結論
ソーダニッカは、か性ソーダなどの基礎薬品を化学メーカーから仕入れて産業界に売る、中堅の専門商社だ。筆者の結論は、今の値段は事業の価値に近い、というものだ。
本業は堅い。2026年3月期の営業利益は25億円で、5年前の3倍になった。ソーダを核に、電子向けの薬品、水処理剤、包装資材へと取扱いを広げ、2027年3月期の第1四半期は営業利益が2倍近くに増えた。借金は短期の3億円台だけで、純現金は約54億円ある。
弱点は資本の使い方だ。貸借対照表には、上場株が46銘柄、173億円ある。時価総額の半分強にあたる。配当しか生まないこの資産が、ROEを7%にとどめている。会社は約40億円を売る計画を掲げるが、進みは遅い。
10年後の中立は、売上が約940億円、営業利益が約37億円、ROEは8.6%。強気は包装と電子向けが伸びる姿、弱気は国内の化学需要の縮小と中抜きだ。確率を重ねた価値は、今の時価総額とほぼ等しい。
バリュー投資の観点から
事業の質と、持ち合い株を分けて見る。
事業は、薄利でも黒字が続く堅い商売だ。直近10年は赤字の期がなく、営業利益は直近5年で3倍になった。借金がなく、顧客の与信も管理されている。
ただ、商社の利益は景気で振れる。化学品はメーカーの価格に引きずられ、売上の伸びも乏しい。事業単独の10年後の姿は、物価に合わせて名目で増える程度で、大きくは伸びない。
持ち合い株は両刃だ。時価総額の半分強の資産を抱えているので、倒産の心配はなく、売れば現金になる。一方、配当だけでは資本コストに届かず、ROEを押し下げる。評価益88億円には税がかかり、繰延税金負債が34億円ある。
安全域は、あまり大きくない。純現金と持ち合い株の合計は約230億円で、時価総額の7割強にあたる。残りの約80億円で本業を評価していることになり、本業の利益は税引後で約17億円ある。安く見えるが、持ち合い株の売却が進み、ROEが改善するまで、市場は割り引き続けるかもしれない。筆者は、売却の実績が積み上がるかを見たい。
何で稼ぐ会社か
ソーダニッカは、ソーダ製品を祖業とする専門商社で、連結の従業員は400名ほどだ。2026年3月期の売上667億円のうち、化学品事業が443億円、機能材事業が145億円、その他事業が79億円を占める。
化学品事業の中心は、か性ソーダ、塩酸、炭酸ソーダなどのソーダ関連薬品だ。硫酸やアンモニアなどの無機薬品、溶剤や界面活性剤などの有機薬品も扱う。仕入先は化学メーカーで、売り先は化学、電子、水処理、食品包装、日用品など幅広い。か性ソーダと塩酸は、半導体向けなど電子産業の需要が増えている。
機能材事業は、フィルムや容器などの包装資材、合成樹脂、産業設備を扱う。子会社の日本包装は、食品包装の印刷とラミネートを手がけ、岡山の新工場でその能力を約3倍にした。その他事業は、縫製雑貨のモリス、海外の現地法人、不動産の賃貸などだ。
稼ぎ方は、仕入と販売の差だ。売上に対する営業利益率は3.7%と薄い。顧客の信用を負う売掛金が468億円、仕入先への買掛金が392億円(2025年12月末)で、運転資金の回転が利益を左右する。費用の中心は人件費と物流費で、ケミカルセンターや倉庫を持つことで、在庫と配送の機能を売りにしている。
会社の呼び方では、売上の75%が基盤事業(化学品と樹脂の取引)、15%がパッケージ・新素材、10%が生活ソリューション(日用品や化粧品の受託)だ。
優良さと弱いところ
堀は、取扱品目の広さと、顧客に届ける物流にある。ただ、深くはない。
ソーダ製品は、メーカーが価格を決める。商社の取り分は一定の手数料に近く、値決めの力は弱い。炭酸ソーダは、2026年3月期にシェアを落として取引が減った。基礎薬品の商売は、メーカーが直接売る動きとも隣り合わせだ。
一方で、毒物劇物を扱う資格と設備、拠点の在庫と配送は、新規参入の壁になる。総合職の毒劇物取扱者の資格保有率は、2026年度に80%を目標とする。広島の大野ケミカルセンターなど、拠点を増やして地域の需要を取っている。自治体向けの水質処理剤のように、公共の安定した需要も入った。
資本効率は低い。ROEは5%前後が長く続き、2026年3月期で7.0%だ。会社の目標は8%以上である。理由は、貸借対照表の上場株173億円が、配当程度しか稼がないためだ。事業だけで見れば、効率はもっと高い。
営業利益率は、2021年3月期の0.8%から、2026年3月期の3.7%まで上がった。電子向け薬品や包装、日用品など、利益率の高い品目が伸びたためだ。ただ、2022年3月期に売上が946億円から555億円へ落ちたのは、売上の計上方法の変更を含む可能性があり、率の上昇にもその分が混じる。規模の拡大は進んでいない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は、国内の製造業の生産が決める。ソーダ工業用の塩の需要は、2026年度に628万トンと、前年度比で1%の増と見込まれる。か性ソーダの国内生産も、370万〜380万トンでほぼ横ばいだ。基礎薬品の数量は、人口が減る国内で、実質ではほとんど伸びない。
伸びる部分は、はっきりしている。半導体の洗浄などで使う電子向けのか性ソーダと塩酸、水処理、ファインケミカル、食品包装、日用品の受託だ。2026年3月期は、これらで取引が増えた。一方、化学業界向けのか性ソーダや炭酸ソーダは減った。
競争は三層だ。一つ目は、電子材料やライフサイエンスで成長する大手の化学品商社。三つ目が、メーカーの直接販売だ。この会社は、大株主にAGC、セントラル硝子、ADEKAなどのメーカーが並び、取引の土台は安定している。
数量の物差しは、取扱高を実質で置く。10年後の中立は、化学品が今より3%増の455億円、機能材が14%増の165億円。値段は物価で10年に1.34倍が中立だが、商社は仕入価格の上昇を転嫁するだけで、取り分は増えにくい。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向40%以上だ。2026年3月期の配当性向は4割強だった。2027年3月期の配当は前期と同額の予想で、ここ3年は増配が続いた。500株以上の株主には優待もある。自社株買いは数値目標にないが、2022年3月期に238万株を取得した実績がある。
財務は強い。有利子負債は短期の借入だけで、約37億円(2025年12月末)。現金は90億円で、純現金は約54億円。自己資本比率は2026年6月末に45.7%まで上がった。
問題は、上場株46銘柄の173億円だ。これは仕入先や取引先との持ち合いが中心で、評価益が88億円ある。会社は2023〜2026年度の4年で約40億円を売る計画で、実績は2024年3月期に2.7億円、2025年3月期に10.6億円だった。売却額は成長投資と還元に回す計画なので、進めば資本の稼ぎが上がる。
成長投資の枠は4年で100億円。包装の新工場、ケミカルセンター、倉庫に使い、2025年5月時点で約7割が実行か決定済みだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、本業の改善と、眠った資産の動き出しに頼る。
営業利益は2021年3月期の8億円から、2026年3月期の25億円に伸びた。2027年3月期の第1四半期は、売上が15%増え、営業利益は8.2億円と前年の2倍近くだ。会社の通期予想は26億円で、すでに3割強を稼いだ。予想は低すぎる、という見方になる。
成長の入り口も増えた。岡山の新工場で、包装の印刷とラミネートの能力は約3倍になった。広島のケミカルセンターと、静岡の新倉庫が動き出す。電子向けのか性ソーダと塩酸、自治体向けの水質処理剤が取引を増やした。
資本の面は、売却の一手で変わる。上場株は173億円あり、会社は約40億円を売る計画だ。売った資金で自社株買いや増配をすれば、ROEは目標の8%を超える。純現金54億円もあるので、無理なく実行できる。
10年後、包装と電子向けが育ち、化学品の利益率が1ポイント上がれば、営業利益は56億円に届く。この筋書きの確率は6%とした。
慎重な見方
慎重な見方は、薄利の商売が本質的に伸びにくい点を指摘する。
2027年3月期の第1四半期の好調は、営業利益率が2.7%から4.5%に跳ねたものだ。通期の会社予想は営業利益26億円で、前期から5%しか伸びない。会社も一時的な要因を見ているのではないか、と疑える。商社の利益は、仕入と販売の時期のずれでも動く。
国内の化学需要は、人口が減るなかで増えない。化学業界向けのか性ソーダと、炭酸ソーダは、2026年3月期に取引が減った。メーカーが直接売る動きが強まれば、取り分は削られる。
資本の面は変わりにくい。持ち合い株の売却は、4年で40億円の計画に対し、24年3月期と25年3月期の2年で13億円にとどまった。売らない理由は、取引先との関係だ。経営が売却を進めなければ、ROEは7%前後に張りつく。
物価の上昇も重い。人件費と物流費は毎年増え、全社の費用は25億円と、営業利益とほぼ同じ大きさだ。値上げを通せなければ、利益は簡単に消える。
どちらに重みを置いたか
結論は、今の値段は妥当圏、というものだ。確率を重ねた価値は約316億円で、時価総額312億円とほぼ等しい。
この会社の特徴は、資産の裏づけが厚いことだ。純現金と上場株で約230億円あり、時価総額の7割強を占める。悲観の筋書きでも、売れる資産の価値は約188億円と、時価総額の6割を超える。下値は固い。
一方、上がる力は限られる。本業の利益は薄く、国内の数量は伸びない。持ち合い株が稼ぐ配当は資本コストに届かず、売却が進むまで資本の稼ぎは上がらない。10年の中立でも、ROEは8.6%と資本コストを少し上回る程度だ。そのため倍率は、資本コストの逆数の12倍ほどにとどまる。
見るべき点は三つ。持ち合い株の売却額、営業利益率が4%台を維持できるか、そして新しい中期経営計画の目標だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,156 円492 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 895 円204 億円)。 今の値に割り戻すと 1,607 円367 億円、今との差 +23.5%、 期待の年率 +8.9%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,964 円905 億円 | 1,314 円300 億円 | +305.7% | +15.0% | 317 円72 億円 |
| やや楽観 | 16% | 3,153 円720 億円 | 1,139 円260 億円 | +229.9% | +12.7% | 687 円157 億円 |
| 中立 | 38% | 2,546 円581 億円 | 1,008 円230 億円 | +173.2% | +10.6% | 1,350 円308 億円 |
| やや悲観 | 28% | 1,239 円283 億円 | 745 円170 億円 | +52.5% | +4.3% | 555 円127 億円 |
| 悲観 | 12% | 824 円188 億円 | 351 円80 億円 | −9.7% | −1.0% | 141 円32 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,156 円492 億円 | 895 円204 億円 | +134.5% | +8.9% | 3,050 円696 億円 |
今の株価時価総額 1,301 円297 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 包装と電子向けが育ち、売却資金が還元に回る 利益 49 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 3,964 円905 億円
包装と電子向けが育ち、取扱いが一段広がる。機能材は取扱高が200億円まで増え、日本包装の新工場が満ちる。化学品は電子向けのか性ソーダと塩酸、水処理剤が伸び、利益率が9.8%に上がる。
全社費用は物価の上昇を、効率化で抑える。持ち合い株の売却は計画を超えて進み、資金は自社株買いと増配に回る。10年の還元は300億円に達し、自己資本は400億円にとどまる。
営業利益は約56億円、営業利益率は5.3%。純利益は約49億円で、ROEは12.2%。商社として最良の姿だが、ここまで伸ばすには、国内の数量の逆風を超える成長が要る。
- 化学品事業:数量 500(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 670 億円・営業利益 66 億円。取扱高500億円、利益率9.8%
- 機能材事業:数量 200(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 268 億円・営業利益 20 億円。取扱高200億円、利益率7.5%
- その他事業:数量 90.0(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 121 億円・営業利益 4 億円。取扱高90億円、利益率3.6%
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)110 億円。全体の PER 16.78 倍、時価総額 905 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:包装と電子向けが育ち、資本政策も動くには、国内の数量の逆風を超える必要がある。商社の薄い利ざやでは条件が厳しい。6%に置いた。
やや楽観 16% 好調が続き、ROEは10%を超える 利益 40 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 3,153 円720 億円
包装と電子向けが着実に育つ。機能材の取扱高は180億円、化学品は475億円まで増える。利益率は、化学品が9.3%、機能材が6.7%に上がる。
持ち合い株は計画どおりに売れ、還元は260億円になる。自己資本は約400億円。2027年3月期の好調が、一時的でなかったことになる。
営業利益は約46億円、純利益は約40億円。ROEは10.2%で、会社が掲げる8%を超える。ただ、商社の薄い利ざやという性格は残る。持ち合い株の売却が進むぶん、資本の稼ぎも少しずつ改善する。全社費用は物価並みに増え、34億円ほどに収まる。
- 化学品事業:数量 475(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 637 億円・営業利益 59 億円。取扱高475億円、利益率9.3%
- 機能材事業:数量 180(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 241 億円・営業利益 16 億円。取扱高180億円、利益率6.7%
- その他事業:数量 85.0(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 114 億円・営業利益 4 億円。取扱高85億円、利益率3.4%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)110 億円。全体の PER 15.69 倍、時価総額 720 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近5年で営業利益が3倍になり、2027年3月期の第1四半期も好調だ。この流れが続く姿は十分ありうる。ただ、利益率の改善は一時的な面もあるので、16%とした。
中立 38% 数量は横ばいで、物価に合わせて利益が増える 利益 34 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 2,546 円581 億円
国内の数量はほぼ横ばいで、増えるのは包装、電子向け、日用品など一部の品目だ。化学品の取扱高は455億円、機能材は165億円、その他は80億円になる。値段は物価で1.34倍に上がるが、取り分は物価並みに増える程度だ。
全社費用も物価に合わせて増え、34.5億円になる。持ち合い株は計画どおりに少しずつ売れ、還元は230億円で純利益の7割にあたる。
営業利益は約37億円、営業利益率は4.0%。純利益は約34億円で、ROEは8.6%。資本コストをわずかに上回る。堅実だが、驚きのない筋書きである。第1四半期の好調は、10年のなかで均されて、ふつうの水準に戻ると見る。
- 化学品事業:数量 455(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 610 億円・営業利益 55 億円。取扱高455億円、利益率9.0%
- 機能材事業:数量 165(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 221 億円・営業利益 13 億円。取扱高165億円、利益率6.0%
- その他事業:数量 80.0(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 107 億円・営業利益 3 億円。取扱高80億円、利益率3.2%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)110 億円。全体の PER 14.65 倍、時価総額 581 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の数量は横ばいで、物価に合わせて利益が増える。持ち合い株の売却は進むが、遅い。商社として中立に最も近い姿として、38%に置いた。
やや悲観 28% 需要が細り、名目の営業利益は10年横ばい 利益 22 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,239 円283 億円
国内の化学需要が細り、炭酸ソーダのように、シェアを落とす品目が増える。商社の取り分は物価に追いつかず、値段は10年で1.25倍にとどまる。
化学品の取扱高は430億円、機能材は150億円に減り、利益率も落ちる。全社費用は削るが、売上の減少には追いつかない。持ち合い株の売却も遅れ、資本の稼ぎは動かない。
営業利益は約23億円で、今とほぼ同じ。名目では10年間横ばいだ。純利益は約22億円、ROEは5.5%で、資本コストを大きく下回る。持ち合い株の配当は残るので、赤字にはならないが、資本は稼げない。自己資本は約395億円で、ほとんど積み上がらない。
- 化学品事業:数量 430(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 125.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 538 億円・営業利益 44 億円。取扱高430億円、値段+25%、利益率8.2%
- 機能材事業:数量 150(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 125.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 188 億円・営業利益 9 億円。取扱高150億円、値段+25%、利益率5.0%
- その他事業:数量 72.0(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 125.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 90 億円・営業利益 2 億円。取扱高72億円、値段+25%、利益率2.6%
倍率:事業の純利益は21億円、事業のROEは6.6%で資本コスト8%に届かない。ためた利益は額面ほどの価値がなく、倍率は資本コストの逆数の約12.1倍が上限。振れを割り引き、上限の8割弱の9.5倍に置いた。余った現金は谷で食う分として0.75倍にし、41億円を足した。
確率:国内の化学需要が細り、炭酸ソーダのようにシェアを落とす品目が増える姿は、十分ありうる。薄利で振れも大きいので、28%に置いた。
悲観 12% 直接販売と評価損で、商社の稼ぎが崩れる 利益 6 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 824 円188 億円
構造的に負ける。メーカーの直接販売と、国内需要の縮小で、基礎薬品の商売が細る。化学品の取扱高は380億円に減り、値段は10年で1.1倍にとどまる。
売掛金の貸倒れも出る。持ち合い株の評価損と合わせ、自己資本は約60億円削られる。全社費用は30億円まで切り込むが、追いつかない。
営業利益は約5億円、純利益は約6億円。配当は維持できず、還元は80億円にとどまる。残る価値は、純現金と売れる資産が負債を上回る分だ。本業の稼ぎはほとんど評価されず、資産の裏づけだけが下値になる。第1四半期の好調のような改善は、10年のなかで消える。
- 化学品事業:数量 380(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 110.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 418 億円・営業利益 29 億円。取扱高380億円、値段+10%、利益率7.0%
- 機能材事業:数量 120(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 110.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 132 億円・営業利益 5 億円。取扱高120億円、値段+10%、利益率3.5%
- その他事業:数量 60.0(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 110.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍))→ 売上 66 億円・営業利益 1 億円。取扱高60億円、値段+10%、利益率1.5%
倍率:稼ぐ力は、純利益6億円を資本コストで割って約76億円。一方、売れる資産の税後の価値は約188億円で、こちらが大きい。後者に置いた。今の自己資本に対しては0.56倍にあたる。
確率:直近10年は赤字の期がなく、財務も強いので、構造的に負ける可能性は低い。ただ、メーカーの直接販売と持ち合い株の下落が重なる姿は否定できない。12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
化学品事業
か性ソーダ・塩酸・炭酸ソーダなどのソーダ関連薬品、無機薬品、有機薬品、キレート剤などを仕入れて産業界に売る。同社の中心。
| 数量取扱高(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 443 | 100.0% | 443 | 39 |
| 10 年後 中立 | 455 | 134.0% | 610 | 55 |
取り方:2026年3月期の実績。売上443.2億円、セグメント利益39.4億円(利益率8.9%)。数量の開示はなく、売上をそのまま実質の取扱高に置いた。か性ソーダは電子向けが増え、化学業界向けと炭酸ソーダは減った。
機能材事業
包装のフィルム・容器・機器、合成樹脂、設備・産業材料を仕入れて売る。
| 数量取扱高(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 145 | 100.0% | 145 | 8 |
| 10 年後 中立 | 165 | 134.0% | 221 | 13 |
取り方:2026年3月期の実績。売上144.9億円、セグメント利益8.3億円(利益率5.7%)。数量の開示はなく、売上をそのまま実質の取扱高に置いた。包装機器の海外案件と複合フィルムが伸び、ナイロンフィルムは中国向けが減った。
その他事業
子会社8社の事業。縫製雑貨のモリス、海外の現地法人、食品包装の日本包装など、不動産の賃貸収入を含む。
| 数量取扱高(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 78.8 | 100.0% | 79 | 2 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 134.0% | 107 | 3 |
取り方:2026年3月期の実績。売上78.8億円、セグメント利益2.4億円(利益率3.0%)。縫製雑貨が好調で利益が増えた。数量の開示はなく、売上をそのまま実質の取扱高に置いた。全社費用(調整)は約25億円で、各セグメントの利益に含まれない。
リスクと懸念
国内の化学需要の縮小と中抜き
国内の製造業の生産が細ると、基礎薬品の数量が減る。炭酸ソーダは2026年3月期にシェアを落とした。メーカーが直接売る動きが強まれば、商社の取り分が削られる。売上の4分の3が基盤事業なので、影響は大きい。
薄利ゆえの利益の振れ
営業利益率は3.7%と薄い。仕入価格の上昇を売値に転嫁できない期や、売掛金の回収の遅れで、利益は簡単に動く。売掛金は468億円(2025年12月末)あり、取引先の信用が崩れると損失が出る。
持ち合い株の値下がり
上場株46銘柄の173億円は、株価の変動を直接受ける。評価益は88億円あり、相場が崩れれば自己資本が一気に減る。自己資本比率や配当の余力に響く。
物価と人件費の上昇
全社費用は2026年3月期で約25億円と、営業利益とほぼ同じ大きさだ。人件費、物流費、倉庫の費用は、物価に合わせて増える。値上げを通せなければ、営業利益が圧迫される。
新規投資の回収の遅れ
包装の岡山新工場は約43億円、広島のケミカルセンターは約12億円の投資だった。稼働率が上がらなければ、減価償却の負担が利益を削る。会社自身が2025年3月期の減益予想で、この点を挙げていた。
資本政策が動かない
持ち合い株の売却が計画に届かず、ROEが7%前後に張りつく恐れがある。株主還元が配当性向40%どまりなら、現金は積み上がり、資本の稼ぎは上がらない。
今後の分かれ目
- 持ち合い株の売却が年10億円を超える状態が2年続いた
- 資本政策が動いた合図だ。ROEの改善が見込めるので、中立と強気の確率を上げる。
- 営業利益率が4%台で、2年連続して定着した
- 2027年3月期第1四半期の改善が一時的ではない証拠だ。強気の確率を上げる。
- 新しい中期経営計画で、ROEの目標が10%以上に引き上げられた
- 資本の使い方を変える意思が見える。中立の倍率を上げてよい。
- 化学品事業の取扱高が、2年続けて前年を下回った
- 国内の基礎薬品の縮小が表に出た合図だ。慎重な筋書きの確率を上げる。
- 自社株買いが発表された
- 1株の利益に効く。ただ、事業の価値は変わらないので、規模と財源を確かめる。
- 売掛金の貸倒れが数億円規模で出た
- 与信の管理が崩れたかを確かめる。弱気の確率を上げる。
見ておくもの
- 営業利益率の推移(4%台を保てるか)
- 持ち合い株の売却額と、投資有価証券の残高
- 化学品事業の取扱高と、炭酸ソーダ・か性ソーダの取引の増減
- ROEと、新しい中期経営計画の目標
- 売掛金の残高と、営業キャッシュフロー
- 包装(日本包装)の稼働率と、新工場の利益
倍率と資本コストの決め方
本稿は時価から出発していない。起点は2026年3月期の実績で、売上667億円、営業利益25億円、純利益24億円だ。会社の2027年3月期の予想(営業利益26億円、純利益24.5億円)は、第1四半期が好調でも修正されていないので、起点に置かなかった。
倍率は、収益から決めた。ROEが資本コストを上回る筋書きでは、式の上限の8〜9割に置き、商社の利益の振れを割り引いた。ROEが資本コストを下回る筋書きは、上限の8割弱に置いた。他社や過去の倍率は、判断に使っていない。
資本コストは8%とした。同じ領域の長瀬産業は8.5%。こちらは純現金が厚く借金がないので、0.25ポイント低い。ただし規模が小さく、値決めの力が弱いので、基本より高く置いた。
取扱高は開示の売上をそのまま使った推定で、数量の開示はない。第3四半期の短信(2025年12月末)より新しい貸借対照表は、内訳が読めなかった。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.2→16.78 倍・やや楽観 PER 13.3→15.69 倍・中立 PER 12.2→14.65 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0.75% を足した。持ち合い株の価値や新規投資の失敗など個別の事情は、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 8.00%。