結論
グリムスは、中小企業に電気代を下げる手段を売る会社だ。屋根の太陽光と蓄電池を売り、電気そのものも小売りする。創業社長が株の45%を持つ。
筆者の結論は、今の値段は先に向けておおむね妥当、というものだ。強みは、売上の4割強で利益の6割強を稼ぐ法人向けの営業力にある。弱みは、その稼ぎが国の支援と電気料金の高止まりという追い風に乗っている点だ。
営業利益率は21%と過去最高だ。10年前は6%、2021年3月期は8.5%だった。山に近い利益を、そのまま10年先まで延ばして置く気にはなれない。
一方で守りは堅い。純現金は127億円と時価総額の2割を超え、自己資本比率は68%ある。新電力が次々に倒れた時期にも、赤字を出さなかった。
筆者がいちばん気にしているのは、増えた現金の行き先だ。系統用蓄電池への投資は、太陽光の販売より稼ぎの確かさが低い。創業者の持ち株が厚い会社だけに、資本の使い方が価値を左右する。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべき点は三つある。事業が10年後も強いか、稼ぎが株主の手元に残るか、払う値段に余裕があるかだ。
事業の強さは、半分は認める。法人向けの直接営業は粗利が59%と高く、顧客に電気代の削減という分かりやすい価値を渡している。ただ、堀は広がっていない。太陽光は政策に、小売電気は市場価格に左右される。どちらも、自社だけで値段を決められない。
稼ぎの質には注意がいる。営業利益率21%は過去最高で、10年の中央値の倍近い。この水準が続くと置けば、先の見積もりが甘くなる。筆者は、利益率が少しずつ平均へ戻ると見る。
資本の使い方は評価できる。借金に頼らず、配当を毎年増やしている。気になるのは、積み上がる現金を系統用蓄電池へ振り向ける流れだ。収益はまだ小さく、制度の変更に弱い。創業者が大株主なので、株主の目線に立った判断を続けるかが問われる。
安全域は、今の値段ではほどほどだ。純現金が下値を支えるが、稼ぎの質を考えると、大きく割り引かれた値段ではない。
何で稼ぐ会社か
グリムスの事業は二本立てだ。法人向けのエネルギーソリューション(ES)事業と、電気を売る小売電気事業である。
ES事業は、売上の4割強、利益の6割強を占める。中心は、工場や店舗の屋根に載せる事業用太陽光だ。電気代を下げる提案とセットで売り、蓄電池や省エネ設備、電子ブレーカーによる契約容量の見直しも付ける。事業用太陽光の粗利率は59%と高い。電気代が下がる話を直接営業で売るので、値段の勝負に巻き込まれにくい。一般家庭向けは利益率が低く、2027年3月期にはほぼ撤退する。
小売電気事業は、売上の6割弱を占める。低圧から高圧までの約7万3千口の需要家に電気を届ける。調達は卸市場と相対契約を組み合わせ、独自の燃料費調整や市場連動の契約で、仕入れ値の変動を顧客へ移す。国の発電所維持費の割り当てである容量拠出金も、大半を価格に乗せた。
三つ目の柱が、育てている系統用蓄電池だ。送電網につないだ大型の電池で、電気が余る時に充電し、足りない時に放電して稼ぐ。2026年3月に1基目が動き、今期は6基を計画する。会社は今期の営業利益で5億円弱を見込むが、稼働が遅れれば半分ほどにとどまる。
事業全体の稼ぎ方は、営業の人数が決める。新卒を毎年100名採り、顧客を広げる。事業用太陽光の既存顧客は約4,500件。見込み客は約60万件あり、掘り起こしは1%に届いていない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社が簡単にまねできない強みは、直接営業の力と顧客基盤にある。ただ、深い堀とは言いにくい。
強みの一つは、売り方だ。電気代がいくら下がるかを示し、太陽光、蓄電池、契約容量の見直しを一度に提案する。事業用太陽光の粗利率は59%で、一般家庭向けより20ポイント高い。値段で選ばれていない証拠だ。
もう一つは、小売電気と太陽光を同じ顧客に売れることだ。電気を買ってもらった顧客に、太陽光を提案できる。2025年4月には子会社も小売の免許を取り、契約の入り口を増やした。
弱みは三つある。第一に、太陽光は国の制度で需要が動く。2027年度から地上設置は固定価格買取の対象外になる。自家消費の補助金も、自治体ごと、年度ごとに変わる。第二に、小売電気は卸市場の値動きに左右される。2021年の冬と2022年に、新電力の多くが逆ざやで撤退した。第三に、利益率が高すぎる。競合が増えれば、まず粗利が削られる。
資本の使い方は堅実だ。純現金で、配当は利益の4割を目安に増やし続けている。ただ、積み上がった現金の使い道は、まだ実績が少ない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
二つの市場で戦っている。どちらも成長して見えるが、制度に左右される。
法人向け太陽光は、需要の質が変わる局面だ。電気代が高止まりし、工場や店舗は自家消費で電気代を抑えたい。富士経済の調べでは、太陽光の電力販売契約(PPA)の市場は2025年度に900億円弱で、2040年度には4,000億円台へ広がる。設備を買うより、初期費用ゼロで使う契約のほうが伸びやすいとの見方もある。設備の販売が中心のグリムスは、この流れをどう取り込むかが課題になる。
制度の風向きも変わる。2027年度から、地上に置く事業用太陽光は固定価格買取の支援を外れる。屋根設置は初期費用を厚く支える仕組みが続く。国の政策は、屋根の自家消費へ寄っている。グリムスの得意な領域に近い。ただ、補助が薄くなれば、設備の値下がりが売値に響く。パネルの価格は下がり続けるので、単価は物価ほど上がらない。
小売電気は、淘汰が一巡した後の市場だ。帝国データバンクの調べで、新電力の撤退・倒産は2024年3月までに累計119社に上った。残った会社は調達を固め、容量拠出金を価格に乗せている。契約口数は増えているが、規模の小さい会社が市場価格の急騰に耐えるのは難しい。中東情勢で、先行きは読みにくい。
系統用蓄電池は、参入者が急増している。需給調整市場の上限価格は引き下げが進み、収益の中心である待機の報酬が細る方向だ。先に動いたことは利点だが、先行者の利益は長く続かない。
資本政策と M&A
資本の使い方は、いまのところ堅実だ。配当は利益の4割を目安に、10期連続で増やしてきた。今期は11期連続の増配を予定する。目安の性向は30%から40%へ引き上げた。
現金は積み上がっている。純現金は3年で51億円から127億円へ増えた。配当の後の残りの多くが、そのまま手元に残る。自己株は発行済みの3%ほどで、大きな自社株買いの実績はない。
使い道は、系統用蓄電池と太陽光発電所だ。今期は6基の蓄電池を計画する。事業用太陽光の販売と違い、設備を自社で持つ投資になる。回収に年数がかかり、市場価格の変動も受ける。販売で稼ぐ会社が、設備を持つ会社へ半分寄る形だ。
株主は創業社長の田中政臣氏が45%を持つ。ほかに電力関連のエナリスが7%、光通信系のファンドが5〜7%を持つ。創業者が支配するため、買収で会社が動く可能性は低い。株主の取り分を厚くするか、投資で抱えるかは、社長の判断に大きく左右される。
人への投資も資本政策の一部だ。新卒100名の採用は営業力の拡大に直結するが、人件費は固定費になる。
還元の点検(P3 2026-10-19):方針は配当性向40%を目安(30%から引き上げ)の累進配当で、自社株買いの実績・方針は無い。中立の還元を純利益の合計の55%から42%に下げ、留保は自己資本に残した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
事業用太陽光は、まだ入り口に立ったばかりだ。見込み客は約60万件あり、掘り起こしは1%に届かない。新卒を毎年100名入れて営業を増やせば、件数は伸びる。電気代が高い局面は続くので、自家消費の需要は強い。
粗利率の高さは、顧客が値段でなく効果で選んでいる証拠だ。直接営業の力は、一朝一夕でまねできない。同じ顧客に電気も売れる。太陽光、蓄電池、電気を一度に提案できる会社は少なく、顧客を囲い込める。
小売電気は、淘汰を生き残った。容量拠出金の増加を顧客へ移せる力を示した。契約口数は1年で約1万口増え、今期も1万口以上を計画する。相対電源の調達を固め、市場の変動を抑えている。
系統用蓄電池は、先に動いた強みがある。6基が動き出せば、毎年の安定した利益が積み上がる。太陽光の販売が景気や制度で揺れても、蓄電池の収益が下を支える。
守りも厚い。純現金は時価総額の2割を超え、自己資本比率は68%ある。配当性向を4割に引き上げ、株主還元も厚くなる。10年後に営業利益が今の2倍に届く道筋は、十分に描ける。
慎重な見方
利益率が高すぎる。営業利益率21%は、長い平均の倍近い。2021年3月期に8.5%まで落ちたことを忘れてはいけない。高い利益は競合を呼ぶ。事業用太陽光の粗利率59%は、他社が参入すれば削られる。
太陽光は政策の商売だ。2027年度から地上設置は買取の支援を外れる。屋根の補助金は自治体ごとに変わり、年度ごとに条件も動く。パネルの値段は下がり続け、売上の単価は物価ほど上がらない。営業を増やすほど固定費が増え、需要が鈍れば利益の落ち込みは大きい。
小売電気は、いつでも逆ざやに転ぶ。新電力は2024年3月までに119社が撤退・倒産した。グリムスも、相対電源の価格上昇で粗利が約9億円削られた。中東情勢で市場価格が跳ねれば、利益は一気に消える。
系統用蓄電池は参入が相次ぎ、需給調整市場の上限価格は下がっている。待機の報酬が細れば、6基の投資は回収が遅れる。販売で稼ぐ会社が設備投資の会社に変わる転換は、資本効率を落とす。
創業者が株の45%を持ち、買収で動く可能性は低い。現金が積み上がっても、株主へ戻る保証はない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、顧客の開拓余地と守りの厚さが本物だ。慎重な言い分は、利益率が山にあり、補助と市場価格を自社で決められない点を突く。どちらも事実に根ざすが、10年で見れば利益率の平均への回帰が重い。
中立は、営業の伸びを認めつつ、利益率が長い平均へ近づく形に置いた。確率は、強気側の合計を24%、慎重側の合計を38%とし、慎重側を厚くした。純現金の厚さが下を支えるので、悲観は1割強にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,882 円1,360 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,039 円240 億円)。 今の値に割り戻すと 3,504 円810 億円、今との差 +47.8%、 期待の年率 +11.3%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 13,469 円3,115 億円 | 1,674 円387 億円 | +538.9% | +20.4% | 909 円210 億円 |
| やや楽観 | 18% | 9,937 円2,298 億円 | 1,367 円316 億円 | +376.9% | +16.9% | 2,035 円470 億円 |
| 中立 | 38% | 7,166 円1,657 億円 | 1,120 円259 億円 | +249.6% | +13.3% | 3,149 円728 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,906 円441 億円 | 770 円178 億円 | +12.9% | +1.2% | 696 円161 億円 |
| 悲観 | 12% | 558 円129 億円 | 558 円129 億円 | −52.9% | −7.3% | 134 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,882 円1,360 億円 | 1,039 円240 億円 | +192.0% | +11.3% | 6,921 円1,600 億円 |
今の株価時価総額 2,370 円548 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 法人の屋根と蓄電が広がり、営業の人数がそのまま利益になる 利益 136 億円 · PER 21.8 倍 · 株価時価総額 13,469 円3,115 億円
法人向けの屋根と蓄電池が、想定を超えて広がる。電気代が高止まりし、補助金も屋根設置に残る。毎年100名の新卒が戦力になり、事業用太陽光の顧客は4,500件から大きく増える。法人向けの販売規模は今の2倍近い。ただ、売上は伸びても価格は物価ほど上がらない。パネルの値下がりを、蓄電池や省エネ設備の同時販売で埋めるためだ。
小売電気は、契約を広げながら調達を固め、利益を守る。販売量は今の7割以上増える。市場価格が荒れても、独自の燃料費調整と容量拠出金の転嫁で粗利を守る。
蓄電池は24基まで増え、毎年の安定した利益をもたらす。需給調整市場の価格は下がるが、卸電力市場と組み合わせて収益を保つ。営業利益は今の2.7倍になる。
- 法人向けエネルギーソリューション(事業用太陽光・蓄電池・省エネ):数量 2.7(国内の太陽光・蓄電池・省エネ設備の販売市場(実質、百億円)× 同社のシェア)× 価格 1.30(値段の指数(2026/03 期 = 1。名目))→ 売上 351 億円・営業利益 126 億円
- 系統用蓄電池(自社運用のストック収益):数量 24.0(稼働基数(年平均))× 価格 1.92(1 基あたりの年間売上(億円、名目))→ 売上 46 億円・営業利益 21 億円。需給調整市場の上限価格の引き下げと参入増で、1基の年間売上は物価ほど上がらない(名目で今の想定を下回る水準)。
- 小売電気:数量 12.5(販売電力量(億 kWh))× 価格 36(平均販売単価(1kWh あたり、名目))→ 売上 452 億円・営業利益 63 億円
倍率:事業の純利益 135 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 35.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 21.78 倍、時価総額 2,973 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:条件がそろわないと届かない。営業の増員、補助の維持、電気代の高止まりが同時に続く必要がある。利益率が今の水準を保つ前提でもあり、確率は低く置いた。
やや楽観 18% 太陽光は伸びるが、値段と補助の薄まりで利益率は少し下がる 利益 102 億円 · PER 21.2 倍 · 株価時価総額 9,937 円2,298 億円
法人向けの太陽光は伸び続けるが、勢いは落ち着く。見込み客の開拓は進み、顧客数は今の倍近くになる。一方、パネルの値下がりと競合の増加で、粗利率は今より下がる。ES事業の利益率は33%と、今の34%からわずかに落ちる。
小売電気は着実に増え、契約口数は1.6倍になる。利益率は12.5%と、今の15%より低い。容量拠出金や調達コストの増加を、すべては価格に移せないためだ。
蓄電池は18基まで増える。収益は需給調整市場の価格低下で、期待より小さい。営業利益は今の2倍になるが、伸びは営業の人数に見合うほどではない。悪くない10年だが、今の利益率の高さは保てない。
- 法人向けエネルギーソリューション(事業用太陽光・蓄電池・省エネ):数量 2.3(国内の太陽光・蓄電池・省エネ設備の販売市場(実質、百億円)× 同社のシェア)× 価格 1.25(値段の指数(2026/03 期 = 1。名目))→ 売上 288 億円・営業利益 95 億円
- 系統用蓄電池(自社運用のストック収益):数量 18.0(稼働基数(年平均))× 価格 1.60(1 基あたりの年間売上(億円、名目))→ 売上 29 億円・営業利益 12 億円。需給調整市場の上限価格の引き下げと参入増で、1基の年間売上は物価ほど上がらない(名目で今の想定を下回る水準)。
- 小売電気:数量 11.5(販売電力量(億 kWh))× 価格 36(平均販売単価(1kWh あたり、名目))→ 売上 416 億円・営業利益 52 億円
倍率:事業の純利益 101 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 31.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 19.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 21.17 倍、時価総額 2,176 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業力と顧客基盤の強さは本物で、増員の成果は出る。ただ、利益率の高さは長く続かないので、中立より少し低い確率にした。
中立 38% 営業は伸びるが、利益率は長い平均へ近づく 利益 74 億円 · PER 20.5 倍 · 株価時価総額 7,166 円1,657 億円
営業は伸びるが、利益率は長い平均へ近づく。事業用太陽光の顧客は広がり、法人向けの販売規模は今より3割ほど増える。消費者向けの撤退で売上は一度縮み、そのあと法人向けで戻す形になる。粗利率は競合が増えて下がり、ES事業の利益率は30%へ落ち着く。パネルの値下がりが続き、単価は物価ほど上がらない。
小売電気は、販売量が4割強増える。市場の淘汰が終わっても、価格競争は残る。利益率は11.5%で、今より3.5ポイント低い。電気料金は物価並みに上がる。
蓄電池は12基に増える。需給調整市場の価格が下がる分、1基の稼ぎは今の想定の85%に落ちる。それでも収益の安定には貢献する。
営業利益は今の1.5倍の約106億円になる。売上は倍近くまで伸びるのに、利益率は21%から17%へ下がる。10年かけて、利益率だけが平均へ戻る。
- 法人向けエネルギーソリューション(事業用太陽光・蓄電池・省エネ):数量 1.9(国内の太陽光・蓄電池・省エネ設備の販売市場(実質、百億円)× 同社のシェア)× 価格 1.20(値段の指数(2026/03 期 = 1。名目))→ 売上 228 億円・営業利益 68 億円
- 系統用蓄電池(自社運用のストック収益):数量 12.0(稼働基数(年平均))× 価格 1.36(1 基あたりの年間売上(億円、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 7 億円。需給調整市場の上限価格の引き下げと参入増で、1基の年間売上は物価ほど上がらない(名目で今の想定を下回る水準)。
- 小売電気:数量 10.3(販売電力量(億 kWh))× 価格 36(平均販売単価(1kWh あたり、名目))→ 売上 373 億円・営業利益 43 億円
倍率:事業の純利益 74 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.7% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 20.47 倍、時価総額 1,546 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の言い分と慎重な言い分の中間にあたる。利益率が平均へ戻る点を含め、最も起こりやすい。
やや悲観 26% 補助が薄まり、競合が増えて、利益率が半分に近づく 利益 36 億円 · PER 8.9 倍 · 株価時価総額 1,906 円441 億円
補助が薄まり、競合が増えて、利益率が半分に近づく。屋根設置の支援は続くが、自治体の補助金が細る。事業用太陽光は、設備の販売でなく初期費用ゼロの契約へ流れる。売り切りのグリムスは、取れるシェアが伸びない。パネルの値下がりに競争が重なり、粗利率は大きく下がる。ES事業の利益率は25%まで落ちる。
小売電気は、市場価格の荒れが響く。契約口数は伸びても、調達コストを価格に移しきれず、利益率は8%に下がる。
蓄電池は8基にとどまる。市場の上限価格が下がり、1基の稼ぎは想定の6割になる。
営業利益は50億円と、今の3割減になる。営業の人数は増やしたままで、固定費が重い。
- 法人向けエネルギーソリューション(事業用太陽光・蓄電池・省エネ):数量 1.4(国内の太陽光・蓄電池・省エネ設備の販売市場(実質、百億円)× 同社のシェア)× 価格 1.05(値段の指数(2026/03 期 = 1。名目))→ 売上 142 億円・営業利益 35 億円
- 系統用蓄電池(自社運用のストック収益):数量 8.0(稼働基数(年平均))× 価格 0.96(1 基あたりの年間売上(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。需給調整市場の上限価格の引き下げと参入増で、1基の年間売上は物価ほど上がらない(名目で今の想定を下回る水準)。
- 小売電気:数量 8.0(販売電力量(億 kWh))× 価格 35(平均販売単価(1kWh あたり、名目))→ 売上 283 億円・営業利益 23 億円
倍率:事業の純利益 35 億円。ROE は k を少し超えるだけで、正当化 PER の上限は 12.7 倍だが、減っていく利益と細る堀に上限は使えない。稼ぐ力の質を落として 9.5 倍に置いた。余った現金は 50 億円の 0.75 倍に戻り方 0.5 を掛けた。(還元を方針に合わせて再計算:還元 233→178 億円、自己資本 386→441 億円、事業の ROE 10.2%→8.8%、正当化 PER の上限 12.7→11.9 倍。上限に対する置き方の割合は変えず 8.93 倍)
確率:利益率が山にあり、補助と市場価格は自社で決められない。強気より慎重な言い分が強いため、確率は強気側より厚くした。
悲観 12% 太陽光は汎用品になり、電気の小売りも逆ざやで細る 利益 13 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 558 円129 億円
太陽光の販売は汎用品になり、電気の小売りは逆ざやで細る。補助金の縮小と電気料金の下落で自家消費の理由が薄れ、大手の施工会社や電力会社が低価格で顧客を取る。グリムスの直接営業の粗利率は、他社と並ぶ水準まで下がる。営業の人員は残り、固定費が重い。ES事業の利益率は20%まで落ちる。
小売電気は、中東情勢などで市場価格が跳ねた局面で逆ざやに陥る。顧客が離れ、販売量は今の8割に減る。利益率は4%まで下がる。
蓄電池も、参入者の急増で待機の報酬が細り、投資の回収が遅れる。6基止まりで、一部は減損する。
営業利益は16億円まで落ちる。それでも純現金は残り、赤字には沈まない。会社は小さく安定した会社になり、成長の物語は終わる。
- 法人向けエネルギーソリューション(事業用太陽光・蓄電池・省エネ):数量 0.9(国内の太陽光・蓄電池・省エネ設備の販売市場(実質、百億円)× 同社のシェア)× 価格 0.90(値段の指数(2026/03 期 = 1。名目))→ 売上 81 億円・営業利益 16 億円
- 系統用蓄電池(自社運用のストック収益):数量 6.0(稼働基数(年平均))× 価格 0.64(1 基あたりの年間売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。需給調整市場の上限価格の引き下げと参入増で、1基の年間売上は物価ほど上がらない(名目で今の想定を下回る水準)。
- 小売電気:数量 5.8(販売電力量(億 kWh))× 価格 34(平均販売単価(1kWh あたり、名目))→ 売上 197 億円・営業利益 8 億円
倍率:事業の純利益 12 億円・事業の ROE 4.1% は k 7.75% 以下。PER の上限は 1÷k の 11.8 倍で、先細る事業なのでそれより低い 9.0 倍に置いた。余った現金は 50 億円の 0.5 倍に戻り方 0.5 を掛けた。床は純現金の水準に近い。(還元を方針に合わせて再計算:還元 154→129 億円、自己資本 327→352 億円、事業の ROE 4.1%→3.7%、正当化 PER の上限 11.8→11.8 倍。上限に対する置き方の割合は変えず 9.00 倍)
確率:構造的な負けの筋書き。事業用太陽光の汎用化と新電力の逆ざやが重なる形で、純現金の厚さが下を支えるため、1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人向けエネルギーソリューション(事業用太陽光・蓄電池・省エネ)
工場や店舗の屋根に載せる事業用太陽光と蓄電池、電子ブレーカーなどを、電気代の削減提案とセットで直接販売する。一般家庭向けは縮小中。
| 数量国内の太陽光・蓄電池・省エネ設備の販売市場(実質、百億円)× 同社のシェア | 価格値段の指数(2026/03 期 = 1。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 1.00 | 147 | 50 |
| 10 年後 中立 | 1.9 | 1.20 | 228 | 68 |
取り方:開示は金額だけで、数量は出ていない。国内の太陽光・蓄電池・省エネ設備の販売市場を約 4,900 億円(推定。PPA 市場 887 億円に、非住宅の自家消費の設備販売と住宅用の一部を足した大づかみの値)とし、同社のシェアを約 3% として売上 146.5 億円(消費者向け約 30 億円を含む)に合わせた。2027 年 3 月期に消費者向けは撤退する。
系統用蓄電池(自社運用のストック収益)
送電網につないだ大型蓄電池を自社で持ち、需給調整市場や卸電力市場で稼ぐ。2026 年 3 月に 1 基目が稼働し、今期は 6 基を計画する。
| 数量稼働基数(年平均) | 価格1 基あたりの年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 1.60 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 1.36 | 16 | 7 |
取り方:2026 年 3 月に 1 基目が稼働したばかりで売上は小さい。1 基あたりの年間売上を約 1.6 億円と推定した(今期の営業利益の計画約 4.8 億円を 6 基で割り、利益率を約 50% と見た)。基数は年平均で 0.25 基とした。
小売電気
卸電力市場と相対契約で調達した電気を、低圧から高圧までの需要家に売る。約 7.3 万口。
| 数量販売電力量(億 kWh) | 価格平均販売単価(1kWh あたり、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.1 | 27 | 192 | 29 |
| 10 年後 中立 | 10.3 | 36 | 373 | 43 |
取り方:契約口数は約 7.3 万口。販売電力量は開示がないため、売上 192.4 億円を1kWh あたり二十七円前後の平均販売単価(低圧と高圧の中間と見た推定)で割り、約 7.1 億 kWh とした。
リスクと懸念
太陽光の制度と補助金が変わる
2027年度から地上設置は固定価格買取の対象外になる。屋根設置の支援は残るが、自家消費の補助金は自治体ごと、年度ごとに動く。支援が薄まれば、導入の理由が弱まり、受注が減る。利益の6割強を稼ぐ事業の需要を、国が決める。
利益率が平均へ戻る
営業利益率21%は過去最高で、10年の中央値は11%台だ。事業用太陽光の粗利率59%は、競合が増えれば削られやすい。パネルの値下がりも単価を抑える。利益率が戻るだけで、売上が伸びても営業利益は今より大きくならない。
電力市場価格の急騰
小売電気は、市場で買う電気が値上がりすると逆ざやになる。新電力の撤退・倒産は2024年3月までに119社に上った。グリムスも、相対電源の価格上昇で粗利が約9億円削られた。中東情勢などで市場が荒れれば、利益は大きく振れる。
系統用蓄電池の稼ぎが想定を下回る
需給調整市場の上限価格は下がる方向にある。参入者も急増している。待機の報酬が細れば、6基の投資は回収が遅れる。会社は今期の営業利益で5億円弱を見込むが、稼働が遅れれば半分ほどになる。設備を持つ事業は、売る事業より資本を食う。
営業の増員が固定費になる
新卒を毎年100名採り、営業力を広げている。需要が鈍れば、人件費だけが残る。消費者向けの撤退でも、構造改善費用が出た。増やした人員を稼ぎに変えられるかが、利益率を決める。
創業者の判断に資本の使い道が左右される
創業社長が株の45%を持ち、買収で動く可能性は低い。純現金は積み上がっているが、自社株買いの実績は乏しい。現金が株主に戻らず、収益の低い設備投資に回れば、株主1人あたりの価値は伸びない。
今後の分かれ目
- 事業用太陽光の粗利率が50%を割り込む
- 競合の参入で売値が崩れ始めた合図だ。慎重側の確率を上げ、ES事業の利益率を20%台へ寄せる。
- 屋根設置の自家消費への国の支援が、2028年度以降も延長される
- 法人向けの需要が長く続くと見て、強気側の確率を上げる。
- 卸電力市場が急騰し、小売電気の粗利が2期続けて落ちる
- 逆ざやの構造が表に出た合図だ。小売電気の利益率を8%以下へ置き直す。
- 系統用蓄電池6基の稼働が計画どおり進み、1基あたりの利益が安定する
- ストック収益が育つと見て、蓄電池の筋書きを引き上げる。
- 自社株買いなど、純現金の還元が増える
- 余った現金を株主へ戻す姿勢が強いとみて、戻り方を1.0へ寄せる。
- 新卒100名の営業が戦力になり、ES事業の売上が減収から増収に戻る
- 営業の増員が稼ぎに変わっている合図だ。強気側の確率を上げる。
見ておくもの
- 事業用太陽光の粗利率と受注残
- 小売電気の粗利と、市場価格・相対電源の調達単価
- 系統用蓄電池の稼働基数と1基あたりの利益
- 国の太陽光支援(屋根設置・自家消費補助金)の延長・縮小
- 営業人員数と販管費の伸び
- 純現金の水準と、自社株買い・配当性向
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の純利益、事業の ROE、資本コストから式で決め、今の株価や同業の倍率には合わせていない。利益は、営業利益率が過去の平均へ戻る前提でセグメントごとに積んだ。純利益÷営業利益は過去の中央値 0.69 に、純現金の利息の増えを足した。新リース会計基準(2028 年 3 月期から)で BS の形は変わるが、賃借の小さい事業なので、10 年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.27→21.78 倍・やや楽観 PER 12.81→21.17 倍・中立 PER 11.76→20.47 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した。個別のリスクは筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。