結論
内田洋行は、学校・自治体向けのICTと家具、オフィス空間、企業向けITを一社で扱う専門商社だ。筆者の結論は、今の株価は特需で膨らんだ利益をもとにしており、10年で見れば割高、というものだ。
稼ぎの柱は公共、情報、オフィスの3つ。公共は学校の端末更新やネットワーク増強、自治体システムの標準化が重なり、2025年7月期は営業利益が22億円増えた。情報はWindows 10の更新で売上が3割増えた。どれも終わりのある需要だ。
会社も中計の3年目は反動で減ると認めている。それでも土台は一段上がった。納めたシステムには保守が残り、学校との関係も深まるからだ。
ただ、利益率は3.6%と薄い。値段を自分で決めにくい入札と再販が多く、物価が3%上がる世界でも、利益は物価並みに伸ばすのがやっとだ。筆者は特需を除いた実力を、営業利益で100億円台前半とみる。
財務は堅い。借金より現金が多く、自己資本比率は4割ある。急所は、利益の3割しか株主に返さず、自己資本ばかりが厚くなって資本効率が上がらない点だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず10年後も続く事業かを問う。学校と役所の取引は続く。だが、物を売るだけの部分は薄利のままで、堀を広げる材料は多くない。
次に、株主のものになる利益を見る。事業に再投資が要る分を引いた手取りの利益は、営業利益の7割ほどだ。特需が去れば、この水準は下がる。
経営の資本配分は、堅実だが慎重すぎる。現金を厚く持つのは安心につながる。しかし、資本コストを少し上回るだけの稼ぎで現金を寝かせれば、持ち主にとっての価値は目減りする。
安全域は、今の値段にはほとんどない。足元の利益が山にあり、10年後の利益は物価並みにしか伸びないからだ。純現金と堅い財務は下値を支えるが、それ以上の上値は見込みにくい。
わかりやすい事業で、危うさは小さい。ただ、払う値段に見合う余白がない。筆者はこの会社を、持ち続けたい優良株というより、よい会社を普通の値段で買う候補の手前に置く。
何で稼ぐ会社か
事業は3つに分かれる。公共関連は、学校向けの教育機器・教材・ICT、学校空間づくり、自治体の情報システムを手がける。2025年7月期の売上は927億円、営業利益は52億円だった。
情報関連は、中堅・中小企業向けのシステム構築とパソコンなどの機器販売で、売上は1,836億円と最大だが営業利益は45億円にとどまる。会計や業務ソフトの販売、クラウド、保守が収益の下支えになる。
オフィス関連は、家具や内装、ハイブリッドワークに合わせた空間づくりだ。売上594億円、営業利益19億円。国内のオフィス家具はオカムラ、コクヨ、イトーキ、内田洋行が上位を占める。
稼ぎ方の特徴は、機器の再販に自社の構築・保守・コンテンツを重ねる点にある。物を売って終わりにせず、学校や役所の中に入り込む。その分、納入後の保守が積み上がる。
一方で、入札案件が多く、仕入れ値と売値は競争で決まる。営業利益率が3%台にとどまる理由はここにある。
本社は東京にあり、自社の保守・運用の要員と、教育現場に入る営業・SEを抱える。人の厚みが強みであり、同時に固定費でもある。
優良さと弱いところ
筆者が見る強みは、学校と自治体との長い取引だ。机、黒板、教材、端末、ネットワークまで、教室の中をまとめて納められる会社は多くない。GIGAスクールの第1期で培った現場の知識が、第2期の更新でも効く。
ただ、強みは堀、つまり他社がまねできない参入障壁と呼べるほど深くない。端末は共同調達に流れ、都道府県単位の大型入札ではNEC・富士通・NTT系などの大手と争う。値決め力は弱い。
資本効率も平凡だ。過去10年のROE(自己資本利益率)の中央値は9.4%で、資本コストをわずかに上回る程度だった。2010年代前半は営業利益率が2%前後、2009〜2012年には赤字の期もあった。
経営は堅実だ。現金を厚く持ち、大型買収で失敗した例は確認できない。その反面、還元は利益の3割と控えめで、余った資金の使い道が見えにくい。
弱いのは、利益の質だ。直近の純利益は、保有株の売却益が押し上げた面がある。本業だけを見ると、2025年7月期の純利益はもっと小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
追い風は2つあった。ひとつは学校の端末更新(NEXT GIGA)で、2024〜2028年度に約1,190万台の更新が見込まれ、山は2025〜2026年度とされる。もうひとつは自治体システムの標準化と、Windows 10の更新だ。
その山が一巡する。会社は2027年7月期の目標を売上3,400億円・営業利益115億円で据え置いており、実績はすでに上回っている。2027年7月期の経常利益は前期比で減る予想で、筆者は反動の入り口とみる。
特需のあとに残るのは、保守・運用と、学校・自治体の更新サイクルだ。ここが厚くなれば、利益の波は小さくなる。会社もそこを狙っている。
オフィスは緩やかな成長が見込まれる。国内の家具市場は出荷額ベースで1.14兆円(2024年)で、オフィス用は移転・改装需要で堅調だ。出社回帰とハイブリッドワークの更新が追い風になる。
民間のIT市場は人手不足でDX投資が続く。ただ、大塚商会など大きな競合が多く、価格競争が激しい。人口減は学校の数と企業の数を細らせる。この向かい風は10年かけて効いてくる。
資本政策と M&A
資本政策は守りに寄っている。配当は期末の年1回で、配当性向は約3割。2026年1月には1株を5株に分割した。
自己株の大規模な取得や、大型の買収は確認できていない。純現金は211億円あり、時価総額の2割弱に当たる。事業に要る運転資金を引いても、余りが出る。
筆者がいちばん気にするのは、この余った現金の行き先だ。還元を厚くするか、成長に使うかが決まらないまま自己資本が積み上がると、資本効率は下がり続ける。
政策保有株は売却を進めており、2025年7月期の純利益を押し上げた。売却益は繰り返せない。今後の利益に入れず、一過性として扱うのが筋だ。
TOBや再編の話は確認できていない。kabufuの推定では、10年以内に買収される確率は2割ほどだが、本質価値の計算は買収を前提にしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
公共の需要は終わらない。端末は5年ごとに更新され、学校のネットワークや校務システム、教材のデータ連携まで広がる。内田洋行は教室の机から端末までを一社で納められる数少ない会社で、更新のたびにシェアを守れる。
自治体システムの標準化が一巡したあとも、運用と保守が残る。納めた数がそのまま保守の土台になり、利益の波は小さくなる。会社が特需のあとの保守獲得を掲げているのは、その道筋が見えているからだ。
オフィスは出社回帰とハイブリッドワークで更新が続く。空間づくりは単価が高く、内田洋行はICTと家具を一緒に提案できる。ここは営業利益率を5%まで引き上げる余地がある。
財務は純現金で、買収や自社株買いに回せる余力がある。2027年7月期の予想が慎重なのは、会社の癖だ。実績が計画を上回る流れは、過去数年続いてきた。
今回の更新で積み上がった保守契約と、公共でのシェアが10年続けば、営業利益は250億円に届く。ROEは13%台に乗り、倍率も上がる。
慎重な見方
今の利益は特需のおかげだ。端末更新、自治体標準化、Windows 10という3つの山が同時に来た。いずれも終わりの時期が決まっている。会社自身が、3年目は減ると言っている。
利益率の薄さも変わらない。情報の営業利益率は2%台、オフィスは3%台で、大塚商会のような規模の大きい競合と争う。物価が上がっても、人件費や仕入れも同じだけ上がるため、利益は伸びにくい。
公共は共同調達が広がり、都道府県単位の大型案件では大手が有利になる。保守もクラウドや大手SIに奪われやすい。人口が減れば、学校の数も企業の数も細る。
資本効率にも課題がある。還元が3割にとどまり、現金が積み上がる。自己資本は10年で倍近くなり、ROEは資本コストをわずかに超えるだけだ。
保有株の売却益も繰り返せない。今の株価は、特需の利益と売却益を、10年続く稼ぐ力と見ている。それは甘い見方だ。
最後に、人手の問題がある。SEや施工の人件費は物価以上に上がりやすい。再販の粗利が薄いままでは、その上昇分を価格に移せず、利益率が削られる。
どちらに重みを置いたか
強いのは慎重な見方だ。公共の根は深く、財務も堅い。だが、特需の山が去ったあとの利益率と資本効率には、それを超える材料が見えない。
中立を34%の最大にしつつ、やや悲観と悲観を足した確率は38%、楽観とやや楽観を足した確率は28%とした。悲観は倒産ではなく、保守がはがれて薄利に沈む筋書きだ。純現金があるため、深い崩れは想定しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/07 期)
確率で加重した株価時価総額 3,951 円1,948 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 830 円409 億円)。 今の値に割り戻すと 2,547 円1,256 億円、今との差 +3.2%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,070 円3,980 億円 | 1,292 円637 億円 | +279.5% | +14.3% | 749 円369 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,006 円2,962 億円 | 1,024 円505 億円 | +185.0% | +11.0% | 1,406 円693 億円 |
| 中立 | 34% | 4,527 円2,233 億円 | 845 円417 億円 | +117.8% | +8.1% | 1,827 円901 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,864 円920 億円 | 657 円324 億円 | +2.2% | +0.2% | 656 円323 億円 |
| 悲観 | 12% | 665 円328 億円 | 531 円262 億円 | −51.5% | −7.0% | 144 円71 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,951 円1,948 億円 | 830 円409 億円 | +93.8% | +6.8% | 4,781 円2,358 億円 |
今の株価時価総額 2,467 円1,217 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:保守が積み上がり、公共と空間で稼ぎが厚くなる 利益 185 億円 · PER 20.2 倍 · 株価時価総額 8,070 円3,980 億円
特需のあとも、納めたシステムの保守と運用が毎年積み上がる。学校の端末更新は5年周期で続き、教務・校務のシステム、教材のデータ連携まで仕事が広がる。公共のシェアは4%台に上がる。
オフィスは出社回帰とハイブリッドワークの更新で、家具と内装、ICTの一括提案が増える。利益率は5%まで上がる。情報も自社の構築・保守の比率が高まり、3%台の利益率を保つ。
現金は買収や還元に回り、配当性向も4割台に上がる。会社の中計の数字を、実績が毎期上回る形になる。営業利益は250億円台、ROEは13%台に乗る。
それでも、薄利の再販を手放せるわけではない。この筋書きは、保守・運用の売上が毎年厚くなった場合の上限であり、確率は高くない。
- 公共関連(学校・自治体):数量 26,500(学校・自治体向けのICT・教材・家具の国内市場(億円・実質)× 内田洋行のシェア)× 価格 5.6%(シェアに物価の倍率(10年で1.34倍)を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 1,491 億円・営業利益 97 億円。市場26,500億円×シェア4.2%、物価の倍率1.34、営業利益率6.5%
- オフィス関連:数量 9,600(国内オフィス家具・空間づくり市場(億円・実質)× シェア)× 価格 10.2%(シェアに物価の倍率を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 978 億円・営業利益 49 億円。市場9,600億円×シェア7.6%、物価の倍率1.34、営業利益率5.0%
- 情報関連(企業向けIT):数量 68,000(国内の中堅・中小企業向けIT(機器・SI・保守)の市場(億円・実質)× シェア)× 価格 4.3%(シェアに物価の倍率を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 2,916 億円・営業利益 99 億円。市場68,000億円×シェア3.2%、物価の倍率1.34、営業利益率3.4%
倍率:事業の純利益 184 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 20.21 倍、時価総額 3,786 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:保守の積み上げと公共シェアの上昇、オフィスの値上げが同時に起きる必要がある。会社の利益率の薄さを考えると、起きる確率は1割に届かないとみた。
やや楽観 20% やや楽観:特需後も土台が残り、物価並み以上に伸びる 利益 142 億円 · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 6,006 円2,962 億円
NEXT GIGAと自治体標準化の山は去るが、反動は浅い。保守と更新の需要が支え、公共の営業利益率は5%台を保つ。教育データ連携や校務の自動化といった、新しい案件も加わる。
オフィスはオフィス回帰で更新が続くが、面積は縮むため、伸びは物価をわずかに上回る程度だ。情報は人手不足を背景にDX投資が続き、シェアも少し上がる。
配当性向は4割強に上がる。営業利益は200億円弱、ROEは11%近くになる。
強い筋書きだが、会社の利益率の薄さを変えるほどではない。保守の売上が乗る分だけ、公共の稼ぎは安定し、情報の再販の薄利も保守が補う。この水準で10年たてば、今の特需の利益は一時の山ではなく、通過点だったことになる。
- 公共関連(学校・自治体):数量 25,500(学校・自治体向けのICT・教材・家具の国内市場(億円・実質)× 内田洋行のシェア)× 価格 5.2%(シェアに物価の倍率(10年で1.34倍)を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 1,333 億円・営業利益 73 億円。市場25,500億円×シェア3.9%、物価の倍率1.34、営業利益率5.5%
- オフィス関連:数量 9,200(国内オフィス家具・空間づくり市場(億円・実質)× シェア)× 価格 9.8%(シェアに物価の倍率を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 900 億円・営業利益 38 億円。市場9,200億円×シェア7.3%、物価の倍率1.34、営業利益率4.2%
- 情報関連(企業向けIT):数量 66,000(国内の中堅・中小企業向けIT(機器・SI・保守)の市場(億円・実質)× シェア)× 価格 4.0%(シェアに物価の倍率を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 2,653 億円・営業利益 80 億円。市場66,000億円×シェア3.0%、物価の倍率1.34、営業利益率3.0%
倍率:事業の純利益 141 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 19.08 倍、時価総額 2,758 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:特需の反動が浅く済み、保守が下支えする筋書き。会社が計画を毎期上回ってきた実績があり、2割は置ける。
中立 34% 中立:薄利のまま物価並みに伸びる、堅いが平凡な商社 利益 110 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 4,527 円2,233 億円
特需の反動が来て、公共・情報の売上は一度減る。その後は保守が下支えするが、新しい山は来ない。数量は人口減で10年1割ほど細り、値段が物価並みの1.34倍に上がることで、売上は今の特需込みの水準を少し上回る程度に落ち着く。
利益率は公共4%台後半、オフィスと情報は3%前後だ。営業利益は150億円強で、物価分の伸びをやっと確保する。純利益は110億円ほどになる。
配当性向は4割に上がるが、現金は積み上がり、自己資本は倍近くになる。ROEは9%弱で、資本コストをわずかに上回る程度にとどまる。
特別な成功も失敗もない、堅いが平凡な商社として評価される10年だ。
- 公共関連(学校・自治体):数量 24,500(学校・自治体向けのICT・教材・家具の国内市場(億円・実質)× 内田洋行のシェア)× 価格 5.0%(シェアに物価の倍率(10年で1.34倍)を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 1,215 億円・営業利益 57 億円。市場24,500億円×シェア3.7%、物価の倍率1.34、営業利益率4.7%
- オフィス関連:数量 8,900(国内オフィス家具・空間づくり市場(億円・実質)× シェア)× 価格 9.4%(シェアに物価の倍率を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 835 億円・営業利益 29 億円。市場8,900億円×シェア7.0%、物価の倍率1.34、営業利益率3.5%
- 情報関連(企業向けIT):数量 64,000(国内の中堅・中小企業向けIT(機器・SI・保守)の市場(億円・実質)× シェア)× 価格 3.8%(シェアに物価の倍率を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 2,401 億円・営業利益 62 億円。市場64,000億円×シェア2.8%、物価の倍率1.34、営業利益率2.6%
倍率:事業の純利益 109 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 17.89 倍、時価総額 2,018 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:公共・情報・オフィスが物価並みに伸び、利益率は今の実力に収まる筋書きを最大にした。
やや悲観 26% やや悲観:反動と値引きで利益率が下がる 利益 72 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,864 円920 億円
特需の反動が深く、そのあとも利益率が戻らない。共同調達が広がり、端末や基盤の案件は薄利になる。公共のシェアは3.5%に下がり、営業利益率は4%を割る。
情報は大手との値引き競争が続き、利益率は2%に落ちる。オフィスも施工の人手不足で粗利が削られる。
営業利益は100億円強、純利益は70億円ほどだ。還元は3割台にとどまり、現金は貯まるが、ROEは6%台と資本コストを割る。財務は傷まないが、稼ぐ力に見合った評価に落ち着く。
学校向けの案件は、都道府県が仕様と調達をまとめるため、地域の販売店としての営業力が価値を持ちにくくなる。保守の契約も更新のたびに入札になり、値下げ圧力が続く。
- 公共関連(学校・自治体):数量 23,500(学校・自治体向けのICT・教材・家具の国内市場(億円・実質)× 内田洋行のシェア)× 価格 4.6%(シェアに物価の倍率(10年で1.34倍)を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 1,086 億円・営業利益 41 億円。市場23,500億円×シェア3.5%、物価の倍率1.32、営業利益率3.8%
- オフィス関連:数量 8,500(国内オフィス家具・空間づくり市場(億円・実質)× シェア)× 価格 8.7%(シェアに物価の倍率を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 741 億円・営業利益 21 億円。市場8,500億円×シェア6.6%、物価の倍率1.32、営業利益率2.8%
- 情報関連(企業向けIT):数量 60,000(国内の中堅・中小企業向けIT(機器・SI・保守)の市場(億円・実質)× シェア)× 価格 3.4%(シェアに物価の倍率を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 2,028 億円・営業利益 41 億円。市場60,000億円×シェア2.6%、物価の倍率1.30、営業利益率2.0%
倍率:事業ROEが約6%でk 7.25%を下回るため、上限は1÷k=12.5倍。稼ぐ力が資本コストに届かない筋書きなので、上限の約7割強の9.5倍に置いた。
確率:共同調達と値引きで利益率が下がる筋書き。入札と再販が多い事業の性格上、楽観より確率は高いとみる。
悲観 12% 悲観:保守が他社に流れ、薄利の再販商社に戻る 利益 33 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 665 円328 億円
学校ICTの更新は共同調達に吸い上げられ、保守はクラウドと大手SIに流れる。自治体システムは標準化で差別化できず、価格競争だけが残る。公共の営業利益率は2%台まで落ちる。
情報は再販の薄利に戻り、1%程度。オフィスは面積の縮小と施工コストの上昇で、1%台の利益率になる。
営業利益は50億円を割り込み、純利益は30億円台だ。配当は減らすが続ける。純現金があるため財務は行き詰まらない。ただ、成長も利益も止まり、薄利の再販商社として評価される。
この筋書きでは、人員の維持費が重くなり、固定費の回収が難しくなる。教育現場に入り込んだ強みも、調達の方式が変わると生きない。会社は縮小均衡に入り、自己資本は厚いまま、稼ぎだけが細る。
- 公共関連(学校・自治体):数量 22,000(学校・自治体向けのICT・教材・家具の国内市場(億円・実質)× 内田洋行のシェア)× 価格 3.9%(シェアに物価の倍率(10年で1.34倍)を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 852 億円・営業利益 21 億円。市場22,000億円×シェア3.1%、物価の倍率1.25、営業利益率2.5%
- オフィス関連:数量 7,800(国内オフィス家具・空間づくり市場(億円・実質)× シェア)× 価格 7.2%(シェアに物価の倍率を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 566 億円・営業利益 8 億円。市場7,800億円×シェア5.8%、物価の倍率1.25、営業利益率1.5%
- 情報関連(企業向けIT):数量 55,000(国内の中堅・中小企業向けIT(機器・SI・保守)の市場(億円・実質)× シェア)× 価格 2.6%(シェアに物価の倍率を掛けた名目の値段の指数)→ 売上 1,452 億円・営業利益 15 億円。市場55,000億円×シェア2.2%、物価の倍率1.20、営業利益率1.0%
倍率:事業ROEが約3%とk 7.25%を大きく下回る。上限は1÷k=12.5倍だが、利益が痩せた薄利の再販商社として約7割の9倍に置いた。純現金は床の資産として別に見る。
確率:保守が他社に流れ、薄利に戻る筋書き。純現金があるため行き詰まりは想定せず、1割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
公共関連(学校・自治体)
学校向けの教育機器・教材・ICT・学校空間づくりと、自治体の情報システムの構築・保守。
| 数量学校・自治体向けのICT・教材・家具の国内市場(億円・実質)× 内田洋行のシェア | 価格シェアに物価の倍率(10年で1.34倍)を掛けた名目の値段の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/07 | 25,000 | 3.7% | 927 | 52 |
| 10 年後 中立 | 24,500 | 5.0% | 1,215 | 57 |
取り方:学校ICT・教材・学校家具と自治体IT(標準化・保守を含む)を合わせた市場を約2.5兆円と推定(自治体IT約1.5兆円、教育ICT・教材・学校家具約1兆円。筆者の粗い推定)。売上927億円はシェア約3.7%。営業利益52億円は特需込みで利益率5.6%。
オフィス関連
オフィス家具・内装・ハイブリッドワーク向けの空間づくりと施工。
| 数量国内オフィス家具・空間づくり市場(億円・実質)× シェア | 価格シェアに物価の倍率を掛けた名目の値段の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/07 | 8,500 | 7.0% | 594 | 19 |
| 10 年後 中立 | 8,900 | 9.4% | 835 | 29 |
取り方:業界ノートのオフィス家具市場約8,500億円(2024年度)に対し、売上594億円でシェア約7.0%。競合はオカムラ・コクヨ・イトーキ。営業利益19億円、利益率3.2%。
情報関連(企業向けIT)
中堅・中小企業向けのシステム構築、パソコン等の機器販売、クラウド、保守。その他の売上14億円を合算。
| 数量国内の中堅・中小企業向けIT(機器・SI・保守)の市場(億円・実質)× シェア | 価格シェアに物価の倍率を掛けた名目の値段の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/07 | 60,000 | 3.1% | 1,850 | 45 |
| 10 年後 中立 | 64,000 | 3.8% | 2,401 | 62 |
取り方:中堅・中小企業向けIT市場を約6兆円と推定(筆者の粗い推定。大塚商会などが主な競合)。売上1,850億円(情報1,836億円とその他14億円)はシェア約3.1%。Windows 10更新の特需を含み、営業利益45億円・利益率2.4%。
リスクと懸念
特需の反動
自治体システム標準化・NEXT GIGA・Windows 10の3つの需要が、2025〜2026年度に集中した。会社は中計の3年目に減ると見ており、2027年7月期の経常利益も前期比で減る予想だ。山が高いほど谷も深く、特需を除いた実力は営業利益で100億円台前半とみる。
薄利と値決め力の弱さ
営業利益率は3.6%と低い。入札と再販が多く、仕入れ値も売値も競争で決まる。人件費が物価で上がる中、利益率を上げるのは簡単ではない。特に情報の営業利益率は2%台で、少しの値引きが利益を削る。
共同調達と大手との競争
第2期のGIGAスクールでは、都道府県単位の共同調達が広がる。大型案件では、規模の大きい競合が有利になる。ベンダーが絞られると、地域の中堅である内田洋行はシェアを落としうる。
人口減
学校の数と児童・生徒の数は減り続ける。企業の数も減る。公共も民間も、数量は10年で1割ほど細るとみる。ICTの深まりで相殺できるかが、公共の利益の分かれ目になる。
利益の質と資本の置き場
直近の純利益には、保有株の売却益が含まれる。繰り返せない利益を、続く利益と見ると価値を過大に見る。また、還元が利益の3割にとどまれば、自己資本が膨らみ、ROEは資本コスト近辺から上がらない。
オフィス需要の鈍化
出社回帰とハイブリッドワークの更新は続くが、オフィス面積そのものは縮む会社が多い。家具はオカムラ、コクヨ、イトーキとの競争も厳しい。利益率は3%台で、固定費の重い施工が崩れると赤字に近づく。
今後の分かれ目
- 2027年7月期の営業利益が、中計目標の115億円を大きく上回って着地したら
- 特需を除いた実力が想定より高い。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし一過性の保有株売却益と、本業の利益を分けて見る。
- 特需が終わった後も、保守・運用の売上が毎年伸びていたら
- 利益の波が小さくなっている証拠だ。公共と情報の利益率を上げて見直す。
- 還元が利益の4割を超え、自社株買いも始まったら
- 資本効率の改善が見える。ROEが上がり、中立の倍率も上げて考えてよい。
- 公共の大型入札で、共同調達に敗れる例が相次いだら
- シェアの低下が始まっている。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 営業利益率が2期続けて3%を割ったら
- 値決め力の弱さが表面化した。悲観側の筋書きに重みを移す。
- 大手や外部の資本による買収の提案が出たら
- 計算の前提が変わる。提示額が本質価値の計算値を上回るかで判断する。
見ておくもの
- 2027年7月期の営業利益と、中計目標115億円との差
- 情報・公共の保守売上の伸び
- 配当性向と自社株買いの実施状況
- 公共の大型入札・共同調達の結果
- 営業利益率(全社3.6%)が3%台を保てるか
- 保有株の売却益の大きさ
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g))と、10年後の事業ROE・成長から決めた。今の株価やPER、過去の倍率は見ていない。中立はROEがkをわずかに超える程度なので下限の1÷kに置き、悲観はROEが資本コストを割る前提で7割前後にした。今の利益は特需で膨らんでいるため、10年後の営業利益は特需を除いた実力に物価の伸びを掛けて置いた。新リース会計基準で数字の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→20.21 倍・やや楽観 PER 13→19.08 倍・中立 PER 12.5→17.89 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。