定))× 価格 70(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 552 億円・営業利益 25 億円。カット野菜:数量 7.89 × 単価 70.00、利益率 4.6%
- ホール野菜:数量 7.4(取扱量(万トン、推定))× 価格 38(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 284 億円・営業利益 9 億円。ホール野菜:数量 7.45 × 単価 38.08、利益率 3.3%
- 日配・ミールキット・物流等:数量 3.9(取扱量(万トン、推定))× 価格 48(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 188 億円・営業利益 8 億円。日配・ミールキット・物流等:数量 3.89 × 単価 48.30、利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.4% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 401 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:長期目標に近い筋書き。連続して当たる必要があり、過去に一度も届いていない水準でもあるため、確率は低く置く。
やや楽観 18% 調達の改善が定着し、利益率 3.6% で推移 利益 23 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 2,278 円371 億円
カット野菜は伸び、ホール野菜からの置き換えも進む。本部集中仕入の効果が続き、営業利益率は 3.6% で定着する。営業利益は 34 億円ほどで、直近の 1.6 倍だ。
設備投資は続くが、売上の伸びに見合った稼ぎが出る。配当は性向 3 割で増え続け、ROE は 10% 近い。ただし、顧客の外食チェーンが値上げを許す余地は小さく、利益率が 4% を超えるほどの力にはならない。農業参入や長期保存の投資は、回収まで数年かかるが、利益の足を引っ張るほどの規模でもない。外食の店数が減っても、1 店あたりの使用量が増えて、取扱量の伸びは保たれる。
- カット野菜:数量 7.3(取扱量(万トン、推定))× 価格 69(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 507 億円・営業利益 21 億円。カット野菜:数量 7.35 × 単価 69.00、利益率 4.1%
- ホール野菜:数量 7.2(取扱量(万トン、推定))× 価格 38(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 272 億円・営業利益 8 億円。ホール野菜:数量 7.18 × 単価 37.80、利益率 2.8%
- 日配・ミールキット・物流等:数量 3.4(取扱量(万トン、推定))× 価格 48(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 164 億円・営業利益 6 億円。日配・ミールキット・物流等:数量 3.44 × 単価 47.60、利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.1% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.08 倍、時価総額 306 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:追い風が続くが、利益率は山を少し超える程度にとどまる。構造的な改善と相場の幸運を半々に見た。
中立 37% 利益率は 3% 強に戻り、物価の分だけ伸びる 利益 19 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 1,800 円293 億円
利益率は直近の 3.4% から 3.1% に戻る。野菜相場の波は仕組みで和らぐが、顧客の値下げ圧力と人件費の上昇が利益を削る。カット野菜の取扱量は 25% 増え、ホール野菜は 2 割減る。価格は物価並みの 1.34 倍だ。
10 年後の売上は 870 億円、営業利益は 27 億円。配当性向 3 割を守り、減らさない配当を続ける。設備投資は償却を上回って続くため、借入は減らず、ROE は 8% 台にとどまる。堅実だが、資本コストを大きく超える稼ぎではない。野菜の値段が下がる年と上がる年を平均すれば、会社が出せる利益はこのあたりだと筆者は考える。
- カット野菜:数量 6.8(取扱量(万トン、推定))× 価格 68(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 463 億円・営業利益 17 億円。カット野菜:数量 6.80 × 単価 68.00、利益率 3.6%
- ホール野菜:数量 7.0(取扱量(万トン、推定))× 価格 38(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 263 億円・営業利益 6 億円。ホール野菜:数量 7.01 × 単価 37.52、利益率 2.4%
- 日配・ミールキット・物流等:数量 3.0(取扱量(万トン、推定))× 価格 47(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 140 億円・営業利益 4 億円。日配・ミールキット・物流等:数量 2.99 × 単価 46.90、利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.0% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.37 倍、時価総額 229 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の山から利益率が戻る姿。強気の見方と慎重な見方のちょうど間で、最も確率が高い。
やや悲観 27% 値上げが通らず、利益率が 2% 台前半に低下 利益 12 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 932 円152 億円
国内の外食市場が縮み、顧客チェーンの店数が減る。カット野菜の伸びはあるが、ホール野菜の減りを補いきれない。取扱量は 1 割減り、価格は物価に届かない 1.30 倍にとどまる。顧客チェーンの調達部門が値下げを強く求める。
利益率は 2.4% まで下がり、営業利益は 19 億円になる。設備投資の回収が遅れ、借入が重くなる。配当は守るが増やせない。ROE は 6% 前後で、資本コストに届かない。外食の景気と相場が悪い方に重なる、よくある 10 年だ。借入の返済と設備更新に利益が回り、株主に戻る額は思うように増えない。会社が掲げる長期目標は遠のき、市場の評価も資本コストを下回る会社のままになる。
- カット野菜:数量 6.0(取扱量(万トン、推定))× 価格 66(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 395 億円・営業利益 11 億円。カット野菜:数量 5.99 × 単価 66.00、利益率 2.8%
- ホール野菜:数量 6.8(取扱量(万トン、推定))× 価格 36(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 249 億円・営業利益 4 億円。ホール野菜:数量 6.83 × 単価 36.40、利益率 1.8%
- 日配・ミールキット・物流等:数量 2.8(取扱量(万トン、推定))× 価格 46(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 129 億円・営業利益 3 億円。日配・ミールキット・物流等:数量 2.84 × 単価 45.50、利益率 2.4%
倍率:ROE 6.1%(純利益 12.3 億円 ÷ 自己資本 201 億円)。k 9% 以下なので PER の上限は 11.8 倍。ROE÷k が 0.72 と低い局面で、上限の 7 割強の 8.5 倍に置いた。
確率:外食の店数が減り、相場の荒れで利益が削られる。コロナ禍の赤字と、過去 5 期のうち 2 期が低い利益率だった実績から、厚めに置いた。
悲観 11% 構造的に負け、外食の縮小と設備の過剰が重なる 利益 5 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 241 円39 億円
構造的に負ける。国内の外食が縮み、大手チェーンは自社で調達する。ホール野菜の取扱量は 3 割減り、カット野菜も伸びない。価格は物価に追いつかず、利益率は 1.3% まで落ちて営業利益は 9 億円ほどだ。
東海マザーセンターや各地の FS センターは稼働が上がらず、設備の一部に減損が出る。借入の返済が重く、配当は性向の下限まで下がる。優良な会社とは見られなくなり、再編の対象になる。10 年の間に、コロナ禍のような赤字の期が再び 1〜2 回混じる姿だ。純有利子負債は自己資本を上回り、財務制限条項への抵触を避けるため、投資を絞らざるをえなくなる。
- カット野菜:数量 5.2(取扱量(万トン、推定))× 価格 63(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 323 億円・営業利益 5 億円。カット野菜:数量 5.17 × 単価 62.50、利益率 1.5%
- ホール野菜:数量 6.1(取扱量(万トン、推定))× 価格 34(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 206 億円・営業利益 2 億円。ホール野菜:数量 6.13 × 単価 33.60、利益率 1.0%
- 日配・ミールキット・物流等:数量 2.5(取扱量(万トン、推定))× 価格 42(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 107 億円・営業利益 2 億円。日配・ミールキット・物流等:数量 2.54 × 単価 42.00、利益率 1.5%
倍率:構造的に優良でなくなり、純利益は 5 億円ほどで稼ぐ力は 40 億円ほどにしかならない。床の資産は、現金・売掛金・土地を売っても負債 191 億円を差し引くとほぼ残らず、稼ぐ力で測る。ROE が k に大きく届かないので PER は上限 11.8 倍を大きく下回る 8.0 倍に置いた。減損で自己資本は 140 億円に減る。
確率:外食の縮小と相場の荒れに、設備投資の過剰が重なる。コロナ禍で 2 期連続赤字を出した実績を踏まえ、1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
カット野菜
外食・惣菜工場向けに、顧客の注文どおりに切った野菜を届ける。成長の中心。
| 数量取扱量(万トン、推定) | 価格1 万トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.4 | 50 | 272 | 11 |
| 10 年後 中立 | 6.8 | 68 | 463 | 17 |
取り方:2026/03 期のカット野菜部門の売上 272 億円(有価証券報告書)。数量の開示は無く、単価を 1 トンあたり 50 万円と置いて約 5.4 万トンと推定した。部門別の利益は開示が無く、付加価値の高さから営業利益率 3.9% と推定した(推定)。
ホール野菜
丸のままの野菜を卸す。仕入れ値の相場に最も左右される。
| 数量取扱量(万トン、推定) | 価格1 万トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.8 | 28 | 245 | 7 |
| 10 年後 中立 | 7.0 | 38 | 263 | 6 |
取り方:2026/03 期のホール野菜部門の売上 245 億円。単価を 1 トンあたり 28 万円と置いて約 8.8 万トンと推定した。利益率は相場の影響が大きいとみて 2.9% と推定した(推定)。
日配・ミールキット・物流等
日配品、消費者向けミールキット、グループ外への物流、青果物の分析・研究の受託。
| 数量取扱量(万トン、推定) | 価格1 万トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 35 | 105 | 3 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 47 | 140 | 4 |
取り方:青果物事業のその他部門 92 億円と、物流・研究の外部売上約 12 億円の合計 105 億円。単価を 1 トンあたり 35 万円と置いて約 3.0 万トンと推定した。営業利益は連結 21.1 億円との差で 3.3 億円とした(推定)。
リスクと懸念
野菜相場と天候
野菜の仕入れ値は天候で決まる。猛暑や長雨で収量が落ちると仕入れ値が急に上がり、顧客に値上げを通すまでの時差で利益が削られる。2025 年度は本部集中仕入で抑えたが、不作が重なる年にこの仕組みが通用する保証はない。
外食産業への依存
売上の約 7 割は外食向けだ。外食が不況や人口減で縮めば、取扱量が落ちる。コロナ禍の 2021 年 3 月期は営業赤字 15 億円、翌期も赤字になった。顧客の大手チェーンは仕入れ先を分散しており、価格を下げさせる力が強い。
設備投資の回収と借入
FS センターや東海マザーセンターなど設備投資が年 20 億円規模で続き、減価償却の 12.7 億円を上回る。借入が増えれば利払いも重くなり、金利が 3.5% に上がると利益を削る。稼働率が上がらなければ減損もありうる。
人手と物流費の上昇
工場の人手は臨時雇用者も含めて 3 千人規模で、時給の上昇がそのまま原価を押し上げる。2024 年問題以降、物流費も高止まりしている。値上げを顧客に通せなければ、利益率はすぐ 2% 台に下がる。
品質・食品安全の事故
生鮮食品は一度の異物混入や食中毒が、取引停止につながる。外資系チェーンは基準が厳しく、事故が起きれば損失は利益数年分に及びうる。国際認証を取っているが、ゼロにはできない。
財務制限条項
借入に財務制限条項が付いており、直近は抵触していない。ただし赤字が続けば抵触し、資金調達の条件が悪くなるおそれがある。コロナ禍の 2 期でも乗り切ったが、自己資本比率は 27% まで下がった。
今後の分かれ目
- 売上総利益率が 2 期続けて今の水準を維持したら
- 調達の仕組みの効果が確かめられたと見て、中立の利益率を 3.1% から 3.4% へ引き上げる。
- 野菜が高騰した年に、営業利益が前年を下回ったら
- 本部集中仕入の効果が限られるとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 東海マザーセンターの稼働率が上がり、物流事業の利益が増えたら
- 設備投資の回収が確かになり、設備の減損リスクを下げる。
- 外食大手の新規取引が連続して決まり、売上が 700 億円を超えたら
- カット野菜の取扱量の伸びを上方に直し、楽観の確率を少し増やす。
- 同業を買収して規模を広げたら
- 買収価格と統合の費用次第。相場に左右される薄利の卸は、買収で稼ぎが増えにくい。
- 総還元性向を引き上げ、自社株買いを始めたら
- 財務に余裕が出た合図とみて、中立の払い出しを増やす。
見ておくもの
- 売上総利益率と営業利益率の四半期推移
- 野菜相場(主要品目の卸売価格)と仕入れ値の差
- 設備投資額と、純有利子負債・財務制限条項の余裕
- カット野菜の売上構成比と大手外食チェーンの新規取引
- 東海マザーセンター・農業参入の収益化の時期
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト k 9%(基本 7.5% + quality 1.0%)にほぼ並ぶため、式の上限(1÷k = 11.8 倍)の 7〜9 割を利益の質で置いた。楽観だけ ROE が k を超えるので RONIC 入りの正当化 PER(13.4 倍)から置いた。今の株価や今の PER を見てから決めたわけではない。直近の利益は過去の山で、中立の利益率は過去の最高(3.4%)より低い 3.1% とした。10 年の自己資本は、設備投資のため配当性向 3 割で流し、ROE は結果として 8% 台になった。減価償却は物価で増やさず、更新の投資が償却を上回ることを買う側の現金の細りとして見ている。純有利子負債は 58 億円で時価総額の半分あり、余った現金は分けていない。数量は売上を単価で割った推定で、誤差がある。2028 年 3 月期からの新リース会計基準で、賃借物件のリース負債が BS に載るが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 9.00%。