結論
明和産業は、1947 年に旧三菱商事の化工品部門の社員が興した化学品の専門商社である。主力は難燃剤と潤滑油で、中国向けが売上の約 3 割を占める。筆者の結論は、今の値段は本質価値に近く、大きな安全域は無いというものだ。
稼ぐ力は上向いた。営業利益は 5 年で 1.2 倍になり、ROE は 8% 台に乗った。押し上げたのは難燃剤、つまり樹脂を燃えにくくする添加剤である。原料のアンチモンが中国の輸出規制で高騰し、商社の取り分が一時的に厚くなった。
ただ、この追い風は恒久ではない。アンチモン価格は足元で下がり始めている。第一事業の利益の 6 割がこの一品にかかっているから、利益の質には割り引きが要る。
会社は新しい中期経営計画で、純利益 45 億円・ROE 10% 以上、配当性向 50% 以上と累進配当、上限 50 億円の自社株買いを掲げた。時価総額が 400 億円に届かない小さな会社にとって、還元の厚さは本物だ。
10 年先を見ると、数量はほぼ横ばいで、物価分の増収が中心になる。中立の ROE は 9% 台で、資本コストの 8.5% を少し上回るだけだ。大きな割安も割高も言いにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くない小さな商社が、資本の使い方を改め始めた途中」に見える。事業は 80 年近く続き、財務は堅い。利益の増加は本物だが、その一部はアンチモン相場という借り物だ。
持ち主の手元に残る利益で考えると、数字は見かけより小さい。商社は売上が増えるたびに運転資金が要る。純現金は 65 億円あるが、その大半は仕入債務の支払いと運転資金に必要で、自由に使える余剰とは言えない。
堀は狭い。難燃剤と石油製品に絞った専門性は評価できるものの、世界の供給網の変化に弱い。10 年先も今の取り分が続くと言える自信は、全体の半分ほどだ。
安全域は厚くない。ROE は資本コストをわずかに上回る程度で、10 年の中立の価値は今の時価総額のまわりにある。還元が厚いのは救いで、株主に戻る利益の割合は高い。
筆者は、強気の見方が一つ当たれば割安、外れれば適正圏という、非対称の少ない銘柄だと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、メーカーから化学品や石油製品を仕入れ、別のメーカーに売る口銭である。2026 年 3 月期の売上は 1,649 億円、営業利益は 41 億円で、営業利益率は 2.5% と商社らしい薄さだ。従業員は連結で約 600 人にすぎない。
第一事業は売上の 27% を占め、利益は 25 億円と全社の 6 割だ。主力は難燃剤で、三酸化アンチモンを輸入し、持分法の鈴裕化学が難燃剤に仕上げる。ほかに断熱材・防水材などの機能建材と、レアアースなどの資源関連を扱う。
第二事業は石油製品で、売上の 25%、利益は 9 億円。潤滑油・ベースオイル・添加剤を国内と中国に売る。数量は減っているが、高収益品への入れ替えで利益は増えた。インドに現地法人を作り、エアコン工場の増加を取り込む。
第三事業は高機能素材・機能化学品・合成樹脂・無機薬品で、売上の 4 割と最大だが、利益は 9.5 億円と薄い。2025 年度に商社のタカロクを買収した。
電池・自動車事業は売上の 8% で、中国子会社が車載電池向けの材料を売る。米国の自動車樹脂会社クミ化成(持分法)は生産のトラブルで不振だった。2027 年 3 月期からは、電池は第一事業へ、自動車は第三事業へ移る。
売上の約 3 割が中国向けで、為替は 1 ドル 150 円で置くため円安の追い風は入れない。10% を超える売り先は無く、顧客は分散している。
優良さと弱いところ
堀は浅い〜中程度だ。商社は仕入れ先と売り先をつなぐ機能で稼ぐので、メーカーが直接取引を選べば取り分は削られる。明和産業の強みは、三菱グループの化学品の仕入れ網と、難燃剤で製造まで手を持つ点にある。製造を持つ商社は、単なる仲介より乗り換えられにくい。
弱みは、利益が薄く、一品に偏ることだ。難燃剤が第一事業の利益の約 6 割を占め、その稼ぎはアンチモンの国際相場に左右される。ROE は過去 10 年の中央値が 6.8% で、資本コストに届いた年はほとんど無い。
直近の質は上がった。2023 年度から事業ごとの ROIC を管理し、中国事業を整理し、低採算事業を見直した。営業利益率は 1.9% から 2.5% へ上がった。
財務は堅い。自己資本比率は 49%、現預金は有利子負債を大きく上回り、純現金だ。配当性向 50% を守りつつ、自社株買いも出せる余裕がある。
課題は資本の使い方の実績の乏しさだ。中計の成長投資 100 億円は前の計画の約 3 倍で、買収の目利きがこれから試される。クミ化成の不振が示すように、持分法の投資は思惑どおりに進まないこともある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
追い風と向かい風が同居している。難燃剤の需要は、EV・電線・家電の樹脂が増えるにつれて底堅い。燃えにくさの規制は世界で強まる方向で、代替しにくい。一方、アンチモンは中国が輸出許可制に切り替えて価格が急騰した。足元はそれが下落に転じている。
潤滑油は構造的に細る。電気自動車にはエンジンオイルが要らず、国内は人口も減る。ベースオイルの輸出は数量が落ちた。インドでの新しい需要と、高収益品への入れ替えがどこまで穴を埋めるかが焦点になる。
電池材料は成長の芽だ。中国では、中国の鉱物資源会社とトヨタ自動車の合弁で、使用済みの車載電池を再利用する事業に関わる。回収した電池で蓄電システムを作る構想もある。ただ現状は利益に占める割合が小さい。
化学品の商流は成熟している。同業は長瀬産業や稲畑産業など大手の専門商社と、商社の化学品部門だ。明和産業は規模で劣り、難燃剤や石油製品という「ニッチで取り分の厚い品」に集中して戦う。
景気は、中東情勢で石油製品の価格が揺れる局面にある。大きな景気後退が来れば、化学品と石油製品の数量が同時に落ちる。
資本政策と M&A
資本政策は、還元を厚くする方向に舵を切った。配当性向は 50% 以上で、減配しない累進配当を新たに入れた。自社株買いは中計の期間で上限 50 億円とし、うち 25 億円は 2026 年 2 月に公表済みだ。発行済み株式は約 2.8 百万株減り、1 株あたりの価値が上がっている。
成長投資は 3 年で 100 億円。第 1 号が、2026 年 8 月に発表したインドネシアのバイオマス燃料会社 SBI への出資で、段階的に関わりを深める。第三事業ではタカロクを買収した。機能建材や無機薬品では、周辺の M&A を想定している。
政策保有株の整理も進める。上場株式は約 34 億円で、主な銘柄は AGC・三菱ケミカルグループなど。当期は 3 銘柄を約 9 億円で売却した。一方、投資有価証券は 151 億円あるが、これは持分法の関連会社の株を含む。
三菱商事は、かつて 3 割を持つ大株主で、2026 年 3 月末に 14% へ下がった。商事が持ち分を減らす流れは、買われる側としての可能性を残す。ただ、時価総額 375 億円と小さく、財務の堅さから見ても、主導権を握る買い手が現れる確率は低くはない。
10 年の還元は、中計どおりの配当性向 50% に自社株買いを足し、純利益の 65% ほどで置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
難燃剤は、規制が強まる世界で代わりが効かない。EV の電池パックや電線の被覆、データセンターの配線まで、燃えにくさの要求は増える。アンチモンの価格が落ち着いても、高付加価値品に寄せれば商社の取り分は守れる。
電池材料は伸び始めたばかりだ。中国子会社の販売は増え、トヨタ自動車と組んだ使用済み電池の再利用は、蓄電システムという新しい出口を作る。インドの潤滑油も、エアコン工場の増加で追い風を受ける。
資本の使い方が変わった。成長投資は前の計画の約 3 倍の 100 億円、自社株買いは上限 50 億円、配当は減らさない約束だ。時価総額 375 億円に対し、3 年の還元は時価総額の 2 割近い。自己資本比率 49% の会社にとって、ROE 10% は届く目標である。
利益を伸ばす余地も大きい。第三事業は売上が最大なのに利益率は 1.4% で、タカロクの統合と、不採算の整理で改善の余地がある。営業利益は 2 倍近い 80 億円を狙える。
三菱商事が持ち分を減らす流れも、ガバナンスの透明度を高める。親会社の影から離れ、自前の戦略で動ける会社になった。
慎重な見方
今の利益は上げ底になっている。アンチモンは中国の輸出規制で急騰し、商社の在庫に評価益が乗った。すでに価格は下がり始めており、第一事業の利益の 6 割を占める難燃剤の儲けは平常に戻る。中国が許可を緩めれば、仲介の取り分は消える。
潤滑油は構造的に縮む。EV はエンジンオイルを使わず、国内の人口も減る。インドへの進出は始まったばかりで、利益に効くのは先になる。中国の冷凍機油はすでに厳しい。
成長投資の実績が乏しい。クミ化成は生産のトラブルで収益を落とし、持分法の投資は思惑どおりに進まなかった。100 億円の投資で、同じ失敗が起きる確率は低くない。バイオマス燃料も、この会社にとって未知の分野だ。
ROE は過去 10 年の中央値で 6.8%、資本コストに届いた年は少ない。直近の 8% 台は相場に助けられた結果にすぎない。純利益 45 億円の目標も、営業利益ではなく純利益で置かれており、政策保有株の売却益に頼る余地がある。
売上の 3 割を中国が占める。日中関係が悪化すれば、数量が急に減る。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、難燃剤の底堅い需要と、資本政策の転換という新しい事実を正しく捉えている。慎重な見方は、アンチモン相場の上げ底と、成長投資の実績の乏しさを冷静に見ている。
勝つのは慎重な見方で、差はわずかである。中立を中心に、悲観の厚みを 12%、やや悲観を 24% とした。10 年は、中国と買収の失敗が重なる構造的な負けを意識して、悲観側をやや厚くした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,593 円595 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 713 円266 億円)。 今の値に割り戻すと 1,223 円456 億円、今との差 +22.7%、 期待の年率 +8.7%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,089 円1,153 億円 | 965 円360 億円 | +306.6% | +15.1% | 324 円121 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,283 円852 億円 | 871 円325 億円 | +216.4% | +12.2% | 631 円235 億円 |
| 中立 | 36% | 1,786 円667 億円 | 764 円285 億円 | +155.8% | +9.8% | 918 円343 億円 |
| やや悲観 | 24% | 853 円318 億円 | 576 円215 億円 | +43.4% | +3.7% | 343 円128 億円 |
| 悲観 | 12% | 348 円130 億円 | 402 円150 億円 | −24.7% | −2.8% | 90 円34 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,593 円595 億円 | 713 円266 億円 | +131.3% | +8.7% | 2,306 円861 億円 |
今の株価時価総額 997 円372 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 難燃剤と電池が育ち、中堅の高収益商社になる 利益 75 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 3,089 円1,153 億円
10 年後の明和産業は、商社というより、難燃剤と電池材料に強い小さな専門会社になっている。中国の輸出規制で一変したアンチモン市場で、仕入れ先の分散と持分法の製造会社(鈴裕化学)を生かし、高付加価値の難燃剤を安定して売る。電池材料は車載から蓄電へ用途が広がり、中国の合弁で集めた中古電池の再利用も事業になる。成長投資 100 億円を出した買収は当たり、第三事業の利益率も上がる。営業利益は 90 億円ほどで、今の 2 倍を超える。ROE は 12% を超え、市場は商社の薄利ではなく、技術のある専門商社として値を付ける。三菱商事の持ち分は残るが、経営の自立は進む。
- 第一事業:数量 612(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 820 億円・営業利益 48 億円。取扱高の実質 612 億円、営業利益率 5.8%(難燃剤・建材・資源環境)
- 第二事業:数量 405(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 543 億円・営業利益 14 億円。取扱高の実質 405 億円、営業利益率 2.5%(潤滑油など石油製品)
- 第三事業:数量 871(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,167 億円・営業利益 21 億円。取扱高の実質 871 億円、営業利益率 1.8%(樹脂・化学品)
- 電池・自動車事業:数量 320(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 429 億円・営業利益 11 億円。取扱高の実質 320 億円、営業利益率 2.5%(電池材料と自動車部品)
倍率:事業の純利益 75 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍。全体の PER 15.37 倍、時価総額 1,153 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:難燃剤の高付加価値品と電池材料・蓄電が計画を超えて育つ強気の道。ただし本業の利益は景気とアンチモン相場で振れるため、確率は 1 割弱。
やや楽観 20% 電池と難燃剤が計画どおり育つ 利益 60 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 2,283 円852 億円
中計の方向が正しく、手を付けた事業がほぼ計画どおり育つ筋書きだ。難燃剤は EV と電線向けの需要が続き、アンチモン相場が落ち着いても高付加価値品で利益を守る。電池材料は中国の車載向けに加え、蓄電システム向けが加わって数量が 2 倍になる。潤滑油はインドの現地法人が穴を埋め、国内の縮小を和らげる。構造改革の事業は撤退し、資本効率が上がる。営業利益は 70 億円台で、ROE は 10% を超える。会社の掲げる純利益 45 億円は 3 年目に達し、その後は物価と電池の伸びで利益が増える。還元は純利益の 65% ほどで、ROE の改善は自社株買いと利益の両方から来る。商社の薄利という性格は残るが、乗り換えにくい自社の品が増え、評価は少しずつ上がる。
- 第一事業:数量 553(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 741 億円・営業利益 39 億円。取扱高の実質 553 億円、営業利益率 5.3%(難燃剤・建材・資源環境)
- 第二事業:数量 385(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 516 億円・営業利益 12 億円。取扱高の実質 385 億円、営業利益率 2.4%(潤滑油など石油製品)
- 第三事業:数量 804(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,077 億円・営業利益 18 億円。取扱高の実質 804 億円、営業利益率 1.7%(樹脂・化学品)
- 電池・自動車事業:数量 256(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 343 億円・営業利益 7 億円。取扱高の実質 256 億円、営業利益率 2.0%(電池材料と自動車部品)
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.2 倍、時価総額 852 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計 PI2028 の目標(純利益 45 億円・ROE 10%)を、10 年かけて少し上回る道。成長投資 100 億円が当たる前提で、2 割を置く。
中立 36% ROE は 10% 手前、堅実な商社のまま 利益 50 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,786 円667 億円
手堅く伸びる中立の道である。難燃剤は数量が 1 割ほど増え、アンチモン価格が高値から落ち着く分、利益率は 5% に下がる。潤滑油は国内の自動車の電動化と人口減で数量が 1 割減り、インドと高収益品でそれを一部補う。化学品は買収したタカロクを含めて数量が 1 割増える。電池は中国向けで 6 割増えるが、利益率は 1.5% の薄さにとどまる。営業利益は 60 億円で、売上総利益率の改善より物価分の増加が中心だ。還元は配当性向 50% に自社株買いが乗り、純利益の 65% ほど。ROE は 9% 台にとどまり、資本コストを少し上回る程度である。
- 第一事業:数量 498(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 668 億円・営業利益 33 億円。取扱高の実質 498 億円、営業利益率 5.0%(難燃剤・建材・資源環境)
- 第二事業:数量 365(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 488 億円・営業利益 11 億円。取扱高の実質 364 億円、営業利益率 2.3%(潤滑油など石油製品)
- 第三事業:数量 737(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 988 億円・営業利益 15 億円。取扱高の実質 737 億円、営業利益率 1.5%(樹脂・化学品)
- 電池・自動車事業:数量 205(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 274 億円・営業利益 4 億円。取扱高の実質 205 億円、営業利益率 1.5%(電池材料と自動車部品)
倍率:事業の純利益 50 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 666 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:難燃剤は底堅く、石油製品は細り、化学品は横ばい。電池が少し伸びる。最も起こりやすい道として 4 割弱を置く。
やや悲観 24% アンチモン高が剥げ、石油製品が細る 利益 37 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 853 円318 億円
難燃剤の儲けが平常に戻り、アンチモンの輸出規制が緩むと価格差で稼ぐ余地が消える。潤滑油は国内の数量が 2 割減り、中国の冷凍機油も弱い。電池は中国の価格競争で利幅が出ない。化学品は国内の成熟需要で横ばいが精一杯だ。営業利益は 44 億円で、今の水準をわずかに上回るだけになる。成長投資 100 億円のうち半分は期待した利益を生まず、ROE は 7% ほどで資本コストを割る。配当は累進配当の約束で減配せず、利益に対する還元は重くなる。手元に残る利益は薄くなり、次の投資の余力も細る。市場は、商社の平均並みの凡庸な会社として値を付ける。
- 第一事業:数量 453(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 607 億円・営業利益 25 億円。取扱高の実質 453 億円、営業利益率 4.2%(難燃剤・建材・資源環境)
- 第二事業:数量 324(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 434 億円・営業利益 9 億円。取扱高の実質 324 億円、営業利益率 2.1%(潤滑油など石油製品)
- 第三事業:数量 670(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 898 億円・営業利益 12 億円。取扱高の実質 670 億円、営業利益率 1.3%(樹脂・化学品)
- 電池・自動車事業:数量 154(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 206 億円・営業利益 2 億円。取扱高の実質 154 億円、営業利益率 0.8%(電池材料と自動車部品)
倍率:事業の純利益 約 37 億円・事業 ROE 約 6.8% は k 8% 以下なので、上限は 1÷k=11.8 倍。新しく投じる資本の稼ぎが資本コスト未満になる筋書きのため、上限の約 7 割の 8.2 倍に置いた。
確率:アンチモン相場の高止まりが終わり、潤滑油の国内需要も細る。成長投資の成果が薄く、ROE は資本コストを割る。強気と慎重のうち慎重がやや強いので 24% を置く。
悲観 12% 中抜きと中国の失速で稼ぐ力が細る 利益 20 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 348 円130 億円
構造的に負ける筋書きである。中国向けは日中関係の悪化と現地メーカーの内製化で数量が落ち、電池材料も中国の価格競争で利益が出ない。難燃剤は中国産の輸出再開で値が崩れ、商社の取り分が消える。メーカーが直接買い付けを広げ、第二事業・第三事業の口銭も薄くなる。買収した事業と、持分法のクミ化成には減損が出て、自己資本が 30 億円ほど目減りする。営業利益は 24 億円と今の 6 割。累進配当は守れず、減配に追い込まれる。もはや優良な専門商社とは見られず、倍率は大きく下がる。経営は不採算の整理と財務の立て直しに追われ、成長に回す資金は無くなる。純現金は残るものの、稼ぐ力が細った会社の現金は、株主の手に戻るとは限らない。
- 第一事業:数量 362(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 486 億円・営業利益 15 億円。取扱高の実質 362 億円、営業利益率 3.0%(難燃剤・建材・資源環境)
- 第二事業:数量 263(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 353 億円・営業利益 6 億円。取扱高の実質 263 億円、営業利益率 1.8%(潤滑油など石油製品)
- 第三事業:数量 570(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 763 億円・営業利益 8 億円。取扱高の実質 570 億円、営業利益率 1.0%(樹脂・化学品)
- 電池・自動車事業:数量 102(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 137 億円・営業利益 −1 億円。取扱高の実質 102 億円、営業利益率 -0.7%(電池材料と自動車部品)
倍率:事業の純利益 約 20 億円・事業 ROE 約 4.5% は k 8% 以下なので、上限は 1÷k=11.8 倍。構造的に負け、利益も薄いので上限の約 5.5 割の 6.5 倍に置いた。
確率:中国向け(売上の約 3 割)が失速し、メーカーの直接調達とアンチモンの供給回復が重なり、買収も外れる。10 年は何が起きてもおかしくないので 1 割強を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
第一事業
資源・環境、難燃剤、機能建材。難燃剤が利益の約 6 割。2027/03 期から電池材料もここへ入る。
| 数量取扱高(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 453 | 100.0% | 453 | 25 |
| 10 年後 中立 | 498 | 134.0% | 668 | 33 |
取り方:推定。取扱高 453 億円(実質)を置いた。開示は金額だけで数量は無いため、難燃剤(三酸化アンチモンと難燃剤の取扱量)・建材・資源環境を合わせた取扱高の実質で置く。難燃剤は EV・電線・家電の樹脂向けで底堅い。
第二事業
潤滑油・ベースオイル・添加剤などの石油製品。国内と中国が中心で、インドに足場を作りつつある。
| 数量取扱高(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 405 | 100.0% | 405 | 9 |
| 10 年後 中立 | 365 | 134.0% | 488 | 11 |
取り方:推定。取扱高 405 億円(実質)。国内の潤滑油は自動車の電動化と人口減で数量が細る方向。ベースオイルの輸出は減り、高収益品へ寄せている。
第三事業
高機能素材、機能化学品、合成樹脂、無機薬品。2025 年度にタカロクを買収して厚みを増した。
| 数量取扱高(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 670 | 100.0% | 670 | 10 |
| 10 年後 中立 | 737 | 134.0% | 988 | 15 |
取り方:推定。取扱高 670 億円(実質)。樹脂・化学品の商流が中心で、国内の成熟需要が大半。タカロクの寄与は通期ではまだ満額ではない。
電池・自動車事業
中国子会社の車載電池材料の販売と、自動車部品関連(持分法のクミ化成など)。2027/03 期から電池は第一、自動車は第三へ移る。
| 数量取扱高(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 128 | 100.0% | 128 | 0 |
| 10 年後 中立 | 205 | 134.0% | 274 | 4 |
取り方:推定。取扱高 128 億円(実質)。電池材料は中国の車載電池向けで伸びた一方、米国の持分法会社クミ化成の不振で利益はほぼゼロ。開示の区分変更に合わせず、今の区分で 10 年を追う。
リスクと懸念
アンチモン相場の反落と難燃剤の利益
第一事業の利益の約 6 割を難燃剤が占める。中国の輸出許可制で急騰したアンチモンが下がり続ければ、商社の取り分は縮み、評価益は逆に損になる。高付加価値品への移行が間に合うかが分かれ目だ。
中国向けの集中
売上の約 3 割が中国で、潤滑油と電池材料の主要な販売先だ。日中関係の悪化、輸出入規制、現地メーカーの内製化が重なれば、数量が急に落ちる。中国事業は合理化を進めているが、依存は残る。
成長投資の実績の乏しさ
中計の成長投資 100 億円は前の計画の約 3 倍。バイオマス燃料や周辺の M&A は、この会社が経験の浅い分野だ。持分法のクミ化成は生産トラブルで不振が続き、同じ失敗が起きれば減損が自己資本を傷つける。
潤滑油の構造的な縮小
第二事業は売上の 4 分の 1 を占める。EV はエンジンオイルを必要とせず、国内は人口も減る。インドと高収益品で穴を埋める計画だが、数量の減少を価格だけで補い続けるのは難しい。
メーカーの直接調達
商社の取り分は、メーカーが大口の顧客に直接売れば削られる。三菱ケミカルや AGC のような大株主でもある取引先が、取引条件を厳しくする可能性もある。第三事業の薄い利益率は、その余地の小ささを映す。
政策保有株と持分法の評価
投資有価証券は 151 億円で、時価総額の 4 割にあたる。うち上場の政策保有株は約 34 億円。株価の下落は自己資本を直接減らし、持分法の会社の不振は利益を削る。売却益で純利益を保つ年が続くと、利益の質が下がる。
今後の分かれ目
- アンチモン価格が下がり続け、第一事業の利益率が 4% を割ったら
- 難燃剤の利益が平常に戻った証拠であり、やや悲観の確率を上げてよい。高付加価値品の比率が上がって利益率が維持されるなら、逆に中立を強める材料になる。
- 電池材料の営業利益が 10 億円を超え、蓄電システムの販売が始まったら
- 電池・自動車事業が薄利の赤字枠から稼ぎ手に変わる。楽観・やや楽観の確率を上げる根拠になる。
- 中国向けの売上が 2〜3 割落ちたら
- 潤滑油と電池材料の両方が止まり、営業利益は 2〜3 割減る。悲観に近づくが、国内の化学品が下支えするので全面的な崩れにはならない。
- 成長投資で買収した事業の減損が出たら
- 自己資本が目減りし、資本の使い方への信頼が揺らぐ。10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる材料である。
- 三菱商事が持ち分を売り切る、または TOB の提案が出たら
- 買い手の価格次第で、株主には一時的な上振れがありうる。ただし本質価値の評価は、提示価格ではなく稼ぐ力で決める。
- 自社株買いが上限 50 億円まで進み、配当性向 50% を保ったら
- ROE は 10% に近づくが、利益そのものは変わらない。倍率が上がっても本質価値の評価は変えない。
見ておくもの
- 第一事業の営業利益率と、難燃剤の高付加価値品の販売
- 電池・自動車事業の営業利益と、蓄電システムの事業化
- 中計 PI2028 の進み具合(純利益 45 億円・ROE 10%)
- SBI 社(バイオマス燃料)など成長投資の成果と減損
- 中国向け売上の比率と、日中関係
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE・資本コスト 8%・長期の成長率 4.0% から利益ベースの正当化 PER((1−g÷RONIC)÷(k−g))を出し、その 5.5〜9.4 割に置いた。今の PER や PBR、同業の倍率には寄せていない。同じ領域の長瀬産業・稲畑産業と中立 PER が近いのは、ROE と k が近いためで、倍率を合わせにいったのではない。純現金 65 億円は時価総額の 17% だが、仕入債務と運転資金に必要なので余剰として分けていない(excess_cash_none_why)。金利は純現金に 2% が付く分を利益に入れた。セグメントは開示が金額だけなので「取扱高(実質)× 値段の指数」で置き、売上と数量が同じ値になる注意が出る。新リース会計基準(2028/03 期から)は、賃借料が小さいので影響は軽微で、今と同じ形でそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→15.37 倍・やや楽観 PER 12→14.2 倍・中立 PER 11→13.33 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。